今日は、ブランが一緒にいてくれる。
ミナもいいけど、ブランもいい。
どっちもはいけないのだろうか。
朝御飯を食べて、椅子に座ったままブラブラと足を動かす。
楽しい。この行為、嫌いではない。
「あなたはいつも上機嫌ね。」
「イリス、ブランと一緒、嬉しい。」
「そう。…今日は外に出るわ。」
「外。モンスター、いる。危険だから、駄目。」
「そうなのだけど……そうね、イリスは戦えないのね?」
「戦う?戦う、なに?」
戦うとは一体何か。
知らない、気になる。
戦う、がないといけないのだろうか。
何故?
「戦えないと、モンスターに襲われても逃げることしか出来ないからよ。戦えたら、手段にはなるでしょ。」
「なるほど。どうすれば、戦える?」
「武器とか、叩くとか…傷付ける事ね、相手を。」
「傷付ける、理解。…ブランも、戦える?」
「女神だもの、ルウィーを守るために何度も戦ってきたわ。」
「戦わないと、いけない?」
「どうかしらね。」
答えてくれない。
戦えないと、外は危険?
イリスも、戦う。
戦えたら、ルウィーの外を楽しめる?
なら、戦う。
ルウィーの外、知りたい。
「戦い、知りたい。ブラン、教えて。」
「危ないわよ。」
「う……」
危ない。
う、それなら戦い、駄目?
戦わないと外は危ない。戦ったら、危ない。
…難しい。
まだ理解、出来ない。
なら、理解するまで。
「危ない、でも、戦う。」
「…そう。なら、少し行きましょうか。」
「ブラン、ありがとう。」
「いいのよ、別に。」
ブランは優しい。
イリスも、優しくなる。
ブランやミナに優しくする。
戦う、覚えたら優しくなれる?分からない。
けど、覚える価値あり。
「でも、行く前に教えることがあるわ。」
「教わる。」
「良い子ね。外のモンスターは獰猛よ、怖いなら私の後ろに立つこと、いい?」
「怖い、分からない。けど、怖くなったら、ブランの後ろ立つ。
理解、ありがとうブラン。」
「…こうも純粋に返されると馬鹿馬鹿しくなるわね…」
?小声で聞こえなかった。
でも、怖いを知ることにもなる。
なら、知りたい。怖いを知りたい。
なので、外に早く行きたい。
「…ところであなた、そのマフラー…」
「?これ、ミナがくれた。」
ブランが興味を示したのは赤いマフラー。
ミナが暖かいからとくれたものだ。
イリスも、これが好き。
「…昔、私が使ってたものね、それ。」
「…くんくん。」
「嗅ぐんじゃねぇ。」
「ごめんなさい。」
何だか落ち着いた話し方じゃなくなったので謝る。
でも、暖かいは本当。
ブランのだと分かったら、ブランがいてくれてる気がして、嬉しい。
「気に入ったのなら、いいけどね。」
「うん、イリス、これ好き。ブランの、大切にする。」
「…変ね、本当。」
──
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──────
それから、ブランの準備が整ったから外に行くことに。
イリスがブランと歩いていると、ルウィーの人達は色々と話していた。
聞こえなかったけど、気になる。
…外は、少し寒い。
けど、慣れる。イリスは、そういうもの。
…多分。温かいものを食べて、暖かいものを巻いているから大丈夫。
「…あれがモンスターよ。」
「ぬら~?」
「…?」
ゼリーみたいなのに目と口がついてる。
それと…触手?みたいなのが大量に生えてる。
…後、喋る。
トコトコ、とそれに近づく。
「ん。」
「ぬら?」
「…イリス、襲わない?」
「ぬら~」
「……言葉、分からない。」
「ふんっ!」
「ぬ"ら"ぁ!」
「えっ」
モンスターとの接触、会話を試みて何もされないことを確認しているとブランが突然大きな物でモンスターを潰した。
…これが戦う?
「ブラン、これが戦う?」
「少し違うけど、そうね。今のは不意打ちよ。
意識の外から、攻撃する…今みたいに。」
「理解。」
「それにしても…危ないって教わったでしょう?」
「うっ…」
失念。
モンスターが気になったイリスの失態…反省。
しかし、何となく分かった。
戦い、やってみる。
「試してみる。」
「やってみなさい。」
「ん。」
モンスター…どこにいる?
…少し先に、先程のモンスターと同じものを発見。
歩いて、近寄っていく。
モンスターはイリスに気付いても、見てくるだけで何もしてこない。
「ぬらぁ。」
「……戦う、する。」
「ぬら?」
「うっ…」
何もしてこないのに、傷付ける。
…うっ、これが怖い?
でも、やる。
戦う…傷付ける…ブランのさっきの攻撃……
イリスの腕を、変化させる。
ブランの持ってた大きい物と同じ形へ変化させる。
確か、振り上げて…振り下ろす。
「ぬら!?」
モンスターが潰れる。
潰れる感触、理解。
なるほど、これが戦う?
………もう少し、モンスターを理解したい。
そういえば、味はあるのだろうか?
