イリスちゃんは知りたい   作:ロザミア

1 / 13
やりたいから書いた。
後悔はしてない。反省もしない。
寧ろスッとしている。


教会連続ノック

ゴポリ、と音がした。

水、のようなもの。

■は目を覚ます。板のような物に囲まれ、水の中で浮かぶ■。

……出たい。

窮屈だ、狭い。ここが何処か、■が誰かも分からない。

 

ふと、何かがこちらに来る。

 

No001-IRIS

 

文字?はそう書いてあった。

……先程から、何かが口を開いて音を発している。

やはり窮屈だ。

先程から、何を言っているのか分からない。

板に阻まれては、窮屈だ。

白い何かは何処かへ去っていった。 

■のいる場所全てが暗くなる。

 

何が出来るかを考えてみる。

 

体は動く。うねうね、と水を泳ぐようにして底へ着く。

 

つんつん、と透明な板を突く。

…固いようだ。

壊せないだろうか。

 

あの手、この手で試行錯誤する。

体当たりをして見た。

■が跳ね返って終わった。

……■も固ければ、いける?

 

伸ばしたそれを固くして、透明な板へぶつける。

ぶつける。ぶつける。ぶつける。

ピシリ、と音がなる。

ぶつける。ぶつける。ぶつける。

透明な板に亀裂が走る。

ぶつける。ぶつける。ぶつける。

 

透明な板がガシャン、と音を立てて無くなった。

 

水が流れて、■も流れる。

ビチャリ、と音を立てて流された。

 

ウーウー、と騒がしい音が鳴り響く。

うるさい。

…暗い、さっさといこう。

 

うるさい中、狭い隙間を潜り、■は進む。

とにかく、暗いのは嫌だった。

先程のような明るさも嫌だった。

なので、もっと明るいのがいい。

それだけを指標に、進む。

 

進んで、進んで、進んで。

 

光が見えた。

あの白い何かはいない。

さっさと向かおう。

 

跳ねながら、■はそこを目指す。

 

そして…

 

─求めていた明るさがやって来る。

 

びゅーびゅー、と体が震えかける。

白い…地?

上を見る。

明るい何かがはるか上にある。

……取り合えず、明るいからいい。

 

跳ねながら移動する。

困った、移動がしにくい。

 

「─」

 

─?

何かが聞こえる。

その何かを知るべく跳ねて向かう。

 

…白い何かに形状は似てる何かを発見。

幾分か小さい。

…知りたい。あれは何か、知りたい。

 

■のように跳ねるのではなく、二本の棒?を動かして動いてる。

…知りたい。

 

なら、知ればいい。

 

そう思って、■はそれに接近した。

 

「えっ──」

 

ぐわっ、と伸びたそれが何かを包み込む。

■の中で、暴れている。

それは別に構わない。

 

解析、開始。

これは、何。

瞬間、様々な信号が襲い掛かってきた。

バチバチ、と揺さぶられる。

なんだ、これは。

 

これは……人間。

人。人という生命体。

棒ではなく、足。

歩くという行為。

感情、理解。形状、把握。把握した。

■は、モンスターなのだということも。

 

ここは、ゲイムギョウ界。

ルウィー…地名?

なるほど。

 

知識が、必要だ。

より知識が…必要だ。

 

人は便利。

便利なら、■もなるべきだ。

人は個体名がある。

■も要るのだろうか。

 

女の子供を解放する。

逃げ出した。

モンスターは、怖いようだ。

恐怖とは何だ。気になる。

しかし、良くないものだろう。

モンスターは倒されるもの。

困る。今倒されたら学べない。

 

…形状を変えよう。

人を理解した■なら出来る。

不定形の体を再構築していく。

先程の人間を参考に、形を変えていく。

 

趣向を、凝らしてみる。

 

薄みがかった赤い髪、白い肌。

瞳…キラキラがいい。金色。

女の子供から手に入れた情報は素晴らしい。

■は豊かになれる。

 

…小さい体なのは、参考元が小さいからだ。

 

「ぁ──あ──あう」

 

声帯、完了。視界、良好。

ああ、これはいい。

名前、名前…

No001-IRIS……

 

そうだ、それだ。

少女の名前から、今のそれのままだとまずいと判断。

 

「─イリス」

 

これにしよう。

これがいい。

名前は、イリス。

 

「─私。私は…イリス」

 

個を得た瞬間だった。

女の子供…少女が逃げた先…街のような物を発見。

服は…必要?必要。

寒い。

見様見真似で少女の服を再現する。

 

「ルウィー、あっち」

 

ルウィーと判断して、歩を進める。

転んだ。

 

「……歩く、難しい」

 

雪に埋もれる。

冷たい。これは冷たい。

理解した。

 

立ち上がって、歩き出す。

少しして、また転んだ。

…慣れるために、練習。

足に力を入れて、歩き出す。

 

…着いたのは、人間の時間でいう昼の時だった。

 

 

 

 

 

──

────

──────

 

 

 

 

 

街中を歩く。

…学ぶ、とはどうやる?

