キル姫日記   作:やす、

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18ページ目、トライデント

トライデントって何?って聞くと大体の人は顔をしかめると思う。少し話をするとギリシャ神話の十二の神々の一人、ポセイドンが持つ槍の事である。

 

 

そこまで言うとあーあのクソ台の事ねってなるかも知れない。そんな事は無いんです!純増二枚のARTに無限継続可能な盾を使ったアトランティスゾーンに無限の可能性を秘めたトライデントアタックに盾とセットストックが可能なゴットフューリー!それに七揃いすればトライデントアタックが付いてくるんだ!残念な事に設置店がことごとく近所から無くなり全く打つ事ができなくなってしまったができるなら撤去前にもう一度打ちたい!

 

 

じゃなくて、もっと身近な話をすると某車メーカーのエンブレムのモチーフにもなっているのです。

 

 

よく分からない事を長々と話してしまったけど今日会うキル姫は冥王が最も恐れた神、ポセイドンが持つトライデントの名を冠したキル姫だ。

 

 

一体どんな姿をしているのか想像も付かない。とりあえず楽しみである。

 

 

因みに僕は服を着替え図鑑を開きトライデントさんの事を読み終わったところだ。もうすぐマリアさんが来てくれる時間なんだけど。

 

 

壁にかけてある時計を見ながら玄関を覗くのだがまだ人の気配は感じられなかった。

 

 

しばらくすると玄関がノックされ急いで開けに行くとマリアさんではなくシャルウルさんの姿が。

 

 

「おはようございます、コウ君。」

 

「おはようございます、ってどうしてシャルウルさんが?」

 

「昨日マリアと仕事をした後飲みに行ったのですが私が止めるのを聞かずに飲み過ぎてしまい今日は休みなのですよ」

 

 

やれやれと手を振るシャルウルさんが全てを物語っていた。またあんな状態で部屋に来てもらうのもアレだから良いのだけども。

 

 

「それで私がマリアの代わりにコウ君を起こしに来たのです。今日はトライデントに会う日ですよね?」

 

「はい!そうです!」

 

「トライデントには8時に教会の前に来る様にと伝えてあります。それとコウ君にはこれを」

 

 

そう言って見せてくれた写真には青い長髪をツインテールにしてヒトデの髪飾りを付け笑顔の女の子が写っていた。

 

 

「トライデントの写真です。こうして見てもらった方が探しやすいと思い準備しておきました」

 

「あざっす!本当に助かります!」

 

 

相変わらずの準備の良さと気遣いに感動していた。デキる人とはこういう人の事をいうのだろう。今度お礼にご飯でも奢ろう。そう思いながら家を出てトライデントさんと待ち合わせ場所の教会の前へ。

 

 

 

 

 

……………………………………………………

 

 

「あっ、私としたことがトライデントを水辺に近寄らせないでと忠告をするのを忘れていましたね」

 

 

マリアの代わりに頼まれた書類を片付け終わりコーヒーを飲もうと席を立った時に思い出し時計を見ると十時を回っていた。

 

 

「まぁ、大丈夫ですよね」

 

 

ドリップされたコーヒーを冷ましながら窓から外を眺めていた。その頃。

 

 

 

「えぇぇぇ〜〜〜んっ!コウ君もうしわけぇ〜〜!」

 

「ちょっ!!ええっと、おおお??!!」

 

 

トライデントさんの謝る声と僕の叫び声が山にある湖に響いていた。こうなるまで色々あったので僕がトライデントさんに会った所に話を戻したいと思う。

 

 

僕は八時ぴったりに教会の前にある広場でトライデントさんを待っていた。青髪の女の子を探す為に辺りをキョロキョロしていると同じく辺りをキョロキョロしている青髪の女の子の姿が見えた。

 

 

「おはようございます。もしかしてトライデントさんですか?」

 

 

その子に近寄りそう聞くと笑顔で挨拶を返してくれた。

 

「うん、おはよ♪コウ君だったよね?」

 

