キル姫日記   作:やす、

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20ページ目 天沼矛

天沼矛。それは古来の伝承によればイザナミ、イザナギが別天津神に大地を作るのに渡された矛である。

 

 

イザナミ、イザナギの二人が渡された天沼矛で大地をかき混ぜその雫が淤能碁呂島(おのごろじま)となったらしい。

 

 

毎回思うのだが神話というものはスケールがデカい。大地を作るのは当たり前で神を産んだり人類を滅ぼしたり。よくそんな神々がいる中で人類は生き残ってこれたものだ。

 

 

そのまで読んで図鑑を閉じため息を一つ。今日は天沼矛というキル姫にも会いに行く日でその予習を終えたところだ。

 

 

「おはよーございます♪起きてますかー?」

 

 

ドアをノックする音の後にマリアさんの声が聞こえ返事をしながら玄関へと行き鍵を開けていた。

 

 

「おはようございます!」

 

「はい♪今日は天沼矛ってキル姫に会いに行ってきて貰いますね。それとあまぬまほこって名前ではありませんからね?あめのぬぼこですよ?」

 

 

そう言われてしまった。過去を見渡す力でも持っているのだろうかこの人は。

 

 

「教会の前の広場で待っていてくれているので早く行ってあげて下さいね♪」

 

「あざっす!」

 

 

笑顔で言われてお礼を言いながら部屋を出ていつもの教会の広場へと向かう。今回も天沼矛さんの見た目について何も聞いていないからまずは本人を探す所から始まるのだ。今のところヒントは矛だ。つまり矛を持っている人が天沼矛さんだろう。

 

 

矛、矛、矛。辺りを見渡して矛を持っている人を探しているのだが人の数が多く視界が利かず中々見つからない。そんな時広場の端にあるベンチに座る女の子の姿が見えよく見ると槍を肩にかけて誰かを探す様な仕草をしていた。人混みをかき分けてその人の元へ。

 

 

「あの、天沼矛さんですか?」

 

「はい〜私が天沼矛です〜コウ君ですか?」

 

「はい、今日一日よろしくお願いしますね」

 

 

僕の天沼矛さんの第一印象は可愛い女だった。ファンキルで見てもらえれば分かると思うのだが空の様に青いワンピースを着て可愛いのに気高くて、それに幼さ残る笑顔を僕に向けてくれて、ロリコンの気持ちが理解できた瞬間である。

 

 

「天沼矛さんは何かしたい事とかありますか?」

 

「ええっと〜私は〜グルグルした物が好きなので〜それを探しに行きたいですぅ〜」

 

 

グルグルした物、グルグルした物。そう言われてグルグルした物を探すために頭をフル回転させていたのだが急にそんな事を言われても思い浮かぶはずもなくとりあえず天沼矛さんと朝ごはんを食べに行く事に。

 

 

天沼矛さんがイザナミ、イザナギが使った神器ということもあり和風な物が好きなのだろうと喫茶店では無くて定食屋さんを選び今僕たちは机に座り二人してメニューを見ていた。

 

 

「天沼矛さんは何が食べたいですか?」

 

「私は〜ええっと〜」

 

 

そう言ってメニューと睨めっこしていた。僕は壁にかけられたメニューを見ながら決めていた。ん、納豆定食にしよう。

 

 

「天沼矛さんは決まりましたか?」

 

「・・・・・」

 

「天沼矛さん?」

 

 

メニューを見たまま返事をしてくれず一心不乱にメニューを見る姿に不安を覚えメニューと天沼矛さんの顔の前で手を振るのだが微動だにしなかった。

 

 

「天沼矛さん?」

 

「あら〜私ったら考え事をしてしまってました〜」

 

「うんうん、メニューは決まりましたか?」

 

「まだです〜もう少し待っていてください〜」

 

 

そう言って再びメニューと睨めっこをしていた。横から目の動きを見ていると最初は目を動かしているのだけどいつの間にか一点を見つめていた。

 

 

「天沼矛さん?」

 

「はい〜メニューですよね?もうきまってます〜」

 

 

可愛らしい笑顔でそう言っていたので店員さんを呼んでメニューを伝えしばらくおしゃべり。

 

 

「天沼矛さんって日本神話のキル姫ですよね?」

 

「はい〜なので草薙ちゃんからコウ君の事は聞いていますよ〜」

 

「草薙剣さんと仲が良いんですね」

 

