いててててっ
朝起きると同時に筋肉痛に悩まされていた。腕と背中、それに足までいい感じに筋肉が悲鳴をあげているのを感じる。
それでも起き上がり机に向かい今日会うキル姫、ナーゲルリングについて調べる事に。なになに?
ナーゲルリングとは、中世ドイツの英雄叙事詩の主人公ディートリヒ・フォン・ベルンの愛剣。
小人アルプリスが鍛えた剣で、元は巨人グリムが所持していたが、ディートリッヒがアルプリスに盗んでくるように命じ、その後ディートリッヒの物となった。
ディートリヒ曰く、「ナーゲルリングは全ての剣の中で最も優れている」。
その切れ味は鉄の鎧をも軽々と切り裂くほどであるという。
ディートリッヒはこの剣を使い多数の巨人を討伐したりと、数々の武勲を挙げた。
ただエッケザックスを手に入れた後はこちらに乗り換え、ナーゲルリングは英雄ハイメに渡しているので、ここを見ると「エッケザックス>ナーゲルリング」のように見えるが、先述したようにナーゲルリングは全ての剣の中で最も優れたものとディートリッヒ自身が言っているので、実際にどちらが優れているのかは解釈次第だろうか。
との事。再びコピペで申し訳ないのだがそう言う事のようだ。鉄の鎧を軽々と切り裂くってヤバいヤツやん!
ナーゲルリング、どんなキル姫なのだろうか?楽しみである。
おはよーございまーす♪
おはよございます!
いつも通りマリアさんが起こしにしてくれた。ドアを開けて今日の事を説明してもらう事に。
今日はナーゲルリングに会ってもらいますね、それと一つお願いがあります
はい、聞きますよ?
ナーゲルリングと一緒にワスレナの方にある村に果物を買って来て欲しいんですよね、もちろんお礼はしますよ?
分かりました!それでナーゲルリングは何処に居るのですか?
教会の入り口に居るようには言ってあるのでコウ君も早く準備して下さいね♪
りょーかいです!
それと馬車と必要な物はこちらで揃えておきますので少し待っていて下さい♪
はい!
そんな感じで去っていったマリアさんを見届けてから着替えて教会の入り口へ。少し待っていると銀髪で蒼目の女の子が誰かを探している様にキョロキョロしているのが見えた。
もしかしてナーゲルリングさんですか?
はい、そうですよ
話しかけてみると優しい声で返事をしてくれた。よくみるとゴスロリっぽい服装をしている。
おはようございます、僕コウって言います。今日一日よろしくお願いします
ナーゲルリングです、どうぞよろしくお願いしますね
二人共お願いしますね♪
挨拶を済ませた時に馬車を引いてマリアさんが来てくれた。馬一匹に一人用の荷台。ごくありふれた馬車である。
一応目的地の辺りで異族の目撃情報はありませんが万が一の時はナーゲルリングを頼って下さいね♪
分かりました、行きましょう
う、うん!行ってきまーす!
気を付けていってらっしゃーい♪
マリアさんに見送られながらの出発である。因みに僕が馬を操りナーゲルリングは荷台にちょこんと座っている。
お互いが無言の中カラカラと車輪の音と馬の蹄の音を聞きながらサフランの道を進んで行く。
あのっ質問良いですか?
はい、なんでも聞いてください!
コウ君はどういう人ですか?
えっと、そうだな、、、
私の事はどういう風に扱うつもりですか?
考えをまとめる前に次の質問をされてしまった。その質問にも答えるべく頭を悩ませていた。
僕は普通の人でナーゲルリングさんの事は一人のキル姫として接するつもりだよ?
そうですか
なんとも言えない返事を貰えた。その間もカラカラと音を立てながら馬車を進ませていた。
今日は何処まで行くのですか?
