ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~ 作:水鳥ばんちょ
【エリア2:図書館(中央広場)】
――焼き焦げた炭の匂いが、周囲を満たす
――顔をしかめたくなるほどにくすんだ匂いが、鼻を突き刺す
固いコンクリートで囲われた、見るも無惨に焼き尽くされた本の世界。…そのほんの一部分…意図的に開けたような中心で俺達は立ち尽くし、脳を貫くほどむせかえった、“2つ”の臭いに、包み込まれていた。
――1つは、燃やされ、炭と化した大量の本と木の匂い
――もう1つは、吸い付いたように硬直した俺達の眼前に転がる、黒ずんだ“何か”の匂い
「―――――――」
月明かりと、懐中電灯にいやという程照らされた“何か”。
常人では目をそらさずにはいられない、あまりにも凄惨な“何か”。
永遠に目を向けられるものでは無いはずなのに――忘れ去ってしまったように、動くことすら許されないように、俺達は視線はその“何か”に縫い付けられていた。
「は、ははは……な、何なんですか……これ…」
「…………」
乾いた笑みをこぼしながら、声を絞り出す雲居。今眼の前に突きつけられたものが、現実なのか、幻なのか、分かっていない。そんな風に、彼女は震えた眼差しを“何か”に向けていた。
そう言う俺だって。今まで一度だって見たことが無い、全てを焦がし尽くした、人の形をした“何か”に釘付けになっていた。こんな非日常的なものが自分の現実にあって良いわけがない。今この場に在って良い訳がない。縛り上げられたように動かない俺の脳内で、そんな言葉が反響していた。
だけどたった1人――ニコラスだけは違った。
側にいたはずの彼は、真実への道を突き進むように、ここが立ち止まる場所なんかじゃないと分かっているように……黒い“何か”へと、糸を振り払い、ズンズンと近づいていく。
何度も、何度も同じ光景を見てきたと背中で語りながら、ただ機械的に、合理的に…残酷な“何か”へと近づいていく。本当に、彼が自分と同じ人間なのかと疑ってしまうほど、その動きに迷いは無かった。
その勇ましくも恐ろしいその後ろ姿は、まさしく――“超高校級の探偵”そのものであった。
だからこそ、酷く輝いているように見えた。場違いにも俺は、まるで誘蛾灯のに引き寄せられる蛾のように…その背中を追いかけねば、少しでも近づかねば……無意識のウチに俺は、そんな感情に一瞬とらわれてしまった。無意味と分かっているはずなのに、うぬぼれだと分かっているはずなのに…俺はそんな脈絡の無い、愚かな意志を抱いてしまった。
しかし……まるで別の世界に住んでいるかのように、その背中は遠ざかるばかり。常人の俺が跨ぐことすらあたわないと…意識の境界線が俺の行く手を無情に阻む。
今俺に出来ることは、些細な思いも、恐怖にも負けず……細心の注意を払い、観察を続けるニコラスを呆然と見つめることだけ…行き場の無い無力感が俺の胸中を渦巻く。
「――…間違いなく………“彼”、みたいだね」
ニコラスが“何か”を触り始めて数秒、……そうつぶやいた。その言葉は、イヤなくらいハッキリと、耳がとらえた。
「――――鮫島、なのか?」
…同時に、思い出したように、現実に引き戻されたように息を吐き出しながら、俺はそう発した。皮膚や髪は焼けただれ、顔も泥を被ったみたいに潰れてしまっている。…だけど既に分かっていたように…俺はそう口走った。何を言っているんだと、自分でも驚いてしまう。隣に居た雲居も同じ気持ちを共有したのか、見開いた目をこちらに向けていた。
「…………ああ、そうだよ。この体格、この恰好……そして首に掛けられたゴーグル……超高校級のパイロット、鮫島丈ノ介その人に…間違いない」
今までの陽気さが嘘みたいに、残酷とも取れる静かな声色で、ニコラスは淡々とそう告げた。先ほどと変わらない平坦な態度…俺はまたニコラスに、僅かな恐怖心を覚えた。
「…さ、鮫島…なんですか。……あんな……あんな…フィクションみたいな形の炭が…」
「ミス雲居…現実は時として、小説よりも残酷なものだ。…夢のような現実も時として真実としてキミ達の目の前に現れる……。回りくどい表現をしてしまったが……今言った言葉全てが…真実そのものだよ、キミ達」
ああそうだ。分かっていた。分かっていたのだ…。たちの悪い一種のドッキリかと思って、目をそらそうとしていたのだ。服と、そして手にはめた革の手袋……見覚えのある装飾品の数々…。彼本人のものとしか思えないそれらを見て…“そんなことあるわけない”…無意識のうちに、俺はその現実を理解しようとしていなかったのだ。
…今まで目の前に立ちこめていた“何か”の匂いは――“死”の匂いだ。
“何か”の正体は、……“鮫島丈ノ介の焼死体”だ……。
「…………“また”始まってしまうみたいだね」
「……」
立ち上がるニコラスは、さきほどと打って変わって、噛みしめるように、悔やむように…だけど誰かに伝えなくてはいけないように…小さくニコラスはささやいた。俺はそれに、何と答えれば良いのか分からなかった。何を言うべきが正解なのか、分からなかったから。
だけど…1度だけ経験してしまった、“疑い合い”……それが始まってしまう。それだけは、分かってしまった。とても、とても苦い感覚が、心に重くのしかかる。
――ふと、中心へと繋がる階段の上、図書館の出入り口に人の気配を感じた。
「…こ、これはどういうことなのかねぇ……あたしら、廃墟にでも迷い込んじゃったのかねぇ」
同時に、聞き慣れた声が、図書館に木霊した。小さな声量であったはずなのに…イヤに響いていた。今、最も聞きたくない…見て欲しくない人物の声が……俺の脳内に響いた。
「あわわわわ…な、なんて、酷い。ここって、図書館でしたよね?このエリアにある施設の一角でしたよね?私達、夢を見てるのでしょうか…」
「何もかも、消し炭でござる……まるで幻術に掛けられたような心地でござる、いや…もしやモノパンに連れられていた時点で…幻術を見せられていた…ということでござるか…?」
「…そもそもいつから幻術にかかっていないと錯覚していた?」
「……なん…だと…?」
「2人とも現実をちゃんと見てよ~、ていうか~何か空気も張り詰めてて~、息をするのもしんどいよ~」
「上も下も脆く、今にも崩れ落ちそうな、闇の世界。まさにディストピアという他無し…だね」
「足下、も、暗くてよく見えない、から、気をつけて、ね?」
「…だが暗い故か…星はよく見えるなぁ……フフフ、ワタシ好みの世界観ではあるなぁ」
「…気をつける、とこ、そこな、の?」
階段を降りながら、続々と生徒達は絶句したような声を上げていく。ココにいる、俺、雲居、ニコラス……そして鮫島を抜いた10人が、荒れ果てた図書館の光景に、驚きを隠せずにいた。一部マイペースな輩も存在しているが…。
一部の生徒を抜きにしても…そんな反応をしてしまうのは無理の無い話だ。知らないうちに、図書館の全てが、丸焦げにされていたのだから。世界が一夜にして変わってしまったのだから。
だからこそ、その状況を飲み込み切れず、血相を変えたように、ズンズンとこちらに近づいてくるの反町の行動も、当たり前の反応としか言えないのだ。
「ちょっとあんたら!モノパンに連れられてここに来てみれば、こんな天変地異でもあったみたいな惨状……どういうことだい!」
「……それにさっきの放送。聞きたいことは山ほど在る」
「…ああ、わかっているとも。それも含めて、全てきちんと説明させて貰うよ。ね?ミスター折木、ミス雲居」
「……」
「…」コクリ
ニコラスから掛けられた言葉に、受け流すように目をそらす雲居、そして言葉も無くうなずく俺。その重々しい雰囲気から、聞く側のほぼ全員がただならぬ状況であると瞬時に、理解した。
いや、理解したくないはずなのに、理解させられてしまった。というのが正しいのだろう。
「あの~差し出がましいというか、できれば答えなくても良い質問なのでござるが……目の前で寝ている方は…?」
誰よりも、現状に理解を示した人物の1人である沼野。ブルブルと震えた指先で、俺達の側に横たわる“人の形をしたそれ”を差す。
…聞きたくないはずなのに、聞かなければ後悔するたった1つの質問。いまここに集いきった生徒の中で、仲間はずれにされたように集いきれなかった、たった1人。察しの良い何人かは、答えを言う前に、気づき、そして顔を青ざめさせているように見えた。
「……へ?はは…まさかそんな…いや、あり得ないんだよねぇ……確かに、今はいないみたいだけど…きっと…――」
「ミスター古家…そして諸君………ここにいないミスター鮫島。そしてさっきのアナウンス……これが意味する真実は……ただ1つ……・コロシアイが、また起こったのだよ。そしてその被害者は……超高校級のパイロット…鮫島丈ノ介だ、諸君」
ニコラスは、俺達の前に転がる焼死体が鮫島である、淡々と、そう言い放った。だからこそ気づけなかった生徒達は、騒然と、表情を硬直させた。今まで笑える笑えない微妙なギャグを言っていたマイペースの権化みたいなアイツが……コロシアイの犠牲者として、この世を去ってしまった。たったそれだけの、嘘みたいな真実を聞いてしまったが故に。
「う、嘘だよねぇ…?いつも笑えない冗談を振りまくあの人が……そうだよねぇ!いつもみたいに、あっけらかんとした顔を起き上がって…それで、それで……」
「鮫島…くん?えっ?えっ?あれ、あれあれあれあれあれ?」
その中でも、最も見て欲しくなかった、聞いて欲しくなかった2人が…友達の突然の訃報を見て、聞いて、そして膝を付き、かすれた声で言葉を刻んでいた。明らかに、脳の処理が追いついておらず、不安定な状態であると理解できた。。
でも誰1人として、その2人に声をかけるものは居なかった。誰もが、他人にかばっていられるほどの余裕がなかったから。
俺達にできることは、鮫島の死を悔やみながら、俯くことだけ。それほどまでに、鮫島の死という衝撃は、あまりのも強すぎた。
「…パンパかパーン!!!おめでとうございま~ス!!始まってしまいましタ、やっぱり始まってしまいましたコロシアイ!!!祝エ!!仲間を殺したクロの生誕ヲ!!!」
物理的にも、精神的にも最悪の空気の中で、モノパンは忽然と現れた。快活な声色を携え、“パーン”とクラッカーを鳴らしながら。
人の死体を目の前にして、その忌々しいほどの明るい態度……気が狂っている、そうとしか思え無かった。
すると、その重苦しい雰囲気に耐えきれなかったのか“ちょっと待ちな!!”と、喉のつっかえたものを吐き出すように、反町は叫んだ。その矛先に居たのは――俺と雲居、そしてニコラスだった。
「あんた達!!!鮫島が死んだって……それは…………わかった、けど。でも、どうして、あんたらがココにいるんだい!!なんであたしらよりも先にここにいるさね!」
「ログハウスエリアからこの図書館にたどり着くまで、20分もかからなかったぁ…そして、道中に貴様らを見かけなかった事を考えると……この付近にいたか、もしくはこの図書館に居た……ということだなぁ…!」
「そう考えると…………まさか!!!!…でござる」
「諸君……その説明については…後ほど必ずすると約束しよう……それよりも聞かなければならない、極めて重要なことがある……モノパン……良いかな?」
俺は反町の言葉で、何かが爆発する、そう直感した。だけど……その寸前でニコラスは待ったをかけた。何かとても重要な事がもっと他にあると言いたげに、語意を強めながら、モノパンへと矛を向け直した。
「ぬわんですかァ?学級裁判の復習ですカ?捜査のノウハウですカ?それとも……ワタクシのスリーサイズ?」
「“強制退去”…これは覚えているね?……昨日の朝、キミのその紳士的にあり得ない口で言っていたことだ…忘れたとは言わせないよ?」
「……・…紳士的にありえない…?」
俺達は“強制退去”…その四文字のキーワードを聞いてハッと、思い出した。今日の、いや昨日の朝食の時に、堂々と宣言していた“動機”のことを。
「こんな風に…死体が見つかってしまったみたいだけど…明日の…いや今日のの強制退去の話は…どうなるんだい?」
「勿論“無し”ですヨ!!!その話をした折に、ワタクシは付け加えて言っていましたよネ?疲れが吹き飛ぶような事があれば、話は変わるっテ…」
“無し”…その強い否定の言葉が…俺達の間に波紋を作る。顔を見合わせたり、“えっ”と漏らしたり…と様々であった。
確かコイツは…動機を発表した直後、不穏な一言だけ残していた。現に何人かは、その一言に小さな懸念を抱いていた……。だけどすぐに、その考えは杞憂だと、霧散させていた。
――“この施設から出られる”たったそれだけのことで、コロシアイなんて起きるはずない…そう信じ切ってしまっていたから。
「くぷぷぷぷ良いですねェ、折角みんな仲良くお外に出られるように取り計らったのに……いやぁ。絶望的ですね、突き落とされたような絶望ですねェ…もうちょっと深くまでいって深淵にお邪魔しちゃいまス?結構面白いかもしれませんヨ?」
嘲るように続けるその言葉は、今の俺達の中には、一ミリたりとも入ってこなかった。今まで帰りの支度なんかをして、今まで喜びに浸っていたのに。1度起こってしまったコロシアイで、全て無しになってしまったのだから。目に見えて、俺達の間に大きな闇が落ちていくのが分かった。
だけど同時に…俺達は“帰れないことに”落胆するべきなのか……。鮫島の死体を目の前にして、そんなことを考えて良いのか……。そう思ってしまった。何に哀しみを見いだせば良いのか…分からなかった。
「それにもうキミタチの中では…既にこの状況が何を示しているのか……才能豊かなおつむがあっても無くても…理解できますよネ?」
意味深に、モノパンは俺達を見回し、二ヤニヤニヤと口で弧を描く。俺達は思い出したように…お互いの顔を見合わせた。
そこにあったのは、食事を一緒にとったり、風呂に入ったり、様々な交流をしてきた、楽しげな級友の顔ではない……――人の本性を恐れる、疑惑の表情だった。
――この中に、犯人がいる
互いの顔を見ながら、そう思った。疑いあう事が、どれだけつらいのか…初めての殺人事件で、それは痛いほど体験したはずなのに。もう2度と体験したくないと、心に刻み込んだはずなのに。
――始まってしまった…コロシアイが
――始まってしまう……極限の疑い合い…“学級裁判”が
