そこは常連客の集う憩いの場。
そこにやってくるのは・・・。
社築が花畑チャイカの店、『喫茶花畑メイドインヘブン』に訪れるとジョー・力一、舞元啓介、ルイス・キャミーが先に飲んでいた。
彼等は其々挨拶をしながら社を迎える。彼は空いた席に座るといつものウイスキーを注文した。
「社さん、久しぶりじゃない!」
ルイスがワインの入ったグラスを揺らしながら笑いかけるが当の彼は困った顔で差し出されたウイスキーグラスを小さく掲げると一気に中身を煽った。
その様子に力一が驚く。
「偶に来たと思ったらペース早すぎでしょ⁉︎」
「・・・すみません。でも、飲みたい気分なんです」
何処か暗い表情でカウンターに俯く社はおかわりを要求しながら、チャイカを見る。
視線を向けられたマスターは何も語らず、彼のグラスに酒を注いだ。
「おいおいおい。穏やかじゃないな。どうしたんだ」
肴のスルメを咥えながら焼酎を飲む舞元。
・・・ちなみに。バーであるチャイカの店に焼酎は置いていない。だが数本のそれがあるのは全部舞元が持ち込んで、自ら消費しているものだ。手酌で氷の入ったグラスに注ぐ舞元は一升瓶をカウンターに叩きつけると社に向き直る。
「どうした? なんかあったか?」
「・・・」
その問いかけにグラスを握りながら押し黙る社畜、もとい社築。琥珀色の液体を一気に喉に流し込むと酒臭い息を長く吐いた。
そうして。彼の口から溢れ出たのは・・・。
「その、実は・・・。ひまわりに仲の良い男性の友人が出来たみたいで・・・」
「「「「あ〜」」」」
深刻に悩む父に対して、どこか察した様に答える男性二人と女性一人と、オカマが一人。
そのオカマであるチャイカは他の四人に見えないカウンターの内側で気が付かれないように何かをしていた。
「事あるごとに『笹木』という名前を言うんですよ。今日はそいつと何を話したとか、何をしたとか、嬉しそうに話すあいつを見るとなんと言うんですかね・・・」
苦しそうに話す社は注がれた焼酎を呷るとグラスを置く。すかさず舞元は笑いを堪えた顔で並々と酒を注ぐと続きを促す。
「ほうほう・・・。それでそれで?」
「その『笹木』って奴はだいぶひまわりと仲が良いみたいでして、今度家に遊びに来るみたいなんです」
「なるほどなぁ」
「わたしはですね!」
注がれた酒を疑わずに呷り続ける社築。
「ひまわりがわけわからないやつのどくがにかかるのがゆるせないんですよ!」
お前は何を言っているんだ?
そう四人は思ったが、あえて口にはしなかった。でもそれはかつて酔った彼を迎えに来た少女を知っているからだ。
『パパ? ・・・もう! 仕方ないなぁ。ひまがいないと意外とだらしないんだね。 ほら帰るよ〜? まったく!』
今日と同じ様な状況で彼を迎えに来た少女は何故か嬉しそうに父の姿を見て笑っていた。その笑顔を見ていたルイスは悲しそうな社に話し始める。
「ねぇ社さん。ひまちゃんが『彼氏が出来た』って直接言ったの?」
「えぇ⁉︎」
酔った瞳で首を傾げる父親はルイスを睨みつける様に目を見開いた。そんなこじらせたオタク君の顔を冷静に見つめた彼女はもう一度問う。
「あの子が『彼氏』が出来たって、そう言ったの?」
「・・・それは」
無論そんな事、ひまわりは一言も言っていない。でも話の流れからどこか決めつけていた自分がいた。
「ちゃんとあの子と話をした? いつの間にか、『自分の想像の中』で話を作って聞いてたんじゃない?」
「・・・」
黙り込む社は呆然とカウンターを見つめていた。その混乱した想いを捻じ伏せるが如くグラスを空け、静かにそれを置く。そんな社にこの場で唯一の女性は続いて話しかける。
「社さん。仮に、仮によ? その笹木って子が男の子だったとして、ひまわりちゃんがその子の事を『好き』なのだとしたら・・・貴方はどうしたいの?」
「・・・俺、どうしたいんだろう」
「なんだよそれ!」
