キル姫日記   作:やす、

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27ページ目 与一

与一、それは那須与一(なすのよいち)の名前である。それがどうしたという話なのだがその人が扱う弓がキラーズとなっているはずなので与一を語る為には必須の名前であろう。もう少し話をすると平安時代の武将であり兄弟が十三人おり与一は下から3人目のようで。主なエピソードとして弓の練習をし過ぎて左右で腕の長さが変わってしまった、扇の的を射抜くという話がある。その話を見る限り弓の腕が達者なのだろう。

 

 

ファンキルでの話をすると初期から居るキル姫の一人で意外とキャラの種類が多くクリスマスや学園、コラボ衣装を着たりと人の目に付く機会が多いキル姫だ。もう少し話をすると学園衣装の与一の成長率が悪すぎて某所で(クソザコ与一ちゃん)と呼ばれていたり、海上編で(お漏らし与一)と呼ばれていたり。

 

 

後半が悪口みたいになってしまったが学園与一はLSが優秀で使う機会が多かった人もいるのでは無いでしょうか?

 

 

そこまで調べて図鑑を閉じて外を見ていた。武将の魂を引き継ぐキル姫与一。会うのが楽しみである。

 

 

「おはようございます。もう起きてますか?」

 

「おはようございますシャルウルさん!もう準備万端です!」

 

「それなら良かったです。まだ寝ていたり準備が出来ていなかったら破壊するところでした。それより今日は与一と会う日ですが」

 

「図鑑には目を通してあります」

 

「はい。与一はここで弓の稽古をしているので会いに行ってきて下さい」

 

 

シャルウルさんから地図をもらいお礼を言ってから与一さんを探しに行く事に。まだ少し早い時間なのだけど稽古をしているという事はアロンダイトさんの様に少し堅苦しいキル姫なのだろうか?そんな疑問を持ちながら地図を頼りに与一が居る草原へとやって来てた。

 

 

えっと、居た。草原で一人弓を持つ女の子。あれが与一さんであろう。挨拶をしようと思ったけど真剣な雰囲気で稽古をしているのでしばらく後ろから見ている事に。

 

 

その姿を見ていると弓を構え少し離れた所に木の台を置きその上にペットボトルを置き的にしているようだ。でも風が吹くと的のペットボトルが倒れてしまい風により転がってゆく。それを追いかけ台の上に置いた時見ていた僕と目が合った。

 

 

「ひゃぁぁぁぁ!!??」

 

 

悲鳴のような驚いた声が離れている僕にまではっきりと聞こえた。なんか悪い事をしてしまった気分になったのだがその場で与一さんに向かい頭を下げた。すると与一さんも僕に向かい頭を下げてくれてしばらくお互いが頭を下げ合っていた。

 

 

「えっと、与一さんですよね?」

 

「はい!シャルウルから聞いてます。コウ君ですよね?」

 

「はい!今日一日よろしくお願いします!」

 

「ははははいっ!不束者ですがどうかよろしくお願いします、、、」

 

 

何処となく自信なさげに弱々しく話す与一さん。さてさてどうしたものか。

 

 

「あ〜の〜コウ君に一つお願いがあるのですが、、、」

 

「はい、どうしました?」

 

「与一は弓の稽古をしているのですが的が風に飛ばされてしまうのですこーしだけ抑えててもらってもよろしいでしょうか・・・?」

 

「えっと、的をですよね?」

 

「はい、的です」

 

 

話をまとめると的が動くから僕に抑えていて欲しいとの事。この与一ぶっ飛んだ発想をしている。

 

 

「あのーちょっと怖いんですけど、、、」

 

「それなら大丈夫です!この与一日々の鍛錬を積んでいますので弓矢の扱いには自信があります!」

 

 

そう自信満々に言う姿はとても可愛く、キル姫とは一種類の武器しか使えないがその種の武器の扱いには長けていると信じて台に隠れながら的を抑える事に。

 

 

「いきますよ〜!」

 

「はーい!」

 

 

目を瞑ると南無八幡大菩薩と聞こえその後しなる弓から矢が放たれ風を切る音が。その後目を開けると僕が抑えているペットボトルの蓋の部分が消し飛んでいた。

 

 

ちなみにだけど南無八幡大菩薩とはピンチの時に唱える呪文?なのだけど。

 

 

「ふぅ〜ちょーっと緊張しちゃいましたけど上手く当てれて良かったです」

 

 

本当に大丈夫だったのだろうか?不安になり身体中を手で触っても痛みも無いし傷も無いので良いとしよう。そして与一さんの方を見ると何かを求めるような視線を僕に向けている事に気づいた。

