ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~ 作:水鳥ばんちょ
【学級裁判】
【開廷】
「えーではでは、改めて、学級裁判の簡単な説明から始めていきましょウ!」
「学級裁判では『誰が犯人か?』を議論し、その結果は、キミタチの投票により決定されまス」
「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおキ。ですが…もし間違った人物をクロとした場合は…」
「クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけがこの施設から出る『権利』が与えられまス!」
モノパンは最初の裁判と同じように、淡々と、学級裁判のルールを復唱する。改めて流れを聞いた俺達はそのあきれ果てる程の趣味の悪さに対し、厳しく表情を歪めていた。
「うぅ……何度聞いても、残酷すぎるルールです……!皆さんと疑いあってさらには、犯人を吊し上げろだなんて……」
「今更って感じだけど~。改めて聞くと~、この裁判作った人って~結構良い性格してるよね~。目をつぶって開けてみたら~、終わっていて欲しいくらい~イヤでイヤで仕方ないよ~」
「ふん…そんなの前回の裁判でイヤって程分からされたことですし、味わってきたんです………ここまで来たからには、割り切るですよ」
「真実と嘘……疑いと信頼……ああ、そうだとも。この記憶こそが、僕達の足を進めてくれる、光りとなってくれるのさ」
「……前向きな感じだけは伝わる」
「最初の裁判から時間も空いたので、すっかり平和ボケしてるかと思いましたけド。どうやらそんな心配は杞憂だったみたいですネ…くぷぷぷぷぷ……コロシアイを主催した者としては、嬉しい限りでス」
「かーっ!忌々しい位のしたり顔さね!手を出しちゃいけないルールが無かったら真っ先に粉々にしてやるってのに…」
「無駄ですヨ、ワタクシこそがルール…ルールこそがワタクシ。あるいは概念、あるいは真理、あるいは絶望……手を出すことすら不可能とい謳われた超常的存在なのでス……自分の席で勝手に苛立っていて下さイ」
「そんな居るか居ないかのイマジナリー的存在は、声も出さず黙って玉座にふんぞり返ってるですよ。その声を聞くと、イライラして議論に集中できないんですよ」
「そんなことは出来ませんヨ。ワタクシは、時々補足や茶々を入れる…所謂アドバイザーとしても存在しているのでかラ…居なくなったら居なくなったで…結構不便になっちゃうと思いますヨ?…というわけで、早速助言をしちゃいまース!……まずは、最初の議題として今回の被害者である、鮫島クンの死体について、話し合っていきましょーウ!」
そんな監督者のように偉そうな言葉を並べていた態度から一転、自ら進んで議題を提供していくモノパン。イヤ何なんだよ、と内心毒づく反面……その妙な態度に俺は違和感を抱いた。
「ほぉ、モノパン。目を背けたくなるくらいねじくれたキミが、言葉通り議題を提供してくるとは…驚いたものだね。前は『自分たちで考えなさい』やら『これ以上は』などと、積極性を重んじたスタンスだったはずなのに……どういう風の吹き回しだい?」
「ははっ…風の行く末なんて誰1人わかりはしないさ。とても近くて、とても遠いい、友の様に暖かく、赤の他人のように冷たい……気まぐれなヤツだよ」
「…落合、ニコラスの言いたいことから180度くらいズレてるぞ」
「最初から飛ばしまくってるよ~」
…落合の言っていることは置いておくとして…。そんなニコラスの言葉に置き換えられた不信感に対してモノパンは、ただただ、薄気味悪い笑みを返す。
「くぷぷぷ……ワタクシは理解してしまったのでス。この業界は積極性だけで通じる世の中では無い、もっとスライム様な柔軟さが必要であるト……。ですので今回のモノパンの個人的な目標、マニフェストは……身内に優しく、そして手厚くすること。その出だしとして、手始めに身内への“謝罪”を込めた議題提供をしようと思いまして…」
「既に不祥事をやらかした後かい…」
「本音を言えば。モノパンファイルの情報がとても希薄だったので、ちょっと不公平かな、なんて思ってもみたりしただけでス。なので、今回はワタクシからその話し合いの種を埋める…と、つまりそういうわけなのでス」
「平等な采配ができていない自覚があるなら、最初から詳細に書けば良かろう…」
「えー、それについては今後の励みとさせていただきまス」
「なんか重役っぽい逃げ方されたんだよねぇ!?」
モノパンのもっともらしい顔と、丁寧に並べられた言い訳…口ではああっているが、根本的なコイツのスタンスは変わってないんだな…そう感じた。
俺達はモノパンの言動にうんざりしつつも、時間があるのか無いのか分からない今、このまま足踏をしているわけにはいかない、そう思い、議論への腰を上げていく。
「はぁ、開き直ってるモノパンなんて放っておいて…さっさと議論をおっぱじめるですよ」
「折角議題が目の前に出てきてくれたんだから…それについて話合っちゃおっか!ええっと…確か“死体について”だったよね。よし!じゃあ早速意見を募集しましょーーー!。誰か気になる点がある人ー!!はいはいはーーーーーーーい!!!…はい早かった!!今手を挙げている水無月くん!!」
「議論じゃ無くて、一人芝居をおっぱじめてるんだよねぇ……人の意見微塵も聞く気ゼロの出だしなんだよねぇ」
「1人芝居ならボクも得意だよキミ!!…数年前、我が故郷ロンドンにて、かのシャーロックホームズを彷彿とさせる推理ショーをとある殺人事件を前にして演じたことがあってね。そのときの超高校級の名探偵たるボクの大立ち回りといったら、それはもう――」
「あんたの武勇伝は聞き飽きてるんですよ…それを聞くと速攻でタイムリミットがきそうなんで……反町、手筈通りに頼んだです」
「任せなっ!!」ドスッ
「オゥ……!」
「ニコラス殿に強烈な腹パンが!?」
「あれは、反町流喧嘩殺法の一つ……出洲斗露井・無苦流(ですとろい・なっくる)……腰を軸に、大車輪の如き勢いで相手のみぞおちに拳をたたき込む、先手必勝の奥義……1度食らえば2、3日は胃に食物が通らなくなること請負の技です」
「目の前の光景にツッコミを入れる前に、横からツッコミどころ満載の解説役が出てきたんだよねぇ……!」
「主に、邪な気持ちで肩やお尻を触ろうとする者への護身術の1つです!」
「ちゃんと使いどころもあったんだよねぇ!?……ていうか明らかに過剰防衛なんだよねぇ!?」
「これニコラス、くん、裁判の最後、まで、体、保つのか、な……?」
「裁判の終盤、虫の息になっていないことを祈るしかないな………長々とすまん水無月、続けてくれ」
腹を押さえながら悶絶するニコラスに皆は微妙な表情で眺める。俺は思い出したように隣に居る水無月へ話を促すよう声をかける。それに対し水無月は“うーんとね?”そう小首を傾げながら言葉をまとめるように一瞬間を置いていく。
「いやーカルタね?みんな知ってると思うけど、鮫島くんがお亡くなりになって、ちょーっとばかしセンチメンタルになってましてーそのせいであんまり捜査できてなくてさー。死体のこととかも全然理解が浅くて、一体どういう状況で死んじゃったのかちんぷんかんぷんなんだよねー……理由は言えないけどさ」
「……もう洗いざらい言ってる」
「死体云々については私も同感です!!!」
「……梓葉。アンタ、裁判前にモノパンファイルじっくり見てたんじゃ?もう画面とキスするんじゃないかってくらいの至近距離で…」
「はい!何やら小難しい字が沢山書かれてるなぁと思いました!……残念ながら……その内容は殆ど、いえ9.5割くらい理解することは叶いませんでしたが…」
「それでは殆ど分かってないと同義ではないかぁ……」
「う~んと~、じゃあ~今の出だし的に~死体の状況説明が~最初の議題って事でいいのかな~~?」
「ああ…そうだな。前と同じように議論して、今現在の死体について分かっている部分と、分かっていない部分を切り分けていこう」
…やけに遠回りをした気もするが……やっと本格的な話合いを行えそうな雰囲気になってきた。…まずは、死体周りについて…わかっていることをまとめていこう。
【ノンストップ議論】 【開始】
「鮫島くんの死体の周辺状況について…」
「そのぜーんぶをもう一度さらってみましょーー!!」
さらってみるかぁ…
さらってみるんだよねぇ…
さらってみるさね…
「…まず、死体が発見された場所は…」
「……エリア2の【図書館の中央広場】…」
「…時間は深夜の0時半…」
「…中々に眠い時間…」
同感だね!!キミ!!
態々こんな深夜にやらなくてもね~
よりにもよって図書館で……
「そんで、死体は【全身を焼かれていて】…」
「一見誰なのか分からないくらい…酷い有様だったさね」
うむぅ…何ともな…
こ、言葉も出せません…
「成程、では話を総括すると…」
「現時点で明白なのは…」
「『死体発見現場』と…」
「【死亡推定時刻と死因】……というわけでござるな!」
成程!!
