米の女神と風の竜   作:春谷

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米の女神と特訓です!

「さてビシュナルよ、しかたないから少しばかり揉んでやろう」

「ありがとうございます!

やーるぞー!!!」

 

少し雲のかかった夏のある日

竜の間の前、すなわちフレイの部屋や執事たちの部屋の前のセルフィアのメインの広場。

普段はお祭りやお喋りが繰り広げられているこの広場に執事見習いたるビシュナルとサクナヒメが向かい合います。

 

ビシュナルの手にはフレイ謹製の剣が二振り

彼は戦いにおいては双剣による愚直な攻めと手数が身上です。

かたやサクナヒメの手には鍬……ではなく、大き目のほうき。

サクナヒメの世では竹ぼうきと呼ばれていたものです。

 

「その……サクナヒメ様。本当にそれで大丈夫ですか?」

「おぉ。そう心配するでない。」

 

獲物の質の違いから遠慮するビシュナルを横目にサクナヒメは緊張感のない様子。

念のために横に控えているジョーンズとナンシーの医者夫婦、特にナンシーは心配げです。

ビシュナルの相棒としてクローリカの姿もありますが

特に目立つのはこの町の戦闘要員として見学、何ならあとから参加しようとわくわくしているフォルテやフレイでしょう。

 

「では……行きます!!」

 

意を決して攻めかかるビシュナル。

サクナヒメに一気に近寄るステップを皮切りにまずは一閃。

そこから右からの袈裟切り、左からの薙ぎ払い、交差させるようにした一撃など

双剣の持ち味である連撃につなげます。

 

「ほっ…よっ………そこっ!!」

 

その一つ一つの一撃を見切り、躱し、

焦れて大振りになった一撃を竹ぼうきによって弾き返します。

 

「うわっ!!」

「ぶっ飛べ!!」

 

弾きによって体勢を崩し、ビシュナルの踏ん張りがきかなくなるその瞬間。

そこにすかさず“胴貫打ち”

いくら武器の攻撃力が低いとはいえそこは神の力

サクナヒメ、細心の注意を払い手加減を重ね吹き飛ばします。

手加減してますよ?ぶっ飛べとか言っていますが……

本気を出したら竹ぼうきとはいえビシュナルははじまりの森に還ることになっていたでしょう。

幸いセルフィアの竹ぼうきはヒノエの竹ぼうきと違い吹っ飛ばし技に補正はかからなかったようです。

 

「おや?だいぶ手加減したんじゃがのう。すまん、だれか回復してやってくれ」

「きゅぅ~」

 

いくら手加減したとはいえされど神の力。

一撃でビシュナルはノックアウトです。

慌ててフレイが回復用のポットを使い回復してあげました。

 

「いやはや……」

「サクナちゃん、強いのねぇ~……」

 

ジョーンズナンシー夫妻は戦闘をするような性質でもありませんので、サクナヒメのふるまいからその武力を読み取ることができていなかったのですが、神であるということを再認識です。

その力の大きさを目の当たりにし、畏敬を通り越して恐怖になってもおかしくなかった場面ですが、そうならないのはひとえに彼女の神徳でしょう。

 

「まだまだぁ!!」

「おっとっと。そう来なくてはな!」

 

そして最たるは、最も異常なのは不屈のガッツで再度立ち向かうビシュナルです。

力の差は圧倒的、訓練になるかどうかも正直微妙でしょう。ビシュナルにとってはもしかしたらフレイやフォルテと戦ったほうが訓練になるかもしれません。

 

「ふはっ。良いのぅ良いのぅ。

ほれほれ甘いぞっ!」

「くっ……うおおぉぉぉ!!」

 

渾身の一撃も柳のようにいなされ、会心の一太刀はようやっとサクナヒメ体に届きます……が、彼女は岩のように動じません。

それは内包するルーンの差があまりに大きすぎるから。

この世界で言うならば“レベルが違う”

かの世界で言うならば“格の違い”

 

それでも彼はめげません。愚直なまでにサクナヒメに切りかかります。

そして意外なことに応対するサクナヒメは楽しそうです。

それは彼女の中の武神の血、火のように猛る“それ”がそうさせるのでしょう。

 

「……いいなぁ」

「燃えますね」

 

それはめらめらと燃え広がり、姫と騎士も焦がします。

余裕でちらりとそちらを見るに、獰猛に笑うサクナヒメ。

ビシュナルに対し間合いを取り、呼吸を整える時間を与え、二人にほうきを突き付けて

 

「フレイもフォルテもかかってこい!まとめて相手してやるわい!」

 

威風堂々挑発です。

これには温厚な姫も冷静な騎士も乗ってしまうのも仕方ない。

ビシュナルとの戦いを見るに、胸を借りるしかないのですからためらっていても仕方ありません。

サクナヒメの挑発はもちろんですが、ビシュナルの奮戦が何よりも二人を焚きつけました。

 

「サクナもおとなげないというかなんというか……若いのう」

 

竜の間の入り口から広間を見て、やりあっている三人と一柱を眺めるのはセルザウィード

語り掛ける相手は米の女神の守役です。

てっきり苦言を呈すかと思いきや、彼もどこか嬉しそうです。

 

『良いのですよセルザ殿。おひいさまは豊穣神であると同時に武神なのです。

武によって威を示し、民を守り導くというのも本懐なのですよ。

本当に立派になられました。タケリビ様と共に戦い抜いた日々が思い起こされるようです』

「やれやれ……そういうものか。ヤナトの者は血の気が多いのぉ」

 

なんて言いながら友達の違った一面を見た気がしてちょっとうれしいセルザなのです。

 

最後にこの話のおまけです。

あまりにも手も足も出ないフレイが姫ポイントという特権を使って新たな祭りを開きました。

その名も猛火祭

かの神の父神にちなんだ祭りで、夏の、火の赤をイメージした奇祭です。

名前と由来は素敵なのですが……その内容は何と、住人総出でサクナヒメにトマトを投げつける祭りです。

有効打を最初に当てたものに豪華景品。

これはフレイも身銭を切りました。私怨なので。

 

ちなみに栄えある第一回の勝者ですが……

サクナヒメが用意したすべてのトマトを捌き切って高笑いして終わりました。

フレイがぐぬぬぬぬとなったのはいうまでもありません。

 

 




猛火祭が解放された!
観光客が増えた!(サクナヒメのファンも増えた!)

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