ウマ娘恋愛短編集   作:あーふぁ

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27.アドマイヤベガ『アヤベのおっぱいホットアイマスク』

 仕事というものは時間が空いたときに追加でやるものだ。

 僕はそう思っているが、もし誰かがそれを知ったらワーカーホリックやトレセン学園はブラックなのかと聞いてくる人が多いと思う。

 ウマ娘が好きすぎて仕事をするほどに充実感を得られるタイプの人間なら、同じ思考になるに違いない。

 そんな考えのもと、僕はウマ娘たちがテスト期間で練習をしない時期に自分から仕事を増やしていく。

 

 春の5月。

 新緑が芽吹き、生命の力強さを感じる季節。

 試験が終わり、放課後なのにウマ娘たちの声が少ない今は仕事に集中しやすくて実にいい。

 担当ウマ娘が3人いて、どの子もG1を勝ってくれているトレーナーの今日から新しい商品企画の資料を眺めていた。

 レースを走るウマ娘の多くが同じような商品ラインナップだけれど、ウマ娘によっては変わった商品を作ることもある。

 オペラオーの等身大彫像、メイショウドトウがデザインしたタヌキのぬいぐるみ等が。

 こういうウマ娘独自の色があるものを考えるのは実に楽しい。

 

 ここ数日は徹夜で入学した子たちの誰をスカウトしようかと繰り返し資料を見続けていたせいか、目に隈ができて体には疲労が溜まっている。

 だけど、ウマ娘のことを考えるだけでそんなことは気にならない。元気があるなら、次の新しい仕事をやらないと!

 まぁ、こういう無理をするのは20代である今だけだと思うけど。

 

 我ながら仕事に人生を捧げていると強く実感する。仕事が恋人である今は、仕事をしている時間が最高に楽しい。

 そういうことを思いながらトレーナー室でスーツを着て仕事をしていると、ドアにノックの音が響く。

 

「開いてるよ」

「お邪魔するわ」

 

 椅子に座り、机でノートにアイディアを書いていた僕がドアへ顔を向けて声を出すと、高等部1年のアドマイヤベガが部屋へと入ってきた。

 長袖制服姿の彼女は僕が仕事をしていた様子を見ると、一瞬だけ眉をひそめた。

 首筋の位置にある、いつものローポニーな髪型。右耳にだけしている青い耳カバーが特徴的でふわふわな物がすごく大好きな子。

 そんな彼女、周囲に合わせてアヤベと呼んでいる子は僕の担当ウマ娘だ。

 

「何か用があったかい?」

「あなたのことだから、仕事をやりすぎていると思って。目にくっきりとした隈があるじゃない」

 

 物静かでどこか憂いを帯びているアヤベは、聞いていて落ち着く声で不満げに僕へと声をかけてくれる。

 スカウトした頃は僕のことを気にせずになんでも1人でやろうとする彼女に戸惑いながらも、嫌われない程度に声や練習メニューの提案を続けていた。

 その甲斐があってか、今ではこういうふうに心配してくれることがある。

 

「ストレス溜めて仕事はしていないさ」

「ウマ娘が好きすぎるあなたにそんな心配はしていないわ。ただ、倒られたら私が困るから」

 

 僕に近づいてきたアヤベは、僕の顔を両手で押さえつけるときつくにらんでくる。

 そうして10秒ほど経ってから手を離すと、ひどく大きなため息をついてはトレーナー室に敷いてある畳へと向かう。

 洋室であるにも関わらず畳があるのは、歌舞伎好きなウマ娘の子が『和室成分が欲しい!』と言ったから導入したもの。

 2畳ほど置いてあるところに靴を脱いで上がると、アヤベは正座をして座った。

 

「ほら、こっちに来て」

「何が『ほら』なんだ。僕は仕事があるんだけど」

「あなたに休んで欲しいだけよ。仕事をしすぎて死んだ、なんてことがあったら夢見が悪いわ」

 

 そう言いながら、無表情ながらも尻尾と耳がゆらゆらと動いてそわそわしているアヤベは、自身の太ももをぱしぱしと叩いてこっちへ来いと伝えてくる。

 なんで太ももなんだろう。僕がそこでアヤベのむちむちとした太ももを枕にして寝ろと?

