ウマ娘恋愛短編集   作:あーふぁ

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気楽にできる書き方で1度やってみた小説。


15.ナリタブライアン『お前のことをどれだけ好きか知って欲しい』

 小学校の高学年の頃から俺はウマ娘と積極的にふれあってきた。

 それは親戚で10歳年下となるハヤヒデとブライアンの姉妹だ。

 ハヤヒデと出会ったのは彼女が1歳に成長してからだったが、ブライアンが生まれた時はすぐ見ることができたから今でもつやつやした黒髪を持つかわいい赤ちゃんの時の純粋無垢な笑顔を思い出せる。

 そんな彼女たちと一緒の時間を過ごしたのは8年間。

 中学高校と同じ地元で家が4軒隣のため、彼女たち姉妹の世話や遊び、地元のレース教室に応援へ行くというような親密な関係だった。

 幼い彼女たちも年上な男の俺をよく慕ってくれた。特にブライアンにはすごく気に入られていた。

 

 その理由としてはブライアンだけをよく甘やかしていたからだと思う。彼女の親や姉のビワハヤヒデは、無愛想さで周囲に敵を作ることが多く、野菜嫌いなブライアンに説教をよくしていた。

 そのブライアンは嫌な空間から逃げる時は決まって俺の元へとやってきた。学校や部活で遅くなった時は俺のベッドに潜り込んで寝ながら待ってくれるほどに。

 そういうかわいい姿を0歳の頃から見続けると、本当の妹みたいに思える。

 幼稚園の時はブライアンの母親の代わりに幼稚園へ向かいに行き、小学校で運動会があるときは高校を休んで応援に行くぐらいに大事にする。

 ブライアンが小学生になってからは、ませた言葉を言うようになった。「お嫁さんになるから、私が大人になるまで待っていて」という微笑ましいのや、腕や腰に抱き着きながら「好き、好き、好き!」という言葉を言い続けるのが。

 でもこういうのは思春期と共になくなるんだろうなぁと寂しい思いがある。

 妹がいる友達からは成長するとにらまれ、嫌いという言葉を平然と言ってくるとよくよく聞かされた。前もってそういうのがわかっていれば心構えができると思う。

 

 俺とブライアンの本物の兄と妹より仲がいいと言われた関係は8年間でいったん終わることになった。

 俺が18歳になると、ウマ娘の勉強をするため東京の大学へ行くからだ。

 そしてトレーナーの資格を取り、中央のトレセン学園に入った頃にはハヤヒデとブライアンのふたりが入学していて、引っ越してきた俺のアパートへよく遊びに来ていた。

 日々能力を高めていくふたりを見ながらサブトレーナーとして2年の経験を積んだあとに25歳になってから新人のトレーナーとなった。

 最初は高等部1年となったハヤヒデの担当に。翌年にはブライアンを。

 ふたりの能力が高く、自分がふさわしいのかと悩む時期もあったがそれは吹っ飛ばすことができた。

 

 ◇

 

 なんで急に昔のことを思い出したかというと、現実逃避したい放課後の今だからだ。

 6月の中頃。冷たい風を出すエアコンの音。遠くからはウマ娘たちが声をあげて走っている音だけが聞こえるトレーナー室に26歳の独身である男の俺と、16歳のブライアンとふたりきりになっているために。

 それに追加して、ソファーに座っている俺の膝の上へとまたがり、首に手を回して強く抱き着いてくるのは理性との闘いだ。

 160cmという、俺より少し身長が低いブライアンは俺の首に顔をうずめていて、制服とブラ越しに感じるバストサイズ91という大きな胸の感触に幸せを感じてしまう。

 ブライアンは興奮しているのかウマ耳がパタパタと動いて俺の耳をくすぐってくるし、ポニーテールで腰まで届く真っ黒な髪を間近で見るとさわりたくてたまらない。

 10年ほど昔もブライアンは今と同じように俺へと抱き着いてきた。その時は子供に好意を持たれるのはいいなと思っていた。

 

 だが今は違う。そう、違うんだ。

 好かれているならいいじゃないかだって? あぁ、俺もそう思ってはいたさ。トレセン学園で再会してもこういうふうに抱き着いてこなかったからな。

 だが今は違う。俺とブライアンの年齢差はちょうど10歳差。それほどの状況でこれを他の人に見られたらどう思う?

