夏休みも残り数日となった某日。広尾隼斗は、久々に集まった中学時代の友人数名と近所のショッピングモールを
今は違う高校に通う久々に会った友人同士、話は止まらない。それぞれの近況を報告し終えると、中学時代の思い出話に花が咲く。
体育大会や、修学旅行。クラスマッチに、文化祭。その時感じた達成感やら敗北感やら。今だから言えるその裏で起きていた甘酸っぱい出来事などなど。ひとしきりそんな話で盛り上がった後、ふと川島学が口にした。
「そう言えばさ。二組に篠宮瑛って奴いたの、覚えてる?」
「もちろん。野球部のエースだった奴だろう? すでにスカウトマンが付いてるって噂のあった」
「そうそう。そいつ。––––で、俺、最近知ったんだけどさ。去年散々メディア賑わせてた篠宮一族って、あいつん
「あ。それ、俺も聞いた」
「え? マジ。どう言うこと?」
メンバーの中で一人だけ、早瀬孝臣が初耳とばかりに驚きの声を上げる。
「じゃあ、何。あいつ『MASAKI』の弟だったの?」
「ちがう、ちがう。『MASAKI』の弟は超頭いい学校に通ってんだろう? じゃなくて、親戚の方。最強ヒールって世間賑わせてた『MASAKI』の父親と瑛の父親が兄弟らしい」
「ってことは、あいつ、『MASAKI』とは従兄弟ってこと?」
「まあ、そうなるかな」
「マジかよ! ってか、『MASAKI』に全然似てなくね?」
「従兄弟って、普通そんなに似なくね?」
メンバーの一人が苦笑しながら突っ込むと、早瀬はシェイクを一口飲んでからわずかに口元を歪めた。
「まぁ、そうだけどさー。欠片もないっていうか。『MASAKI』って、ハーフぽいじゃん。けど、あいつさ、どっからどうみても日本人だったよな?」
「まあ、それはそうだな。けど、それは『MASAKI』が特別なんだろ。テレビでも、なんか一人だけすっごい先祖返りみたいに言ってたし」
「らしいな。俺、あんまニュースとか見ないから。『シノミヤ』って聞いても中学の同級生に同じ名前のやつ居たなーって思ったぐらいで、まさか『MASAKI』とあいつが親戚とかって思いもしなかったんだけど。それこそ、見た目全然違うしさ。でも、この間、たまたま加治木に会って」
「おお、加治木。なつかしー。あいつ、今何してんの?」
「三高行って野球してる」
「三高って、今年甲子園出場したとこじゃん」
「初戦敗退だったけどな」
「それでもすげー」
「でさ。その甲子園出場をかけた地方大会の決勝戦戦った相手があいつの行ってる須賀高だったらしくて。その時のあいつの雰囲気が、中学時代と全然違って。なんか雰囲気悪くて、気軽に声掛けられる感じじゃなくて。チームメンバーとも一人離れている感じで。それにびっくりしたって、加治木の奴が言っててさ。その時に、去年あれだけの騒動が起きた影響かもしれないって、言うの聞いて、初めて知ったんだよな」
「須賀高、ってことは。隼斗、お前同じ高校じゃん」
早瀬の呟きに、隼斗は頷く。
「まあ、クラスは違うけど」
「あいつ、今どんな感じなんだよ」
「どんなって……。雰囲気変わったよ。目つき悪くて、雰囲気が刺々しくってさ、誰も近寄れないって感じ。『MASAKI』の親父が暴露本出して、あいつが親戚だってことが学校中にバレた後に、爺ちゃんが息子刺す事件が起きただろう? だから、その直後は学校中その噂で持ちきりで。あいつも気にくわねぇことがあったら、相手刺すんじぇねえの、って言ってたら、部活の先輩ぶん殴って謹慎処分受けたからさ。たまたまナイフ持ってなかったから刺さなかっただけで、持ってたら刺したんだろうって。みんな言ってた」
「マジかよ。終わってんな」
「それに噂じゃ、爺ちゃんが息子刺した現場に同行してたのがあいつの親父で。そのショックであいつの親父、今うつ病発症して入院してるらしい」
