オリ主に女装を褒められた一夏が心まで女の子になった話 作:トッポの人
何か続いちゃった。リハビリ
『世界初、そして二人目の男性IS操縦者が見つかったことによりアメリカ軍内でも本格的な調査が始まりました!』
どうも、二人目の男性IS操縦者こと如月晃です。発覚してから早一週間が経ちました。最近ニュースで知ったけど、両親は虫みたいな生体兵器を開発、研究してたらしいです。
話を戻して幼馴染の一夏がまさかまさかの男性でもISを扱える存在だと世界に知られたため、世界で一斉に男性の調査したら俺も扱えたみたいだよ。
「いやー、よもやよもやだ」
ちなみに俺は一夏とはまた別のホテルで厳重に隔離中。こんな希少な存在が狙われないって保証どこにもないから仕方ない。ましてや実際に拐われた経験のある俺ともなれば尚更だ。まぁあれは犯人達が俺を一夏と勘違いしてたから起きた悲しい事件なんだけれども。
ともあれ隔離されてるのでやることナッシングな俺はぼーっとテレビを眺めていた。どこもかしこもやる内容はISの再調査だ。
何で再調査するのかって? こいつを見れば分かるんじゃないのかな。
『ご覧下さい! この光景を!』
────会場に集まった屈強な男達全員が女装したその姿を。しかも何故か物凄くウッキウキな笑顔で。
こんなおぞましい地獄にも似た光景になったのは理由がある。さっきも言ったが、最初の一夏が発表されたあとに世界中で一斉に男性の適性検査がされた。
中々二人目が出ない中、一夏が実は男子だったと全校男子がショックを受けている俺の学校でも調査が始まるその前日────
「なぁなぁ。次さ、罰ゲームありでやんね?」
「ちなみにどんなん?」
俺は仲良いグループで集まって家で某大乱闘を何戦かやった後、その中の一人から唐突にそんな提案がされた。
「ビリだったやつは明日の適性検査に女装して挑むってのはどうよ」
突拍子もない話と思うかもしれないが、実はSNSやネットでは一夏という前例から『女装すれば男でもISを動かせる可能性があるのでは』と知り合いの開発者が聞いたら鼻で笑ったあと、耳元でバーカ、バーカって煽ってきそうな話が出ていた。多分束さんはそんなこと言わない。
勿論、一夏並みの美少女……美少女? ともかく、見た目がかなりハイレベルじゃないと反応しないとかって意見はあったし、既に動画投稿者達が試していたりもする。結果は当然、失敗だ。ここにいた誰もがこれで実際に動かせるなんて考えはない。
「いいぜ……お前らの運、試してやるよぉ!」
「掛かってこいやぁ!」
「やぁってやるぜ!」
しかし、そこは悪のり大好き中学生。そんな面白そうで直ぐに試せる環境にある俺達がやらないはずがない。
それぞれの持ちキャラを使った今までにない白熱したバトルが行われた結果。
「何だとぉぉぉ……!?」
「そんな腕でよく挑戦してきたな雑魚がよぉ!」
「もしかして初心者だったのかな!? ん!?」
俺がビリだった。くそほど煽られたあとでそのまま皆でグッズを買いに行き、そんでもって翌日の学校で酷い出来の女装をしてから検査に挑んだら動かせてしまった訳だ。ラッキースターっていうかミラクルスターでしたわ。
「よもやよもやだ」
ただ誤算があった。しかもかなり大きな誤算だ。女装した俺がISを扱えてしまう、これは確かに誤算だ。だが考えなかった訳じゃない。最悪としては想像していた。
俺が言いたいのは想像を上回る誤算があったことだ。一夏みたいな美少女……美少女? でもなく、ぶっさいくな女装をした俺でも動かせたことで男がISを扱う条件として『見た目問わず女装する』が本格的に決まってしまった。判定ガバガバかよぉ。
となるとどうなるか。まだ未実施の男性も、一度は調査した男性も再度女装して検査するのが確定した。世界が自ら地獄作るのを選択してしまった。いや、そうさせたのは俺か。
「……うん」
再びテレビに意識を向ける。屈強な男達が女装した姿はクリーチャーと言っても過言ではないレベル。はっきり言って見るに耐えない。お前らのような女がいるか。
しかもテレビに映る男達は
「実はこういうの興味あったんだよね」
「えっ、お前も!? 実は俺もなんだよ!」
「何だよ! もっと早く言ってくれよブラザー!」
「おいおい……今はシスターだろ?」
