今日は、ブランが起こしに来た。
珍しい。ブランが、やる気?に満ちている。
下に降りると、ロムとラムも起こされたようで眠そうに目を擦っていた。
「ブラン、ブラン。」
「どうかした?」
「今日、何か教えてくれる?」
「ええ、また外に出ましょう。」
「お外いくの…?」
「外、行く?」
「わーい!皆でおでかけ!?」
「似たようなものね。」
外に行く?つまり…もしかして、モンスターとの戦闘?
イリス、やる気、出す。
…あれ、でも…
「ブラン。」
「?」
「ロムと、ラム…危険。」
「ああ…大丈夫よ、二人とも戦えるし、私がいるもの。」
「二人も、強い?」
「お姉ちゃんの妹だもん!ね、ロムちゃん!」
「うん、わたしたち、つよい♪」
…二人、強い。
う、イリスも、強くなる。
ちょっとした、対抗心。
二人は小さいのに、強いならイリスも強い筈…
はっ…イリスよりも賢い…?納得。
二人はイリスよりも色々知ってる。賢いは強い。
「イリス、いっぱい強くなる。」
「ブラン様…あまり無理はさせないようにお願いしますね?」
「平気よ。いざとなったら本気出すから。」
「本当にお願いしますよ!三人のお姉さんなんですから!」
「わ、分かってるわよ…何だか熱くなってるわね…?」
「心配なんです!」
「分かった分かった…」
何だかミナがブランと話している。
心配されている?…むむ、イリスが強くなれば、ミナも安心?
イリス、理解。
こういう時、気合いをいれる、イリスは知ってる。
今食べてるご飯をすぐに食べ終える。
「ミナ、イリス、強くなる。任せて。」
「イリス…無理はしちゃ駄目ですよ?二人もですからね?」
「心配性なんだから!お姉ちゃんもいるし、へいきだよ~」
「うん、へいき(にこにこ)」
「無理、しない。イリス、理解。…あ、ブラン、ブラン。」
「どうしたの?」
「モンスター…食べて良い?」
「駄目に決まってるでしょ。」
「う……」
ブラン、厳しい。
けど、それはイリスを想っての厳しさ。
イリスは我慢する…我慢、頑張る。
もし食べたら食べたのを謝りながら食べる…
「イリスちゃん、モンスターって食べられるの?」
「ん、美味しい。イリスは食べた。」
「こわいけど…気になる、かも(そわそわ)」
「駄目ですからね、絶対に食べちゃ駄目ですからね!?」
「食べさせないから安心しなさい…」
ミナ、慌ててる。
…食べない、食べない、食べない…
ロムと、ラムもモンスターを食べないようにしようと決めている。
なら、イリスもそうしないと…
食べない、食べない、食べない…
「食べない、食べない、食べない…」
「イリスちゃん、食べないの?じゃあもーらい!」
「えっ」
「ラム…」
「…あれ、駄目だった?」
「あうあうあうあうあう……」
「すごい悲しそう…(あわあわ)」
ラムに食べられた……イリスが食べないと言っていた事が原因…イリスが悪い…食べたかった。
うっ…でも、食べない、食べない、食べない…
「ごめんね、イリスちゃん…」
「う…ラム、悪くない。美味しかった?」
「え?う、うん。」
「なら、いい。」
「イリスちゃん、これあげる。」
「ロム…いいの?」
「うん(にこにこ)」
「…ありがとう。美味しい。イリス元気出た、ラムとロム仲良し。」
ラムも、それから笑顔に戻った。
三人で支度をして、ミナに行ってきますと言ってブランと共に外へ出る。
相も変わらず寒い。
けど、皆いるから、暖かい。
胸が暖かい。こういうのを、ポカポカという。
イリスは知ってる、賢い。
えへん。
「戦い、どうやる?」
「そうね…四人いるということは互いをサポートできるということよ。」
「サポート…」
「わたしとラムちゃんは魔法がつかえるんだよ。」
「魔法…?24時間経つと消えちゃう?」
「わたしとロムちゃんの魔法は消えないわ!」
「二人の魔法、消えない?凄い。
絵本より凄い。自慢の姉。」
「まーね!えっへん!」
「ふふ、えっへん。」
「えっへん。」
「仲が良さそうで何よりだわ…」
ブランの言う通り、イリス達は仲良し。
もっと仲良くなりたい。
そう思っていると、ブランが立ち止まる。
「ブラン?」
「あれがちょうど良さそうね。」
「わ…大きい。」
「…狼?」
大きな狼がそこにいた。
こちらに気付いていない。
狼は、ポツンとそこに何をするわけでもなく…そこにいる。
「…気付いていない?」
「そうね…イリス、あなたならどうする?」
「ん…不意打ち?」
「そうね。先手必勝、先に攻撃した方が有利なのが大半ね。」
「前みたいに、やる?」
「うーん…いっつもパパーっとやるからそういうの分からないよ~」
「うん…」
「まだ子供だもの、仕方ないわ。」
…二人は、子供。
イリスも子供。
むむむ…でも、強くなる。
…イリスは、モンスターに、警戒されない。
閃いた。
前のように、やる。
「イリスちゃん?」
「イリスが、一撃やる。」
「…そうね、もし駄目だったらロムとラム…私が何とかしてあげるわ。出来るわね、二人とも?」
「う、うん…イリスちゃん、平気?」
「平気。イリスも、強くなる。」
そう言って、イリスはトコトコと狼に近寄る。
狼はイリスに気付いても、なにもしてこない。
…毛深い。
手を伸ばして、触れてみる。
「…」
「…もふもふ。」
触れても、何もしてこない。
…もふもふ、もふもふ…
もふもふ、好き。
でも、モンスター。
モンスターは…倒さないと。
「ごめんね。」
「──!」
手の形状をブランの持ってた武器に似せて、振り下ろす。
狼の頭に当たったけど、潰すに至らない。
狼は…唸っている。
大きいからか、潰すに至らない。
…潰せない?