えっと、ワスレナのモルゼイ村って所だよ。このまま問題なければお昼頃には着くと思うけど
分かりました、それまでの間よろしくお願いしますね
僕の方こそお願いね、不甲斐無いと思うけど、、、
大丈夫ですよ、私は気にしません
ふむっ
なんとなーく冷たく感じるナーゲルリング。まぁ初対面だししょうがないのだろうと気持ちを切り替えて馬の操縦をする事に。
しばらくして馬の足取りが重くなってきた。そろそろ休憩しようと思い辺りを見渡すと道に一本の木が生えているのが見えた。
ナーゲルリングさん、あの木まで進んだら少し休憩しよっか
分かりました
木の近くまで馬車を操り手綱を木に結び付けた。これで一息つける。そういえばマリアさんが必要な物を揃えてくれていたはずだ。それを探す為に荷台を覗く事に。
どうしました?
いや、マリアさんが必要な物をくれたから何処にあるのかなってさ
私も手伝いますね
うん、ありがとね
二人で荷台を見ていると荷台の床の一箇所が外れる事に気が付いた。二人で顔を見合わせた後にその蓋を開ける事に。
((せーのっ!))
何故か二人で声を合わせてあけていた。
おっ?
なんですか?かご?
二人でそこを覗くと木で編んで作られたカゴが一つ入っているだけで他には何も入っていなかった。
えーっと?
これにその果物を入れて持ってきて欲しいって事なんですかね?
そうだと思うよ?
………………………
………………………
プッ
アハハッ
二人共笑い転げてしまった。マリアさんの事だからご飯とか入れてくれてるって思ってたのにまさかカゴだけだなんて。
面白い人ですね
そうだね、まさかカゴだけだなんてさ
私お腹空いちゃいましたよ
僕もだよ、この辺りにご飯屋さんは無いかな?
調べてみますね
そう言って腰についている二つの鳥籠の様なものを外すと中から白いねずみを取り出した。
そのネズミは?
今からこの子達の嗅覚でご飯屋さんを探してもらいます
へぇ、、そりゃすごいよ
この近くのご飯屋さんを探して下さいね
ナーゲルリングがそう言うとネズミ達はピンと背筋を伸ばしその後何処かに駆けて行った。
ナーゲルリングさんはねずみが好きなの?
ねずみもそうなのですが私は小さいものが好きなんです
そう言うことね
しばらくすると一匹のねずみが帰ってきて進路を鼻で教えてくれた。
あっちみたいですね、行きましょう
了解です!
先行し何度もこっちを振り返るねずみを見失わない様に馬車を進めてゆくと一軒のうどん屋さんを見つける事ができた。そこの亭主に馬車を停める所はあるかと聞くと裏に停めて良い様なのでそこで朝ご飯兼昼ご飯にする事に。
いただきます♪
いただきます
お互いの机に置かれているのは月見うどんだった。料理は同じなのだが僕は大盛りでナーゲルリングは小盛り、むしろお子様サイズと言った方が良いかもしれない。
ナーゲルリングさんは少食なの?
いえ、そうでは無いのですが小さいと可愛く無いですか?
ふむ
確かにそう言われてみればそうである。だけど月見うどんの月見を崩さない様に麺を一本一本箸で掴み食べるナーゲルリングの方が可愛い。さらに。
フーーフーーーと息で麺を冷ますパフォーマンス付きだ。この言い方は失礼かもしれないがロリ●ンなら一撃死するだろう。
どうしました?私の顔に何か付いてます?
んーん?何も付いてないよ?
残念ながら?僕はロリコ●では無いのでこの話はもう無いのだが何となく守ってやりてぇ、なんて事を考え始めていた。
ご馳走様でした
ごちそうさまです
そんな感じでご飯を食べ終えて再び馬車の旅を再開させていた。それと先程と違う事が一つ。
コウ君はどうして奏官になりたいのですか?好きな物はなんですか?っと、ナーゲルリングから質問攻めにあっていた。それに一つずつ答えていくとそれを笑顔で聞いてくれた。
朝よりも楽しく馬車を進ませ気が付けばモルゼイ村にたどり着こうとしていた。
なんだかあっという間でしたね
そうだね、ナーゲルリングさんが沢山話してくれたからだよ
そんな、コウ君が話してくれたからですよ
そんな微笑ましい会話をしながら村へと入ってゆく。
それでなんて果物を貰いにきたのですか?