 

 

「凄いです!さすが与一さん!よっ!日本一!」

 

「いや〜毎日稽古に励んでいるおかげっていうか日々の鍛錬は身を結ぶって言うか〜♪そんなに褒められちゃうと照れちゃいます〜♪」

 

 

口ではそう言っているけど身をよじらせながら照れに照れている。うん、可愛い。

 

 

「じゃあコウ君にもう少しだけ褒め・・日々の鍛錬の成果を見てもらいます!」

 

 

本音が少し漏れていたけど聞かなかった事に。そして鍛錬の成果を見せてもらう事に。

 

 

「お願いします!」

 

「いきますよ!」

 

 

与一さんの合図の元空に向かい一つの扇を投げた。その扇は風に舞いながらひらひらと不規則に落ちてゆく。そこに与一さんが一本の矢を放った。

 

 

「どうでしょうか?」

 

 

拾い上げた扇を見ると真ん中にある赤い丸の中心に穴が空いていた。与一さんは不規則に動く扇のど真ん中を正確に撃ち抜いていたのだ。

 

 

「流石与一さん!よっ!ラグナ大陸一の弓使い!」

 

「〜〜〜〜〜♪」

 

 

褒められて赤くなった顔を手で隠しながら体をくねくねとさせていた。これだけ喜んでもらえると褒め甲斐を感じる。って言うか僕最初にペットボトルを抑える必要無かったよね?

 

 

 

ここまでで与一さんの事をまとめるとちょっと自信が無さげだけどその実力は本物でしっかりと弓の名手那須与一の魂を引き継いでいるのと鍛錬の成果を誉めるととても喜ぶといったところかな?

 

 

そんな訳で僕達はお腹も空いたので近くにある村へと行きその村で見つけた食堂で朝食兼昼食を食べる事に。

 

 

「おいひ〜です♪あっ食べながら喋るなんてはしたなかったです、、」

 

「可愛いねぇ、ほらシャケの塩焼きお食べ」

 

「お煎餅もあげるよ」

 

「良いのですか〜!?いただきますぅ♪」

 

 

与一さんが頼んだおにぎりを頬張りながら嬉しそうにしていてそれを見た村のおじいちゃんやおばあちゃんがおかずを与一さんにあげたりお菓子をあげたりとまるで遊びに来た孫のように接している。きっとこのおじいちゃんおばあちゃんは与一さんから放たれる末っ子オーラを感じ取っているのだろう。ついつい甘やかしたくなるこの末っ子オーラを。

 

 

「ところで与一ちゃんはキル姫だよね?」

 

「はい!与一は那須与一の魂を引き継ぐキル姫です!」

 

「おや、じゃあ弓の腕には自信があるんだね?」

 

「そりゃもう那須与一には及ばないかも知れませんが日々鍛錬をしているのでそれなりには自信はありますよ!」

 

「それは良かった。ところで与一ちゃん達に一つ頼みがあるんだけども」

 

「はい!与一達にできる事ならなんでも言ってください!」

 

「それは良かった。なら頼もうかな」

 

 

そう言ってニヤリと笑うおじさんを僕は見逃さなかった。嫌な予感がするけど与一さんがここまで乗せられて返事をしている以上その頼みを受けるしか無いのだけども。

 

 

「うぇぇぇぇーん!コウ君ごめんなさーい!!怒ってます?怒ってますよね?怒らないでくださーい!」

 

「大丈夫ですよ。僕は気にしていませんから」

 

 

しばらくして僕達は村の近くにある山を登っていた。何故ならおじさんに頼まれた任務を遂行するためなのだけど。

 

 

あの時おじさんに言われたのは村に出るイノシシを駆除してくれとの任務だった。その任務を聞いた途端に笑顔だった与一さんの顔は見る々青ざめ半べそをかきながら僕に助けを求める視線を向けていたのだが僕が無言で頷くとがっくりと項垂れてしまっていたのだ。

 

 

「与一さんの日々の鍛錬の成果を見せる時ですよ!」

 

「そうなんですけど、、すこーし与一には荷が重いと言うか、、なんというか・・・だってイノシシですよ!?与一よりもずっと大きいし速そうだし、、あの牙にやられたら絶対痛いです!」

 

「与一さんはキル姫だから痛いで済むかもしれないですけど僕がくらったら死んじゃいますよ、、、」

 

