キル姫日記   作:やす、

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32ページ目、ヴァジュラ

ヴァジュラとはインド神話でインドラが所持していたとされる伝説の武器の事だ。インドラはこのヴァジュラを用いて自在にカミナリを操ったという。

 

 

はいどうも♪キル姫日記のヒロインことクレアでーす♪えっ?またお前か?フォルカスの話じゃねーだろって?

 

 

ふふふ、今回のヴァジュラと一日過ごすのは私達なのだ!なぜならヴァジュラについて書く事が思い付かず文字数を稼ぐ為に人数の多い私達を呼んだのだよ♪

 

 

「ねぇマスター、それ自分で言ってて悲しくならないの?」

 

「うーん、ちょっと悲しいけど出番があるだけ良いかなって」

 

「ポジティブですね」

 

「私も見習いたいところですね。それで今日はどの様な要件で教会へと呼ばれたのですか?」

 

「それは担当者の私が話しましょう♪はいどーも♪キル姫日記のナビゲーターことマリアでーす♪」

 

「イェーイ♪」

 

((…………))

 

 

テンション高めな私とマリアさんにフォルカスとアルテミスが冷ややかな目線を向ける中今日ヴァジュラと一日過ごす予定が書かれた紙を渡してくれた。

 

 

「何が書かれているの?」

 

 

楽しそうに私が貰った紙を取り広げて内容を読んでゆくアポロン。しばらくして眩しい笑顔を見せてくれた。

 

 

「うわーい♪サバイバルゲームだ♪ボクそういうの得意なんだ♪」

 

「「「サバイバルゲーム???」」」

 

 

アポロンが持っている紙をもらい読んでみるとヴァジュラとサバイバルゲームをしろと書かれていた。つまり野生的な生活をしてどちらが野生に近づけるかという事なのだろう。

 

 

「この勝負、私達の勝ちだね♪この時期に採れる食べれる植物や水の採取、寝床の確保はこの私の得意分野だからね♪」

 

「それでこのサバイバルゲームとは一体何なのでしょうか?」

 

 

得意げな私を完全にスルーしてフォルカスがマリアさんへと問いかけている。そんな時赤髪の女の人がこの場へと姿を見せてくれた。

 

 

「やぁやぁお待たせ。私がヴァジュラだ」

 

 

私達を見ながら挨拶をしてくれた人が今回のキル姫であるヴァジュラだ。突然の登場にフォルカス、アルテミスが敵意に満ちた瞳を向ける。

 

 

「まぁまぁ落ち着きなって、私が今日一緒に過ごすクレアだよ、よろしくね♪」

 

「おぉ、これは丁寧な挨拶だね♪それより早速サバゲーのルールを説明させてもらおうか」

 

 

そんな訳でヴァジュラがサバゲーのルールを説明してくれた。

 

 

ルールは配布された水鉄砲を使い相手の体を濡らした方の勝ち。場所はこの教会がある広場で行い他の住民に水をかければ違反となり退場。制限時間は今日の夕方まで。

 

 

「って感じだ。他に分からない事があるなら今のうちに聞いてくれよな」

 

「その水鉄砲の有効範囲はどれぐらいだにゃー?」

 

「おおよそ二メートルってとこだ。強くトリガーを引いて三メートルか?まっ、接近しなければ攻撃は届かないって事よ。他に質問はあるのか?」

 

 

そう言われアルテミスが手を挙げ質問を。

 

 

「チーム戦ですか?それとも個人戦でしょうか」

 

「そおだね。私達が奇数だから個人戦にしようか」

 

 

私達を見渡しうんうんと頷く。その横で笑顔で手をあげる人が一人。

 

 

「私が参加すれば偶数になるのでチーム戦ができますね♪ちょうど体も動かしたかったし私も参加します♪」

 

 

笑顔で挙手をするマリアさんの横を何かが通り過ぎてゆきそれは教会の外壁に突き刺さり止まった。それは何度も見た事があるシャルウルさんが扱う斧だった。

 

 

