「二重螺旋」二次小説   作:おとよ

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菜虫化蝶(なむしちょうとなる) 7

 CM出演に関する一連のスケジュールを消化して、尚人の生活がようやく落ち着いた九月下旬。

 その日は久々に三兄弟顔を揃えての夕飯になった。

 それぞれの定位置に座って「いただきます」と手を合わせ、三者三様に食べ始める。

「あー、ナオの晩飯、マジうまい」

 今日の献立のメインは和風ハンバーグ。それにグリルされたポテトとナスが添えられている。(いろど)りのいいサラダは別盛りで。かかっているドレッシングがうまい。オリーブオイルを使った尚人特製のドレッシングらしい。味噌汁の具は、大根、わかめ、エノキ、厚揚げなど。具沢山で、腹も心も満たしてくれるほっとする味付けだ。

「ナオ、おかわり」

「はーい」

 うますぎて食が進む。

「どうぞ、雅紀兄さん」

 ご飯をよそって尚人が持ってくる。ここは甘い感じで「まーちゃん、どうぞ」と言って欲しいところだが。尚人は二人きりでないと「まーちゃん」とは呼ばない。小さな不満はあるが、それはそれで特別感が半端なくて雅紀は気に入っている。特に二人っきりで甘い時間を過ごす時の、快楽に沈んであえぎながら尚人が口にする「まーちゃん」は、腰に来る良さがある。

「ナオって、来週から大学始まるんだよな?」

 茶碗を受け取って、ふと思い出して雅紀は問う。

 確か大学の夏休みは、八月と九月の二ヶ月間だったはずだ。

「うん。そうだよ」

「二ヶ月もあれば一回くらいナオと遠出ができるんじゃないかって思ってたのに。あっという間終わっちゃうな」

「俺的には、すっごく充実してたけど」

 それは、まあ、そうだろう。インターンシップ参加に始まって、加々美との基礎練習の日々。そしてロケにグラビア撮影。それでいて家にいる日は家事と勉強に余念がなくて。尚人が何もせずにまったりと過ごしている姿なんて見たことがない。

 大学前期の成績は九月初旬に公表された。今時の大学は成績もオンラインで確認するようになっていて、IDとパスワードを入力することでネット上で自分の成績が見られるらしい。その画面を印刷したものを尚人は律儀に見せてくれた。学費を出してもらっている以上きちんと報告する義務があると思っているようだ。雅紀的に、尚人がしたいことが存分に楽しめているのなら、それだけで大学に行かせた甲斐がある。成績なんて二の次三の次だ。

 尚人は、「優」が並ぶその成績を誇るでもなく「ホッとした」と言っていた。何でも、二年前期までの成績がその後の「専門」を決める際の「進路振り分け」に影響するのだと言う。

「どの学部に行きたいって、まだはっきり決めてるわけじゃないんだけど。成績が足りなくて行きたいところに行けないってなったら困るから」

 尚人はそう言う。努力して掴み取る経験は確かに大事だが、思わぬ出会いというのにも意味があると思う雅紀なので。

「ま、無理しない程度に頑張れ」

 というのが本音だ。

 一方の祐太はと言うと、相変わらず学校へは行っておらず自学の日々だが、料理のレパートリーも随分増えて尚人の助けになっている。二人で当番日を決めて家事のやりくりをしているようだが、尚人が出かける日は臨機応変祐太が対応しているようだ。

 ––––ナオに甘えんのもいい加減にしろよ。

 そう釘を刺して二年。祐太も随分変わった。

 尚人は祐太の家事分担が増えるのを気にして。

「近頃祐太に甘えっぱなしで。何だか祐太に申し訳なくって」

 本気でそんなことを言っているが、祐太にはツケが山ほど溜まっているのだから、その自覚のある祐太自身は何とも思ってないだろう。雅紀はそう感じている。祐太と言葉を交わして互いの気持ちを確かめ合うなんてことはさらさらする気にもならないが、何と言っても雅紀と祐太は根っこの部分で似たもの兄弟なので。尚人に依存している自分というものをよくよくわかっている。尚人が喜ぶならそれでいい。二人ともその思いが根底にある。

 祐太の将来については、この先学校へ行く気になるのかならないのか。それともこのまま我が家のハウスキーパーに成り切るのか。尚人の邪魔にならないのなら好きにしろと思う雅紀だった。

 

 