まとめると…そうなるのか…
「へー!モノパンが言うわりに…分かってること結構あるじゃーん!」
「これだけ情報がたんまりあれば…」
「クロの特定は時間の問題だね!!」
【モノパンファイル Ver2)⇒【死亡推定時刻と死因】
「それは違うぞっ…!」
【BREAK!!!】
「いや沼野…今回の事件においては死亡推定時刻も死因も、確定的とは言えないんだ…」
「え~。何か最初の裁判の時も、拙者言い負かされてなかったでござるか?何でござるか?チュートリアルが如き感覚でござるか?」
言葉の穴を突いたつもりだったが…沼野自身はそれよりも、また一番最初に指摘されたことに対し疑問を呈しているようだった。
「いや、別にそういうわけじゃ無いんだが……もう一度モノパンファイルを見直して欲しい……。このファイルには“死体発見現場”と“発見時刻”は明確に記載されてはあるんだが……」
「あー!死亡推定時刻、死因の欄は『体が殆ど焼けてしまっているため不明』って書かれてるー!!」
「……ちゃんと分からない部分は分からないって書かれてたんだ」
「沼野ク~ン、さっきも言ったじゃあ~りませんカ~。渡したファイルの情報が全然足りないっテ~。モノパンの話はおばあちゃんの知恵袋並に、つぶさに覚えておく物ですヨ?そして何か名言を言う前は必ず…『おばあちゃんが言っていた…』て付けるんですよ?」
「モノパンと沼野さんのお婆さまは……同一人物……ということですか?」
「そんな寒気しか覚えないようなことがあるわけないでござろう!!いや……そうじゃなくて……ここは流石に言い訳をさせてもらうでござる。……拙者、モノパンファイルの内容を失念していたのでは無く……“ファイルそのものを持っていなかった”のでござる…」
「……配られ、て、無かった、てこと?」
「左様はでござる。恐らく皆、“図書館にて”ファイルを受け取っていたのでござろう?ほら、そのとき丁度、拙者は倉庫に向かっていた故、配り損なわれたのではないかと……まあこれはこれでだいぶ問題有りの事案でござるが……」
「ええ~?一緒だった私は~貰ってるよ~?」
そう言って、同じく倉庫に同行していた長門は、ひらひらとモノパンファイルを沼野へと見せつける。沼野は、ぽかーんと、今何が起こっているの理解しかねる顔で、硬直した。
「……えっ?なんでで、ござるか?いや、何で。ござるか?この……疎外感?全員一様に受け取った大事なファイルが、拙者にのみピンポイントで配られていない……恐るべき村八分の陰謀が伝わってくのでござるが?」
「あっ……そういえば。これはうっかりうっかリ。どうやらワタクシ、沼野クンにだけファイルを渡すの忘れていたみたいですネ。どーりで、一枚余るとおもいましたヨ。あっ、別にわざだとか差別とかじゃ全然無いですヨ?素直に存在を忘れていただけですのデ」
「いやそっちの方が傷つくでござるよ!!拙者そんな影薄いキャラじゃないでござろう!?むしろ結構影濃い感じのキャラだと思うござるよ!?もっと言うと、ニコラス殿の方が影薄いでござろう!?」
「Hey!ミスター忍者!それは聞き捨てならないねぇ…黄金と表現するには生ぬるい程輝くボクを影が薄いだなんて…言動には気をつけたまえよ、キミィ!!」
「自分を黄金って表現するのも大概だと思うけどねぇ………ていうか忍者は存在感がない方が喜ばしい事なんじゃないのかねぇ…」
「なんてことを申すでござるか古家殿!!忍者である前に拙者はテーマパークのスターでござる!!目立ってなんぼの商売でござる!」
「才能へのプライドがあるのか無いのか判断に困る文句ですけど…。…あたしから言わせてみれば、どっちもどっち、どんぐりですよ」
「「いやっ!!こっちのほうが薄い(でござる)(よキミィ)!!」
「ちょっとあんたら、くだらない言い争いはそこまでにするさね。今すぐその向け合っている指を降ろさないと…明日の朝メシは無しの上、地獄のお祈りタイム10時間、みっちり受けてもらうことになるよ…」ボキボキボキ
「「……はい」」
「一瞬で黙っちゃった~~すんごい統率力だよ~」
「それよりも…シスターなのに、お祈りの時間を地獄というのは……如何なものかと思うんだが…」
反町の威圧によって大人しくなった2名のウチ…その片方である沼野は改めてモノパンからファイルを受け取ると…少々脱線してしまっていた…鮫島の死体の死因、そして死亡推定時刻へと話を巻き戻していく。
「ははっ、どうやら話が彼方へ羽ばたいてしまっていたみたいだね。……悪くない旅路だったけど、鳥はいつか、自分の巣へ戻らなくちゃいけないものさ……さあ見せておくれよ、議論がどのように羽を降ろしてくれるのかを」
「あんたは、言葉よりも頭をひねって欲しいんだよねぇ」
「……でも、落合の言いたいことに私は半分同意」
「ああ、死因と死亡推定時刻っつう重要な部分が『不明』ってぼかされちまってるからね…。落合の言葉を借りると、羽を降ろすための地盤がデロデロになっちまってる状態に他ならないよ」
「…困ったもんですね、何か前よりも情報が乏しい気がするですよ。このまま行き先もままならないようじゃ…早々に裁判を切り上げて、脳死でニコラスに投票することになるですよ」
「おいおいミス雲居、それは流石に悪手と言わざる終えないぜ?だけど何だかいきなり滞った雰囲気になってきたみたいじゃないか………ふーむ、ファイルに載っていることが当てにならないのなら、もう“我々の力”でどうにかするしかない…ボクとしてはそう思うね、キミ」
「私達の力で……でございますか?」
「ああそうともさ!…つまりだキミ…ふむ…そうだね…ああー……何か心あたりはないかな?ミスター折木…」
数秒を考えを巡らせたニコラスは、そそくさと、逃げるように俺へ言葉と視線を向ける。……明らかに何かあるだろうと、期待しているような目だった。ガクッと肩から落ちるような気分だったが…ニコラス自身は一切捜査をしていないのだから…仕方の無い事だ。
そんなニコラスから渡された中々のキラーパスに…多少の動揺はあるも…それでも心当たりはあるにはあると、俺は気を持ち直す。
そして思い出す。独自に捜査して見つけた、モノパンファイルにも記載されていない――事実を。
その証拠と合わせて考えれば――――明確に出来ることがある。
それは…
【選択肢セレクト】
1.死因
2.死亡推定時刻
A.死因
「これだっ……!」
「……“死因”だったら…明らかにできるかもしれない」
「死因が…ですか?つまり、どうやって鮫島さんが殺されたってことが……ええっ!分かってしまうんですか!?」
「そうなんだよ!キミ達!死因が分かってしまうんだ!ああそう言うと思っていたとも!勿論!嘘じゃ無いさ!」
「あからさまな知ったかぶりなんだよねぇ!?」
「反町、またそいつ議論をかき回すようだったらもう1発頼むです」
「……流石にこれ以上殴ると、生活に支障が出るから、軽く小突く程度に納めとくさね」
「…しかし折木殿。あのモノパンファイルにすら明記されてないことだのに…どのようにして証明するのでござるか」
“死因が分かるかもしれない”という言葉から、どうやって証明できるのか…話し合いはその方向へと展開していく。
――すると何やら……“くくくく……”という含み笑いが裁判場に小さく木霊しだした。俺達は何事かと、声の発生点を探し出す。そしてすぐにその主は見つかった…雨竜だ。腕を組んだ雨竜が、俯き、そして肩を震わせていたのだ。
「どうしたの雨竜くん?もしかして腹痛?トイレなら奥行って右だよ?」
「くぷぷぷぷ…出す物は出すべきところで出してくださいネ?ちなみにやらかしてしまって社会的に死んだ場合は…学級裁判は開きませんので…あしからズ」
「誰がクソなど漏らすかぁ!!!ワタシは、折木達の言っていることは正しい…天文を司る物として、そう賛同しようとする前に、助走をつけていただけだぁ…!!」
「…雨竜、くん、その助走、は、余計だと思う、よ?」
「でも中々説得力のありそうな雰囲気だから……これは大の期待を胸に、向けて良いのかな?かな?」
「ふはははっ!!!その通りだ水無月!!これはまさに天啓なのだ!!貴様らへのなぁ!!」
「…変なスイッチ入ってきた」
「たまに有ることさ。頭にすーっと、覚えも無いのに詞が降りてくるときがね。そっか、あれは神様からの贈り物だったんだね……また一つ、僕は、僕を知ることが出来たよ」
「……さらに変な人が釣れた」
「くくくくくっ、今このときこそ、観ることすべてに全能力を注ぎ込んだワタシの出番!!!まさに独壇場……たぎる、たぎる……マグマのように煮えたぎってきたぞぉ……!!」
「こいつ確か…天文学者として希望ヶ峰学園に呼ばれてたハズなんですけどね。天文要素がだんだん減ってきている気がするですよ」
「しっ!それは誰もが分かってる事だから言わない方が良いんだよねぇ…」
「はっ!!吠えるが良いさ。…天を知り、生を知る……見るが良いこの万能たる力を……超高校級の観測者…いや神たらしめる全知全能さを!!フフフ既に我が戦闘力は戦闘力は53万すらも優に越える……!」
「ほお、アタシの前で神を自称するたぁ良い度胸じゃないか……本当にアンタが神様だっていうんならそこに直りな……1発で良いからぶん殴っておきたかったんだよね」
「止めるんだよねぇ!!反町さんの神殺しの拳を受けてしまったら、雨竜君のもやしボディが粉々になっちまうんだよねぇ!!」
「2人とも……いった平常に戻れ、とにかく…話を進めよう。雨竜、“検死”をしたお前の意見をかみ砕いて、聞かせてくれ」
「ふ、ふん……良いだろう…。無知なる貴様らに、我が叡智の一端を見せてやる…!」
反町からの睨みの所為なのか…ちょっとばかし及び腰の雨竜。しかしまだ変なスイッチを入れた状態は継続しつつ…鮫島の死因について話をし始める。
「結論から言わせて貰おう…鮫島は……“絞殺された”のだ」
「絞殺~?」
「……鮫島は、縄または紐などの索状物による気道の圧迫、および血流の妨害による血管閉塞…法医学的に言えば絞頸(こうけい)またの名を……絞死(こうし)…」
「雨竜、その辺で止してやってくれ……被害が甚大だ」
周りを見ると…何やらパンクしかけている生徒達がチラホラと……特に小早川は目が死んでいた。
「つまりあれだね!ミスター鮫島は、紐か何やらで首を絞められ殺された!という結論で良いのかな?キミ」
「ふっ……ご名答ぅ」
「にしては、気味が悪いくらいに堂々と断言するでござるな?」
「…検死役は狂四郎だったから、そこで何かしら根拠を見つけたなんだと思う………多分…?」
「へぇ~じゃあその根拠ってヤツ、もったいぶらずにバーッと言うさね」
「はっ!そんなことも説明せぬばならんとは……どうやら貴様らごときでは、ワタシの量子力学的思考回路に追いつくことは不可能のようだなぁ……ふっ…無様だなぁ、身の程をわきまえぬ問いをするから結局こうなるのだぁ……」
そのまま素直に話せば良い物の…余計を3乗したような煽り口調をこぼしだした雨竜に、“カチン”と雨竜のとは別のスイッチが入る音がした……ような気がした。
「……………ああん?何だぁ…アンタ?確かに検死役をまとめてアンタに丸投げしたのはアタシらだけど……にしては随分調子に乗った文句を並べてくれるじゃないか」
「私も流石に今の発言は見逃せないですね。つーかマジで切れかけてる5秒前なんですけど?今すぐにでもそのゴボウみたに細い足をボキボキに折って、豚汁に放り込んでやりたいんですけど?」
「おおーーやるかーマウント合戦なら受けて立つぞーーー!!」シュッシュッ
そしてそれが割と本気でとられてしまったのか…何人かの生徒達から反感のような声が上がりだす。
「ふん…ワタシが見て、聞いて、そして感じた言葉を正直に述べただけだ…ふははは!!我が頭脳が演算した言葉に狂いなし!!これこそが宇宙の真理なのだ!」
「その真理から出てきた言葉が今の煽り文句って……だいぶすさんでるんだよねぇ」
「アンタねぇ…雨竜。前々から言おうとは思ってたけど……その中身が伴ってない仰々しい言葉遣い、今すぐにでも止めな!!何か頭がこんがらがるんだよ!!使われる者の身になって、素直に言葉を改めるさね!!」
「ぬわんだとぉ!?このワタシの崇高なる言葉にケチを付けるというのか貴様ぁ!!その発言、観測者たるワタシへの冒涜と知っての言動かぁ!!」
「強い言葉には…必ず責任が伴う……手に入れた強大なる力と同じく、とても重い、そして愛おしく、儚い…」
「ま~た筆頭が火に油注いでるよ~」
「そういうのはどうでも良いでござるから!!雨竜殿!反町殿!双方ともかく落ち着くでござる!!!ここは真実を見いだし、そしてクロを見つけ出す場……言葉の殴り合いをする場ではござらん!!」
「うるさいですよ、パチモン忍者。今この木偶の坊は私達の超えちゃいけないラインを踏み荒らしたんです…それ相応の報いを受けてもらわなきゃ、こっちの腹の虫が収まらないんですよ」
「今パチモンって言ったでござる!!パチモンって!!それはちょっと言い過ぎじゃないでござるか?いくら温厚な拙者でも聞き捨てならんでござるよぉ!?」
「今度はまた別の人がキレて、別の場所が炎上し出したんだよねぇ!!」
「今の反町さんの目つき…あれは反町流喧嘩殺法の一つ…『面血斬り(めんちぎり)』…相手が手を出す前に、野獣をも射殺すほどの眼光で相手の目をにらみつける…先手必勝の絶技……流石でございます。迫力が違います…」
「小早川さん!解説はもう良いから鎮火活動を手伝って欲しいんだよねぇ!!あと反町流喧嘩殺法、今のところ先手必勝の技しかないんだよねぇ!!」
何となく燻っていたフラストレーションが雨竜の煽りを皮切り、この場で爆発したように見えた。古家や風切、長門達がそれぞれの喧嘩を仲裁してはくれているが……1度暴走してしまった喧嘩は留まることを知らない。俺も何とか声を掛けてみるが…全員聞く耳を持っていないように言い争い未だ続いていく。…このままではこの事件において最も大事な一歩を踏み出すことができない…。
「良いでござるか!拙者は厳密には忍者とは言えないでござるが…それでもプライドくらいあるでござるよ!」
「プライドがあるんだったら、たった一言くらいで熱くなるんじゃないですよ!忍者としての器が計り知られるですよ!プライドの前に精神を鍛え直すんですね!」
「そーだそーだ!!寺子屋からやり直せー!!」
「いやそれ寺子屋関係ないでござるー!!」
「…雨竜、ここは一つ腹割って語り合おうじゃないか……どっちが正しくて、どっちが間抜けなのか……拳じゃ無くて…言葉でね」
「きてみろよー銃なんて捨てて…かかってこいやーー!」
「ふ、ふふ、ふふふふっ、やれるものならやってみるが良いさ……そのロジックバトル…受けて立とうでは無いかぁ……ま、まあ、勝つのは誰が何をのたまおうと、ワタシの他ありえんがな!ふあはははは雨竜の『う』は宇宙一の『う』なのだぁ!!」
「不味い、よ。皆、頭に血が上って、る」
「…カルタは明らかに野次馬感覚」
「…重症なのは雨竜君なんだよねぇ…反町さんへの恐怖がピークに達して、テンションが可笑しくなってるんだよねぇ…」
1番情報をもっているというのに……今この瞬間、その雨竜が1番使い物にならないだなんて……。
今この場で蔓延する焦燥感は、他の連中に伝播していき頭に血が昇ったままを維持していく。殆どは雨竜が原因な気もするが……。だからといって、こんな、思い思いに暴走する発言が飛び交うパニック状態じゃあ、まともに話合いが進まない………。
「ふむ…このまま話を止めようと躍起になっても、キリが無いね……もういっそこのままズンドコと進めちまうというのはどうかな?キミ?」
「何言ってるんだよねぇ!!こんな爆走状態じゃ議論もへったくれも無いんだよねぇ!!」
「ははっ大丈夫だよ……人の声は、突き詰めれば喉の振動から始まる、音の塊…そしてそれには必ず人によって色がある……聞き分けることだってできるさ…ああ、音と音のぶつかり合う不協和音……これもまた良いものだね」
「いやぁ良い感じに騒々しくなってきましたネ~。いつかはこうなるだろうと思っていましたガ…予想以上のバカ騒ぎですネ」
……聞き分け?どういうことだ……?
