「はぁ、、、」
もう何度目か分からないため息を吐いていた、家から持ってきた地図を見てもラグナロク教会の位置が分からず先程から同じ所をグルグルと回っているだけだった。
念のためと色んな物をリュックに押し込んできたのだがそれの重さに耐えきれず適当な所に座り込んでしまっていた。
「どうしたの?」
そう聞こえて顔を上げると男の人と女の人が立っていた。男の人は何処にでも居そうな服装で黒髪の短髪、女の人は長い桃色の髪に黒い防具にマント、白いタイツに似合う真っ赤なブーツを履いていた。
「ラグナロク教会に行きたいんですけど道に迷っちゃって、、、」
そう言うと二人が顔を見合わせていた、そして「僕達も教会に用があるから案内してあげるよ」そう言ってくれた。
お礼を言って立ち上がりその二人について行く事に、その道中に話を聞くと男の人はユウって名前で奏官をしているようだ、それで女の人はキル姫でティルフィングって名前のようだ。
「えっと、名前はなんて言うの?」
「僕はコウって言います」
「コウ君は奏官になりたいんですね」
「はい、それでここに来たんですけど迷子になっちゃって」
「たまにはそんな時もあるよ、あれがラグナロク教会だよ」
ユウさんが指さした方を見ると大きな教会の様な建物が見えてきた。あれ程大きな建物なのに何故気が付かなかったのだろう?
「おいでよ」
「はいっ!」
そう言われて教会の中へと入って行き受付の人と親しそうに話をしていた。
「ユウさん、ティルフィングさんに任務がありますよ」
「分かったよ、それより奏官になりたいって子を連れて来たんだけど」
「あぁー今奏官試験やってないんですよね」
「えっ……?」
そう言われて頭が真っ白になってしまった、てっきり教会に行けば奏官になれるものだとばかり思っていたしそういう試験って毎日やってると思っていた。勝手な僕の思い込みだったのだけど。
「頼むよマリア、なんとかできないかな?」
「うーん、次に試験があるのがいつかまだ決まってないんですよね、、、」
「そこをなんとか」
「私に言われても、、そうだ!先にキル姫と触れ合ってみるっていうのはどうですか?」
受付の人が何か閃いたような事を言っていた、だけど試験がやっていない事にショックを受けていた僕には聞こえていなかった。
「コウ君聞いていましたか?」
「えっ?あっ、聞いて無かったです…」
「マリアの提案で試験はまだだけど先にキル姫と触れ合ってみないか?って」
「はい!喜んで!」
「じゃあ教会の空き部屋を貸してあげますね、それとキル姫の図鑑を貸してあげますね」
「ありがとうございます!」
受付の人に分厚い本を貸して貰う事ができた、この本に一体何人のキル姫の事が書かれているのだろうか?まだ中を見た訳じゃ無いけど楽しくなってきた。
「それで、宿代と本の貸し出し料金で500,000ゼニーです」
「えっ?お金取るの!?」
「はい、その辺りで宿を借りるより安いんですよ♪」
そう言われてリュックから財布を取り出して中を確認したのだが財布の中に入っているお金だと支払う事はできなかった。タラリと冷や汗が垂れるのを感じた。
「もしかしてお金持っていませんか?」
半泣きになりながら頷くと受付の人が困った顔をしていた。
「うーん、じゃあ僕が立て替えとくよ、それで問題無いかな?」
「はい、じゃあユウさんの口座から引いときますね♪」
「良いんですか!?僕、初対面ですよ!?」
「うん、良いよ、そのかわりちゃんと奏官になって働き出したらで良いから返してね」
「はい!この御恩は必ずや!」
「のんびりで良いからね、じゃあ僕達は任務に行ってくるよ、行こっかティル」
「はい♪頑張って下さいね♪」
ありがとうございました!!
去って行く二人を見届けてから受付の人と話をしていた、聞くとあの二人はこの業界だとかなり有名な人らしく最強のキル姫と最強の奏官らしい。
「じゃあ案内するのでついて来て下さいね」
「はい!お願いします!」
受付の人に案内されて教会を歩いて行くと扉の前で立ち止まった。
「ここの部屋を使って下さいね、必要な物はある程度揃っているのでもし足りなければ自分で揃えてくださいね」
「はい!」
「明日からキル姫の見学を開始するのでそれまでに本に目を通しておいて下さいね?じゃあ私はこれで、また分からない事があったらなんでも聞いて下さい」
そう言って持ち場へと戻って行った。それを見送り扉を開けてリュックを下ろし一息つくその前に部屋を見ておこう。立ち上がり部屋を覗いて行く。
ベッドに机、キッチンにお風呂、トイレもあり洗濯機も空調機も付いていた、そして何より広い、まだ見てないけど部屋が後4つはあるだろう。一人暮らしじゃなくて一家で住んでもまだ広いぐらいだ。こんな部屋借りて良かったのだろうか?
そんな疑問を断ち切るように椅子に座り借りた本を読む事に。何ページか目を通した時にいつの間にか眠ってしまっていた。