えぇっと、ドラゴンフルーツだったはずだよ?
珍しい果物ですね
僕もあんまり聞いた事無いかなー?
とりあえず村の人に話を聞いてみませんか?
そうだね
馬車を村の入り口に停めさせてもらい二人でフラフラと村を歩きながらドラゴンフルーツを探していた。
すいまーせん、ドラゴンフルーツは売っていますか?
うちじゃ扱って無いね
すいません、ドラゴンフルーツありますか?
うちには無いよ
…………………
そんな感じで5軒程回ったのだが良い返事は貰えなかった。でもモルゼイ村の外れの方で一軒だけドラゴンフルーツを育てている農家がある事を教えてもらう事ができた。
そこに行ってみましょうか
そうだね
二人で郊外にある農家を目指して歩いて行く。夏を感じさせる太陽と吹き抜けてゆく風を感じながら。
心地良いですね
そうだね、ナーゲルリングさんは暑いの大丈夫?
私は平気です、コウ君はどうですか?
僕も大丈夫だよ、暑いより寒い方が嫌かな?
冬は誰かに抱き着けるから好きです♪ほら、暑いと抱き付きたくなくなるじゃ無いですか?
うーん?
ニッコリ笑顔でそう言うナーゲルリングの可愛さに何も言えなくなってしまった。
気が付けばその農家に辿り着く事ができていた。村からそれなりに離れているのに本当に一瞬で着いてしまった気がする。
すいませーん、ドラゴンフルーツが欲しいのですがー
はーい、教会のマリアちゃんのお使いかな?
そうです!
マリアちゃんドラゴンフルーツ好きだからね、そのカゴいっぱいに入れておくね
あざっす!
どっさりとカゴに入れてもらう事ができた。少し重たいけど良いだろう。
これって美味しいのですか?
美味しいよ、良かったらお二人も食べてみるかい?
良いんですか?
もちろんさ、こういうサービスからお客を作るんだからさ
少々本音が漏れている気がするけど農家の人の好意に甘えてドラゴンフルーツを頂く事に。
こうやって切って後はスプーンですくって食べるんだよ
あざっす!
ただシンプルに半分に切るだけで良い様だ。そのほかにもスムージーにしたりサラダに混ぜたりと色々な調理法があるみたいだが今回はシンプルにそのまま頂く事に。
んっ、美味しい♪
見た目と味が全然違うね
ほんのり甘くて酸味がいい感じで美味しいフルーツだった。キウイの様な種の感じさえ気にしなければ問題なく食べられる。
このフルーツがドラゴンフルーツって呼ばれる理由はこの竜の鱗の様な皮にあるんだよ
へぇ〜
へぇ〜
おじさんのうんちくを聞きながらも良いおやつを食べる事ができた。
じゃあまた来ますね
ありがとうございました♪
マリアちゃんによろしくねー
じゃあ帰ろっか
はい!楽しかったですよ♪
ご機嫌なナーゲルリングを荷台に乗せて教会を目指す事に。余程ドラゴンフルーツが気に入ったのかその話をしながら盛り上がっていた。そんな時だった。ナーゲルリングが連れているねずみが鳴き声をあげていた。
どうしたの?
異族です
その言葉に緊張が走る。馬の上から見渡してもその姿は見え無いけど不安が押し寄せてくる。
どうしたら良いかな?
私に任せて下さい、絶対にコウ君に手は出させません!
荷台で剣を構え戦闘態勢のナーゲルリング。その瞬間にねずみが一際大きな鳴き声をあげた。
そのまま馬車を走らせて!絶対に止まらないでね!
そう言い残し荷台を飛び降りたナーゲルリング。そう言われたら止まるわけにはいかない。馬に鞭を入れてスピードを上げてゆく。
ギャァァァァァァァ!!!
グギャギャギャギャ!!
