俺はもっと笑いたい   作:夏のレモン

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おはよう、お日様

 

 

やあ、久しぶり。俺だよ。テンプレ人生で大失敗かました元主人公さ。

 

久しぶりはおかしいって?いやいや、君達からしたら次の話ボタンを押しただけなんだろうけど、俺からしたら100年くらい経ってるんだよ。

 

とっくに両親も天寿を全うしてるだろうし、王様も三世代くらい交代したのかな? というかまだ国あるのかな? 地下暮らしが長すぎてよく分からないや。

 

もう完全に封印されてて情報入ってこないんだよね。魔法封じの首輪に鎖でぐるぐる巻き、更には地下深くに専用の牢屋を作られて監禁なう。今更気付いたけどお父様よ、この首輪さては特注品だな? 俺の魔力吸って無限に頑丈になる仕様ですねこれは。

 

キツイなぁ、暇すぎるなぁ、腹減ったなぁ。これ絶対忘れ去られてるよなぁ。

 

さっき100年くらいって言ったでしょ? なんで分かるのかと言えば数えてたからなんだよ。分かる? 100年ずっと数字を数えるしかやる事がなかったんだ。凄い暇なのが伝わったかな?

 

なーんて事を話していると、久しぶりに誰かがやってきた。

 

ポッチャリで偉そうでオカッパ頭で、言い難いけどすんごい頭悪そうな顔した子供が大勢の兵士従えてやってきた。ボンボンの息子って感じ。

 

次の国王様なんだって。

 

へー、まだ国あったんだね。で、そろそろ終わるんだね?(失礼)

 

そんな事を考えていると新しい王様は目を輝かせて熱い視線を送ってきた。

 

え? なに? 俺っちのイケメンっぷりに欲情したの? ごめんなさい。そっちの趣味はありません。

 

かと思ってたら違った。身体に興味はあったけど不老不死の方だった。

 

もう凄い崇められた。どうやら昨今の流行りでは不老不死にあやかりたくて仕方ないらしい。

 

魔法陣の上で怪しげな儀式させられたり、

 

血を抜き取られたり、

 

生贄捧げられたり、

 

気づけば怪しい宗教の始祖的なものになってた。

 

無駄だよ? 俺ただの人間だよ? だから子羊やら子供やらの生贄いらないよ?

 

そう言いたかったけど舌が麻痺してて全然伝わらなかった。むしろお怒りだと勘違いされて信者の一人を生贄に捧げてきた。いらんっちゅーねん。

 

やっぱり100年も経てば色んな事忘れるんだろうね。あんなに俺を怖がってた人々がキラキラした目を向けてくるんだもん。ただ不老不死なだけの俺を神聖な存在として崇めちゃうなんて人間って単純っ。

 

信者さん達のお願い聞いたりするんだけどさ、これがまたドロドロしたものばかりでね。

 

誰それを殺してくれとか、金が沢山欲しいとか、亭主を誑かした女を呪ってくれとか、奪われたわけでもないのに女を奪いかえしたいとか、共に世界を終わらせましょうとか、人の闇を見た気分だよ。

 

特に面白いのが何にもしてないのに感謝されることだ。ほんと、縋りつければなんでもいいんだろうね。

 

気が付けば俺の生まれた国は怪しい宗教国家になった。

 

まあ、それでも俺に自由はないんだけどね。崇められるだけ崇められて、依然ガッチガチに簀巻き状態です。捧げられるのは生贄ばかりでロクにご飯もくれない。願うだけ願って俺の要望はなにも聞いてくれないんだわ、これが。神様って損な役割なんだね。

 

でも転機はやってきた。それは、ある日突然やってきた。

 

地震、雷、火事、親父。厄災がこれでもかと言うほど襲ってきたのだ。民達は餓えに苦しみ、家族を失い、多くの悲しみが国で溢れたらしい。直接見たわけじゃないから知らんけど。

 

