マジックでは理解できない本物の魔法を使いたいのでINTに極振りしてみました   作:ディスタブ

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初戦闘

ゲームを起動した悠が初めに降り立った場所は、西洋風な建物が並ぶ町でも、モンスターがいる草原でもなく、空色を基調とした不思議な空間だった。

どこまでも続く青は、まるで現実世界の空のように、途方もなく果てまで広がっているように思えた。

 

あたりを見回してみれば、自分の周りにはホログラムのように浮かび上がっている透明な武器があった。

 

大剣、メイス、杖、短刀、大楯…どうやらプレイヤーが一番初めに選ぶことのできる初期装備らしい。

武器を触ってみると新しく透明なウィンドウが飛び出し、説明文が表示される。全ての武器に触れ、説明文を読み終えると、悠は迷うことなく杖を選択した。

 

実をいうと、最初から悠の中では杖を初期装備として選ぶことは決まっていたのだ。魔法を使いたいが為に、このゲームを買ったと言っても過言ではないのだから。

杖はMPを使用して、ありとあらゆる魔法を駆使して戦うことができる。そのMPの値も、ある程度INTと関係があるらしい。故にステータスの割り振りでも迷うことなく、全てのポイントをINTに入れる。

 

MPに振り分けることがなくても、INTに振り分けることによって多少はMPの最大値を増やすことができる。増やすことはできるといえど、限度はあるが…。

 

INTに極振りした理由は単純明快。

 

『INTに全部振った方が、超常的な派手な魔法が使えるでしょ?』…こういうことである。

実際のところ、MPがあってこその魔法だが、そこまでゲームをしてきたことのない悠には理解ができていなかった。

 

最後にプレイヤーネームの登録を終えると役目を終えたと言わんばかりに浮かんでいたホログラムとウィンドウが姿を消す。同時に、どこまでも続くこの世界までも小さな輝きとともに消滅していく。

 

その奇跡のような光景に思わず感嘆の声を上げる。

 

小さな粒子となって散っていく世界。やがて目の前が光で見えなくなるまで、悠はその光景に見惚れ続けた。

 

こうして、プレイヤーネーム、ウィザードはNewWorld Onlineでの第一歩を踏み出した。

 

 

▼ ▼ ▼

 

街では多くのプレイヤーが青い光とともに姿を現し、興奮した様子で歩き回っていた。

自分の姿を確認する者、道に置いてある物や建物のグラフィックに感動する者、我先にと装備を整えフィールドへと向かって走っていく者。

 

人それぞれに行動しているが、どれも決して間違った反応ではないだろう。

 

斯くいうウィザードはというと、自身のステータス画面をマジマジと確認していた。

 

ウィザード

Lv.1

HP20/20

MP40/40(+9)

STR0

VIT0

AGI0

DEX0

INT100(+28)

 

装備

頭 【空欄】

体 【空欄】

右手 【空欄】

左手 【初心者の杖】

足 【空欄】

靴 【空欄】

装飾品 【空欄】

【空欄】

【空欄】

 

スキル

なし

 

見事なまでのINT極振りである。

しかし、よくよく考えてみると、このステータスでどうやってモンスターと戦えばいいのか。魔法使いの職業だけあって、初期の攻撃でも杖を振るうことで小さな青い光の球を放出することができる。

 

それだけである。

 

防御の魔法は覚えていなければ、高速で動くような魔法を覚えているわけでもない。近接戦闘に持ち込まれれば一瞬のうちに負けるだろう。

 

その事実に気づき、絶望しかけるウィザードだったが、近づかれずにとにかく遠くから一方的に攻撃することを決意することで立ち直る。

 

そう、当たらなければどうということはないのだ…多分。

 

透明なウィンドウを閉じ、大きく伸びをすると多くの人が走っていく方向へとウィザードも歩いていく。

西洋風の街並みを見ていると、まるで海外にいるかのような気分になってくる。日本のようなコンクリートで作られた道ではなく、石を敷き詰めたような道。時折綺麗なアーチを描くように水を放出する噴水。