「はい!今日一日よろしくお願いします!」

 

「そんなかしこまらなくても良いよっ⭐︎じゃあ今日は私と魚突きに行こうよ♪」

 

「魚突き?魚釣りじゃなくてです?」

 

「うんうん♪朝はお魚さんも寝惚けてるから奇跡的な大物が取れちゃうかもよ〜♪」

 

 

そう言われ予定もないのでトライデントさんと魚突きに行く事に。

 

 

「それでどこで魚を突くんです?」

 

「ふふーん♪私が一押しの場所に案内してあげるよ♪」

 

 

そう言ってルンルンと前を歩くトライデントさんの後ろをついて行く事に。昨日のロンギヌスさんと真逆の性格に少し戸惑うけどそのうち慣れるだろうとそんな楽観的な事を考えていた。

 

 

「はーい、ここが私一押しの場所なのです♪」

 

「おぉー!綺麗な湖ですね」

 

 

町を離れ山を登り僕は以前アロンダイトさんと会った湖に来ていた。一度来た事があるけど一応初見だという事にしておこう。

 

 

「じゃあコウ君にこれ貸してあげるね♪」

 

 

そう言ってカバンを漁るトライデントさんを見ていた。

 

 

「あれ?えっと、ちょっと待っててね。確かここに入れたはずなんだけど、、、」

 

「どうしたんですか?」

 

「昨日準備しておいた銛と水中眼鏡が見当たらないの〜〜っ!」

 

 

そう言ってカバンの中身を全部地面へと出し探していた。どう見ても銛と水中眼鏡の姿は無くかける言葉に悩んでいた。

 

 

「もうしわけ〜、、忘れてきちゃったみたい、、。」

 

「うん、良いですよ?じゃあどうやってお魚取ろうか考えましょ?」

 

「でもねでもね。私が忘れたのはコウ君の分で私のはもってるのです♪私が湖に潜ってお魚さんとってきてあげね♪」

 

 

そう言って湖へと飛び込んで行ったトライデントさんを見守っていた。そういえば水中メガネも付けず長靴で入って行ったけど大丈夫なのだろうか?

 

 

そんな事を考えながら湖のほとりにある木の下で座ってトライデントさんが帰ってくるのを待っていた。

 

 

しばらくして湖の真ん中辺りに泡が立っているのが見えた。きっと頑張っているのだろう。

 

 

それを見ていると波紋が立ち慌てた様子のトライデントさんが帰ってきた。

 

 

「おかえり、どうでし「コウ君にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

そのまま僕の手を掴み湖から離れてゆく。

 

 

「えっ、どうしたのですか!?」

 

「えぇぇ〜〜〜ん、間違えてあの湖の水源を突いちゃったよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

水源?そう疑問に思った時には湖から巨大な水柱が立ち上がっていた。そして冒頭へと戻るのだ。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

水源を突かれた湖からは竜のように水が荒れ狂い辺り一面を飲み込み僕達の場所だけが水に浸からずに残っていた。

 

 

「てへっ♡」

 

「てへっじゃなーーーーい!」

 

 

そんな悲惨な光景に僕のツッコミが虚しく響いていた。

 

 

「コウ君そんなに怒らないでよぉ、、私ちゃんと反省しているよ?」

 

「怒ってないですよ?とりあえずどうしましょうか?」

 

 

先程も書いた通り水が荒れ狂いこの場所から僕たちは動けないのだ。

 

 

「待ってね、私が何とかしてあげるから!」

 

 

そう言ってトライデントさんが何かを探すように辺りを見ていた。

 

 

「何か探しているのですか?」

 

「うん、この辺りに水源があればそれを突いて水を打ち消そうと思ってさ♪」

 

「それってもっと悲惨な事になりません?」

 

「それは、、、やってみてからかんがえよーーーぉ♪」

 

 

そう言って地面に手に持つ槍を突き刺した。すると何処かから地鳴りのような音が聞こえ始めていた。

 

 

「もしかしてヤバめ?」

 

「大丈夫、大丈。うわぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」

 

「トライデントさーーーんっ!!!うぉぉぉぉぉぉっ!??!