 僕とアヤベはトレーナーと担当ウマ娘ではあるけど、恋人関係ではない。

 だというのに、僕を休ませようとしているのはそれほどひどく見えるからだろう。

 男として膝枕というのは魅力的で憧れるけど、1度やってしまうとこれからの関係が変になりるかもしれない。

 そう、だからこそ非常に魅力的ながら断るしかない。

 

 仕事を続けたいから断ろうと口を開きかけたけど、アヤベの耳や尻尾が急に怒りを表現し始めて断りづらくなった。

 無理に続けるよりもアヤベがいるあいだだけ休憩をして、そのあとに仕事をすればいいか。

 僕は仕事を切り上げる決心をすると、アヤベのいる畳の上へと向かう。

 靴を脱いでアヤベと向かい合い、けれど1人分の距離を取った状態であぐらをして座ると、にらまれてしまう。

 

「それは膝枕しにくいんだけど?」

「女性に慣れていない身としてはどうすれば正解かわからなくて」

「別に恥ずかしがらなくても。私だって恥ずかしいけど、男の人は女性の膝枕にあこがれるって聞いたから」

「それは誰から?」

「カレンよ。ウマスタで知識を得ているのか、意外と男性の気持ちを理解しているの。ほら、こんな機会は2度とないから私の太ももで寝なさい」

 

 目をそらしながら少し頬を赤くし、かわいいことを言うアヤベ。

 その様子が普段の落ち着いた雰囲気とは違い、珍しい姿につい笑みを浮かべてしまう。

 僕が高校生だったら、すっごい挙動不審になるところだけれど大人の男としては大丈夫だ。

 もっとも28年も生きていながら、女性に膝枕をしてもらったのなんて親以外ないけれど。

 内心はわくわくと緊張が入り混じっているけど、表面だけは冷静になれていると思う。

 1度深呼吸して心の安定度を高めてから「わかったよ」と返事をしてから膝へ横向きで頭を預けようとしたものの、そうなる途中で僕の動きは両手で力強く止められた。

 

「……アヤベ?」

「えっと、その。縦向きになってくれない?」

「膝枕って横向きだと思うんだけど」

「オペラオーが男性を癒す、とっておきの方法を教えてくれたから、それをやってあげたくて」

「へぇ。そんなのがあるんだ。じゃあお願いするよ」

 

 縦向きの膝枕でどうやって癒してくれるのかが気になり、僕はアヤベの言うとおりに体を倒して頭を預けた。

 普通の膝枕と違い、正座したふたつの太ももの間に頭を置くのは初めてだから、すごくドキドキする。

 練習で鍛えられた太ももは固く筋肉質だ。でも女性だからなのか、それでも柔らかさを後頭部に感じる。

 それだけでも新鮮で未知の感触に驚いた気持ちになるけど、それよりももっと驚いたことがある。

 

 ――おっぱいだ。

 そう、おっぱいである。

 目の前には男が心の底から求めてやまないおっぱいが!!

 

 ただでさえ希少価値がある女子高生の胸で、愛すべき担当ウマ娘アドマイヤベガの胸がすぐ近くに!

 アヤベはこちらを無表情、いや、ちょっとだけ恥ずかしげに僕を見てくる。

 でも胸が大きいせいで、顔よりも胸のほうが見える範囲が大きい。具体的に言うなら視界の半分がおっぱいになっている。

 誰かのおっぱいを下から見るなんてことは初めてで、こんな近距離で見るなんてとてつもなくドキドキする。

 僕が太ももの上に頭を置いた位置を調整しようと身じろぎをした時に、少しとはいえ揺れるおっぱいから目を離せない。擬音で言うのなら『たゆん』というような。

 

 ……男ってのはなんで揺れるおっぱいってこれほど集中して見てしまうんだろう。

 練習の時も揺れるのをつい見てしまい、からかわれることがあるし。

 その時は距離があるし、きちんと意識の区別をつけているから興奮なんて滅多にしないけれど。

 