イリスは考える。
狼は吠えて、大きな口を開けてイリスへと走ってくる。
「…あっ。」
なるほど、包丁。
料理する時に使ってるの、見た。
でも、手を包丁に変えるのは…適切じゃない…
「──!!」
「ん?」
いつの間にか、大きな口が目の前に。
あ、食べられる?
狼に食べられる…猟師が、助けてくれる?
イリスの横を何かが通りすぎて、狼の顔へぶつかる。
これは氷?
後ろを見ると、棒…確か、ステッキ。それを持ったロムとラムがこっちへ走ってきていた。
ブランも何やら難しい顔をしてる。
「イリスちゃん、大丈夫?」
「うん。」
「はぁ…避けることもしないなんて思わなかったわ。」
「ブラン、ロム、ラム。」
「「「?」」」
「三人は、猟師だった?」
「「ちがうよ!」」
「…猟師?」
「人を食べた狼が、猟師に撃たれる。そしたら、お腹の中の人が助かる。」
「私達は赤ずきんじゃないわね。
猟銃を持ってないもの。」
「…確かに。」
三人は赤ずきんの猟師ではなかった。
それはそれとして、狼は?
氷が効いているのか、顔を幾度か振っている。
あ。
今のうちにやっておこう。
指をまっすぐに伸ばして、鋭くするイメージ…形状を刃物のように変える。
「わ、イリスちゃんの手、色々切れそう?」
「えへん。」
「ほら、さっさと倒すわよ。」
ブランがそう言って走る。
…イリスも走る。
狼が爪を振るうけど、ブランはそれを横にピョンと跳んで当たらない。…あれが避ける。
敵の攻撃、当たってはいけない。理解。
ブランが避けてから、武器を横に振るう。
狼の頭が横へと当たる。
風のようなものが、発生して狼の足がよろける。
走って、よろけている狼に腕を振るう。
切るイメージは、これで合ってる筈。
首の方を、切る。
狼は掠れた声をあげて、倒れる。
……ん、まだ…
……大きい。
「やったわね。」
「イリスちゃんとお姉ちゃんつよーい!」
「うん、つよい(きらきら)」
「うん。」
倒れてる狼……スライヌを食べた時みたいに、味が気になる…
た、食べない、食べない、食べない…
うぅ~…イリス、気になる。
気になる…気になる。
倒れてる狼に近付く。
切ったのは、首。
…ちょこんと座り込む。
「「?」」
「…おい、イリスまさか──」
「がぶり。」
「「!?」」
「やっぱいきやがった…おいイリス!」
首にかぶりついてみた。
ブランに怒られた。
もぐもぐ…もぐもぐ…
…!これは…!
「ブラン。」
「食べるなって……なに?」
「これはかなり美味しい…イリス、これ好き。
固さはあるけど、それが美味しさを引き立てている。」
「おいしい、の?」
「美味しい。ロムとラムも食べる?」
「やめとく、ね。」
「わたしも、やめとくわ!」
「そう…」
「…イリス。」
「ん。」
「誰も食レポしろなんて言ってねえ!!」
イリスの頭にブランの拳が降ろされる。
い、痛い…これ知ってる…拳骨…
フラフラとする。
うう…でも、これで分かった。
モンスター、美味しい。
これは素晴らしい結果。
イリスの知識が増えた。
「ごめんなさい…」
「好奇心に従いすぎよ、もう…」
「う…」
「何ともないのね?」
「うん。あ、ブラン。戦う、覚えた。
敵の攻撃、避ける。こっちの攻撃、当てる。皆で、協力。」
「そうね…」
「ロムとラムも、ありがとう。」
「ふふーん、これくらいならお安いご用よ!」
「イリスちゃんのためだから、平気♪」
「わぁい。」
イリスはまた賢くなった、やった。
「モンスターも、いっぱい食べる。」
「「「それはダメ。」」」
「う…」
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イリス日記 五頁目
今日はブランとロムとラム、イリスで戦いにいった。
狼と戦って、見事勝った。
名前は、フェンリルというらしい。
…味も書いておく。
首の部分しか食べてないけど、フェンリルの肉は固い。
けど、その固さは噛み応えで、ジューシー。
後で調べて適切な言葉を見つけた。
引き締まった味、というらしい。
ミナにも怒られた…
お昼が食べられなかったらどうするのか、と言われた。
盲点。
イリスのお腹にも許容量はある。
イリスの賢さにお腹が追い付かなかった瞬間。
ミナ達は賢い…負けていられない。
それにしても、食べるのを我慢できなかったのはイリスがモンスターだから?分からない。
けど、モンスターをもっと知りたいイリスがいる。
…ブランに、もっと連れてってもらう。
ちなみに、今日の夜はシチューだった。
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結局食べることを許してしまった…
でも、戦いを教えることには成功したし、よしとしましょう。
…フェンリルって美味しいのかしら…?
「考えても仕方ないことね…」
イリスの事も、今は考えても仕方ない。
今は色々教えてあげなくてはいけない。
常識を教えて、何が正しくて何が悪いのかを教える。
これはミナと私がやるにしても、イリスに戦いを教えられるのは今のところ私だけ。
魔法を使う、なんてことはあの子に出来るか分からないし。
…それにしても、イリスは食いしん坊だ。
もしかしたらモンスターを食べることがイリスの誕生理由に関係が?それに、そもそもなぜモンスターを造ったのか……調べる必要がありそうね。