ロンギヌスの槍って知ってる?っと尋ねると大体の人はあのキリストの脇腹を突いた槍でしょ?と答えてくれると思う。それかアニメが好きな人ならばエヴァンゲリオ●でしょ?と言うかも知れない。
少し調べたのだけど『聖槍』と呼ばれていたり『聖遺物』だったりとよく分からなかったのだけどそのロンギヌスが神聖な槍だと言う事は伝わった。
でも疑問が残るのはロンギヌスは槍の名前ではなく槍を持っていた人の名前だという事だ。ロンギヌスの槍と言われれば確かに。と納得がいく。
ロンギヌス「の」槍なのだから。
よく分からない事を長々と書いてしまったけど今日はロンギヌスに会いに行く日なのだ。因みにファンキル内での話をすると一番最初に水着になったキャラだったり僕がファンキルに課金をし始めた原因だったりする。可愛いよね水着ロンギヌス。
そんな事を思いながらパタンと図鑑を閉じて椅子に座ったまま身体を大きく伸ばしていた。時計を見るともうすぐマリアさんが来てくれる時間だ。
「おはようございます♪今日はロンギヌスと一緒に教会で手伝いをしてもらいますね♪」
そんな事を思っていると来てくれた。いつもならノックがあるのにそれをしないでいつも以上の笑顔で部屋に呼びにきてくれた。
「おはようございます。今日はご機嫌ですね?」
「はい♪今日は私の手伝いに強力な助っ人が来てくれるんですよ♪」
「ふむ」
そんなご機嫌なマリアさんと部屋を出ていつもマリアさんが仕事をしている事務室の前で分かれる事に。
「ロンギヌスはこの先の資料室にあると思うのでそこに行ってくださいね♪今日の業務の事はロンギヌスが知っていますので」
「はい!ありがとうございます!」
その後にマリアさんが教えてくれた資料室を探しながら廊下を歩いていた。えっと?配膳室、会議室、図書室、資料室。ここか。
資料室のドアをノックして返事をもらってからゆっくりとドアを開けて部屋の中へと入ってゆくとショートカットの女の子が一人作業をしていて僕の方を向いてくれた。
「お、おはようございます、、、」
「おはようございます!僕コウって言います!今日一日よろしくお願いします!」
「はははは、はい!!こちらこそよろしくお願いしますね。私ロンギヌスって言います、、、」
聖槍や聖遺物と聞いていたのでもっと堂々とした人だと思っていたのだけど僕に挨拶をしてくれたロンギヌスは自信がなさそうで遠慮深いっていうかなんていうか。
「僕は何を手伝えば良いですか?」
「はい、えっと、、、そこのダンボールに入っている本を棚に戻して下さい」
「はい!分かりました!」
僕が元気よく返事をするとなんとなく驚かれてしまった。もう少し小声で話した方が良いのかな?
そんな事を思いながら言われた通りにダンボールに仕舞われている本を棚に戻してゆく。一応種類ごとに分けてるけど大丈夫なのかな?
「ロンギヌスさん、種類ごとの方がいいですよね?」
「そうですね、使う人が分かりやすいようにお願いします」
「了解です」
そう言われたので引き続き本を戻してゆく。そんな二人に会話は無く本を置く音だけが部屋に響いていた。
「………」
「………」
作業に文句はないのだが退屈だった。ロンギヌスさんに話しかけようと隣で作業している姿を見るとその顔は真剣で話しかける事をためらいそのまま無言で作業が進んでゆく。
そんな時ロンギヌスの逸話を思い出した。もちろんあの脇腹を突いたという話だ。隣のロンギヌスさんを見ると背の届かない所に背伸びをして両手を上げ作業をしていた。脇腹をつつく絶好の機会だろう。
だけど思い止まりその姿を見ている事に。先程伝えたように背伸びをしている為緑色の上着がめくれ少しの隙間からシャツが見えていた。そのまま見ているとシャツもめくれ脇腹が見え隠れしている。これは脇腹をつつけといっているのだろうか?
少し考えて部屋を見渡すと小さな脚立を見つけそれを取りに行く事に。
「ロンギヌスさん、これ使って下さい」
「あ、ありがとうございます」
そう言って怯えたような笑顔を見せた後にそっと脚立を受け取りそれを台に作業をしていた。それを見てから僕も本を戻してゆく事に。
(えっ、僕ってそんなに怖い顔してるのかな、、、?)
