米の女神と風の竜   作:春谷

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はじまりのはなし

ここはセルフィアの町

神様の竜のおわす町

姫と呼ばれる少女が汗水たらし働く町

多くの民が陽気に、幸福そうに、助け合いながら過ごす町

 

この町でのこの1年は激動だった

なんてったって空から姫が落ちてきた

この1年は姫を中心に回っていた。太陽のように、大樹のように

 

姫は畑を耕した

姫は実は姫ではなかったが、それでもその行いが、誠実さが、愛嬌が、姫より姫たらしめた

 

姫は大地に愛されていた。姫は誰よりも大地を愛していた

大地を愛し、町を愛し、人を愛し、その愛は魔物すら包み込んだ

 

姫はなんとも器用なもので家事もすれば鍛冶もする

お祭りがあればだれよりもはしゃぎ、

部屋にこもったと思ったら怪しい薬を作ったり

自分の作った野菜で絶品料理を作ったり

モンスターの毛で服を作ったり

 

姫は民と触れ合った

彼女はいつしか万能になったが、それでも決して孤独ではなかった

独り記憶を失って、寄る辺がなかったにも関わらず

医者に、鍛冶屋に、雑貨屋に、花屋に

みんなのおかげで一人前になれたといつも言う

 

姫は冒険し、戦った

森を進み、遺跡を攻略し、怖いお化け屋敷にも潜りこんだ

騎士も王子も執事もメイドも、姫と一緒に戦った

気づいたら、天然少女が、不愛想な青年が、素直になれない少女が仲間に増えた

 

姫はちょっぴり不思議だった

自分が東奔西走し、ひいこらおっきなモンスターを倒し

町の仲間が増えていく

そのたびにこの大きな友達は嬉しそうで、でもほんの少し寂しそうで

 

姫は気づくことができなかった

それが友の命を削る所業だと

 

ここはセルフィアの町

神様の竜のおわす町

大地の姫の住まう町

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ここははじまりの森

すべてのいのちのはじまりの地

すべてのいのちの還る土地

 

いのちはルーンとなりて巡りて

すべてのいのちはこの地でまじる

 

そうここははじまりの森

すべてのいのちの交わる地

常世と現世

彼岸と此岸

 

それならば

 

神のおわす地と人の世と

頂の世と麓の世の

間に満ちる雲海の

神もあずかり知らぬ雲海の

 

“二つの世界の交わる海の”

船に乗りたるその女神

神隠しに会う神なんて

なんて冗句と思うだろう?

誰がそんなこと予想しただろう?

 

ここははじまりの森

すべてのいのちの交わる地

ふたつの世界の交わる地

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

姫は森を駆け抜けて

竜を助けに塔へと走る

 

竜の命を救うため

竜の友を救うため

 

 

竜の心を救うため

 

 

はじまりの守り人を助け出し

魔法の指輪で町へと飛ばす

 

ここに二つの世界に穴が開く

 

これは米の女神と風の竜の物語

 

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