言葉を介する?

…難しい、人間は難しい。

 

何をするでもなく、トボトボと歩く。

気になりはするが、どうしたものか。

トボトボ、トボトボ。

 

……お腹、空いた。

どうやら、要らない機能まで追加してしまった。

戻すのは、面倒。

何か食べたい。

…人は、食べない。食べたら、先程のように怖がられる。

それは困る。

そうして歩いて、大きな建物を発見した。

これは、何?他の家より、大きい。

解析した時には分からなかった。

む、む…困る。

大きい、家?

 

木で出来た板を、叩いてみる。

コンコン、と音が鳴る。

…気持ちいい音。

コンコン、コンコン、コンコン。

木の板の音が気持ち良くて、何度も続ける。

 

「…何をなさっているのですか?」

 

「─?」

 

声を掛けられる。

振り向くと、水色の髪の女が立っていた。

袋のようなものを手に持っている。

…視線を木の板に戻して、コンコン、と叩く。

 

「ええ…?」

 

「気持ちいい、音」

 

「ノックがですか?」

 

「ノック?」

 

「扉を、手で叩く行為のことです」

 

「…ノック。イリス、ノック、理解した」

 

ノック、というらしい。

なるほど、これが学ぶ。

楽しい。

 

教えてくれた女はこっちへ来る。

 

「一人ですか?」

 

「イリス?」

 

「はい、イリスさんです」

 

「一人」

 

「お父さんや、お母さんは?」

 

父と母。

そういえば、父と母なんて知らない。

イリスはどうやって生まれた?

知らない…

 

「知らない、一人」

 

「…そう、ですか」

 

…?何か、暗い。

女が暗い。

教えてくれた女が暗い。

…困る。

 

「イリス、お前、知らない」

 

「ああ、そういえば。

私は西沢ミナ。このルウィーで教祖を…って言っても分かりませんよね」

 

「ミナ、教祖。イリス、理解。

イリスは、イリス」

 

「名前は、自分で?」

 

「そう、イリスがつけた」

 

「そうですか…」

 

ミナはそう言ってイリスの手を掴んだ。

 

「?」

 

「教会が保護します」

 

「保護?」

 

「一人で、親もいないのを無視することは出来ませんから」

 

「……」

 

保護。

イリスは教会に入る?

……理解。

結果的に、関わりを得れる。

素晴らしい結果。

 

「…こういう時、何て言えばいいかを知らない」

 

イリスの言葉を、ミナもまた困ったように笑っていた。

誰も分からない?

困った…困った。

 

 

 

 

 

──

───

─────

 

 

 

 

 

教会の中は、広かった。

あそこのような嫌な明るさじゃない。

これは…好き?好きという感情だろうか。

感想だろうか。分からない、けど、好き。

これは好きだ。

 

…ミナ以外にも人がいる。

何だかビクビクとしている。

何だろう?イリスじゃない、なにか?

 

「イリスさん。ここに住みませんか?」

 

「?」

 

「ここで、私達と共に生きる、ということです」

 

「生きる…?……イリス、住む」

 

生活、家。

それを手に入れるのは大事だ。

与えてくれるなら拒む理由はない。

イリスは、住む家を手に入れられる?

それはいい結果。

 

ミナは座って待っているように、と言って何処かへ行ってしまった。

座る。

待つということはすることがない、ということ。

私は待ちながら、周りを見てみる。

教会。確か、それは女神がいる場所。

子供ですら知っている知識をイリスは知らない。

女神とは何か。

女神という単語は人と違うのか?

分からない。それも知りたい。

 

「…ミナ、この子がそうなの?」

 

「はい、ブラン様。イリスさんです」

 

「…?」

 

ミナが戻ってきた。

白い…あれは確か帽子。それを被った女の子供。

茶色の髪をした子供。

…子供?何か違う。人じゃない。

 

「人間?」

 

「…開口一番に言われるのがそれなのは、どうかと思うわ」

 

「?」

 

何かおかしな事を言ったのだろうか。

人の姿をした何か。イリスと同じ。

モンスター?…違う。

 

「私はブラン。ルウィーの守護女神よ」

 

「女神」

 

「そう、女神。知らないの?」

 

「イリスは、知らない。だから知りたい。

ブランは、イリスより物知り?」

 

「そうね、子供よりは長く生きてるから、物知りね」

 

僥倖。

ブラン、女神。

知りたい存在がやって来た。

ミナと住んでいると思われる。

教祖、女神。なるほど。

 

大体理解。

 

ブランは、気だるげにイリスと接する。

 

「ミナが保護したっていうけど…それまで何をしてたの?」

 

「透明な板、水の中、イリスはそこにいた」

 

「…ミナ」

 

「はい、調査しておきます」

 

「?」

 

何か変なことを言っただろうか。

人間の言葉は難しい…

 

「イリス、住んでいい?」

 

「…まあ子供一人をそのままにするのも女神の恥よね。

騒がしくせず、ミナや私の言うことをしっかり聞くこと、いいわね?」

 

「ん、理解。イリス、騒がない」

 

「良い子ね」

 

「………」

 

頭に手を置かれて、擦られる。

 

「この行為は、何?」

 

「…撫でるっていうのよ」

 

「撫でる、理解」

 

実践してみようと思い、ブランの帽子を取って撫でてみる。

途端に、ブランの顔がムッとする。

何故?