 教え子に手を出す変態扱いになるぞ!? しかも他に人がいない密室!! 

 普段はクールで一匹狼なブライアンが、これほど俺へと甘えてくるのは薬でも持ったのかと疑われることは間違いない。

 だからクビにされてしまいそうなら、ブライアンに嫌がっていることを伝えればいい。そうすれば、ブライアンも渋々ながらもどいてくれるだろう。

 だが、言い出せないわけがある。

 

 そう、気持ちいいんだ……すごく。

 抱き着いてくるブライアンの髪から甘い匂いがして、さっき思ったように胸は柔らかい。それに俺の足の上に乗っているお尻も適度な弾力があっていいし。

 そう、今日初めて気づいたんだがウマ娘の鍛えられた筋肉でもお尻は柔らかい!

 今まではガチガチに固いと思っていた。それがどうだ? ヒップサイズ85の大きさがあり、この適度な弾力と重みが最高にいいんだ!!

 恋人が一度もできなかった俺にこの刺激は辛い。

 そんな女に慣れていない俺が、なんでブライアンのバストとヒップのサイズを知っているか疑問に思う人かもしれない。

 トレーナーだからそんな数字は把握していて当たり前だって?

 ハヤヒデの担当もしているが、細かい数字は知らない。

 ただ知っている理由なのは、身体測定のたびにブライアンが教えてくるからだ。

 俺が大学を卒業してトレセン学園に就職してから。つまりはブライアンの12歳の頃からサイズを教えられている。

 中等部1年から高等部2年の今にいたるまで。

 数字と視覚でしか理解できなかったが今はじめて感触で理解してしまっている。そう、わからされているってことだ。

 

「今日はどうしたんだ、ブライアン。今までこんなことはなかっただろう?」

 

 すぐ目の前にあるブライアンの耳へと驚かさないようにささやき声で言うも、体を細かく震わせてくるだけで何も返事はしてこない。

 いったい何があったのかと首元にかかるブライアンの吐息にくすぐったさを感じながら、理性が崩壊してしまいそうな頭で考えていく。

 練習やレースで悩むならすぐに言う。姉であるハヤヒデとケンカしたら雰囲気ですぐにわかる。でもこの状態はそのどちらでもない。

 いったい何が原因なんだ、と悩んでいるとブライアンが口を開く気配がした。

 

「今日、昼間に中庭で女と話をしていただろ」

「女? 女……あぁ、あれを見ていたんだ。彼女はダイワスカーレットって言って、普通に雑談していただけ。蹄鉄の材質や重さはどう使い分けたらどうかというのをね」

「それにしては楽しそうだったじゃないか。私は校舎の中にいたから声までは聞こえなかったが。笑顔で両手を握られて嬉しそうにしていただろ?」

「あれは喜んでもらえたから。俺の話が役に立ったなら喜ぶのは普通だと思うけど。新しく担当契約を結ぶというわけじゃない」

「お前と仲のいい女たちは全員知っていると思ったが、知らなかった。私の知らないところで知らない女に会うのは私の心がざわつく」

「心配することじゃないし、ダイワスカーレットと知り合ってまだ2か月しか経っていないけど」

「2か月というのは入学式が終わってすぐのようなものだろ。あれは女の顔だった。お前を見つめる目が違った」

 

 低くいらだった声でそう言い、ブライアンは僕の首筋から顔を離して俺を正面から見上げてくる。

 まっすぐに俺を見つめてくる顔。上目遣いになっているから、普段のかっこよさにプラスしてかわいさがある。

 くっそ、なんなんだよ。この美人さんはさぁ!? 昔はかわいい妹と思っていたのに、今はごく普通の素敵でかっこいい美人なんだけど。

 これにもう一押しあれば惚れるところだった。実に危ない。

 ブライアンは俺に恋愛感情を持っているのとは違うと思う。これはブラコンだ。大好きな兄が、自分の知らない女と話をしているのを嫌がっているだけだ。

 俺に対して兄という感情しか持たないブライアンに恋愛感情を持つのはよくない。

 いや、持ってもいいが持つ時はそれは18歳を過ぎてからにしよう。成人になった年齢なら、歳の差があっても世間からあまり文句は言わないだろうし。

 そう考えがつき、深呼吸してからブライアンの質問に答える。

 

