米の女神と風の竜   作:春谷

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田植え歌とエルフの詩人

「ふ~ふふ~……ふ~ふふ~ふ~ふ~ん♪」

 

田植えが終わって数日

ポコリーヌの食堂でサクナヒメはご機嫌です。

なんだかんだで豊穣神。田んぼを毎朝眺めるのは感慨深いものがあります。

セルフィアでの生活。

最初の数日は観光気分で楽しんでいましたが、最近は少し精神的な疲労を覚えるようになりました。

それは客人から民へ変化するに伴い避けようのない適応のストレスです。

そんなふうに変化し始めた異世界の生活ですが、慣れ親しんだライフワークが組み込まれ、途端に安心したのでしょう。

ガールズでご飯を待ちながら、田植え唄の鼻歌が漏れ出るのも仕方がないことです。

 

「鼻歌なんて珍しい」とフレイ

「ずいぶんとご機嫌のようだ」とはシャオパイ

「ふんふん~♪」とノリだけで混ざるのはコハク

「うるさいわよ」と心にもないことを言ってしまうドルチェに

「だめですよそんなこと言っては」としっかり者のフォルテがたしなめれば

「素直じゃないだけですの」幽霊のピコがそういいます。(そしてドルチェに首を絞められています)

「ねむくなりますね~」とクローリカが言ってなんとな~く会話が不時着しました。

 

そこで着地せずに目をキラキラさせているのはエルフの音楽家たるマーガレットです。

なにその歌!?不思議なメロディだね?もっと聞かせて!一緒に歌おっか!

などとまくしたてます。

なにせ彼女は生粋の音楽家。部屋にはいろいろな楽器が所狭しと置いてあります。

神秘的な聞いたことのないメロディに好奇心が止められません。

 

「ちょっ……ちょっとまてぃ!まずは飯じゃ!」

 

そう叫ぶサクナのご飯をちょうどディラスが配膳してきたところです。

裏ではポコリーヌのつまみ食いを躱すための光速の駆け引きが繰り広げられていたのですが、それはまた後日の話としましょう。

(まったくやかましい奴らだ……)とでも言いたげな目をしていますが生憎ここには気にするガールは一人もいません。

ディラスはディラスで(ぐっどたいみんぐじゃ!)とでも言いたそうなサクナヒメの視線などどこ吹く風です。

 

閑話休題

 

ここに、本日の食事中のガールズトークのテーマは決まりました。

すてきな音楽なの!とコハクが言えばサクナはその成り立ちを説明します。

田植えを行うときの唄

農作業のつらさを紛らわすための民謡が

毎年唄いながら田植えをした思い出となり

大龍を討ちに出陣した時には賛歌となり

いわばヤナトの生活の主題歌だと

 

「ど!?……どうしたマーガレットよ。何故泣く!?」

 

ぽつりぽつりと言ったサクナヒメの語りが完結したころにはみんなご飯は食べ終わり

そしてエルフは涙をこぼしていました。

なぜかなど、彼女自身もわかりません。

 

「あれ?なんか……ゴメンね?なんか感動しちゃって……変だよね?」

「どうしたどうした。まったく困ったヤツじゃ。そんなに感動したのなら今日はおぬしの家に行こうかの。急ぎの仕事もないことじゃしの。

皆は仕事が残っておろう?ここはわしに任せよ」

 

そういってサクナヒメはマーガレットの背中をポンポンとします。

みんな心配そうにしていますが、ここは神様に任せて各々の仕事に戻るのでした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

がけっぷちの家

「ひえぇ~……なんかごめんねぇ……サクナちゃん

あ!お詫びにそこの果物食べていいよ!」

「そうか……ありがたくいただこうかの」

 

そういうと、みずみずしいリンゴを一つ取ります。

ヒノエ島での果物といえば柿くらい。こんなに芳醇で甘美な果実はありません。

むしゃむしゃと、すっかり夢中のサクナです。

 

「ふふっ。サクナちゃんは可愛いねぇ」

「どうした急に。こちとら神じゃぞ」

「そういえばそうだよね、サクナちゃんは長く生きているの?」

「神としては若輩だがの。まぁブロッサムよりは年を重ねているじゃろうな」

「ふ~ん?」

 

にこにことサクナヒメを眺めるマーガレットです

情緒はわりかし安定したようで、サクナヒメはほっと一安心です。

 

「急に泣かれたからびっくりしたわい。そんな哀しい話じゃなかったろうに」

「あはは~……ごめんね。わたしもこんなこと初めてだよ

でもぜんぜんイヤじゃなかったんだ。だからさ、教えてよ。サクナちゃんの唄」

「む~……あまり改めて披露するものでもないんじゃがなぁ

いつもマーガレットはいろいろ聞かせてくれるからの。特別じゃぞ?」

 

そういうと、コホンと咳ばらいをして唄います。

~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

いつもの田植えの時よりテンポはゆったりと

民謡ですから、難しいメロディなどありません。

エルフの音楽家の手にかかれば即興でハープを合わせることなど簡単で、

しばし、緩やかな、穏やかな二重奏が続きます。

 

「何とも恥ずかしいのぅ」

「ブラボー!だよ!」

 

ハープから手を放しぱちぱちと拍手をするマーガレット

対するサクナヒメはとっても照れくさげです。

照れくさそうなのに、自分に付き合ってくれるサクナヒメを見て、

マーガレットは自分の気持ちが分かった気がしました。

何故涙を流したのか。

 

「これからこの唄さ、いっぱい弾くよ。いっぱい歌うよ。アレンジしたりしてさ。

ピアノとか、ハープとか。サクナちゃんの知らない楽器もいっぱいあるし。」

「どうした?急に」

「ううん。そしたら少しは寂しくないかな、って。勝手に思ってるだけなの。

サクナちゃんはヤナトの立派な神様だけど、でもセルフィアの可愛いサクナちゃんなんだって。そう、いっぱい歌うから」

「…………そうか。

ま!余計なお世話じゃがの!」

 

ない胸を張るサクナヒメ。まぁこれは照れ隠しです。

短い付き合いだけど知っていました。

マーガレットが極度のお人好しだということは。

しかし神たる自分にこれだけ感情移入しておせっかいを焼くとは、たいがい筋金入りじゃのぉと思うわけです。

ただ、別に、悪い気はしないのです。

 

今日も、明日も、セルフィアの空には

マーガレットのアレンジした田植え唄に、神様の鼻歌が響きます。

 




スキル・田植え唄を入手した!
すべての収穫物の収穫個数に応じた攻撃力増および防御力増の効果を短時間得る。
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