キル姫日記   作:やす、

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24ページ目 ピナーカ

僕とピナーカさんは轟々と燃え盛る山を見ながら立ちすくんでいた。なぜこうなったかは順を追って書きてゆくので今回もよろしくお願いします。

 

 

 

朝起きて今日会うキル姫、ピナーカさんの事を調べるために図鑑を開いていた。なになに?

 

 

インド神話最大の英雄の一人ラーマが使ったとされる弓。その他にも13の武器を持っていたらしくその中にブラフマーストラという名前があったけど今回は語られないだらう。

 

 

それよりもインド神話と聞くとパラシュさんの事を思い出す。きっとパラシュさんと縁があるキル姫なのだろう。

 

 

前回のアルテミスさんの時はアルテミスのマスターであるクレアさんが代わりに日記を書いてくれたとの事。もし会う機会があればお礼を言わなければ。

 

 

図鑑を読みながらそんな事を考えパタンと図鑑を閉じ大きく背を伸ばしいつもの服へと着替えマリアさんが呼びに来てくれるのを待つ事に。

 

 

「おはようございます♪今日はピナーカのところに行く日ですよ♪」

 

「おはようございます!」

 

 

そんな感じでマリアさんにピナーカさんの特徴を教えてもらいいつも通り教会の広場へと行く事に。

 

 

えっと、赤髪の下が紫?色の頭の人。よくわからないけど特徴的な頭だからすぐ見つかるだろうと広場を見渡すとこっちを見ているそんな頭の人を見つけた。

 

 

「あぁ?何ジロジロ見てやがんだよ」

 

 

僕と目が合うなり売り言葉を言いながら僕の方へとツカツカと歩んで来た。多分平和なものでは無いだろう。

 

 

「おはようございます!ピナーカさんですか?」

 

「っ、お前がコウか。マリアの奴から話は聞いてんぞ。奏官の見習いらしいな」

 

 

僕だと気がつくと話を聞いてくれるようで。声と雰囲気は怖いけど良い人なのかな?それとピナーカさんの髪色は炎をイメージしているのだろう。きっと。

 

 

「今日一日よろしくお願いします!ピナーカさんは何かしたい事はありますか?」

 

「そうだなぁ」

 

 

僕を見下ろしながら何やら考えている様子。しばらく顎に手を置いたりしながら考えていてなにかを思いついたようで。

 

 

「オイラは今めちゃくちゃに暴れたい気分なんだ。何かこの辺りにぶっ壊せそうなものが無いか探しに行こうぜ」

 

 

なんだかめちゃくちゃな事を言い出したけど逆らうと何をされるか分からないのでその案を受けて何か壊せそうなものを探しに行く事に。

 

 

「ピナーカさんは何を壊したいんです?」

 

「とにかくぶっ壊しがいがあるものが良いな。あれなんてどうだ」

 

 

ピナーカさんが指差す先には新築の工事現場が。建物の周りは足場で囲まれており足場屋さんが解体作業に取り掛かろうとしているのが見える。

 

 

「ちょ、新築を壊すのは不味いですよ!」

 

「まぁ見てなって、おい、そこのお前ら」

 

 

ツカツカと現場に歩いてゆくと作業員の方々とガンを飛ばしあっていた。朝から何してんのマジで。

 

 

一触即発かと思いながらその光景を物陰から見ていると何やら握手をし始め困惑しか出てこないのだが。

 

 

「おいコウ。今からこの足場をぶっ壊してやるぜ」

 

「は、はぁ、、」

 

 

そう言い終わるとハンマーを片手に足場をひょいひょいと登ってゆきカンカンと叩き始め解体作業を始めていた。

 

 

「オーライ」

 

「おらよっと」

 

 

ピナーカさんがバラした部材を下の作業員に渡しそれをさらに下の作業員が荷台へと積んでゆく。そんな光景を見ているとあっという間に足場が解体されてゆく。

 

 

「ふぅ、、良い汗かいたぜ。またな!」

 

「お疲れ様でした!」

 

「よしコウ!次のぶっ壊せそうなものを探しに行くぞ!」

 

 

一仕事終えて体が温まったピナーカさんと次の壊せそうな物を探しに行く事に。

 

 

「どうして足場の解体をしたんです?」

 

「そりゃお前好き放題ぶっ壊せてそれに人の役に立つんだぞ?やらねぇ理由がないだろ」

 

 

ごもっともな事を言われていた。最初は乱暴そうな人だと思ってたけど良い人なのかな?

