米の女神と風の竜 作:春谷
「ひゃ~……改めて見ると大概じゃのぉ」
「ふっふっふっ!サクナちゃんのおかげで立派にレベルの高い“おおきなカブ”ができたのさ!」
“どや顔”しているフレイです。本日の舞台は田んぼではなくお隣の畑
サクナヒメのもろもろの手ほどきによってさまざまな新農法を得たフレイは夏の集大成として高レベルの巨大なカブを作ったのでした。
土の体力をトウモロコシによって回復しつつ、農地で作ったカブの種を選別し世代を回す。奇しくも輪作のような形で対応しつつ、都度雑草取りを行うことで成長過程でもレベルの向上が見込め、雑草は肥料や土への漉き込みに。
サクナヒメが来る前の倍ほどの質にまで上り詰めたカブを“おおきクナーレ”でおおきなカブに
出来上がった一品にはフレイもにっこり満足げです。
明らかにいろいろな物理法則を超越していますがここはセルフィア、この世界のルーンの心臓、そういうこともあるでしょう。
これが童話ならみんなで力を合わせてうんとこしょどっこいしょと抜くところなのですが、そこは流石の大地の姫。
不思議なパワーでスポンと収穫してしまいます。
「これだけあればぬか漬け何人前になるかのぉ?」
『半年は持ちそうですなぁ』
「ぬか漬け?」
ハッとするサクナヒメ。来るか?!おめめぐるぐる状態?!と警戒しますがフレイの目は正気の光を保っています。
良かった料理の話は狂気を呼ばないのじゃの、と安心した矢先、虚空からぷにぷにした存在が顕現します。
セルフィアの暴食を司る男、その名も
「私がポコリーヌ・トゥレ・ヴィヴィアージュ(重低音)
ぬか漬けとはお米をキレイにした時に出る糠で作ったつけ床に様々なものをつけたピクルスデスね。
カブの浅漬けはフレイさんも作るデショウ?あれをしっかり漬けたものです」
「どぅわっ!?急に現れるでない!?」
「ポコさん!」
ぷにぷにもちもち、じかし自己紹介は無駄に重低音のイケボなコック、ポコリーヌが急に現れ颯爽とぬか漬けの説明をします。
なにかの導きでだいぶ仲良くなったサクナヒメとフレイに自己紹介していますが彼のすることで細かいことは気にしてはなりません。
地味に明らかに食文化圏が異なるであろう料理も修めているあたり彼の食への知見(と欲求)のほどがうかがえます。食いしん坊。
「とはいえお米はまだ収穫前。ぬか漬けにできるのもしばらく後デショウ。
ということでフレイさんそのかぶちょっと味見させて?」
「嫌です!全部食べるでしょ!?食べるなら出荷したの買って食べてください!」
「そんなことありまセンよ?」
「こっちを見て言って下さい!」
そんな漫才を繰り広げる二人
わかりやすくしょんぼりするポコリーヌに突っ込むフレイ。
セルフィアでよくあるいつものやり取りです。ポコリーヌはマーガレットとの漫才が一番多いですが……次点でディラス。
「やれやれわかったわかった。わしが一個買い取るわい。
良さそうな素材とおおきなかぶ一個交換。フレイ?どうじゃ?」
「え?それはもちろんいいけど……」
「よしっ。ならばポコリーヌよ。調理は任せた。
わしは料理ができんからの。これだけおおきなかぶじゃ。
少しくらい減ってもわしはわからん。なにせ神は細かいことを気にせんのじゃ」
「サクナヒメ様……」
神たる包容力を発揮するサクナヒメにうるうると感謝するポコリーヌ。
なんか急にわざとらしく様とかつけちゃってます。
さてさて大喜びのポコリーヌ
ルンルンで食堂に向かいます。
やれやれとすっかり慣れた道をついていくサクナヒメが見つけたのはお小言を言うマーガレットでした。
遠目にはどうも言い合いをしている様子です。
やれ「ポコさんはいっつも食べ過ぎ!」
やれ「これはサクナちゃんのカブです!」
やれ「そんなこといってまたつまみ食いしちゃうでしょ!」
やれ「そんなことありませんヨ?」
やれ「こっちをみて言いなさい!」
どこかで見た光景です。具体的には5分前くらいに
付き合いの長い人間は知っています。
彼のぷにぷには伊達ではないと。
しかし幸か不幸かサクナヒメは未だその真骨頂を知らないのでした。
それゆえに
マーガレットもそんながみがみ言わなくても……
あそこまでおおきなカブだったら流石に大丈夫じゃろ?
そんなことを思うわけです。
……30分後には前言撤回することになりますが。
「だから甘やかしちゃダメって言ったのに……」
「反省したわい……」
結果おなか一杯かぶ料理を食べたポコリーヌと腹3分目で済んだサクナヒメなのでした。