米の女神と風の竜   作:春谷

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米の女神と初遭遇

「……なんじゃここは?」

 

見た目は10と少しの童のような可憐な少女。

黒々とした髪を結い、纏う着物は上等な物だと一目見てわかるものですが

この空間には調和していないものでした。

 

なぜならここはセルフィアの町の竜の間

どちらかといえば西洋の神殿といった趣です。

そして何より……ここは“竜の間”

 

「レオン!……!?何者じゃオヌシ?!どうやってここに来た

アヤツは……フレイはどうした?!」

 

「どぅえぇぇぇぇ?!大龍(オオミズチ)?!いやしかし……邪気はない?

何者じゃ、じゃと?我が名はサクナヒメ、豊穣神にして武神。

ヤナトの神にして、ヒノエの民である。

フレイとは人の名か?ずいぶん変わった名じゃが……」

 

眼前の竜に驚きながら、しかし尊大に名乗る少女、サクナヒメ。

といっても尊大に名乗るだけの名実はあります。

何せその生まれはその言のとおり豊穣神と武神を両親に持つサラブレット

それだけならただのダメ貴神だったでしょう。

ですが数々の冒険と、文字通り泥にまみれた経歴は、二つ世に恵みをもたらしついには災厄の龍をも鎮めたヤナト指折りの実力者です。

 

「神?竜ならぬ身にして神とな?しかしこのルーン……神というのもあながち嘘ではないのか?

いやそれどころではない!レオン!そなたが戻って来られたということは、フレイ……アースマイトに会っておらんか?」

「あのアースマイトははじまりの森で、おそらくアリアの遺した魔法だろうな。俺だけ飛ばして残っているはずだ。結局俺は……無様なものだな」

「あのたわけがっ!サクナヒメといったな?すまないが事情はまた後で聞く。少しばかり待っていてくれ!」

 

そういうと、風の竜は飛び立っていってしまいました。

レオンと呼ばれた狐耳の青年と、取り残されたサクナヒメ

どうにも展開が早すぎてついていけないサクナヒメの口からこぼれたのは

何とも素朴なつぶやきです。

 

「ほぇ~……立派な龍じゃのぉ~……タマ爺や」

『どうしましたか?おひぃさま』

 

語りかける口調にきょとんとしたのもつかの間

レオンの目に飛び込んできたのは驚くべき光景です。

なんとサクナヒメの抱えた鎌から頭程度の狛犬(?)が飛び出てきては

ふよふよと浮いてはいるではありませんか

 

「どうしたもんかのぉ~?大龍の灰にやられたときもここまでは途方に暮れんかったぞ?」

『船は未知の雲を進むもの……われらがマレビトになってしまったと考えるべきなのでしょうなぁ』

「わかるぞ?あやつらが頂の世に紛れ込んだんじゃ。何が起こってもおかしくないということくらいわかっておる。わしももう慣れた。それにしても……のぉ?

まぁタマ爺とはぐれなかったのが幸いじゃの」

『そうですな、まだまだおひぃさまに仕えさせていただきますぞ』

「しかし……一緒に船に乗っておったココロワは心配しておるじゃろうなぁ。

田右衛門に任せて田んぼは大丈夫かのぅ」

 

タマ爺と呼ばれる狛犬の会話には高い知性が感じられ目の前の少女の守役のような口ぶりです。

好奇心旺盛なレオンですが、これにはさすがに驚愕が勝っているような様相です。

 

「セルザウィード様あああああ!先ほどの物音、なんでございましょうか!?

ぬおおおお!くせ者!セルザウィード様はどうした!」

「なんじゃなんじゃ!?」

 

そこに追い打ちで執事長登場。

このセルフィアで最も熱の高い男“涙のヴォルカノン”です。

いささか……いささか?まぁそれなりに

思い込みと情緒の激しいところはありますが、その忠誠心と能力は折り紙付きです。

 

「あ~……ややこしいな。あいつの周りが賑やかなのはいつものことか。

ちょっと待て、俺はレオン、セルザウィードサマの……まぁ古い知り合いだ

アイツはアースマイトを迎えに行っている。別に見張っていてくれていいから少し待っていようぜ」

 

こんなくだりがこの世界のサクナヒメの”はじまり”でした。

この合縁奇縁の糸の端が、長く、長く伸びることとなります。

 

 

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