「そうですね〜草薙ちゃんと八咫鏡ちゃんといつも一緒に居ます〜」

 

 

キル姫も神話同士で集まるのかな?そんな事を思っていると頼んだ物が運ばれてきて頂くことに。

 

 

「納豆食べるんですね」

 

「私混ぜるのが好きで♪」

 

 

お皿に納豆を出しグルグルと笑顔でかき混ぜていた。実に可愛らしい光景である。

 

 

そんな光景を見ていると壁に貼られているポスターを見つけて目を凝らして見ていた。

 

 

よく見ると陶芸体験のポスターなようで粘土を台に置いて何かをしている絵が書いてあった。

 

 

「天沼矛さんって陶芸好きですか?」

 

「陶芸ですか〜?」

 

「はい、後ろのポスターを見てください」

 

 

納豆をかき混ぜながら振り返りそのポスターを見ていた。

 

 

「えぇっと〜楽しそうです〜」

 

「じゃあ行ってみませんか?」

 

「はい〜♪」

 

 

可愛らしい返事を聞いた後残りのご飯を食べる事に。

 

 

「ぐーるぐるです〜♪」

 

 

未だに納豆をかき混ぜている天沼矛さんを見ながら、、、。

 

 

 

 

「早く行きましょう」

 

「はぁ〜い」

 

 

ゆっくりと朝食を楽しんだ後僕たちは陶芸体験をやっている街まで来ていた。街の至る所に陶芸品が置かれておりこの街の特産品だという事を猛烈にアピールしている。

 

 

正直なところ僕はあまり陶芸品に興味は無いのだが家で使うために一つぐらい買おうかな?とすこーしだけ悩みながら街を歩いてゆく。

 

 

「ここかな?すいませーん」

 

 

しばらく街を歩き陶芸体験をやっている場所までやってきていた。店の人に挨拶をして陶芸体験をしたい事を伝えると快く案内をしてくれた。

 

 

「一人5.000ゼニーです」

 

「………はい」

 

 

手痛い出費だけど、、、。

 

 

「コウ君見てください〜♪すごくぐるぐるしてますぅ〜♪」

 

 

ロクロの上に置かれた粘土がくるくると回っている。それを見て大はしゃぎしている天沼矛さんを見ると笑顔になれる。

 

 

そんな僕達に係の人が作り方を説明してくれて、今から僕と天沼矛さんで陶芸を作る事に。

 

 

ロクロの上を回り続ける粘土に指を当てて形を整えてお椀を作ろうとしているのだが。

 

 

「ぐぬぬぬぬっ」

 

 

思っていたより難しく上手くできたと思えば形が崩れそれを直そうとすると目も当てられない状態に。

 

 

「コウ君見てください〜♪」

 

 

そう言われて天沼矛さんの方を見るとロクロの上をくるくると回る作品が。

 

 

(おぉ、、、)

 

 

陶芸の先生が唸る程の作品を作り上げていた。

 

 

「天沼矛さん上手ですね」

 

「なんか〜作りやすいというか、コウ君のも作ってあげますよ〜?」

 

 

お言葉に甘えて天沼矛さんに作ってもらう事に。

 

 

「見ててくださいね〜」

 

 

手を水で濡らしくるくると回る粘土へと指を当てると指に沿って粘土がお椀へと形を変えてゆく。

 

 

「………………」

 

 

その眼差しは真剣で普段のおっとりした雰囲気はない。

 

 

「はい〜できましたよ〜♪」

 

 

「おぉー」

(おぉー)

 

 

先生とハモったけど出来上がった作品にそれほどに感動していた。なんて伝えれば良いのか分からないけどロクロの上で回るお椀はお椀だった。

 

 

「上手にできました〜♪」

 

 

手に粘度が付いたまま顔を触ったのかほっぺたに付いている粘土の跡がいい味を出している。

 

 

「ありがとうございます!」

 

「後は乾燥させて焼いてもらいましょう〜」

 

 

そんな感じでお椀をお願いして二人で街を歩いて回る事に。

 

 

「天沼矛さんって器用なんですね」

 

「そんな事ありませんよ〜?ぐるぐるした物を見ていると閃くっていうのか〜?」

 

「ふむ?」

 

 

僕もぐるぐるした物を見ていると閃く事ができるのだろうか?そう思い街を見渡すとくるくると回る物を見つけ亭主に頼んで購入させてもらう事に。

 

 

「お礼にこれをあげますね」

 

 

