HUGっと!プリキュア 鬼人の夢想曲 作:水無月 双葉(失語症)
「私、はなとさあやを助けたい、このクリスタルにその力があるのなら、私はプリキュアに成りたい!」
私の本当に思い、寄り添ってくれたあの2人の力に成れるのなら私は……
「ほまれ、今の高揚感に酔ってプリキュアに成りたいのなら反対だ」
木野さんの冷たい声に鋭い視線、私はその視線に耐えながら思いをぶつける。
「そんなんじゃない! 私は助けたいんだ、はなをさあやを、ずっと気にかけて手を伸ばし続けてくれた大切な人を助けたいんだ、それにもう先生や私みたいな犠牲者を出したくない!」
「もしかすると、スケート以上の辛い目に合うかも知れない、それでも自らの意思で戦いを選ぶのか、ほまれ」
目を瞑り大きく深呼吸をしながら考える、木野さんの言う事は分かるでも私の心は決まっている。
閉じた目をゆっくりと開け木野さんの瞳を見つめる、銀色の瞳に映る私はまるで問いかけてくるようだった。
「それでも私は心は変わらない、私はもう逃げないって決めたんだ」
感情を感じさせない銀色の瞳に見つめられ息を飲む、でも絶対に逸らさない絶対に逃げない。
銀色の瞳が揺らぎ優しい光を湛えると木野さんは小さく息を吐いた。
「分かった、それがほまれの思いなら信じるよ、これがプリキュアへの招待状だ、自分の意思で受け取るんだ」
差し出されたピンク色のアイテム、私は手を伸ばし受け取ると手の中で温かさを感じる、握りしめ胸に抱く。
高鳴る心、まるでリンクの前に立つ前の高揚感、大丈夫、私は……跳べる。未来へ輝く!
「ミライクリスタル! ハート・きらっと!」
「は~ぎゅ~・ぎゅ~・ぎゅ~」
「輝く未来を抱きしめて! みんな輝け! 力のプリキュア!」
「キュアエトワール!」
体か軽いとこまでも跳べそうな心地良い気分、力が溢れてくる、隣に並ぶ気配を感じ横目で見ると木野さんも変身していた。
「行くぞ! キュアエトワール!」
風を斬るふたつの音が聞こえる。
音の方に顔を向けると獣鬼ともう1人……プリキュアが飛んできた。
綺麗な着地をすると2人が私達の方に振り返る。
「新たな仲間、キュアエトワールだ」
獣鬼の紹介にキュアエトワールが魅力あふれる笑顔を見せると、いきなり表情を引き締めオシマイダーに立ち向かう。
「フレ! フレ! ハート・スター!」
輝く流星がオシマイダーを捕え動きを止める。
「「キュアエトワール!」」
名前を呼びながら私とアンジュはエトワールに近づくと凛とした表情で私達に話しかけてくる。
「この怪物は私が倒す!」
「違うだろ、エトワール。お前は1人じゃない」
エトワールの言葉に間髪いれず獣鬼が突っ込みエトワールの頭をコツンと叩く。
「そうよ、私達仲間でしょう」
「ここからは一緒に力を合わせて」
「俺達は全員で戦うんだ、それを忘れるな」
私達の言葉を聞いて一瞬ポカンとした後に微笑みながら頷くエトワールはとても綺麗で魅力的だった。
オシマイダーがハート・スターの拘束を引き千切ると翼をはやして空へと舞い上がる、それを追う様に私達4人も高く飛ぶ。
最高点に達した所で私とアンジュ、獣鬼が手を組み足場を作るとエトワールが足をかけその瞬間に大空高くエトワールは飛翔した。
「「「跳べ! キュアエトワール!」」」
私達の思いを乗せ天高く空を舞うとエトワールは体を錐揉み回転させオシマイダーに流星の様な蹴りを
入れそのまま地上へを舞い戻る。
私はその隙を逃さずに力を解放する。
「フレ! フレ! ハート・フォーユー!」
はぐたんにエトワールのミライクリスタルの力を与える時に何故が獣鬼は少し複雑な顔をしている。
今回だけじゃなくて毎回何故か微妙な顔をしているんだよね……
「どうしたの獣鬼? 何か心配ごと?」
私が尋ねると獣鬼は小さく首を振る。
「別に何でもないよ」
力を貰ってご機嫌なはぐたんに近づくと獣鬼は笑いながら話しかける。
「はぐたん、ちゃんとほまれお姉ちゃん助けて来たからね」
ほまれお姉ちゃんか……良いなぁ……はなお姉ちゃんって呼んで貰いたい。
笑い声を上げるはぐたんに皆が幸せな気分に浸っているとはぐたんがエトワールに一生懸命に手を伸ばしそれに気が付いたエトワールがはぐたんを抱っこする。
「はぐたん、これからもよろしくね」
陽もかなり傾き夕闇が迫る中、私達はビューティーハリーから家に帰る為外に出る。
「それじゃあ、また明日ね。ほまれちゃん、じゃなくて」
言葉を切った私に皆が不思議そうに私を見てくる、私は一度皆を見渡すと大きく息を吸う。
「また明日ね、ほまれ、さあや!」
言い直した私に驚いた顔のほまれにさあや、少し頬を染めた2人に笑いかける。
「ええと私も、これからもよろしくね、はな、ほまれ」
いつもより少し弾んだ声で私達を名前で呼ぶさあや。
「あはははは、呼び方なんて何でも良いのに」
「いやぁ、大事じゃないスか」
笑い声を上げたほまれに少しおどけて返事をすると、ほまれの表情が今まで見た事無いぐらいに和らぐ。
「けど、嬉しい……一緒に居てくれてありがとう、さあや、ありがとう野乃はな」
「え、野乃はな……」
何故か私はフルネームで呼ばれ目を丸くしながら思わず自分の名前を復唱した。
「いいじゃん」
「そう?」
「野乃はな、イケてる」
ほまれに褒めて貰った私は跳んで喜んだけど、調子に乗り過ぎてしまい足を滑らせてお店の前の川に落ちてしまった。
慌てて駆けて来た皆に私は声を上げて笑うと皆も笑う、ちょっと冷たいけど少し楽しい。
笑いながらも少し呆れた感じで木野さんが私に手を差し出してくれたので掴むと物凄い勢いで引っ張り上げてくれた。
「ありがとうね、木野さん」
「八雲だ」
「え……」
私達に向けられたその優しい笑顔に一瞬考えが纏まらず、少し間の抜けた声を出してしまう。
「大切なんだろ呼び方」
「そうですよ、改めてよろしくね、八雲さん」
真っ先に返事をしたのはさあやだった。
「ま、どうしてもってなら呼んであげる、八雲」
ほまれが少し悪い笑顔で名前を呼ぶとさあやと2人して私を見つめてくる。
「え、え、よ、よろしくね、八雲……さん?」
「はな、語尾上がってる」
戸惑いながら挨拶をした私に、ほまれが笑いながら突っ込みを入れると、途端に笑い声に包まれる。
皆が楽しそうに笑っている、それだけで私も楽しくなり皆としばらく笑い合った。