ついに出せた…4話目にして私は出せたぁ!
ミナに起こされて、朝御飯を食べに下へ降りた。
けど、まだ食べられないようで…イリスは少し残念。
どうやら、会わせたい子がいるらしい。
会わせたい子…子供?
ボーッとする頭のまま、頷いた。
会ってみたい。
でも、ボーッとする。
…毛布、暖かかった。イリスは暖かいが好き。
ミナに手を引かれて行くと…
水色服とピンク色の服が印象的な、子供が二人。
…ブランに、似てる?
…んん?
ピンク色が、こっちへ歩くのではなく、駆け寄ってくる。
「あなたがイリスね!」
「ん、私は、イリス。よろしく、ね。」
挨拶は大事。
イリスの事を知っている?ブランから聞いた?ミナから聞いた?
分からない。
イリスは、二人を知らない。
困った…
あ、ミナに会った時…
「お前、誰?」
「わたしはラムちゃん!こっちはロムちゃんよ!」
「よ、よろしく…(そわそわ)」
!?
ピンクはラム、水色はロム。
認識した。
…そわそわ?そわそわ、なに?
「そわそわ。」
「?」
「そわそわ。」
「…ロムの喋り方ですよ、イリス。」
「なるほど、理解。ありがとう、ミナ。」
「わたしの、喋り方が気になったの…?」
頷く。
人によって、喋り方は異なる。
改めて認識。
ラムは、勢いのある。ロムは、控えめ。
ブランは物静か…だけどたまに強め。ミナは、優しい。
個体差ある、これが人。
ラムが楽しそうにイリスの手を握る。
そして、ブンブンと上下に振る。
「あうあうあうあうあう…」
「イリスちゃんは教会に住んでるし、わたしたちの家族ってことだよね!これからよろしくね!」
「よろしくね、イリスちゃん…(にこにこ)」
「あうあうあうあうあう…」
「ラム、イリスが困ってますよ。」
「あ、ごめんね。」
「う…ラム、勢いある。でも、暖かい。
イリス、家族?」
「そう!」
家族…知っている。
血の繋がりがある存在の、構成する集団。
…ロムとラム、ブランと血が繋がってる?
ミナは……母?
「血の繋がり、ない…イリス、家族、ない…」
「え?それがないと家族じゃないの!?」
「ふええ…」
「違いますよ、三人とも。
家族というのは、血の繋がりが無くてもいいんですよ。」
「…本当?イリス、家族?」
「はい、イリスは私達の家族です。」
「わーい!それならイリスちゃんは妹ね!」
「イリスちゃんが妹…わたし、頑張るね…!」
「妹…」
イリスは、家族。
ロムとラム、ブランとミナ…イリス。
イリス、家族!
嬉しい、これは嬉しい?嬉しい。
「イリス、妹。ロムとラム、姉。
…ブランも姉?」
「お姉ちゃんのこと?うん、お姉ちゃんはわたしたちのお姉ちゃんだから!」
「お姉ちゃん、つよい♪」
混乱。
姉の姉…?大姉?
ミナは?ミナは、姉……違う。
「ミナ、母。」
「ミナちゃんはお母さんよね。」
「うん、お母さん。」
「ええっと…喜ぶべきでしょうね、これは。
可愛い三人の母…あ、いいですねこれ。」
なんだか嬉しそうなミナを見て、イリスも嬉しい。
胸が暖かい。これが嬉しい。
理解。
「ブランは、大姉?」
「普通に姉で良いんですよ。」
「姉、理解。イリスは姉が三人。」
「じゃあ、早速遊ぼ!」
「遊ぶ?」
遊ぶ…確か、楽しむ行為。
遊ぶ、気になる。
ここは二人に付き合うべき。
「イリス、遊ぶ、知らない。教えて?」
「うん、いいよ(にこにこ)」
「遊んだことないなら…ゲームする?」
「ゲー、ム?」
ゲーム、とは?
遊びの名前?
何の名前だろう。イリスは気になる。
これは覚えなくては。
「こっちこっち!」
「わー」
「イリスちゃん、不思議だね。」
「程々にするんですよー」
ラムに手を引かれて、部屋へと連れていかれる。
ロムが言ったけど、イリスは不思議?
…不思議、後で調べる。
部屋にやってきて、ラムが小さい機械?を渡してきた。
…???
「これは?」
「これがゲーム。えっと…そこのボタン押すの。」
「これ?…わっ。」
ボタンを押すと、機械の画面から光が発する。
これは、映像?
おー…ゲーム、すごい。
ゲーム、もっと知りたい。
「どうやる?」
「えっとね…」
そこから、どう操作するかを教えてもらった。
どうやら、数個のボタンによる操作が必要らしい。
難しい…やっていけば慣れるらしいけど、イリスは慣れる気がしない…
やりやすいゲームを教えてもらい、ポシェモンというゲームをやらせてもらうことに。
「えっと、『なきごえ』ばっかりだと勝てないよ…?(そわそわ)」
「…これ、戦う?」
「うん…これで、HPを削るの。」
「ん、理解。」
HPを削る…ポシェモン、面白い。
それに、映像が動く。音が、いっぱい鳴る。
なるほど、映像と音とシステム。
これで楽しむもの、理解した。
「この後、どうするの?」
「そこが終わったらこっちに進むの!」
「この先?」
「うん、進んだら…つよくなるよ。」
「理解。イリス、進む。」
ロムとラムのお陰で、進めている。
進めていって、分かったこと。
これは物語。
なるほど、誰かの物語を、自分が進める…これがゲーム。
他にもゲームはあるらしいので、認識が合っているか分からない。
様々なゲームをしなくては。
「イリス、楽しい。二人も楽しい?」
「うん、楽しいよ(にこにこ)」
「イリスちゃんにゲームを教えるの、大変だけど楽しいわ!」
「そう。」
二人とも、笑っている。
イリスは嬉しい。
嬉しい時、どうすればいい?