「探す必要なんて無いですよ…」
まるで火蓋をおとすような一言が、図書館に響いた。
お互いをにらみ合っている…そんな異様な光景の中で、たった1人、雲居が…そんな言葉を発したのだ。一瞬、捜査することそのものが疲れてしまったのか…諦めてしまったのか…そう考えた。だけど彼女の、人を疑いきった、鋭い目つきを見て、その考えを一瞬で棄却した。
「……犯人はもう、わかってるんですから」
「――――――っ!」
聞き捨てならない、告発に近い雲居の一言に俺達は再び動揺を走らせた。“既にわかっているのか”“一体誰なんだ!”“早く教えてくれ”そんな俺達生徒達の声が雲居にかかりだす。
雲居はその言葉に応えるように……小さな指を……とある人物へと向けた。
俺達は、その指先の延長戦をたどり、その人物へと視線を注いだ。
「ニコラス…アンタ以外考えられないですよ」
俺は息を呑んだ。文字通り、ゴクリと。
さっきまで同行していた雲居が目の色を変え、強い敵意と確信を持った眼差しでニコラスを射貫き
“犯人はお前しかいない”
そう言い放ったのだから。
「――……そうなるね…ああ、分かっていたとも」
だけどニコラスは…動揺する素振りも見せず、至極当たり前のように、その指名を素直に受け入れた。
「えええ!?そんなにあっさり認めちゃうんですか!!しかも分かっていたって…」
「複雑怪奇とはこのことだね。僕達が疑念を抱くべき3つの魂…それは見つめ合っているのに反発し合っている………ああ、とても矛盾しているようだ」
「……何があったのか説明して。話が全然読めない」
だからこそなのだろう。飄々としながらも、毅然とし、ある種の強い合理性を纏うその態度……むしろ聞いていた側の俺達の方が焦る始末だった。
「そんなに聞きたいんだったら、洗いざらい全部話してやるですよ。それにさっき“説明する”なんて、コイツ自身が無理矢理約束をとりつけてたんですからね」
「確かに~」
そう言った雲居は、今までの、彼女俺が体験した全ての出来事を話し始める。不審者の件から、プールの死体、そして図書館の大火事の件まで……かいつまみつつも、重要なことを抜かさずに語っていった。
……しかし、その間ですらもニコラスは、堂々とした態度を崩さない。果てには自前のパイプからシャボン玉を吹かしてさえいる。場違いなくらいの、余裕綽々な態度だった。
「そして……火事に気づいて駆け付けた私と折木の目の前に…ミディアムな焼け具合のコイツが飛び出てきたんです」
「……雲居。ミディアムだと、ニコラスはもうこの世には居ないぞ…」
「シャラップです。そんなのは些細な違いです…重要なのは、“図書館の出入口から”飛び出してきたことなんです。これ以上の有力な証拠は他に無しなんですよ」
「うむぅ……不審者やら、プールの死体やら…にわかに信じられんポイントは多々あるがぁ……その図書館での話は、確かに有力というか、決定的というか………観測者的観点から言って…容疑者としか考えられんなぁ」
「燃えさかる炎は命の咆哮。叫ぶ魂の中で、生き残れるのは、1つか、2つか…ただそれだけのこと」
「ん~?話は大体分かったけど~受け手が致命的すぎて~またよく分からなくなっちゃったよ~」
「よく分からなかったとしても、このエセ探偵が最有力容疑者なことに変わりは無いんですよ…そうと決まれば……沼野!!!倉庫から縄持ってくるです。コイツを縛り上げて、何も出来ないようにさせとくです!!」
すると、雲居は意見は一致した雰囲気であると考えたのか、当たり前のように沼野を呼びつけ、拘束用の道具を持ってこさせようとする。
「えっ…せ、拙者でござるか…?でもそれってパシリ……拙者忍者なのに……んんむ、まあ良いでござるが…」
「…………良いんだ」
「完全に舎弟根性が板に付いてきてるね……アタシもたまにやるけど」
「分かってたけど~このクラスの女子結構したたかだよ~」
「お前ら沼野を良いように使いすぎだろ……そんなことより、ちょっと待ってくれ!雲居!まだ何も始まってないのに、犯人呼ばわりするのは早計すぎるぞ!」
いきなりニコラスを犯人呼ばわりし、さらに容疑者として縛っておこうなんて、あまりにも横暴すぎる…!そう考えた俺は、未だパイプで1人遊びをするニコラスの盾になるよう、雲居に立ち塞がった。
「そこを退くですよ折木!こいつが図書館を出てくる前…施設には鮫島とニコラスしか居なかった…これはまごう事なき真実です…当事者だったあんたも、そのことは重々承知のはずです」
「……っ、確かに、確かにそうだが…」
だけど彼女の言い分は強引なようで、とても正しい。疑って当然な相手を当然のように疑う…このコロシアイの中で、最も順応したその思考は間違ってはいない。間違っていないはずなのに、心の何処かで、それは違う!…そう叫んでいるのだ。
「…ミスター折木。ボクのことをかばってくれるのは…友人としてとても嬉しい限りだ」
「ニコラス……!」
ニコラスは、俺の肩に手を置き、そう言った。しかし穏やかな表情とは裏腹に、彼の瞳から感謝の念は無く“落ち着け”と諭すような感情が伝わってきた。
「だけど……それは…ボクが“友人”だからなんて理由で…かばっている訳ではないだろうね?」
鋭いその一言に、貫かれたようだった。ニコラスの言うとおり、彼との今までの交流で彼自身の人柄を知った。だけどそれがノイズとなって、当然の疑惑に霞をかけていたのは、言われずとも明白だった。疑われてもいないのに、ねじ伏せられたような気分だった。俺は、歯をギリッと噛みしめ、声を絞り出す。自分が思った、素直な気持ちを、全員に伝えるために。
「…………お前は……そんなことをするヤツじゃ、ないだろ……それはお前自身が分かってるはずだろ…超高校級の探偵は、殺人を起こすはずなんてないんだろ…?」
「……折木さん」
「折木、くん…」
「…あの~拙者そろそろロープ持ってきたほうが良さげでござるか?」
「疑惑、過ち、そして信頼……ああ分かるとも。天国まで召されようと、地獄に落ちようと…その関係にヒビなんて入ることはない。それほどまでに強くつながり合っている……まるで友と、恋人のようにね」
「沼野、落合…今ガチな雰囲気だから…ちょっと黙ってな」
「確かに、キミの言うとおり、ミス雲居の判断は少々速い気もする……だけどそれが証拠が集まりきっていないこの状況……ボクが疑うのは当然だ、そしてその疑惑の人が証拠を隠滅しかねないという状況、動けないよう工夫するのもまた当然だ…」
これから行われる、学級裁判のためにするべき事実を並べていく。とても平坦な声で…次々と。
「ミスターマイフレンド……ボクを信じてくれるというのなら……ボクを疑うんだ。疑いきって……そして君自身の信じる、真実を見いだすんだ…この意味、聡明なキミなら分かってくれるはずだ」
「……信じているから……疑う?」
俺はその矛盾したようで、とても真っ直ぐな一言に、一瞬、困惑してしまった。だけど、何となく、ニコラスが伝えたい真意のようなものが、その言葉の中に全て詰まっているような、そんな気がした。
「あの。信頼してるから、疑うって……それって、どういうことなのでしょうか…私、国語の成績が怪しかったので…読解力が少々…」
「え~、怪しいのは国語だけじゃ無いでしょ~~?」
「………返す言葉もありません」
「ふぅ……まあこうは言ったが、安心したまえよミスター折木。超高校級の名探偵は友を残して、先に逝ったりはしない。それは、ボクは殺しなんて愚かな事はしていない、つまりはそういうことなのだよ、キミ」
するとニコラスは、見惚れるほどの穏やかな微笑みを浮かべ、此方に目と目を合わせる。その瞳からは、先ほどの冷たさは無く、朗らかな暖かさがあった。先ほどの言葉も合わせて…少し、納得感のような、そんな気持ちを感じた。
「………………くさいお友達ごっこはもう良いですか?」
少しの間黙っていた雲居は、ため息と、腰に手をつきながらそう言った。その顔つきから、“時間は上げたのだから、そろそろ観念しろ”……そうも言っているようだった。
………確かに、俺1人が駄々をこねても、これ以上は無用な時間を使うだけ……それは、捜査をしなければいけない、誰も得のしない悪手だ。俺は衆目の集まる中で、こくりと、重々しく頷いた。
「…わかった。俺も、雲居の意見に賛成だ。無駄に時間を食ってしまってすまない……沼野、縄を持ってきてくれ」
「拘束するのは変わりないんですね…」
「……結局拙者が持ってくるのでござるか、はぁ…」
「そして結局貴様は取りに行くのだなぁ……」
「……何か可哀想だから、私も行くよ~」
「うう……その気遣いが目に染み渡るでござる…」
俺の頼みを総意の言葉と考えた沼野は、しぶしぶと、長門と階段を上り出した。その直後“ところで…”、そうニコラスは話を変える言葉を投げた。
「ミスター折木、ミス雲居……ここに来る途中、妙に走りづらかった…なんてことは無かったかい?」
「…?……まあ確かに、中央分岐点を歩いてるときは…妙に走りづらさがあったような…」
「……かねがね同じ意見です。それがどうしたんですか…?」
「いや、なに、少し思うところがあってね。今納得したところなのだよ………ミスター忍者!!!」
「ぬぉ!!ビックリ仰天……如何様にしてござるか?あとちょっと諦め気味に言うでござるが、せめて名前を…」
俺達の質問への回答を聞いたニコラスは大声を上げ、入口に居る沼野達を呼び止めた。そして上を、見上げながら続けていく。
「とても重大な忠告だ、キミ。中央分岐点を歩くときは、ギリギリまで端っこに寄って歩くことをオススメするよ」
「え~?どうして~?」
「ふむむむ……もしも、イヤだと言った場合は……?」
「事件の究明が困難になってしまう……そう言わせて貰うよ?キミ」
「うわぁ…何んだかとても意味深です…。この注意は、その、素直に受け取った方が良いような凄みを感じます…」
「ふん、また遠回しに言葉を並べおってぇ…全くと言って良い程意図が理解出来んなぁ……沼野!忠告は無視してそのまま行くのだ…」
「うむむ…何だか真っ二つに割れているようで、拙者絶妙に困惑…………」
そう言いながら、ためらうように沼野は雲居を見やった。
「ミスター忍者だけじゃない……ココにいるキミ達も同様に、心がけておいておきたまえよ?」
「……!そういうことですか……容疑者の言うことは一切聞く必要は無いとおもうですけど……とりあえず脇に寄りながら移動は徹底しておくです……これは、ニコラスからじゃなくて、私からの命令です……良いですね!」
「………………………承知したでござる」
「わかったよ~」
雲居の指示に簡単な返事をした沼野と長門は、そそくさと、図書館を出て行き、しばし壊れたドアから吹き抜く風の音が、辺りに流れる。
「……そろそろ、話は終わりましたカ?」
「うぉ、びっくりしたさね!アンタまだ居たのかい!とっくのとうに裁判場にこもっちまったのかと思ったよ…」
「……まだ何かあるの?」
「くぷぷぷ……それはもうワタクシにも仕事が残っていますからねエ…分かってる癖に、このこノ~。それでは皆様同じみ…ザ・モノパンファイルver.2!!!」
「できれ、ば、お馴染みには、したくない、のに…」
そう言ってモノパンは1度目の事件と同じように、タブレットを取り出し、そして俺達へと手渡していく。手渡すため練習してたのか…そのぐらい手慣れた、滑らかな動作だった。
「そして今は深夜、しかも図書館のライトも壊れてしまって実に見えにくい…ですのデ………“ライトア~~~~ップ”!!」
そう唱えると同時に、ボフンと周りで煙が巻き上がった。その濃い煙たさに俺達は咳き込み、目をつぶってしまう。そして刹那、目を開けてみると、脚の付いた照明が数十個ほど乱立し、黒く焦げていた世界と、焦げ付いた鮫島の死体を鮮明に照らし出した。
「……うっ…これは」
「…酷い」
暗くて、死体自体がどんな状態なのか、曖昧だったこともある。だけど改めてそれがハッキリと視界がとらえた。…とても、とても人がやったとは思えない、むごい有様であった。既に何人かは、そのおぞましさに、手で口を覆っていた。
「くぷぷぷ…ワタクシの仕事はココまででス…ではキミタチ…約束の時間まで存分に捜査し、存分に手札を集めてくださイ……真実の審判場にてお待ちしておりまス。それでは、それでハ……」
モノパンはそのまま姿を消していった。直後、“あの…”と小早川が手を挙げながら口を開いた。
「前の事件のときも…確か、捜査を始める前に……見張りが必要、でしたよね?今回は、どなたが…?……できれば、あの申し訳ないのですが…私は遠慮しておきたくて…その、見張れない分捜査は頑張りますから…!」
「まっ、正常な意識ですね。見た目はもうグロテスクですし、匂いも凄いですし…進んで見張ろうなんてヤツなんて、沼野と雨竜くらいですよ」
「言っておくがワタシは死体マニアなどでは無いからな?…まあ、自慢では無いが、検死はワタシにしかできんからなぁ…片方の見張り役はワタシが請け負おう…」
「……あと、もう1人、だ、ね」
今回の見張り役、本来であれば雲居の言うとおり沼野が名乗り出る場面だったが…今彼は倉庫に向かっている。雨竜と1人…そのもう片方の見張り役を誰がやるか…しばらく決めあぐねるような空気が漂い始めてきた…すると――。
「――あたしがやるんだよねぇ」
ダラリと両手を下げ、俯きながら、今まで静かにしていた古家が口を開いた。いつもよりも、覇気の無い声で…その意外な人物からの声に、俺達は驚きを表わした。
「……一応聞いておくですけど、本当に大丈夫ですか?……厳しめに言うと、見張りは重要な役目です。今の、不安定にしか見えない古家に任せて良いのか……正直な話、私はわからないです。無理してそんなことを言ってるなら、今回に限ってですけど、捜査に加わらず部屋で大人しくしてて欲しいとすら思ってるです」
「いや、無理はしてないんだよねぇ………大丈夫、大丈夫なんだよねぇ……あっ、でもやっぱ大丈夫じゃないかもしれないんだよねぇ」
「「…いや、どっちだよ」」
「…………“どっちもかも”…しれないんだよねぇ」
そう言いながら、古家はうつろ気味な瞳をゆらし、唇を噛みしめ続けていった。
「……本当のことを言うと……昨日までバカやってた友達が、今見てみたら、丸焦げになって、この世を去ってるだなんて……未だに受け入れられないし。受け入れようって思ったら、想像以上にしんどくて…しんどすぎて頭が可笑しくなりそうなんだよねぇ…」
