朝起きてから今日会うキル姫、ルーンの事を調べるために図鑑を開いていた。なになに?
ルーン[1] (ルインとも)は、ケルト神話に登場する武器であり、アイルランド古文学を代表する名槍である[2]。広くは「槍」の意味を持つ[3]が、特にアルスターの戦士「ケルトハル・マク・ウテヒル(英語版)」特有の槍をさす[3]。ドゥフタフ[1]など、他人が使用する場合もやはり「ケルトハルのルーン」と称される。
ルーンは、その穂先をどす黒い液(血の煮液、毒液)に浸しておかないと柄が燃焼し、手に持つ人間を危険にさらすという特徴がある[2]。
はい。ヤバいキル姫という事が確定しました。もう僕がこの部屋に帰ってくる事はできないと判断して迷惑にならないように片付けをし始めていた。
「おはようございますー♪って何をしているんですか?」
「僕の荷物は捨てておいて下さい」
「あぁ、、、心中お察しします」
涙を流しながら部屋を片付ける僕の肩に手を置いて慰めてくれていた。
「とにかくルーンを教会の前に待たせているので行ってきてくださいね♪金髪で目付きが悪いのですぐ分かると思います♪それと二人に任務があるのでお願いします♪」
「・・・・・・はいっ」
マリアさんから地図と荷物を貰い部屋を出てゆく僕に骨は拾っておきますね♪と声をかけてくれた。とりあえず涙を拭いて覚悟を決めてルーンさんが待つ教会の前にある広場へと。
えっと、金髪で目付きが悪い人、悪い人。マリアさんから貰ったヒントを頼りにルーンさんを探しているとそれらしき人を見つけた。金髪を頭の上でリボンで結び目付きがかなり悪い人。もう雰囲気からして平気で人を殺せそうな人。
ヤバい、怖い。まだ距離があるのにルーンさんから漂う近寄り難い雰囲気に押され怖気付いていた。でも僕が行かないと話が進まないので震える足でルーンさんへと進んでゆく。
「あの〜ルーンさんですか・・・?」
「あぁ?誰だお前は」
「ひぃっ!」
「んだコラ、アタイに声をかけておいて悲鳴をあげるとは良い度胸してんな」
凄い!ヤバい!怖い!恐怖心の三拍子を心の中で叫びながら肉食動物に食われる直近のモグラの様にプルプルと震えていた。そんな僕を見ながらルーンさんが見下す様に笑う。
「安心しな。捕って食ったりはしないよ。多分な」
「ぼ、ぼぼ僕なんか食べても美味しく無いです!」
「んなもん見たら分かんだよ。そうねぇ、アタイ専属のサンドバッグにでもなってもらおうかしら」
そう言いながら何かが僕の顔の前で止まった。それがルーンさんの拳である事を理解した時には拳によって巻き起こった風圧が僕の顔の横を抜けてゆく。アダマスさんも怖かったけどこの人は本能的に恐怖を感じる。
「で、アタイに何の用なんだよ」
「ひゃい!ま、まままマリアさんから任務を頼まれてて」
慌ててポケットから紙を取り出すと「よこせ」の声と共に手が伸び紙を奪いふむふむと読んでいた。
「ちっ、マリアの頼みなら聞いてやるか。おい、お前はこの任務表を読んだのか」
「えっと、まだです、、」
「なら歩きながら伝えてやるよ。とっとと歩きな」
くるりと僕に背を向けたルーンさんの背後について歩いて行く。
「あの〜一体どんな任務なのでしょうか?」
「あの山にある湖の異族討伐だよ、それも水中に潜む異族だ。いやになっちまうね」
「はぇぇ」
水中に潜む異族なんているんだ。初耳である。
「まっ、アタイ一人で食い散らかすからよぉ、お前は震えて木の影にでも隠れてな」
「あっ、はい」
