あなた方は経験したことがありますか。自分の安泰だと思っていた人生が音もなく忍び寄って来た何者かによって音をたてて崩れていく感覚を。大抵の人は経験したことがないでしょうね。
私にとってそれは辛いものでした。何故なら私の両親と友人が私の世界でしたから。それらが全て取り崩されたんです。それも私の目の前でです。私の体は両親の友人によって体は救われましたが心は救われませんでした。
夢に見るんです。子供が遊びのにピッタリなが明るい日ざしが差し、私にとって好ましい人形二つが住む家に居てそこで私は暮らしています。ある時家の中心からぽっかり穴が開いてそのまま落ちていくんです。そして気が付いたら人形達はいつの間にか原型を留めないほどにボロボロになっていて内臓物が飛び出ているんです。何故綿ではなく内臓物と言ったかというと作り物とは思えないような赤色でそれは染められていたからです。そしてそのまま時間が流れて底まで落ちるとそこは暗い洞窟の中でした。暗いのでとても歩きにくいです。ですが、少しだけ明るく光る列車を見つけたので私はそれにすがるように列車に向かって歩いていきます。そして列車に乗ると列車は一人でに動き出します。その列車の中には人っ子一人いません。列車は少しだけ明るいだけなので目の前の領域しか見えません。なのに十分程時間が経つとユラユラ揺れている炎が遠い場所に現れます。私はそれを見た途端に魅入られ、窓をがんがん殴って壊してその場所へ行こうとしてやがて夢は覚めるんです。
私は幼い子供です。今も昔も。幼い頃に受けた心の傷は鮮明に残ります。その傷によってでしょうか、私は両親の友人と日々を生き抜いていくために他者を蹴落としていて、そのことで罪悪感を感じていたんですが、いつしか自分さえ良ければと思うようになりました。君は弱かったからそれだけの余裕がなかったと言われてしまえばそれもあると頷いてしまうかもしれませんけど。そうやって生活してどれぐらい時が流れたでしょうか、ある時私はある種族が写った写真に目を釘付けにされました。艦娘が写った写真です。とてもカッコいいと感じました。海の上に立って敵と戦っている写真に写るその艦娘は私と同じ髪色をしていて、私にはない強さを持っていました。憧れになりました。そして愚かにもその頃の私と艦娘を比べてしまいました。何もかも私とは違いました。片やその強さをもって顔も分からぬ誰かと、自分の仲間を守り続けて生きる者。片やその弱さをもって自分のためにしか生きようとしない者。対照的でした。宮殿に飼われてある鷹と下水道を這いずり回るネズミのように対照的でした。だからこそ惹かれたのです。人は自分にない物を求めるというではないですか。ですから私は何時しか艦娘のようになりたいと思うようになりました。
また時がたった時、艦娘になるチャンスが降って湧いてきました。私はようやっと憧れの存在になれると思っていました。ですが妖精さんの指摘によって本当は何を求めているのか分からなくなってしまいました。私は私が何故艦娘に憧れたのか根本的なところを理解していなかったからです。だから咄嗟に言った言葉が私が艦娘になりたい方便になってしまいました。というより私はもしかしたらその時は信じたかったのかもしれません。艦娘の強さだけに惹かれたのではないと、その心に惹かれたのだと。
私は施術中ずっと私が艦娘になりたい理由を考えていました。ですが私が艦娘になりたい理由を思考回路という網をもって捕まえようとしてもそれは煙のように最初からなかったように網をかいくぐっていきます。私がそうして理由を捕えようとしている間に自分の意識が他の誰かと融合していくような感覚を覚えました。なんとなく変な感じでした。
施術が終わった後、艤装を付けて海へ行くことになりました。なんでも私が艦娘としての機能を有している確認したかったということです。そして実際に艤装を付けて海へと行きました。準備中は私は憧れの存在になったかもしれないと思ってウキウキしていました。もうこれ以上、自分の弱さに苛まれることもないと本当にそう思っていました。艤装をつけながら私にとって幸せな未来のことを考えていた私は、今思えばとても滑稽でした。
私の準備が済んだ後、実際に海に浮けるかどうかの実験を開始しました。結果はさっき言った事から察せるでしょう。浮けませんでした。浮けなかった私は一瞬頭が動かなくなりました。たくさんの何故が私の頭を埋め尽くして、処理能力を低下させたからです。ですが、私の心はその瞬間察しました。私は不知火を見ていたのではなかったのです。不知火を見ていたのです。
「チッ」
シラヌイは舌打ちしながら起き上がった。
「あ、起きた。」
「サンビタ、今日何日?」
「6月28日だね・・・ああ、成る程。夢を見たんだね。どっちの夢だった?人間、艦娘?」
「人間よ、ああ全く。今、沿岸沿いに走ってるのね。」
「何で分かった?」
「感、だといいけど。艦娘か人間かどちらの私かは知らないけど海に執着があるのかもしれないわね。」
「・・・・私はあえて祝わないよ。」
「助かるわ。結局のところ今ここに居る私は不知火じゃないから。」
「・・・・。」
「うん?起きたか。珍しいなお前が一人でに目覚めるとは。」
コヘレトは少し驚いたような声を出した。
「全てが始まった時のことが夢に出てきた。あの後、シラヌイは問題行動ばかり起こして結局解体命令が下された。私は自信を無くして今でも武器に触れていない・・・・本当に悪いね、コヘレト。」
「別に構わん、俺は人間社会がこうなる前から嫌だったんだからな。武器の整備をしてれば世捨て人のように暮らせるなら本望だ。気分転換に一つ話をしてやろう。」
そうするとコヘレトは30秒ほど時間をおいて話し始めた。
「まだ人間社会がマシだったころの話だ。世界では海のゴミが問題になっててな、想像しづらいか。まあそれでゴミ貯めみたいな海で泳ぐガキどもの姿が撮られた写真もあったもんだ。死んでるだろうな、アイツら。それで今の時代、奇妙な奴はいるもんで魔術と衛星を活用してゴミの総量を計ったらしい。そしたらなんと海ごみは遥かに減っていたんだと。俺たちは本来群れる生物で一緒に知恵を絞って色々な問題の解決を試みる。だが考える奴らの頭数が減ってから問題が解決された。皮肉だとは思わないか?」
「・・そうだね。」
「・・・や、すまないな。気を悪くしてしまったか。俺的にはいい話だと思ったんだが。」
そうコヘレトが言っていると遠くから煙が見え始めた。
「もうそろそろで時間か、連絡入れないとな。」
7月5日までお休みします。7月14日以降に投稿できそうです。それまではここはお休みです。