 

 

そんな感じで僕たちは何か壊せそうな物を探して街をふらふらとしていた。そんな時一軒の廃屋の前でいかにも困ってそうなご老人を見つけて声をかけていた。

 

 

「おう、どうしたんだじーさん」

 

「実はのぉ、、」

 

「ふむ」

 

 

聞くとこの廃屋はおじいさんの実家らしく中古で売ろうにも古すぎて買い手が見つからず処分に困っているとの事。壊すのにもお金がかかるし所持していればお金がかかるしとまさに負動産。

 

 

「よっしゃ、オイラに任せな!解体後の手続きとか知ってるんだよな?」

 

「それが何も知らなくて、、」

 

「建物滅失登記ってのがあるんだ。それを解体後にしておかないと解体した建物の税金をいつまでも支払わなくちゃならなくなるんだ。教会に行けばやってもらえるから早く行きな」

 

 

建物滅失登記?何の話かよくわからないけど大事な話なのだろう。感心しながらピナーカさんの話を聞いているとおじいさんが嬉しそうに教会へと歩んでゆく。

 

 

「って訳だ。コウにもぶっ壊すのを手伝わせてやるよ」

 

「あざっす!」

 

 

そんな訳で解体作業を体験する事に。

 

 

「本来なら長袖長ズボンヘルメットに手袋安全靴がいるんだが今回は無しだ。そんなめんどくさい物オイラは嫌いだからな。だが、近隣への配慮と安全は何よりも優先しろ。分かったな」

 

「はい!」

 

「良い返事だ、まずは屋根に登り瓦の撤去だ」

 

「瓦ですか?一緒に解体しないんです?」

 

「まず解体の基本として物は分別する。この家は木造だから大きく二つに分けられる。なんだと思う?」

 

「えっと、燃える物と燃えない物です?」

 

「そうだ。そこから細かい分類があるんだが可燃ゴミと不燃ゴミを分ける事により処理費用が安く済む。混載だと手間賃が多く取られるからな」

 

 

ピナーカさんの話を感心しながら聞いていた。これを見ている人はピナーカさんの話を見に来たのに突然解体のうんちくを語られて困惑していると思うけどこれを書いている僕自身が一番困惑しているのだ。そんな訳でこの話にしばしお付き合い下さい。

 

 

「その中でも瓦が一番厄介なんだ。瓦ってのは粘土の焼き物で自然に分解させる事はまず無いしリサイクルできる方法もあるにはあるんだが数はすくねぇ、引き取ってもらう業者を探すんだがここでは省く。とにかく、瓦は別にして置いておく必要があるんだ」

 

「分かりました!それでどうやって屋根まで行くんです?」

 

 

おじいさんの実家は平屋建ての建物なのだが屋根までは高く何か道具が無ければ屋根の上に登る事はできないだろう。

 

 

「オイラに任せときな。しっかり掴まってるんだぞ」

 

 

ピナーカさんに言われた通りに差し出された手を握ると僕を抱き寄せ何をするのかと思ったらそのまま屋根の上まで飛び上がってくれた。

 

 

「よしっ、この瓦は素焼きのままだから滑りにくいが足元には十分に気をつけるんだぞ」

 

「素焼きの瓦です?」

 

「分かりやすく言えば塗料が塗られていない瓦って事だ。あの家の瓦を見てみな」

 

 

ピナーカさんが指差す方の屋根を見ると青色の瓦が。

 

 

「あの瓦は陶器瓦って言うんだ。陶器と同じように焼く前に色を入れてある。あの瓦が滑るんだよな」

 

「ふむふむ」

 

「とりあえずコウは平場の瓦をめくってくれ。オイラは棟を壊してくっからよ」

 

「はい!瓦ってどうやったら捲れるんです?」

 