「それは憧れとかじゃあないか? 多くのウマ娘はトレーナーと契約を結ぶのが難しいし。それに彼女は中等部1年で13歳も離れている。そんな年上に恋愛感情なんか持つわけがないさ」

「年齢差があると恋愛感情を持たないものなのか?」

「そうだと思うよ。恋愛に年齢差は関係ないと言うけど、多くの人は年齢が近い人を選ぶし、年齢差が離れていると話題に困ると思う」

「だが、私はお前のことが恋愛対象として好きだぞ?」

 

 首を傾げて不思議そうに恥ずかしがらずにまっすぐ言うブライアン。その純粋な感情が俺にはまぶしく、顔をそむけてしまう。

 そのまっすぐな告白にもう嬉しいと思う気持ちと同時に、はずかしさと緊張で心臓が激しく動く。

 

「その、ええと、初めての告白だっけか?」

「昔は何度も好きだと言って告白していただろ。それと結婚の約束もした」

 

 結婚の約束は子供の頃にしたもので成長したら忘れると思っていた。でも昔からずっとブライアンは俺のことを好きだった。

 俺はというと、そういう約束は忘れていた。2週間ぐらい前にハヤヒデから「ブライアンは結婚の約束を今でも覚えている」と言われるまで。

 

「私はお前以外の男なんて興味がないんだ。お前さえいてくれれば私はそれでいい」

 

 やばい。

 すごく、やばい。

 こんな告白をされると落ちてしまう。いや、もう落ちたも同然だが、わずかな理性が未成年と付き合うのは待てと思いとどまる。

 ハヤヒデ助けて。なんで今日だけ来るのが遅いんだ。早く来ないと俺はお前の妹と付き合ってしまうぞ!? ダイワスカーレットでもいい!

 時間稼ぎをしようと、何か話題があるか考え、気になっていたことを聞くことにした。

 

「告白って雰囲気がいいときにやると思ったんだけど」

 

 そう言うとブライアンは俺から目をそらし、今日初めてはずかしそうに頬を赤く染めた。

 美形女子なブライアンが、そんなことをするとギャップ差でかわいくてたまらない。

 

「……お前が取られそうだと思ったからだ」

「俺が?」

「そうだ。お前があの赤毛のツインテールと楽しく話をしているのを見て、心の中がもやもやした。だから告白した」

 

 嫉妬する姿なんてのは珍しく、いつもクールで何事にも気にしないで生きているものだから嬉しい。それほどに俺が大好きなんだと。

 ブライアンは俺の体を両手で抱きしめて俺の首筋へ顔を寄せてくると、耳へと優しくささやいてくる。 

 

「好きだ。昔からずっと愛している。今日はずっとお前のことだけを考えていた。大好きだ。私を大事にし、優しくしてくれるお前のことが。姉貴と同じくらいに大好きだ」

 

 俺の声にならない、嬉しさと恥ずかしさが混じった感情。かわいい妹としか思えなかった気持ちが急激に変わってしまっている。

 俺も好きだと言いたいが、それだと流れに乗っただけで嫌だ。

 きちんと自分の気持ちを整理し、ブライアンの好きなところをはっきりと言えるようになったら告白をしたい。

 そのことを今は言葉に出せないが、代わりに髪を撫でることで許して欲しい。自分の心に従うなら、思い切り抱きしめたくなるがそうしたら

 そう思いながら髪を撫でると、ブライアンは満足したような甘い声を出す。

 ブライアンにささやかれながら髪を優しく撫で続ける。そんなことをハヤヒデが練習に来るまでずっとしていた。

 理性がなくなってキスをしないように我慢しながら。

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