…古家と鮫島は俺達の中でも、特に交流を深めていた。日常的に見てきた俺達にとって、その考えは共通の見解だった。そんな古家と外を元気に駆けずり回っていた鮫島が……微塵たりとも動かない、1つの死体になっていたのだ。…これで正気を保てと言う方が、酷な話だ。雲居だって、同じように思ったからこそ、無理をさせたくないと、あんな風にな口を叩いていたんだ。
「でもねぇ…あたし思うんだよねぇ…もしも自分が逆の立場だったら、……あそこに転がってるがあたしだったら、鮫島君はどうするのかって……」
「古家…さん」
「きっと、いつもみたいに訳のわからないこと言って、裁判を踊らせると思うけど……でも、でも……キチンと頑張ろうと、すると思うんだよねぇ」
拳を震えるほど…今にも血が流れそうな位、握りしめていた。とても見ていられない…そんな風に思えた。
「……大丈夫じゃないけど。頑張らなきゃいけないときに…やれるだけ、頑張る……泣くなんて…後で何時でも出来るんだからねぇ……安っぽい言葉だけど、でも、あたしはそう思うんだよねぇ。――いや、もう、そうすることしか出来ないんだよねぇ……」
顔を上げ、俺達に向けてそう古家は心中を語った。その表情には、確かな覚悟があった。とても脆いようで…だけど崩れたりしない……そんな確固たる意志を感じた。
「………わかったです……その覚悟、信じるです頼んだですよ」
「ハハハ…まあミスター古家が男を見せなかったとしたも……どうせ身動きが取れないんだ、このボクがもう1人の見張り役として名乗り出ていたところさ。ああ勿論!!そうしていたとも!!」
「また始まったなぁ…」
「ニコラス、お前は黙って座ってるです。あんたは最有力容疑者ですから、言い出しっぺのあたしが直々にマークしてやるです…2度とあたしの目の前で動けなくしてやるですよ」
「なんだい?足でも折っとくみたいな口ぶりだねえ?それならアタシに任せときな!!実力行使の鬼と謳われたアタシの実力、見せてやるさね!」
「…あばばば、鬼じゃ無くて修羅が見えるんだよねぇ」
「……多分比喩的な表現だから…そのままだと裁判に支障が出る。流石に怠い」
よく見てみると、あのニコラスも微妙に冷や汗を掻いていた。
「役割が決まったのなら捜査開始です。いいですか!!手を抜いたら承知しないですよ!!!」
「いんやぁ…さっきから思ってたけど…普段からは考えつかないくらいすんごい圧なんだよねぇ。もしかして鮫島君って案外人徳あったのかねぇ…」
「図書館の本を葬った恨み!!晴らさでおくべきかです!!!」
「……まあ、案の上だったんだよねぇ」
「…知ってた」
「食べ物の恨みは恐ろしいとは良く言うよね?でも最も恐れるべきは、恨みでは無く怒りさ…だって、この目でハッキリととらえられるんだからね。……業火の如き怒りを何度も何度も見てきた僕が言うんだ……間違いない」
「でも、士気は、上がりそうだ、ね?」
「その考え方は…僕の詞にはなかったね」ジャララン
雲居の並々ならぬ勢いに触発され、他の生徒達もやる気になっているように見えた。それと同じくらい…今回はかなり私怨がこもった捜査になりそうだな…、そんな先が思いやられるような気がしてきた。
【捜査開始】
それぞれが、それぞれの思うままに調査を始めに行ってしまって数分。中央には現在進行形で検死をしている雨竜と、それを見守る古家。入口から出入り口から少し離れたところにはニコラスと雲居。図書館内は、とても閑散とした空気に包まれていた。
俺自身は、考えの整理のため、図書館の入口にて居座っていた。最初は、異臭を放つ死体を第1に捜査しても良かったのだが、始めて間もないのに検死が完了するとは思わなかったし、終わるまで側に居ても気が散ると考えたため、また後で行くことにした。
……何よりもまず、このタブレットとか言う近未来“兵器”を攻略しなくてはならないのだ。…どう扱うんだったか……思い出せ…ええと確か、タブレットを2つに開くんだったか…?
「いや、何だか取り返しのつかないことになりそうだな……んんむ、やはり難しいな…」
「やっぱり、それ、で、手こずるん、だ。こ、こうやると、良い、よ?」
「贄波?おお…!!」
丁度近くに居てくれた贄波は、タブレットの側面に付くボタンを押し機器を立ち上げてくれる。俺は恩人である贄波に“ありがとう…”と述べつつ……画面に指を置く。爆弾でも触るようなぎこちない手つきで、スライドさせていった。
画面に現れたのは、まるでシルエットのように黒く染まった鮫島の死体。その姿は、画面越しでも、生産の一言に尽きる死に様であった。もしも自分がこんな風にされたらと思うと、身震いが止まらない…それほどまでに、この事件の犯人の残忍さがひしひしと伝わってくるようだった。
……こんなことを出来るヤツか俺達の中に居るなんて……俺は背中に、一筋の寒気が走った。
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モノパンファイル Ver.2
被害者:【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)
死体発見現場はエリア2『図書館』。死体発見時刻はAM:0:35。
死亡推定時刻、死因共に体が殆ど焼けてしまっているため不明。毒物などの薬品類を摂取した痕跡は無い。
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死体の写真の下には、朝衣の事件と同様に死体状況が書かれていた。しかし――
「……死因も、死亡推定時刻も不明……か。これじゃあ、ほとんど情報無しだな」
俺は難しい顔を解かず、聞こえるか聞こえない様に、そうつぶやいた。
…モノパンファイルである程度の情報が得られると期待していたが、焼死体であるがためなのか、はたまたモノパンが意図的に隠しているためなのか……ファイルに有力な情報は記載されていなかった。俺はがっかりしたように、深くため息をつく。
「朝衣さん、のときより、も無いよ、ね。本当に、平等な、立場なの、か、怪しい…」
「前の事件でも、中立とはかけ離れたような動きをしてたからな……そこに信頼は寄せない方が良いだろうよ……。死体については…そうだな、雨竜の検死結果に期待するしかないな…」
少しむくれている贄波を緩やかに宥めつつメモを手に取る。…薄っぺらい内容だが…無いよりはマシか…そう思った俺は、メモに記録を残していった。
コトダマGET!!
【モノパンファイル Ver2)
…被害者:【超高校級のパイロット】鮫島 (さめじま じょうのすけ)
死体発見現場はエリア2『図書館』。死体発見時刻はAM:0:35。
死亡推定時刻、死因共に体が殆ど焼けてしまっているため不明。毒物などの薬品類を摂取した痕跡は無いとのこと。
「さてまずは……」
モノパンファイルの確認を終えた俺は…頭の中でこの先のプランを考えていく。この図書館のそのものを調べるのは間違いないとして、後は、鮫島の死体に、プール……思い当たる場所はいくつかある……。
そして、道すがらに当時の皆の行動にもあたってみなくては…事件が起きても間もないために、記憶も新鮮なハズだ。まとめてみると、やることは思いのほか多い。
「折木、くん…」
「贄波?」
「あの、ね?もう一度、教えて欲しい、ことがあるんだけ、ど、良い?」
そんな風にしてコツコツと頭の中で指針を組み立てていると、先ほどから隣に居た贄波に声を掛けられる。俺は考えを中断し、贄波にむき直す。
「さっき、の、雲居ちゃんと見た、不審者、とプールの死体の、話を、ね?もう一回聞かせて、欲しい、の」
「雲居が勢い任せに話してた、あの話か……雨竜が言ったみたいに、やっぱり受け入れにくかったか?」
「それも、ある、けど…折木、くんの言葉、で、そのときの状況を知りたい、の。2人の話、に、齟齬がないか、どうかも、含めて」
「……成程」
「事件の流れ、を整理できる、し…もしかした、ら。話してる、間、に、気づけなかった事が、出て、来るかもしれない、しね?」
「……そうだな。うまく説明できるか分からんが…まとめてみるか…。最初にことが起こったのは――」
――確か“11半過ぎ”のことだ。エリア2に入ってすぐの道で、倒れた雲居を見つけたんだ。
――聞いてみると、本を返しにエリア2に来たところを後ろから殴られたらしい。
――不審者の顔は、紙袋で覆われていて、わからなかったみたいだ。
――殴られた直後に、一瞬プール方面に不審者へ向かったのが見えたらしくて…俺達は目撃談に従って、プールに向かったんだ。
――施設に入ってすぐは更衣室にも、プールにも特に異常は見当たらなかったように見えた……
――だけど屋内に入って、上を見上げてみると
――プールの天井に…厳密に言うと、天井に架かる足場にロープをくくりつけて……首吊った誰かが居たんだ。紙袋と、黒いローブを着込んでいたから、雲居を襲った不審者だと思うが……誰なのかまでは分からなかった
――…これが“11:50”できごとだ。直前に更衣室で時間を確認してるから間違いない
――俺と雲居は天井の足場へと急いで向かった。不審者と接触した時間から考えて、まだ首を吊って間もないんじゃないかと思ったんだ。
――だけど天井に移動した時…その首を吊った誰かは消えていたんだ
――それからすぐに、プールの窓から、図書館内で火事が起こっているのを発見したんだ
――俺達は急いでプールを後にして、図書館へと向かった
――図書館の入口にたどり着いてすぐ、ドアを開けようとすると中からニコラスが飛び出てきた。
――同時にモノパンも現れて、すぐに火事の消火が始まった。
――大体30分くらいの鎮火活動によって、火事は収まった。
――……それから、ニコラスの先導で図書室に入った俺達は、中央広場で鮫島の死体を発見したんだ――
「――大まかには、こんな流れだったよ。何かおかしな部分はあったか?」
「紙袋を被った不審者、だった、り、首つり、死体が消えた、り……話そのもの、が突拍子も、無い、から、今は特に無いか、な?でも1つ、だけ。鮫島、くんの死体、を見つけたのは、いつ頃だった、の?」
「鎮火活動が始まったの0時丁度くらいだと思うから……多分深夜0時半だな……それから10分くらい経って、皆が集まってきたんだ」
「ありが、と。わたし、もわたしなりに考えて、みる、ね」
そう言うと贄波は少し思考をし始めた。今は、彼女のそれを邪魔はしない方が良さそうだ、それに……贄波の言うとおり、思い返すと調べるべき場所やらがピンポイントで思い浮かんできた。これが頭に残っているウチに、早めに記録しておこう。最近記憶の方も怪しくなってきたからな…。
コトダマGET!!
【雲居の証言)
…図書館へ借りた本を返そうとエリア2を訪れた際、後頭部を誰かにぶたれ気絶してしまった。殴った人物は、紙袋を被っており、判別不明。プールにて首を吊っていた人物と同一の可能性が高い。
【紙袋を被った誰か)
…雲居を襲撃し、プールへと逃げ込んだ不審者。紙袋とローブを身につけており、誰なのかは不明。プールにて首を吊っていたが…天井に移動した時には、消えてしまっていた。
【図書館放火事件)
…プールに居た際に目撃。扉を開ける際、ニコラスが中から現れた。そのときにはもう、かなり燃え進んでいた。モノパンによる30分間の鎮火活動により、終息。
しばらく情報の整理に時間をかけた俺と贄波はすぐさま、この図書館全体を見回ることにした。
ポツポツと歩いて、些細なことでも良いと、上下左右を組まなく探していくが……どれも丸焦げの状態で、目立って不自然なものは見当たらない。…ココを捜査はかなり難航しそうだ…そんな弱音を心で漏らしていると…その考えを読んだように“めげずに、がんば、ろ?”と、励まされた。
しかし、彼女が隣にいると…何となく、心強い。成り行きみたいな流れで、贄波と捜査を共にすることになったが。少なくとも、水無月よりかは破天荒に行動しない分、安心感を持って捜査ができる。まあ水無月のあのエキセントリックさも、彼女の持ち味みたいなものだから…あれはあれで別の意味の安心感があるな…。
周りを見回しながら…そんな事件とはあまり関係の無い事を考えていると…とうの贄波から“あっ…”と何か見つけたような声が漏れた。
「ね…ねぇ、見て。あの上の、窓」
天井の方を指を差す贄波。俺は従うように目を向けた。
「窓が1つ…開いてる?何であそこだけ…・」
「ちょっと、不自然だよ、ね。わたし、はしご持ってくる、ね?」
…俺が開いた窓に疑問を持っている間、そそくさと贄波は…図書館の本棚によく掛けられている…本を取る用のはしごを移動させてくる。漏れなくこのはしごも焼けてしまってボロボロだが……叩いたり、実際に上り下りしてみると特に問題無いようで……安定性事態は損なわれていないことがわかった。俺は1人の男として、先陣を切っていくようにはしごを使って上の方へと登っていく。流石にちょっと怖いからな…贄波に任せるのは気が引ける。
登り始めて数秒、無事窓にたどり着いた俺は、何か情報は無いかと、手元のライトを当ててみる。
「……ん?」
――すると、窓の縁に何やら“フック”のようなものが掛けられていた。従来の形では無い、釣り針を何本も束ねたような……まさに引っかけるためだけに加工されたような見た目だった。そしてそのフックのお尻からは一筋の“ワイヤー”が伸びていた。
続きのある垂れたワイヤーがどこに繋がっているのか気になった俺は、試しにワイヤーを引っ張ってみた。
「長いな……」
たぐり寄せてみて分かったが…ワイヤーはかなりの長さがあった…。先の切れた部分までたどり着くのに少し時間がかかってしまった。
「……方角は……プール側、か」
そして、他に何か調べ残し無いかと…窓から顔を出し、周囲にライトを当ててみる。
「!……あれは」
図書館の外観の壁際――“滑車”が棘が生い茂る地面に落ちていた。位置は丁度、フックが掛けられたこの窓の真下。
「フックにワイヤー、それに滑車……まさか」
……発見した怪しい証拠品の数々を見て、俺はそれらに既視感があることに気づいた。…しかもごく最近。………もう1箇所、調べるべき場所が出てきた。俺はそう考え、メモに証拠品の情報を残していった。
コトダマGET!!