「仕方ねぇな、瓦は言っちまえば重なっているだけなんだ。だからこの側面に指をかければ持ち上げる。持ち上げたらグッと掴んで手前に引くんだ」

 

 

そう言って一枚の瓦を引き抜いていた。

 

 

「一枚抜いてしまえば後はそこから捲っていけ。めくった瓦は一枚は反対向きに置いてその上に重ねて置く。分かったな?」

 

「はい!」

 

 

その後ピナーカさんに教えて貰った通りに瓦をめくってゆく。なんだかこうやって作業をしているとだんだんと楽しくなってくる。

 

 

「ピナーカさん、瓦の下にあるのはなんですか?」

 

「あぁ?それは土だ」

 

「土?なんで屋根の上に土があるんです?」

 

「こういう屋根は土葺きって言うんだがドロを置いてその上に瓦を置く工法だ。なぜドロの上に置くか分かるか?」

 

「いえ、わかりません」

 

「さっきも言ったが瓦ってのは置いてあるだけなんだ。だからどうしても隙間ができそこから雨が入る。だが入った雨はドロが吸うから雨漏りはしないってわけだ」

 

「ふむふむ」

 

「これを見な」

 

 

ピナーカさんに言われて屋根の中心部に組み上げられた棟を見てみる事に。積み上げられた瓦の山なのだけど。

 

 

「この棟が一番雨にあたり雨漏りしやすい場所なんだが見て分かる通りドロが濡れていない。腕の良い職人がこの屋根をやったって訳だ」

 

 

棟を組む時に隙間を気にして勾配を取りながら組めば雨は入らないとの事。今の棟はドロではなく別の建材で組まれているらしい。

 

 

まぁそんな感じで瓦を外してドロを土納袋に詰め込み下に放り投げて屋根の解体は終わった。後二千文字は屋根の話で引っ張ろうと思ったのだけど流石にまずいと懸念の声が上がりこの家の解体は終わった。

 

 

さっきまで建っていた家が跡形も無くなり更地となっている光景はなんだか心の奥底に寂しいって気持ちが湧いてくる。

 

 

それでもおじいさんは僕たちに感謝をしてくれてピナーカさんは満足気だからこの感情は僕だけなのだろう。

 

 

「さーって、貰った廃材で焚き火でもしようぜ」

 

「良いですけどどこでやるんです?」

 

「あーあっちの山だ」

 

 

建物の中で一番太くて大きな木の柱を持ちながら歩いてゆくピナーカさんの背後をついて行く。こんな柱でどうやって焚き火をするつもりなのだろうか?

 

 

そんな疑問を抱きながら歩いてゆくと町外れの公園の前へと差し掛かりそこで何かをしている子供達の姿が見えた。

 

 

よく見ると子供たちはサッサーをしているようで四人でボールを追いかけ楽しそうな歓声が聞こえてくる。そんな中ひとりの子供は上手くみんなについて行けずにいた。それでも懸命にボールを取ろうとしているのだが力及ばず他の3人と差が開いてゆきボールを取ることはできずにいた。

 

 

そんな四人を見ているとサッカーに飽きたのか他の3人は他の遊びをしていた。だけどその子はひとりボールを追いかけている。それは3人が帰って行っても続いている。

 

 

「なぁお前」

 

 

その子に見かねてピナーカさんが声をかけていた。突然声をかけられてビクッとし恐る恐るその方を見ると柱を持ったピナーカさんが立っているのだ。

 

 

「・・・・僕お金なんて持ってないです」

 

 

この反応をされるのは当然かもしれない。

 

 

「バカかお前は、オイラはそんな事しねぇって。それよりサッカー好きなのか」

 

「・・・は、はい」

 

「声が小さい!好きな事ならもっと堂々と言え!」

 

「あのピナーカさん?その柱を置いたらどうですか?」

 

「あぁ?そうだなわりぃわりぃ。そんな事よりお前はサッカーが上手くなりたいんだよな」

 

 

柱を置き話すのだが未だに困惑している子供に助け舟を送ると話を始めてくれた。サッカーは好きだけど上手くプレイができずに練習をしているのだが全く他の子に追い付けずもうやめようかと思っていたようで。

