HUGっと!プリキュア 鬼人の夢想曲   作:水無月 双葉(失語症)

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薬師寺さあや

「……、……な、……め、さ……か、……はな、目を覚ませ、はな」

 

 肩を揺さぶられて目を覚ますと、目の前に木野さんの心配そうな顔があって、私は悲鳴を上げそうになった。

 

「うなされていたが大丈夫か?」

 

 怖い夢だった。世界が止まり戦士達が破れる夢、恐怖と絶望、明日を考えられない世界……

 

 いきなり泣き出したはぐたんをあやす為に立ち上がり体を揺らす、泣き止まないはぐたんを心配しながらも頭の片隅ではさっきの鮮明な夢を思い出し、身震いする。

 

 どんなにあやしても、はぐたんは大泣きするばかりで途方に暮れていると、ドアの開く音が聞こえ泣いていはぐたんも泣き止んで、私と同時に開けられたドアを見つめた。

 

「野乃さん?」

 

「へ、何で?」

 

 立っていたのは薬師寺さん、お互いが不思議そうに声を上げる、けど、はぐたん頬を引っ張るのやめて凄く痛い。

 

 はぐたんが行きたがるので、薬師寺さんに抱っこして貰うと、はぐたんは物凄くご機嫌になる。

 

「こんにちは、えっと……」

 

「はぐたんって言うの」

 

「はぐたん」

 

 薬師寺さんが、はぐたんの名前を呼ぶと更にご機嫌になる。

 

「すっごいニコニコだ」

 

 はぐたんをあやしながら窓に歩いて行く薬師寺さんを見つめる。

 

「いい感じの子や、かわいいし」

 

 ハリーの言葉に、ちょっとだけ対抗意識が生まれてくる。

 

「私だって、はーぐたーん」

 

 抱っこしたら行き成り泣かれました、はぐたん顎蹴らないで痛い。

 

「そろそろ、ミルクじゃないのか?」

 

 木野さんの声に後ろを振り向くと木野さんは上手くハリーを隠していた、木野さんが体を動かすとそこにはミルクが置いてあった。

 

「2人ともグッジョブ、だけど作り方が分からないな……」

 

「分からない時は調べよう」

 

 薬師寺さんが直ぐにパソコンを開き、ミルクの作り方を調べ出してくれて作り出す。

 

「あの……はぐたんの事驚かないの? ってか何でここに?」

 

 薬師寺さんはミルクを適温に冷やしながら呟く様に話し出した。

 

「前に不思議な事があってね、空から赤ちゃんの声が聞こえたの」

 

 勢いよくこちらを振り向く薬師寺さんは表情は少し戸惑っているようにも見えた。

 

「信じて貰えないかもしれないけど……」

 

 私が転入するちょっと前の話、時間的には木野さんが住んでいた街を出たぐらい、私と同じ体験をしている薬師寺さん……

 

「良く分からないけど、赤ちゃんの声の方に行くと何時も野乃さんに会うの……」

 

 思いだされる初めて会った日の事、あの時もそうだったんだ……

 

「良し、出来た」

 

 ミルクを持って笑顔の薬師寺さんは天使の様で可愛かった。

 

 窓際ではぐたんにミルクを上げてる薬師寺さんはまるで聖母の様で思わず見とれてしまう。

 

「絵になる、さすが天使……」

 

「この子や、こう言う子がプリキュアにええんや、頭も良いし優しいし可愛いし」

 

 ハリーがべた褒めなのがちょっと癪に障る、思わず唸っていると壁に寄り掛かっていた木野さんが呆れた声を上げた。

 

「お前の判断基準が分からない、戦いに可愛いとか関係ない本人の意思と覚悟だけだ、まぁ……確かに美少女なのは認めるが」

 

 木野さんまで美少女って言いだすし、確かに薬師寺さんは可愛いけど釈然としない、思わず木野さんを睨みつけるといきなり頭を撫でられた、子供じゃないもん。

 

 撫でて貰った後私は薬師寺さんの側に歩いて行く。

 

「薬師寺さんは凄いよ、色々丁寧だし賢いし私には出来ないよ」

 

「私に出来ない事が貴女には出来ます、貴女に出来ない事が私には出来ます、力を合わせれば素晴らしい事がきっと出来るでしょう」

 

 薬師寺さんが窓の外を見ながら噛み締める様に話してくれる、不思議とその言葉が胸に入ってくる。

 

「尊敬しているマザー・テレサの言葉なの、私この言葉がとても好き。野乃さんは自由な発想が合ってなりたい自分の未来があって、私よりずっと凄いよ。私には何も無いから……」

 

「みんなに優しく出来るじゃない」

 

「それぐらいしか出来ないの、野乃さんみたいに勇気が無い」

 

 薬師寺さんの辛い胸の内、こんなにも何でも出来る薬師寺さんでもこれだけの悩みを抱えている。

 

「薬師寺さん、や、えっと……」

 

 何かが違うこの呼び方、少し悩んでいると薬師寺さんは微笑む。

 

「委員長で良いよ」

 

 その言葉で頭の中のモヤモヤが晴れた気がした。

 

「委員長と話しているんじゃないもん、さあやちゃんと話しているの」

 

 私の言葉に戸惑うを見せるさあやちゃん、私は私の思いを伝える。

 

「さあやちゃん勇気あるよ、だって誰かに優しくするってすっごく勇気がいる事だもん」

 

「そんな……私……」

 

「褒められたらありがとうだよ。未来は無限大、何でも出来る何でもなれる! フレーフレーさあやちゃん!」

 

「はなの言う通りだよ、薬師寺さん」

 

 後ろから掛けられた声に私達は振り向くと木野さんが優しい笑顔を浮かべていた。

 

「小さな事はたしかに小さい、けどな、どんなに小さなことでも真心を込めて行うことは偉大なことなんだ」

 

 木野さんの言葉にさあやちゃんがハッとする。

 

「その言葉……」

 

 さあやちゃんの言葉に頷く木野さん。

 

「薬師寺さん、あなたは、あなたでいればいい」

 

 私と木野さんの言葉がさあやちゃんに届いているかは分からないでも、大切なのは思いだよね。

 

 丁度ミルクを飲み終わったはぐたんにげっぷをさせるさあやちゃんに私の思いは固まっていた。

 

「木野さん良い事言うね、えっとね、さあやちゃん、お願いがあるんだ、あのね……」

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