マジックでは理解できない本物の魔法を使いたいのでINTに極振りしてみました 作:ディスタブ
評価してくださった方ありがとうございます。
少し空くかもと言ったな、早く上げてしまってもいいのだろう?
イベント後、緊急メンテナンスと称されたメイプルとウィザードの下方修正が行われた。
【悪食】
あらゆる物を飲み込み糧に変える力
魔法や攻撃、アイテムを自分のMPに変換することができる
変換されるMP量は、大楯で受けた攻撃量の2倍となる
容量オーバーの魔力は魔力結晶として体内に蓄えられる
【
収束された光を照射する
照射している間はMPを持続的に消費する(最大5秒まで)
メイプルは【悪食】のスキル、ウィザードは【
悪食については、わかりやすい。
回数制限である。
いってしまえば完全防御のため、回数制限でもつけない限りメイプルにダメージを与えることが不可能だからである。
しかも、常時発動のスキルのため、攻撃の大小に関係なく大楯で10回受けてしまえばおしまい。メイプルの闇夜ノ写は本当にただの大楯になってしまうのである。
吸収できるMP量は、2倍になっているため、ある程度の魔力タンクにはなるだろうが、実質的な弱体化である。
そして【
文面には記載されていないが、攻撃範囲が大きく修正された。
今までの光線では、プレイヤー3人〜5人ほどを一気に殲滅できる大きさの光の収束砲を放っていた。その収束砲の範囲が、1人〜3人程度を呑み込む大きさのまで縮小された。
なにより重要なのが、照射時間の修正である。
今までは、一度放ってしまえば、MPを消費せずに5秒間撃ち続けることができた。放った後の曲げ撃ちも可能であった。
今回の修正で、照射する時間は任意となった。しかもMPを消費し続けるため、これからの照射時間はMPの残量と要相談という、なんとも世知辛い仕様となった。
ポジティブに考えるならば、任意で照射をやめられるようになった分、隙が大幅に減った点だろう。
それでも結局、空を自在に駆けるウィザードからすれば、実質的な弱体化であった。
そんなウィザードは、地底湖と呼ばれるフィールドにいた。
「〜〜♪」
ウィザードの機嫌は悪くない。
むしろ、とてもよかった。
それもそのはず、最近になってウィザードは新たなスキルを入手していた。それも、いかにも魔法使いらしい攻撃魔法である。
地面を蹴るように、ゆっくりと浮かび上がり、ウィザードは湖の上へと移動する。器用に杖をくるくると回し、腕を天へと伸ばし、掲げるように構える。
「招雷」
そうして、ウィザードは新しく覚えたスキルを発動させた。
▼ ▼ ▼
「おー! 町はこんな感じなんだ!」
初めて町に降り立ったサリーが、周りを見渡し、感動したように声を上げた。
その様子は、初めてゲームを始めた時のメイプルと全く同じであった。
このサリーという少女。
メイプルこと本条楓にNewWorld Onlineを進めた張本人、白峯理沙である。理沙を逆さまにして読んでみるとサリーになるため、このプレイヤーネームにしたようだ。
因みに本条楓が、プレイヤーネームをメイプルにしたわけは、楓を英語に変換したらしい。
ウィザードは言わずもがな、魔法使いになりたかったからである。
サリー
Lv1
HP 32/32
MP 25/25
【STR 10〈+11〉】
【VIT 0】
【AGI 55〈+5〉】
【DEX 25】
【INT 10】
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【初心者の短剣】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【初心者の魔法靴】
装飾品 【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル
なし
そんなサリーのステータス。
これが本来のステータスの振り方である。
STR極振りやINT極振りのようなロマン砲が流行りつつあるものの、実際に成功しているプレイヤーはメイプルとウィザードのみである。
「そういえば、事前にいろいろ調べてみたんだけど、行きたいところがあるの」