「あぁーっ!!そ、そそそ、そうですよね!どうしよう、どうしよう!そうだ!こんな時は、ええっと、、ええっと、、、!南無八幡大菩薩、、南無八幡大菩薩・・・!」

 

 

ぶつぶつと頭を抱えながら念仏を唱える与一さん。もし知らない人がこの姿を見たら不安しか感じないだろうけど僕はさっき与一の弓の腕を見せてもらったので不安は少ししか感じなかった。きっと与一なら上手くやってくれると信じているのだ。

 

 

「とりあえず任務をまとめましょう。任務はこの山にある三匹のイノシシの討伐とその中の一匹を村に持ち帰る事です。大丈夫ですか?」

 

「ひゃっ、ひゃい!」

 

 

噛みながら返事をしてくれる姿には不安しか感じない。だけど与一さんの弓の腕を信じて山道を進んでゆく。そう言う僕は農村出身なのでイノシシ狩りは何度も体験しているので多少の知識があり山道を進みながらイノシシの痕跡を探していた。

 

 

「与一さん。この辺りにイノシシがいるはずです」

 

「えっ、、どうして分かるのですか〜?」

 

「あそこを見て下さい。あの地面が掘り返された跡。あれはイノシシが餌を探す為に掘った跡です。それにまだ土が乾いてません」

 

「ならこの近くにイノシシが、、、」

 

「気を引き締めましょう」

 

 

イノシシ狩りとは異族相手よりも身の危険は少ないかもしれないけどそれでも年間に何人も命を落としている。相手は野生動物、もしかしたら異族を相手にするよりも厄介なのかも知れない。だけどキル姫である与一さんが居てくれるから不安は無い。それでも油断はできないのだけども。

 

 

季節は冬。雪こそ降ってはいないけど木々や草は枯れて落ち葉や枯れ草が視界を茶色く染める。イノシシの体毛は茶色く保護色となりイノシシを見付けるのは困難であろう。

 

 

「この感じ、、。空気が緊張でピリピリするのを感じます」

 

 

振り返り与一さんの顔を見るとさっきまでの迷いは消えて張り詰めた顔をしている。その目に迷いは無い。

 

 

「そこですっ!」

 

 

何かに向かい矢を放つとその矢は一本の木の根へと飛んでゆき何かに突き刺さった。

 

 

「ブヒィ!!!」

 

「ひぃっ!ごめんなさいごめんなさいっ!!」

 

 

与一さんの放った矢は落ち葉に紛れ身を隠していたイノシシの眉間を貫き絶叫の悲鳴を上げた後イノシシは動かなくなっていた。

 

 

「やった、、与一やりました!」

 

「流石与一さん!後二匹ですよ!」

 

 

保護色で完全に枯葉に同化していたイノシシを見つけ出し正確に急所である眉間を撃ち抜いた与一さんの観察力と弓の技術は流石の一言。これが本気の与一さんの実力。

 

 

「ふぅ、、、」

 

 

褒められても有頂天にならず深呼吸をしてコンディションを保つ与一さん。そして再び矢を放つと隠れるイノシシを撃ち抜いた。

 

 

「後一匹、、、!」

 

「落ち着いて行きましょう!与一さんならいけます!」

 

「はいっ!この与一にお任せ下さい!必ずや勝利を掴み取ってみせます!」

 

 

先ほどのおどおどした姿は消え今の与一さんの姿は勇敢なキル姫。そんな与一さんとイノシシを探して山道を歩んでゆく。そんな時僕達の目線はイノシシを見付けていた。

 

 

カッカッカッカッっと音を鳴らし後退りながら地面を掘る行動をとるイノシシは警戒心と敵意をこちらに向けている証拠だ。それに先ほどのイノシシに比べて発達した牙が顔を覆い隠す様に生えその牙には無数の傷がついているのが見える。きっと歴戦の猛者でありこの辺りのボスだろう。

 

 

「与一さん!」

 

「はいっ!南無八幡大菩薩!」

 

 

目にも止まらぬ速さで矢立から取り出した矢を放つ。その矢は真っ直ぐにイノシシ目掛け飛んでゆく。

 

 

「ブルアァ!!」

 

「「ひぃぃぃい!!!」」

 

 

与一さんの放った矢は確かにイノシシを捉えたのだが放たれた矢を牙で弾きこちらへと猪突猛進してきていた。

 

 

「与一さんっ!」

 

「無理ですぅ!これだけ近寄られたら矢を撃てませんっ!!」

 

 

一気に距離を詰められ与一さんの弓を封じられていた。このイノシシは弓使いが接近されると矢を放たなくなるのを知っているかの様に。僕達は悲鳴を上げながら山道を転がる様に逃げる事しかできなかった。