 

 

トライデントさんが言い終わる前に吹き出した水により流されていた。残念ながら僕も流れに巻き込まれ流されてゆく。

 

 

「コウ君申し訳ぇぇぇぇぇーーーーーー!!!」

 

 

最後に聞こえたのはトライデントさんの叫び声だった。

 

 

 

……………………………………………………

 

 

 

「いたたた、ここは、、、?」

 

 

目を覚ますと水は引いており山の何処かで僕は気を失っていたようだ。辺りを見渡してもトライデントさんの姿が無い。

 

 

全身をぐっしょりと濡らし寒さを感じながらトライデントさんを探すために僕は歩き始めていた。

 

 

「トライデントさーーん?トライデントさーーーん」

 

 

その名を呼びながらぬかるんだ山道を歩いてゆくと木の上から音が。その音に気が付き見上げると枝に引っ掛かっているトライデントさんを見つける事ができた。

 

 

「おーーい。トライデントさーん」

 

「…………」

 

 

呼んでも返事はなくどうしようか悩んでいるとモゾモゾと動き枝から外れ落下して来た。

 

 

「あぶないっ!!」

 

 

落ちてきたトライデントさんをしっかりと抱き止めその顔を見るとその瞼をゆっくりと開いていた。

 

 

「あれ〜どうしたの〜?」

 

「寝てたんかい」

 

 

思わず突っ込んでしまったがしばらくすると今の状況を理解してくれたようで目をパチクリとしていた。

 

 

「えっと、この状況ってトライデントのせい?」

 

 

辺りが水浸しとなりずぶ濡れな二人を見て目が潤んでゆく。

 

 

「いやーたまたま石を退けたら水源があったみたいでさ、なんか凄い事になっちゃったよ」

 

 

「でも!私が湖に行こって言わなかった」

 

「お詫びに温泉でも行こうよ。確かこの辺りにあったはずだからさ」

 

 

トライデントさんの言葉を遮りそう言うとまだ何かを言おうと口をもごもごとさせていた。

 

 

「このまま連れてってあげるね」

 

「えっ!?ちょっと恥ずかしいよぉぉぁぁ」

 

 

お姫様抱っこのままその温泉に走ってゆくのであった。

 

 

 

 

「はぁぁっ、幸せ、、、」

 

 

その温泉へとたどり着き湯船に浸かりお湯の温かさを噛み締めていた。当然の話だが男女別なのでトライデントさんとは別である。それを少しだけ残念に思うのはもちろん内緒だ。

 

 

湯船に浸かり両手両足を大きく伸ばしリラックスしている、そんな時竹を束ねた壁の向こうからトライデントさんの叫び声が。

 

 

「お湯が大波をたててるぅぅぅぅ〜〜!!!」

 

 

その言葉の後に大シケの海の様な波の音と他のお客さんの叫び声が聞こえてきた。それを聞きながらブクブクとお湯へ沈んでゆくのであった。

 

 

しばらく温泉を楽しんだ後待合室で湯涼みをしているとトライデントさんが戻ってきた。

 

 

「おかえり、ゆっくりできました?」

 

「ゆっくりしたかったんだけどお湯が大波を立てちゃってそれどころじゃなかったよ、、。」

 

 

一体トライデントさんはなんなのだろう?と疑問に思いながら温泉に併設されている食堂でご飯を食べる事に。

 

 

「あっ、お水取ってきてあげるね♪」

 

「僕が取りに行くので座っていて下さい!」

 

 

席を立とうとするトライデントさんを制し素早く水を汲みコップを二つテーブルに置いていた。トライデントさんならあのウォーターサーバーの水すら噴射させそうな気がしたからだ。その前に僕が取りに行けって話だよね。

 

 

そんな感じで僕達は遅めのお昼ご飯を食べる事に。

 

 

「いただきま〜す♪」

 

 

