HUGっと!プリキュア 鬼人の夢想曲 作:水無月 双葉(失語症)
木野さんの出した不思議な動物? に先導され私は少し遅れて皆の元に合流した。
「さあやちゃん! 木野さん!」
私の声に振り向く2人、木野さんの表情が厳しい物に成っている。
「この上らしい、皆行くぞ」
木野さんの言葉にうなずきビルに入ろうとしたその時にほまれちゃんの叫び声が聞こえてくる。
立ち上がる禍々しい煙が空で渦巻いて形をなして行く、私とさあやちゃんは同時に声を上げた。
姿を現したオシマイダーを見上げ更に険しい表情の木野さん。
「居た! 輝木さんだ!」
木野さんの指す方を見るとビルの縁に立ちトゲパワワを溢れさせているほまれちゃんが視界に入る。
「ほまれちゃん!」
「ほまれさん!」
ぐったりとする姿に私とさあやちゃんが叫ぶけど声は届かなくて、私は拳を握りしめた。
「はな、さあや、すまないが2人でオシマイダーの相手を頼みたい」
唐突な木野さんのお願いに思わずさあやちゃんと顔を見合わせる。
「分かりました、でもどうして……」
さあやちゃんが少し不安そうに木野さんに声をかけると、木野さんは振り返り私達を安心させる様な笑顔を浮かべる。
「輝木さんを助けに行って来る、はな、予備のプリハートを貸してくれもしかすると……」
木野さんはそこで言葉を飲み込むと眉間にしわを寄せ難しい顔をした。
「木野さん……」
小さく呟くさあやちゃんを横目で見ながらも私はプリハートを木野さんに差し出した。
「木野さん、オシマイダーは私達が何とかする、だからお願い、ほまれちゃんを救ってあげて」
「任せろ、必ず救う」
私からプリハートを受け取った木野さんの表情はさっきまでの険しさは無く堂々としていて少し格好良かった。
「はぎゅぅ」
はぐたんが声を上げると木野さんははぐたんに優しく笑いかける。
「分かっているよはぐたん、ほまれお姉ちゃんの事を助けてくるよ、直ぐにほまれお姉ちゃんが抱っこしてくれるから良い子で待っていてね」
木野さんはプリハートを握り直すと、変身もしないで屋上に向かってビルの壁を蹴り上がって行った。
「思った通り、でっかい夢ほど失った時の絶望がでっかいじゃん!」
「絶望などさせない!」
力強い声が聞こえる、この声は……お節介だなあ木野さんは、もういいよ私は……それにどうせ……
「お前いい加減にするじゃん! メーワクなんじゃん!」
戦っている、私を付き離した男と手を伸ばす男が、何でそんなんに必死なの? 放って置けば良いのに……
「未来を失い、絶望した奴を救う価値なんて無いじゃん!」
「黙れ! ほまれの価値は、ほまれしか知らないんだ、貴様如きが勝手に語るな!」
木野さんが相手を殴り飛ばすと物凄い音を立てて相手の男が壁に叩きつけられる。
「たとえ今が苦しくたって、何時かこの日の苦しみさえ楽しく思いだせる日が来るんだ、ほまれは必ずもう一度宙を舞う! 輝きを取り戻す! 未来は絶対に無くならない!」
「お前らも、プリキュアも、この世界に希望も未来もねーんだよ」
男はそれだけ捲し立てると消えてしまった。
「くそっ、逃がしたか……いや、エール達の方に行ったのか……」
エール? そっかプリキュア戦っているのか、じゃあ何で木野さんここに居るの……
「ほまれ! 輝木ほまれ! 聞こえているか! たったひとつの失敗を決定的な失敗と勘違いするな! どんなに苦しくて救いが無いと思っても、それを変える道があるんだ! 聞こえているか! ほまれ!」
何も知らない癖に……私はもうどうせ…………
「ほまれ! 俺の事なんて信じなくて構わない! だが下にいるはぐたんだけは信じてやれ! お前を見つけてからあの小さな体でずっとお前に呼びかけている、はぐたんの思いは忘れるな!」
はぐたん……はぐたん……泣いてるの? はぐたん…………
「泣かないで……はぐたん…………でも、ごめん、もう私に未来は無い、私はもう跳べない」
「ほまれ! 他人の眼なんて気にするな! 言いたい奴には勝手に言わせておけ! だがなほまれ! ほまれが今、今ここに居る事が大切なんだ、帰ってこい輝木ほまれ!」
「怖い……」
私……居るだけで良いの? ……でも……怖い……3人の言葉が心を巡る……
「私やはなちゃんに出来ない事がほまれさんには出来る」
「ほまれちゃんはどんな自分に成りたいの?」
「ほまれは必ずもう一度宙を舞う! 輝きを取り戻す! 未来は無くならない!」
私に出来る事、成りたい私、こんな私を信じてくれる人が居る……思いだすのは輝いていた自分…………
「私は、私は……もう一度跳びたい……もう一度輝きたい!」
聞こえるよはぐたんの声、ありがとうねずっと応援してくれて、はな、さあや、ハリー、私の為にありがとう
もう一度跳ぶよ私……木野さん凄く必死な顔……バスケの時も助けてくれたね、この間も必死に叫んでたね、今も信じてくれたね、一度宙を舞うって輝きを取り戻すって、私の未来は無くならないって怖いけどもう一度手を伸ばしてみるよ……
「心が……溢れる!」
「来い! ほまれ!」
木野さんの叫び、澄んだはぐたんの声、はなとさあやの思いが私を熱くする、私は未来を取り戻す。
「跳ぶのが怖い、応援される事も、けど……もう自分から逃げない、私は私の心に勝つ」
ビルから跳んだ私を木野さんが受け止める引き寄せられた、力強い腕に引き締まっているのが分かる胸板、私の頬が木野さんの胸板に触れた時小さな違和感を感じ見上げると凄く優しい笑顔をしていた、頬に熱を持ち慌てて離れる。
「お帰り、輝木さん」
私の頭を撫ぜながら「お帰り」と言う木野さんにムッとする。
「ほまれで良いよ、さっきまで散々名前で呼んだくせに……」
私は口を尖らせたながら言い放ち、恥ずかしさを誤魔化す為、頭を撫ぜる木野さんの手を払いのけた。