「ひぇー、不幸のダブルパンチって感じ」
「これでドラフトにかかってプロに行けるんなら、サクセスストーリーになるんだろうけど。今年は甲子園逃してるしな。あと、ワンチャンって感じ?」
「別に甲子園行ったからって、ドラフトにかかるわけじゃないだろう? 高卒でドラフト指名受けてプロになるって、東大に合格する奴より少ないんだし。大抵の奴が、高校野球では活躍した奴、で終わるじゃん」
「まぁな」
「いくら従兄弟とはいえ、誰もが『MASAKI』になれるわけじゃねーしなー」
話に夢中の隼斗たちは、隣の席でハンバーガーにかぶりついている冴えない中年男性が、胸ポケットに潜ませているボイスレコーダーをオンにしていることなど、気づく由もなかった。
* * *
「榎本さん。今回もずいぶん面白い記事書かれましたね」
フリー仲間の声かけに、榎本は
「読んだか?」
「ええ。にしても、いったいどこで話の種、拾ってくるんです?」
「たまには、地方のショッピングモールふらつくのも悪くないってことだ」
「へぇ……。でも、大丈夫なんですか?」
「何が?」
「いや、ほら。『MASAKI』方面ですよ」
潜められた声に、榎本は笑い飛ばす。
「大丈夫に決まってんだろう。『MASAKI』は弟のことさえ書かなきゃスルーだから」
「そうなんですか?」
「そうだよ。春に妹のこと結構あけすけに書いたのに、何も反応なかったし」
「あけすけって。あれ、同じ日に同じホテルに泊まったってこと以外は、全部憶測だったですよね?」
「だから、そう書いただろう。二人きりになれたはずのこの時間帯に何してたんだろうなって」
「まあ、確かに。嘘は書いてなかったですね」
「ほんの少しの真実と、そこから膨らんでくる憶測。それを、どれほど読者に『そうなのかもしれない』って思わせられるかが、俺たちライターの仕事だろうが」
榎本が言うと、フリー仲間は苦笑した。
「すげーかっこいいこと言っている風ですけど、俺たちが書いてるのって、所詮はゴシップですからね」
「結局は、それが一番売れるんだよ。世間のニーズに応えんのが、俺たちの仕事だろう?」
榎本はタバコをもみ消すと、
「じゃあな。俺は次の飯の種を見つけに行くわ」
そう言って、その場を後にした。
* * *
『篠宮慶輔氏 一周忌を終えて 彼の残した影』
週刊誌にそんな特集記事が掲載されたのは、狙ったのかどうなのか、慶輔の暴露本『ボーダー』が銀流社から出版されてちょうど丸一年にあたる日だった。
記事の内容は、夫と息子を立て続けに失った老母秋穂の衰弱ぶりや、長兄明仁の運営する書道教室がなかなか以前のような賑わいを取り戻せずにいる現状などに触れつつも、焦点は明らかに、末弟智之とその一家のことであった。
智之が、刃傷事件後、父の愚挙を止められなかった自責の念からうつ病を発症し七月末まで入院していたこと。現在も完治はしておらず、自宅療養を続けていること。そのため仕事復帰の目処が立たず、現在は妻のパート収入に頼るしかなく、大学生になった長男もバイト三昧の生活をしていること。次男の続ける野球の部費や遠征費が家計に重くのしかかるが、プロ野球選手になって人生の一発逆転を信じているが故にやめられないこと。しかしそれも、部内で起こした暴力沙汰によって暗雲が立ち込めていることなどなど。事実と憶測混じりで、好き勝手に書いてあった。
この記事は、特に大事件が起きていなかった平和な日本の昼間のワイドショーで取り扱うのにちょうど良かったのか、どの局も軒並み話題にした。
《この事件も随分と尾を引きますね。高橋さん、どう思われますか》