父親に幾度となく連れていってもらったイタリアやスペインはこういった雰囲気の街並みが非常に多かった。

 

改めてこのゲームのグラフィックの良さを実感する。

 

流れに乗って歩いていくと、予想通り、モンスターが溢れるフィールドへと繋がっていた。

ゲームで最初のフィールドといえば、草原を連想する者が大多数を占めると思うが、NewWorld Onlineの最初のフィールドは森林だった。森といえば、序盤のダンジョンで出てくることが多い。NewWorld Onlineでは街から一歩出れば、そこはもう森の入り口であった。

 

森林の中へと入ると早速、草むらからウサギが飛び出してきた。

 

こちらに気づいている様子はなく、背を向けたまま耳をピョコピョコと動かす様子は現実世界のウサギと何ら変わることはない。

ウィザードにとっては千載一遇のチャンスである。音を立てないように杖を構え、狙いを定めて杖を振るう。

 

振われた杖からは、小さな青い球が放出され、一直線にウサギへと向かっていく。ウサギに触れたと同時に青い球弾け、ウサギを吹き飛ばすとそのままウサギはノイズがかかったようにグラフィックを揺らし、消えていった。

 

自分にEXPが入ってきたことを確認したウィザードは、手に持った杖をぼんやりと見つめる。

 

この杖からは、確かに青い球が飛び出していった。現実世界の手品のように、タネがあるわけでも、杖そのものに仕掛けがあるわけでもない。自分自身のMPというステータスを使用して、無から魔法を繰り出した。

 

その事実にウィザードは目を輝かせた。

 

▼ ▼ ▼

 

草むらをかき分け、開けた場所で次に出会ったモンスターは、雑草だった。

 

小さな足に丸い胴体。頭にはこの森に適応して生きていけるようになのか、長い草が生えていた。

 

つぶらな瞳と小さな口が実に可愛らしい。

 

モンスター名をマジマジと見つめる。

 

《謎の草モンスター》。

 

 

ポケットなモンスターの房草タイプ擬きがそこにはいた。

 

著作権はいいのかと内心疑問が残るが、正式に販売しているのだから、大丈夫なんだろう。

 

きっと。

 

 

振るわれた杖からは、小さな青い球が敵に向かって直進していく。

ほぼ同時に、謎の草モンスターは身体を震わせ、口から紫色の禍々しい球体状の塊を吐き出した。

その塊は、杖から飛び出した青い球体とぶつかると、弾けるように周りの地面を紫色に染め上げた。

 

今度は謎の草モンスターが、口から先程の塊を2回吐き出す。直後、ウィザードが2回杖を振るう。

紫色の塊と青い球体が、惹かれ合うようにぶつかり、弾け、辺りを紫色に染め上げる。

 

ある時はウィザードから。

その次は謎の草モンスターから。

 

2人は暫くの間、この攻防を繰り返した。

 

5分、10分、15分。

 

延々と終わらないかのように思えた頃、ウィザードに変化が訪れた。

 

突如として透明な窓がウィザードの眼前に現れる。

 

現れたのは、システムメッセージだった。

 

唐突に現れたシステムメッセージに驚いた隙から、2つの紫色の球体がとうとうウィザードの眼前まで迫る。

 

慌てて杖を振おうとしたウィザードだが、もう遅い。

 

咄嗟に杖を横にし、両端を持って目を瞑る。

 

バケツの中の水をぶち撒けたような音とともに、ウィザードの身体に衝撃が………走らなかった。

 

恐る恐る目を開けたウィザード。

 

目に入ったのは朧気に揺れる薄く、黄色い膜。

 

目を何度か瞬かせ、マジマジとシステムメッセージを確認する。

 

スキル【魔法壁(ボルグ)

魔力を自身の周りに纏わせることで魔法攻撃、物理攻撃を防御する。魔法壁に状態異常の耐性が付与される。貫通した場合では状態異常効果を発揮しない。防御力はINTに依存する。INT値がプラス2倍される。STR値がマイナス2倍される。

 