先程ロンギヌスさんが見せた怯えた笑顔を思い出してなんとなくショックを受けていた。後でマリアさんに聞いてみる事にしよう。
その後二人で黙々と作業をしているとダンボールに詰められていた本を片付ける事ができた。キリもいいので少し休憩をする事に。
「ロンギヌスさんはなんか飲みます?僕買ってきますよ」
「私は大丈夫です。コウ君の分だけで良いですよ」
「遠慮しなくて良いですよ?好きなの言ってください」
「本当に大丈夫なので、、、」
泣きそうな顔で言われたので諦めて自分の分だけ買ってこようと部屋を出て自販機を探す事に。マリアさんが居る受付の近くにあった事を思い出しそこに買いに行こうと歩いていた。
(僕の分だけで良いって言われても一人だけなんか飲んでるのは気が引けるし、だけどロンギヌスさんが何を飲みたいのか分からないし、、、)
なんかを適当に買っていけば良いかも知れないけどもしロンギヌスさんが嫌いな物を買って渡してもきっとロンギヌスさんはそれを飲んでくれるだろう。それはそれで気が引けるし、、、。
そんな事を自販機の前で考えていたのだが答えが見つからず困っていた。そうだ、こんな時は。
そう思いマリアさんがいる事務室に行きマリアさんに相談をしてみる事に。
「マリアさん、今大丈夫ですか?」
「はいはい?どうしました?」
「ロンギヌスさんにジュースを買いたいんですけど何を買えばいいか分からなくて」
「それならトマトジュースを買っていけば大丈夫ですよ♪」
「あざっす!」
「はい、そうくると思って準備しておきましたよ」
「ありがとうございます!」
入り口でマリアさんと話していたらその後ろからシャルウルさんがトマトジュースを二本渡してくれた。昨日はマリアさんがあんなに嫌そうだったのに同じ部屋にいるって事は何かあったのだろうか?それよりも相変わらずの察しの良さである。
お礼を言ってジュースを持って部屋まで急いで行きゆっくりとドアを開け部屋を覗くと椅子に座っているロンギヌスさんがいた。そこに歩いてゆく。
「はい、これなら飲んでくれるかな?」
「それはトマトジュース、、、」
そう言って僕とトマトジュースを交互に見ていた。例えるならエサを目の前に置かれて警戒しているがご飯が食べたい野良猫のような。この例えは失礼か。
「貰ったジュースだから気にせず飲んでくださいよ」
「なら、いただきますね」
ロンギヌスさんにジュースを渡してプルタブを起こすのを見届けてから僕もジュースを飲む事に。少しトロッとした喉越しとトマトの酸味と甘味が良い感じである。
「ロンギヌスさんはトマトも好きなんです?」
「はい、昔からトマトが好きなんです」
「ならさ早く片付け終わらせてトマト食べに行きませんか?」
そう言うと身を強張らせた後棚の影に隠れヤバい人を見るような目で僕を見ていた。どうやら失言だったようだ。それを弁解する為に何かを言おうとしたのだが言葉が思い付かず口をモゴモゴとさせていた。
「コウ君も私の力が目当てなのですか…?」
「力?力ってなんの事です?」
「隠さなくても良いんです。私に近づいて来る人は私の力が目当ての人ばっかりですから」
そう言いながら棚の後ろに完全に隠れてしまった。この状況をどうにかしないとロンギヌスの話が詰んでしまう。何か良い言葉を考えなければ。
「…………」
ヤバい、何も思い付かない。僕が悩んでいる間にもロンギヌスさんは僕に違和感を持ち続けるだろう。どうにかして誤解を解かなければ。
「えっと、僕はマリアさんにお願いして奏官の見習いをしています。ロンギヌスさんの力の事は今知ったしそれに今の僕には力なんて必要ないですよ」
悩んだ末に出てきた言葉を口にしてロンギヌスさんの反応を見る事に。しばらく棚の影を見ているとすこーしだけロンギヌスさんが顔を出してくれた。
「本当に私の力目当てじゃないのですね…?」
「はい、ほんとうですよ?信じられないと思いますけど本当です!」
少しの沈黙の後やっと棚の影から姿を見せてくれた。さて、ここからどうしようか。とりあえず話題を変えよう。
「作業はどれぐらい残ってるのです?」
「後は、、、ダンボールをたたんで置き場に戻せば終わりです」
「あと少しですね。なら終わったらご飯行きませんか?」
「えぇっと、、、私、、、」
「まぁまぁ、そんな事言わずにお願いしますよ。僕にロンギヌスさんの事を教えて下さい」
かなり恥ずかしかったけど勢いで押してみる事に。これでダメだったらこのままロンギヌスさんのお話は終わりにしよう。
そんな心配をしていたらロンギヌスさんが消えそうな声で(分かりました)と言ってくれた。物語続行が決まった瞬間である。
そうと決まれば急いでダンボールを片付けてお昼ご飯を食べに行く事に。時計を見ると午前11時半、少し早いから店も空いているだろう。
「ロンギヌスさんは何が食べたいです?」
「お任せしてもよろしいでしょうか…?」
「ふむ」
そう言われてお食事処を考えると前にレーヴァテインに連れて行ってもらったお店を思い出しそこに行く事に。
「………」
「………」
教会を出てそこに行くまで僕達に会話はなくやけに周りの人の話し声が大きく聞こえていた。
「はい、先に選んでください」
「はい、ありがとうございます」
なんとかその店にたどり着き一番奥の席に座りメニューをロンギヌスさんに手渡しお冷を取りに行き席へと戻ってきた。
「あっ、、ありがとうございます」
「気にしないでくださいよ」
その後お冷を飲みながら一生懸命にメニューを見ているロンギヌスさんを見ていた。トマトが好きならケチャップを使っているナポリタンかオムライスだろうとそんな事を考えながら。
「私これにします」
そう言ってロンギヌスさんが指差すメニューはカルボナーラだった。うん、まぁ、、、ね?