【図書館の天窓につけられたフックとワイヤー)
…天窓の縁にフックが引っかかっており、尻には先の切れたワイヤーがくくりつけられていた。引っ張らなければならないほど、かなりの長さがあった。
【落ちていた滑車)
…フックとワイヤーのかかっていた窓の真下の地面に落ちていた、どこかで見覚えのある滑車。
* * *
窓の調査を終え、図書館の散策を再開してしばらく、一通り図書館の周りを見終えた俺と贄波はまた、出入口付近まで戻ってきていた。
そこでは、まだ紐で縛られていないニコラスと、その彼を徹底的に見張る雲居がおり、少々物々しい雰囲気が蔓延っていた。……といっても、殆どは苛立っている雲居が醸し出しており……その原因が、およそ疑われているとは思えない余裕な態度のニコラスからというのが…何とも言えない。
「…雲居、ちゃん。調子は、どう?」
「不機嫌極まりないですね。大事な本は焼かれるは、ニコラスはどこまでいってもニコラスだは…忌々しすぎて数秒に1回ニコラスに蹴りを入れないと気が治まらないですよ」
「はははは!ミス雲居、蹴るのは構わないが、向こうずねだけは止めておくれよ?いくら天才のボクでも、鍛えきれない部分はあるからねえ!」
快活に笑うニコラスをゲシゲシと蹴り続ける雲居。2人の温度差に勘違いしてしまうが…ニコラスが見張られる側で、雲居が見張る側なんだよな………立場が逆なら、その温度差も納得できるというのは内緒だ。
しかし見たところ、やることが無く、時間を持て余しているようなので1つ、俺はニコラスに質問を投げかける。
「……そういえばニコラス。1つ気になってたことがあるんだが……何で火事の時、あの図書館の中に居たんだ?」
「ん?急に改まったと思ったら、そんなことかい……それはな、キミ、超高校級の探偵たるボクをボクたらしめるための日々の研鑽…いうなれば“ルーティン”行っていたからさ」
「ルーティ、ン?」
「また変な事を言ってきたですね…あんたの習慣と図書館がどう関係してくるですか…」
「そりゃあまあどっぷりとさ!キミ!……ボクはね、夕食の後…眠る直前は必ず数時間程の読書を心がけているのだよ……どうにも、これこなさないと安心して眠れなくてね」
「ほう、殊勝な心がけじゃ無いですか。嫌いじゃ無いですよ、そういうの」
「昨夜も、その例に漏れずに図書館で過ごしていたんだが……本を読み始めて2時間、そろそろ切り上げようかと考えていたら、急に首筋から“バチッ”と電流が走り……気づけば闇の中さ」
「…誘拐されたみたいな言い回しだな……つまり、本を読んでいる時、誰かにスタンガンか何を押し当てられて、気を失ってしまったんだな?」
「ああそうとも言うさ!…本当に気が覚醒したときには……周りは火の海。煙を吸い込まないように口下を押さえ、ハヤブサのような俊敏な動きで入口まで階段を駆け上がり、そしてドアにタックルをかまし、キミ達の目の前に転がり出てきた……というわけさ」
「何か、スパイ映画、みたいだ、ね」
「…俺達の知らない間に…そんな修羅場な目に遭ってたのか……大変だったな」
「……一応言っておくですけど、2人とも。ニコラスは最も怪しい容疑者なんですから……今の武勇伝のような話は鵜呑みにするのは禁忌ですよ?そこんとこわかってるですか?」
「う、うん、分かってる、よ?……多分?」
「はははっ!!見事なまでに曖昧な返事じゃあないか!!そういうのは嫌いじゃ無いよ!!キミぃ!!」
「…………」ゲシィ
「あ痛ったあああ!!」
雲居のキックが完璧にニコラスの脛に入ったのを確認した俺は、雲居の忠告を受け入れつつも、証言を記録していった。
コトダマGET!!
【ニコラスの証言)
…7時の夕飯後、日々の日課として図書館で2時間ほど本を読んでいると、急にスタンガンか何かを押しつけられ、気絶してしまった。目が覚めると、目の前は火の海になっており、急いで外に出たとのこと。
* * *
ニコラス達の証言を聞き終えた俺達は、そろそろ頃合いなのではないか…そう考え、図書館の中央へと足を戻していた。案の上そこでは、既に検死を終えたように一息つく雨竜と、それを苦い表情で一心に見つめる古家の姿があった。
「検死は終わった…と見て良いのか…?」
「……殆ど焼けてしまって、調べる部分が少なかったからなぁ。口惜しいが…ワタシの手を持ってしても、ここまでだ」
「そっか、それは残念、だ、ね」
第一の事件と同じように…複雑な表情のまま、ため息を漏らす。同じく、俺達もどうしたものかため息を出す………しかし見てみると、何故か雨竜はフッとニヤリと口を曲げていた。
「…折木、そして贄波。貴様らは今“じゃあ情報はほぼ無しか…、役に立たねぇなコイツ…”と考えたなぁ?ククク、はやってくれるなよ?調べる部分が少なかったとは言ったが…有益な情報が無かったわけでは無い…とても、とても興味深い部分もあったさ」
「勝手に人の心の声を野蛮にしてくれるな……そんなことよりも…本当か?」
「あ~、確かに、死体を目の前にして”うぉ!”とか“成程成程…”とか、“これはっ!”…って、検死してる人にあるまじき騒がしさだったんだよねぇ…」
「反応して、あげなかった、の?」
「関係者と思われたくなかったからねぇ…」
「……身も蓋もない話だな」
俺達の密かな会話を余所に、白衣を翻す雨竜。フハハハと、軽く笑うが、どこか悲しさを帯びているような気がした。それでもと、偉く様になった手のひらを顔に当てたポーズで、言葉を続けていく。
「貴様らは既に、モノパンファイル.verトゥー(2)、に目は通しているなぁ?……いや、通してもいなくても、情報量に違いは出ないのだがぁ…念のため聞いておく」
「見てはいるが……」
「……殆ど何にも載ってなかったねぇ」
「書いてた、のは、死体発見場所、と、死体発見時間くらい、だったから、ね」
「……正直な話、数十分間に及ぶ検死は行ったが…その甲斐も無く、死亡推定時刻を推察することは出来ないままだったぁ……我が医療知識の敗北の瞬間、ここにあり…」
“どぅあが……”意味深に…癖の強い間を置いていく。
「――“死因”は、判明したぁ」
「死因が……?凄いじゃないか!」
「それがあのオーバーリアクションの原因だったんだねぇ。確かに大発見なんだよねぇ」
「それ、で?何、が原因だった、の?」
「フフフ…そう焦るな若人共よ…。この鮫島の死体は……端から見れば、10人中9人が焼死と判別するほど焼けただれている……が、生憎ワタシはその10人の壁をも超越する観測者…。絶大なる技量と経験を兼ね備えたその手腕は……まさに段違い」
「…落合の回りくどさが伝播してきな。ちょっとずつ関係ないことまで言い始めたぞ」
「雨竜、くんは、元々言い方、に、しつこさはあった、と思う、よ?」
「…贄波さん、言い方に棘が生え始めたんだよねぇ……多分雲居さんの影響だろうけどねぇ」
「貴様ら話を聞けぃ!!良いか……ここからが本題だ。よく見てみろ。鮫島は両手を投げ出した状態からもがく様な体勢を取っていない…つまり、これは“死んだ状態”で焼かれたと考えられうる」
「そう客観的な話を聞くと、生々しい話なんだよねぇ……」
「…死の直接的な原因に話を戻そう………針を刺すような検死の際、幸運にも炭になっておらず生焼けになっている首の一部分を発見したのだ、それと同時に、死の“痕跡”が見られた。――鮫島は、縄または紐などの索状物による気道の圧迫、および血流の妨害による血管閉塞…法医学的に言えば絞頸(こうけい)またの名を……絞死(こうし)……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ雨竜…頼むから今だけは専門用語はよしてくれ」
「一瞬置いてけぼりになっちゃったんだよねぇ……オカルト以外は凡人のあたしにちょっとばかしで良いから配慮して欲しいんだよねぇ…」
「わたし、も、サバイバル以外…はキツい、かな?」
「………それは衝撃的事実だったんだよねぇ」
「良いだろう、ならば結論を述べようではないか…鮫島は――“絞め殺された”…と見て間違いないだろう。…だが何故…絞殺して、さらに大火事を起こしてまで鮫島を焼いたのかまでは……分からんがなぁ。まあそこは…恐らく今回のクロのトリックの核になる部分だろう…見張り役のワタシの管轄では無い…捜査をする貴様らの領分、というわけだぁ」
流石に見張り役としてココを出る訳にはいかないからと、俺達へ“何故鮫島の死体を焼いたのか”の謎をパスしていく。…しかし手元を見てみると…何となくウズウズしたように白衣の袖を握っているのが分かった。…他人に問題を投げ渡す、という事に対して、いくらか歯がゆい気持ちはあるのかもしれない。
「あの、ね?雨竜くん、教えて欲しいことが、あるんだけ、ど、良い?」
「ん、何だぁ?…そうだな、ワタシの知っている限りでなら、構わんが」
「鮫島くん、は…どんな風に絞殺された…の?ほら、絞められたのか、とか、吊られて、とか、ある、でしょ?」
「ああ~“索状痕”のことかねぇ。でも絞殺されたんなら、テレビドラマみたいに、首をこう…締め上げるような感じじゃないのかねぇ…」
細かすぎる質問に聞こえるが……これは恐らく、さっきの俺達の話に出てきた、首を吊った誰かの話のことに関連しての質問なのだろう。多分贄波は…プールで首を吊った誰かと、鮫島の死体は同一である考えているのかもしれない。
「ううむ……本来であれば、そのような痕跡は、もっと詳しく調べる必要があるのだが……何しろ皮膚が焼けただれいるからなぁ…その線の跡まではたどれなかった。死因を特定できただけでも御の字……すまんがその質問には答えかねる」
“…しかし”と、雨竜はひっくり返すように付け加える。
「少なくとも…四肢を投げ出した体勢で焼死をしたことはあり得ない……。それに絞殺の跡も見受けられているのだ…“自殺”という線も薄いだろう。自分で自分の首を絞めて、さらに自分を焼くなど………明らかに不自然すぎるからな」
「そうだねぇ…そんなのゾンビにしか出来ないんだよねぇ」
“自殺”ではなく、“誰か”に絞殺された……か。俺はその貴重な死体の情報を、詳細に記録していった。
コトダマGET!!
【雨竜の検死結果①)
…死体の体勢から、死因は焼死では無い。
【雨竜の検死結果②)
…首元の焼けていない皮膚に、ヒモのような物で絞められた痕跡があった。絞殺の可能性大。
しかし……雨竜の検死を踏まえて考えてみると、プールで首を吊っていた誰かは…贄波は思うように…鮫島なのだろうか。
…そう考えると、俺達がプールに踏み入れて、そして発見した時点ではもう鮫島は…殺されていた……ということになる。だけど何故…プールにあった鮫島の死体が、図書館にあるんだ?まるで瞬間移動マジックを見た気分だ。
だけど何だろうか…このモヤモヤとしたとてもイヤな感じ…。答えらしい答えにたどり着けそうなのに、当てずっぽうで解答してるような、とても不安定な感覚だ…。
「ん…?」
ふと気を紛らわすつもりで、広場の外周、チョロチョロと飛沫を上げる水路の方に目を向けてみる。施設が全焼してもなお、流れ続けるその水底に………何か黒い物体がユラユラと揺れているのが見えた。気になった俺は、ライトを当て…その物体を手に取ってみる。物体はザバリと音を立て、その姿を現した。
「――これは…!」
「どうした、の?それって……黒い…布?」
それは、“黒いローブ”だった。…丁度鮫島辺りの体格が収まるくらいの、大きめのサイズのローブ。
これはきっと、雲居が中央広場で目撃し、さらにプールの天井で首を吊った死体が身につけていたローブだ。しかし……こんな所に沈んでいたなんて、しかも死んだ鮫島の側に……。ここまで揃ってくると、やはりあの首つり死体は…鮫島と見て間違いない…ということなのか。
「…このローブ…どこか、で、見たことある、気が、する」
「…本当か!?」
「雑貨が沢山置いて、る、第1倉庫に、在った、と思う。あそこ、コスプレ、用の道具も、沢山、おいてあった、から。わたし、たち、に、コスプレ趣味の人、なんて居ない、のに……」
ふむ……また1つ、調べるべき場所が見つかった、か。時間が許してくれるかは分からないが…そこも、まとめて調べに行ってみよう。
考えることはまだまだ沢山あるが…それを考えるのは、全ての情報が揃ってからだ。もしダメだった、そのときはそのときだ。俺は膝を軽く叩き、立ち上がった。
コトダマGET!!