異族の嫌な叫びが聞こえてきた。それでもナーゲルリングを信じてひたすらに馬車を走らせてゆく。
ザクッ ザシュッと何かを切る音が聞こえてその後にバサッと何かが倒れる音が聞こえてきた。そして最後に異族の咆哮が聞こえた後には馬車の音しか聞こえなくなっていた。
お待たせしました、任務完了です♪
ありがとナーゲルリングさん、助かったよ
あの程度の数なんて楽勝ですよ♪
走る馬車にナーゲルリングが飛び乗ってきてくれた。それにお礼を言うと笑顔を返してくれた。
街に着いたらお礼にご飯でも行こうよ
じゃあお言葉に甘えちゃおっかなー♪
うん、僕にはそれぐらいしかできないからさ
そんな事ないですよ!私には分かります!
そう言ってもらえて嬉しいよ
のんびりと馬車を走らせて教会に帰ってくる事ができた。門に馬車を停めてすっかり重くなってしまったカゴを二人でマリアさんが居る受付に持って行く事に。
はい、無事帰って来れました
あっ♪ありがとうございます♪このフルーツ私大好きなんですよね♪
そう言いながらスーツ姿のままドラゴンフルーツの皮を剥き食べ始めていた。この人仕事中にこんな事して良いのだろうか?
じゃあ二人にお礼を支払いますね♪
レジからお金を取り出して渡してくれた。この人は自由人なのだろうか?
それとナーゲルリング、コウ君を守ってくれてありがとうございます♪
え、なんで異族と戦ったって分かるのですか?
雰囲気で分かりますよ♪
ふむ
よく分からなかったけどまぁ良いだろう。そのまま教会にあるレストランへと二人でやって来ていた。
好きなのを食べてよ、今日のお礼だよ
じゃあ遠慮なく食べちゃいますね♪
ナーゲルリングが頼んだのはオムライスのお子様セットだった。因みに僕はカツ丼を頼む事に。
コウ君は私を信じてくれたのですか?
えぇっと?どう言う事?
異族に襲われた時です、私が裏切るとは思わなかったのですか?
ん、僕はナーゲルリングさんを信じていたよ?でももしそのまま居なくなったとしてもナーゲルリングさんには僕を守る義理は無いから恨みはしない。かな?
優しいんですね
かな?分かんないよ
ごめんなさい、疑ったりして
どう言う事?
ナーゲルリング。私が剣だった時の事は知っていますか?
確か小人アルプギスが作った剣でディートリヒ・フォン・ベルンの愛剣。だよね?
そうなのですが私は持ち主を何回も変えているのです、その時の記憶からかあまり人を信じられなくて
それは誰だってそうだと思うよ?世の中良い人ばかりじゃ無いし誰だって人を疑う事はあると思う、だけどそれは悪い事なんかじゃ無いと僕は思うよ
優しいのですね
ナーゲルリングさんには負けるかな?
お待たせしました
ありがとうございます、食べよっか
はい♪
カツ丼を食べながらオムライスを食べるナーゲルリングを見ていた。オムライスの中心に建てられた旗を倒さない様に食べてるのだが倒れてしまいガッカリした表情がとても可愛らしかった。
じゃあ帰ろっか
はい♪またお願いしますね♪
トコトコと待ち姫ルームへ駆けて行くナーゲルリングを見送って僕も部屋に帰る事に。
ただいまーー。あー疲れた、、、
誰も居ないドアを開けてそう呟いた後シャワーを浴びる事に。
ふぅ、
寝巻きに着替えて一息付いてから机に向かう事に。
なになに?次はアロンダイトってキル姫の様だ。よし、寝よう。
そう決めてベッドに潜り込む事に。おやすみなさい。
私は窓から空を眺めながら今日の事を思い出していた。まだ奏官の見習いの男の子とのちょっとした冒険の事を。
馬を運転している姿、人と喋っている姿。私と喋っている姿。全部見ていたけど間違いなくコウ君は良いマスターとなるだろう。
どうせ私は選ばれませんけどー
つい独り言が漏れてしまった。慌てて振り返るも聞いているのはねずみ達だけだった。
寝よっと
そのまま布団に潜り込むと二匹のねずみも入って来てくれた。その温もりを感じながら目を閉じて眠りの世界へと。