絞り出した社の言葉に舞元は爆笑を浴びせかけると彼のグラスに再び酒を注いだ。明らかなオーバーペースであったが、男には飲みたい夜がある。それを感じて彼は手は止めない。否、むしろ呑ませてやろうと嬉々として酒瓶を傾けた。その顔は面白がっているみたいだ。
「社、お前さ。ひまちゃんのことどう思ってる?」
「俺は、ひまわりの事を・・・」
社は酒をちびちびやりながらポツポツと静かに、でも徐々に熱を込めながら語り始めた。どんどんと増える酒量。その殆どが共に飲んでいる飲み仲間から次々に注がれる事に気がつかず、いつしか社築は壊れ始めた。
「あいつの事は本当の娘みたいに思ってんすよ・・・」
「そりゃ、あんな歳の娘がいる歳では無いですし、俺自身はただの平凡なゲームオタクです」
「でも・・・あいつを引き取ると決めた時から、俺はひまわりの父親代わりになるって決めたんです・・・」
「ひまわりには悲しい顔は似合わない」
「その名前に似合う様に太陽みたいに笑っていて、欲しい・・・」
いつの間にか涙目で話す社のグラスに何杯目かの酒を注ぎながら、舞元は顔を綻ばせていた。ルイスも力一も、チャイカでさえも彼を笑わない。
ただ目の前の不器用な男の優しさに笑っていた。
「社さん。それもう殆ど答えを言っているじゃないですか」
「ほんとにね」
力一とルイスはそれぞれのグラスを空けながら苦笑いした。それにグラスを拭きながらチャイカは続く。
「・・・年頃の娘って、大変よね。子供だと思ってたら、いつの間にか大人への階段をちゃんと歩いているんだもの。男親からしたら未知の存在なんじゃない?」
そう静かに微笑んだチャイカは社のグラスにウォッカを注ぎ足すと、表情をくるりと変えた。
「ま、オカマのワタシにはよくわかんないだけどね!」
そのいきなりの変貌に呆気に取られ、次の瞬間には爆笑の渦に包まれるカウンターの面々。目の前で笑い転げる彼らを満足げに眺めた花畑チャイカは冷蔵庫を開けるととっておきの肴を取り出す。
とある伝手から貰ったイベリコ豚の生ハム。なかなか高級な代物を食べるタイミングを失っていたチャイカは惜しげもなくそれを皿に盛ると、飲み仲間の目の前に出してやった。
真っ先にそれに反応した力一は驚き、フォークで一枚持ち上げる。透き通るようでいて確かな肉の香りを漂わせるそれはまさに芸術品だ。
「これ・・・」
「流石は力ちゃん」
「いいんですか⁉︎」
その言葉にマスターは自分のグラスにも酒を注ぐと、彼のそれに合わせた。
周りの面子も新たなツマミに舌鼓を打ちながら新たな酒を注文する。
・・・社だけはいつの間にか何かの酒がグラスを満たしているのでしなかった。酔いの回った彼はただただグラスを傾ける。でも時折、ツマミを摘むのを忘れない。
そんな彼の飲み方に疑問を覚える男が一人いた。舞元は僅かに目を細めると社を見遣る。まだ何か蟠りを残した感のある男の表情は晴れてはいなかった。
やれやれ、と肩をすくめると彼に対して救いの一言をかけてやる。
「んで? 『お父さん』は他に何の悩みがあるんだ?」
その一言に弾けたように背筋を伸ばした社畜は舞元に困った顔を向ける。反応を見ていた周りも『まだ面白そうな事があるぞ』と視線を社に集めた。
胡乱な瞳の彼はまだ語るべき事があるようで少しの間静かに酒を飲むとぽつりと話を再開した。
「そのですね・・・」
「「「「うんうん」」」」
八つの瞳が新たな話題に輝いていった。
「うちの息子の話なんですけどぉ」
「葛葉君ね!」
社から話を聞いていた『息子』の存在。ルイスは身を乗り出すと興味津々といった感で嬉しそうに笑った。
「あいつは結構生意気、というか。あいつ・・・ドーラやひまの事を『母さん』とか『姉ちゃん』って呼ぶのに、未だに私の事を『やしきず』って呼ぶんです・・・」
悲しそうな彼はまた一杯酒を呷ると沈んだ顔でおかわりを催促した。応えたチャイカが今度はスピリタスを注ぐとそれをも一息で飲み干す社。僅かに顔を顰めたが、もう酒の強さもわからないほど潰れ始めているのだろう。ただ酒を飲むマシーンとなった彼は更に注がれた透明な可燃性の液体を見つめる。横で舞元がライターを取り出すのを力一が止めた。