《うつ病は、誰もが発症しうると言う認識が広まりましたけど、実際発症すると、やはり本人も家族も大変ですよねぇ。今回の智之氏のようにフリーランスで働いていた場合は、休業イコール無収入を意味しますし》
《確かにそうですね。週刊誌の記事にも、現在は奥様のパート収入と御長男のアルバイト収入でなんとか家計をやりくりしているとありますが。大学生と高校生の息子さんのいる家庭ですからね。おそらく家計は火の車ではないでしょうか》
《そう言う意味では、慶輔氏は、自身の家族のみならず、弟家族も経済的に追い込んだと言えますよねぇ》
《死した後も一族を苦しめるって。本当、疫病神以外の何者でもないわよね》
《まあ、慶輔氏自身は、最後は死神に取り憑かれたような亡くなり方でしたが》
《彼に取り憑いたのは、死神じゃなくて、捨てられた愛人の怨念でしょ。まあ、そんなことより、いつまでも慶輔氏に苦しめられる家族はたまったものじゃないわよねぇ。特にうつ病を発症した三男の智之氏は、本当にお気の毒と言うか。私の知り合いのご家族にもね、うつ病の方がいるのだけど、もう十年以上浮き沈みを繰り返してて。うつ病って一度発症すると、なかなか完治が難しいってイメージがあるのだけど。どうなのかしら? 栗田先生はご専門でしょ?》
《まあ、確かにうつ病は、発症してから時間が経つほど完治が難しくなりますね。そのため、早期発見、早期治療が肝心です。なので、智之氏がすぐに入院の選択をされたのは良かったと思いますよ》
《でも、栗田先生。入院してたのに完治しないまま退院って、大丈夫なの? 退院して悪化しちゃうってことはないのかしら?》
《そこは、担当医の判断ですから。智之氏の状態が、このまま入院し続けるより、退院しての自宅療養の方がいい、という状況なのだと思いますよ。ただ、そう言う判断に至った経緯については、ここに出ている情報だけではわかりませんね。というのも、入院が長くなると、今度はそのことで入院うつのような状態になってしまう患者さんもいらっしゃいますので。退院の時期を見極めると言うことは、担当医にとってとても重要なんです》
《なるほど》
《まあ、入院費用も馬鹿にならないでしょうしねぇ。長引けば、今度はそのことが気掛かりになっちゃいますよね》
《そうよねぇ。でも、よくよく考えたら、この家計状況でよく入院費用の工面ができたわよね。保険とか効くのかしら》
《それについては、こちらをご覧ください。今回のようなケースで入院治療を受けた場合に必要な金額を調べてみました。まずは治療費の方ですが、保険診療内の治療でしたら、こちらは高額療養費の対象になりますので、月額の自己負担は十万円程度です。これに部屋代や食事代などの自己負担の部分が加わってきまして、大部屋利用、食事も一般的なものと見積もって計算しますと、月額六万円程度。つまり毎月の入院費用はこの二つの合計金額である十六万円程度ということになります。智之氏は、およそ七ヶ月程度入院していたということですから、この計算でいきますと、入院費用の合計は百十二万円ということになります》
《……結構するわね》
《いやー。この金額は、家計に厳しいですよね》
《確かに、奥様のパート収入と御長男のアルバイト収入が頼りの中、この金額は厳しいですよね。それで、どうやって入院費用が工面できたのか、と、まあ、誰もが気になる疑問かと思いますが。それについて、病院関係者からの証言ということで週刊誌の中に記載がありまして。どうやら智之氏の甥にあたる『MASAKI』さんからの援助があったようです》
《まあ、そうなの!》
《いやー。すごいですね。普通、叔父さんの治療費って出せなくないですか? しかも彼、まだ二十二か、二十三才ぐらいでしたよね》
《普通だったら、美談として吹聴しちゃうわよね。自身のインスタとか、ツイッターとかでさ。そうしないところが『MASAKI』よね》