「行きたいところ?」
「うん、ちょっと気になってね。とりあえず、メイプルは私におぶられなさい!」
「え、えぇ!?」
レベル1の時点でなぜかSTRが負けているメイプル。サリーに抗えるはずもなく、突然として身体をがっちりとホールドされると、何故かサリーにおぶられることとなった。
どういう動きをしたらおぶられるのか、わからないが、巧みな素早い動きで気がついたらメイプルはおぶられていた。
そうして、サリーはメイプルでは考えられないスピードで地底湖と呼ばれるフィールドがある方面へと爆走し始めた。
始めて初日だというのに、俊敏な動きを見せるサリー。
ゲーム…特にVRMMOにはVR酔いが激しい。これはもはや慣れていくしかないのだが、サリーのVR適正値は異常なまでに高い。脳がどれだけ上手く対処するかによって、反応速度やスタミナなどが反映されるこの世界において、適正値は非常に重要視される。
ちなみにウィザードの適正値も非常に高い水準を叩き出しているが、サリーとはまた違う。ウィザードの場合、サリーのような反応速度というより、リアルのマジックで培った器用さが強みのプレイヤースキル。
似ているようで、プレイヤースキルとしては若干の差異がある。
「前方から狼系モンスター! メイプル、噂の攻撃やっちゃって!」
「任せて! 【パラライズシャウト】!」
腰に下げられた短刀の鍔を鳴らした途端、『バチリ』という音とともに目の前に迫っていた狼系モンスターが一斉に動きを止めた。そのまま、大楯のスキルである【悪食】を3回分消費して、狼系モンスターを跡形もなく消しさった。
パーティーを組んでいたため、経験値は自動的に半分に分けられ、溜まっていく。
幸いなことにその後はモンスターと遭遇することはほぼなく、メイプルの【悪食】を消費することなく地底湖の入り口へと辿り着いた。
実際のところ、モンスターと遭遇したとしても、【パラライズシャウト】を使用して麻痺させたところを見逃して走りさればいいので、モンスターなど全く問題ではなかった。
「で、どうして地底湖にきたの? サリーまだレベル1だし、普通にフィールドでさっきみたいなモンスター倒した方が…」
思い出したように問いかけてきたメイプルに、サリーは何故か胸を張ってドヤ顔をする。
いつのまにか、サリーの手には木の枝と蔓で作られた、いかにもゲーム序盤で使いそうな釣竿があった。
「ふっふー! この世界では、なんと釣りをすることによってレベルを上げることができるのだ!」
「釣りでレベルあげ?」
「もちろん、釣るだけじゃないよ? 正しくは、釣った魚にダメージを与えて倒すことでレベルを上げる…かな」
「なるほど!」
納得したメイプルが、掌を打ちつける。
そんなメイプルに軽く微笑むとサリーは地底湖の入り口をくぐる。
地底湖というだけあって中は、薄暗い。現実世界の鍾乳洞のように、滴る水滴のような小さな物音でも反響し、何ともいえない不気味さを感じさせる。
大きく息を吐いて、ゆっくりと歩き出したその時、
「
突然、空から轟音が地面へと降り注ぎ、視界を黄色い閃光が覆った。
だが、それも一瞬のことだった。
これからこのゲームでの冒険が始まる。
そんなサリーの感情を目の前の光景が、嵐のように吹き飛ばした。
黄色い光が収まった地底湖。
サリーとメイプルの2人は、目の前の光景に唖然とした。
水の底から、湖の表面を埋め尽くすほどの大量の魚が、プカプカと浮いてくる。湖の水は、バチバチと電気のようなものが走っており、サリーは魚たちが感電死したことを理解した。
雷が落ちた。
恐らくは、雷を放つ魔法なのだろう。
目の前に次々と浮かんではポリゴンの欠片へと姿を変えて消えて無くなる魚たちの姿。
ゲームの中のため、感電死というものが本当にあるわけではない。だが、現実世界の理通り、水は電気を通すという性質はそのままのようだった。
その数はもはや、数十などという生易しい数ではなかった。
…ということはだ。
サリーは、拳はゆっくりと握る。
この瞬間、サリーが考えていた釣りでレベル上げ大作戦は、始める寸前で頓挫してしまったのであった。