突然の現象に全員が困惑していると片眼鏡を直しながらシャルウルさんが斧が飛来した道を歩み突き刺さる斧を片手で拾い上げるとマリアさんに向かい振り下ろした。

 

 

「楽しそうな事をしようとしていますね。と、いう事は本日の作業に目処が付いている。そう思って宜しいのですよね?」

 

 

先程までお気楽ムードだったマリアさんの顔が一瞬にして青ざめガクガクと体を震えさせ始めた。そんなマリアさんの前に立ち再び片眼鏡をかけ直していた。

 

 

「なんて冗談ですよ、こうなる事を予想して昨日のうちにある程度は終わらせてありますから。マリアまで参加するのであるならレフェリーが必要かと思い参上致しました。どうしてその様な顔をしているのでしょうか?」

 

 

ダイナミック過ぎるシャルウルさんの登場に全員が引きつった笑顔を浮かべ。マリアさんに至ってはいまだに体を震わせている。

 

 

「驚かせるためとはいえ少しやり過ぎてしまいましたね。補修工事の方を手伝ってもらっても、宜しいですか?」

 

 

そんな訳でサバゲーの前に破壊された教会の外壁を直す事に。

 

 

「どうしたのですかマリア?」

 

「いや、あはは、腰が抜けちゃってさ、、、」

 

 

しばらくして外壁の工事を終えた後私達は教会前の広場へと集まりチーム分けをしていた。

 

 

クレアチーム。

 

クレア。

 

アポロン。

 

フォルカス。

 

 

マリアチーム。

 

アルテミス。

 

ヴァジュラ。

 

マリア。

 

 

 

となり三、三に分かれ教会の広場に南北に分かれ試合開始の合図を待つ。

 

 

「では準備はよろしいですね?試合、開始!」

 

 

シャルウルの声が響いた後一斉に動き出す。もちろん公平を保つ為にキル姫の武器は使用禁止で武器は安っぽい水鉄砲のみだ。

 

 

「相手のアルテミスをまず先に潰しましょう。続いてマリア。そして最後にヴァジュラを」

 

「遠距離なら負けちゃいそうだけどこの水鉄砲の射程ならお姉ちゃんに負けないよ!

 

「はい。なので今回はアポロンを主軸にして立ち回りたいと思います。場は隠れるところが無数に有る街。機動力に長けたアポロンなら優位に戦えるはずです」

 

(・・・・)

 

 

完全にマスターポジションをフォルカスに奪われてちょっとショックな私。それをいえば今回の主役であるはずのヴァジュラは今のところ空気なのだが。

 

 

その頃。マリアチームも作戦を練っていた。

 

 

「相手の主戦力はアポロンなはずです。なので真っ先にアポロンを落とし続いてフォルカス、最後にマスターを討ち取り完全なる勝利を手にしましょう」

 

「そう熱くなるなってアルテミス。肩の力抜いていこうぜ♪」

 

「確かに勝ちたいですけど楽しく戦いたいですね♪」

 

「この試合が終わったらパーっと飲みに行こうぜ。もちろんマリアの奢りでね♪」

 

 

お気楽な二人に頭を悩ませながらも行動を開始してゆく。

 

 

 

銃口を下げながら三人でひたすらに路地裏を走る。先頭を走るアポロンが交差点から顔を出して合図を出すと二人が続き新たなる路地裏へと消えてゆく。

 

 

「なんだかこういうのって楽しいね♪」

 

「静かに。見つかったらどうするのですか」

 

「そうだよマスター!」

 

(・・・・)

 

 

完全に二人のお荷物となりながら二人の後をついて行く。これはこれで結構楽しいのだけど。

 

 

「止まって、マリアが居るみょーん」

 

 

アポロンが右手を出し止まり前を向くと大通りをキョロキョロと周りを見ながら歩くマリアさんの姿が。様子を見る限りまだ私達の存在には気が付いていない様。

 

 

「ボクが気を引き付けるからその隙にマスターやっちゃってよ」

 

「うん、任せて♪」

 

 

アポロンがマリアさんの前を通り抜けるとマリアさんの注意がアポロンに移り後を追う。その背後から私が忍び寄る。

 

 

