恋するメジロマックイーンは怪我にも抗いたい   作:ジャスSS

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 うおおおおおおお今回からパンパンの良バ場です!
 でも話はまだまだ続くぞ!


愛しい貴方は、控えめで(上)

 ────

 子供の頃。

 家の中に囚われていた私は、この世界の多くを本から吸収していた。

 空に広がる宇宙の誕生、地面を創造した地球の成り立ち、この日本という国の二千年以上の歴史。

 何億年も昔から続くこの世界に、自分は僅かな時間しか共に在れない。

 一時壮大なことを考えたこともあったが、自分がやってもちっぽけなことだと思い、身近なことに興味を示すこととした。

 私が興味を持ったのは人間社会の最小単位・家族のこと、特に夫婦という関係。

 気になって母に、おばあさまに、知ってる限りの夫婦に馴れ初めを聞いてみたりすると、皆お見合いという単語の一点張り。

 そういうものなのかと思って本を頼ってみると、意外な結果が返ってきた。

 それは、夫婦になるには好きだという必要だということ。

 そんなこと聞いたこともないから、またも母に聞いてみる。

 すると母は──

 

『私たちとマックちゃんは違ってくるからね。 あなたが誰かと結婚する時、それは好きという気持ちでなることになるのよ』

 

 そう言われてからというもの、誰かを好きになる、という感情を体験したくもなった。

 そんなある日、私は一つの小説に出会った。

 物語は単純で、対立する二つの家それぞれの子息が恋に落ち、駆け込みで挙式を挙げたものの、闘争に巻き込まれていき、結局夫婦は死んでしまうという、悲劇的な話。

 私はその中のヒロインに、どこか親近感が湧いていた。

 名家の女子として生まれ、家の言うことに抗わずに成長した、深窓の令嬢。

 でも恋だけは誰にも譲れなくて──まあ、その勝気さが仇となったのだけれど。

 可愛いその子に似ているなんていうのはただの自惚れでしかないが、それでも親しみを感じるからしょうがない。

 そんな彼女が悲劇を演じることになった理由はただ一つ。

 愛を家よりも取ったこと。

 でも自分が彼女なら──そうしてしまう自信がある。

 家のメンツなんてどうでもいい、だって好きな彼から求められてるのだから。

 子供の時点でそんなロマンチシズムに浸ってるのだから、こんな性格に育つのも当然か。

 でも由緒ある家系というのがそれだけで成り立つわけがない。

 親戚の姉さんが結婚するって聞いて話をしたら、どうやらお見合いで決まった婚姻だったそうで。

 それを聞いた時は、自分もそうなるという気持ちが強まっていくのを感じ取っていた。

 でも──そんなのは絶対に嫌。

 お姉さんはお見合いでも愛は出来るよって言ってはいたけど、本物の恋には絶対に負けるだろう。

 なら私は、家に逆らっても、友に反対されても、自分を貫くと心に決めた。

 それこそ、物語のあの子のように──

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 

 ────

 結局、マックイーンを家の人に渡した後に疲れたでしょうと言われて、自分はこの豪華な館に泊まることになってしまった。

 当然着替えはなかったのだが、メジロ家が持つ数少ないメンズ服を借りてなんとか凌ぐこととした。

 雨で冷えた体を温めるべく風呂に入った後、マックイーンの状態が気になったので、その借りたメンズ服を身にまとってじいやさんの所に顔を出すと──

 

『お嬢様なら何も心配いりませんよ。 今は体を休めるべく眠っておりますが』

 

 と聞けたので、ひとまず安心。

 そこまで聞ければ十分なので踵を返そうしていた、その時。

 

『すみませんトレーナー様。 明日の朝、お嬢様がご起床なさるまで、部屋にいていただけますか?』

 

 一瞬意味が分からなかったので、それは自分が寝る部屋かと聞いたら、なんとマックイーンの部屋の意だということを理解して驚愕。

 いくらトレーナーといえど、女性の寝起きを間近で見るのはデリカシーがないのでは──

 と思いながらも俺は今、ベッドで寝ている彼女の隣で椅子に座っているのだが。

 

「──しかし、本当に整理された部屋だな」

 

 部屋にはそれこそ、子供らしい乱雑さが全く感じられなかった。

 多分マックイーンがいない間に使用人が目一杯掃除した成果なのだろうが、それでも元々の綺麗さというのが残ってる気がする。

 さすがはメジロ家の令嬢、といったところか。

 