――いや、その意味を深く考えても…この焦りにまみれた現状を打破することはできない。もうとにかく、全員の発言を聞き分けて、この話を無理矢理にでも進めていくしかない。もしかしたら、どこの誰かが、話を前進させれるような発言をしくれるかもしれない。俺は僅かな期待を胸に前を見据える。
「己の無力さ、そして浅ましさを…おのが眼でとくと写し見るが良い!!!そして後悔しろ…!ワタシこそが勝者であるという現実を前にしてなぁ!!」
「後悔するのはそっちさね!良いかい?もし適当に言いくるめようってんなら、容赦しないよ!!誤魔化した分、アンタの腹にいいもんくれてやるからね!!」
「ボコボコにしてやるぞーー!!」
「雲居殿!!拙者は確かに忍者としては未熟やもしれんでござるが…決してニセモノではござらん!!そういう発言をするならもっと相手のことを知った上ででござるな――」
「忍者だったら、そんなホイホイ自分の情報を明け渡すものじゃないですよ!忍ぶ者と書いて忍者なんですからん、大人しく隅っこで身を潜めてるですよ!」
「忍者が聞いて呆れるぞーーー!!」
「どんどんと面白いことになってきているみたいじゃないか!キミ達!こんな世にも愉快な社交場…超高校級の名探偵たるボクが参加しない手はないんじゃないか?」
「ニコラス君、は、1番関係…うんと…今は、無いの、かな?」
「そうだー!!今だけはすっこんでろーー!!」
「はははっ!!実に曖昧で困るだろ?まさに特異点と言っても過言じゃあないさ。…キミほどじゃないけどね?」
「反町ぃ!!」
「雨竜!!」
「雲居殿!」
「沼野!」
「ニコラスくん!」
「ミス水無月…?」
『大変です!お三方それぞれが意見を始めてしまいました!』
『一部関係ない方々もいますが…それはご愛敬』
『とにかく…皆様、勝手な場所で言い争いを始めて大騒ぎ!裁判上はパニック状態!』
『そうまさに、これからパニック議論へと突入いたします』
『本小説のパニック議論では、ゲームと同様に3つの意見が同時に進行致します』
『しかし小説中で画面を3分割できるわけでもないので、各議論は―や~で区分けして、それぞれForum 1、2、3とマーキングしております』
『そして分かりやすいように、議論が進んだら*マークで境界線を引いているので…とっちらかり率は軽減されているかな?なんて思います』
『後は…通常のノンストップ議論と変わらないでの……ご確認の程、宜しくお願いしたします』
【パニック議論】 【開始】
~~~~~~~~~~~~~~~
[Forum 1]
「ふはははははははははははーーーー!!!」
「全宇宙のコスモを集約させたワタシの力……」
「とくと見るが良いぃぃぃ!!!」
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…色々混ざって化学反応を起こしてる
もう止められないんだよねぇ…
―――――――――――――――
[Forum 2]
「身を潜めるだけが忍者ではないでござる!!」
「時には身分を隠し…社会に溶け込み…偽りの自分を演じる…」
「それもまた【忍者の一側面】なのでござる!!」
――――――――――――――
もう何が本筋なのか分からないよ~
――――――――――――――
[Forum 3]
「とにかくアレだよキミ!!」
「他は他で…取り込み中で、忙しない様子みたいだし…」
「ボク達だけでも、話を進めていこうじゃあないか!!」
「それに喧嘩している間ボクは【自由の身】だしね!!」
~~~~~~~~~~~~~
* * *
~~~~~~~~~~~~~
[Forum 1]
「へぇ…随分と自信に満ちあふれてるみたいじゃないか…」
「やっぱりロジックよりも物理力で勝負するのかい…?」
「どこからでもかかってきな…!アタシは逃げも隠れもしないよ!!」
「反町さん!!いい加減に雨竜さんのお話を傾聴しましょう!!」
「どんな勝負にも…時には『引き際を見極めるのも肝心』…」
「修行の時にそう教えてくれたじゃないですか!!」
――――――――――――――
ボルテージ、が上がりきって、る…
誰が仲裁しても収まる気がしないんだよねぇ…
――――――――――――――
[Forum 2]
「じゃあ今のあんたのそれも、一側面ってことですか?」
「今までのあんたを顧みてみると…」
「明らかに素のまま…」
「…いや欲望のまま『人生を謳歌している』ようにしかしか見えないですよ!」
「……もし今のが演技だったら…怖くて夜しか眠れない…」
――――――――――――
健康的に寝れてるじゃないかキミ!
確かに怖いんだよねぇ…
――――――――――――
[Forum 3]
「話合うって~言われてもさ~」
「今暴走してる雨竜君の頭を整備すれば~」
「すぐに答えは分かるんじゃないの~?」
「まあ良いじゃん!!面白そうだし!!」
「じゃあ早速、カルタから案を出してくね!」
「死因を断定できる理由…」
「あれだね、その『現場を目撃したから』!……とか?」
~~~~~~~~~~~~~
* * *
~~~~~~~~~~~~~
[Forum 1]
「止めるんじゃないよ梓葉!!」
「こんな舐められたまま引き下がったら…」
「アタシの仲間達に…示しが付かないんだよ!!!」
「それでもです!!」
「ほら…もしかしたら…そうです!!
「例えば…『絞殺に直結する何か』があったのかもしれません!!!」
――――――――――――――
…どこに本質があるのか聞き分けられないよ~
いや、僕には聞こえているとも…真実を呼ぶ声がね…
――――――――――――――
[Forum 2]
「人生を謳歌しているとは…!!」
「まあ確かに【地味に覗かせてしまっている】かもしれぬが…」
「地味にっ、ていう、か…モロに、ていう、か」
「つまりアホ丸出しってことですね…」
――――――――――――――
…引くくらいの超ストレートパンチ
――――――――――――――
[Forum 3]
「いや、それはもう決定的っていうか…」
「究極に【怪しい証言】なんだよねぇ…」
「それよりか…『絞殺用の道具』が側に落ちてたとかの方が…」
「まだ頷ける根拠なんだよねぇ…」
~~~~~~~~~~~~~~
* * *
~~~~~~~~~~~~~~
[Forum 1]
「ふははははは!!!どうした反町…その程度か…」
「ふん…どうやら矮小なる貴様の逆立ち如きでは…」
「天地をひっくり返すことすらできやしない………」
「ふふふ…命拾いしたな…。ワタシはまだあと3回ものバージョンを残している……」
「つまり、ワタシは無敵…誰よりも、な」
「……ふっ…そう証明されてしまったようだなぁ!!」
――――――――――――――
いい加減に煽るのを止めるんだよねぇ!!
殴られれば1発KOなクセに~
早く、元通りにな、って、ほしい、かな?
――――――――――――――
[Forum 2]
「ぐぬぬぬ…いや、拙者はちょっぴり普通の忍者とは違うのでござるよ…」
「そう…いうなれば…拙者は特別…いや…」
「特殊な忍者なのでござる!!」
「英語で言えばスペシャル…」
「つまり忍者のスペシャリスト!」
「…よく分からなさすぎて…何かもう頭が冷えてきたですよ…」
「お疲れ、さ、ま」
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忍者は元から特殊な気が…
…確かに意味が分からない
――――――――――――――
[Forum 3]
「うーん、それでも何かしっくりこないなー」
「てことは…他に考えられそうな事は無いってことだね!!!」
「はい!じゃあ話合い終わり!!!」
「もう終わっちゃったんだよねぇ!?」
「激安のタイムセール並の閉店速度なんだよねぇ!!」
「結局ボクは1度たりとも議論に参加できなかったよ!!」
「はははは!!これは傑作じゃないかキミ!!」
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【雨竜の検死結果②)⇒『絞殺に直結する何か』
「聞こえた……っ!」
【BREAK!!!】
「そうだ、その通りだ小早川…!鮫島の死体には、死因らしき痕跡があったんだ!」
「こん…せき…?………いえ!あの、意味が分からないというわけでは無くて、その、漢字を教えていただければ、と…」
「………すまん、俺の配慮が足りなかった。1度、有識者に話題を移そう…雨竜!」
「グルルルルルル……」
「ガルルルルルルルルルルゥ……」
「…もう人間の言葉を越えて牽制しあってるんだよねぇ」
「2人ともいい加減に矛を収めろ!!雨竜!鮫島の“首元”についた痕跡の話だ!!そんなんじゃいつまで経っても話が進まない!!」
普段なら出さないほどの大声で俺は雨竜を呼びかける。すると、言葉に気づいたのか“ぬぅ…?”と、獣の如き瞳を此方に向ける。
そしてすぐに、我に返ったのかように頭をガシガシと掻きながら大笑いをし出した。
「…ふはっははははははは!!!そうだ、そうだったなぁ!!忘れていたぞ!!ワタシには重大な使命があったのだったなぁ!!反町、名残惜しいが勝負は預けるぞ!」
「ちっ……確かにアタシもちょっとヒートアップしすぎたさね。…結果的に話は進んだみたいだけど、ちょっと頭を冷やしといた方が良いみたいだね…」
「ううむ、拙者らもこの場の空気に当てられて…えらくしょうも無い争いをしていた気がするでござる」
「…本当ですよ。何でこんなバカなことで言い合ってんですかね…今になって急に恥ずかしくなってきたです。はぁ……黒歴史ノートに新たな一ページが刻まれたですね」
…そして一石の所為なのか…他の喧噪も段々と鳴りをひそめていき…裁判場は冷静な空気に包みこまれていく。その状況に、俺達仲裁側もほっと、安堵の息を吐き出した。
「……でも、皆落ち着いたようで何より」
「うん、良かった、ね?」
「静と動、それぞれを使い分けてこそ…この世界は、美しく回っていくのさ……激しくも大人しく…片方に偏りすぎては…その輝きは光りを失っていってしまう」
「本当だよキミ達!これからはもっと落ち着いた議論をしてくれたまえよ!ボクとしては、こんなバカ騒ぎ2度と御免だね!」
「カルタも同意見でーす!!」
「一番悪ノリしてたあんたらにだけは言われたくないんだよねぇ!?」
「…反町」
「フン……」ゴスッ
明らかに神経を逆なでした発言の報い……反町の拳に頬を張らすニコラス。その傍ら……隣に居た長門が…“あのさ~”と、声を上げる…。
「…クールダウンしたところ悪いんだけどさ~~。今、折木君が言ってた~、首元のなんちゃらと~、さっきの死因の話とかって関係あったりするの~?」
「ん?……ああ、そうだな。長門の言うとおり、大ありだ。鮫島には、絞殺された明確な“痕跡”があったのだぁ。首の横、丁度服で隠れてしまうこの部分だなぁ」
雨竜は、自分の首の横にトンと指を置き、どこに痕跡があったのか、俺達へと伝えていく。
「しかしだよ、ドクター雨竜。あの焼けただれたミスター鮫島の死体。しかもその首元。そこにそんなご都合主義的な証拠があったとは、実に恐ろしい偶然だね。念のため確認だけど…その痕跡はもしや……」
「ふっ…ヘタな勘ぐりはよせ、ミスターニコラス。先手を打たせてもらうが故意の偶然ではない。本当に、たまたま、首もとの…一部の焼けただれていない部分に…索状痕…つまり紐で首元を圧迫したことによって発生する跡が見られたのだ」
「真偽についてはあたしが保障するんだよねぇ……。かなり気が引けたけど。確かに、あったんだよねぇ…ほんのちょっとロープで締められたような跡がねぇ…」
「はははははは!!勝手にささいな疑いをして、やんわりと否定されてしまったよ!!これは名探偵であるボクも認めざる終えないみたいだね!!もう笑うしか無いよキミィ!!」
「まあ良いさ!!!そんなことは誰にでもある!!!だが、それ以上のことは皮膚が丸焦げていて一切分からなかったがなぁ!!遠慮無くもっと笑うが良い!!ふはははははっははは!!!」
「今のどこに笑える部分があったのか私に教えて欲しいですよ……」
「笑顔…それは身と心を照らす太陽のような光……無くて良い物でも無いし、ありすぎて良くないことも無いさ」
「なら暇なのでワタクシも便乗して大笑いさせていただきますネ!!ぷひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
「…笑い声が過多で胃もたれするですよ」
「…しかぁし!僅かにしか分からないとはいえ、その僅かはビックバンすらも遙かに超える事件の真相を示している!!!!くくくくなんたる僥倖、なんたる幸運……我が世の春がきたぞぉ!時代がぁ…時代がこのワタシに縋っているのだぁ……追いついて下さいとむせび泣きながらなぁ!!!」
「時代があんたに泣きついてるのかは置いておくとして…死因を特定する証拠としては申し分無いと思うけどねぇ」