そんなこんなで街を抜けて山を進み異族が出るという湖に来ていた。辺りを見渡しても異族の姿は無くキラキラと太陽を浴びて水面が輝く平和な光景が広がっているのだが。
「異族は湖の中に居るんです?」
「あぁそうだよ。知らずに近づいたやつを襲い喰っちまうのさ。あれを見てな」
そう言われてルーンさんに手を引かれ木の影へと連れてこられ指を指す方を見ると一匹の鹿が湖の辺りへと歩いていた。辺りをキョロキョロと見渡し警戒しながら歩きやがて湖の水を飲み始めていた。
静かな空間には鹿が水を飲む音が響き渡る。
やがて顔を上げ滴る水を舐めとり鹿は山へと戻ろうとしていた。
「えっと?」
「おるぁぁぁ!!」
急に叫び声を上げたルーンに僕と鹿が驚き身を固めた。次の瞬間にはルーンさんが持つ槍が鹿に向かい投げられ鹿の首を切断し木の幹にガツンと突き刺さった。
「えぇぇぇ、、、」
「まだ飯食ってなかったからね。おい。アタイが満足するような料理を作んな」
「えぇぇぇ、、、」
困惑の連続である。とりあえずルーンさんと鹿の元へ。首を切断されもがく鹿を見ながらなんとも言えない気持ちになっていた。
「分かりました。じゃあ料理を作るので手伝って下さいね」
「うーーん、良い匂い♡頭クラクラしちゃいそうだよ♡」
「えぇぇぇぇ、、、」
鹿から流れ出た血を手につけ匂いを嗅ぎ上機嫌なルーンさん。完璧にキマっている。そんなルーンさんを横目に荷物を漁ると長めのロープがあった。
ロープを木の枝へ向かい投げ鹿の足を縛りロープを引き宙へとぶら下げ血抜きを行う事に。
「この間に火を起こしましょう。薪を集めるのを手伝って貰って良いですか?」
「ちっ、しゃーねーな。薪なんざその辺の木で良いだろ」
先程木の幹に突き刺さった槍を引き抜くとそのまま木を叩き切り手頃な大きさへと変えていった。
「ほら薪だ」
「あの、生木だと火が付きにくいし煙が出るから落ちてる枝を拾いましょう」
「あぁん?なら先にそう言えよクズ!」
「えぇぇぇ、、、」
そんなこんなでルーンさんと薪を拾い集め火を起こし焚き火をしていた。鹿を見るともう血は垂れておらず良い感じに血抜きができている。
「ルーンさん手伝ってもらって良いですか?」
「次はアタイに何をさせようっていうんだい」
「鹿を捌くんですよ。ほら、このままだと食べれないので」
ロープを緩めながら高さを調節して良い感じのところで作業開始である。荷物の中にあったナイフで皮を剥ぎ丁寧に剥いてゆく。
「へぇ、慣れたもんじゃないか」
「親父がやるのを見てたんですよ。僕は農家出身だから」
スルリと皮を剥いだら湖の浅瀬へと運んでゆく。
「異族が来ないか見張ってて貰って良いですか?」
「アタイに任せな」
ルーンさんに見張りをお願いして内臓を取り出す事に。首元からお尻に向かい刃を入れ皮膚を裂き膜を破り内臓を傷付けないように引き抜く。
その後お腹に溜まった血をかき出せば完了だ。
「こっちは完了です」
「よっしゃ、早速食おうぜ」
「まだこれから解体して食べれる部位に分けていきます」
「とっととしろこのゴミクズ!アタイは腹が減って気が立ってんだよ」
「えぇぇぇ、、、」
その後岩の上に鹿を置いて解体してゆき生肉を一切れルーンさんに渡した。
「はい、しっかり焼いて食べてくださいね?」
「アタイはこのまま食っちまいたいけどな」
血が滴る生肉を握り見ながら光悦な笑みを浮かべあーんと口を開け口へと運んでゆく。
「絶対にダメです!!火を通して下さい!!」
お肉を一口する瞬間に奪い去りルーンさんに大声で叫んでいた。