【黒いローブ)
…雲居を襲った不審者が着ていたと思われる黒いローブ。倉庫に同じような物があったらしい。
* * *
【エリア2:中央分岐点】
「……」
図書館を出てから数分、…俺達はニコラス(雲居)に言われたとおり、道の隅に寄りながら、土を踏みしめていた。
……それにしても、何であのときアイツが“道の真ん中を歩くな”と言っていたのか、中央分岐点に差し掛かる直前で……その言葉の意味が何となく分かった。
俺は最初の事件を思い出す。陽炎坂が残した、エリアとエリアの移動の痕跡を。
森の中でぬかるみに残された跡を見つけたときを。
これはあのときと同じ。
俺は、少ない本数の街灯に照らされた、足下に視線を直す。
――“足跡”だ
丁度道の真ん中に大量の足跡があった。その全てが“図書館方面”へ向けて、付けられていた。これは恐らく、俺や雲居を含めた生徒全員の靴の跡………。だけど靴底の跡はどれもグチャグチャで、どれが誰のかは判別出来ない。何で
――だけど
見た感じ、足跡自体は付けられたばかりであると分かった。皆が図書館に駆け付けたのはついさきほどのこと。それに、俺と雲居が不審者を追いかけたときも、引っかかるような“走りずらさ”があった。何故そのときに、そんな感触があったのかは分からないが…それでも――。
俺は心の内に僅かな期待のようなものが掠める。…これは、犯人の痕跡を追いかける重要な手がかりになるのでは無いかと…。
…中央棟から図書館へ向かった人数は沢山いた故に…時間内に鑑定するのは困難かもしれない。でも、他の道だったら……。もしかしたら未だ宙に浮いている不審者の存在を明るみに出せるかもしれない。
「ね、ねぇ。折木、くん。道の、真ん中、に誰か居る、よ?」
黙々と考えに集中していると、隣を歩いていた贄波が服の裾を掴み、呼びかけてくる。俺は彼女の目先へと視線を移す。
…分岐点の中央、道すがらの街灯の真下に――“風切”がいた。畑と水田に見続けながら、一切の微動も許さずしゃがんでいる。前にも同じ光景を見たことがあるな、俺はふと、2日前のことを思い出した。
「風切…また畑を見てるのか」
「何か、気になるところ、があった、の?」
「……うん」
言葉少なに、風切は静かにうなずく。本当に少なすぎて、さすがの贄波も困り気味だった。
「……確か、前は畑の位置が変だとか、言ってたよな……まさか?」
「うん。…やっぱり今日と、昨日で…畑の配置が変わってた。…どう考えてもおかしい」
周りに目を向けてみると。風切の言うとおり…配置が変わっていることが分かった。それだけじゃない…ついさっき、雲居が襲われた、“11時半頃の時”と…位置がずれていたのだ。丁度、この畑(水田)
1個分くらい。
「……気になる。とっても気になる……でも何でなのか分からない…まさか、動いてる?」
「このエリア2………俺達がいるエリア1と違って、何かしらの“仕掛け”があるみたいだな」
「……?どういう、こと?」
俺達が何を言っているの、分かっていないようで……贄波はずっと首を傾げている。申し訳ないが…未だ俺達も理解できていない故に…まだ話すことは出来ない……。とりあえず記録だけはしておこう。俺は難しい表情を崩さず、メモを走らせた。
コトダマGET!!
【風切の違和感)
…昨日と、畑と水田の位置が違う…気がするらしい。
記録を付け終わった俺は、先ほどの道ばたの事を思い出す。先ほどの道ばたも、今現在も踏みしめるこの土も、まるで水を浴びせたばかりのようにとてもぬかるんでいる……もしあの状態が少し前から続いてたのなら、風切の足にはもしかしたら……。
「…なあ風切、足の裏…何か変な感じがしないか?」
俺がそう聞くと、面倒くさそうに風切は立ち上がり、足の裏を見てみる。すると、驚いたように“うわっ”と、気の抜けるような声を漏らした。
「………結構泥が付いてた…気づかなかった。何かグチョグチョしてたから…真ん中の道はよけたのに…」
「真ん中、だけ、が、濡れてるなんて…ちょっと変だから、ね……脇だって、ぬかるんでる、よ」
「……成程。それは盲点だった」
いや、どんな盲点だよ、俺は内心ツッコんでみた。だがしかし、この足下の状態…流石に水はけが悪いから…だけで説明は不可能になってきた。正直な話気が引けるが、“アイツ”に聞いてみた方が良さそうだな…。
「……モノパン!!居るんだろ!!」
俺はこの施設に詳しい者の名を、大声を上げて呼ぶ。言葉は夜の向こう側へと溶けていき、空しく響く。変だな、と周りを見渡してみると。ニョキリと、何故か時間を空けてモノパンが現れた。つい、うぉっと声が出てしまった。
「暗闇に支配された空間…一筋の街灯の下…逢瀬を交わす男女……はっ!これってもしかして修羅場?もしかしてワタクシ、お邪魔虫?」
「…態々呼び出したのに何故そうなる。聞きたいことがあるからに決まってるだろ」
「ちぇー、ノリがお悪いことですネ…そういうドロドロとした関係性も、そろそろ出して良い頃合いだと思いますけどネ。それで、どんな事を聞きたいのですカ?」
「…この辺り、って、よく雨が降った、りする、の?何か、すごく足下が、粘つく、気がするんだけ、ど」
下世話な話題を続けざまに打ち出そうとするモノパンへ、果敢にも贄波は質問を投げかけていく。
「ん?んんん?それは質問ですか?……そんな顔をこわばらせないで下さいヨ…はいはい、勿論質問ですよね、ハテナマークだって付いてるんですからネ……ではではその質問にお答えしましょウ。…答えは半分イエースで、半分ノー。この中央分岐点周辺には雨は降っておりませんが……大量に水は“撒かれております”」
“雨は降っていない”でも、“水は撒いている”…?どういうことだ?…俺達は、煮え切らない回答に…また毛色の違う疑問符を浮かべていく。
「もっと素直にお答えいたしますと、このエリアの天井には“水やりシステム”が施されているのでス」
「…そう答えられるなら最初からして欲しかった………でも…水やりシステム…?…何それ?」
「…農作物を育てるためには、水が必要ですよネ?加えて、肥料や薬品、添加物など…様々なファクターが重要です……この水やりシステムはそれを一遍に植物へと行うことができる超画期的装置なのでス!!」
「…水と肥料以外、明らかに余計なファクターだろ」
「そこは別に聞いてる部分じゃ無いので置いといテ……キミタチが特に聞きたい部分である、このシステムの発動時間に話を戻しましょウ。…朝の7時と、夜の11時、その時間になると自動で施設の畑周辺に水が撒かれるのでス。それはもう盛大に…」
“まあ…そのシステムの影響で、盛大に道は泥濘になってしまいますガ”…そうちょっと後悔するように俯き、付け加えていく。……後悔するんだったら、もっと大人しめにシステムを設定すれば良かったのに…。
「…雨が降ったんじゃ無くて…水が撒かれた……それは分かったが、何でそんな時間に水を撒いてるんだ?」
「…結構微妙なタイミング」
「キミタチの生活スケジュールのウチ、このエリアを訪れないであろう時間設定したら、そんな風になっちゃったんですヨ。朝イチでこのエリアに訪れることも、夜のこの辺りをほっつき歩く事も…相当マイペースなヤツでは無い限りい無い……そう思っていたのですガ…まさか堂々と足を踏み入れる輩が居てさらには事件を起こすだなんテ……一体ワタクシは何時にこの畑へ水をあげれば良いのでしょうカ…」
「そっか…以外、に、考えられてる時間帯、だったんだ、ね」
贄波の理解も空しく…よよよ、とモノパンは大げさな身振りで悲しみ出す。…確かに、天下のモノパンも、こんな夜中に事件が起こると思っていた無かったみたいだし。そこは、同情の余地ありだな。ほんのちょっとだけ、な。
コトダマGET!!
【水やりシステム)
…AM.7:00、PM.11:00に畑と水田に水を散布するよう設定されている。水をやった直後は、周りの道が少しぬかるむ。
* * *
【エリア2:プール(金網橋)】
中央分岐点に居た風切と別れた俺と贄波は…記憶の筋をたどるように、プールへと足を運んでいた。……もっと厳密言うなら、プールの天井付近に掛けられた、金網状の足場に…だが。
俺のように心当たりがある人間は別として…普通なら、こんな限定的な場所に来るという選択肢は取らない。絶対に人が居ないだろう……居るとしても雲居くらいだろう…そう思っていたはずなのに…。
「……何でお前がココにいるんだ?」
「羽を伸ばし、際限なき空を飛び交うように……人が歩む場所に限界は無い。しかしそれは、自由なようで…自由とは言い切れない定理の鳥かご。――僕はそのことわりにあらがえなかった…憐れな生物の1人…というわけさ」
相変わらず何の意図も読み取れない言葉を並べる落合がそこに居た。
「……何となく、来た、ってことなのか、な?」
「いや……まさか都合が悪いものを処分に来た…とかではないよな」
「そのまさかは、君達の頭の空想でしかないよ。僕にとって都合が悪いもの、そんなものはこの世には無いのさ。だけど…ああそうだね。本の都の入口にて、夜空にほど近い生ぬるい水の都を見上げてみると…何だか惹かれてしまってね…小さな旅をしてみたんだ。しがない渡り鳥のきまぐれさ」
「その惹かれたチョイスが、よりにもよってここなのか……普通はプールサイドに落ち着きそうなものだが…」
橋の外に足を投げ出しながら、すまし顔で両手で支えるギターを一撫で。股と股の間に手すりを挟んでいるので…万が一にも落ちることは無い…だけど何となく危なっかしい気もする。
…もしココにいるのが他の生徒なら、何らかの不自然さはあるが。コイツとなると、どう判断したものかと迷いが出てしまう。本当に、モノパン並みに神出鬼没なヤツである。
「…上には天があり、下には地がある。…常に人はそのどちらかに存在していて、殆どは地に足を付けている……勿論僕も例外では無いさ。だから、たまには上から下を見てみるのも…悪くない、そう思っただけよ」
「の割には…震えてないか?足」
「もしかし、て、高所、恐怖、症?」
「高い場所は、嫌いじゃ無いよ、ただ…そうだね……………ジャララン」
…音で誤魔化したな。この金網橋で立ち上がらない理由が何となく分かった気がした。横を見ると、流石の贄波も苦笑いをしている。俺は終始…悩ましい表情だが。
このままのんきに落合の相手をしている場合では無いと考えた俺は、ふぅ、と息を吐き……気持ちを改める。立ち上がろうとする気概が微塵も感じられない落合は置いとくとして…本来の目的である、図書館側に取り付けられた、“窓”へと移動する。
近づいて見てすぐ、その窓に不自然な点があることに気づいた。窓が少し開いていたのだ。普通なら、こんな辺境にある窓なんて、よっぽどのことが無い限り開いているハズ無いのに。まあ、落合が“風の流れを変えよう”とか言って開けたというのなら話は別だが……しかし未だ立ち上がることすらままならない様子を見ると、可能性は低そうだ。
「“やっぱり”…だな」
「図書館側、にくくりつけられてた、のと、おんな、じ…?」
窓を端にライトを当て、目当ての痕跡があるのか、観察をすると――やはりと、首肯の意味も込めて頭を縦に振る。この窓の縁にも…図書館側と同じような“ワイヤー”がくくりつけられていた…違う部分で言えば…図書館側よりも“短く”先っぽは切られてる位だ。
――このプール側と図書館側のワイヤー…まだ可能性の段階だが、事件当時このプールと図書館は繋がっていたのだ。
「ああ…僕もさっきね、窓から図書館を眺めてみようと思ったんだ……そしたら気づいてしまったよ…夜闇に光る、一筋の糸…これこそ、この事件を真実へと導く、鍵になると…僕はそう睨むよ」
「こっちを向いて言ってくれたら…少しは恰好はつくんだがな」
足を投げ出したまま微動だにしない落合は、こちら目を向けずそう一言。体勢はヘタレているが…意外なことに…落合も、このワイヤーの存在に気づいていたみたいだ。
「…?でも、今は何で、そこでじっと、してる、の?」
「気づいただけさ…この世で最も忌まわしい、恐怖の意識をね。これは僕1人の力では覆せない、強大なものさ」
「また回りくどいことを……」
「何が、そんなに怖い、の?」
「それよりもだよ。2人とも。そのワイヤー、僕は思うんだ…いや思い出すんだ。初々しく、そして新しい美しき品々の社交場をね……君達も、同じ思いを馳せたんじゃ無いかい?これも、短くも尊い、旅のおかげだね」
また無理矢理、煙に巻かれたような感じだ…だけど確かに、落合の言うとおり…ワイヤーと言えば美術館に飾られていた“あの道具”だ。
加えて、その道具を使った理由も何となく理解できる。きっと…森をまとも抜けることはできないからだ。棘が地面を覆っていて、エリア1のように通り抜けることが困難だから。
前者も後者も…どっちも重要な事実だ。
コトダマGET!!
【プールの窓につけられたワイヤー)
…天井にある図書館側の窓に、短めのワイヤーはくくりつけられていた。
【棘の森)
…エリア2の森の中は棘が地面を覆っており、まともに歩くことが出来ない。
「折木君、贄波さん…僕には、たった1つ夢とも言えない願いがあるんだ」
「……何だ?」
「それはね、この天に架かる橋から、大地へと羽を降ろすこと……そう、僕は当たり前に戻りたいのさ。君達のような当たり前の人間にね」
「“ここから降りるの手伝って”、てこと、かな?」
「落合検定一級の解答だな…」
…こんな調子でよく登って来れたな……。
俺は悩ましげな表情を深めつつも、驚くべきへっぴり腰な落合を介護し、下へと降りていく。そして俺達は次の目的地へと向け、プールを後にした。
* * *
【エリア2:美術館】
「……予想通り――使われてたか」
美術館へと足を踏み入れていた俺と贄波は、『モノパン七つ道具』が展示されたショーケースに目を向けそう言い放った。ショーケースに納められたはずの7つ、道具があったはずなのに。中にあるのは“5つ”。……何者かが、美術館の道具を2つ借りた、それを物語る確固たる証拠だった。
「借りられるのは確か2つまでだったから……他は手つかずみたいさね」
「話し合いでも、使わないって…お互い決め合っていましたのに……どうして」
「……あくまで口約束だったからな。冷たい事を言うと、互いに示し合わせた程度じゃあ、未然に犯行は防げない……というわけだな」
「その口ぶり……やっぱり“モノパンワイヤー"…それに“モノパワーハンド”も使われてたんだね。コソコソと物騒な道具を拝借するたあ、姑息なヤツさね。もっと堂々と“道具借りました!”……って言えばいいのにねえ」
「だった、ら、こんなに苦労しない、と思う、けど…?」
静かに憤る反町、それと対極に深く悲しむ小早川……。何と声を掛ければ良いの分からなかった俺達は、もう一度ショーケースの中を見てみる。飾られていた7つの道具のウチ…『どこでもワイヤー』と『モノパワーハンド』が…その姿を消していた。モノパワーハンドについては分からないが…どこでもワイヤーの痕跡は、プールと図書館で見つかった。
…口で言うだけじゃ無くて、絶対に使われないように見張りか何かを付けて、徹底しておくべきだったか……でも、そんなことは後の祭り。結局道具は鮫島殺害の何らかのトリックに利用されたのだ。
「使われた、のは、間違いなさそうだけ、ど。でも、肝心の道具のあり、かが、わからな、い、ね」
「ああ……1度、どこでもワイヤー、そしてモノパワーハンドの使い方をおさらいしておくことも含めて、そのことも記録しておこう…」
コトダマGET!!