 ──メジロ家の令嬢という単語が出た瞬間、心はずんと沈む。

 昨日の出来事を思い出す。

 とにかく内容の濃いイベントではあったが、なんやかんやハッピーエンドに近い形で終わったと記憶している。

 が、最後の接吻──もといキスは、トレーナー業のバッドエンドを導くには適当な導線となってしまった。

 彼女の愛を明後日の方向に散らせるという、自分史上最大のミッションを悲しくも引き受けることになってしまったが、心の中でどこかそれを嫌がるような声が聞こえてくる。

 当然だ、俺も彼女のことが好きなんだから。

 しかし自分に彼女の愛を受け取る資格はないし、それに応える自信もないし、何より社会が絶対に許してくれないだろう。

 だからこうやって諦めてるわけで、それをヘタレだとか肝が小さいだとか言われる筋合いはない。

 これは真っ当な理由であり、世界の常識である。

 

 そんなことをうだうだと悩んでいたら、マックイーンの様子がジワリと変わっていった。

 ──寝起きを拝めるのも、これが最後かも。

 そう考えながら、白紫のシンデレラのお目覚めを待った。

 

 

 

「──ふぁあ……って、トレーナーさん!?」

「おはよう、マックイーン」

 

 そこからちょっとばかり時間がたってたが、ようやくマックイーンが目覚めてくれた。

 可愛らしい寝ぼけまなこをしながら、少しばかりの寝癖をまとい、まさにオフという感じの彼女。

 ここにトレーナーという人間がいることにはさすがに驚いきつつ、昨日の出来事について確認をしてくる。

 

「その……トレーナーさん。 昨日は確かその、キスを──」

 

 いじらしい様子で聞いてきたのは、やはりこの質問。

 でも意識がなくなる寸前だし、もしかしたらあやふやかもしれない──

 少し心が痛むが、嘘でもついて誤魔化そうと試みる。

 

「なんの話? そんなことしてるわけないでしょ」

「え……そ、そうでしたか……」

 

 あれ、意外とすんなりと上手くいったな──

 彼女が赤面しながらも、少し笑っているのが気にはなるが。

 

「早速で悪いけど……もうすぐ朝ごはん用意されるから、準備だけでもしてほしいな。 立てるか?」

 

 俺に言われるまま、マックイーンはベッドから降りて二本足で立とうとする。

 昨日は怖くてなかなか見れなかった、エメラルド色のキャミソールを、白いパーカーで覆った姿。

 

 

「……大丈夫です。 少し疲れはありますが、痛みはあまり。 歩行にも問題はないかと」

「良かった……じゃあ、俺部屋出るから。 外で待ってるから、準備できたらこっち来て」

 

 さすがに安堵の表情を浮かべ、足取りを出口へと向かおうとする。

 

「分かりましたわ……あ、そういえば今時間は──」

「八時。 学園だったら、遅刻ギリギリの時間に起きたな」

 

 壁の上部、時計を指さし確認させる。

 そこまでしてから、俺は一時間居座ったこの部屋からすっと抜け出した。

 

 

 

 ────

 扉が閉まる音が聞こえてから数秒後、私はパジャマからいつの間にか準備されていた普段着に着替えるべく行動を始めた。

 それと同時に、今の今まで我慢していた笑顔を解放していく。

 

「……トレーナーさん、嘘があまりお上手ではないようで」

 

 一人、好きを伝えた彼に向けて言葉を発する。

 起きてすぐのタイミングでは、昨夜の記憶はあやふやな状態であった。

 だからトレーナーさんに説明を求めたわけで。

 しかし一瞬での脳細胞の活性化により、その記憶は鮮明に思い出されたので、彼がどんなに嘘をついても事実隠蔽することはできないのだ。

 そして思い出されたタイミングで嘘がつかれたものだから、面白くなった私は少しばかりの悪戯をしかけてみることにした。

 それは私も嘘をつくこと──まんまと彼は引っ掛かり、昨夜のキスを私は覚えてないと、どうやら勘違いしたようだった。

 さて、どのタイミングでバラシてやろうか──

 そんなことを考えてるうちに、いつの間にか着替えが終わってしまったようだ。

 パジャマと同じ、エメラルドのサロペットで、白いブラウスに彩を加える。

 これが自分の、彼に対する勝負服。

 早く彼の顔を見たい──そう思い、すぐさま声を掛けて。

 