 * * *

 

 

 夕飯を終えた風呂上り。

 ちゅ。

 ん…、ちゅ。

 ………くちゅ。

 唇の重なる湿った音が二人きりの室内に響く。

 ちゅ、くちゅ、………ちゅり。

 舌を絡めて。

 口角を変えて。

 唇を重ねるたびに………こぼれ落ちる。卑猥な音。

 その音と、重なる唇の熱に、身体中がゾワゾワと反応する。

 雅紀の手が尚人を優しく、それでいて力強く抱きしめていて。

 その手に身体中をまさぐって欲しくて。背中に添えられるだけでは満足できなくて。………尚人の体が(かつ)える。

 もっと、もっと、もっと。

 尚人の内なる声が聞こえたかのように、雅紀の手が髪を撫で、うなじをまさぐる。

 雅紀の唇が耳たぶを()み、首筋を這う。

 その熱に。

 その刺激に。

 鼓動が跳ねる。

 産毛が逆立つ。

 頭の芯がとろけて、ジワジワと痺れのさざなみが立つように体のどこもかしこも敏感になっていく。

 ………あぁ。

 ()い。

 すごく………()い。

 喉が震え、血が逸る。

 ちゅ。

 ……くちゅ。

 ちゅぷ、くちゅ、ぷちゅ………

 唇を吸われて。舌をからめとられて。上顎も下顎も、雅紀の舌で蹂躙されて。

 気持ち良さに思考が乱れ、快楽に意識が揺れる。

 いや。

 ダメ。

 ––––()ちる。

 尚人は無意識に雅紀にしがみつく。

 すると耳元で雅紀がくすりと笑った。

「キスだけで。イっちゃいそうだな」

 揶揄(からか)われているのだとわかっていても、何も言い返すことができない。どくどくと(はや)る鼓動が収まらなくて、息が詰まった。

「ここも………ヌレヌレ」

 甘く囁きながら、雅紀がパジャマごと股間を握り込む。それでようやく尚人は、自分の股間の湿りに気づいた。

「溜まってた?」

 耳元で囁かれて尚人は素直に頷く。

 CM撮影が始まってからスケジュールが立て込み、雅紀と休みがなかなか合わなかった。忙しさに紛れて溜め込んでいる自覚はなかったが。こうして雅紀と久しぶりに抱き合えば快楽を求める心と体が一気に芽吹く。

「最近、忙しかったからな」

 雅紀が尚人の髪をかき分けて額に軽くキスをする。

「頑張ったご褒美だ。今日は、いっぱい気持ちよくしてやるよ。ナオが溜め込んだミルクを全部搾り取って、明日腰が立たないくらいに何度もイかせてやる」

 優しくベッドに押し倒されて、期待感に尚人の体温が上がる。湿ったパジャマをはぎ取られると、尚人はさらに興奮した。

「まーちゃん。して」

 はやく。

「珠、揉んでしゃぶって」

 自ら足を開いて、雅紀を急かす。まだキスしかされていないのに、乳首がびんびんに立ち上がってキリキリと痛む。その尖り切った乳首を雅紀が親指の腹で押しつぶすと、快楽が体の中を走った。

「はあッ」

 そのまま指でつまみ上げられて背が跳ねる。

「ああぁぁッ!」

 揉まれて。捻られて。引っ張られて。

 ビリビリと電気が走る。

 痛いのに気持ちが良くて。

「もっとして、まーちゃん!」

 あられも無くねだる。

 雅紀が指で摘んだまま舌先で乳首を刺激する。

 左の乳首をくにくにと揉みながら右の乳首を舐め、濡れた左の乳首をヌルヌルと弄りながら右の乳首を吸う。雅紀の手が下腹部に伸びて珠を揉むと、快感はさらに深まった。

 雅紀にされるがまま尚人は身を(ゆだ)ねてあえぐ。

 揉んで吸われて擦られて。頭の芯がスパークする。

 感情が(たか)って、肉茎を(くわ)えられて軽く(しご)かれると尚人はあっさりと吐精した。

 雅紀はそれを至極当たり前に飲み込む。

「んー、ナオのミルク。濃くて甘い」

 尚人が未だ味を知らないそれ。雅紀ばかりが毎回満足げに嚥下(えんか)する。

 雅紀にしゃぶられて自分はこんなにも簡単にイってしまうのに、尚人がどんなにフェラチオを頑張っても雅紀が尚人の口の中に吐精することはない。それが何となく不満で、 ……くやしい。