【どこでもワイヤー)
…フックの付いたワイヤーを打ち出し、目的の場所に引っかけ、そしてワイヤーを引くことが出来る。さらに滑車が付属しているため、ワイヤーの片側から逆まで簡単に移動できる。しかし、道具そのものは行方不明。
【モノパワーハンド)
…てこの原理やら何やらを駆使し、どんな小柄な人であろうと、軽々と自分より重い物を運ぶことが出来る。しかし、道具そのものは行方不明。
コトダマUP DATE!!
【落ちていた滑車)
…図書館側に落ちていた滑車。美術館の展示品である、どこでもワイヤーに付属していた物と同じ。
「…それにしても、何で2人はここに…?多分、モノパンワイヤーが使われた形跡は、見てないはずだよな?」
「ああーいや、美術館に変な道具がいっぱいあったから、何かしらあるかもなーって感じで来たんだよ。要はただの当てずっぽうさね。…でも、案外アタシ達の山勘もバカにならないね。見事にビンゴだったよ…」
「はぁい!考えるのはとても苦手なので、その、えっと、けーせきとやらは見つけておりませんが…天性の山勘とやらで!犯人に繋がりそうな道筋は見えたような、そんな気がします!!!正直お先は真っ暗ですけど!」
な、成程…ただの運任せだったのか…。その行き当たりばったりさに苦笑いをする傍ら、反町は“よぉし!!”とパシッと自分の手のひらに拳を合わせながら意気込んだ声を上げる。
「梓葉!!この調子でドンドン捜査を進めていくよ!」
「はい!!!勿論ですとも!!でも折木さん達から聞いた、不審者の存在もありますから…此度の事件も、一筋縄ではいかない気がします!今にも知恵熱で頭が沸騰しそうです!しかしはい!誠心誠意、頑張らせていただきます!!」
「もう湯気、出て、る、気がする、けど……すごい、気概だ、ね?」
…確かに強気なのは良いが…何となく危なっかしい感じはする。…ていうかいつのまにか名前呼びになってるし。
「当たりまえさね!折角ここから出られるってはずだったってのに……まさか鮫島を殺してまで話を潰してくるなんて…怒りのボルテージも二乗さね!」
「…どうして外に出られるはずだったのに、どうしてコロシアイが発生してしまったんでしょうか…?」
「そう、だよね。今回のクロ、は……動機も分からない、まま、なんだよ、ね」
確かに…皆の言うことも重要な疑問の1つだ。今回の殺人によって何が起こったというと…この施設からの退去の話が無くなった……それが主な結果だ。
勿論反町のように怒りだって湧く……だけどそれ以上に、分からなかった。仲間を殺してでも、俺達の『強制退去』を阻む理由が。
「だけど…それを考えるとキリが無い…今は、“誰が”鮫島を殺したのか…それを第1に考えよう。……その繋がりで反町、小早川、1つ聞きたいことがあるんだが…良いか?」
「どうしたんだい?クロが分かった時用の組み伏せ方なら何時でも聞いて大丈夫さね!アレは結構初心者用だから…ちょいひ弱なアンタでも楽勝さね!」
「ああ!あの技ですね!!頭の弱い私でも習得するのに時間はかかりませんでしたから、折木さんでも安心して取り組めますよ!」
「……出来れば穏便に話を収めたい派閥だから…ノーと言わせて貰うよ。そうじゃなくて……お前達が、モノパンに呼ばれたときの話だ」
「モノパンにって……ああ!アナウンスが鳴ってすぐの話ですね!」
「…ああ。それで聞きたいのは、最初から図書館に居た俺達以外は、中央棟から図書館まで真っ直ぐに来てたんだよな?」
「ああそうさね。寝てたら急にあの大音量でアナウンスが流れてくるかねえ。びっくりして飛び起きたらほぼ全員、同時に部屋から出てきてたよ。そんで、しどろもどろになってるアタシ達の前にモノパンが現れたと思ったら、アタシ達を先導し始めてねえ」
「そしてあの図書館に行き着いたんですよね?……そのときは確か…雲居さん、ニコラスさん、折木さん、それと……鮫島さんが…いらっしゃいませんでした、はい」
「うん、私、もそのとき一緒、だった、けど。不自然な人は居なかった、かな?」
…まとめると、事件当時全員、ログハウスエリアか、図書館のどちらかに居た…というわけか。だけど、家事が起こってさらに死体が発見されたのはおよそ30分ほど前……アナウンスが鳴る前は図書館組の俺達以外の生徒は部屋の中に居た……。それだけ時間があれば、誰にもバレずにログハウスへ戻ることも…可能か?…少なくとも、アリバイらしいアリバイを持っている生徒は、俺と雲居くらい、だな。
口には出さないが…俺は何処かの誰かのような…機械的で、合理的な、そんな事を考えた。
コトダマGET!!
【アナウンス直後の生徒達)
…死体発見アナウンスが流れて、すぐを飛び起き。モノパンのアナウンスに従って図書館に移動した。その際、鮫島、ニコラス、雲居、折木以外は揃っていた。
* * *
【エリア1:炊事場エリア(第1倉庫)】
美術館での捜査と聞き込みを終えた俺と贄波は、黒いローブが有ったとされる倉庫の入口に手をかけた。普通であれば『夜時間には特定の施設に出入りは出来ない』この制限が適用されている時間帯……なのだが、モノパンの計らいにより今回だけ特例で解放されていた。
それ故に、倉庫の入口たる鉄の扉は、ガタンと重々しい音を立て、呆気なく口を開く。倉庫の中は、小さな電球が室内をぼんやりと照らされていた。
そこでは、さっき図書館から向かったばかりの長門、そして沼野が何やら集中した様子で作業をしていた。見たところ、数を数えたり、その数字を手元に紙に書いたりしている。
…すると、ドアの音に気づいたのか…2人は作業を中断し此方へとやって来た。
「あ~、折木くん~贄波ちゃ~ん。さっきぶり~~調査は順調~?」
「…順調と、言えば、順調、か、な?」
「2人とも…全然帰ってこない思ってたら、ココを調べてたのか……ちょっと心配したぞ」
「おお、それはすまなかったでござる……いやはや、最初はすぐにでも雲居殿へロープを届けようと息巻いてはいたのでござるが……少し気になることがござって…」
「気になる…こと?」
「なんかね~、図書館で~灯油のにおいがしたらしいよ~~」
「灯、油?……あっ、そういえば、何か変な匂いしてた、ね…」
「……死体と灰の匂いが凄くて、全然分からなかったな…」
「ふふふっ、鍛えてるでござるからなぁ、嗅覚には自信ありでござる。………まあそんな話は置いといて……焼けた図書館に入った当初、拙者その匂い、何処かで嗅いだことがある……そう思いながら、この倉庫に来てみて、ハッと匂いの正体は“灯油”だと気づいたのでござる!それでもしかしたら、火事が起こったのは…この倉庫に眠る“灯油”が原因なのではと勘ぐったのでござる。だから、用事を済ませがてらこのように長門殿と手分けして、何か無くなっている物はないか調査していたのでござる」
「灯油以外にも~無くなってるもはあるかな~ってね~……はぁ」
「……だいぶ地道な作業だな」
「なぁに、ここはそんなに広くは無いでござるし、長門殿と手分けして数えてる故、問題なしでござる!」
どうって事無い…とそんな風に胸を張る沼野。だけど付き合わされている隣の長門を見ると、何となく辟易している様に見える…。
「…それ、で、何か、無くなってる物は、あった、の?」
「ん~、やっぱり~結構持ってかれてるみたいでね~。ロープ1本~スタンガン1つにマッチ1箱~紙袋1つに~灯油タンクが数個~~運動用の靴1足~。それに~コスプレ用のローブが1着持ってかれていたんだよ~」
「……本当にだいぶ持ってかれてるな」
「夜時間に突入したのが数時間前だというのに、この持ち出され具合。そしてこれほどまで大量の物品の盗難に気づけなかったとは……沼野一生の不覚でござる…」
「前々から思ってたけど~沼野くんずっと不覚とり続けてるよね~、そんなに貯まってるんだったら~もう来世分もとっちゃってるんじゃない~?」
「長門殿~そんな身も蓋もないことを言ってはおしまいでござるよ…我が祖先たる皆々の衆に顔向けできないでござるよ……疫病神扱いは流石にイヤでござるよ…」
シクシクとこと垂れる沼野と、まぁまぁと励ます長門。その状況をハハハ…と苦く笑う傍らで、俺は今聞いた2人の証言を元に考えを巡らせていく。
…やはり今回の事件は、雲居の襲撃や、プールから図書館への死体の移動、そして図書館の大火事……それらの犯行を行うための道具がこの倉庫と美術館で収集されている……。一体それらが何に使われたかは、具体的には説明できないが……少なくともこれは夜時間に入る前に行われていた。率直に言って、かなり綿密に練られた計画殺人で……確実に衝動殺人ではないことは分かった。
コトダマGET!!
【倉庫の状態)
…ロープ1本、スタンガン1つ、マッチ、紙袋1つ、灯油タンクが数個、運動用の靴が1組、コスプレ用の黒いローブが1着持ち出されていた模様。
簡単にだが、倉庫から持ち出された道具を全て書き記した俺は、1つ道中で気になっていたことを今も励まし合う2人に聞いてみる。
「…そういえば……捜査中ずっと水無月の姿が見えなかったんだが…どこに行ったか心当たりはないか?」
鮫島が死んだと聞かされた際、古家と同様にかなりショックを受けた様子だったからな。それなのに、未だに一切姿が見えないとなると、どうしても心配になってしまう。そう思って聞いてみたのだが…2人はうーんと、芳しくないような声を上げる。
「ん~~?そうだな~、水無月さん捜査が始まってすぐに~どっかに行っちゃったから~~私は分かんないかな~?」
「………そういえば、この倉庫に来る前に遠目からでござるが…ログハウスエリアの方に向かったのが、見えたような気がするでござる……が。なんせ遠目であった故、ちょいと不明瞭な目撃談でござるな」
「いや、それだけでも充分だ…。しかし…ログハウスエリアか」
「一番最初の事件、のことも考える、と、もしかしたら、鮫島くん、の、部屋…かもしれない、ね?」
「ああ…被害者の部屋を調べるべき…知りもしないノウハウを俺に教えるときも、そんなことを言ってたからな……また同じように、何か在るって思ったのかもしれないな」
「そうと決まれば、そろそろ拙者らは倉庫内の確認作業を再開させてもらうでござる。もしまた何かあった、是非頼って欲しいでござる」
「まだ持ち出されてるものがあったら~報告するね~」
「うん、ありがとう。ここ、よろしく、ね?」
そう言って、会話を終えた長門と沼野は作業を再開する。俺と贄波はそんな2人を背にし……新たな目的地である鮫島の部屋へと足を向け、倉庫を後にした。
* * *
【エリア1:鮫島 丈ノ介の部屋】
俺達は何の波乱も無く、鮫島の部屋の前へと無事たどり着く。初めは、何処かしかで水無月が駆け回っているのかと内心期待して見たのだが…家の周りを見渡しても、水無月の部屋を見つめても、1つとして水無月の影は見えなかった。
――何かあったんじゃないか…?