「私は葛葉の父親になれていないんじゃないか、って不安になるんすよ」
「というのも・・・あいつを追ってきた奴等が来た時、私は何にも出来ませんでした。ドーラがそいつらを倒してくれている中、なんとか近くに来た奴をバットでぶっ叩いてやる事しか出来なかった」
「変な術みたいなのを使ってくる奴等が相手に特別な力のない私が出来ることって無くて」
「でも。ひまわりが抱きしめた葛葉を守らなくちゃいけなくて・・・」
「だから私は・・・俺は二人の父親として、頑張ったんすよ!」
「でも・・・」
そこまで話していた社はままならない彼との関係を流し込むように酒を飲む。
「ほとんど役にたてなかった・・・。そういうところがやっぱダメなんですかね」
「俺みたいなただの人間が父親のフリするのは葛葉にとってあり得なくて・・・。だから、あいつは俺の事を『父親』と認めてくれていない。そんな気がするんです」
そこまで語り終えると社はまたも俯き、悲しそうに黙り込んだ。その様子を見たチャイカはチラリと視線を下に落とす。
「待て待て。お前、本当にそう思ってんのか?」
「葛葉君は社さんの事をちゃんと信頼してますよ」
口を開いた舞元は呆れた口調で話し始める。同調する力一もフォークを置き、社に向き直る。
二人は以前に、社築を迎えに来た彼の息子と会っていた。
『あの〜、ここに社築って人、来てません? ・・・あぁ、いたわ。すんません、うちの親父が迷惑かけちゃったみたいで。え? そんなに飲んでんすか? 人に教育教育言ってるくせに、だらしねぇなぁ』
彼らの記憶の中の彼は確かに社の事を『親父』と呼んでいた。でも家では違うようだ。だからこそ社はこんな様なのだろう。
「いや、でも・・・」
反論しようとする社であったが、もう上手く口が回らないのかモゴモゴと何かを口籠る。
「まぁ、彼だってちょうど反抗期だろうしな」
舞元は焼酎をグビリと飲むと、社の肩をバンバンと叩いた。痛むそこに手をやりながら社築は年上の彼を見る。
「生意気盛りってのも男の子の特権だろうに。・・・いや、違うな。だからこそ、お前もっとフランクに接してやればいいんじゃないか?」
「え?」
「この前だって、彼と一緒にゲームしたって話してたろ?」
前回此処に訪れた際、社は葛葉と最近流行りのゲームをしたと言っていた。ゲームの事はよくわからなかったが、楽しそうにその情景を話す社と、その先に見える彼の子の笑顔はしっかりと浮かんできた。
「父親と遊べるってのは子供にとっちゃ楽しいもんだ。だからもっと話せ話せ! 『父親』と『息子』って事はまず忘れろ。んでもって、『男』として付き合ってけよ」
「そういうもんなんすか、ね・・・」
チャイカは彼の目の前に新たなグラスを置くと、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを注いでやった。よく冷えたそれをそれまでの酒同様、一気に飲んだ社築。少し落ち着いたのか立ち上がるとフラフラと歩き出す。
「トイレ、いってきます」
「おう!」
「気をつけてくださいね」
見送られて店奥のお手洗いに入っていく社築。その背を見ながら、またチャイカは視線を下に向かわせていた。そしてクスリと笑う。
そんなマスターの不可思議な行動がさっきから気になっていたルイス。怪盗を名乗るだけあり、観察眼には自信があった。
「チャイカさん、一体さっきからどうしたの?」
その問いかけに顔をあげたチャイカは今度はニヤリと笑った。
そして静かに、三人に、とある物を見せた。
数分後帰ってきた彼は席に戻ると、水をもう一杯注文する。すぐさま出てきたそれを、今度は少しずつ飲むとゆっくり息を吐いた。
ちなみに吐いてはいない、何がとは言わないが。
「落ち着いた?」
「スゥーーー。はい、申し訳ない」
今度は息を吸いながら、ルイスに答えた彼は、ゆっくりと肴に手を伸ばす。いつの間にか目の前に置かれていた生ハムを楽しみながら、酔いを覚ましていった。