「あぁ?アタイに指図するつもりかい?良いぜ、ぶっ殺してやる」
「ジビエで取れたお肉は寄生虫が居たり菌を持っていたりします。冷凍すれば生で食べれるので生食は今はやめて下さい」
目を血張らせたルーンさんに胸ぐらを掴まれ睨まれたが一向に引かず睨み付ける。長い目線による戦いの後ルーンさんが手を離しやれやれと首を振った。
「お前良い度胸してんな。気に入ったわ」
「はぇ?」
「良いからさっさと肉を焼け肉を」
「はいっ!」
良く分からないまま解体する手を止めてお肉を焼く事に。適当な枝に刺し焼き加減を見ながら焼いてゆく。
「おい、まだかまだか。もう良い匂いがしてんじゃねーか」
「もうちょっとですよ」
脂が溶け出し火に落ちじゅうじゅうと音を立て脂で燃え上がる火がお肉に焦げ目を付ける。こんなものかな?最後に塩コショウをかけてルーンさんへ手渡す。
「あつっ!でもうめぇ!」
口をはふはふとさせながらお肉を頬張るルーンを見た後自分の分も焼く事に。同じように焦げ目を付け塩コショウを振った時横から手が伸びお肉を引ったくる。
「あっ、僕のお肉、、、」
「お前はアタイの為に肉を焼いてりゃいいんだよ。ほら、もっと焼かないとお前の分はみーーんなアタイのものだ」
ギラギラと目を輝かせながら笑うルーンさんに最初に会った時の人を殺してそうな雰囲気はもう感じなかった。そんなルーンさんを可愛いと思いながら追加のお肉を焼いてゆく。
そんな時ブクブクと湖が泡立ち水柱と共に巨大な異族が姿を現した。
[グゥゥゥゥゥ、、、!グラァァァァァァッ!!]
低い唸り声を上げた後咆哮を上げ僕達へと目線を向けていた。
「ちょっ!!ルーンさん!ヤバいの居るって!!」
「うるせーんだよザコが。アタイの飯の邪魔すんじゃねぇ!」
怒りをぶつけるかのように手に持つ槍をぶん投げると巨大な異族の頭部を貫通し向こう岸の木に槍が突き刺さった。
[グァァァァァァ・・・・]
悲鳴をあげながら魔法陣のような物に吸い込まれ異族は姿を消した。
「さぁ肉だ!早く焼いてくれよな」
「は、はい」
先程ルーンさんが倒した異族はアクアディアボロと呼ばれる異族で結構強い異族らしい。多分僕が浅瀬に内臓を置きっぱなしにしたから血の匂いに誘われて姿を見せたのだろう。まぁ良いけど。
その後ルーンさんは鹿を半分ほど食べ上機嫌だった。
「あー美味しかった♡たまにはこういうのも良いねぇ」
満足そうにお腹をさすりながら地面に寝転がっていた。その姿を見ながら思い付いたことを試す事に。
先程ルーンさんが切り倒した木を削り灰になりかけた焚き火に足すと煙を上げ始めた。その煙がかかるようにお肉を並べてゆく。
「なーにしてんだよ」
「燻製を作ろうと思いまして。せっかく料理するのだから全部使おうと思って」
「まだ美味い肉が食えるのか。早く寄越せよ」
「ちょっと時間がかかりますけどね」
「なんだよ。じゃあアタイはふらふらしてっからできたらすぐ呼べよな」
そう言って何処かへ行ったルーンさんを見送り僕はどうやったら煙で燻せるかを考えていた。
「うーーーん?」
考えた結果いい案が浮かばなかったので残りの鹿肉を骨から外して袋に詰め込み涼しい場所に置いておく事に。その後自分の分のお肉を焼きながら湖に視線を向けていた。
「・・・・・?」
湖を見ると水着姿のルーンさんが泳いでいた。この人自由だなぁ。
「おーーいお前も泳げよ。気持ち良いぜ」
湖の真ん中で立ち泳ぎをしながら僕へと手を振っていた。のは良いのだが僕は泳げないので大きく首を横に振り意思を伝える事に。
