米の女神と風の竜 作:春谷
「ふぃー。極楽じゃったぁ」
ほかほか湯気を浮かばせながらさっぱりもちもち
その肌は炊きたて新米の如くつやつやのサクナヒメ
彼女はこちらの世界に来てからというもののこの宿“小鈴”に居候しておりました。
「あらサクちゃん、昼風呂とは通ですねぇ」
「おー、今日の分の仕事も終わったからの」
そう、なんと仕事です。
ぐうたら姫たるサクナヒメもタマ爺の圧力には勝てず
大地の姫たるフレイのやっかいになる気満々だった心を入れ換えて手に職をつけているのでした。
一つ、田んぼ指南役と少しの畑仕事
一つ、野草摘みと薪拾い
一つ、魔物の間引きと素材回収
全てがフレイのお手伝いです。
一方はサクナヒメのためならば身銭を切るとはばからないフレイ
一方は守役としての使命感に燃えるタマ爺
双方立てるための折衷案でした。
もともとヒノエ島でやっていたことの延長線上
しかも難易度は爆下がりです。
なにせ必死じゃありません。
サクナヒメは左団扇でこなします。
それでも多忙を極める大地の姫にとっては自分の仕事をいくらか引き受け、時間と素材をもたらしてくれるサクナヒメは大変ありがたい存在となりました。
流石にセルフィアでの生活費を全てフレイにツケているのはどうなんだと眉間にシワを寄せるタマ爺ですが、
当のフレイがニコニコなので、それはもうニッコニコなのでなんとも言えません。
閑話休題
そんなこんなでストレスフリーなスローライフを満喫しているサクナヒメです。
居候先の宿の女将たるリンファと看板娘たるシャオパイとはすっかり仲良くなりました。
「サクー。また服を持ってきたようだ。来てみると良いが」
「む?おぉ、また可愛らしい服をもってきたの。全くわしは神なのじゃから威厳というものがあるというに」
サクナヒメをあだ名で呼ぶほど仲良しになったシャオパイの最近のブーム
それは自分にとっては小さくなって着れなくなってしまった服をサクナヒメに”お下がり”することです。
最初はいやいやだったサクナヒメもなし崩し的に着ることになりました。
チャイナサクナの爆誕です。
なにせ自分は居候。
少しの我慢で関係性を良好に保てるのならば安いものでしょう。
最近は満更でもなくなって来たのは秘密です。
サクとサクちゃんなどという無礼千万と思うような呼び名もすっかり受け入れ始めています。
ボゲサグナだのバガサグナだのに比べれば可愛いもので。
ここに
妹分ができたとはしゃぐシャオパイ
かわいい娘が増えたと喜ぶリンファ
良き人の子じゃとのじゃるサクナヒメ
奇妙なねじれ関係が産まれた訳です。
「サクは可愛いな~」
「嫌じゃなかったらいつまでもいて良いですからね~」
「そうじゃのぉ、今のところ元の世界に帰る方法は雲をつかむような話じゃしのぉ、しばらく世話になるぞ」
「ここは旅人さんとかも多いですから~
フレイちゃんの手伝いをして、お客さんをいっぱい増やしてくださいね~」
「マーマはちゃっかりしてるな」
「あら~?そんなつもりじゃなかったんですけどね~」
「リンファはそういうところあるの
ほれさっそく客がきたようじゃぞ
いらっしゃいませぇ~」
女将の仕事そっちのけでおしゃべりに花を咲かせるリンファ
その代わりに聞きよう聞き真似で接客をするサクナヒメ。
まったくの、と言った様相に、あらあら~と言った感じで返します。
小鈴に看板娘が増えた瞬間でした。
これがリンファの特殊能力
うっかりが転じて福となす。
神すらも知らぬ塞翁が馬です。
お客さんはすっかりこの新しい看板娘に心奪われてしまいました。
この話には余談が一つ
少し未来の話です。
これをきっかけにサクナヒメ
たまーに気まぐれに番頭をやるようになりました。
少し未来では姫の頑張りが実り
観光客も増えました。
しかしそれ以上に極端に
小鈴にはチャイナサクナを紳士的に見守りに訪れるお客さんがちょっぴり増えました。
そんな日は決まって「う~さぶさぶ」と、シャオパイと、仲良くお風呂にはいるのです。
愛でたし愛でたし
サクナが番頭をするようになった!
観光客が増えた!