その反面。彼の両隣に陣取った舞元と力一は酒が進んでいるようで、普段からただでさえ高いテンションが天井をぶっちぎり始めていた。
半地下にある店内は声がよく響く。
「僕気になっている事があるんですけど!」
「どうした、力一! なんかあったか?」
酔っ払いと化した二人は社に絡む絡む。それは言葉だけではない。両サイドから腕を回し、三人で肩を組む様に物理的にも絡む。二人の行動に驚き身を竦ませた社はまた一口水を飲む。
「社さんって、ドーラ様の事をどう思ってるんですか⁉︎」
「ぶふぅっ!!」
力一からの唐突な追及の答えは言葉では無く、噴き出された水だった。その行先はカウンターの先のマスター、花畑チャイカ。
「・・・なにすんのよ」
「す、すまん!」
口元からダラダラと水を垂らしながら謝る彼は慌てて手元の布巾を取ると、辺りを拭き始めた。チャイカもチャイカでタオルを取り出すと顔を拭き、新たな布巾で付近を拭う。
その行動を見て笑う大人二人。ルイスも口元を押さえて笑いを堪えていた。
一通り清掃が終わると、見計らっていたジョー・力一は再び同じ質問を口にした。
「で! 社さんはどう思ってるんですかぁ?」
「力一お前・・・だいぶ酔ってんな?」
「答えてくださいよ!」
「答えてくださいよ?」
同じ質問を重ねる舞元はすかさず空になった社のグラスに酒を注ぐ。
またもや表面張力限界に注がれた酒を眺めながら、社の目が泳ぐ。
救いの視線を正面に送るとマスターは若干冷たい目線を返してくる。それを訳すればきっとこうだろう。
『ワタシに粗相したんだから、答えなさいよ』
・・・これは駄目だ。
今度は右に二つ隣、唯一の女性である怪盗へ。だが彼女は微笑むばかり。
いや違う。
『私も気になります!』
そう語っていた。
・・・あぁ神様、助けてくれ。
そう願ったが、どうやら神は留守らしい。前に読んだマンガでも言っていた。きっと休暇でもとってベガスに行っているのだろう。
四面楚歌。まさに言葉が相応しい。
助けはない。それだけはよく理解できた社は本日何度目かのグラスを呷る。
こんな事、素面で話せるものかよ!
逃げ道は無い。ならば語るしかない。
静かに酒杯を置いた彼はゆっくりと口を開く。
「俺は、ドーラの事を・・・」
最初は楽しそうに聞いていた面々であったが、いつの間にかあまりにも真剣に語り続ける社を見て揶揄う事をやめて聞き入っていた。
「俺は普通の人間です。アラサーのゲーオタで社会の歯車のただ一つ」
「誇れるものなんてないし、誇りたいものもなかった」
「でもそんな何にもない俺の事を面白いと言ってくれたドーラの笑顔が眩しくって・・・気がついたら、目で追う様になってたんですよ」
「拗ねてむくれた顔」
「心底驚いた顔」
「敵と戦う時の顔」
「笑いかける顔」
「その全てが綺麗で、美しくて」
「これはひまわりといる時とも、葛葉といる時とも違う感情なんだと思います」
「『家族』への感情じゃない」
「『女性』への感情なんです」
「きっと一人の『女性』だけへの愛情なんです」
「俺は・・・ドーラが好きだ」
「俺は、彼女を愛してる」
酒の力を借りて、話し続ける彼はそれから何度からのおかわりをしながらも最後までその想いを語り終える。
酒とは違う紅で顔を染めた社築は両手でグラスをしっかりと、でも優しく握りしめた。
まるでそれが大切な彼女であるみたいに。
あまりに正直に語り終えた彼に四人は言葉が出なかった。けしかけたのは自分達とはいえ、ここまで赤裸々に語るとは思いもよらなかったからだ。
「あ〜。そ、そうなのね」
自分に言われているのではないと分かってはいたが、あまりに真っ直ぐな告白に社と同じくらい顔を真っ赤にしたルイスはチラリとチャイカを見る。
「社さんって、見た目以上に熱いというか・・・」
さっきまでのノリは何処へやら。力一も助けを求める様にチャイカを見た。
「・・・うん! おじさん、感動したぞ!」
口から出るのは称賛の言葉だったが舞元も目を泳がせ、やがてチャイカを見つめる。
そしてとうのチャイカは。
