新しき<剣帝>の軌跡   作:kohac

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Ⅶ組特別オリエンテーション ーⅦ組結成ー

 「へぇ~、フィーが俺を越える?・・・やってみろよ、相手してやる。」

 

 

 「ーーーうん、全力で行くよ!!」

 

 

そう言うと、フィーは双銃で連続射撃をしてくる。フライベアは、背後にいるフィーから距離を

取りながら振り向き、飛んで来る銃弾をその場で躱し続ける。フィーはフライベアがその場から

動かないと知ると、連続射撃の速度をさらに上げ十発ほど放つと入魂した一発を打ち出した。そ

れまで、フライベアの全身を狙っていた銃弾が突然、フライベアの上半身へ狙いを変えてきた。

徐々に中腰になりながらもそれらを避けた。直後それまでとは精度が格段に違う銃弾に気が付いた。

 

 

 (ーーー誘導、されたか。・・・なら!!)

 

 

中腰になり、避けられないフライベアの腹部に飛んで来る銃弾を、フライベアは右腰の片手剣を

半分ほど抜刀させ、飛んできた銃弾を切った。キンッ、と音がしたあとフライベアの左右に半分

になった銃弾が地面に落ちた。

 

 

 「っ!!」

 

 

 「・・・かなり、やるようになったなフィー。なら少し全力でいくぞ!!」

 

 

銃弾を真っ二つにされたのがショックなのか、一瞬だけ放心したフィー。その一瞬で勝負が決ま

る。半分抜刀した剣を納刀すると、

 

 

 「ライトニングブレイド!」

 

 

二回連続で高速抜刀された剣からは衝撃波が発生し、フィーの双銃剣を弾き飛ばした。

 

 

 「っっっ!!」

 

 

フライベアはフィーに戦意が無くなった事を確認すると、フィーへと近づき、ぎゅっと、抱きし

めた。フィーが息を飲み込むのがわかる。フライベアはゆっくりと語りかける。

 

 

 「ごめんな、フィー。あの時は会わなければならない人がいたんだ・・・」

 

 

 「・・・・・・」

 

 

 「それに、サラさんはよくしてくれただろう?」

 

 

 「・・・・・・」

 

 

こ、困ったなぁ。フライベアはそのように感じずにはいられなかった。これ以上どう、声をかけ

たものかと困り果てていると、フィーも抱きしめてきてフライベアに顔を埋めた。

 

 

 「・・・もう、勝手にどこにもいかない?」

 

 

 「もちろんだよ、フィー。もう用事は終わったから、また一緒だ。」

 

 

そう言いながら、フィーの頭を撫でる。フィーは顔をあげ、頭を撫でられるのが余程心地良いの

か、ずっと目を閉じて嬉しそうな顔をしている。数十秒か数分か分からないほど撫でた後、フィ

ーを解放すると、あっ、と残念そうにフライベアを解放する。

 

 

 「それじゃ、行こうぜフィー。とっととこのオリエンテーションを終わらせるぜ!」

 

 

 「うん、レッツゴー。」

 

 

風のようにダンジョン内を駆け抜ける二人に、魔獣たちは足止めさえも出来なかった。二人は、

あっという間に出口間際までたどり着くと、剣戟や、銃声の後に魔獣のものだと思われる絶叫

が聞こえてきた。二人は、お互いに頷き合うと一際大きな扉を開けた。そこでは、大した怪我

はしていないものの肩で息をしながらも、大型魔獣と対峙しているⅦ組のメンバーがいた。魔

獣は、背中に翼と強固な皮膚を持ち合わせており、同様の魔獣が近くで絶命していた。

 

 

 「もう一体、あんなの相手にしていたらあいつら全滅しちまう!フィー、一気に行くぞ。」

 

 

 「オッケー!」

 

 

フィーが先行し、連続射撃で大型魔獣を牽制する。フライベアは左腰に携えた刀に右手をかけ

踏み込み体制を取った。そんな様子を見ていた、黒髪の少年が声をあげた。

 

 

 「待ってくれ!・・・二人では危険だ!」

 

 

 「まあ、見てな!ーーー秘技、<裏疾風>!!」

 

 

 「っっ!」

 

 

さっきの少年が衝撃を受けたのが分かる。フライベアは超高速で魔獣に接近すると、すぐさま

刀を抜刀、斬撃を叩き込む。それを皮切りに、先ほどの速さで魔獣の周りをから斬撃を加えた。

斬撃がかなり効いたらしく、よろめき始める魔獣を見逃すほど甘くない。フライベアとフィー

は無言で頷き合う。そして、魔獣に追撃するためお互い駆け出した。

 

 

 「止めだ!フィー!」

 

 

 「うん。これで決める!」

 

 

 「「シルフィードテンペスト!!」」

 

 