「トレーナーさん! 今向かいます!」

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 

 ────

「え、寝ている合間にレントゲンを!?」

 

 メジロ家豪邸の朝食室。

 ここで暮らしていた頃はこの部屋で朝食を取っていたので、私としては懐かしい気分になった。

 だがトレーナーさんには聞きなれない部屋名だったからか、非常に驚かれたものだ。

 そして今は私が驚いてる──

 

「うん。 眠りがあまりに深いから、今のうちにやっちゃえーって主治医さんが。 それでも起きなかったのはすごいけど」

「そ、そうでしたのね……どれだけわたくし、疲れていたのでしょう……」

 

 身の毛もよだつ事態だが、過ぎたことなので気にしないようにしなくては。

 それに検査が寝てる間に行われたというのは後々煩わせることがなくなったので、一応良かったということにしておく。

 一つそう考えて、皿にわずかに残された人参を放り込んだ。

 ちなみに今日の朝食は目玉焼きと野菜、白いご飯を添えてある。

 

「言う必要ないかもだけど、結果とんでもない大怪我は見つからなかった。 まあ、悪く言えば昨日と全く同じってことだけど……」

「あ……」

 

 そうだ、自分は今怪我をしていて──

 机の下で、右足が微かに震えた。

 

「今の今まで、いつもと変わらない生活を送ってましたので、気にしてませんでしたが……わたくしはもう、走ることはないのですわね……」

 

 こうして言葉にしてみると感じる、現実の重み。

 今までレースの為として暮らしてきた日常が、今日を境にガラッと変わる。

 これから自分は、どうしていけばいいのか──

 

「トレーナーさん、わたくし──」

「大丈夫。 気にするな」

 

 私の不安ごもりの声を聞いてか、撫でるかのように話してくれ、安心を与えてくれる。

 霧がかっていた心情が、ジワリと晴れてゆく。

 

「これからのことはちゃんと考えてある。 ちゃんとメジロマックイーンが輝けるように、な」

「それなら、安心いたしましたわ。 流石わたくしのトレーナーさんです」

 

 そのお褒めの言葉がこそばゆいのか、目の前の彼は頬をわずかに紅潮させる。

 

「でも……もっと先、引退した後の、所謂セカンドライフに関しては、わたくし自身で決めていかなくてはいけないのですね」

「まあ……それは確かに、そうだな」

 

 しかしこの話をした途端、一気に彼の顔が複雑なものへと変わってゆく。

 どこか迷いとか、諦めとか、そういった雰囲気を出していて。

 あまり私が好きなタイプの表情ではないことは明らかだった。

 

「どうしましたの? そのような顔をなされると、美味しいものも美味しいと感じられませんわ」

「いや、なんもない。 心配かけてごめんな」

 

 少し心配する様子を見せると、すぐに元の朗らかな顔を取り戻そうとする。

 幾分かは戻っていたものの、やや暗さは残ってしまっているようだ。

 

「……そうでした。 検査が既に完了したということは、もう学園の方に戻ってもよいのでは?」

「それもそうだな。 一応昨夜に会長とかたづなさんに引退の旨は伝えててな、厄介なメディアさんのブロックも既にやっててもらってるから、まだそれなりにゆっくりできるけど……」

 

 手を回すのがあまりに早い。

 それもそうか──メジロマックイーンというウマ娘の動向には、あらゆるメディアが競争するほどの注目度を集めているからだ。

 そんなウマ娘が電撃引退──尋常でない報道合戦が繰り広げられるだろう。

 それを思えば、彼が既に手を打ってるのは相当に感謝すべきものだ。

 

「ありがとうございます、トレーナーさん。 ですが、会長や理事長秘書さんにとっては突然の対応を迫られたわけですし、すぐにでも行って直に報告するのが筋というものでは?」

「うん、分かった。 じゃあご飯食べ終わったら、身支度して向かおうか」

 

 それに返事をすると、彼は早速席を立ち、寝ていた部屋に戻ろうしている旨を私に伝えた。

 ──と同時に、人参の残された皿をこちらに差し出してきた。

 