「あぁ?アタイの誘いを断るっていうのかよ」
ギロリと一睨みした後にこちらへと泳ぎざぶざぶと水を蹴飛ばしながら僕の元へ。嫌な予感がして逃げようとしたのだが美しい水着姿に見惚れていると気が付けばルーンさんが目の前に。
「お前は泳げないのか」
「はい、全く泳げません!」
「しょうがないなぁ♡じゃあ泳げる様になるまで・・・」
そう言ってにっこりと笑顔を浮かべた。つられて僕も笑顔になっていた。
「真ん中で浮かんでな!!」
その言葉の後に僕の身体が浮かび上がりぐわんと揺れると風切り音と共に投げ出され無事湖の真ん中へ着水していた。
「ちょっ!!むり!!たすけてぇぇぇぇぇ」
もがきながら沈んでゆく僕に聞こえたのはルーンさんの高笑いだった。
……………………………
…………………………
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「もうルーンさんにはお肉あげません」ムスッ
「アーハハハハハッ、悪かったって」
「ふんっ」
「そう怒るなよ。アタイが泳ぎを教えてやっからさ」
先程切り倒した木を手頃な大きさに叩き切りそれをビート板代わりに使い泳ぎの練習をする事に。
「んだその死にかけたカエルみてーな動きは!こーやって手は動かすんだよ」
罵倒しながらもなんだかんだ優しく教えてくれるルーンさん。そんな事よりもたまに触れる肌や水飛沫を浴びて輝く谷間に目線が行ってしまうのだけども。
そんなこんなで楽しく1日を過ごし日が暮れかけてきたので家に帰る事に。
「腹減っちまったな、、おい、飯作んな」
「良いですよ?まだ鹿のお肉も残ってますし」
そんな訳で自宅で料理を振る舞う事に。街で必要な物を買い込み自宅へと向かってゆく。
「おかえりなさい♪生きて帰って来れましたね♪」
その途中マリアさんと会い話をするとまだご飯前だったので一緒にご飯を食べる事に。
「じゃあ作るので待っててくださいね」
「アタイが空腹を感じる度に窓ガラス叩き割っちゃうかも♡だから早くしろよな」
「ルーンは相変わらずですね♪あっ、私は止めませんからね?」
「えぇぇぇぇぇ、、、」
そんなこんなで手を動かして料理を作る事に。
「はい。美味しい保証はありませんけど」
作る過程は省かれているが鹿肉の刺身にじっくり煮込んだシチューのご提供だ。因みにリアルで鹿肉を生食するのなら−30度で急速に冷凍し寄生虫を殺す事。それと肝炎の恐れがあるのでやはり火を通すのが一番である。もし食べる際はしっかりとネットで調べて自己責任で食べて欲しい。
「鹿肉は生姜醤油かニンニク醤油で。シチューはそのままでもご飯とでも良いですよ」
「「いただきまーす」」
「うめぇ!あははっますます気に入ったぜ」
「もうコウ君奏官目指すのやめて料理人になったらどうですか?」
「えぇぇぇぇぇ、、、、」
「お肉といえばビールですよね♪」
「おい、アタイの分ももちろんあるんだよな?」
「もちろんですよ♪」
「えぇぇぇぇぇ」
鹿のお刺身を頬張りながらビールを楽しむ二人。楽しそうで何よりである。
「zzz、、」
「zzz、、」
「えぇぇぇぇぇ、、、」
疲れかお酒のためか即寝した二人にお布団をかけてあげてから残り物を食べ食器を片付けお風呂へ。
その後明日会うキル姫の事を調べる事に。
明日は青龍偃月刀というキル姫のようだ。それだけ見てからベッドに寝転がり眠る事に。
「グガーーーーー」
(えぇぇぇぇぇ、、、)
誰かのいびきに悩まされながらもいつしか眠りに落ちていた。