取得条件

一時間の間、敵の遠距離攻撃を杖系統、遠距離基本攻撃で弾き続ける。かつダメージを受けないこと。かつ魔法、武器によるダメージを与えないこと。

 

驚くべき内容だった。

謎の草モンスターが、毒攻撃を放ってきても無視し続けるほどに驚愕する内容であった。

チラリと自身のHPを確認してみるも、減っている様子は全くない。

 

無傷である。

 

現在、ウィザードのINTは100+28=128。

 

その倍増えるということは、128×2=256

 

とんでもない数値が、パラメーターに加算されることとなる。

もともとSTRが0の遠距離型の魔法使い職であるウィザードには困ることなどない。強いていえば、プレイングの時、重たいものが持てなくなる程度のもの。

 

しかし、あまりあるメリットをこのスキルは与える。

 

なにせHPが低く、紙装甲かつ、防御力皆無なペラペラ魔法使いの生存率を爆発的に上げることに成功したのだ。

 

何度も毒攻撃を食らっても薄い膜にぶつかり、無効化できていることを確信したウィザード。毒攻撃を正面から受けながら、ゆっくりと謎の草モンスターに近づいていく。

AIのアルゴリズムのせいか、躊躇うことなく意味もない攻撃を繰り返す謎の草モンスター。

 

何もすることができずにウィザードの攻撃を数回受け、その身体を爆散させた。

 

 

▼ ▼ ▼

 

【NWO】やばい魔法使い見つけた

 

 

1名前:名無しの魔法使い

訳がわからない

 

 

2名前:名無しの大剣使い

kwsk

 

 

3名前:名無しの槍使い

どうやばいの

 

 

4名前:名無しの魔法使い

房ポケットなモンスター擬きの謎の草の毒球弾を延々と弾き続けるキチガイプレイヤー

 

5名前:名無しの槍使い

は?あり得なくね

幾らなんでも弾き続けるは無理だろ

 

 

 

6名前:名無しの弓使い

>1

それって物理?

杖で弾いてたってこと?

 

 

7名前:名無しの魔法使い

杖の基本遠距離攻撃

あの小さい青い球出すやつ

時間見てたけど15分くらいは無傷で弾き続けてた

え?それってどれだけリアルでの器用さ必要?

挙げ句の果てになんかよくわからない膜展開して攻撃防いでたんだが?

 

8名前:名無しの大剣使い

プレイヤースキルだとしてもきつくね?

曲芸師かなにかかよ

 

 

9名前:名無しの槍使い

そんなこと出来るか?

 

 

10名前:名無しの弓使い

そんなこと検証しようとしたやついないんじゃない?

タンクでパリィしまくるならまだしも…

 

 

11名前:名無しの槍使い

肉ダルマ大作戦とよべ

因みに発案者は俺

膜の件kwsk

 

12名前:名無しの大盾使い

お前かよ

 

 

13名前:名無しの槍使い

あれお前かよ

マゾかよ

 

14名前:名無しの魔法使い

膜に関しては理解不能

とにかく攻撃をプレイヤーに当たる前に遮ってた

Iフィールド的な感じ

プレイヤーネームは知らんが身長160cmくらいの茶髪の少年

歩く速度からしてAGIはほぼゼロ

 

なんか追加情報あったらよろ

 

15名前:名無しの大剣使い

やっぱ極振りか?

まあ、でも隠しスキルでも見つけたとかかも知れんぞ

魔法使い歓喜やな

 

 

16名前:名無しの槍使い

あーそれっぽいなって言うか少年…少年と言ったか貴様

 

 

17名前:名無しの弓使い

ほうそこに目をつけましたか

私も

 

 

18名前:名無しの大剣使い

>17 お巡りさんこっちです

 

 

19名前:名無しの魔法使い

幼い顔立ちだったからショタコンは歓喜

実物見てるから保証する

 

 

20名前:名無しの槍使い

情報提供感謝します!

早速探してくる

 

21名前:名無しの大剣使い

だめだコイツらどうにかしなきゃ

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