《まあ、実際に『MASAKI』さんがいくら援助したのか、と言うことまではわからないんですけど。おそらくは、この金額以上であろうと》
《こう言うのは、金額がどうこうじゃないでしょ。援助してやろうって気持ちが大切なんだから》
《すみません。一応、参考までに、ということで》
スタジオ内のコメンテーターたちは、軒並み、とばっちりでうつ病を発症してしまった感のある智之に同情的ではあったが、しかしそれでも、当事者家族にとっては、プライベートな内容がテレビで放送されることは、ようやく訪れた平穏を再びかき回されるような出来事だった。
麻子は、昼間に何気なくつけたテレビの情報番組で、自分たち家族のことが当たり前のように話題にされていることに驚いて慌ててテレビを消した。その後は、バクバクと逸る心臓を
「甥っ子に『MASAKI』がいるなんて、ラッキーよね」
「カリスマモデルなんだもの。随分と援助してもらったんでしょ?」
「本当は、パートなんてしなくても大丈夫なんじゃない?」
半分は当て擦り、と分かっていても、どうしてそういう発想になるのか。麻子は不思議でしょうがなかった。もし、雅紀が甥っ子でなければ、そもそも我が家はこんなことになっていない。それに、治療費を援助してもらったのは確かだが、そこからどうやれば、生活費の面倒まで見てもらっているという発想になるのか。あちらにはまだ、未成年の弟が二人いて、兄の雅紀がその生活費や学費を稼いでいる。今までの報道を全て見ていれば、そのくらいわかるはずで、自分の都合の良いところだけをあげつらって話しかけてくるパート仲間には本当にうんざりだった。
「もう、放っておいてください! それって、仕事に関係あります?」
何度そう言いたくなったことか。しかしそれを言えば、一巻の終わりだ。パート仲間から爪弾きに合えば、職場に居辛くなる。パート間の軋轢を嫌う社員に疎まれると、最悪、仕事を辞めなければいけなくなるかもしれない。まだ智之の仕事復帰が見通せない現状で、麻子まで仕事を失うわけにはいかなかった。
正直、零のアルバイト収入はありがたい。とても助かっている。しかし、せっかくの大学生活がバイト三昧になってしまっていて、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。本来、授業以外のサークル活動などで視野も人脈も広がるのが大学生活の醍醐味の一つのはずだからだ。
今、麻子が仕事を失えば、零は間違いなく大学を辞めて就職すると言い出すだろう。麻子は、それが怖かった。そしてそれ以上に、この報道を瑛が知ることが怖かった。
瑛は未だに、周囲の全てを敵のように思い込んでいる。智之の治療費を出してくれた雅紀に対しても、その態度を崩さない。感謝の気持ちなど一切なく、当たり前だと言って憚らない。
今の瑛は頭に血が上ったら何をしでかすかわからない恐ろしさがある。以前先輩を殴った件は、自宅謹慎と、スタメンから外される程度の処罰で済んだが、今度何か事件を起こせば、退部させられてもおかしくはない。野球は、唯一瑛を支えているものだ。それを瑛が失った時、瑛はいったいどうなるだろう。自暴自棄になって、何もかもを投げ出してしまうかもしれない。学校へ行くことや、勉強すること、そしてその先に繋がる自分の人生の諸々。その結果、引きこもるのならまだマシで、腐って投げ出して、やり場のない怒りを他人に暴力を振るうことで解消しようとするようになってしまったら人生破滅だ。麻子は、瑛がどことなく拓也に似た気質があるように見えるだけに、心配でならなかった。
そして、そんな麻子の心配は最悪なことに的中してしまうのである。