触手を少し手に持つ。
「イリス?」
「……ぱくり」
「!?」
もぐもぐと、咀嚼する。
…!少し苦い、けど後から甘さが来る。
甘い、好き。
これ、美味しい。
味を感じていると、ブランが肩を掴んでグラグラと揺すり始めてきた。うっ、視界が揺れる。
「吐け!そんなもん食べるんじゃねぇ!」
「あうあうあうあうあう」
「もう飲み込んじまったのか!?は、腹を殴れば吐き出すか…?」
「うっ…美味しかった、よ?」
「そういうことを言ってるんじゃ……はぁ、もういいわ。」
諦めたように揺するのをやめて落ち込んだ様子。
う、イリス悪いことした?
…モンスター、食べる良くない?
「良くない?」
「…何ともないの?」
「ん、美味しい。ブランも、食べる?」
「遠慮させてもらうわ。それより…イリス。」
「?」
「あなた、腕を変形させたわよね。」
「ん、ブランの真似た。どう?」
「そうね、形は似てたわ。」
「えへん。」
褒めてもらった。
こういう時、胸を張るといいらしい。
本の知識は絶対だ。ミナとブランの教えてくれることはもっと絶対的だけど。
「あなた、モンスターであることを隠さないのね。」
「……あっ。」
「今気付くのね…」
そういえば。
まずい、怖がられる?
あの女の子供の時みたいに、逃げられる?
ルウィーにいられない?困る…
「隠さないと、良くない?」
「……まあ、私やミナなら良いけど。」
「分かった。」
ブラン、優しい。
モンスターのイリスを怖がらない。
素晴らしい結果。
「イリス、ごめんなさい。」
「えっ」
謝られた。
何故?
ブラン、悪いことした?
「モンスターだからって、疑ってたわ。
純粋なあなたを警戒していた。だから…ごめんなさい。」
「?ブラン、もう、警戒してない?」
「そうね、もうしないわ。」
警戒されていた?知らなかった。
でも、もう警戒はしないと言ってくれた。
嬉しい。
ブラン、謝ってくれた。
帽子を取って、頭を撫でる。
「ブラン、良い子。」
「…ふふ、変な子ね。」
「?」
もう警戒しない、なら、仲良し。
イリスは、友達、というものを手に入れた。
本で読んで覚えた。
友達は、良いもの。
「ところで。」
「何?」
「モンスター、他も食べてみたい。」
「馬鹿な事言うんじゃねえ。」
「うっ…」
美味しいのに、駄目だと言われた。
……ブラン、厳しい。
隠れて食べるのなら、知られずに済む?
…今度試してみよう。
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イリス日記 三頁目
戦い、というものを知った。
ブランは本当の戦いはもっと激しいとのこと。
気になる。
しかし、傷付ける行為は、好きではない。
…モンスターは美味しいから、その目的のためならやぶさかではない。
ちなみに、文字はほぼ覚えた。
ミナに教えてもらえて感謝。本に感謝。
疑われていたことは初めて知ったが、それでもイリスに優しいのは変わらない。
疑うは良く分からない。
疑問と、似たようなもの?
人を疑う…人の何かを疑う、理解。
ちなみにあのモンスターは『スライヌ』という種族らしい。
スライヌ…スライヌ…頭に耳があったりするが、どのような進化をしたのか気になる。
触手のないスライヌもいるらしい。
……ゼリーの部分は、食べたことがない。
気になる。
気付いたが、イリスは食べるのが好きだ。
いつか、料理も出来たら、食べてもらえるだろうか。
明日は、ブランが会わせたい子がいるらしい。
…会わせたい?この前の、会わせられない子だろうか?
色々と教えてくれる存在だと、いいのだが。
後、ミナからも謝られた。
イリス、二人から疑われていた。
…モンスターのイリスは、疑われても、仕方ない。
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モンスター、『イリス』。
ただ一体だけの新種。
モンスター研究の最初で最後の成果であり、可能性を内包したモンスター。
というのが、資料で得たイリスについての情報。
そして、実際接して目にしたイリスは…
「はぁ…」
疑っても仕方がない。
好意的に接してきて、尚且つ何も知らない彼女を疑うのは無駄な労力と気付かされたわ。
…それにしても驚かされたわね。
イリスはモンスターであるからか、モンスターに警戒されない。
つまり、イリスが襲わない限りは近くを通ろうと何もされない。
それに、腕を変形して私のハンマーを模してモンスターを倒してたし…後、捕食。
捕食だけはちょっと容認できないけど…というか、何故食べられると思ったのかしら。しかも美味しいって。スライヌよ?触手よ?
知ったことをやれて、知らないことを知りたい。
知的好奇心の塊ね、ホント。
学習能力も高いし、これが出来る、と判断したらやれる、か。
…そろそろ会わせてあげてもいいかしらね。
あの子達も薄々勘づいてるだろうし。
イリスとあの子達がどう影響するか気になるけど…まあ、悪いようにはならないでしょう。…多分ね。
「お姉ちゃん!」
「お姉ちゃん…(そわそわ)」
噂をすれば。
ミナに感謝しないとね、よく隠せたものだわ。
「あなた達、少し話すことがあるわ。」
「「?」」
揃って首を傾げる。
イリス、あなたを疑うのはやめるわ。
これからは警戒心も無く接する。
だから、この子達を関わらせてあげるのは私なりの信頼と思ってちょうだい。
「明日は会わせたい子がいるの、会ってくれる?」
二人が顔を見合わせてから、頷いてくれたのを見て私は良い子、と頭を撫でてあげた。
…頭を撫でるで思い出したけどイリスのなでなでは何というか…不思議な感覚だったわね。