無邪気にご飯を食べるトライデントさんを見ているとなんでも許せてしまう僕がいるのだ。妹成分強めというのかなんていうか。

 

 

「トライデントさんってお姉ちゃんとか居るの?」

 

「妹が居るよ♪」

 

「そうなんだ、さぞかししっかりした妹さんなんだろうね、えっ?」

 

「んー?どしたの?」

 

「今妹さんが居るって言いましたよね?」

 

「うん居るよー?どうしてそんなに驚くの?」

 

「いや、なんでもないです、はい」

 

 

人は、いや、キル姫は見た目によらない様だ。そんな感じでご飯を食べ終わり教会へと帰る事に。

 

 

「コウ君にはいっぱいいろんなことしてもらったから私がご飯奢ったげるね♪」

 

「あざっす!」

 

 

そう言ってレジの前に立ったトライデントさん。財布を探してカバンを漁っているのだが様子がおかしい。

 

 

「あれ!?お財布がない!お財布が無い!」

 

 

あわあわとカバンをその場にひっくり返して捜索しているのだが見つからず気が付けば僕達の後ろには長蛇の列が。

 

 

「えっと、いくらでした?」

 

「3852ゼニーです」

 

「はい、すいません」

 

「あったぁ〜〜」

 

 

ちょうどお会計を終えた後に恥ずかしそうに財布を持っているトライデントさん。うん、可愛いから許そう!

 

 

そんな感じで温泉を後にしてゆっくりと帰路に着く事に。慌しい一日だったけどたまにはそんな日も良いだろう。

 

 

「なんかごめんね」

 

 

僕の前を歩いていたトライデントさんがポツリと呟いた。

 

 

「どうしたの?」

 

「せっかくコウ君にお魚食べさせてあげようと思ってたのに空回りだし水源は壊しちゃうしご飯も食べさせてもらっちゃって、、、」

 

 

だんだんとその声色が泣きそうになってきている。ふむ。

 

 

「うんん、僕はお礼を言いたいぐらいだよ。なんだかんだで楽しい一日だったし色んなことできたしさ、それにトライデントさんの事を知る事ができた」

 

「じゃあ今度会った時にお魚食べさせて下さいね」

 

 

そう言うと動きが止まり笑顔で振り返ってくれた。

 

 

「うん!次こそはお魚食べさせてあげるからね♪期待して待っていて良いんだよ♪」

 

 

そう言ってお魚を突く様に地面に向かい槍を突き立てるとピシリとヒビが入りじわじわと水が湧き始めてきていた。

 

 

「えっと?」

 

「に、逃げろぉぉぉ〜〜!!」

 

 

そう叫んだ瞬間に勢いよく水が噴き上がった。その湧き上がる水から全速力で笑いながら逃げてゆく。

 

 

「じゃあまたねトライデントさん」

 

「うん♪また会おうね♪」

 

 

教会の前でトライデントさんとお別れして僕は家へと帰ってきていた。こうして出先でお風呂とご飯を済ませておくとその後が楽でいいね。

 

 

とりあえず明日のキル姫を見て寝るとしようかな、どれどれ?

 

 

図鑑を開くと明日は方天画戟というキル姫の様だ。ちなみに今から不安を感じていた。まぁどうにかなるだろう。

 

 

椅子に座ったまま大きく身体を伸ばした後ベッドへと潜り込み部屋の電気を消していた。

 

 

「おやすぴー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー遅かったじゃん、先お風呂入っちゃいなよ」

 

「今日は入ってきたから大丈夫だよ〜」

 

「はっ?えっ?今なんて言った!?」

 

「だ〜か〜ら〜お風呂は入ってきたんだって!」

 

「成る程、ふぅーん?」

 

 

何やら察したような妹を尻目にそのままベッドへ飛び込んでいた。

 

 

「ねぇねぇ、どんな相手だった?イケメン?」

 

「むぅぅ、そのうちケラウノスも会うと思うよ」

 

「ふふーん、まっ、その時を楽しみにしておきますか」

 

 

 

 

 

 

 


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