「トレーナーさん、人参が残ってますけど……?」

 

 そう聞くと、彼はバツの悪そうな顔をして答える。

 

「いやそのな……実は人参が苦手なんだ。 残すのは失礼だし、マックイーンに食べてもらおうと思ってね」

「なるほど……そういえば、今まで一緒にいて人参を食べてらっしゃるのを見たことがありませんでしたわね……」

 

 ほとんどのウマ娘が好物と答える人参。

 彼女たちと過ごす時間が多いトレーナー達もまた、人参が自然と好きになってると聞くが──どうやら彼の場合は違うようだった。

 

「確かに見せたことはなかったな。 最後に食ったのはそれこそ、小学校の頃だった気がするなあ」

「……ということは、今では食べられるようになってる可能性もあるのでは? アレルギーとかならともかく、せっかくの機会、もう一度挑戦してみてくださいな」

 

 と言って、その皿を差し返す。

 バツの悪い彼の顔は、その深刻度を増していた。

 

「いや……久しぶりとなるとな、ちょっと怖くて。 だから美味しく食える人にあげた方が良いかなとは思ったんだけど」

 

 確かに、彼の考えも一理あるだろう。

 だが食材というものは作った人の想いも込められていて、この人参は彼に食されることを一番に望んでいるに違いないはず。

 それに──将来メジロの令嬢の伴侶となってもらうなら、食わず嫌いは絶対に直して頂けませんと。

 とはいえ、このままいけば話は平行線になってしまう。

 ──名案が思い付きましたわ。

 

「では、トレーナーさん……」

 

 私は箸で件の人参をつまみ、一瞬食べる仕草をする。

 それにホッとした様子のトレーナーさん。

 その隙をつき──すぐさま、彼の口元へと人参を運んだ。

 

「わたくしがその……食べさせてあげますから。 ですから、ちゃんとご自身でお食べくださいませ」

 

 いきなりのことで当然ビックリするトレーナーさん。

 私も正直、恥ずかしさでどうしようもなく、かなり赤面しているはずだが、ここまで来たら背に腹は代えられない。

 あくまで彼の食わず嫌いを直す為──そう何度も唱えて、口を開けるようせがむ。

 

「いや、そこまではしなくても──」

「いいから、早く口をお開けください!」

 

 恥ずかしさが先に限界になり、突っつくように開口をねだる。

 そこまで言うならという様子で、しぶしぶ彼も口を開けた。

 

「いいですわね、絶対に食すのですよ」

「ああったよ」

 

 口を開けたまま返事をするその姿は、かなり滑稽な感じだった。

 

「でははい、あーん……」

 

 口の中に人参を運ぶ。

 まるで自分が、彼のお世話をしているような気分になり、その思いに体中が興奮を覚える。

 彼が人参を捕らえたのか、箸もろとも口が閉じられる。

 あれ、そういえばこの箸、自分のでは──

 

「ん、んー」

「──あ、申し訳ありません! 今抜きますわ!」

 

 苦しい呻き声が聞こえて我を取り戻し、急いで箸をこちらに戻す。

 彼はそのまま咀嚼をしていたが、そんなことは私にはどうでもよくて。

 

「んー……うん、意外と美味しかった。 ありがとうマック──マックイーン?」

 

 呼びかける彼のこえも届かず、私は一人呆然としていた。

 当然間接キスなわけだが、実は私の方にまだ料理が残っている。

 ということはつまり、もう一回は間接キスをしなくてはいけないということ。

 この事実に気づいたが為に、顔を真っ赤にして尻尾をぶんぶん振り回し、耳がしおれているのだ。

 

「えっと……もう行くね。 あと、これからは人参を食べていこうと思う。 こんなに美味しいわけだしね」

「──え、えぇ! 是非、そのようにしていただければ……と、思いますが……」

 

 あまりに混乱が極まってたからか、言葉遣いがかなり変になっている。

 少し怖くなったのか、彼はそれ以上は何も言わずに静かに、その場を去って行ってしまった。

 

「……はぁ。 せっかくの機会でしたのに、まったくわたくしは……」

 

 一人残された部屋で、そう呟くメジロマックイーン。

 今まで彼に甘えたことはあっても、彼に甘えさせるという経験はあまりなかったので、貴重だと思って意気込んだのだが──

 結果的にそれよりも意識することができてしまい、またそれ以降の進展も特に起きずという、悲しい結果となってしまった。

 顔はまだ高温を維持したままで、どうにも平常心に戻るのは困難な感じであった。

 