 

 

「ならオイラ達が練習に付き合ってやるよ。文句はないな」

 

 

そんな訳で子供とサッカーをする事に。僕とその子がプレイするのをピナーカさんが見てアドバイスをくれるようで。

 

 

「オラオラオラオラー!もっとボールをと相手を見ろ!本当に頭付いてんのか!?」

 

 

僕が蹴るボールを取ろうとする子にピナーカさんの激が飛ぶ。熱血的な言葉に最初はビビっていた子も熱されて果敢にボールを取ろうと脚を伸ばす。

 

 

「気合いと根性見せろ!執念でボールにかじりつけ!」

 

「はいっ!!」

 

 

最初は乱暴者だと思っていたけどピナーカさんは情熱的で良い姉貴分の人だと思う。そんな事を考えていたらボールを取られ次にドヤされるのは僕の番だった。

 

 

「何してんだコウ!そんなんじゃ奏官になんてなれねーぞ!」

 

「はい!!」

 

 

気が付けば夢中になり日が暮れそうになるまでその子にとサッカーを楽しんでいた。

 

 

「ありがとうございました!」

 

「良いって事よ。次はアイツらを見返してやるんだぞ」

 

「はいっ!」

 

 

去ってゆく子供を見送り目的地である小さな山へと僕達は来ていた。

 

 

「こんな大きな柱をどうやって焚き火にするんです?」

 

「見てなって」

 

 

担いでいた柱を地面へと捻り込んでゆくピナーカさん。しばらく見ていると柱が地面から生えていた。

 

 

「さぁ燃やそうぜ!焚き火は大きくしなくっちゃな!」

 

 

それから辺りから枯れ木を拾い集めて柱の周りにくべてゆくとキャンプファイヤーの土台のようになっていた。後は火をつけるだけである。

 

 

「点火だ!」

 

 

落ち葉に火を付け土台へと焼べると一気に火に包まれ辺りを明るく照らし熱気が伝わってくる。

 

 

「焼べるの上手ですね。何かコツがあるんです?」

 

「木と木の間をちゃんと作るんだよ。そうすれば空気が入って燃えやすくなるんだ」

 

 

見ている間にも火は広がり柱の先まで完全に包まれていた。見事な光景である。そんな時山の間を抜ける強い風が吹きさらに燃え上がった。

 

 

パチパチと音を立て燃える土台。炎の力強さと暖かさを感じていると火がついた破片が山へと爆ぜ飛んでゆく。

 

 

「やべっ」

 

 

ピナーカさんが消そうとしたがもう遅く枯れ木や枯れ草に延焼しあっという間に山を炎が包み込んでゆく。その様子を僕達は立ちすくんで見ていた。

 

 

「これって結構ヤバめじゃないです?」

 

「だいぶやべえな。でもオイラに任せときなって」

 

 

何処からともなく矢と弓を取り出すとごうごうと燃える山に向かい弓を構え弦を引き絞る。その姿を見ていると何を任せれば良いのか不安になってしまうのだが。

 

 

「いっけぇぇ!!」

 

 

ピナーカさんが繰り出した矢は風を纏い山を貫き飛んでいった。するとさっきまで燃えていたのが嘘のように火が消えていた。

 

 

「おぉぉぉ!?今何したんですか!?」

 

「山の空気を全部矢で飛ばしたのさ。空気が無ければ火は燃えられないからな」

 

 

豪快に笑うピナーカさんを見た後木々が炭になってしまっている山へと視線を向け直ぐにピナーカさんへと戻していた。まぁ焼畑農業って言葉があるからなんとかなるだろう。

 

 

「ほんじゃ帰るか」

 

「はいっ!」

 

 

一通り火が消えた事を確認してから下山し家へと帰る事に。なんだかよく分からないけど楽しい一日だった。

 

 

「ありがとうございました!」

 

「おぅ!またな」

 

 

ピナーカさんと別れて家へと帰りサッとシャワーを浴びて机に座っていた。

 

 

なになに?明日はアポロンというキル姫のようだ。

 

 

それだけ見てからベッドへと潜り込み目を閉じることに。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

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