…ふと、そんな不安が胸中をよぎった。
もしかしたら、部屋の中に居るかもしれない…。そう考えながら俺は、扉に手をかけた。小さな力で、扉はあっけないほど簡単に開いてしまう。普通であれば、鍵がかかっているはずなのに。生前の鮫島が鍵をかけ忘れていたのか…それとも………俺達は、ゆっくりとドアの枠をくぐり、部屋の中へと足を踏み入れ、パチリと、部屋の電気を点けた。
そこには――
ベッドの上で膝を抱え、床の一点を見つめ続ける…水無月カルタの姿があった。
「あっ…やっほー、公平くん、司ちゃん」
体育座りの姿勢のまま、いつもよりも少ない言葉でプラプラと手を横に振る。表情こそ笑顔だが、見るからに、無理をしているようで、かろうじて元気を振りまいているように見えた。
「水無月、鮫島の部屋の中に居たのか…」
「…全然、見当たらない、から、心配した、よ?」
「あははーごめんねー。何か外にいたくなくてさ…さっきモノパンに開けて貰って、部屋に入ってたんだー…」
…一応、ここは鮫島の部屋のハズなのだが。どうにも…そんな事を言えるような雰囲気では無く……俺達は黙ったまま水無月を見つめる。彼女は、月明かりが漏れる窓に目を向け、そして細めながら…つぶやくような声で、話し始めた。
「でもさ、ビックリしちゃったよね……昨日まで仲良しこよしってやってた鮫島くんが…今はもう居ないんだなんてさ」
「……ああ。俺だって…信じられない」
「本当に……信じられないよね」
一番とまではいかないが、比較的多く交流して、まるで兄妹のように見えた2人だった。だからこそ、今回の事件は、古家と同じくらい、ショックを受けている。そう思えるくらい、とても塞ぎ込んでいるように感じた。
「実はさ、式ちゃんが死んじゃったときも同じ感じだったんだ。昨日まで息をしてた人が、次の日には冷たくなってる…そのときも、現実が受け入れられなくてさ…あのときは、公平くんと一緒に捜査して、色々テンション上げて、誤魔化してたんだ………」
“でも…”と翻すような言葉で繋げていく。
「1回目はどうにかなったけどさ……目の前で、誰なのか分かんないくらい酷い鮫島くんの姿を見てさ……さすがに2回目は……ちょっとしんどいなーって思っちゃった……」
何処かの誰かに馳せるように、水無月は宙を見上げる。
「それなのに…古家くんは凄いよ…あんな風に、鮫島くんが死んじゃったって…受け入れきれなくても…あとで受け入れようって…羨ましいくらい強い覚悟があって」
「…あれは、アイツが人より少しだけ強かったんだ。うらやましがる必要なんて無い…」
人に言えたことでは無いのに…ニコラスに背中を見て、真実へと立ち向かう後ろ姿を見て……羨望を抱いていたはずなのに。自分に言い聞かせるように、俺はそんな慰めの言葉を漏らした。
「へへ、そうだよね…でもね、あれを聞いちゃったらさ……何かちょっと不甲斐ないなぁ…って思っちゃってさ……捜査が始まる前に、つい逃げ出しちゃった」
あの耐えがたい光景を思い出したのか……少し声が涙ぐんでいるような声を漏らす。誰だって…あの光景をしんどくない、なんて言えるはずは無い……水無月の感性は、間違ってなんか無い。
「でも、どうし、て…ここ、に?」
「…最初はね、自分の部屋に戻ろうって思ってたんだけどさ………心の中で、それじゃあダメだって、カルタがカルタにそう言っているような気がしたの…………せめて……」
――ちゃんと受け入れたほうが良い、言われた気がしたの。水無月は、静かにそう言葉を紡いだ。
「……つらくなかったのか?」
「うん。すっごくきつかったよ…。ここに来たら…大切になれそうな人達が、友達になれた人達が…ドンドンドンドン死んでいってるんだって再確認させられたみたいでさ……すごく悲しくて、もうどうにかなっちゃいそうだった………でもね、悲しいはずなのに…涙を出ないの。何か、可笑しいよね…」
バツの悪そうに水無月はケラケラと笑った。――何故涙を流せないのか……それはきっと、涙を流せば…それが現実だって、わかってしまうから。友達を無くした現実を受け入れてしまっていることと、同義だったから。
「…でもね…分かった。やっと分かったの――鮫島くんはもう居ない。カルタ達の中の誰かに殺されたんだって」
「水無月……」
「水無月、さん」
水無月は答えを得たように、そうつぶやいた。その通りだ…俺達の中の誰かに鮫島は殺されたのだ。もしかしたら、あの古家が犯人の可能性すらある。そんな極限の疑い合いの中に、俺達は身を投じているのだ。…俺は水無月の言葉を聞き…改めて、その事を認識した。
「だからカルタ、古家くんみたいにはいかないけど、頑張ってみることにしたの!」
「………ああ!その調子で行こう!」
「頑張ろう、ね!」
「ありがとう、2人とも!……よし!!!ネガティブタイム終わり!!何か元気出てきたから、ちょっと遅めかもしれないけど、ココからはガンガン行くよ!!!公平くんも、司ちゃんもこの超高校級の自称探偵、水無月カルタの活躍見守っててね!」
水無月はそう言うと…元気よくベッドの上で立ち上がり、ぴょんと、床に足を付ける。…まだ無理をしているようなきらいは見えるが…それでも、俺達に心の内を漏らしたことで、さっきよりはマシなように見えた。だからこそ、俺達は彼女の切り替えを見て、安堵したように胸をなで下ろした。
「それじゃあ気を取り直して、2人に朗報!ねぇねぇ、これ見てみて!!」
俺と贄波が互いを見合いながら笑みを浮かべていると、水無月は、勢いを持って声を出す。そんな彼女の手元にはなにか手紙のような物が握られていた。
「それは……動機の手紙か?」
「いやーあの手紙とはまた別みたいなんだよな~、中身を見てみれば分かるのだよYOU!」
「ふふっ、何か、調子、出てきた、ね?それ、で、どんな事が、書いてあった、の?」
「……その前に1つお願いがあるんだけど…これの中身は、出来れば裁判前に他言しないでね?ちょーっと混乱を招きそうだからさ…」
「……?ああ、構わないが」
何か意味深な前置きを並べる水無月に疑問符を浮かべながらも頷く。その反応に、彼女は“ありがと”と一言添え、手紙を開く。俺達は頭を突き合わせるように中身をのぞき込むと、俺と贄波はその内容に目を見開いた。
『
本日の夜10時半、図書館に来てください。
相談したいことがあります。
古家』
「これ、って…古家、くんから、の、手紙?」
「いや-どうなんだろーねー。筆跡が分からないように、定規でカクカクに文字が書かれてるから、断定まではできない、かな?」
「鮫島の部屋にあったってことは…確実に鮫島本人へ手渡された手紙と考えられるな……」
しかし、手紙の差出人が古家?どういうことだ……いやでも、まさか…?…とりあえず、今は余計な先入観は消して…中身だけでもメモに残しておこう。
「水無月……もしものために、その手紙はお前が預かってておいてくれないか?」
「任されたー!!」
…それにしても、手紙に書かれていた呼び出し時間が10時半……今まで手に入れた証拠と重ね合わせてみると…丁度ニコラスが気絶させられた時間と、俺達がエリア2に来た時間の間……もしかしたら、鮫島がいつ殺されたのか…分かるかもしれないな。
コトダマGET!!
【鮫島の持っていた手紙)
…『本日の夜10時半、図書館に来てください。相談したいことがあります 古家』と書かれた筆跡不明の手紙が鮫島のポケットに入っていた。
『キーンコーンカーンコーン』
『えー、えー、マイクテス、マイクテス――は最初にやったから。……キミタチ!学級裁判場の準備が整いましタ!!』
『今から急ピッチで捜査を進めても、年貢の納め時、もうココで終了でス!』
『泣いて笑う、笑って泣く、それができるのはまた裁判の後…狂騒と狂乱の知恵比べを制した者のみが味わえるのでス』
『…だから、今のうちに目一杯泣いておくと、後腐れ無く裁判に挑めますヨ?』
『なーんて、そんな事は冗談としテ…』
『とにかく…学級裁判のお時間ダー!!』
『集合場所は、前と同じ中央棟エリア、赤い扉の前。キミタチ全員が集合し次第、扉は開きますので…押さない、駆けない、喋らない、…いわゆる“おかし”を肝に命じつつお入り下さいまセ…ではでは、お待ちしておりまス~』
ログハウスの中に居るというのに、イヤに響くアナウンスが捜査の終了を告げた。ただ音が響いただけなのに、とても気持ちが引き締まるような、血が冷たくなるような、そんな感覚が体中を走った。
そんなビリビリとした気持ちは、俺だけじゃ無く、勿論側に居た贄波、そして水無月も、同じように感じているはずだ……その表情からも大舞台の本番直前のような、強い緊張感を放っていた。
「始まる、みたい、だね……あの、裁判が」
「…何だか、いよいよ始まると思うと、少し気が重くなってくるな……」
「そんなに気負う必要無し!されど我らに逃げ場無し!ただ暗闇の荒野を突き進み、頑張る他無し!ファイト、オー!!」
「…折木くん、は、1人じゃない……?皆が、ついてる、から、大丈夫……きっとね?」
「……ああ、そうだな……ファイトの気持ちで、挑んでいこう。そして絶対に、鮫島を殺した犯人を見つけよう。あのモノパンが待つ、裁判場で」
「……うん。行こ、う」
「よぉし!レッツゴー皆川!!」
「………懐かしいな」
俺達3人は、互いに発破を掛け合いながら、鮫島のログハウスを後にする。そして、赤い扉が待つ、中央棟へと、足を移動させていった。
* * *
【中央棟】
アナウンスが流れてしばらく、第1の事件と同じように…中央棟の赤い扉の前に生徒達は集まっていた。俺と水無月、贄波を最後に俺達超高校級の生徒は再び集結した。…たった1人、今回の事件の被害者である鮫島丈ノ介を除いて。
「やぁ!遅かったじゃあないか、ミスター折木!そしてミス贄波、ミス水無月!あまりにも遅かったもんだから、ミス雲居のお下げをもう1つ増やしてみようかと考えていた所だよ!キミ!」
そして鮫島殺しの容疑者たるニコラスは、あまりにもあっけらかんとしており、肩からずるっとこけてしまいそうな場違いな明るさを放っていた。隣の牽引者のような佇まいの雲居は、もう悟りの境地に達しているのか、完全無視で片手で読めるサイズの文庫本を読んでいた。…ちなみにタイトルは『猿でも分かるバカの黙らせ方』…であった。
しかしそんなニコラスの手元を見てみると、両手には縄跳び用の紐が結ばれていた。縄跳びの握り部分が絶妙に邪魔そうである。
ていうか…本当に拘束していたのか、しかも結構きつめに縛られているな。俺、少し青くなりかけているニコラスの手首を見ながら、そう思った。
「でも拘束用の紐が…縄跳びって…何で?」
「いや~ロープが盗まれていた故、残念ながら小学校クオリティの縄跳び以外ロープの代用にできそうな代物が見つからなかったのござるよ~」
「ええっと~、ものすごく切れやすそうな毛糸に~、願い事が叶えば切れちゃうミサンガに~、マジック用のすり抜けロープとかだったかな~」
「すごく、ピンポイント、な、物しか、ない、ね…」
「でもさー、拘束するだけなら結束バンドとかでも良かったんじゃない?あれ見た目以上に頑丈だし…」
「「………………・やっちまった~(でござる)」」
「まあ別に良いんじゃ無いですか?最終的には頭も中身もキンキラキンにおバカなコイツを拘束できれば、それで充分です」
「いやぁ、縛るにしても少々限度がある気がすると思うんだよ!!素直な感想を言うと、今にも血が止まりそうんなんだよ!キミィ!」
「だ、大丈夫なのかねぇ!?何か顔が青色になってないかねぇ!?」
「…ふっ、安心しろ。この程度で死ぬほど人間はやわではない……」
「ドクター雨竜ぅ!その推量はボクの人間的限界を考えてくれているのかな!」
縄跳びを手首に巻いたり、本を読んだり、頭を抱えていたり、血が止まりかけていたり…およそ裁判前とは思えない緊張感の無さに、俺は少しばかり面食らう。水無月がさっき行ったように、気負い過ぎなのだろうか……?
「夜を駆けるは、卦体なる影……消え去るは、暗闇をうごめく影の正体……そして炎上したるは我が級友……とても、とても風変わりな物語だね。…これなら、何の学も持たない僕でも、エッセイの1つ位は、書ける予感がするよ」
「……」ボン
「落合!アンタ梓葉の頭の弱さを理解してないのかい!?見てみな!頭からネジが五本くらい吹っ飛んだみたいな顔になっちゃってるじゃないか!」
「……いや、どんな顔だよ」
「…大丈夫、大丈夫です。これもまた勉強の一環、国語の学習だと思えば…何の問題もありません!!」
「……落合に享受を受けたら。確実に成績下がる」
「…同感だな」
落合のあのブレ無さとマイペースさは、まさに天性の物だろう。だけど……それにツッコミを入れる風切も、シートを広げて銃の整備をしているので……コイツもコイツでブレないな…と思ってしまう。…扉が開いたら、どうするんだ…?片付け間に合うのか?
そんな密かな心配を抱えていると…突然、無言を貫いていた赤い扉はガコンと音を立てた。俺達は心臓がバクンと揺れたような感覚が走った。見ると、赤い扉は地獄の入口かのように、重々しくも、恐ろしく、口を開いていた。俺はゴクリと、唾を飲み込んだ。
「……アナウンスでも宣っていたなぁ……勝手に入って、勝手に降りろ…と。ふっ、良いだろう、その誘い、この超高校級の観測者たるワタシが乗ってやるともぉ……あの世で後悔するのだなぁ」
「僕らに手渡されるのはこの世からへの出発切符か、それとも往復券か……」
「…1回あの世に行ってるじゃないか。まっ、あの世に行ってくる気概じゃないと、この学級裁判は乗り越えられないってなら……同感さね」
赤い扉の中に吸い込まれるように、生徒達は続々と入っていく。各々が各々の覚悟のような言葉を口にしながら。
「…とうとう、始まってしまうんですね………すー、はー、すー、はー……はい!気合いを出したり入れたりしてみました!!もう大丈夫です!!」
「いや最後気合い出しちゃってるんだよねぇ…」
「そんな態々しなくても、気合いチャージ率はすでにマックス!!そして足踏は校則違反の素…臆せず進めえぇ!!だね!」
「はぁ…皆そんなやる気になっちゃってねぇ……怖じ気づいちゃうんだよねぇ…あ~困った困った…本当に参っちゃうんだよねぇ……でも、鮫島君、見てて欲しいんだよねぇ……必ず敵は討つんだよねぇ…」
1人、また1人と、赤い扉の向こう側へと足を踏み入れていく。
「……緊張で疲れて、眠くなってきた……裁判場って、居眠りオッケーだっけ?」
「こんな場面でそんなこと言えるなんて~もう肝しか座ってないよ~」
「いやぁそれは判断しかねるでござるが……もし拙者がモノパンであったなら……槍を飛ばすかもしれないでござる」
「はぁ、居眠りできないのか……はぁ、余計怠い」
「早く終わって欲しいのは。皆一緒だよ~でも、深海に潜るような気持ちで~気楽にがんばろ~」
「気楽に頑張れる環境に聞こえないのでござるが……ううむ、人の気持ちは奥が深い……深海だけに…」
「100点満点中~2.5点~」
未だにペースを崩さない誰も彼も。その裏に、微弱な心のブレが見えた。ただ扉の中に入るだけなのに、その先にある裁判場が、心の振れ幅を大きくさせているのかもしれない。
「ほらっ!!キビキビ歩くです。血が止まっても、体は動かしてもらうですよ!」
「人として無茶な事を要求しくるじゃないかなぁ!ミス雲居!せめて手元の縄を少しばかり緩めるくらい…」
「ほざくなです!」ゲシッ
「……何か、楽しそう、だ、ね?」
「アレを楽しそうと、表現するお前くらいだよ…」
「ふふ、冗談、だ、よ。ちょっと、くらい、肩の力は、抜け、た、かな?」
「……少しだけな。……すまんな」
「さっき、も言った、けど…。折木くん、は、1人じゃない、よ。だから、大丈夫。……さ、行こ?」
俺もまた贄波に連れられ、赤い扉の中へと吸い込まれていく。ほんの少し和らいだ不安感も、この中に入って、またぶり返してきたように、増していく。そんな気がした。
天井に備え付けられた古びた照明にじっとりとした照らされたエレベーター内。前よりも少ない全員が入り切ると同時に――赤い扉は口を閉じた。
――そしてガタンと体を揺らし、エレベーターは動き出した
* * *
――――俺達13人を乗せた鉄の箱は、下へと下がり続ける
――――留まることを知らないように、イヤくらい滑らかに、落ちていく
最初に乗ったときと違って……明らかに沈黙が多くなったような気がした。声がしても…ヒソヒソと、何かを話す声のみが、部屋の中に溶けるだけ。
…まあ、話し声の他にも、ぐおおおおぉぉ…と呻いているような声が微かに聞こえるが…多分これは雨竜だ…恐らくエレベーターの小さな揺れに酔っているのだろう…。誰かが背中をさすっている音も混じって聞こえてくる。
――――それを抜きにしても。とても静かだった。
賑やかの権化みたいな鮫島がいなくなった。そのぽっかりと空いてしまった穴は、代えがたく、とても誰かにできるような、ものじゃ無かった。この状況は、その居ないというもしもを実現させ、致命的な欠点を浮き彫りにしていた。心の中でそう何度も思ってしまうほど、鮫島がいなくなったという弊害は、予想以上に大きかったのだ。
俺は徐にメモを開いた。この気まずい空間の中で、何かやっておかないと、どうにも落ち着かなかったから……俺は思い出したように、エリア2の中央分岐点で見つけた足跡の数々。それを数え始めた。
どこからどこへ、メモに残した足跡の痕跡行く末をまとめていく。すぐに理解できるよう、地図なんかも描いて。時々大きめにガタンと揺れる不安定な足場の中で、ペンを走らせていった。
コトダマGET!!