どうにかしてくれってめっちゃ頼まれた。

 

いや、無理ですけど?(笑)

 

天災とかどうにもならないし、というか無理にせよ何にせよどうにかしろってんならこの拘束解いてくれない?(半ギレ)

 

そんなこんなで、いつまで経っても何もしないもんだからとうとう信者達がブチギレた。

 

邪神じゃ!! 疫病神じゃ!! やはり魔王の生まれ変わりじゃ!!って王様が先頭に立って責めてきた。

 

最初に崇めたの貴方ですけど? 随分と手首が柔らかいようで、クルックル回りますね。

 

結局誰も疑問を持つことなく全て俺が悪いということになった。なるほど、これが理不尽か。

 

あれよあれよと神輿に担がれ何処ぞの谷底へ叩き落とされた。不思議なことに、その数日後に厄災は治ったらしい。当然宗教も消滅した。まあ、結局バカ王がバカな事して国も消滅することになったんだけどね。

 

いや、そんな事はどうでもいいんだ。重要なのは落下の衝撃でとうとう首輪が壊れたことだ。そして地下から解放されたということ。

 

俺がその事に思い至ったのは谷を這い上がってからだった。それでもしばらく朝日に目を奪われて気付いたのは大分後になったけど。

 

赤とオレンジの境目くらいの優しい光だった。自然と口元が緩んだ。

 

おはよう、お日様。

 

なんでか涙が流れた。流れる涙が残っていた事に自分でも驚愕。それでも今だけは浸っていいはずだ。俺が許す。異論は認めない、絶対に。

 

 

………………

 

 

太陽が登り真っ白な光に変わったところで、俺は人気の無さそうな山の中腹辺り行き全力で雄叫びをあげた。

 

YEAAAAAAAAAAAAAAA!!

 

開放感が半端じゃない。やまびこも嬉しそうに返ってくる。

 

あースッキリした。これからどうしようかワクワクが止まらない。

 

ん? 復讐? ないない。そんな感情、とっくの昔に枯れ果てました。

 

それに折角手に入れた自由を復讐なんかにシフトチェンジしたくない。あ、でも神様は殴る。あいつだけはボコボコにしてチート全部消させる。

 

そうやってウキウキ気分で山を降っていると、山へ芝刈りに来ていたお爺さんに出くわしてしまった。

 

固まるお爺さんに俺は爽やかな笑顔で挨拶した。挨拶は社会人の基本だろ?

 

でもお爺さんは挨拶を返してくれなかった。

 

え、シカト? 辛いんだけど……。

 

なんて思ってたんだけど、お爺さん、立ったまま気絶していた。

 

なんて気高い年寄りだ。意識を失ってなお、地に屈することはないってことか。

 

俺はお爺さんに敬礼し、武士の情けで口元の泡を拭いてあげた。

 

泡吹いたままじゃみっともないからな。

 

ついでにお爺さんの服を拝借した。ほぼ全裸だったから助かった。

 

さあ、服も着たし、準備は整った。俺の冒険を始めよう。

 

ん? なんでお爺さんは気絶してるのかって? ああ、そうか、君達には俺の容姿が分からないんだったね。

 

自慢だけど、俺はイケメンだった。金髪赤目、目鼻立ちが整った顔を持ち、高身長で、無駄な脂肪は極限まで落としつつ、シックスパックがハッキリと見える細マッチョ。

 

要するにイケメンです。ウインクしようものなら子供からお年寄りまで射留めてしまう、少女漫画の世界でキャーキャー言われるイケメンです。

 

でも皆さん、お気付きかな? 俺はこの話を過去形でしているんだ。

 

そう!! 現実にいたら間違いなく袋叩きにしたくなるようなイケメンはもういない!!

