新しき<剣帝>の軌跡   作:kohac

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大変遅くなって済みませんでした!!
大学って大変なんだな、思いながら書かせていただきました。


さて、今回アンケートを集計した結果アリアンロードとの散策が多かったので
今回書かせてもらいました。
また、次に多かったフィーとトワとの散策はまた別の話で書こうと思っています!

アンケートに答えてくださった皆さんありがとうございました!!

よろしくお願いします


ただそんな平穏な一日を

明日の自由行動日をずっと寝ることに費やそう、とサラの部屋を出て自室に戻りながらそう

決意し、部屋に戻ると《ARCUS》呼び出し音が、必要最低限の家具しかない殺風景な空

間に響いた。あと小一時間ほどで、日曜日になろうとするのにーーー誰だろうと、思い《A

RCUS》を開いて通信に出ると、通信越しに少年の声が聞こえてきた。

 

 

 『もしもし、フライベア君。今、話せるかな?』

 

 

 「・・・いろいろと突っ込みたいが、どこからかけている。カンパネルラ」

 

 

 『クロスベルだよ。いや~便利だねここは、導力ネットワークが普及しているからさ、端

 末があれば帝国へも導力通信ができるからね。あ、ところでさーーーえ?話したいことが

 あるから変わって、って?仕方ないなぁ、フライベア少し待っててね~』

 

 

通信越しに伝わる、カンパネルラの笑いを堪える様子にフライベアは嫌な予感を感じた。そ

の予感は見事に当たってしまう。カンパネルラがこのように笑いを堪えているときは、必ず

と言っていいほどーーー

 

 

 『聞こえていますか?フライベア』

 

 

そう、必ずと言っていいほど、彼女ーーーアリアンロードが絡んでいる、のだと・・・

 

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 『どうかしましたか?』

 

 

 「い、いえ。何の用事ですか?アリアンロード」

 

 

 『明日、列車に乗ってトリスタに行きます。恐らく朝には着きますので迎えに来てくださ

 い。では頼みましたよ。』

 

 

フライベアに反論させる間もなく、用件だけを伝えるアリアンロードと交代するカンパネル

ラと通信を続ける。

 

 

 「これは、お前の差し金か?」

 

 

 『違うよ、帝国は彼女ーーーリアンヌ=サンドロットにとって縁の地だからさ、やはり

 気になるんじゃないかな。今と昔の景色は彼女から見れば、見る影もないくらいに変化

 しているから見てみたい、と僕はそう思うよ』

 

 

リアンヌ=サンドロットーーー今から約250年も前に起こった「獅子戦役」にて活躍した

《槍の聖女》と呼ばれるおとぎ話になるほど有名な人物。それがアリアンロードの正体、そ

んな衝撃的な事をさらっと暴露しながらも、カンパネルラは話を続ける。

 

 

 『だから、アリアンロードを頼んだよ。フライベア君』

 

 

 「はいはい分かった。なんか疲れたからもう通信切るぞ」

 

 

 『ああっと、一つ言い忘れてた。君の荷物に導力ラジオが入っていたよねえ』

 

 

 「ええっと・・・バッグの一番上にあった奴か?」

 

 

どこに置いたか、と周りを見渡すと机の上に置いてあるのを見つけ、ラジオのスイッチを入

れようとしながら、

 

 

 「というか、このラジオを入れたのお前だったよな。なんで入れたんだ?

 俺はラジオなんて聞くほうじゃないのだが」

 

 

 『明日の午後9時から、面白いラジオ番組が始まるんだよ聞いてみるといいよ。

 周波数は89.6MHzに合わせると聴けるよ。じゃあ、またね~』

 

 

フライベアを無視しながら、そう言って通信を切るカンパネルラ。フライベアは《ARCU

S》を机の上に置く。その右隣にはもう一つ、戦術オーブメントが置かれている。《ARC

US》と比べると無骨で、どこか古臭さを感じるもののーーー相当手入れされていたのだろ

う、《ARCUS》と同じくらい新品に見えるそれを取ると、両手で優しく握りしめた。

 

 

 (・・・レオンハルト師匠)

 

 

瞳を閉じると、今でもその姿が鮮明に蘇るーーー白銀を思わせる、アッシュブロンドの髪に底

なし沼の中に輝きを秘めた、深い紫の瞳。そして、剣の師匠でもあり、フライベアの父親同然

のように、17年間世話してくれた人物だ。そして、この戦術オーブメントは彼の持っていた

ものだーーー

 

 

 (ーーーどうして、死んでしまったんだよ・・・師匠)

 

 

そのまま、ベッドに倒れこみ、つうーっ、と涙を流しながらフライベアは眠りについた・・・

 

 

   -----------------

 

 

四月といえども早朝は冷え込むようだーーー日曜日、フライベアは肌寒さを覚えながら目を覚

ました。目の横にできた涙痕を水で洗い流し、外に出る準備をする。片手剣と刀を両腰に携え

いつもの赤い制服を着て、その両ポケットに二つの戦術オーブメントを入れて、第三学生寮を

出てトリスタ駅に向かう。駅舎に入りクロスベルからの列車を待つ間、帝国時報を読む。フラ

イベアはある記事が目に留まった。

 

 

 「ーーークロスベルにて、市長殺害未遂事件発生,かぁ。」

 

 

時報を読み終わると、アナウンスが入った後、金属同士が擦れあった時に聞こえる甲高い音と蒸気が排出する音が聞こえてきたので、

時報をしまい改札口の端に立つ。ぞろぞろと、たくさんの乗客が改札口を過ぎやがてその人数

が少なくなった頃、アリアンロードが出てきた。

 

 

 「お待たせしましたね、お迎えありがとうございます。」

 