「………そうだな。まだ不安定な部分はあるが…鮫島の死因は絞殺で――」
【反論】
「詰めがあまあまだよ!!!」
【反論】
「…み、水無月……?」
「あのね、あのね?公平くん達が話してることをさ、カルタなりにまとめてみたんだけどさ…つまり、公平くんたちは犯人は鮫島くんを首を絞めて殺して、そんで火事でこんがり焼きました……そう言いたいんだよね?」
「ああ……その通りだ」
「ふふふふふ、なんかね~それ聞いてたらさ、カルタちゃんの脳細胞にぴーんっと来ちゃったんだよね!」
「…ピーン?」
「閃き、っていうかつっかかり?かな?……なんて言うか、それは違うよ!!って思ったの。だからこそ今ここで、渾身の水無月カルタによる水無月カルタのための推理ショーを見せてあげる!!」
【反論ショーダウン】 【開始】
「公平くん達は…つまりこう言いたいんだよね?」
「鮫島くんは」
「体を焼かれる前に」
「絞殺されていた…」
「それを聞いてて、なんかねー」
「やっぱり、できすぎてるって感じが拭えないんだよねー」
「あっ、別にニコラスくんが言ってたのを真似したわけじゃ無いよ?」
「純粋にカルタがそう思っただけ…」
「それに加えてこうも思うんだ…」
「鮫島くんの死因はまったくの逆だってね!」
「逆って…どういうことだ?」
「…首の索状痕を見る限り…」
「鮫島は焼かれるよりも前に、首を絞められている可能性が高いんだぞ?」
「それができすぎてるって言ってるんだってばー」
「忘れてるのか、あえて知らない振りをしてるのか分からないけど…」
「…容疑者はあのニコラスくんなんだよ?」
「だとしたら、クロのニコラス君は…」
「鮫島くんを予め【焼き殺して】…」
「そしてわざと…首の一部に跡を残した。」
「そしてあの図書館に火を放ったんだってね!!」
「図書館の中に居たニコラス君なら」
「…そういう」
「細かい細工なんて」
「【いくらでも効いちゃう】んだから!」
【雨竜の検死結果①)⇒【焼き殺して】
「その言葉、切らせて貰う……!」
【BREAK!!!】
「水無月。お前が言うように、絞殺の可能性を不確定かもしれない……でも、焼死の可能性を否定することは出来るんだ…」
「焼死の可能性を?」
俺の切り返しに対し…水無月は当を得ない表情で首を数回左右に傾げる。その反応に、ちょっともったいぶりすぎたな、と内心自嘲する。
「Exactlyぃ……!!鮫島がもし、気絶させられ、そして火事によって殺されたのであれば……通常、もがき苦しみ、あのようにピーンとピアノ線のように真っ直ぐな体勢は取ることはありえん………これは我が天文学的見地から断言させて貰おぅ………」
「せめてそこは医学的見地から言って欲しかったんだよねぇ」
「色々こじれた説明になってしまいましたが……つまり、鮫島さんは焼死ではなく、結局のところ、絞殺ということですね!!」
「うーんそっかー、じゃあ焼死の可能性は殆どゼロ、ってこと……かな?」
「ふむ…火事を起こしてまで鮫島殿を焼いた理由としては、索状痕を消すため…そう考えるとしっくりくるでござるな」
「それはそれで、中々パスい発想ですけどね」
「わざわざ図書館を火事にしてまで死体をを焼いてるんだからね~。でも~極小単位のクロの不始末を~雨竜君が見つけてくれたってことは~お手柄だよね~」
「くくく…もっと、もっと褒め称えるが良い……観測者たらしめるこの両眼こそ、我が至宝にして才能の――」
「分かったから、また話が滞るさね…」
またしち面倒くさい匂いを感じ取った反町が雨竜を先んじて制する中、否定された側の水無月は、少々気落ち気味で、深いため息を吐きだした。
「それにしても……あーあ、結局的外れな推理だったかー、カルタのひらめきもまだまだだねー結構良い線行っているかなーなんて思ったけど…」
「はははミス水無月、まだまだ修行不足だったようだね!まあ、ボクというあまりにも高い壁を前にして閃きを披露する…そのチャレンジ精神だけは認めるけどね!」
「ニコラス殿もそこまで核心を突くような閃きを出していないような…?」
「まっ、出してきたとしても信憑性皆無ですけどね。なんせ容疑者なんですし…」
まあニコラスの態度については今さらと考えておくとして……。
――実は今回の事件…焼死ではなく絞死でした、というだけで話は終わらない。
「…皆聞いてくれ……今回の殺人について、実はもう1つ大切なことがあるんだ」
「えっ…もう一つ、ですか?一体どのような…」
「…さっき俺達は、犯人によって鮫島は絞殺をされたと言った。だけど、それは“ただの絞殺じゃない”可能性があるんだ……」
「ただ、の、絞殺、じゃ無い、?」
「要は普通の絞められかたじゃないってことだよね……ええっとそれって…キュッじゃなくて、ギチチチって感じってこと?」
「いや、効果音の話じゃないと思うんだけどねぇ……」
「……絞殺に種類なんてあるの?」
疑問に思った風切は詳しそうな雨竜へと視線を向ける。それに対し雨竜は“ああ”と首肯した。
「……そして恐ろしいことに水無月の言っていることもあながち間違いじゃ無い。今我々が話題としている“絞殺”とは、先ほど言ったようにロープなどの紐類を首に巻き付け、そして水平に圧迫し呼吸を困難にさせる殺し方の事を差している。そして、手や腕を使って首を圧迫する方法もあり、それを扼殺(やくさつ)…。固定した縄を首に掛け、斜めに圧迫する縊死(いし)……つまりは“首吊り”なんてものもある」
「……成程、思ったよりも分けられてるんだ」
「……」ポカーン
「大変なんだよねぇ!小早川さんの脳みそがオーバーヒートして顔が埴輪みたいになってるんだよねぇ!!」
「完璧に置いてけぼりにされたら~人間ってあんな顔になるんだね~」
「頭に氷枕乗せとけば、次期に治るですよ」
――そう、雨竜が言うように首を絞めて殺すことにも、種類と名前がある。その中でも鮫島は…
【選択肢】
1) 手で絞め殺された
2) 首を吊るようにして殺された
3) 縄で直接絞め殺された
A.首を吊るようにして殺された
「そうかっ……!」
「その中でも鮫島は、“首を吊るようにして絞め殺された”……その可能性が高いんだ」
「……ロープをクロスさせてとか……自分の手でとかじゃなくて?」
「よりにもよって吊るようにして……でござるか?偏見かもしれぬが…その方法は主に、自害用の手段に思えるでござるが…」
「ああ、本来であればそのような詳しい死因は、顕微鏡的検査や解剖などをして、判別する必要があるんだがなぁ」
「こんな、限定された環境、だ、と、詳しく、調べられな、い…」
「そうだ。そうなのだが……折木よ。貴様何故首吊りと…憶測がだせるのだ?」
「憶測なんてナンセンスだぜドクター雨竜。ミスターマイフレンドはキミと同じように、何かしら根拠を持って、縊死を選択した……そうだろう?」
「言葉に意味があるように、言った言葉にも理由があるんだ。僕の言葉にもきっとそれが込められている…いつか世界を救うと信じてね」
「……」
勿論あるんだろう?と言わんばかりの重い期待感がニコラスから発せられた。……まあ確かに、そのとおり、根拠らしき物はある。
……首を吊って殺された、その可能性を高めるための証拠……俺は思い出す。鮫島の死と深く関係しているかもしれない。雲居と共に目撃したあの“光景”を。
【コトダマ提出】
【紙袋を被った誰か)
「そうかっ……!」
「ああ。薄い糸口だが……皆、1つ思い出して欲しい。捜査が始まる前にしていた雲居の話を…」
俺からの問いかけに、皆はしばし沈黙が走り、少々不安になったがすぐに“あっ!”と声が上がり出す。どうやら、思い出してくれたようだ。俺は内心胸をなで下ろす。
「覚えてるよ~例の黒ずくめの不審者の話でしょ~?」
「エリア2に蠢く怪しき影……ああ分かっているとも。人は誰しも孤独な影を背負っている…無限の旅人だとね…」
「…大まかにですが私も覚えています!!あの雲居さんの頭をかち割って、プールで姿を消した…確かそうでしたよね!」
「かち割ってたら私は既にこの世の人じゃないですよ…多少こぶになっただけです。でも、私を強襲したあいつは確か…………――――!……成程。あのあんちきしょうの話が、それに繋がってくるわけですね」
「おっ、どうやらミス雲居も何かしら気づいたみたいだね…」
「その閃き詳しくプリーズ!!できるだけ短めに!!」
「……例の不審者が姿を消す前、俺達はプールの天上で“首を吊った不審者”を目撃していたんだ……」
「…首を吊った?」
「ちょいと待ちな!……鮫島の死因は絞殺……その消えた不審者が首を吊っていたってことは…まさか!」
俺と雲居が図書館の大火事に気づく前、忽然と消えた一抹の夢の如き記憶。この証拠と今まで示唆されてきた鮫島の死因、この二つを紐付けていくと………あの不審者の正体が見えてくる……。
あの不審者は――――
【怪しい人物を指定しろ!】
⇒サメジマ ジョウノスケ
「黒づくめの不審者の正体は殺された鮫島本人……俺はそう考えている」
俺は今は亡き鮫島の遺影へと指を向け、そう言い放った。
「ええええーーー不審者の正体が鮫島さんだったんですか!!」
「ぬわんですってええええええええええエ!!!!!!………意外な展開っぽかったので、ちょっと驚いてみましタ」
「いや、なんであんたが顎を外してるんだよねぇ!!………でも……ん?ん?」
「あいや、ちょっと待ってほしいでござる……確かその不信な輩は……姿を消す前に雲居殿を襲ったはずでは…」
「両方とも鮫島君だったってこと~?」
やはりというか、俺の話に疑問が湧いて出てくる。だけど説明不足だった故か、ほんの少し俺の考えていることと微妙な食い違いが見えた。
「すまん…ざっくりと言い過ぎたな…………正確には…首を吊っていた方の不審者だ」
「………じゃあ、死体になった鮫島さんが…雲居さんを襲ったということですか?」
「もう時系列がグチャグチャなんだよねぇ、それだとB級パニック系映画が始まっちゃうんだよねぇ」
「とっちらかりそうだから折木の言いたいことまとめるですよ?まず始めに、エリア2に忽然と現れた不審者……そいつは私を襲ったその後、すぐにプールの天井の足場へと移動したんです。……そこで自分の被っていた黒いローブと紙袋を鮫島に着せて…同じく足場に吊したんです」
「……まさか、そのときに鮫島さんを……?」
「……具体的にいつ殺されたかは不明ですが。いつ殺されてたとしても……私達が見た首を吊った不審者の光景が完成するです」
「でも……吊して殺したって言うなら…どうやって?正直イメージが湧かない…」
「ははは、ならばこの名探偵たるボクが説明しようではないか。まず始めに、紐を固定できるような強固な“ひっかけ”を用意し、そこに紐をくくりつける。そしてもう片方にミスター鮫島の首を結ぶ……あとはある程度の高さから落とせば…あら不思議というわけだよ、キミ」
「あら不思議って……もっと言い方があるじゃないですか?あり得なくは無い手法ですけどね……昔は絞首刑っていう、意図的に縊死させる手段もあったわけですから。今回の殺人も、それに倣った可能性はあるです。まっ、なんでそんな事をしたのか、その理由はよく分からないですけど…」
「ふふふ、その処刑法の場合高所から落下するエネルギーで頸椎損傷を起こし、場合によっては骨が折れて即死するが……今回のケースでは首の骨が折れてなかった故、通常の首吊りと見て良いだろう……」
「その首を吊られる間、鮫島は黙して待っていたということでござるか!?」
「ああそのとおりだよミスター忍者。何故なら、ミスター鮫島を前もって気絶させておけば良いんだからね。それで…殺されるまでの沈黙の問題は解決さ…」
「むむむむ、まるで最初から知っていましたーかのような口ぶり……ますます容疑者の色が濃くなってきたですね」
「そうだったねえ!!ボクは筆頭容疑者だった…勢いのまま話してて忘れてちまってたよ!キミィ!!」
「その手のロープを見るですよ!!節穴ですか!!」
「だってもう手の感覚が無くなってきたからね!あってないようなものだよ!!」
「……流石に不憫に思えてきたから、ちょっと緩めるさね」
話が円滑に進んでいる中…“ちょっと、待って…!とぎこちないながらも、重みのある待ったが入った。
「……贄波?」
「ごめんね…折木くん、雲居ちゃん。今までの証言聞いてた、けど、やっぱりその、少し、いやかなり、へかなって思っ、て?」
「…変?」
「2人、が、吊された不審者を目撃した……それは分かって、たんだけ、ど。でも、その人が、鮫島くん、っていうのは、ちょっと強引かな、って、思った、の」
「強引って…私らはこの目で見たんですよ。首吊りした生身の人間を」
「ううん、それだ、と、足りない、かな?実際に、死体があったの、は、図書館だったんだ、よ?なんで、プールに居た、鮫島くん、が、移動してる、の?」
