HUGっと!プリキュア 鬼人の夢想曲 作:水無月 双葉(失語症)
皆様おそろいで、輝かしい新年をお迎えください。
ほまれのセンス
昼休みに野乃に頼まれてビューティーハリーって名前の店に入ったんだけど、一言で言うと酷い、何が酷いって、全て、統一感は無いし、何がしたいかも分からない、店内を見て回ったら店の隅で木野さんが絶望的な顔をしていた。
「大丈夫?」
「一昨日まではこうじゃなかったんだ、でも昨日調律の仕事で一日空けて戻ったらこのありまさで……」
言い方に抑揚が無くって少し怖いし、ちょっと言葉が出てこない、あ、また、大きな溜め息をついた。
「ハリーのセンスが壊滅的なのはどうでも良い、でも、はなとさあやのセンスもこれってどう思う? ねえ?」
「ヒィッ」
私を見たその瞳は光りが無くて余りの恐ろしさに小さな声を上げて私はその場を逃げ出した。
逃げて来た私は近くの椅子に座り大きく深呼吸をして落ち着きを取り戻していると、野乃と薬師寺が揃って私の前にやって来る。
「「と言う訳で」」
2人の声が綺麗に揃う、その笑顔に嫌な予感しかしない。
「もう直ぐお店オープン何だけど」
「何かが違うと思うんだ」
改めて店を見渡す、違うのは何かじゃないと思う……
「「力を貸して!」」
2人が私に迫って来る、必死の形相に少し引く、はぐたんの笑顔だけが救いかもしれない。
「どんなお店にしたいの?」
「「え? えっと……」」
2人が戸惑いの声を上げてるとハリーが唐突に割り込んで来る。
「そりゃ、ぎょうさんお客さんが来る店にしたいわな、お子様からマダームまでビューティーハリーがおしゃれにまとめまっせ」
ハリーの言葉に納得した、良かったね木野さん、野乃と薬師寺はコイツに言われるがままに陳列を手伝っただけで違和感は持っているよ。
「だったらお店のイメージズレていると思う」
「なんやて、めちゃセレブ感出してるのに、何でや!」
うん、アンタのはセレブじゃなくて成り金ね。
「たとえば……」
ドンドンと指示を出し内装も外装も変えさせ展示も変えて行く、約1名が鬼気迫る形相で手伝ってくれたけど見ない事にしておこう。
「こんな感じでどうかな」
最後にマネキンの服の調整をしながら訊ねると野乃と薬師寺は同時に声を上げた。
「「わあぁ、かわいい!」」
「親しみやすいし、気軽に入れそう」
店内を見渡して薬師寺が弾んだ声を出す。
「あぁ、くつろぐ……」
野乃が少しだらしなくソファーに座り、はぐたんも可愛い声を上げる。
「皆、お疲れ様、お茶を入れたから休憩にしよう」
そう言いながらトレイを片手に木野さんが歩いて来る、顔色も良くなっているし良かった。
「ハリーはそっちで休むのか?」
「わいはこっちでええ」
テーブルに座っているハリーの前にカップを置くと、木野さんは私達の座っているソファーにやって来て私達の前にもカップと小皿を置き、中央に大きめの皿を置いた。
「おー、カップケーキだぁ」
野乃が喜びの声を上げる、けどちょっと気なる事が……
「あの、木野さんこのカップケーキは何処で買って来たんですか、この辺でこの様なカップケーキを売っているお店は無かった気がしましたが」
薬師寺が同じ事を考えて私の代わりに聞いてくれて助かった。
「これか、俺が焼いた、あ……手作り系無理だった?」
手作り……? え? コイツ本当に何者なの?
「前住んでた所でたまにカップケーキの専門店で手伝っていたんだよ、そこで覚えた」
「美味しい!」
頬にクリームを付けた野乃が驚きの声を上げ、それを見ていた薬師寺もカップケーキに手をつける、私は何となく淹れられたコーヒーに口を付けた、コーヒーの良い香りが鼻から抜けて行く。
「おいしい……」
思わず漏れた言葉が少し悔しかった、カップケーキも美味しかったなんか悔しい。
「口に合ったようで良かったよ、はなコレをはぐたんに飲ませてあげて、赤ちゃん用の麦茶買って来たから量は少なめで用意した、はぐたんも喉乾いてるだろう、多分ね」
麦茶の入った哺乳瓶をはなに渡すとはながはぐたんに飲ませる、一生懸命に飲んでる姿もきゃわたん。
はぐたん用の麦茶まで用意しているのか、色々考えているんだなこの男、私に他にできる事は何だろうと考えていたらひとつ見つけた。
「ねぇ、お店の写真、キュアスタにあげても良い?」
「「是非!」」
野乃と薬師寺が物凄く食い付いて来る、少し引いてしまうが隣で良く分かっていない男がいる。
3人で笑いながら写真を取る、はぐたんもご機嫌で笑っている、皆で写真を確認してキュアスタにアップ、実はこっそり私達の使ったカップを洗っている木野さんの写真も撮った。
アップしてしばらくするとドンドンとお客さんが来て手伝いで大忙し、途中はぐたんがびっくりして泣いてしまったけど、ハリーの用意したタンバリンで何とか乗り切った、木野さんも手伝いをしていて接客が何気に上手でやっぱりちょっと悔しかった。