僕が渡したのは小さな風車だった。天沼矛さんに手渡すと不思議そうな顔で僕を見ていた。

 

 

「これは一体〜?」

 

「風車ですよ。こうやって風に向かって向けてください」

 

 

街をそよぐ風に向かい向けると僅かな風を受けてからからと風車が回りなんとも風流を感じさせてくれる。

 

 

「・・・・・・♪」

 

 

からからと回る風車に見惚れている天沼矛さんをみているとあげてよかったという気になれる。

 

 

そんな時ふらっと天沼矛さんが揺れてパタリと倒れてしまった。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

「目が、回ってしまいましたぁ〜〜」

 

「ふむ?」

 

 

目を回して倒れてしまった天沼矛さんを背負い何処か休めるような場所を探すために辺りを見渡すと公園を見つけ入ってゆくと木陰になっているベンチを見つけた。

 

 

 

「あれ〜?ここは、、、?」

 

「おはようございます、気分はどうですか?」

 

 

僕の膝の上から顔を上げた天沼矛さんの頭を撫でていた。それでもまだ天沼矛さんは夢心地のようで、口元から垂れる涎がとても可愛らしい。

 

 

「風車を見てたら気を失っちゃったんですよ」

 

「ごめんなさい〜」

 

 

もぞもぞと身体を動かし僕の横へと座って身体を伸ばしていた。よく見るとほっぺたにズボンの跡がついているのがなんとも。

 

 

まだお椀が焼けるには時間があるので少しのんびりとする事に。吹き抜ける風で煽られ揺れる風鈴の音を聞きながら二人で景色を眺めていた。

 

 

「もう一眠りしてもよろしいでしょうか〜?」

 

「はい、良いですよ?」

 

「お膝をお借りしますね」

 

 

再び僕の膝を枕に眠る天沼矛さんの頭を撫でながらお椀が焼けるのを待つ事に。

 

 

ぷーーーーーん

 

パシッ!

 

 

 

迫り来る蚊と戦いながら。

 

 

 

気が付けば僕も眠っていてしまい目を覚ました時には日が落ちかけ太陽が沈もうとしていた。

 

 

「ん、、あっ!天沼矛さん起きて!」

 

「う〜〜〜ん、、も〜少し〜〜」

 

 

寝ぼけ眼の天沼矛さんがとても可愛いのだけど立ち上がる様に諭していた。

 

 

「だっこしてくださぃ〜」

 

「ん、」

 

 

可愛く手を広げながら言われてしまい断る事もできずに天沼矛さんを背負い先程のお店に行く事に。

 

 

「良い時に来たね。もう出来上がっているよ」

 

 

店に入るとお椀を箱に入れてくれるところだったようで入れる前にお椀を見せてもらっていた。市販品よりも綺麗にできているお椀に惚れ惚れしながらお礼を言って帰路へと着く事に。

 

 

普段ならこの辺で異族が出てくるのだけど今回は何も出てこないで星空を眺めながらお家がある街まで帰ってくることができた。

 

 

「ありがとうございました!」

 

「いえ〜私も楽しかったです♪また遊びにいきましょうね〜♪」

 

 

天沼矛さんの家の前で分かれた後自宅へと戻りシャワーを浴びようとした時にまだ夕ご飯を食べていない事に気が付き冷蔵庫を開けるとこないだ貰ってきた梨を見つけ悩んだ後シャワーを浴びる事に。

 

 

パジャマに着替えた後梨をしゃくりしゃくりとかじりながら図鑑へと目を通してゆく。明日はルーンというキル姫のようだ。そこまで調べて梨を食べ終わり布団へと潜り込んでゆく。

 

 

 

「おやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました〜」

 

 

いつに無く笑顔で家へと戻り貰ったお椀が入った箱を机の上に。

 

 

「ぬぼこか。その箱はなんじゃ」

 

「今日コウ君と一緒に陶芸をしてきたのです〜」

 

「ほほぉーう。どれ、余がその陶芸とやらを評価してしんぜよう」

 

 

机の上に置かれた箱を取ろうとした時に天沼矛の手が伸び箱を大事そうに抱きしめていた。

 

 

「ダメですよ〜これは私とコウ君の思い出のお椀ですから〜」

 

「いやじゃ!余に見せよ!」

 

「ダメですよ〜♪」

 

「二人共子供じゃのぉ」

 

 

楽しそうにはしゃぐ二人を見ながら満足そうに八咫鏡が笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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