そんな感じでメニューを店員さんに伝えてロンギヌスさんの話を聞く事に。
「じゃあ僕にロンギヌスさんの事を教えてください」
「私の事なんて知っても、、、何も良い事なんてありませんよ」
「うーん、、、」
会話が続かない。僕が何を話せば良いのか分からないのもあるしロンギヌスさんはネガティブな事しか言わないし、、、。それに僕と目を合わせようとせずチラチラと店の出入り口を見ている。直ぐにでもこの場から逃げ出したそうだ。
話を聞くよりまずロンギヌスさんの警戒心を解く事にしよう。
「じゃあ先に僕の事を話しますね、聞いてくれますか?」
「分かりました」
ゆっくりと落ち着いた口調で自分の事を話していた。奏官になりたいって事、妹を異族に殺された事、僕みたいな思いをする人を無くしたい事を。
「コウ君も力を求めているのですね、、、」
「確かに僕はキル姫の力が欲しいです。僕の願いはキル姫の力無しでは叶いませんから。だけどなんだろ、、無理にとは言わないです、キル姫だって戦いたくない人もいると思いますし。それなら怪我負った人や壊された街を治したり少しでも被害を受けた人達の力になりたいです」
ロンギヌスさんを見ながら力説すると気が付けばロンギヌスさんが僕の目を見ていてくれた。
「コウ君は優しいんですね」
「優しいですか?僕は自分のしたい事を言っただけですよ?」
「私はそう思います。私に近付いてくる人はそんな事言う人はいませんでしたから」
「ロンギヌスさんは過去にどんな事をされていたのです?良かったら話せる範囲で話して下さい」
「………私は、、、」
そう言った後ロンギヌスさんが話してくれた。ロンギヌスという名を冠している為に力があると思われそれを利用しようとする人達に追いかけ回されたり聖槍と崇められた事もあった。だけどロンギヌスさんは争いたく無いし崇められる程の存在でも無いと拒否し続けたという。
「私にそんな力もありませんし聖槍だなんてとんでもないです」
そう言って再び俯いたロンギヌスさんは誰がどう見てもキル姫ではなく一人の少女だった。
伝説の武器の名を冠すキル姫。それは僕達人間が勝手にそう言っているだけで本当は違うのかとそんな事を思っていた。
「お待たせしました」
「あ、ありがとうございます」
話と思考に夢中で料理を取りに行くことを忘れてしまっていた。気が付けばマスターが料理を運んで来てくれていた。
「あ、あなたは……」
「私はただの料理人です。ごゆっくりどうぞ」
驚くロンギヌスさんに声をかけながら料理を机に置きすぐに厨房へと戻って行った。僕達の前には湯気を立てる美味しそうな料理が。
因みにこの店のおじさんについて意味深な事が書かれているが特に設定を考えていない為深く書かれる事はないんだ。ごめんねおじさん。
そんな感じで美味しいお昼ご飯を食べる事ができ今僕たちは食後のコーヒーを楽しんでいた。
「お昼からは何か予定はありますか?」
「特にはありませんよ」
「良かったら買い物に付き合ってもらって良いですか?」
そう聞くとあまり人がいない場所ならばと返事をもらう事ができた。その後少しゆっくりしてから買い物をしに行く事に。
「コウ君は何が欲しいのですか?」
「日用品ですね、雑貨屋があれば良いんですけど」
「それなら案内してあげますね」
ロンギヌスさんに案内してもらい街にある雑貨屋に連れて来てもらった。その店を見ると(激安の殿堂、商品のジャングル)と書かれており期待ができそうだ。
「店に入る前にこれを被りますね」
そう言ってロンギヌスさんがかばんからマスクと帽子を取り出し深々と被っていた。理由を聞くと変装のつもりらしい。
トマトのワッペンが貼られた帽子を被り満足そうな顔をするロンギヌスさんに真実を伝えたいけどグッと堪えそのまま店内へと足を運んでゆく。
「おぉー!すげぇ!」
いざ店内へと入ると所狭しと様々な商品が売られており看板に書いてあった通りに安い、他の店と比べても一割以上は安いはずだ。そのためか人も多くはぐれないようにロンギヌスさんの横にくっつきながら店内を歩いてゆく。
「ここならコウ君の欲しい物もあるはずですよ」
「そうですね。だけど沢山ありすぎて悩んじゃいます」
ティッシュやトイレットペーパーを選ぼうとしても種類が多く結局一番安い物をカゴに入れてゆく。どれも同じだよね?