「人というのは何処にでも居て…そしてどこに居ないものさ……それは命在るモノだけに限らず、小さな亡骸にも言えることさ」
「ふむよく考えてみると確かにおかしな話だな、全体を通してみると眉唾なる怪奇現象にしか聞こえん」
「かかかかか、怪奇現象って……ちょっと詳しく説明してほしいんだよねぇ」
「案の上でしたが、専門の人が食いついてきました!!」
確かに、贄波の言い分も分かる。俺だって最初は、何で鮫島の死体が、図書館にあるのか…その理由がわからなかった。もしや、俺達は幻覚でも見せられたのでは無いか…そう思わせるくらい、不可思議な現象が俺達の目の前で起こっていた。だけど捜査をする中で…それが幻覚なんかじゃないと分かった。
だから少しずつ、あの首吊り死体が、鮫島だという根拠を固めていこう。
「…確かに死体が移動したなんて、超常現象も良いところだ…だけど、もう一つ、その黒づくめの不審者が、鮫島だという根拠があるんだ」
【コトダマ提出】
【黒いローブ)
「これだっ……!」
俺は、死体の側にて沈んでいた…怪しいローブを全員の前に提出する。それを見て何人かが、見覚えがあるというように、気づきの声が上がった。
「それは…黒いローブ?あっ!もしかして倉庫にあったあのコスプレ用のローブ!?………でもなんで?」
「この黒いローブは、雲居を襲った不審者が身につけていた物と同じ代物だ……そしてこれは、図書館の広場にあった死体の側……水路の中に沈んでいたんだ」
「鮫島さんの死体の側って…もう完璧な証拠じゃありませんか!……でも待って下さい……てことは…鮫島さんは“自殺”ということですか!?」
「確かにその線も捨てきれんが……首を絞められた後に、身を焼かれていることを考えると……自殺の線は薄い」
「それに、アイツはあたしの頭を殴って、まるでこっちに来て下さーい。て感じで誘導してきたんです。……そんなの自殺するようなヤツの行動には見えないですよ」
「…やんわりと全否定された気分で…少々心が痛いですね」
「……可能性が無くは無いから。問題無い」
「ち・な・み・に……モノパンモノパン、万が一自殺だった場合って…誰がクロって判定されるの?」
「はい、質問されたのでお答えさせていただくト…それは自殺した人自身がクロ扱いとなりまス。つまり今回の場合ですと…鮫島クンの遺影に対して投票する形になりますネ」
「成程~。でも~今の方々の話を聞く限りだと~自殺は無いね~~~」
「そういうことだ。そして、これが鮫島の側にあったということは…鮫島は黒いローブを着ていた可能性が高い…だとすると…鮫島はプールで――」
【反論】
「それは違う、よ!!」
【反論】
「……折木、くん」
「贄波…」
「ごめん、ね?折角、わたしの疑問に、答えてくれた、のに。でも……やっぱり」
「……そうか…いやそうだよな…。お前のことだ、まだまだ納得できるような論理性は無い…そう言いたいんだろ?」
「うん…最後まで、付き合って、ね?わたしが、納得できる、まで」
「ああ…分かった」
【反論ショーダウン】 【開始】
「折木くん」
「の」
「話を聞いても」
「ね?」
「やっぱり強引さが否めない」
「そう思ったん」
「だ…」
「違うんじゃ、無い、か…」
「もう一つ、可能性があるん、じゃない、か」
「って」
「そう思った、の」
「…もう一つの可能性?」
「贄波…お前は何を考えているんだ?」
「私は、ね」
「こう思うん」
「だ…」
「鮫島くん、は」
「最初から
「【図書館の中に居た】んじゃ無いか」
「て…」
「本当は」
「折木くん達が見た」
「首吊り死体」
「は」
「【犯人だった】んじゃ」
「ないか…って」
「俺達が見た首吊り死体は…」
「紙袋と、黒いローブを被ってた…」
「そしてその黒いローブは、鮫島の死体の側にあったんだ」
「これを、お前はどう説明するんだ?」
「きっと」
「そのローブ」
「は」
「別の物なんじゃ」
「ないか?」
「って」
「思うん…だ」
「【もう1枚のローブ】」
「が」
「あれば」
「今の犯行は」
「可能」
「そう思うんだけ、ど」
「どうか、な?]
【倉庫の状態)⇒【もう1枚のローブ】
「その言葉切らせて貰う…」
【BREAK!!!】
「いや、贄波、もう1枚のロープが使われたという可能性は低い…。何故なら倉庫の中から持ち出された物品から、それが読み取れるからだ。そうだよな!沼野、長門!」
そう呼びかけると、2人は待ってましたと言わんばかりに、頷き返す。
「うん。大体1つずつ持ってかれてるよ~」
「復唱すると、倉庫の中からは…ロープ1本、スタンガン1つ、マッチ、紙袋1つ、灯油タンクが数個、運動用の靴が1組、コスプレ用の黒いローブが1着持ち出されていたでござる」
「そんなに持ち出されていたのかい!!」
「火事の原因とおぼしき灯油やマッチ……それに殺害用のロープまでぇ……あそこは殺人道具の温床だなぁ…」
「ですが…そんなに大量の小道具が…いつ、持ち出されてしまったのでしょうか…」
「きっと風が運んでくれたのさ…あいつは気まぐれだけど…根は良いやつだからね…きっと今回も、そうやって気を利かせてくれたのさ」
「なんてはた迷惑な風なんですか…嘘くささがもうファンタジーを飛び越えて、ポルターガイストを疑うですよ」
「ぽぽぽぽぽ、ポルターガイスト!それについてももう少し、詳しく…ねぇ!!」
「安心したまえ!!ポルターなんたらは100%関係ないよ!キミ!だからその荒い鼻息を抑えることをオススメするよ?」
「……とにかく。この倉庫の様子から、あの図書館に沈んでいたローブは、プールで首を吊っていたときに来ていたローブと同じはずだ」
「…もし2枚以上使われてたら…その分倉庫から減ってるはず」
「………成程、分かった、それじゃあ、私からはもう何も無い、かな?」
納得?したように表情を和らげる贄波を見て安心した俺は、1度呼吸を整える。しかし、疑問に次ぐ疑問と連鎖するように、うーんと隣の水無月から、首を傾げるような声が上がった。
「だとしたらさ……鮫島くん死体って…何で、図書館にあるの?同一だったとしたら、何か余計にすっちゃかめっちゃかにならない?」
「はい!まるで“てれぽーと”なる奇っ怪な現象が起きています!!」
「そのような術は、我が一族に伝わる秘伝忍術の中にも無いでござる……」
「ちなみに興味本位で聞くけど…どんな術があるの?」
「商品に付いている値札シールを綺麗に剥がす術、米を炊くときの水の量を正確に計れる術、ワイシャツの首元の汚れを綺麗に落とす術……その他色々でござるな」
「あったらあったですごーく便利な術ですけど…正直しょーもないのばっかですね……」
「消えた君は今もここに、ここにいた君は今どこに……。きっとどこにでも居るって、僕は分かっているさ…さて、今度は僕らの番だ…どこに行く?」
「分かってないからこんがらがってるんだけどねぇ…」
「じゃあ次は、死体の移動手段についての議論と行くかぁ…」
新たな疑問と出てきた……死体の移動手段。それについても今ある手札で、何とか解決することが出来る。
【ノンストップ議論】 【開始】
「鮫島さんの死体がプールにあったとしたら……」
「どうして図書館に死体が移動なさっているのでしょうか?」
「まさか本当に『瞬間移動』!?」
急に超能力系の話が出てきたんだよねぇ
それは、流石に違う、か、な?
「いや、クロが鮫島殿を背負い…」
「そして『図書館へ投げた』というはどうでござろう?」
怪力の野球選手じゃあるまいし…
野球選手でも無理だと思うよ~
「ふふふふふふ…姿無き回廊があの2つの施設には存在し…」
「犯人はそれを使って、死体と共に【姿を消した】…」
「ふっ…決定的だなぁ…」
移動どころか消えちまってるさね
また自分の世界に浸ってるですよ…
「…簡単なことさ」
「死体は風に乗って…どこまでも『飛んでいった』んだよ」
「どこまでも……どこまでもね…」
雨竜よりも浸ってるヤツがいたですよ
瞬間移動より奇天烈な現象なんだよねぇ
スーパーマンかな?
「はぁ……皆現実的じゃ無い話ばっか」
「プールと図書館が【繋がってない】以上…」
「…この議論に終着点はない」
む、難しいんだよねぇ
確かに…
【プールの窓につけられたワイヤー)⇒【繋がっていない】
「それは違うぞっ!!」
【BREAK!!!】
「いや風切。プールと図書館は…繋がってたんだ」
「…嘘。それって本当?」
「繋がっていた……まさか!!実はエリア2の施設全てに地下があり、混沌に交わりし地底へと繋がっていたと言うのかぁ!?」
「だったら早くそれをいうさね!!今までの議論の根底からごろんとひっくり返っちまうよ!!」
「いや…そうじゃない。繋がっていたのは図書館とプールだけだ」
「図書館と、プールが地下で繋がっていたのか…のか…?」
「はぁ…地下から離れろ………繋がっていたのはプールの一角……天井の足場に踏み入れなければ触れられない、プールの窓に施設と施設を繋げる橋のような物があった」
「窓って、こと、は、あのワイヤーのこ、と?」
「“ワイヤ~”?」
「ああ、その橋の一部…それがワイヤーだ…それが天井の窓にくくりつけられていた。ほどけないよう、しっかりとな」
「ふむふむ……実際に調査に行ってない身分だけど…これは明らかに今までに無かった代物ですなぁ」
「ああ認めるとも。天上の世界へと踏み入れたときにそれは夜闇中で、キラリと光りを放っていたとも」
「アンタも知ってたんかい…ならもっと回りくどい表現を抑えるさね」
「……今更ですよ」
「でも、その糸くずが死体の瞬間移動と、どう関連してくるのかねぇ?」
この証拠は、単体では何の意味も持たない糸くずでしかない。だけどもう1つ。“この証拠”を組み合わせることで、死体の瞬間移動トリックを解決する……文字通り糸口になる。
【コトダマ提出】
【図書館の天窓につけられたフックとワイヤー)
「これだっ……!」
「このワイヤーと同じ物が……図書館に備え付けられた窓に引っかかっていた。しかも、プールと丁度対面の位置にある、窓にな」
「しかも窓も開けられちゃってるよ!!どうぞ入ってきて下さいと言わんばかりに!!」
「図書館を根城にしてる私が断言するですけど……これはグレートに怪しいです。こんなフック、昨日の夕ご飯の時間まで図書館には無かった物です」
「プールと図書館のが対面している窓にワイヤーが取り付けられていた………ということは…」
「“ワイヤーで繋がっていた~”、ってことになるね~」
「……確かにそうなる…すごく面倒くさい感じだけど……」
「しかし折木よ…何故そのようにワイヤーを張る必要があったのだ?」
「……?あっそうですよね。先ほどの議論でも出ていましたけど、森を突っ切ることだってできたのにどうしてそんなことを……」
「ふむ…それについては…発言の許可をもらう前に、ボクから言わせて貰うけど……。犯人がワイヤーを使ったのは、そういう手段を“とらざる終えなかった”からなのさ」
「…とらざる終えなかった?でござるか」
犯人が図書館とプールの間にワイヤーを引いた理由。…ニコラスが言うように、犯人は森に足を踏みいれることが出来なかった……何故なら――
【コトダマ提出】
【棘の森)
「これだっ!!」
「二つの施設に生い茂る森…いやそれだけじゃない、エリア2の森の地面には……大量の棘が張り巡らされていたから…そうだなニコラス
「ああ勿論だとも!!正解だよ!キミ」
「…それに古家…エリア2を調査していた時、実際に痛感したお前なら、わかるよな?」
そう問いかけると、古家は遠いい目をしながら“ああ~そんなこともあったねぇ”とつぶやく。
「…そうだねぇ、経験者のあたしから言わせてもらえるなら……通り抜けるのは不可能なんだよねぇ……多分だけど草履とか、長靴とかだったら、生地の薄い靴だったら足が血だらけになるんだよねぇ」
「な、何とおぞましいことでしょう……お暇を潰すために森へピクニックにすらいけないとは……」
「あのおどろおどろしい森の中でランチをする勇気は、さすがのアタシにもないさね」
「…話を聞く限りだと…エリア2の森の特性上…犯人は、棘の森を突っ切ることはできない。故に、犯人はワイヤーを施設の間に張り……そして鮫島の死体を移動させるのに使った……そう総括できるなぁ…」
「…ワイヤーを、使っ、て?」
「キミたち!よく考えてみたまえ、今分かっているのはワイヤーを張ったという事実のみ…それを犯人はどのように使ったのか…まずはそれを話し合っていこうじゃないか!!」
「ニコラスくんなら、その方法知ってるんじゃないの?」
「知るわけ無いじゃないか!!なんたってボクは犯人なんかじゃ無いんだからね!」
…ワイヤーを張って、そしてどうやって鮫島を移動させたのか……その具体的な運搬方法を今度は議論していこう。
【ノンストップ議論】 【開始】
「ワイヤーが2つの施設の間に架かってたのは分かったけど…」
「その先は真っ暗闇さね…」
一寸先は闇…というわけですね!