なんて会話が聞こえてくるほど楽しそうだ。それを眺めている女性達は冷ややかなのは言うまでもない。いや、俺も冷ややかなんだけどね。
これが世界各国で行われ、各地で地獄を作り出している。しかも今まで隠していた性癖までさらけ出してしまった。
その原因の一端が俺かと思うと震えるがもう一週間経った。さすがに落ち着きを取り戻し、小粋なジョークを決め声で言えるほどには冷静にもなる。
「やっぱり迫力というかクオリティが違うな。本場ハリウッドのSEXは」
「それを言うならSFXだろう」
そうだったかもしれねぇ……。一本棒が多かったわ。男だからね、仕方ないね。いや、何考えてんだろ俺。やっぱり冷静じゃなかったわ。
「てか千冬さんいつからそこに?」
「お前が死んだ目でテレビを眺めながらいやー、よもやよもやだとか言ってる辺りからだな」
ほとんど最初からじゃないですかやだー。
「じゃあどうしてここに?」
「お前の様子を見てきてと懇願されてな。まぁ私が見てみたかったのもあるがな」
それだけで誰にお願いされたか分かるのは幼馴染として長年付き合ってきたからだと信じたい。
「一夏はどうなんです?」
「お前のことを酷く心配している。一人で起きれているかとかちゃんとご飯食べてるかとか」
「おかん……」
もはや心配の内容が幼馴染越えておかんなんですがそれは。と、おもむろに携帯を取り出してどこかに電話し出した千冬さんは挨拶もそこそこにその画面をこちらに見せてきた。
「大丈夫そうだったが聞かせるよりも見せた方が早いと思ってな。ほら」
『晃、晃ー!』
「お、おう」
そこに映るのは画面越しでも分かるほど今にも泣きそうな顔でこちらを食い入るように見てくる一夏。
「久し振りだなおかん。そっちは元気か?」
『もー、私は晃のお母さんじゃないよ!』
「ごめん、ごめん」
「ふっ、やれやれ……」
久し振りの幼馴染とのやり取りに思わず笑顔が綻んだ。一週間、誰とも会わなかった期間に加えてこの幼馴染と会えない期間はもっと長かったからか、より一層楽しく思える。
『わ、私は晃のお嫁さんになるんだからっ!』
「────」
「おいおいおい。君ってやつは。おいおいおい」
まぁそんな楽しい時間も一瞬で終わった訳だが。さっきまでにこやかだった千冬さんも白目剥いちゃってるよ。俺も思わず露伴先生出たけど。
てか何いきなり大胆な告白しちゃってんだこいつ。そういうのは同性じゃなくて異性にやってくれ。異性だったら間違いなくときめいてたって。今のはバグルアップしてときめきクライシスになる。
「な、何故そうなったんだ?」
『こうなって改めて気付いたんだ……。やっぱり私は晃が好きなんだって』
何とか復活した千冬さんが理由を聞く。前から知ってはいたが、恥ずかしがって今一歩踏み出せずにいたところから躊躇いもなく更に先へと踏み込むようになった。
ざっくり言えば離ればなれになって自分の想いを自覚したことでより深い愛が育まれたらしい。勝手に一人で愛を育まないでクレメンス。
「いや、あのな、一夏。俺達の間には分厚い壁があるんだ」
性別って壁がね、あるんですよ。普通これ言わなくても分かるはずなんだけど、今の進化した一夏になったせいか分からなくなってるっぽい。
『でも晃アニメに影響されてよく言ってたよ』
「なんだっけ?」
同性の幼馴染に告白されて頭回らないよ。何か俺変なこと言ってたっけ?
『目の前に分厚い壁があって、どうしてもそれを突破しなきゃいけないなら迷わず力を使うって』
「おぉん……」
『だからもう迷わない!』
ありがとう俺のバイブル。おかげ様で幼馴染が変な方向に逞しくなりました。多分誰も予期してなかったと思います。
そして過去の俺、迂闊なこと言わない方がいいって言ってたのにまた知らないところでやってしまったな。そんな驚くほど鳥頭な自分に驚いたんだよね。
『千冬姉、晃のことお願いね』
「あ、ああ……任せておけ」
『次会うときは元気になれるようにいっぱい美味しいの作ってあげるからねっ、晃っ』
その後、おぉんしか返事出来なくなった俺の様子がおかしいと判断したらしく、言いたいこと言って一夏は早々に切り上げた。再会の約束を交わして。会いたくねぇ。
「ど、どうだろうか。一夏と一緒になれば稼ぎが良い姉も付いてくる。ゆ、優良物件だと思うが」
「このお姉ちゃんも何言ってんですかね……」
ただでさえ頭痛いのにこれ以上変なこと言わないで……。