 

 

「与一さん!僕に弓を貸して下さい!あいつはきっと弓を持つ与一さんを狙ってます!」

 

「えええええぇぇぇーーーっ!でもそんな事したらコウ君がイノシシに襲われちゃいますよ!」

 

「このまま山を降れば村に降りてしまいます!そしたら村に被害が!早く!」

 

「分かりました!与一の弓をっ!」

 

 

横並びとなり走る与一さんから弓を貰いそのまま左へと走る。すると与一さんには目もくれず弓を持つ僕の後を追う様にイノシシが迫る。

 

 

「コウくーーーんっ!!」

 

 

無数に生える木々の間をすり抜けながらイノシシから逃げる。イノシシといえば真っ直ぐにしか走らない、一度走り出すと止まらないそんなイメージがあるかも知れないけどイノシシは急停止も急ターンも自由自在なのだ。そして100キロを超える体重で時速50キロのスピードで走る事ができる、その姿はまさに肉の戦車。人間である僕の走るスピードなどイノシシにとっては遅すぎる。すぐに距離を詰められてゆく。

 

 

「与一さんっ!!」

 

 

木々を抜け開けた場所にでた時手に持つ弓を与一さんに向かい放り投げた。その弓を目で追うイノシシは見た。僕が投げた弓を受け取り矢を構えイノシシに向かい標準を定める与一さんの姿を。

 

 

「この一撃で必ず、、、!南無八幡大菩薩っ!」

 

 

しゅんっと空を裂き飛ぶ矢は迷う事なくイノシシの眉間を撃ち抜き身悶えたイノシシはやがて地面へと伏した。

 

 

「・・・・・・やった、、与一やりました!与一やりましたよーー!!」

 

 

与一さんの歓喜の声が山中に響き渡る。

 

 

 

その後ニ匹のイノシシを埋葬した後一番小さなイノシシを村へと運んでゆくと村中から祝福を受けていた。

 

 

「本当にありがとうございます、このイノシシには農作物を荒らされ本当に困っていたのです」

 

「今夜は猪鍋にするので是非食べていってください」

 

 

そう言ってくれたので猪鍋ができるまで村で休憩を取る事に。

 

 

「流石です与一さん」

 

「あはは、、ありがとうございます、、」

 

 

与一さんと一緒に縁側に座りながら先ほどの健闘を褒めていた。でも与一さんの反応は少し控えめなものだった。

 

 

それから猪鍋を頂き教会へと帰る事に。

 

 

「夜は冷えますね」

 

「そうですね、、」

 

 

寒夜を二人で歩いてゆく。あれから与一さんはご飯を食べてる時もどこか上の空で口数も少ない。

 

 

「あの、コウ君」

 

「はい?どうしました?」

 

「与一を助けて頂きありがとうございました。与一だけだったら与一はあのイノシシを倒す事はできませんでした」

 

 

そう言ってぺこりと僕に向かい頭を下げてくれた。

 

 

「僕の方こそありがとうございました。僕だけだったらイノシシを倒せなかったしあの村はイノシシの被害を受け続けるところでした。与一さんの日々の鍛錬の賜物です」

 

「そんなっ!与一には勿体無い言葉です、、あの時与一は弓を撃てませんでした。それに人間であるコウ君を囮みたいにしてしまって、、」

 

「僕は囮になったつもりはありませんよ。ただ与一さんを信じていただけです。与一さんならイノシシを倒してくれるって」

 

「・・・与一、感激ですぅ!そりゃー毎日稽古に励んでましたし一日も稽古をしなかった日はありません。うんうん♪やっぱり成果が出るって良いですね♪」

 

 

泣きそうな表情から一点満面の笑みで話す与一さん。ころころと変わる表情はどれも可愛らしい。そんな与一さんを堪能しながら教会の前へと辿り着いていた。

 

 

「ありがとうございました!またお会いしましょう!」

 

「はいっ!また与一の稽古の成果見て下さいね♪」

 

 

夜に消えてゆく与一さんを見えなくなるまで見送り自宅へと帰ってゆく。

 

 

「あぁ、、疲れた、、、」

 

 

久しぶりに山道を走ったからかとても疲れた。それでも図鑑を開き明日会うキル姫の事を調べる事に。

 

 

なになに?明日はケラウノスというキル姫の様だ。そこまで調べてからシャワーを浴びてベッドへと潜り込む。

 

 

「おやすみなさい」

 

 

 

 

 

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