HUGっと!プリキュア 鬼人の夢想曲   作:水無月 双葉(失語症)

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響の想い

 早朝、バイクをガレージから出しシャッターを下ろしもう一度家を眺める、色々な事を思い出す、これ以上この場に居たら出れなくなると思いバイクの元に向かう。

 

「八雲さん、おはよう」

 

 何時も間にか来ていた奏ちゃんがバイクの側に立っており最後の挨拶に来てくれていた、その側にはセイレーンとアコちゃんも居る。

 

 奏ちゃんと目が合うと悲しそうに顔を横に振った。

 

「響、来なかった……」

 

「そうか……」

 

 口の中だけで当り前かと呟く。

 

「八雲さんいつものバイクじゃ行かないんだ、これって矛兜鬼の時に使っていたバイクですよね?」

 

 俺は矛兜鬼の時使っていたバイクに新たにサイドカーを付けて準備をしていた。

 

「あのバイクは……他の人を乗せたくない」

 

 俺の言葉に奏ちゃん達が嬉しそうに笑う、この笑顔をもしばらく見納めかと思うと胸が苦しくなる、痛みを忘れる為に一度深呼吸して奏ちゃんの側に行くと小さな包みを手渡す。

 

「コレは……家とバイクの鍵……?」

 

「この家のね、バイクも車も皆で好きに使って欲しい、セイレーンの部屋もあのままのにしてあるよ」

 

「八雲……帰ってくるよね、加音町に帰ってくるよね?」

 

 アコちゃんが俺の服の袖を掴み半分泣きながら訊ねてくる、アコちゃんの頭を撫でる。

 

「この街は俺の第2の故郷だ、戻ってくるよ」

 

「八雲、約束! 前みたいに約束して!」

 

「約束だ、必ず戻ってくる、アコちゃんが女王になる姿もみたいしね、必ず戻る」

 

 アコちゃんは目に涙を溜めながら何度も頷く。

 

「セイレーン、アコちゃんを頼む」

 

「任せて、次の大音楽会には一度戻って来て、私とハミィの歌を聴きに来て」

 

 セイレーンに頷きもう一度皆を見渡す、小さく息を吐きバイクの向かう。

 

「八雲兄ぃ!」

 

 耳に入った声に振り向くと肩で息をしている響ちゃんが立っていた。

 

「響ちゃん……」

 

「これ、お守り」

 

 響ちゃんは俺を見ない様に小さな手作りの人形を手渡してくる、その人形はメロディを模しており、あまり上手くは無いが気持ちの大きさでは何者にも負けていなかった。

 

「ありがとう、響ちゃん」

 

 顔を上げてくれない響ちゃん、俺は響ちゃんの肩に手を置く。

 

「顔見せて、響ちゃんお願い」

 

「八雲……兄……」

 

 ゆっくりと顔を上げる響ちゃん寝不足か泣き腫らしたのか目が赤い、しばらく見つめる。

 

「必ず、帰ってくる、響ちゃんを1人にはしない、約束する絶対に戻る」

 

 俺の返事に何度も頷く響ちゃん。

 

「ねえ、八雲兄。私の……ううん、私達の力が必要なら直ぐに呼んで飛んで行くから」

 

「当てにしているよ、じゃあそろそろ行くね」

 

「うん、八雲兄。行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声の導くままにバイクを走らせていくと美しい街並みが見えてくる、遠くには時計塔見たいな物もあり何となく加音町を連想させ、俺は一度そこで休憩を取ろうと考えハンドルを傾けた。

 

 街に着きビジネスホテルで部屋を確保し街並みを見て回る事にする、街の人々も幸せそうに生活しており胸の奥が温かくなるのを感じる。

 

 適当に散策しているとネクタイをした制服のグループと何度かすれ違う、年の事は響ちゃん達と同じ位かなと思いながらぼんやり眺めていると、次々に倒れ出し小さく唸りだす、直ぐに近場の生徒に駆け寄ると、倒れている生徒たちから黒く少し嫌な気配のする粒子が漏れ出していた。

 

「君! 大丈夫か! しっかりしろ!」

 

「心がトゲトゲする……何もしたくないの……放っておいて……」

 

 明らかにおかしな状況に心の警鐘が鳴り響くと同時に上空に禍々しい気配を感じ空を見上げると墨で塗りつぶした様なまっ黒な雲が渦を巻いていた。

 

 上空の禍々しい雲の渦が激しくなり時計塔を包み込むと怪物に姿を変えてしまう。

 

「時計塔が……ネガトーンやザケンナー達とも違う見た事無いタイプだと……?」

 

 倒れ小さく呻いている生徒達を見渡す、こんな時響ちゃん達ならどうするか、そんな事は決まっている。

 

「まずはあの敵を叩く、そこからだ」

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