 

「何をしてるのかしら…」

 

「ブラン、撫でる、実践」 

 

「…ミナ、教育よろしく…それと、あの子達にはまだ会わせちゃ駄目よ」

 

「ですね…」

 

「?」

 

あの子達、とは。

理解できないが、会えないということは理解した。

秘匿情報、ということだろうか?

 

考えていると、ミナが撫でてきた。

何故ミナも撫でる?

 

「色々と、教えますね」

 

「教える…うん、イリス、知りたい。

多くを、知る。」

 

「はい」

 

「…お腹空いた」

 

「なるほど、まずはご飯にしましょうね」

 

それから、色々と教わることになった。

後、食べ物の食べ方とか教わった。

手掴みは、良くないらしい。

後から知ったが、こう言う時は、お礼を言うらしい。

また一つ賢くなった。

それと、文字の勉強のためにミナに教わりながら日記をつけることにしてみた。

 

「イリスは賢いですね」

 

「イリス、賢い」

 

 

 

 

 

──

────

───────

 

 

 

 

 

イリス日記 一頁目

 

ミナにおそわって『日記』をつける。

これをするまえに、じしょをかりた。

つけるころにはよるになっていた。

日記は、人の思ったことをつづるのだそう。

つければイリスも人になれるだろうか。

 

ミナとブランがこれからもイリスにモノをおしえてくれる。

すばらしいけっか、イリスはせいこうした。

 

食べ物を食べるのもひとくろう。

フォーク、というモノを使って食べるのも、良くかんで食べないといけないということも、りかいした。

まだまだなれない、なれていかなければ。

あと、いただきます、と食べる前に言うらしい。

イノチをもらうということ。

ひつようなこと、覚えた。

 

まだ文字のべんきょうがひつよう。

書けない漢字が、多い。

ミナにおそわることが多い、すばらしい。

 

これからも、まだまだ知りたい。

 

 

 

 

 

──

────

──────

 

 

 

 

 

女神の書類仕事をしている中、ノックがされる。

…そういえば、ノックといえば教会に謎の連続ノックがあったというけど…ミナは言わないけれどそれって間違いなくイリスよね…

 

許可を出すと、失礼しますと一言あってから入ってきた。

 

「ブラン様。」

 

「早いわね、ミナ。」

 

「ええまあ…虱潰しと行く前に謎に目立つ研究施設がありましたので…」

 

「逆に何故発見できなかったの、それ?」

 

「…ですね。」

 

そう言われながら渡された資料に目を通す。

見えなくなる魔法でもかけてたけど消された、とかかしらね。

…目を通して、顔をしかめる。

モンスター研究。

ミナ達の働きで潰されたそれの中に、見覚えのあるようなそれ。

 

「No001-IRIS……」

 

「間違いなく、あの子ですね。」

 

どうすべきか。

イリスがモンスターなのは確実。

人の姿をしてるのは擬態のつもり?

…にしては純粋無垢なのよね。

 

「他にモンスターは?」

 

「どうやら、最初の個体だけのようですね。」

 

「良かったと言うべきなのかしら…」

 

頭を抱える。

あの子がそんなに悪い子に見えない。

けれどモンスターなのよね…

 

「…しばらく、様子見ね。」

 

「よろしいのですか?」

 

「モンスター…といっても子供なのだし。

もしかしたら、純粋に人に興味があるだけかもしれないわ。」

 

それに…

 

「心なしか嬉しそうな教祖もいるみたいだしね。」

 

「い、いえ、そのようなことは!」

 

「はいはい、分かったから早くあの子の面倒を見てあげなさい。」

 

「ブラン様!…もう、分かりました。」

 

引き下がったミナはそのまま部屋を出る。

ふぅ、と一息。

まさかルウィーに人の姿のモンスターを入れてしまうなんて、女神の名折れね…

イリスが純粋、という印象に嘘はないし、何かするとも思えないのもまた事実。

何かするようであれば…

 

「その時は、潰すしかねぇな。」

 

そんなことにならなければいいのだけれど。

…ま、もし無害だって判断できたのならその時はもう少し優しく接してあげようかしら…

椅子にもたれ掛かり、ため息を一つ。

 

「そういう厄介はプラネテューヌに押し付けたいわ…」




おいたわしや、ブラン様…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。