 ––––一緒に気持ちよくなろう。

 雅紀はそう言うのに。イかされるのはいつだって自分ばかりだ。

「まーちゃん。……俺もする」

 尚人が体を起こしかける。しかし、その体はすぐにベッドの上に押し戻された。そして、開いた股間を閉じることができないように、両肘でブロックした雅紀が今度はゆっくりと舌を這わせる。下から上に、くびれをチロチロとなぞり、ぐるりと舐めまわして、また下へ。

 その刺激で、吐精して一旦落ち着いた快感の証が再び硬く勃ち上がる。

「––––まーちゃんッ」

 裏筋をくすぐるように何度も舐められて双珠がフルフルと震える。

 息が上がって、言葉が続かない。代わりに喘ぎが漏れて、そのまま止まらなくなった。

「ンッあ! まーちゃん。あぁ! いい、そこ。きもちぃ」

 雅紀の舌遣いが激しくなる。舐められて吸われて、先っぽをしつこいくらいにほじられて。

 イきたいのに、今度は簡単にイかせてはくれなかった。

 しつこくしつこく攻められて、腰が捩れる。

 ゾワゾワとした快感が背中を駆け上がる。

 脳髄が痺れて、快感に目が眩む。

 ジンジンして。

 ビリビリして。

 快感に全身の肌が泡立って。

 思考が飛ぶ。

「あぁぁぁあああああ!」

 戒めを解かれたペニスの先端から、二度目の精が吐き出された。その残滓を舐めとって、雅紀がようやく咥えていたものを離した。

「ナオ、何か言った?」

 雅紀の問いかけに息の上がった尚人は言葉が返せない。

 わかっている。わざとこのタイミングなのだ。

 その証拠に雅紀の口元に意地の悪い笑みが浮かんでいる。

「へそも()めて欲しいだったかな?」

 雅紀はそう言うと今度は尚人のへそを舐める。そんなとこ舐められて気持ちがいいなんて雅紀にされるまで知らなかった。尖らせた舌先でへその穴をグリグリと舐められると内臓を直接刺激されるような快感がある。

 そうやって雅紀に身体中舐めまわされて、攻められ続けて。気怠(けだる)い心地よさに、指先までジンジンに痺れて。ぐったりとベッドに沈み込む尚人の汗で張り付いた前髪を雅紀が優しく梳き上げてキスをする。

「ナオ。俺もそろそろ限界なんだけど。()れて、いい?」

 耳たぶを()みながら、雅紀があつい吐息とともに囁く。

 その囁きに尚人は頷くと、もぞりと動いてうつ伏せになり尻を持ち上げた。

 挿れる前にはちゃんと舐めてほぐす。雅紀が決しておざなりにしない行為だ。後蕾をさらけ出してそこを舐められるのは、密口を剥かれて舌で穿られる以上の羞恥があるが、同時に期待感で昂る。

 尚人は知っているからだ。そこを指で(くじ)かれる快感を。舌で(ねぶ)られる愉悦を。雅紀の硬くしなりきったモノをねじ込まれる怖気と、突き上げられて捏ね回される悦楽を。

 雅紀が肉厚な舌で撫でる。露出させた窄まりの周りを、ゆっくりと。後蕾がヒクンと震え、双珠がキュッと吊り上がる。散々吐き出してもう何も出ないと思っていたペニスまでもが熱を帯びる。