* * *
放課後、瑛はいつものごとく部活動へ行こうと、大きな野球バッグを抱えて昇降口へ向かった。以前は邪魔になる野球バッグなど朝部室に放り込んだらそのままにしていた瑛だが、今はわざわざ教室まで持っていく。それは、部室に置きっぱなしにしていて、荷物が荒らされたり、バッグの中にゴミを突っ込まれたり、そんな嫌がらせが続いたからだ。部活の荷物をいちいち教室まで持っていくことは、何となく負けを認めた気がして悔しかったが、状況的に犯人の証拠を上げられるわけもなく、かといって、嫌がらせを受け続けるわけにもいかず。自衛のためには仕方なかった。それに、瑛の起こした暴力沙汰が原因で半年間の対外試合が禁止になったことは動かしようのない事実で。腹の立つことも多少は飲み込まざるを得ない立場だったことも否めない。
大好きな野球を続けるためには、多少腹の立つことも我慢しなければならないと学んだ。何より、自分が野球を頑張ることが父の回復につながるのだという思いが瑛の中にあった。幼い頃より瑛を全面的にサポートし、瑛の活躍を誰よりも喜んでくれたのが父である。そんな父を甲子園に連れて行ってやりたい。甲子園で活躍する自分を見せたい。今年はあと一歩届かなかったが、来年こそは必ず。そんな思いが、瑛を支えていた。
瑛は昇降口へ着くと、下履に履き替えるため自分の靴箱を開ける。
と、そこに見慣れないものを発見して、瑛は一瞬動きを止めた。くたびれたスニーカーの上に茶封筒が置いてあったのだ。
––––何だこれ?
手にとって、ピラリと表と裏を確認する。差出人とか、中身に関する記載とか、そんなことは一切書かれていなかった。
不思議に思いつつ、瑛は靴を履き替えながら中の書類を取り出す。きれいに折り畳まれていた紙を広げると、週刊誌の記事をコピーしたものだった。
『篠宮慶輔氏 一周忌を終えて 彼の残した影』
目に飛び込んできた見出しに反射的に顔をしかめ、おもわず一気に記事を読む。
『自責の念からうつ病を発症』
『フリーランスのために無収入』
『次男の続ける野球が家計を圧迫』
『将来を期待されつつも暴力沙汰で謹慎処分。その気質は祖父譲り』
『入院費用は『MASAKI』が援助』
『慶輔』を見出しにしながらも、書いてある内容はほぼ自分たち家族のことで、最後まで読み終えた時には瑛の頭は煮え立っていた。
「何だよこれ!」
こみ上げた怒りに任せて衝動的に靴箱を蹴る。鋼製の靴箱が派手な音を立てて、近くにいた生徒数人がびくりと振り返った。
あいつらだ。あいつら。あいつらの仕業だ!
反射的に、瑛は思う。
俺のしたことへの仕返しだ!
くそ!
くそ!
瑛は、怒りが収まらずにもう一度思い切り靴箱を蹴る。
奥歯を噛み締めて、それでもやり場のない怒りに、拳で叩いた。
自分がしたことといえば、尚人の載った新聞記事に実名と住所を書き加えてネット掲示板にアップしただけ。それでどれだけの人間の目に触れるのかわからない程度のささやかな行為だ。それなのに向こうは、芸能人でも有名人でもない自分たち一家のことをマスコミに売って世間の晒し者にしてきた。
こんなこと、許されていいのか。
「おい、どうした」
それにも構わず瑛は、雄叫びを上げて再度靴箱を蹴った。
「篠宮! 何をしている!」
慌てた男性教員が、駆け走ってきて瑛の肩を掴む。その行為が瑛の怒りをさらに煽った。鼻息荒く振り返って相手を睨みつけ、その手を振り払って野球バックを投げつける。その勢いに男性教師はよろめいて尻餅をついたが、瑛の目にはすでにそんなものは写っていなかった。
「っざけんな! ぜってー、許さねぇからな!」
震える拳を握りしめ、全速力で校門に向かって走り出す。
目指す先はもちろん、千束の篠宮家だった。