【ぬかるみの足跡)
・美術館から温泉への足跡⇒1種類
・温泉から美術館への足跡⇒3種類
・プールから図書館への足跡⇒2種類
・中央棟から図書館への足跡⇒沢山
…ざっと、こんなものか。
エレベーターが揺れる音をBGMに、俺は考えの整理を終えた。これが、何か決定打になってくれるような、そんあ証拠になってくれることを祈って。
すると、チン…と音が部屋に響いた。同時に、エレベーターが動きを止めた。軽い重力が、肩にのしかかる。
――――そして、閉まるときよりもゆっくりとした動作で、扉は開いた。
* * *
――――俺達の目の間に、再び裁判場が姿を現した。
見ると、モノパンは待ってましたと言わんばかりに、小さな玉座で腰を下ろしていた。
俺達は言葉を交わさず…黙々と定位置へとついていく。その途中、俺は、周りに目を向けてみる井。
入ってきた時に一目見て分かった……一番最初の裁判と現在で…少しだけ趣が変わっていることに。…それは全部で2点。
1つは、裁判場を囲うように反り立つ壁の模様。最初の学級裁判の時は…裁判の傍聴席のような壁であったが…今回は雲が節々にちりばめられた大空がモチーフとなっていた。
……もしや、今回の被害者である鮫島にちなんで、こんな模様にしているのだろうか…?だとしたら、趣味が悪いとしか言い様がない。
もう1点は…遺影の数だった。最初の時は、朝衣の遺影だけが立てられていたのに…今回は、“2つ”遺影が追加されていた。
1枚は、第1の事件のクロである陽炎坂。彼の遺影は、×印ではなく…まるで火葬されているような、火の絵が、取り囲むように描かれていた。
そしてもう1枚…今回の被害者である…“鮫島の遺影”。彼の写真には×印は描かれているが…よく見てみると『飛行機』であった。
とことんまで、こだわり抜いたような陰湿さを感じた。自然と、眉間に皺が寄る。
俺は目をつむり、息を吐き、すさみそうな心を落ち着かせる。そしてゆっくりと目を開き…真っ直ぐと、前を見据える。
――この場に踏み入れることなんて、二度と無いと思っていた
――いや、二度と踏み入れたくないと思っていた
――だけど………またこの場所に立ってしまっている
『超高校級のパイロット』“鮫島 丈ノ介”
パイロットでありながら、空気を読めない、いつもよく分からないボケを連発する、デリカシーもへったくれもない……実に読めないヤツだった………。だけど、アイツは紛れもなく…俺のかけがえのない“友達”だった。古家や水無月が心から悲しんでいたのと同じように、俺も大切な“友”を失い、悲しみに暮れているのだ。
――――その友を殺したクロが…この中に居る
それぞれが互いの視線を交差させる。…俺と同じように、落ち着き払おうと深呼吸をする者、目をつむり瞑想をする者、首に掛けた十字架のペンダントを握りしめる者。種類は様々。
もちろん、慣れないと…不安げな表情をする者もいる。ハッキリ言って…これが正常だ。こんな気味の悪い、仲間ウチでの疑い合いなんて、慣れている方が異常だ…
だけど、これには命がかかっているのだ。
そんな甘い考えがもたらすのは…
――“死”それだけだ。
――俺は覚悟の炎を胸に宿す。
――たった1つの真実を、見つけ出すための、そして向け合うための覚悟を
――そして、今
――己の生死をかけた、極限の疑い合いが…再び幕を開けようとしていた
・コトダマ一覧
【モノパンファイル Ver2)
…被害者:【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)
死体発見現場はエリア2『図書館』。死体発見時刻はAM:0:35。
死亡推定時刻、死因共に体が殆ど焼けてしまっているため不明。毒物などの薬品類を摂取した痕跡は無いとのこと。
【雲居の証言)
…図書館へ借りた本を返そうとエリア2を訪れた際、後頭部を誰かにぶたれ気絶してしまった。殴った人物は、紙袋を被っており、判別不明。プールにて首を吊っていた人物と同一の可能性が高い。
【紙袋を被った誰か)
…雲居を襲撃し、プールへと逃げ込んだ不審者。紙袋とローブを身につけており、誰なのかは不明。プールにて首を吊っていたが…天井に移動した時には、消えてしまっていた。
【図書館放火事件)
…プールに居た際に目撃。扉を開ける際、ニコラスが中から現れた。そのときにはもう、かなり燃え進んでいた。モノパンによる30分間の鎮火活動により、終息。
【図書館の天窓につけられたフックとワイヤー)
…天窓の縁にフックが引っかかっており、尻には先の切れたワイヤーがくくりつけられていた。引っ張らなければならないほど、かなりの長さがあった。
【落ちていた滑車)
…図書館側に落ちていた滑車。美術館の展示品である、どこでもワイヤーに付属していた物と同じ。
【ニコラスの証言)
…7時の夕飯後、日々の日課として図書館で2時間ほど本を読んでいると、急にスタンガンか何かを押しつけられ、気絶してしまった。目が覚めると、目の前は火の海になっており、急いで外に出たとのこと。
【雨竜の検死結果①)
…死体の体勢から、死因は焼死では無い。
【雨竜の検死結果②)
…首元の焼けていない皮膚に、ヒモのような物で絞められた痕跡があった。絞殺の可能性大。
【黒いローブ)
…雲居を襲った不審者が着ていたと思われる黒いローブ。倉庫に同じような物があったらしい。
【風切の違和感)
…昨日と、畑と水田の位置が違う…気がするらしい。
【水やりシステム)
…AM.7:00、PM.11:00に畑と水田に水を散布するよう設定されている。水をやった直後は、周りの道が少しぬかるむ。
【プールの窓につけられたワイヤー)
…天井にある図書館側の窓に、短めのワイヤーはくくりつけられていた。
【棘の森)
…エリア2の森の中は棘が地面を覆っており、まともに歩くことが出来ない。
【どこでもワイヤー)
…フックの付いたワイヤーを打ち出し、目的の場所に引っかけ、そしてワイヤーを引くことが出来る。さらに滑車が付属しているため、ワイヤーの片側から逆まで簡単に移動できる。しかし、道具そのものは行方不明。
【モノパワーハンド)
…てこの原理やら何やらを駆使し、どんな小柄な人であろうと、軽々と自分より重い物を運ぶことが出来る。しかし、道具そのものは行方不明。
【アナウンス直後の生徒達)
…死体発見アナウンスが流れて、すぐを飛び起き。モノパンのアナウンスに従って図書館に移動した。その際、鮫島、ニコラス、雲居、折木以外は揃っていた。
【倉庫の状態)
…ロープ1本、スタンガン1つ、マッチ、紙袋1つ、灯油タンクが数個、運動用の靴が1組、コスプレ用の黒いローブが1着持ち出されていた模様。
【鮫島の持っていた手紙)
…『本日の夜10時半、図書館に来てください。相談したいことがあります 古家』と書かれた筆跡不明の手紙が鮫島のポケットに入っていた。
【ぬかるみの足跡)
・美術館から温泉への足跡⇒1種類
・温泉から美術館への足跡⇒3種類
・プールから図書館への足跡⇒2種類
・中央棟から図書館への足跡⇒沢山
『生き残りメンバー:残り13人』
【超高校級の特待生】⇒【超高校級の不幸?】折木 公平(おれき こうへい)
【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)
【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)
【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)
【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)
【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)
【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)
【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)
【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)
【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)
【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)
【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)
【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)
『死亡者:計3人』
【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)
【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)
【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)
お疲れさまです。水鳥ばんちょです。
捜査編です。前後編は無いので、ちょい長めです。
推理難易度で言ったら、1章よりは簡単だと思います。
※2022.2.1 致命的なミスがあったので、証拠品リストに『モノパワーハンド』を追加致しました。申し訳ありません。
↓以下コラム
○頭の良さ(学業面での成績)
※高校生なんで、五科目を五段階評価(担任の方針で、トップの部分には6を付けてる)…そしてその担任の先生からコメント
・折木 公平(おれき こうへい)
国語:5
数学:3
社会:4
理科:2
英語:3
担任からのコメント……国語と社会などの文系科目は申し分ないですが、理数系ももう少し頑張りましょう。あと関係ないことですが、実習の時に破壊したパソコン(時価)は学園が負担しましたので、ちゃんとお礼を言いましょう。
・陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)
国語:3
数学:6(トップ)
社会:3
理科:5
英語:4
担任からのコメント……普段の授業からは考えつかないほど好成績(とくに理数系)でした。しかしテスト中の、地鳴りを思わせる貧乏揺すりは止めましょう。普通にうるさいです。
・鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)
国語:4
数学:2
社会:3
理科:2
英語:2
担任からのコメント……テストを開始してすぐ、用紙を前に鉛筆を転がし続ける作業…それは知識ではなくギャンブルと言います。後、授業中にうけをを狙うのは咎めませんが…テストで珍回答を量産しようとするのは流石に死罪です。…先生的には国語の問3の解答が好きでした。
・沼野 浮草(ぬまの うきくさ)
国語:3
数学:2
社会:1
理科:4
英語:1
担任からのコメント……シャーペンや鉛筆では無く、毛筆と墨でテストを受けたがために、誤答を消せず、だいぶ点数を落としましたね。まあそれを加味しても、勉強不足でしたけどね(笑)。
・古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)
国語:5
数学:3
社会:4
理科:3
英語:4
担任からのコメント……文系科目は流石ですね。両隣の落合君と鮫島君の妨害がありながら、よく頑張りました。その調子で精進していきましょう。
・雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)
国語:4
数学:5
社会:4
理科:6(トップ)
英語:5
担任からのコメント……パーフェクトです。理科についてはもう言うこと無しです。しかし問題で求められている以上の解答はなるべく控えましょう。他人が分かりやすいように解答するのもまた、勉強です。でないと、先生が知識不足で泣きたくなります。
・落合 隼人(おちあい はやと)
国語:2
数学:1
社会:1
理科:1
英語:2
担任からのコメント……問題外です。もっと頑張りましょう。ていうかまともに解答しましょう。国語は比較的解答率は高かったのですが…独自解釈が過ぎます。でも一部納得できる部分もあったため、そこはプラス加点しておきました。
・ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)
国語:4
数学:5
社会:5
理科:5
英語:6(トップ)
担任からのコメント……完璧です。英語だけで無く、総合点数もトップでした。しかし、勝手に新しい答えを生み出すのは止めて下さい。対応する先生側も大変になるので、個人的に持ち帰って下さい。
・水無月 カルタ(みなづき かるた)
国語:1
数学:2
社会:3
理科:4
英語:5
担任からのコメント……テストの点数で遊ぶのは止めて下さい。誤答するよりもたちが悪いです。そして白紙の部分でチェス・プロブレム(詰めチェス)をするのは止めて下さい。解いてみたくなりますので……実際解いてみましたが、結構面白かったです。
・小早川 梓葉(こばやかわ あずは)
国語:1
数学:1
社会:1
理科:1
英語:1
担任からのコメント……義務教育の限界を感じました。流石の先生も匙を投げかけましたが、勉強しようとする気概は素晴らしいので、できうる範囲で協力します。話は逸れますが…前の調理実習で作った和菓子はとても美味しかったので…今度、家内用に作っていただけないでしょうか?
雲居 蛍(くもい ほたる)
国語:6(トップ)
数学:3
社会:5
理科:3
英語:4
担任からのコメント……国語については流石の一言です。図書委員万歳。しかし理数系は空白が少し目立っていました。…分からない部分も分からないなりに考えてみるのもまた、勉強の一環です。
・反町 素直(そりまち すなお)
国語:4
数学:1
社会:3
理科:2
英語:1
担任からのコメント……国語に関しては問題無いのですが、全体的には怪しい成績です。ざっくりとではなく、細かい部分もおさらいしておきましょう。そして点数が悪かったからと言って、舎弟らしき人達を先生の車の側でたむろさせるのは止めて下さい。正直言って、ちびります。
・風切 柊子(かざきり しゅうこ)
国語:2
数学:1
社会:2
理科:2
英語:1
担任からのコメント……テスト開始数秒で居眠りをし出す生徒はあなたが初めてです。授業中も休み時間中も居眠りをしていて…テストだけで無く普段の過ごし方にも問題アリです。背中のライフルも泣いています。
・長門 凛音(ながと りんね)
国語:3
数学:2
社会:2
理科:4
英語:2
担任からのコメント……時間不足で解答しきれなかった、という印象です。立ち止まって考えることは確かに大切ですが…時には問題を寝かせて、次の問題に取り組んでみるのも手です。すこぶる成績が悪いというわけでは無いので…これからも頑張って下さい。
・朝衣 式(あさい しき)
国語:5
数学:1
社会:6(トップ)
理科:5
英語:5
担任からのコメント……社会については流石はジャーナリストです。完璧以上です。しかし、数学で名前の“記入忘れ”が致命的でした。解答もほぼ満点でしたし…最後の詰めが甘かったですね。名前を書いていれば…総合得点もトップでした。残念です。
・贄波 司(にえなみ つかさ)
国語:5
数学:4
社会:4
理科:5
英語:4
担任からのコメント……まともに受けて頂けること、そして高得点。これ以上に喜ぶべき事はありません。周りが地獄絵図の中、決して揺るがずに黙々とテストと授業を受ける姿勢…先生も見習わせて頂きます。
○ざっくりまとめるとこんな感じ
雨竜≧朝衣=ニコラス>>水無月>贄波=陽炎坂>雲居>折木=古家>長門>反町>鮫島=沼野>風切=(越えられない壁)>>落合≧小早川