 

というわけで今の俺の姿がこちら。

 

なんということでしょう、スーパーイケメンは見る影もなく、全身は余す事なく真っ赤に爛れバケモノのよう。もともと赤かった瞳は、充血してより真っ赤に、自慢の金髪は一本たりとも残っていません。目は窪んで、真っ白な歯は剥き出しです。(歯並びはいいです。凄くいいです)

身体の方も当然隅々まで大火傷、皮膚全てから血管が浮き上がってます。

 

悲惨だと思うかい? でも俺は気にしないよ。いまの開放感に比べれば些細なことさ!

 

でもこれだと少し目立つのが気になる。それにヒリヒリする。

 

そうだ、包帯でグルグル巻きにしよう。それで年中長袖、長ズボンを着用してフードと手袋を常備しておけば割と普通に見えるんじゃないか?

 

旅をするなら目標も欲しいな。あてのない旅はそのうち飽きるだろうし。

 

……決めた。旅の目標は神様との再会だ。そんでもって途中で面白そうなものがあったら首を突っ込んでみよう。時間だけは腐るほどあるからね、余裕を持って旅をしよう。

 

そうだ! このままチート無双してもつまらないだろうし縛りプレイで行ってみよう。絶対に誰かを傷付けてはいけないってルールを課すことにする。

 

うん、その方が絶対面白い。世界最強クラスの技量と才能があるのに一切まともに行使されることなく終わるなんて、神様に抵抗してるみたいでカッコいいじゃないか。

 

ハードだねえ、ワクワクするよ。当然、魔獣を狩るのも無しだ。これからの時代はベジタリアンさ。何に襲われても話し合いで解決しよう。諦めなければ思いは通じるさ。

 

さあ、行こう。

 

目指すは東。太陽が昇る方向こそ今の俺に相応しい。

 

 

………………

 

 

こっからは余談だから、気にしなくてもいいよ? たださっそく面白い話を聞いたからみんなにも聞いて欲しいんだ。

 

これは、俺が自由になってから半年後、とある村を歩いていた時にふと耳に入った怪談話なんだが。

 

どうやら、近頃気味が悪い怪物が出るそうだ。

 

事の発端はとある勇敢な青年が怪物にバッタリでくわした事から。

 

真夜中に現れたそいつを青年がクワで殴りつけたところ、怪物はあっさり倒せたそうだ。

 

青年は拍子抜けしながら怪物を山に捨て帰宅することにした。

 

だが山を降る途中、何かが背後から追ってきた。振り返っても何もいないが足音だけは近付いてくるのだ。

 

気味が悪くなった青年は足音を振り切ろうと山を駆け降りたが、足音は家の中まで追いかけてきた。

 

青年はクワを手に隅で待ち構えた。だが待てど暮らせど足音の正体は現れない。

 

安心した青年がホッと肩の力を抜いた直後、先程倒したはずの怪物が上から降ってきた。怪物は泡を吹く青年に近付きそっと何かを呟くと、何もせずに去っていったんだそうだ。

 

なんて言ったのかは分からない。でもそれ以来、勇敢だった彼は家から出なくなってしまったそうだ。出入り口全てをガチガチに固めて、誰も入れなくなった。

 

友人達が呼びかけたところ、なんとか聞き取れたのは『奴が来る……奴が来る……』という声だけだった。

 

怖いよねえ。怪物はなんて言ったんだろう。

 

おっと、変な空気になってしまった。気分転換にこれ食べるかい? この前、友達になった人から貰った干し芋だよ。え? 奪ってきたんじゃないかって?

 

とんでもない。そりゃ出会った当初は、この外見にビックリされて警戒されまくったけど。でも諦めずに距離を縮めようと頑張ったら家まで招待してくれたんだ。

 

流石に悪いなぁ、と思ってお土産だけ貰ってすぐ帰ったけどね。勿論、ちゃんとお礼は言ったよ。

 

『マタクルヨ』

 

ってね。ん? なんだいその反応は? なんか引かれてる? あ、まさか……

 

 

また俺なにかやっちゃいました?

 

 

 

 

 

 

 






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