「ですが、残ってるレタスを食すには、この箸しか……」

 

 目の前の箸を見る。

 そこにはトレーナーさんの成分と自分の成分が交わってて、これから私はそれを口につけるわけで──

 

「って、昨日直接にキスしたのですから、そんなこと気にしなくてもいいではありませんか! そうですわ、一度キスをしたのですからこのくらい──」

 

 独り言を言いながら、昨日の出来事を思い返す。

 するとみるみるうちに、体温が上がって──

 

「あーもう! 何も考えずに食べればいいのですわ!」

 

 結局は勢いに任せ、レタスを掴んで口に押し込むこととなった。

 そうして口にしたレタスの味は──

 

「……キスの味がいたします……」

 

 どうやら甘かったようだ。

 

 

 

 

 

 ────

「──では、今から学園に向かうということ、会長さんに伝えておきますね」

「よろしくお願いします、たづなさん」

 

 俺は電話越しで繋がるその女性へ、コンタクトを取っていた。

 これまでもチームシリウス、並びにマックイーンへの支援を何度もしてくれたその人には、正直頭が上がらない。

 今日も突然の情報封鎖を敢行してくれたおかげで静かに学園に行けそうなので、更に貸しを作ることになったわけだが。

 

「はい。 では事故に気を付けてくださいね、トレーナーさん」

 

 その言葉に形式的な挨拶を返して、電話を切る。

 そして先ほどの出来事を巡って、思案を広げていく。

 

「……やっぱり、俺のこと好きなのかな、あいつ」

 

 問題となる人物は当然、芦毛のメジロマックイーン。

 いきなり、所謂"あーん"ってものをされたという事実は、俺の心を熱くさせるのと同時に、自惚れだと思いたかった自分の推測を裏付けるものとなってしまった。

 当然複雑な気持ちにもなるわけだ。

 

 そう思いながら、スマホに届いた一通のメールを開く。

 そこには若干のたどたどしさを含んだ、日本語文が記載されている。

 

「……神のウマ娘か。 イギリスにはそんなのもいるんだな」

 

 記載されているのは、トレーナーである俺に対するある英国のウマ娘の紹介文と、ぜひ来てくれというリクエスト。

 俗に言うスカウトというものだ、しかも海外からの。

 

「欧州三冠ウマ娘の復帰手助けか。 そんな任務、どうして俺なんかに……」

 

 スマホを手に、あれこれと悩む。

 通常であればこんな話、そうそうあるわけがない。

 海外の超大レース、凱旋門賞だけでなく、本場イギリスのダービーも制した名ウマ娘。

 そんな選手のレースを手助けする仕事だ、とんでもないスカウトである。

 受けるのは当たり前──だが俺にはそれよりも大事な、チームシリウスとメジロマックイーンがいる。

 だからこんな話は受けないのが、俺の中の筋だ。

 だが──今の俺は、とんでもない問題を抱えている。

 メジロマックイーンという女性と、どう付き合っていくか。

 もちろん彼女のことは好きだ、というより愛している。

 そして自分は愛してるからこそ──彼女と付き合うのは良くないと思っている。

 だから俺はこのスカウトを、受けるべきなのかもしれない。

 マックイーンと、身も心も離れる為に──

 

 

 




「マックイーン先輩、凄く乙女でしたね! 私のこの喉もうるおっ──げほっげほっ!」
「あら、あなたも乙女を感じたのね? 私たち気が合いそうね……ね、スカーレットちゃん?」
「え? そ、そうですねパール先輩──この人たちの喉なり、大丈夫かしら……」

 良バ場とは言いましたが、最後だけちょいと重くなってます。
 ちなみに今週は国内でGⅠないですが、香港GⅠの方で日本馬が複数頭出る予定です。
 皆さんで応援しましょー






 今回の謎ウマ娘はゴールドアリュール。 マックイーンの厩舎の後輩です。
 喉なりの影響で引退してしまいましたが、種牡馬としてスマートファルコンを生むなど、ダートの名馬を多数生みました。
 喉なり繋がりでの出演と各々なりました。(ダスカは姉さんが喉なり)
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