HUGっと!プリキュア 鬼人の夢想曲 作:水無月 双葉(失語症)
直ぐに商品が売り切れてしまい、閉店となった店内で他愛の無い会話に花が咲いていると、また、飲み物が出される、今度のはガラスの耐熱カップに入った綺麗なルビー色のお茶、目の前に置かれると少し甘酸っぱい香りがした。
「木野さん、これは何て飲み物ですか?」
薬師寺がカップを持ち上げ香りを楽しみながら聞く隣で野乃はカップを底から覗き込み色を見て遊んでいた。
「コレはハイビスカスティー、疲れているだろうからこれが良いかなってね」
「木野さん~、少し酸っぱいよ」
野乃が騒ぐので試しにひと口飲んでみる、酸味は有るけどサッパリしていて後味も良い、結構好みだ。
「きつかったらそこの蜂蜜入れてね、蜂蜜がはぐたんの口に入らない様にだけ注意して」
蜂蜜の入った小瓶を野乃の前に置くと嬉々として蜂蜜を入れる野乃、普通に飲んでいた薬師寺も気になったのか蜂蜜を垂らしていた。
「楽しかった」
「ありがとう、ほまれちゃん」
「そうだね、輝木さんが来てくれなかったら、この店はどうなっていたかと……」
軽い感想に約一名が遠くを見ている、気持ちは分かるけどね、はぐたんもご機嫌で笑い声を上げていた。
「はぐたんも楽しかったって」
笑っているはぐたんに野乃が言葉を付け加える。
「私こそ……」
小さく呟く、こんなに心から楽しめたのは何時振りだろう……
「ねえ、ほまれちゃん写真撮って、ビューティーハリーオープン大成功記念に!」
戸惑う私の手を取り強引に薬師寺の隣に座らせる。
「お願い、お願い!」
「分かった、分かった」
野乃のお願い位別にかまわないし、楽しかったのも本当、写真ぐらい良いかな。
「ほら、ハリーと木野さんもおいでよ」
ハリーに呼びかけながら木野さんを引っ張り無理やり座らせる。
「遠慮しとくわ、俺が入るとお前らが霞んでまうやろ」
ハリーは来ないなら良いか、画面に全員が入る様にバランス良く配置する。
「じゃあ行くよ、せーの」
シャッターを切る小さな音が鳴り一息吐く。
「おぉー、良い写真が撮れた」
「ほんまに、ハブにすんなや!」
耳に入った変な声に私は恐る恐るそちらを見ると一瞬何かが見えた。
「今何か、変な生き物が……」
「ははは、そなアホな」
絶対誤魔化してる、絶対何か居た。
「ほら、もうキュアスタに」
「本当だ、キュアスタ映えする良い写真」
野乃と薬師寺が何か慌ててるけど、薬師寺の持っていた大きめのパッドを眺めるとそこに映っていたのは全員笑顔の写真……
「何か、自分のこういう顔久しぶりに見た、ねえ、何で今日私の事誘ってくれたの……」
怖くて聞けなかった事が思わず口から洩れた、戸惑いを見せる野乃に薬師寺。
「輝木さんは友達誘うのに理由が必要?」
私に問いかける木野さん、その銀色の瞳に見られると居心地が少し悪くなる。
「でも私、プリキュアに成れなかったんだよ……」
「プリキュアとかプリキュアじゃ無いとか関係無いよ、私、ほまれちゃんが好きだし仲良くなりたいんだ」
真っ直ぐな野乃の言葉に瞳が私の心を鷲掴む、私はその思いに応えて良いのか分からない、ゆっくりと立ち上がり歩き出す。
「ごめん、ちょっとはぐたんと散歩して来る」
私は逃げ出した、真っ直ぐ向けられる感情が怖い。
「待って! ほまれちゃん」
野乃が引き止めるのも聞かずに私は歩みを止めなかった。
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