使う場面としては正しくないですよ…
褒めるべきはその言葉を知ってることだね!キミ!
「態々特殊な道具を使ってワイヤーを張ってるんだから~」
「鮫島くんの死体移動の何かしらに使われたのは~」
「間違いないかな~?」
…想像してみるとものすごい面倒くさい
前提は分かっているのだがなぁ…
「じゃあ話し合うべきは【具体的な移動方法】だね!」
「カルタ的には『ワイヤーの上を渡った』って思うんだよね!」
「つまり犯人は沼野くんしかいないよね!!忍者だし!!」
それに賛成だぁ!!!
えっ!?
最後のセリフは要らなかったんだよねぇ…
「都合の良いときだけ忍者扱いは止めて欲しいでござる!!」
「大道芸人じゃあるまいし!」
「それよりも、ワイヤーを『掴んで渡った』のでは…?」
チンパンジーじゃ無いんですから…
……SAS○KE?
「ワイヤーだけ、じゃなく、て」
「もう一つ…『道具を使った』の、かも?」
道具…ですか?
また道具~?
「可能性の追求は常に自由であるべきだ…」
「ボクは思うんだ…」
「そもそもあんなワイヤーは【使われなかった】ってね」
いきなり考えを放棄し出したですよ
素晴らしい潔さだね!!
…うがち過ぎ
【落ちていた滑車)⇒『道具を使った』
「それに賛成だ!!」
【BREAK!!!】
「そうなんだ贄波。鮫島の運搬には、ワイヤーと、もう一つ道具が使われていたんだ…」
「……道具が使われていた?また?…一体どんな?」
「…“滑車”だよ、図書館の窓の真下。それも、フックが掛けられていた窓の下に、“これ”が落ちていたんだ」
「…深淵とも取れる暗闇の中、見つけたのは微かなる光明……ああそうだね。君はここにいたんだね…」
「未だ誰とも知らぬ誰かを探していたのか…!こいつ、できるぅ…」
「あんたら本当に飽きないね…じゃなくて…。その滑車が、窓の近くに落ちてたって話なら…まさにって感じさね!」
「…少なくとも~どこかにポイ捨てするような物じゃ無いから~、不自然に目立ってるよ~」
「……そう。犯人はこの滑車と、張られたワイヤーを組み合わせて、鮫島の運搬を行ったんだ」
そう断言するように言い切ると、何故か、芳しくない空気が蔓延りだす。言わずもがな、納得していない雰囲気であった。
「それなら一つ、気になる部分があるでござる」
「何だ?沼野」
「…先ほどの運搬したという推理と合わせて考えると…犯人はつまり、天上の足場にぶら下がった鮫島を持ち上げて…さらには滑車で、こう、空中を移動した……ということになるござるが…」
「はいそうなりますね!!覚えの悪い私でも完璧に分かりました!!」
「と、すると……でござるよ?その滑車の形状からして…犯人は、こうやって、片手に滑車を、そしてもう片方の手で鮫島殿を持って、滑空した……ということになるでござるな」
「……何か…怪盗が宝箱を持って逃げ去るイメージが湧いたんだよねぇ」
「ミスター忍者!ミス小早川の脳みそですら理解できたこの推理のどこに疑問点があるというんだい?」
「…“重さ”でござる。ほら鮫島殿って、拙者ら全員と比較しても、中々に大柄でござったろ?」
「…そうですね。考えてみると、現行の推理を行うとするなら……中々の腕力が前提になるですね」
沼野が呈したように、今まで言ってきたことを行うには、大柄な鮫島を持ち上げたり、抱えたりする必要がある。鮫島よりも小柄な生徒や、腕力の乏しい生徒が犯行を行うのは、ハッキリ言って困難を極める。だけど――。
「女子の中だったら反町くらいがギリギリだと思うですけど…――でも男子、その中でもニコラス…あんたの腕力ならできるんじゃないんですか?」
「おやおやおや?疑いは自然と晴れるかなと考えていたら…段々追い詰められている気がしてきたぜ?」
「ふははは…確かに貴様なら何とか出来なくもなさそうだな。…ちなみにワタシがやった場合、持ち上げて5秒立った頃に、足からポッキリ折れていくな!」
「……それは、自慢…なの?…分からない」
「ていうか…スルーしちゃったけど、なんでアタシも頭数入ってるさね…」
「普段の、行、い?」
――そう、鮫島を運べるほどの腕力があれば…この犯行は可能だ。だからこそ、その条件をクリアしているニコラスが疑われるのは必然と言える。それに比例するように、真偽を問う全員分の視線が、ニコラスに集中した。
「はは!この衆目、悪くない気分だね!!では、ミス雲居のオーダーにお答えしようじゃないか!!…ああそうだとも、持てなくもない、そう答えさせてもらうよ?」
「で、出来なくも、ない……」
「もう呆れる位、間を置いて、呆れる位堂々と宣言したんだよねぇ」
「……これって決定的?」
その言葉を聞いて、俺は眉をひそめる。一体ヤツは何故自分の首を締めていく……助かりたいのか、助かりたくないのか…ハッキリして欲しい言動である。俺は憎たらしい目つきをニコラスに向ける。しかしヤツはニヒルな笑みを崩さず…そのまま胸を張る。俺は一度、大きくため息を吐く。
「…いや…そんなことは無い。今までの犯行は、ニコラスや反町だけじゃなく、誰でも行うことは可能だ」
「えっ!誰でも!?……てことは…まさかドーピング!!」
「ぬわにぃ…!!ニコラス!錬金術師とあろう貴様が人間の禁忌に触れるとはなんたる所業、生命への冒涜であるぞぉ!!」
「ははは!!安心した前よ禁忌とは生命や金を作ることだから、ドーピングはまだ人間の枠組みに収まる行為だぜ?……まあ勿論法律的にはアウトだけどね!ちなみボクがそういった薬を作ると、数分間だけアメコミばりの超人的なパワーに目覚めることができるぜ?」
「すごい!!結構欲しいかも!!マッスルマッスル!!」
「その代わりに…とても不味い…というなんて特徴があったりするんだ。そこのところ……どう思う?ミスター折木」
「ぶっ…お前!!まさか!!」
「ははっ冗談だよキミ!!あれは本当にただの栄養ドリンク。人格が入れ替わったり、チート能力に目覚めたりはしないさ!!」
「一体どんな怪しい取引があっただよねぇ…」
「折木さん、お薬は使用容量を守れば毒にはなりませんから…きっと大丈夫ですよ!師匠も許してくれます!!」
一瞬、前に飲まされた栄養ドリンクらしき物がその超人薬だと勘違いしてしまった。普通に気分が悪苦鳴ってきた気がする。……ていうか何度も言うが、小早川、お前の言う師匠は俺の何なんだ…親か。
「ふぅ…いや、そんなことじゃなくて。鮫島が大柄だろうとなんだろうと、男子だろうと女子だろうと、犯行を行うことはできる」
「……何か凄そう」
「いやぁ、捨てる神あれば拾う神ありとはこのことだね!この場合は見捨てない神というのかな?まっ、どっちでも良いけど、あとは頼んだよ!キミ!」
――それはこの“特殊”な道具が、証明している。
【コトダマ提出】
【モノパワーハンド)
「そうかっ……!」
「……この美術館にあった道具…“モノパワーハンド”を使えば…誰でも、鮫島を持ち上げたり、運んだりすることは可能だ」
俺は見せつけるように、モノパワーハンドの情報を持ち出し。全員に見せつける。それを見て、小早川と反町が、”ああ!“と、思い当たったように、大きく頷く。
「確かに!テコの原理やら何やらで持ち上げられるその手袋なら…犯行は可能です!!…なんなら持ち出されてますし」
「それ先に言って欲しかったんだよねぇ!?」
「悪い、言うタイミングが無かったさね」
「ふむ…持ち出されたことが真実であれば…確かにニコラスでも、運動音痴のワタシでも可能ということか……ふははははは!!!これは中々面白くなってきたのはないか!?」
そして、このモノパワーハンドは今現在も、行方不明。今回の犯人によって使われた可能性は限りなく高い。
「では今の話を踏まえて、話を戻すと……クロはその奇っ怪なる手袋を手にはめて、鮫島殿を持ち運び…」
「そして、予め張っておいたワイヤーに滑車を掛けてぇ…そして闇に包み込まれた天を渡った……ということかぁ」
「きっと図書館の側に落ちていた滑車は…鮫島くんを抱えて、図書館に降り立って、そんで渡ったことを感づかれないようにワイヤーを切った拍子に落ちた物って考えたら良いのかな?」
「随分アグレッシブな犯人なんだよねぇ」
「スパイ映画のレビューを聞いてる気分ですよ」
「今まで見てきた物は、きっと僕らへのメッセージだったのさ……ココにいるよ…僕を見つけておくれよ…そう送ってくれてるのさ」
「ワイヤー云々の話はもう分かったし。事件に深く関係してるのも理解したけど……だったらそのワイヤーはそもそも一体何なんさね?」
「倉庫から持ち出された物ではないよね~」
「うむ…くすねられたものの中には…そのような滑車も…ワイヤーも無かったでござる……」
「えっ…じゃあ無から作り出されたって事?……じゃあやっぱり…ニコラスくん?」
「Hey!等価交換の法則をしているかな?10を渡したら、必ず10を返す…0から10を作り出すことなんて、それこそ禁忌だぜ?ミス水無月。そして流石に犯人扱いが雑すぎて引いている今日この頃だよ、キミ」
勿論皆の言うように、このワイヤーと滑車は、倉庫からも、誰かが作り出した物でも無い。何故ならこれも。モノパワーハンドと同じ…もう1つ、特殊な道具に備わっていた物なのだから。
【コトダマ提出】
【どこでもワイヤー)
「これしか…ないっ!」
「このワイヤーは倉庫から持ち出されたものじゃない……とある特殊な道具に備わっていた物。モノパワーハンドと同じ美術館から持ち出されたものなんだ。そうだろ?小早川、反町」
「は、はい!確かに。手袋と同じくどこでもワイヤーなる道具が無くなっていました!!」
「…まだ無くなってたのかねぇ!!今回のクロは本当に節操がないねぇ!!」
「まあ。コロシアイをして下さいって感じの品々だったから……使って当然だと思うですけど…ここまで存分に使われると…何だか畏怖すら覚えるですよ」
確かに…今回のクロは特殊な道具を上限である2つ借りてまで、周到な準備をし、そして鮫島を殺害している。とてもじゃないが…衝動的に行った殺人ではない…絶対に殺して、絶対にバレたくない。そんな強い意志が感じられた。
「ふーむ……犯人は七つ道具のうち2つの道具が使われたのはハッキリしたが、キミ達。一つ疑問に思ったことはないかい?」
「……疑問。ですか?未だ疑問だらけすぎて、どれのことを言っているのやらと…」