 教え込まれた快楽は拒めない。

 知ってしまった快感は無視できない。

 それ以上に、雅紀と繋がる喜びが尚人を支配する。

 雅紀が吊り上がった双珠を食むようにキスをし、谷間の割れ目に沿ってゆったりと舐め上げる。二度、三度。たっぷりとのせた唾液を擦り付けるように。

「ん、んッ………」

 尚人の内腿がヒクヒクと震えた。雅紀は両の親指で肛門を押し広げて露出させると舌先で(しわ)の一本一本を丁寧に舐めていく。

「ンッ……やッ……うううッ……」

 舐められるたびに尚人の喉が鳴る。

 あつい。

 ……アツイ。

 …………熱い。

 羞恥心が焼け爛れて、首筋まで焼けた。

 尖らせた舌先で最奥を穿られるように舐められると、そこがヒクンヒクンと収縮する。見えないから余計に感覚が敏感になる。するとペニスの蜜口までもがジンジンと疼いた。

 舌で何度も舐められてそこが緩んでくるのがわかる。––––と、今度は舌よりも硬いモノ………指が潜り込んできた。

 ぐにぐにと、しなやかな雅紀の指がねじり込まれる。

 思わず息を詰めると。

「大丈夫。怖くない」

 いつの間にか後ろ抱きにされたまま、雅紀の声がした。

「ナオのここ、まだ一本でもきついからな。三本入るまでちゃんとほぐしてやるから」

 最初に呑まされた人差し指がゆっくりと粘膜を擦る。

 その感覚に慣れない頃は身体中が(すく)んだ。それで指を締めつけて更にきつくなると言う悪循環だった。力を抜けと言われても何をどうすればいいのかわからない。そこに指よりも太くて硬いモノを挿入されて突き上げられると思っただけで身体がガチガチに固まった。

 しかし、今は違う。

「痛くないだろう?」

 囁かれて頷く。

 きついが痛くはない。雅紀がグリグリと捻るリズムに鼓動がシンクロする。

「大丈夫」

「痛くない」

「ちゃんとほぐれてる」

 雅紀の囁きは尚人の思考を鈍らせる呪文。

「ナオはここを弄られるのも好きだろう?」

「ほら、気持ちいいだろ? ナオのも、また、膨らんできた」

「もう一本、入れような。そしたら、もっと気持ちよくなる」

 甘くて、優しい––––呪文。

「俺の指、キュンキュンに締めつけてる」

「スゴいな、ナオ。ローションが垂れて、タマもヌレヌレになっている」

「下腹も張ってきただろう?」

 あんなにきつくてもう入らないと思っていたのに、二本じゃ物足りなくなってしまう。三本目の指を入れてもらいたくてうずうずしてくる。

「もう一本、入れて欲しい?」

 雅紀に見透かされたように囁かれて、尚人は頷く。

 三本目が入ってくると、下腹が張った。三本の束で緩急をつけてグリグリと(えぐ)られると粘膜が擦れて、捩れて、その刺激で下腹がズンと重くなった。

「気持ちいい?」

「ン……まーちゃん……いいッ……」

 だが、その刺激にも慣れてくると次第に物足りなさを感じ始める。そこが雅紀で埋め尽くされる圧迫感と、指では届かないところまで深々と突き上げられる感覚を体が知っているからだ。

「まーちゃん、して」

「してるだろう?」

「ちがう。まーちゃんので……して。まーちゃんの、()れて」

 とうとう我慢できずに口走ってしまう。それだけで、吐息が灼けた。

「俺のが、欲しい?」

「欲しい。まーちゃんが欲しい。まーちゃんとしたい」

 先走る欲望が止まらない。

 雅紀が欲しくてたまらない。

「……まーちゃん、挿れて」

 尚人が自ら体を正面にして足を開くと、ペニスの先端をぐりぐりと後蕾に押し付けて、馴染ませて、ゆっくりと、じわじわと、雅紀のそれが割り入ってくる。

「ンッ……」

 圧迫感にひくつく。密着したそこが灼けるように熱い。

「ああ、全部入った」

 雅紀が微笑む。その笑顔がきれいすぎて尚人は見入る。

 雅紀がゆっくりと腰を振る。密着し合うそこの感触を確かめるように丁寧に抽送し、その動きが徐々に激しくなっていく。

 突いて。

 捻って。

 腰を入れて。

 くびれのぎりぎりまで引いて、溜めて突き上げて。

 硬くしなり切ったエラの部分で尚人の一番いいところをグリグリと擦り上げる。

「ンッ……あッ!。……や。––––んぁ、いぃぃぃ〜〜!」

 快感に翻弄されて、(あえ)ぎが止まらない。

 きもちいい。

 きもちよすぎる。

 雅紀が腰を振るたびに球袋がぶつかりパンパンと乾いた音がする。

 雅紀に突き上げられるたびに快感がゾワゾワと背筋を駆け上って、頭の芯まで痺れて、尚人の意識が朦朧とする。

 雅紀が腰を抱え上げる。 

 より深く雅紀が尚人を突き上げる。

 激しく(つつ)かれて、()き上げられて。

 瞼の裏でスパークが走り、灼熱のほとばしりが一気に爆裂した。

 

 

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