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 「フライベア、大丈夫ですか?」

 

 

黒のタートルネックの上から羽織った薄地のベージュのジャケットと、上と同じ、黒のジーン

ズのアリアンロードが心配そうにこちらを見ている。いつも、鎧を着ている彼女しか見たこと

がなかったため、ギャップ萌えしてしまっていた、とはフライベアは言えなかった。

 

 

 「・・・あ、すみません。これからどうしましょうか?」

 

 

 「そうですねでは、一通りトリスタを案内願いますか?」

 

 

 「わかりました。じゃあ行きましょうか」

 

 

アリアンロードを先導してトリスタ駅から出る。出ようとした時、アリアンロードがフライベ

アの手を握ろうとして左手を出していることに、フライベアは気づくことはなかった。トリス

タ駅の扉を開くと、あの日ーーー入学式の日と変わらない、白く咲き乱れ舞い散る花びらが改

めてフライベアを、アリアンロードを出迎えたくれた。

 

 

 「ライノの花ですか、懐かしいですね」

 

 

そう言い、ライノの花を見つめ呟くアリアンロードは何かを思い出してしまったのだろう、花

を懐かしそうに見つめる中に哀しみをフライベアは感じたが、あえてなにも詮索しなかった。

二人はまず、ブックストア《ケインズ書店》へ立ち寄った。

 

 

 「(さぁてと、今晩はどの料理を作ろうかねぇ。)」

 

 

そう心で呟きながら近くにあった料理レシピ本を手に取り目を通していく。あらかた本を見終

えると、小説を立ちながら熟読しているアリアンロードのもとに行く途中である本に目が行っ

た。《赤い月のロゼ 1》という小説で、200年前の中世のエレボニア帝国を舞台に主人公

のアルフォンスが帝都で起こる「吸血鬼事件」の解決に挑む、という物語だった。暇つぶしに

でも読んでみるかと思いながら、アリアンロードが読んでいた本と《赤い月のロゼ 1》を買

って店を後にした。その後ガーデニングショップと教会を巡り終えるころには、時間帯は昼に

なったので喫茶《キルシェ》で焙煎コーヒーとクリスピーピザを注文し、外で食べていると昨

日ぶりの声ーーーリィンがやってきた。

 

 

 「やあ、フライベア。と、そちらの女性は・・・?」

 

 

まぁ、当然の反応だよなぁと思いながら、どう返事をしようかと考え込んでしまう。

 

 

 「(そのままアリアンロードの名前を出すのはちょいとリスキーかな?)」

 

 

軽く深呼吸をして、リィンすまんな、と思いながら話を進める。

 

 

 「彼女は俺の知り合いでね、アリーって言うんだ。で、アリー。こちらはリィン、リィン=

 シュバルツァー。俺のクラスメイトだ。」

 

 

いきなりアリーと呼ばれ、少し戸惑っているアリアンロードにリィンに見えないようにウィン

クをすると、フライベアの意図に気づいたのか

 

 

 「紹介に預かったアリーです。よろしくお願いしますね、リィン」

 

 

 「こちらこそお願いします。アリーさん」

 

 

互いの自己紹介も終わってリィンと雑談しながら昼食を食べ終えると、これから昼食だという

リィンと別れて再び散策を再開するためアリアンロードに声をかける。

 

 

 「四時の列車までまだ時間がありますし、もう少し散策しましょうか?アリアンロード」

 

 

振り向きながら提案するものの、さっきから無言のアリアンロードに気づき心配になり顔色を

うかがっているとリアクションが薄い彼女が不満を抱いているのがわかった。

 

 

 「ど、どうかしたんですか?」

 

 

 「・・・もう呼んでくれないのですか?」

 

 

 「へ?・・・ああ、そういうことですか」

 

 

右手で頬を優しくひっかきながらフライベアは軽く咳払いをした後、

 

 

 「それじゃあ、行きましょうか。アリー」

 

 

 「ーーーええ、行きましょう」

 

 

どことなく嬉しそうに見えるアリアンロードを連れブディック《ル・サージュ》に入る。そこ

でホワイトブラウスとピンキーヒールを見繕って購入した。その後隣にある食品・雑貨《ブラ

ンドン商店》では店内の一角で何かをひたすらに見つめているアリアンロードが気になり、

 

 

 「何かいいのあった?アリー」

 

 

待ってました、と言わんばかりにフライベアに商品を手に取り見せてくる。彼女が持っていた

ものは灰色の猫ーーーみっしぃのぬいぐるみだった。クロスベルではミシュラム ワンダーラ

ンドというテーマパークで超がつくほどの人気のキャラなのだが、エレボニア帝国でも知名度

が上がった来ているのだ。そんなみっしぃのぬいぐるみを、両手で抱きしめたまま少し潤んだ

瞳で無言でねだってくる彼女を恐らく誰ひとり見たことはないだろう。役得感を噛みしめなが

らもアリアンロードが持っているぬいぐるみを買い、アリアンロードにプレゼントし店を出る

と時刻は列車が来る頃になっていた。そのまま、トリスタ駅に行きアリアンロードを見送る。

 

 

 「それでは、またいずれ通信しますね」

 

 

 「へいへい、じゃあカンパネルラによろしく言っておいてくれ」

 

 

列車の発車ベルが鳴り響くと、名残惜しそうに乗車するアリアンロード。ドアが閉まり、クロ

スベルに向け出発する列車が、夕日の明かりに溶けるまで見送るとたまにはこんな日もあって

もいいかな、とそうフライベアは思いながら駅を出るのだった。

 

 

 




自由行動日、夕方~夜まででもう一話書こうと思っています。
話もまだ、最初ですがこれからもよろしくお願いします!!

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