 だけど、これは別だ。至近距離で気を遣わなくてもいい今この瞬間。

 今だけは自分の欲望に正直になってしまっていいんじゃないだろうか。

 いや、だからといってちょっとは落ち着かないと。

 ウマ娘が追い込むペースのごとく段々と興奮していく気持ちを抑えるために、目の前の素晴らしい景色よりも後頭部に感じる素敵な感触に意識を集中しよう。

 

 トレセン学園指定の白いニーソックスと生足の感触。

 何かに例えるなら、低反発枕のような。それでいて温かく、幸せな気分になれる。

 他の物に代用はできない、G1ウマ娘の膝枕というのは。

 そもそも男というのは女性の体を見るだけで心の疲労は回復するもので、おまけにこれほどおっぱいが近いとその回復力は通常よりもはるかに高い。

 ずっと仕事をしてきたせいで疲労がたまっていたからか、おっぱいを見て膝枕をされていると意識がぼうっとしてくる。

 ふわふたとなっている意識と視界の隙間で大きいおっぱい越しにアヤベの顔が優しく微笑むのが見えた。

 珍しいものを見た。

 別におっぱいの向こう側に人の顔が見えるということではない。それも珍しいけど、アヤベが優しく微笑むのなんて前に見たのは一か月ほど前だと思う。

 アヤベは自分にも僕にも厳しいから。

 

「私の足はどうかしら?」

「よく鍛えられているよ」

「……他に言うことは?」

「いや、何も」

 

 アヤベの体から感じる香りや、おっぱいが見える景色がいいだなんて素直に言うと怒られて契約解消すらありうるので黙っておく。

 こうして僕の体を心配してくれるだけでとても嬉しい。

 僕的にはこれで満足しているけど、アヤベは不満らしい。

 褒め方によっては僕が危ないから、これ以上はやりたくないんだけど?

 それでも問題ない褒め方について悩んでいると、アヤベが何度も大きな呼吸をし、深刻そうな顔をしている。

 僕が知らない間に失礼なことをしたかな、と悩み始めたときにアヤベは服を脱いだ。

 

 そう、トレセン学園指定である制服の上をだ。

 あまりの出来事に思考が追い付かず、僕目の前で教え子のストリップを呆然と眺めるしかなかった。

 そもそも、アヤベが服を脱いで何をしたいかがまったくわからない。

 

 制服を畳の上に置く音がやけに響いて聞こえ、ブラひとつの姿になったアヤベは顔をすごく赤くしている。

 ブラは黒のレースやデザインが複雑についたおしゃれなものだった。ウマ娘たちは普段スポブラを常用しているから、こういうのもつけるんだなと新しい知識を得たことが嬉しい。

 いや、違う、そうじゃない。

 見るべきはミルクのような肌の白さだ。普段はジャージや勝負服の下に隠れている肌なんて見ることがないから、こうも白く繊細で綺麗な肌をしていたのかと驚く。

 そういうことを考えるよりもなんでこんなことをしたんだ、アヤベは!?

 僕の理性がなかったら胸を揉んでいたかもしれないぞ!?

 ……でも女性経験がなくて臆病なものだから、触る気なんて起きないけど。

 

「あの、アヤベ?」

「目をつむって。早く」

 

 体をかがめたことによって近づいたアヤベは僕に何も言わせないまま緊張した声で指示してくるので、急いで目を閉じる。

 すると温かく柔らかいものが両目の上へと置かれた。

 ブラの質感があるけれど、それ以上に驚くものがある。

 ブラの感触の向こう側、おっぱいのやわらかさだ! ブラ越しでもマシュマロのようなモチモチフワフワ感触! ブラがなかったら、もっといい肌触りなんだろうけど、それを要求したら僕はダメな大人になってしまう。

 その感情を必死で抑えつつ、静かにおっぱいの感触と温かさを楽しんでいると 汗の匂いはそれほどなくアヤベの体臭がする。

 それがボディソープなのかはわからないけど、安心する香りだ。

 