「……右に同じ」
「…犯人が“どこでもワイヤー”を使ったことに対してさ。想像したまえよキミ達?図書館の窓にフックがあって、プールの窓にそのワイヤーの切れ端があったってことは…はつまり」
「このワイヤー射出機なるものは…”プール側から放たれた”、ということでござるな」
「そうさ……犯人はこのどこでもワイヤー使って、プールと図書館を繋いだんだ」
「…ああ、そうだな」
「考えてみたまえ、両施設を繋げるためには……この射出機から放たれるフックを目的の場所…つまり図書館の窓に引っかけなければならない。これは単純に見えて、かなり繊細なプロセスだとボクは思うんだ」
「……射撃選手の風切さん、なら、ともかく…素人の私達、には、繋げること自体、が、難しい、てこ、と?」
「その通りだよ!ミスにえな――――」
「あっ…そんなことは有りませんヨ?だってモノパンの七つ道具なんですからラ。殺人に使って欲しいものなのに、何で誰でも使えないようにしてあると思ってるんですカ?天性のノーコンでも無い限り、このどこでもワイヤーは誰でも使えまス。特別な才能も技術も…この道具たちの前では必要ありまっせーン」
何やら核心を突こうとニコラスはつらつらと言葉を並べていたが……それをぶち壊すようにモノパンはそれを否定する。それを聞いたニコラスは…指を突き上げたまま…その場で石像のように固まってしまった。
「……おーい、大丈夫ですか。ニコラス」
「おおっと!放心していたよ!ふむ、密かにボクへのヘイトを軽減させようと思ったけど…まさか、思わぬ助け船を出てきてしまうとは…………いや、まさか技術が必要じゃなかっただなんて……とんだ赤っ恥をかいてしまったよ!キミ!!」
「ふふふ…ミスターニコラス、まだまだ修行不足だったみたいだね!まあ、カルタというあまりにも高い壁を前にして閃きを披露する…そのチャレンジ精神だけは認めてあげちゃうよ!」
「さっきの意趣返しみたいな被りぶりなんだよねぇ…」
「……よくわかんないけど、あらぬ疑いを回避できた気分…ふぅ」
裁判が始まってしばらく、ようやくここまで来たような気持ちだった。昨夜、エリア2で何が起こったのか…その一部が分かったような…安心感を思わせる雰囲気が辺りを満たしだした。
すると“あのー”と、恐る恐ると擬音がつきそうな、そんな声が上がる。…見てみると、行儀良く手を挙げる小早川の姿あった。
「鮫島さんの死体移動についてはわかったんですけど……1つ宜しいでしょうか?」
「…?何か読み方がわからないところでもあったですか?」
「いえ…漢字の話じゃなくて。その、ちょっと考えてみたんですけど……少しばかりひっかかってることがありまして……。雲居さんを襲った犯人は、プールに折木さんと雲居さんをおびき寄せて、死体を見せて……そしてお二方が居なくなった後、鮫島さんの死体を回収して、図書館へワイヤーをたどって移動したたってことで良いんですよね?」
「おお、その通りさね。梓葉……あんた本当にあの梓葉かい?」
「あまりにも模範的なまとめ具合に内心戦慄してるあたしがいるんだよねぇ…」
「恐怖とは常に、目の間に現れる物では無い…そうは思っていたけど、知らぬ存ぜぬうちに…ここまでとはね…僕ですら怖さを知ってしまったよ」
「どういうことですか!落合さんまで!!私は正真正銘の小早川梓葉です!」
「それで…小早川…何が引っかかっているんだ?」
「はい!!あの、死体を折木さん達に見せつけているときなんですけど……犯人は”どこ”にいらっしゃったんでしょうか?」
俺は小早川の疑問、はて、と首を傾げる。そして、しばらく思考する。
「ええ…それは。もう……ねぇ。どこに居たかっていうと……あれ?どこにいたのかねぇ?」
俺は自分の記憶を掘り出し…すぐにハッとなる。…俺達があの首吊りをした鮫島を見たとき、天上の足場を含めた施設の中には誰1人、人が存在していなかった事実に。
「…どこにも…居なかった」
「ふむ…これは当たり前のようで…中々虚を突くような意見だね。さてミスター折木、これをどう考える?」
「ニコラス…お前本格的に丸投げしてきたな…」
「そりゃあボクはとらわれの身の王子だからね…いつしゃべれなく出来るよう、断頭台に首を掛けられているようなものだからね」
「んな残酷な仕打ちをした覚えはないですよ」
「フン……隣に怪物を用意して…良く言う」
「…おい雨竜。今アタシのこと怪物って言ったかい……………でも、そうだね…何だか懐かしい気分さね」
「結構やばい雰囲気から、急に浸りだしたんだよねぇ!?」
しかし、小早川に指摘されたこの疑問…俺達が施設内にいたときクロは何処かに隠れていたのか……1度、頭の中で俯瞰的に見てみるか…。どこか…身を潜められそうな場所が見つかるかもしれない……。
【スポットセレクト】 【開始】
怪しい場所を選択しろ!
「そうかっ……!」
頭に地図を描くように考え、そしてふと、アイディアを思いつく。もしかしたら、もしかしたら犯人は……。
「――――犯人は……“外”にいたんじゃないか?」
「……外、に?」
「あの森の中に隠れていた…ということでござるか?」
「でも施設の周りは棘の森だらけ…隠れるにも相応のリスクが…ある気がするんだよねぇ」
「いや森の中じゃ無い……1箇所だけあるんだ。森に足を付けず…さらに、俺達がいつ外に出てもすぐに中に戻れる様な場所が……」
「ふあはははは!!そんな場所があるわけ無かろう!空を飛んでいない限り不可能よぉ」
「いや、その通り…犯人は空を飛んでいる…いや浮いている様な状態だったんだ」
「えっ…ワタシの案採用?いまいち想像はつかんが……まあ喜んでおいてやる…ふあはは」
「本当にいまいちな反応だよ~」
「でっ?具体的にどういうことなんですか?浮いてるとか、身を潜めるとか……もっと本質を突いて説明するですよ」
「なら雲居…昨夜の事を思い出してくれ……特に、死体を見上げて、それからすぐに”はしご”を登った時を……」
「…え?……うーーーーーーーーーん……………えっ……あーーー、まさか…”あそこ”にですか?」
「分かってしまったみたいだね。ああそうともさ。何時だって小さなきっかけはすぐ側にある…僕に覚えがあるさ」
「落合!ややこしくなるから…少し大人しくしてな。折木、雲居!何がわかったんさね!」
「……犯人は”はしご”に登りながら、外に隠れていたんだ…」
「はしごって…あのプールの真横に備えられてる…あのはしごのことだよねぇ……そこに登ってってことは…」
「…うむむむむむむ…申し訳ありません。想像力が足りませんでした……」
「つまり……犯人はこういう風に身を潜めていたんだ」
「おお!そのはしごで身を潜めながら入口の窓から折木殿達を見張り……そして外に出たのを見計らって、また施設の中に入った…ということでござるな!」
「な、成程…だから折木さん達には姿が見えなかったんですね!!」
「……なんかトカゲみたい」
「いやむしろ、忍者みたいだよねー」チラッチラッ
「拙者を露骨に見やるなでござる!!はしごにへばりつくぐらい誰でもできるでござる!」
「…しかしまぁ…そこまで考えると……犯人は身を潜めながら、図書館へ鮫島を運搬した…という理論にも信憑性が持てるなぁ……」
「そうだね~、何だかんだ形にはなってるしね~」
何とかこれで…犯人はどういう風にして、犯行を行ったのか…その一連の流れは分かった。長い時間をかけて、俺達はやっとここまでこぎ着ける事が出来た。そのおかげ、胸の奥で、小さな達成感のようなものまで感じられた。
――――だけど
――――なんだ、この感じは?
――――事件のあらましを解明できたというのに
――――全員が納得するような…答えを得たのに
――――どうして、答えを導いた俺自身が…
――――腑に落ちないんだ?
――――一体…何なんだ?
すると――
「――――だったら。結局ニコラスが犯人、ってことですね」
一瞬の逡巡、その言葉を聞いた俺はすぐ、我に返る。そして、雲居に見開いた目を向けた。
「……どういうことだ?」
「折木。あんた、自分で自分の首を絞めているの気づいていたですか?自分の推理を顧みてみるですよ……そしてその犯行を最も行いやすいのは……ニコラスなんです」
「あっ!そうだよね!ニコラスくん、突然図書館の中から出てきたんだもんね!!」
「……うむむむ……クロが鮫島の運搬を行ったとしたら、最終的に図書館の中に居るのは必然……つまりぃ…」
「紅き炎に包まれていたのは誰か…それは君だったのか……いや、答えを出すのは僕じゃない…それを知っている自分自身さ」
俺は冷や汗を流す。まずい。とても不味い雰囲気だ。そうだ、俺はニコラスはクロじゃ無い。そう証明するハズだったのに…議論はその逆へと進んでしまっていた。
「じゃあ、ほほ、本当の本当にニコラス君が…犯人なのかねぇ……」
「…今のところの流れからすると。そう」
そしてその雰囲気は次々と他の生徒達を飲み込み…段々とニコラスが犯人だと…そう思わせてしまうように、黒いムードが広がっていく…。
「何だか変な感じですが……これが今回の事件の答えなんでしょうか…?」
「…よし!それなら…早速投票タイムさね!!」
…もしかして、さっきの不穏な予感は、これを予見していたのだろうか?…ニコラスは犯人だ、それを覆すことは出来ない真実なのだと…そう心の何処かで俺自身が叫んでいたのだろうか?
――もしかしたら。本当に……ニコラスが……?
瞬間…俺の中の自分自身が揺らいだような気がした。自然と…瞳はニコラスへと向かっていた。極限まで追い詰められているハズなのに…犯人だと吊され掛けているハズなのに……彼は――――
――――笑っていた
「落ち着きたまえ。マイフレンド。気持ちなんてものは、景気づけるための些細な隠し味のようなものさ。その味は決して全面に出たりはしない……真実はいつも証拠で語る物だ」
”まっ、容疑者であるボクが言うのも、何だけどね”…誰にでも無く…焦るべき場面で何故笑っているの理解できない俺に向け、そうコトダマを打ち出した…。
――そうだ
何を考えてるんだ俺は……俺は最初から、ニコラスが犯人じゃないと証明してみせるために、今ここに立っているんだ。俺が…俺自身が信じる真実を信じ抜かなくて…誰が信じるんだ…!