「私の勝ちだ、、、、」

 

「残念だったなクレア!背後は取らせてもらったよ音」

 

 

あっと思い振り返った私の顔に冷たい感触。それは顔を流れてゆき服を濡らしてゆく。

 

 

「クレア離脱です」

 

「あーはっは♪疾風迅雷ってね♪」

 

「えっ、もう私の出番終わりなの!?」

 

「これでお荷、、一人減ってしまいましたが問題はありません」

 

「今はこの場から離れるにょーん!」

 

「今お荷物って言いかけた〜〜っ!!」

 

 

やられた事よりもフォルカスが言いかけた言葉が胸に刺さる。そんな私にシャルウルさんがジュースをくれた。

 

 

「お荷物といえばマリアも同じですから」

 

(ひどい、、。)

 

 

 

お荷物を失った私達は街を駆ける。狙うは相手チームの指揮官であるアルテミス。

 

 

「アポロン!」

 

「うん!この街の地理はカンペキに把握してるよ♪」

 

 

小さな相棒の返事に微笑み返す。そして敵を探し駆ける。

 

 

「居たみょーん!」

 

 

前方には歩くマリアの姿。距離はおおよそ10メートル。射程外そしてあれは囮。しかし二人には秘策がある。

 

 

「飛べ!」

 

 

走るアポロンの前にフォルカスが立ち走るアポロンの踏み台となる。そして小さな相棒は空を駆ける。

 

 

一瞬太陽が遮られ頭に水がかかる。通り雨?そう思った時にはアポロンがはるか先に着地し路地裏に姿を消していた。

 

 

「マリア離脱です」

 

「えっ!?納得できないよ!」

 

「アポロンに水をかけられたのですよ」

 

 

まだ納得ができていないマリアさんにシャルウルさんがジュースを渡す。

 

 

「これで両チームからお荷物が居なくなりましたね」

 

「ひどいっ!?」

 

 

 

……………………………………………

 

 

「うっひょー!お前の妹やるなぁ!がぜん私も燃えてきたぜ!」

 

「流石フォルカス、と言うべきですね。体重の軽いアポロンを空に飛ばしお荷、、マリアと私達に気付かれずお荷物を討った。しかし一度見た策は破る事は容易い」

 

「んで、どうするんだ?各自追う?それとも」

 

「二人は必ず合流します。二人で行動しましょう。大体の目星は付けてありますので」

 

「さっすがアルテミスだな!んじゃ、反撃といきますか」

 

 

 

 

 

街を駆ける二人は街の中心部である広場にて落ち合っていた。この場所は多くの人が行き交い姿を隠す事ができる。人を隠すなら人の中だ。

 

 

「うまくいったみょーん♪」

 

「流石ですアポロン。しかし、まだ二人の姿は見えません。油断してはいけませんよ」

 

「大丈夫だってフォルカス。走りながらでもちゃーんっと回りは見てたからさ、追手は無かったよ」

 

 

アポロンの言葉に安堵しながら回りを見る。その視線は相手の姿を捉える事は無かった。

 

 

「それで、次はどうする?同じ作戦が通じるとは思えないけど」

 

「そうですね、、」

 

 

相手にアルテミスが居る以上同じ作戦が通じるはずが無い。それならば前回の策を超える策を練らなければ勝ち目は無いだろう。

 

 

顎に手を置き考える。そんな後頭部に何かが当たった。

 

 

「さようならフォルカス」

 

 

冷静な言葉の後に髪を伝う冷たい感触。それは長い黒髪を伝い地面に滴り落ちてゆく。

 

 

「フォルカス離脱です」

 

 

目を見開き振り返るとアルテミスの姿が見えた。それは相棒の背を追いかけてゆく。

 

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう、ございます」

 

 

納得がいかないまま手渡された缶を開封し口を付けてゆく。

 

 

 

 

 

 

アポロンは街を駆けていた。行き交う人々の隙間をすり抜け懸命に。そして振り返れば姉が迫る。

 

 

マリアを討った後フォルカスと無事に合流できた、その油断をフォルカスは討たれた。そして策も無く逃げる事しかできないでいる。

 