「あー、これはいったい?」

「何も喋らないで。動かないで。疲れた人にはこういうやり方がいいって言われて」

「これ、なんて言うやり方?」

「ホットアイマスクだけど。……その、胸でやるから、おっぱいホットアイマスクって言うそうよ。私の胸はサイズが85だから、目を包み込むには充分な大きさだと思うわ。

 本物のホットアイマスクは温度が40度。ウマ娘の体温は37度から38度だから少しだけ低くはあるけど」

 

 早口でそう言うアヤベ。

 心の中でオペラオーのことをたくさん褒める。今度会った時に、君は世界で一番だと大声で褒めておこう。

 だってアヤベがこういうことをしてくれるのが嬉しく、おっぱいの感触が味わえてよかった。と、いうことだけじゃなくてアヤベがこういうふうに気遣ってくれるのが嬉しかったから。

 いつもは言葉だけでそっけなく、やってくれても栄養ドリンクを机の上に置くだけだったのがこうも変わってくれるなんて。

 

 じんわりと目の奥深くまで浸透していくような温度。

 連日酷使していた目の疲れが癒されていくようだ。

 実際に温めることで血行がよくなるけど、誰かにしてもらうというのは精神面でとてもいいと理解する。

 ただ、こんな姿を誰かに見られたら変態どころではないけど。

 

「それで、どうかしら」

「いいものだね。今日にでもホットアイマスクを買ってくるよ」

 

 胸の感触と匂い、アヤベがこうしてくれる嬉しさを言葉に出さず、ホットアイマスクとしての感想を言う。

 素直に感じたままに、アヤベのおっぱいは最高だなんて言ったものなら、引いた目で見られるに違いない。

 普段ならそれでも耐えられるけど、こうして癒されている時にそうされたら僕の心は崩壊してしまう。

 

「そうじゃなくて……。私の胸はあなたにとっていいものかしら」

「アヤベに優しくしてもらえるのは嬉しい。幸せだよ、とても」

「そう。それなら私も恥ずかしいのを我慢した甲斐があったわ」

 

 部分的に今の気持ちを伝えると、アヤベの尻尾がぶんぶんと風を切る音が聞こえ、嬉しさと恥ずかしさと落ち着かない気分だというのがわかる。

 よかった、素直に受け入れて。無理に断ったら、ここまで覚悟を決めたアヤベの好意を拒否するひどい男になるところだった。

 

「けど、どうしてこんなことを? あ、嫌とか怒っているわけじゃないけど」

「頑張ってくれているあなたのために何かしたいと悩んでいたら、カレンさんが男の人にこうやれば喜ぶと聞いたから」

「ありがとう、アヤベ。仕事を頑張れるよ」

「頑張りすぎはよくないと思うの。私や他の子にもできる仕事なら任せてくれてもいいし」

「僕が好きでやっていることだからなぁ。趣味と仕事を一緒にやっているし」

「趣味も仕事……。それで息抜きできるの?」

「おいしいご飯を食べればやれるさ」

 

 それにこのおっぱいがあるなら、いくらだって頑張れる。

 頑張れるが、今は脳が働くことを拒否している。

 おっぱいに目が包まれる幸せを受け取っていたいと。

 それから僕とアヤベはお互い何も言わず、静かな時間を過ごしていく。

 

 聞こえるのはお互いの息遣いと、時々動く尻尾が畳をこする音だけ。

 目が温かくなり、アヤベがそばにいる安心感から段々と眠くなってきた。

 こんなに素晴らしいことをしてもらっておいて寝るのは失礼と思いながらも、徹夜でやっていた仕事の疲労が一気にやってきている。

 

「少し寝てもいいかな」

「30分後に起こせばいいかしら」

「ああ。お願いするよ」

 

 そう言った僕は起きる意思をなくし、おっぱいホットアイマスクをしてもらったまま意識を落としていく。

 そして眠りに落ちる瞬間、ほっぺたを優しく撫でてくれる手を感じた。

 アヤベとさらに仲良くなれて嬉しいと思いつつ、僕は彼女の香りとアヤベの膝、そして素晴らしいおっぱいに包まれながら夢の世界へと旅立った。

おっぱいに求めるものはなんですか?

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