米の女神と風の竜   作:春谷

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はじめての田植え

「いやー良い苗じゃ。今日は天気も良い、田植え日よりじゃのぉ」

「がんばろう!」

 

鳥が目覚める頃合いに、サクナとフレイは田んぼの前にいます。

今日は待ちに待った田植えの日です。

とは言え待ちに待っていたのは初体験でワクワクしているフレイくらいで、サクナヒメにとっては繰り返した日常の一コマ。

流石に秘技乱植えは教育上良くないと思うくらいの分別はサクナヒメにもありました。

まずはフレイの隣に立ち、一緒にやって教えます。

 

「二歩下がっては一束植える、二歩下がっては一束植える。

こんな感じで植えてくのじゃ、間隔は、ほどよく。

あんまり間隔が広いと当然収穫が減るが、ぎゅうぎゅうに植えるとこんどは質が落ちるからの」

「うーん?」

「そっち半面はわしがやる、こっち半面は途中まで見ておいてやるわ、やってみよ」

 

そんな感じで畦道に腰掛け指南役に移るサクナヒメ。

「くっ」とか「ふぬっ」とか言いながら蛇行して苦戦するフレイを楽しそうに眺めます。

 

「わしも苦労したの~」という懐かしい感情もありますが、どちらかというと

「苦労しとる苦労しとるw」といった様相です。

苗生えています。

 

はてさてどっこらしょ、と手伝うためにサクナヒメが田んぼに入ろうとしたその時

雑貨屋の老店主たるブロッサムがやって参りました

 

「サクナ様。お水とおにぎりを持ってきました、どうですかな?」

「おぉ、朝はやいのぉ。ブロッサム

これが終わったらありがたくもらうとしよう

フレイの分もか、すまんな」

「いえいえ、これが田んぼですか、長く生きていますが初めて見ます。

何ともキラキラと光ってきれいですな。

おやおや、フレイはずいぶんと苦戦しておる」

「ふふっ、わしも最初は苦戦したものじゃよ」

 

曰く、サクナヒメはしばらく田植えを鍛えたら植えるべき位置をその神眼で見極められるようになったとのこと。

それを聞いたブロッサムはふむ?と少し考えフレイを呼びました

 

「ひも?」

「毛糸玉はあるだろう?いつだったか冷えが厳しい日に手編みのマフラーをくれたじゃないか。

例えば……田んぼにこんな感じでひもを走らせることでまっすぐ下がれるんじゃないかい?」

 

ブロッサムは田んぼを見ているフレイの後ろに経ち、地面に向かって指した指をまっすぐに上に振り上げながらそう言います。

フレイはここに天啓得たり。

 

「なるほど!やってみるね!

モコ太!モコ美!ちょっと手伝って!」

 

そういうとダッシュで毛糸玉を持ってきて、付き合いの長いモコモコ二頭を田んぼの端と端に立たせ、ひもの端を持たせます。

そのひもをガイドとすることである程度まっすぐ下がりながら、手際よく田植えを進めていきます。

流石は大地の姫、端から始めた田植え作業が、彼女の担当している半分のさらに真ん中、つまり田んぼの4分の1くらい終わった頃

随分とサマになっておりました。

 

「なるほどのぉ、見えないなりにやり方があるものじゃなぁ」

『人の子の工夫とは素晴らしいですな。峠もずいぶん便利になりました。

もしかしたらもっと便利になるかもしれませんなぁ』

「わしは楽をするためなら頑張るぞ!

ま、こればっかりは楽になる気がせんが、の!」

 

そう言い、よっこらしょと立ち上がるサクナヒメ

おもむろに逆の端から田植えをはじめ、もう七割がた終わったフレイを猛烈な勢いで追い上げます。

なにせ彼女は米の女神

数多の田植え技を持っています。

今日使うのは升植え

4倍速で植えられる上、なかなか見栄え良く植えることができる大技です。

手に持つ苗の数もフレイの倍、苗を構えなおすロスも極小

しゅぱしゅぱと、異常に手際よく田植えを進めていきます。

 

「本当に神様なんだねぇ」

 

年相応に信心深いブロッサムはなんとなくサクナヒメの高貴な気配を察して神様であるということに納得しています。

これが例えば同じ雑貨屋のダグなどはその見た目から侮っているのですが……。

まぁサクナヒメのふるまいから神性を汲み取れるブロッサムがどちらかというと特殊です。年の功といったところでしょうか。

田植えを終えてフレイにどや顔しながらおにぎりにかぶりつく姿は本当にただの可愛い女の子ですから。

 

「ふぃ~終わった終わった。ここまでくればあとはこまめに面倒をみるだけじゃよ」

「そうなの?」

「毎朝様子を見ながら肥料をまく。水の量を調整する。雑草を抜く。夜に次の日の肥料を準備する。

そのくらいかの。わしは神眼で土の質が見れる。

施肥はわしが毎朝するから、フレイは見て学ぶとよかろう」

『おぉ……おひいさま!立派になられましたな!』

「峠に比べれば優雅な物じゃて、せっかくなら美味い米を食いたいしの!」

「ありがとう!ところで肥料って雑草とか?」

「ん?何を言っておるんじゃ」

 

う〇こじゃぞ?と高貴とは程遠い発言をするサクナヒメ

まぁもちろんフレイもわかっています。

肥料入れに草を入れているのはあくまで触媒

モンスターたちから出てきた糞尿等が肥の素です。

農業慣れしている大地の姫は(どこの世界も一緒だなぁ)と遠い目をするのでした。

 




高性能肥料入れを手に入れた!

中に材料を入れることで様々な効果を持つ肥料を作ることができる。
ありとあらゆる素材が肥料と化すその仕組みは謎に包まれている。
1日1回能動的に畑/田んぼに作成した肥料を撒ける。
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