「・・・」
冷や汗を流していた。
というか四人とも視線が行方不明だ。
馬鹿騒ぎしていた数瞬前が嘘の様に静まり返る『喫茶花畑メイドインヘブン』
その違和感に疑問を持った社は周囲の変化を観察する。頑なに自分と視線を合わせようとしない四人だったが、何故かチラチラと一点に何度も何度も視線を送っているのが感じられた。
それはマスターチャイカの手元。
カウンターで隠されたその手元に四人の視線が不自然に集まる。
不可思議な反応は、酔ってはいたが普段とても聡明な彼に嫌な予感を感じさせた。
不意に立ち上がりチャイカの手元を覗き込む彼の目に飛び込んだものは・・・。
『テレビ通話中』の一台のスマートフォンだった。
画面の中には自分の家族達。
音は聞こえないが、確かに家族達が映っている。
自分に気がついたのであろう。
彼らはそれぞれの反応をする。
笑顔で手を振る、ひまわり。
爆笑している、葛葉。
そして顔を真っ赤にした、ドーラ。
大切な、社の家族達はそれぞれの反応で彼を迎える。
ゆっくりと顔をあげ、社築は花畑チャイカに質問をする。
「おい。『いつから』だ?」
「・・・最初から」
「全部か?」
「・・・全部」
力一、舞元、ルイスから彼の顔は見えない。だが、相対したチャイカの表情から全てを察した。
「チャイカ、てめぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「こんや は おたのしみ ですね」
「お前表出ろやァァァ!!」
こんな状況でも煽りを忘れない。
それがバーのマスター、花畑チャイカであった。
ドアベルの音が高らかに鳴りながら、扉が開かれる。
「こんばんは〜」
「ばんは〜」
「お、お邪魔するぞ」
ひまわり、葛葉、ドーラは社を回収すべく、チャイカのバーに赴いていた。
「ドーラ様! それに二人も!」
入り口に近く真っ先に反応したルイスは三人を出迎える・・・のだが。
三人は店内の光景を見て、揃って口を開く。
「「「え? どういう事?」」」
そこには壁に磔にされたチャイカ。
その前に座り、酒を呷る悪魔の表情の社。
そんな社に酒を注ぐ舞元と力一。
ひとつの地獄絵図があった。
「社さん、本気で怒っちゃって・・・」
困った顔で助けを求めるルイスに三人は笑う。
さぁ、大切な父を、旦那を迎えにいこう。
家族を失った自分を。
いきなり転がり込んだ自分を。
追手に追われていた自分を。
私を。
わしを。
俺を。
迎え入れてくれた彼を。
今度は自分達が迎えるんだ。
おまけ1
バーの一番奥。端っこの席に座る社とドーラは遠くで話す子供達と常連の会話をBGMに語る。
「なぁ、築」
「・・・なんだ?」
「ありがとな」
彼は何も答えず、自分のグラスを彼女のそれに小さく当てた。珍しく格好つけた彼に返されたのは、肩にかかる彼女の重みだった。
嬉しそうにそれを確かめた社築はグラスを傾ける。
おまけ2
「え? さくちゃんは女の子だよ!」
出されたオレンジジュースを飲みながらあっけらかんと答えるひまわりはケラケラ笑うと初めて座るバーのカウンターで楽しそうに笑った。
「まったく〜パパは本当にしかたないなぁ」
「それだけひまわりちゃんのことを心配してるのね」
縛り付けられ、痛んだ手首を摩りながらチャイカが答えると太陽花の少女はもっと輝く笑みを浮かべる。
「えへへ〜」
「愛されてるね〜、ひまちゃん」
「本当だよ」
舞元と力一の言葉に本間ひまわりは答える。
「ひまね! 今、みんなと過ごせるのが楽しいんだ!」
おまけ3
午前は過ぎて、明け方。
『喫茶花畑メイドインヘブン』は閉店を迎える。
常連客達も店を去り、チャイカが洗い物をこなす中で聞こえてくる会話があった。
「ほら、やしきず。帰るぞ」
「うぅ・・・もう一杯」
「もう閉店なんだってさ、帰ろうぜ」
「・・・おう」
べろんべろんに酔った彼を背負うと葛葉は歩き出す。
先を歩く母と姉に続きながら。
「さぁ、俺達の家に帰ろう、『親父』」
四人は目指す。
彼らの家へ。