 

人混みを抜けたどり着いた先は住宅が立ち並び行手を阻む。簡単に言えば行き止まり。もっと簡単に言えば袋のネズミ。

 

 

「くっ、、、」

 

「追い詰めましたよアポロン」

 

 

目の先には水鉄砲を向ける姉。しかしアポロンはニヤリと笑う。

 

 

「ふふーん。ボクがこんな事で諦めると思ったら大間違いだよお姉ちゃん!」

 

 

アポロンは飛んだ。アルテミスを前にし大きく右へ跳び家の外壁を蹴り左上へと跳び上がった。

 

 

「勝負だよ!」

 

 

見上げたアルテミスの瞳に水滴が見え顔に滴り目を閉じた。

 

 

「アルテミス離脱」

 

 

目を開けると既にアポロンの姿は無く代わりにジュースを渡そうとするシャルウルの姿が。

 

 

「本当に勘がよろしいですね」

 

「いえ、それほどでもありませんよ」

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

夕刻に迫る街をアポロンが駆ける。目指す相手は最後の一人ヴァジュラ。

 

 

しばらく走ると街の広場に立つヴァジュラを見つけた。

 

 

「うぃ、、、っ、、やっと来たね。待ち切れなくて一本開けちゃったよ」

 

 

ヴァジュラの左手に握られているのは酒瓶。それを逆さまに向けるのだが垂れてくるのは一滴の雫。

 

 

「やい!酔っ払ってボクに勝てると思っているのか!」

 

「ふふふ。もちろんさ。じゃなきゃ酒なんて、ひくっ、、飲まないさ」

 

 

酒瓶を地面に置き千鳥足で歩きふらふらと水鉄砲を構える。

 

 

「勝負だよアポロン」

 

 

そう言われたのだがこんな酔っ払いなど相手にもならない。そう思いアポロンは不敵に笑う。

 

 

「じゃあボクが酔いを覚してあげる!」

 

 

とろんとした瞳に水をかけるためにアポロンが射程内へと走る。そして圏内に入り込むとトリガーを引いた。

 

 

「うぃっと、、、当たらないね」

 

「!?」

 

 

ヴァジュラに向けた銃口から放たれた水はヴァジュラに当たるはずだった。しかしのらりと躱され酒臭い息を浴びる距離まで近寄られた。

 

 

「この!このっ!!」

 

 

乱れ打つ水の弾丸はヴァジュラを捉える事はなく。やがて掠れた音と共に水が出なくなった。

 

 

「じゃ、私の勝ちで良いんだよな?」

 

 

ヴァジュラの言葉にアポロンは両手を上に上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「では♪我がチームの勝利を祝ってかんぱーーい♪」

 

 

 

勝負が終わりみんなで近くにある居酒屋へとやってきていた。そこで乾杯の合図と共にジョッキを打ち合わせ口へと運んでゆく。

 

そうは言っても未成年であるクレアとアポロンはコーラなのだが。

 

 

「いや〜楽しかったね♪たまにはこうやって体を動かすのも良いですなぁ」

 

「マスターは何もしてないじゃんか」

 

「そうです。無様に水をかけられていただけです」

 

「ちょっと今回私への当たりが強すぎない!?」

 

「それにしてもアポロンの攻撃を酔ってる躱すとは、、、」

 

「まぁ酔拳ってやつだな。相手がお酒を飲んだ事がないお子ちゃまで助かったよ♪」

 

「その言葉聞き捨てならないよ!今度は矢で射ってやる!絶対だからね!」

 

「おぉ怖い怖い♪そう怒らなさんなって♪」

 

「まぁ楽しかったから良いじゃんか♪」

 

「そうそう♪終わり良ければ全てよしってな、あはは♪」

 

「シャルウルーお会計よろしくね♪」

 

「はい、経費として落としておくので問題はありませんがくれぐれも飲み過ぎる事の無い様にお願いしますね」

 

「分かってるって♪すいませーん、生一つー♪」

 

 

渡されたビールを飲んでいるマリアを見ながらシャルウルはお仕置きの方法を考えてゆく。

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