…ラムがやってた、わーい。あれは恐らく嬉しい時の意思表示。
あれをやればイリスも嬉しい、二人に伝えられる。
賢い。
「わーい。」
二人とも、きょとんとしてしまった。
なぜ?イリスは腕も上げて喜びを示した。
…??
「イリスちゃん、笑わないね。」
「笑う、やり方、分からない。」
「えっと…笑顔は、しぜんとなるんだよ。」
「なるほど。」
「ちなみに、こういう顔ね!」
ラムはニッと口角を上げた。
なるほど、笑う、理解。
種類があると認識。
イリスもやってみる。
少し頬が、ピクピクする。
「ニィ…」
「……あはは!」
「ふふ…!」
「???」
「イリスちゃん、ぎこちなくて凄い顔!アハハハハ!」
「イリスちゃん、いっぱい練習、頑張ろ?」
「うん、いっぱい頑張る。」
ぎこちないようだ。
笑顔は難しい…でも、二人とも笑っている。
嬉しい。
「わーい。」
それから、今度はイリスが何してたかを教えることに。
なるほど、教え合う、これは大事。
…でもイリスがモンスターであること、隠す。
ブランとの約束。
これは言っちゃ駄目。
「本、素晴らしい。知識を得られる。」
「絵本ならわたしとロムちゃんも読むよ!
えっと…これとか!」
「なるほど、これは知らない。読んでみる。」
「いいよ!」
「イリスちゃんは、なにを読んでるの?(わくわく)」
「国語辞典。」
「えっ」
「国語辞典。」
二人とも何とも言えない顔をしている。
その後、二人がイリスから離れて何かを話している。
イリスは待機。
「イリスちゃん!」
「う?」
「いっぱい、絵本読も?」
「二人も一緒?」
「「うん!」」
「わーい。ありがとう。
イリス、いっぱい読む。」
それからイリスはロムとラムと一緒に絵本を読んだ。
色々な物を理解できた。
ロムとラムの意見、イリスが思い付かないもの。
とても貴重。仲良くなれた。
素晴らしい結果。
「ミナ、魔法は24時間で解けてガラスの靴のサイズが合わないと人は結婚できない。
イリスは賢くなった。」
「絵本の内容をそのまま現実に持ってきちゃ駄目ですからね?」
「イリスは賢くなかった…?」
「イリスは賢いですよ。」
「えへん。」
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イリス日記 四頁目
今日はロムとラムに初めて会った日。
勢いがあるラムと、ひかえめなロム。
でも二人とも優しい。
イリスはブランとロムとラムの妹になった。
ミナは母。
イリスは、家族を得た。
家族…血のつながりがなくても、成立する。イリスは、理解した。
友達と家族、違いは分からない。
何が違うか…イリスにはまだ。
これから知っていきたい。
イリスの課題が、一つ増えた。
人を理解することがイリスのしたいこと…楽しいこと。
今日、家族でご飯を食べた。
楽しそうな声が多くて、イリスは嬉しい。
イリスも、楽しい。
家族で食べるご飯、美味しい。
これからも一緒。
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ロムとラムとイリスが一緒に寝ている。
イリスは相変わらず、表情が殆ど動かないけど、二人は幸せそうね。イリスも、幸せだといいのだけれど。
…家族が増えるだなんてね、それもモンスター。
まだ知らない面が互いに多いし、喧嘩もあるだろうけど…それも家族よね。
それに、私はより一層しっかりしないと。
女神として、姉として。
…少しチョロいかしら?
でも、悪意もなく接してきたら絆されても仕方無いわ。
これで嘘だったらそれはそれで凄いことなのだけど…イリスに限ってそれはないか。
部屋を出て、自室に戻る。
「それにしても、どうしたものかしら…」
色々と知りたいイリスは、ルウィーだけでなく、他の三国にも行きたがるだろうし…今のうちに考えておかないと。
この吸収力だと、すぐに色々覚えちゃうだろうし。
そうなったら、ラステイションやプラネテューヌ…果てにはリーンボックス。
リーンボックスは駄目だ。
絶対駄目だ。
「何教え込まれるか分かったもんじゃない…」
他の二国はまだいいけど、リーンボックスだけは駄目だ。
別に妹を取られるのが怖いとかじゃなくて単純にイリスに悪影響を及ぼしそうで…
これで五徹とかするイリスが誕生したら多分私は胃に穴が空く。
ロムとラムも真似たりしたら…
よし決めた。
「教えるものを増やせばいいんだわ。」
でも、私が教えられるものは、そうないし…
他国に行くことも考えれば…ロムとラム位の強さにはなって貰わないと…そうだわ。
「イリスを強くする…?」
イリスが強くなってくれる分にはもう構わないのだから、鍛えてあげるのもいいんじゃないかしら。
ミナだってロムとラムに魔法を教えているのだし、私も戦い方を教えてあげてもいいと思う。
これはナイスアイディアね。
外は厳しいことを知れば、無闇矢鱈に近付いたりする事も無くなるだろうし…
あ、でも無茶はさせちゃ駄目ね…となるとある程度のプランを練っておかないといけないわ。
…色々大変ね。
でも、これもイリス、ひいては私達の為よ。
「後は…イリスの事を教えるべきか否か…ミナと相談ね。」
警戒を解いた後のブラン様は少し過保護に…
まあ仕方無いのだ、無知で無垢なイリスちゃんは染まりやすいからね。