HUGっと!プリキュア 鬼人の夢想曲   作:水無月 双葉(失語症)

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野乃一家と

 戦いが終わり日が傾く中私はお母さんの所に走っていた、その姿を見つけた時私は胸の奥から思いっきり声を張り上げた。

 

「ママー!」

 

「はな!」

 

 足を緩めずに私はお母さんの胸に飛び込むとお母さんは優しく抱きしめてくれた。お母さんの温かい体温に優しい匂い、大好きなお母さん。

 

「心配したんだから」

 

「ママ……心臓の音が聞こえる……」

 

 トクントクンと安心する音色、はぐたんの気持ちが分かる、このままずっとこうして居たい。

 

「子供、甘えちゃって」

 

 ことりが私を馬鹿にしてくる、私がムッとして文句を言おうと息を吸う。

 

「甘えられる内に甘えた方が良い、親に甘えるのは子の特権だ、遠慮する事は無いよ。それにね、親は子供が甘えてくるのが嬉しいし待っても居るのさ、羨ましがってないで甘えなさい」

 

 木野さんが優しくことりに問いかけるとことりは少し俯いてしまった。

 

「ことり、おいで」

 

 お母さんの優しい声、ことりは顔を上げると戸惑いながらお母さんに抱きしめられた。

 

 お母さんとことりを見つめる木野さんの目線は優しく、私は木野さんに対する怖さが少なくなる。

 

 はぐたんが少し声を上げるとハリーが戸惑ってしまう、ことりを抱きしめたままはぐたんの声を聞いたお母さんは頷いた。

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に移動した私達は家族全員とさあやちゃんと木野さんを含めた7人でダイニングに居た。

 

「はい、どうぞ」

 

「おおきに」

 

 お母さんから哺乳瓶を受け取ったハリーははぐたんにミルクを飲ませ始める。

 

「良い飲みっぷりだ」

 

 勢いよくミルクを飲むはぐたんを見てお父さんが嬉しそうな声を上げる。

 

「パパさんまで……何から何まで、えろうすんません」

 

 ハリーが恐縮しているのが少し面白くって笑うのを堪えるのがちょっと大変。

 

「1人じゃ大変でしょう、困った事があったら何時でも来て」

 

「ほんまでっか、ならお言葉に甘えて」

 

 お母さんの言葉にハリーが喜びの声を上げる、そんなハリーにお母さんは頷くと木野さんの方を向く。

 

「木野八雲さん、でしたっけ?」

 

「はい、そうですが」

 

「もしかして、お仕事は調律師ですか?」

 

 お母さんの質問に木野さんが目を丸くする、こんな表情を見た事が無かったので声を上げそうになった。

 

「そうですが、何でそんな事知っているんですか?」

 

「一度取材をさせて頂こうかと思ったんですよ、ですが企画が流れてしまって……」

 

「取材? 木野さんって有名なの?!」

 

 お母さん達の会話に思わず入り込んでしまう、気になるからしょうがないよね。

 

「俺は有名じゃないよ、ただの調律師だよ」

 

「えー話聞きたい、ママ教えてよ」

 

 お母さんに詰め寄るとお母さんは木野さんの方を見る。

 

「私も少し聞きたいです」

 

 さあやちゃんが小さく手を上げてお願いすると、ことりもそれに同意した。

 

「俺の話なんて大した事無いよ、でも、まぁ良いか……過大評価なら訂正しますのでどうぞ」

 

 木野さんは白旗を上げたので皆の目線がお母さんに集まる、お母さんは一度咳ばらいをし話し始める。

 

「木野八雲、音楽の街と呼ばれる加音町にいきなり現れた調律師、その腕は確かで街の中でもトップクラスと言われ、若手ではナンバーワンと目されている、とりわけ教育施設に対する調律に尽力し、特にアリア学園の調律に力を注ぎそこから噂が流れ始める。

 

 有名な仕事としては古い音楽堂のパイプオルガンの整備を手伝い完成にこぎつけた、また街一番の人気音楽隊、音楽王子隊の調律も手掛け音楽に悩んでいた音楽隊リーダーの心を救ったとも言われており、それを最大の功績と言う人も居る、また著名な音楽家とも懇意にしておりその妻である世界的に有名なバイオリニストとも友好がある。

 

 つい先日前触れも無く街から出てしまい惜しむ声は大きく混乱が予想されたが、引き継ぎはしっかりしてあったので大きな混乱は今の所起こってはいない」

 

 思ったより話が大きく皆の視線が木野さんに集中する、木野さんは何とも言えない表情をしながら後頭部を掻いていた。

 

「後はそうね、親しい人達とは名前で呼び合っているとか、子供達にサッカーを教えているとか、食べ歩きが趣味とか、それ位かしらここで話せそうなのは木野さんどうですか、おかしい所ありましたか」

 

 お母さんが木野さんに聞くと木野さんは大きな溜め息を吐いた、もしかして過大評価で困っているのかな? 

 

「良くそこまで、引き継ぎの事まで調べましたね……完敗ですプライベートは内緒でお願いしますね」

 

 全部本当なんだ木野さんって凄い、親しい人は名前で呼び合うか……

 

「木野さん凄いんですね、もしかしてもうはぐぐみ市でも調律のお仕事しているんですか?」

 

 さあやが目を輝かせて木野さんに聞くと木野さんは少し笑いながら頷いた。

 

「うん、始めてるよそんなに忙しく無いし、今はそれほど仕事受ける気は無いよ、色々あるからね」

 

 お父さんお母さんと木野さんで色々な話をし出してその会話に耳を傾ける、木野さんも格好良い大人だったんだな音楽の街で若手一番ってもしかして物凄いのかも、私は調律の話が聞きたくなって会話の中に入って行った。


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