米の女神と風の竜   作:春谷

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3次分けつとはじめての中干し

「ぼちぼち中干しの時期じゃの

天気も良いし良い感じじゃ」

「がんばろう!」

「がんばらんぞ?」

「あれ?」

 

夏の盛り、右手を上にえいえいおーと元気良く突き上げるフレイに対し、サクナヒメはなに言っとるんじゃこいつ?とでも言いたげのキョトン顔です。

 

『おひいさま、中干しとはなにかお伝えしましたか?』

「おぉ?お~……うっかりしておったわい」

 

噛み合ってない姫と神のコンビにたいし、ポヨッと出てきて苦言を呈すのはタマ爺です。

やれやれおひいさまはこういうところがうんぬんかんぬん

 

ちなみに昨日のやり取りは

 

「明日から中干しに移るから朝集合じゃの!」

「うん!オッケー!」

 

位の感じです。雑。

姫の成長スタイルは懇切丁寧に教えてもらって、というよりは実践派の感覚派ですしサクナヒメは言わずもがな。

仲良くなって来たがゆえの少しの緩みといったところ。

 

最近はフレイが練習も兼ねて雑草抜き、サクナヒメが施肥、といった感じで自然に朝の田んぼの仕事を分担しています。

そこからフレイは畑仕事とペットの世話に移行し、サクナヒメは山へ野へ芝狩りに、といった流れで

昼食をガールズで取ることも多く、午後からは自由行動です。

 

サクナヒメがこの世界に来たのは冬の終わり、今が夏の盛りですから半年近くになりました。

かの神ももうすっかりセルフィアの一員です。

 

「むぅ、じゃあ中干しってなんなの?」

「三次分けつになった今、水を抜いて土を乾かす。おしまいじゃ。おつかれさん。

また少し経ったら水を張るけどの」

 

そうフレイの問いに答えて出水の樋を上げたらサクナヒメはどや顔です。

わざわざ立ち会わせたのは大事な行程だから見せておこうと言う気持ちが半分。

どういう反応するかの期待が半分といったところでしょうか?

 

「へ~!不思議だねぇ?

え?なんでなんだろう?

お米って水がたくさん要るんじゃなかったの?」

「お、おう……

……タマ爺や、説明してやってくれ」

『おひいさま……私も詳しくはないのですがな』

 

それに対する肝心のフレイの反応は極めて純粋な、子供のような好奇心が100%です。

母の遺産の大事な農書も斜め読みでそこそこの把握にとどまったサクナヒメからすると眩しい限り。

それゆえに、効果は知っているものの原理を押さえていないという。

そこで神は頼れる守役に丸投げしました。

まぁこういうところが”らしさ”でもあります。

最近武神として株を上げたばっかりにタマ爺はなおがっくりですが。

 

しかしそこは流石の一流守役、神剣”星魂剣”。

かの翁の説明はとてもわかりやすく

曰く、水を抜くことで地中の瘴気を抜き根の発育を促すと同時に

過剰な分けつ、言うなれば米にとっての枝分かれを防ぐものであると。

 

『海の向こうで果実を育てるときには剪定と言って良い枝を残し弱い枝を切ると聞きます。

まさに過ぎたるはなお及ばざるが如し、と言うことですな』

「と、言うことじゃ!

 

……おいフレイ、落ち着け!」

 

フフンと無い胸を張るサクナヒメ

守役が立派なのは主の手柄だとでも言わんばかりです。

……自慢の守役でなによりですね。

 

さてサクナヒメ、こちらへ来てから半年近く

そろそろ皆の個性もしっかりとつかめてきた頃。

フレイの特性も理解してます。

 

つまり

 

農業の話を聞いておめめをぐるぐるし始めたら赤信号ですね。

 

「落ち着くのじゃ~~~!!

わしは果実はわからんわい!!」

 

しゅばっと肩に抱えられとなりのとなりの畑の一角の果樹園エリアに拉致されるサクナヒメ

手足をばたばたさせますがファイアーマンズキャリーと呼ばれるこの抱き抱え方に対して小柄なサクナヒメが抵抗するのは困難なのでした。

 

おそらく戦闘力以外の謎の因果が働いています。

なにせこの抱き抱え方、一部の界隈ではお米様抱っこと言いますから。

 




剪定の眼を得た!
樹木の成長後もしくは果実の収穫後に毛刈りハサミを使って剪定ができる。
作物レベルが上がる。
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