まるで竜巻のように打ち出したフィーの銃弾に、先ほどフィーに放ったのとおなじフライベアの

衝撃波が融合し、巨大な竜巻を創り出した。竜巻が止むと、魔獣が銃弾と斬撃によってボロボロ

になって落ちてきた。弱弱しい魔獣の断末魔を聞いた後、二人は向き合って話し出した。

 

 

 「流石だな、西風の妖精<シルフィード>」

 

 

 「<剣閃>もね」

 

 

あまりの出来事に呆然とするメンバーをよそに、二人はハイタッチしたり、ピースサインをした

りしているとフライベアは不思議なことに気が付く。

 

 

 「しかし、久々の割にはフィーの動きが手に取るようにわかったな」

 

 

 「うん、私もそう感じた」

 

 

 --それが、戦術オーブメント《ARCUS》の真価ねーー

 

 

突然の声に、全員驚きながら見上げると、階段の上にはフライベア以外全員を地下に落とした

張本人ーーサラ=バレスタインが笑顔で拍手していた。そこから手すりを飛び越えて階段を下

りてくると、やっぱり、最後は友情とチームワークの勝利は王道よねー、とか言いながら正面

まで移動してくる。今はそのようなことを聞きたくないといわんばかりに、黒髪の少年がいま

おそらく全員が持っているであろう疑問を投げかける。

 

 

 「教えてください、サラ教官。そこの二人もそうですが、俺たちが戦った時に感じた、

 不思議な感覚。これは一体・・・」

 

 

その後のサラは真剣な表情で様々なことを話してくれた。《ARCUS》の持つ『戦術リンク』

はまだ試験段階ながらも、『持つ者同士を深く繋ぎ、感覚だけで互いの動きを察し、手に取る

ように分かるようにし、連携できるようにする』という戦場の革命ともいえる代物だった。そ

してトールズ士官学校《Ⅶ組》は、《ARCUS》の適合者レベルの高い数値を示したメンバ

ーを、階級制度を無視して集めて作ったクラスであること。予算の関係上で途中下車はできな

いこと、《Ⅶ組》のカリギュラムは、他よりキツイこと。

 

 

 「だからこそ、ここで改めて聞かせてほしいの。《Ⅶ組》でやっていくか、それとももともと

 振り分けられるはずだったクラスにいくか。選択権は君たちにある。」

 

 

長い説明の後、サラは再び全員に問う。彼らの意思を。今後の学院生活において重要な選択であ

るため、皆暫く考えるだろう、と踏んでいたサラはすぐに驚かされることになる。

 

 

 「コーネリア=フライベア。参加させてもらう」

 

 

 「私も」

 

 

 「っっ!!!フィーはいいとして、ベア、理由を聞かせてもらってもいいかしら。」

 

 

サラは、フィーは恐らくフライベアが参加したから、と踏んだもののフライベアの理由が全く分

からなかった。そんな中、彼はゆっくりと言葉を紡いだ。

 

 

 「・・・俺にはどうしても越えなくてはいけない人がいる。師匠でさえ越えられなかった人を

 越してようやく、自分の呼び名を堂々と受け入れることができる。その修行をここでならでき

 ると思ったからだ。」

 

 

 「かなり、わけありみたいね・・・」

 

 

 「ははは・・・まあ、そんなところです・・・」

 

 

その後、黒髪の少年ーーーリィン=シュバルツァー、青髪の少女ーーーラウラ=S=アルゼイド、

偉丈夫の少年と紅茶色の髪の少年ーーーガイウス=ウォーゼル、エリオット=クレイグ、そして

三つ編みの少女ーーーエマ=ミルスティン、金髪の少女ーーーアリサ=R、が次々と参加を決め

そして最後、緑髪の少年と金髪の少年ーーーマキアス=レーグニッツ、ユーシス=アルバレアの

二人は、一悶着こそあったものの参加を決意した。

 

 

 「これで全員参加っと・・・それじゃあ、ビシバシ鍛えていくわよ!」

 

 

七耀暦1204年、3月31日ーーーこの日、トールズ士官学校一年《Ⅶ組》が発足した。後に

彼らがエレボニア帝国全土を揺るがす大事件に巻き込まれることを、誰も知る由もなく・・・

 

 

 

 

 

 




前回、言っていたように何とか特別オリエンテーションを終わらせることができました。

戦闘の描写はこんな感じでいいのかな?ご意見お待ちしています!
あと、今回フライベアが使用したクラフトについて。


『ライトニングブレイド』CP30 直線M(地点指定) 威力A 遅延+20 加速+10
    ソールトリガーのファレルが使用する技です。私としては演出がカッコイイと思う
    技の一つです。


『裏疾風《うらはやて》』CP30 円L(地点指定) 威力S+ 遅延+30 物理完全防御無効
    お馴染みの、風の剣聖が使うアレ、です



これから、サブストーリーを挿みながら進行していきたいです。
これからよろしくお願いします。


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