「ロンギヌスさんは何か欲しい物はありますか?」
「私は…そうですね。観葉植物を育ててみたいです」
「なら買いにいきましょうよ。植物なら知識があるので良いの選んであげますよ」
そんな訳で僕が欲しい物を買った後に植物を見に行くことに。苗売り場で真剣な眼差しで選ぶロンギヌスさんを微笑ましく見ていた。
「どんなのが良いのです?」
「見てると落ち着いて癒やされそうな物が良いです。それとあまり大きくならなければ、、、」
「それならオリーブはどうですか?どっかの国では幸せや幸福の象徴とされてますし」
そう言って売り場を見渡すと小さな葉を沢山茂らせたオリーブの苗木を見つけ二人で見ていた。タグを見てみると乾燥や温度変化に強く育てやすいと書いてあった。
「そう、ですね。これにします♪」
そう言って僕の方を見て微笑んでくれた。マスクと帽子で表情は分からないけどその目は確かに笑っていてくれていた。
その後買った物をロッカーに預け同店舗内にあるゲームセンターに二人で来ていた。コインゲームだったり遊具だったりと様々な物で楽しい時間を過ごしてゆく。
「エアーホッケーやりませんか?」
「良いですよ?でも、負けませんから」
「ワニワニパニックですか?」
「出てきたワニをこれで叩けば良いみたいですね?」
「えぇーい!」
ロンギヌスさんが声と共にパンチを繰り出すとモニターに500と数字が出された。その後に僕がやってみると75との事。ふむ。
機械から転がり出されたボールを取りそれをジャンプしながらゴールへと投げるその姿を見ていた。
「外してしまいました、、、」
(そのスカートでジャンプすると見える、見えちゃうから!)
ジャラジャラとコインを投入し台に置かれたコインを落としてゆく。
〈ジャックポットチャンス!〉
「あっ!やった、やりました!」
「流石ですロンギヌスさん!よかったら僕にコイン分けてください、、、」
と、まぁゲームに二人共夢中となり気が付けば日も暮れて良い時間となっていた。
「そろそろ帰りましょうか?」
「そうですね、あっ、もうこんなに暗くなってます」
お店を出て薄暗くなってしまった道を二人で歩いてゆく。その途中でラーメン屋に寄り二人で食べロンギヌスさんの家の前でお別れをする事に。
「今日はありがとうございました!凄く楽しい一日でした」
「私も楽しかったです。あの、良ければまた誘って下さいね?」
「はい!またぜひ行きましょう」
玄関の前で頭を下げてくれるロンギヌスさんと頭を下げ合い二人共笑い合い手を振りながら家への道を歩いてゆく。
「ただいまー」
誰も居ない部屋へに挨拶をして買ってきた物を部屋の片隅に置きシャワーを浴びパジャマへと着替え机に向かい図鑑を開いていた。
明日はトライデントというキル姫のようだ。それだけ見てからベッドに寝転がった。
今日の事を思い出していると眠くなってきたのでそれに逆らわず眠る事に。
「おやすぴー」
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不思議な人だった。私を見ても力を欲しがろうとせずに私をキル姫ではなく女の子として見てくれた。
今日買ってきたオリーブの木に少しだけ水をやり葉に滴った水滴が光を浴び煌めくのを眺めていた。
(もし彼のキル姫になる事ができたなら、きっと彼は私の願い通りに戦う事ではなく被害を受けた人達のために全力を尽くすのだろう)
ぼんやりとそんな事を考えた後ベッドに潜り込み頭まで布団を被せた。
「おやすみなさい」