明るく照らされた整備室の中、一人の男が椅子に座って机の上で武器の調整をしていた。
その武器はグローブのような物ので指の先端に長いかぎ爪が取り付けてあった。
突然テレレッテレーという効果音が明るい整備室の机の上で鳴った。これは男のbgm代わりに聞いている動画の効果音である。
「はい、どうもこんばんは~商と、」
「シャイ兄と」
「青葉ですっ!」
男二人と艦娘一人の声が響く。
男の道具をいじるカチャカチャという音と動画から出てくる音以外には何一つ音は聞こえなかった。
「今日もこの時間がやってきました!武器レビューの時間です。」
商が愛想笑いをしながらそう言った。
「今回はSP社とAS社、その他幾つかの企業が新商品を開発されましたよね。」
「ああ、そうだな。どれも癖があるヤツばかりだがな。」
シャイ兄は気だるげな声で続いた。
「まずは、SP社からです。SP社は銃器で有名ですね、しばらく音沙汰がなかったですがこの商品を作るためだったのでしょう。そんなSP社が苦労して作り上げたのがこちら!」
商がそう言うと青葉がマシンガンを取り出した。そのマシンガンは形はある一点を除けばどこにでもありそうなマシンガンだった。
「このマシンガン普通の物に見えますけど全体的に大型化してないですか?」
「ああ、大型化している。だが大型化しているのには理由がある。」
「えーっ!その理由とは?」
「魔術を採用しているからですよ、この魔術のお陰で安全装置の解除を所有者の脳波を感じてやってくれるのと、いざっていう時にジャムるときあるよね、それを防いでくれるっていうことさ。」
商が得意げに言う。
「それは銃初心者にはいい感じっていうことですよね。」
「いや、そいつはそいつで問題がある。」
「へー、その問題とは?シャイ兄。」
「その魔術のメンテナンスを定期的にしないといけないことだ。」
動画の中のシャイ兄と名乗る者が言うとトントンと戸が叩かれた。
「コヘレト、入るよ~。」
「サンビタか、いいぞ。」
ガチャリという音がした後、若い女が一人入って来た。
その女はこのような容姿だった。
全体的にスラリとした体に若干幼く見える顔、白い短髪に紫色の目をしていた。肌色は真っ白だった。
そのなかでも印象的なのはやはり目だろう。その目の光は牢獄から漏れ出る光のように弱々しく抑圧された光だった。その目の光と紫色が不釣り合いでまるで他の生物の目を合成して作ったような目だった。
肌が白いのと眼の異常さからこの世のものでない幽霊や、フィクションから出てきた人物かのような印象であった。
「相変わらず几帳面だね。」
「俺が徹夜したことにはもう突っ込まんのだな。」
そう言うとコヘレトと呼ばれた者は振り返った。
コヘレトは平均的な30代くらいの男で目は充血していた。自分の体に興味を示さない者の特有の不衛生があり、髪は伸びてボーボーで不精髭が生え、服は作業着だが何日も着込んでいたようで汚れと臭いがひどかった。また彼も目には特徴があった。光を宿していないのだ。その目からは厭世と虚無が窺がえた。
「私が言っても聞かないじゃん。」
「俺はな、申し訳ないんだよ。お前達を戦場に送って俺はその報酬の分け前を得るということがな。」
「それで器具の整備を3徹してまでする必要はないと思うけど。それにここはコヘレトが居るから成り立つんだし。」
「だからと言ってそれが調整しない理由にはならん、お前たちの仕事は特にいつあるか分からんのだからな。今まで一緒にいた奴が明日にはいないとか夢見が悪くなる、特に自分ができる範囲のことであるならばな。」
「分かったよ。でもせめて体を洗ってくれない?」
「少し待ってくれ・・・これでいい。」
そう言うとコヘレトは少し武器を弄ったあと器具と整備していた武器を置いた。
「この武器の調整が済んだ、今度こそ手に馴染むはずだから時間がある時に着けてくれ、それじゃ。」
「ちゃんと洗ってよ。」
分かっている、とコヘレトは言うとそのまま体を洗いに行った。
「それにしても」
彼女は感心したように部屋を見回した。
「よく整理整頓してるな。」
この部屋は魔術関連の器具や装備、科学系の器具が一緒くたにこの部屋に収められていた。完全に魔術用と化学兵器用で別れていた。ドアから見て右側からはどこの言葉かも分からない背表紙でギチギチになった本棚にそのすぐ横には机があった。コヘレトはさっきまでこの机で作業をしていた。壁には狼を模したフードの付いたレインコートが立てかけられてあった。これは彼女の武器である。フードの部分には狼の顔のデザインがされており、そのレインコートは青色だった。コヘレトが調整していた装備はこれの一部分である。
左側には主に銃器を整備するための工具箱が規則正しく置いてあった、わざわざどういった物が入っているかを示す紙を張り付けられてあった。壁には銃器が立てかけられてあり、それは手入れがよく行き届いていた。
こういった化学兵器はサンビタは使わないが、彼女の相棒が使うもので、相棒の商売道具であり生命線でもあるその武器を新鮮な気持ちで見た。
コヘレトは徹夜することが多いわりには全て彼自身で整理整頓、手伝いが来るときもあるがほとんど彼がこの部屋を片付けている。それ故に彼女は感心していた。
「本当によくやるよ。」
そうすると玄関からガチャリという音が聞こえてきた。
「!行かなきゃ。」
サンビタは目にも止まらぬ速度で一気に玄関まで走り出した。
彼女にとって唯一無二の相棒が帰って来た事を直感で理解したのだ。サンビタが親元を離れて旅に出る時から一緒だった親友。彼女の親類の者は数えるほどしかいない。そしてその親しい親類の元から離れていた時に共に居た存在がどれだけの重さを持つか理解できるだろう。
彼女がたどり着いたときにはピンク色の髪をしたポニーテールの少女が居た。サンビタとは対照的な目をしていた。特に眼光は異様にギラギラして少女が放つものとは到底思えないものである。その目の光は自分の欲望のままに生きるこの世の獣に似ていた。そして同時にその目の光は生気に満ち溢れたものであった。
「お帰り、シラヌイ。」
ある一人の艦娘とほぼ似た者がそこには居た。