お前が犯人なんかじゃ無いってことを。最初から、そう心でわかっていた…俺自身の直感で、そうじゃないって分かってるんだ。後は真実を物語る証拠を突きつければ…それで良いだけなんだ――――
【コトダマ提出】
【ニコラスの証言)
「これだっ…!」
「いや…それは違うぞ…雲居。ニコラスは犯人なんかじゃない…むしろ“被害者”だ」
「えっ…犯人かと思ったら…今度は被害者…なのかねぇ?」
「わ、私、もうちんぷんかんぷんです…」
「…安心しなよ。物語は最後に分かれば良いのさ…全てを積み重ねた布石を最後に集め直せば…それでいいのさ」
「……んっん…折木……随分ハッキリと言うじゃ無いですか…ですけどその根拠はまさか…“あの証言”を元にして構築したんじゃないですよね?」
「…あの証言?」
案の上、雲居は食ってかかる。当たり前だ…この証言の信憑性は…今のところ皆無に近い…今だけは…な。
「……そのまさかだ。ニコラスには、日々のルーティンとして…就寝前の読書…大体夜の7時から9時までの2時間…ニコラスは図書館に行くことにしていた…そうだよな?」
「ああその通りだよキミ!ボクは活字という知識の欠片を目に焼き付けてからではないと、安眠することができなくてね。ミスター鮫島が殺された、昨日の夜も同じく読書を嗜んでいたさ!」
「…ん?夜7時から9時…か。もしや…」
「丁度事件が発生する前ですね!!」
「そして…その日の9時頃…読書をしていたニコラスの背後に突然スタンガンか何かが押し当てられた。そして…気絶してしまった」
「スタンガン…って、倉庫の中から持ち出された物品の1つでござらぬか!」
「何だか気になる証言だよ~」
「……じゃあニコラスが被害者というのは」
「そうだ…ニコラスは今回のクロによって気絶させられ…そしてあの火事の中に放り込まれたんだ…」
【反論】
「推理が稚拙なんですよ!!」
【反論】
「待つですよ……その証言…本当に信用できるですか?私の記憶が正しければ…それはニコラス自身から聞いたことのはずです…」
「ああそうだ…。今の証言は、ニコラス自身が言ったものだ。お前も側にいて聞いていただろう…?」
「勿論聞いてたですよ。ですが、その直後に。私はあんたにこう言い聞かせたはずです。“容疑者の証言を鵜呑みにするな”!まさか、忘れたなんて事はないですよね?」
【反論ショーダウン】 【開始】
「気絶させられたと言う話は…」
「ニコラス自身が発現した証言…」
「幾らでもねつ造なんて可能です…」
「証言の中のスタンガンの話だって…」
「倉庫から持ってかれた話だって」
「犯行を行ったのはニコラスだと考えれば…」
「全部知ってて当然…」
「作り話を考えることだって容易なんですよ!!」
「落ち着いて考えてみろ。ニコラスは最初から疑われていた身なんだぞ?」
「何でこんな作りもの染みた話をわざわざ疑う俺達の前でする?」
「まるで自分への疑いを助長させているようじゃないか…」
「苦しいですね」
「まさに苦し紛れって感じの反証です」
「…その程度の証明じゃ、ニコラスへの疑いを拭う事なんて…」
「夢のまた夢ですよ」
「私は自分の目で見た事しか信じない主義なんです」
「事件があった夜も…」
「死体を見失ったあたし達は火事になった図書館へ向かった」
「そしてニコラスはその図書館から転がり出てきた…」
「あんたの推理通りの事が起こったとするなら…」
「これは鮫島を図書館へ運搬した直後としか考えられないんですよ!!」
「ああそうだな…その通りだ」
「あのとき図書館から出てきた時が、鮫島を運搬した直後とするなら…」
「これほどジャストなタイミングは無い…」
「今…納得したですね?」
「なら決まりです」
「ニコラスが…【犯人として充分】すぎるこの状況…」
「捜査をする前と変わらず…」
「クロはニコラス!!」
「これ以外に答えは無いんですよ!!」
【どこでもワイヤー) or【モノパワーハンド)⇒【犯人として充分】
「その矛盾……見切ったぞ…!!」
【BREAK!!!】
「いや……充分じゃ無いんだ…」
俺のその一言に、雲居はいぶかしげに眉を上げた。
「…どういうことですか?…何が足りないって言うんですか?」
「足りない物を補うのもまた…人生さ」
「…落合。大人しく国に帰って」
「………もしもニコラスがクロだったら…プールから図書館に死体を移動させた直後だったとしたら……必ず手元に無くちゃいけない証拠があるよな?」
「……?ええと…」
「鮫島くんを吊したロープとか?それに黒いローブ……あっ、でもこれは図書館の水路に落ちてたっけ?」
「…もしかし、て…『モノパンの七つ道具』の、こと?」
「そう…。この事件は、“どこでもワイヤー”と“モノパワーハンド”その2つの特殊な道具が利用されている………しかも、死体の鮫島の移動直後なら…どちらも所持していたはずだ」
“だけど…”俺は言いよどまず…続けていく。
「図書館から転がり出てきたニコラスの手元には、その道具の姿は無かった……“何も持っていなかったんだ”…そして今もその道具の所在は不明…そうだよね?反町」
「あ、ああ…そうだねえ」
「……何も、持っていなかったって………」
「雲居…当事者だったお前も…その確認していたはずだ」
「……そんなの……あたしたちがたどり着く前に、あの火事の中で燃やして、隠滅したに決まってるです……」
「あっそれは無理ですネ。…毒とか爆弾とか、一過性のアイテムは別として…銃とか鍵とか、リユースの効く道具は絶対的な防御力を誇っておりまス。そんな簡単に処理されてしまったら、こんなに持ち上げているワタクシの立つ瀬がありませン。……つまりあれです。いっぱい使って、いっぱい殺せるよ!ってことですネ!!」
「最後の、言葉、は、いらな、い」
「図書館の中に隠したとしても…かなり目立つ代物だった故…見つかってない方がおかしいでござる」
「……っ!だったら…事件が発覚してすぐに、森とかどっかに捨てた……とか」
「いや…雲居。捜査中ずっとニコラスに張り付いていたお前だろ?…そんな怪しい素振りなんて一切させないようにしていたはずだ…」
道具を処分もしくは隠したという可能性を次々と否定され、雲居は”ぐぬぬぬぬ…”と声を絞り出す。
「……ですけど……そうだとしたら…他に鮫島を殺人出来る人間が…図書館の本を燃やしたヤツが…もっと分からなくなるです」
「タイミング的には~充分だったんだよね~?」
「確かに絶妙だったかもしれない…だけど俺達がプールから図書館へ向かった時間…そこにもインターバルがあった…!逃げだそうと思えば…逃げ出せる」
「……むむむむむぅ…矛盾の上に矛盾が重なっているなぁ…」
「…だけど今の話が本当ならさ。ニコラスくんが犯人の可能性、割と低くなってきたんじゃない?」
「いや……しかし、何も持っていないからといって、疑いを消すのもいささか……」
「いえ!!それでも私は…あの、ニコラスさんは犯人じゃないと思います!!」
「う~~ん、でもやっぱり~無理がある気がするよ~」
「むむむむ…あたしとしても、ニコラス君じゃ無い気がするんだよねぇ」
「……ふぅ…何かもう面倒くさくなってきた…後は任せる」
「…意見が、完全に、真っ二つ、になっちゃった、ね…」
ガヤガヤと俺達がニコラスが犯人かどうかの真偽を話し合っている中…“真っ二つに分かれてしまった…”そう贄波が発言した、その瞬間――
『ちょーーーーーーとお待ちくださーーーーーイ!!!!!』
しばらく耳にしていなかった…”あの”声が裁判場に響いた。
「んん???んんんんんんんン?今、真っ二つ、今真っ二つ………そう仰りましたネ!?」
玉座から立ち上がり…”モノパン”は両手を上空に掲げ、大声を上げていた。俺達は何事かと、そんなモノパンへと奇異の目を向ける。
「いや皆まで言わないで下さイ……確かに、確かに聞きましたヨ!キミタチの間に深い、深ーーーーーーーい溝が出来てしまったことオ!」
「そんな大げさな深さじゃないと思うけどねぇ…」
「ですが、そういうことならお任せ下さイ!!!そんなときこそ、我がジオ・ペンタゴンが誇る“変形裁判場”の出番でス!!」
「…変形裁判場?」
「待って下さい!!今でもこんな複雑な形をしているのに、これ以上形が変わっては。私の頭がグチャグチャに変形してしまいそうです!!」
「…至ってシンプルな円形だと思うよ~」
…とりあえず、変形については置いておくとして…。今のこの状況なら、あともう一押しだ。
――この事件の犯人は、ニコラスじゃない…
…この意見こそが真実であると諦めず証明するんだ。…そのために、諦めず、望みを捨てず……全員の意見を一つにまとめていこう…。
落ち着いて証拠を整理すれば……大丈夫。
モノパンは持っていたステッキを、目の前に現れた装置へと突き刺した。
すると、俺達が立っていた証言台は……螺旋状に入り乱れ…そして横並びに終着し…目の前にはニコラスを犯人と主張する生徒達が並んでいた。真横には並ぶのは…それは違うと…逆の主張をする生徒達。
――――ここが事件の流れ左右する重要な局面だ
――――気張っていこう
――――だって、俺は1人じゃ無いんだからな
『意見が見事に真っ二つに分かれてしまいましたね』
『そんな時は議論スクラムの出番です!!』
『議論スクラムでは議論のテーマに対して、二つのチームに分かれて…お互いの意見をぶつかっていただきます』
『といっても、システムはゲームとほぼ同じ……既にプレイされた方々であれば…もう分かっていますよね?』
『ヒートアップした全員を、折木君が頑張って成立させる…そして議論を進めていく…そういう形になります。…考えてみると彼も相当苦労人気質ですね(笑)』
『…本小説においては…最初↓以下の様に始まります』
犯人だ! 犯人じゃない!
『ニコラス』 『折木』
『雲居』 『小早川』
『雨竜』 『古家』
『長門』 『落合』
『反町』 『贄波』
『沼野』 『水無月』
『風切』
『これが今回の場合ですね。左が主人公側で、右が敵側…と覚えていただければ大丈夫です』
『そこからは…ゲームと同じように、相手側のキーワード(【】←で囲われて単語)に対して、主人公側が意見をぶつけていく…これくらい説明すれば…あとはもう読み慣れていただければ…ですね』
『読者様には、誰と誰が意見をぶつけ合うのか…そして最後のラストスパートをお楽しみ頂けたらな…と思います』
『…説明は以上となります。分からない場合は……特に何もありません。…申し訳ありません』
= 意= =対=
= 見= =立=
【ニコラスは本当に犯人なのか?】
犯人だ! 犯人じゃない!
『ニコラス』 『折木』
『雲居』 『小早川』
『雨竜』 『古家』
『長門』 『落合』
『反町』 『贄波』
『沼野』 『水無月』
『風切』
【議論スクラム】 【開始】
ニコラス「さぁてキミ達…ここが【正念場】だ。存分にボクの身の潔白を…証明しておくれよ?」
「古家!!!!」
古家「その【正念場】に何であんたがそっち側に居るんだよねぇ!!初っぱなから立ち位置で遊ばないで欲しいんだよねぇ!!」
反町「ここまで事件の流れを聞く限りだと…ニコラスが鮫島の死体を図書館に移して、【火事】を起こした…そう考えるのが自然さね」
「小早川!!」
小早川「自然だからと言って決めつけてはいけません!ニコラスさんは【火事】に巻き込まれた側の可能性だってあるんですから!!」
長門「だけど~ニコラス君が襲われたことだって~本人が言ってるわけだし~【偽装】の可能性だってあるよね~」
「贄波!」
贄波「でも、【偽装】できない、事実も、あるよ、ね?道具の有無、とか…」
雨竜「ぬるいなぁ…道具など煮るなり焼くなり隠すなり…どうとでも【処理】できる…。我が淀みなく…銀河と揶揄されしこの心眼は、これこそが真実だと…そう語っているぅ…」
「……落合」
落合「君達が思っている以上に…道具の隠匿は困難だ、なんて使う本人が囁いていた気もするよ…あれは気のせいだったのかな……もしかしたら、そうだったのかもしれないね……。それにしても、【処理】…か、無骨な言葉だね。そんな堅苦しいものよりも、もっと柔らかな表現が――」
沼野「しかし【タイミング】的には完璧であったはずでござる!!鮫島殿の死体が運搬された後と考えれば、犯人が逃げいる隙は無いでござる!」
「水無月!!」
水無月「蛍ちゃんと公平くん…この2人がプールから図書館へ向かう途中。僅かだけど、逃げ出す【タイミング】はあったはずだよ!!」
雲居「……あんたら死にたいんですか?そんな僅かな【可能性】だけで、ニコラスを信じ切るって言うんですか?」
「俺が!!」
折木「…【可能性】なんかじゃない…俺は、俺達は…これこそが真実だと、そう信じているんだ!!」
CROUCH BIND
SET!
「これが俺達の答えだっ!!」
「これが私達の答えです!!」
「これがあたし達の答えなんだよねぇ!!」
「これが僕達の答えだよ……」
「これが、私達の答え……!」
「これがカルタ達の答えだよ!!」
【BREAK!!!】
「…確かに、今までの推理であれば、ニコラスが犯人の可能性が高いのかも知れない…だけどそれは、可能性の話だ…確定じゃ無い。だから、みんな、信じてくれ…!ニコラスは…犯人なんかじゃ無い!」
「……折木、くん」
「…こういうのはあんまり口にしたか無かったですけど……これは学級裁判なんですよ?仲良しこよしで友達をかばい合う、そんな生ぬるい場所じゃないんです。それでも…あんたはニコラスを信じるっていうんですか?」
「ああ…俺は信じるべきことを、信じるべき人を…信じ切ってみせる……!それが自分自身の信じた道だ」
俺は強く、そして鋭い意志を持って…雲居を見つめた。雲居も、険しい表情のまま、俺と視線を交わす。それからしばらく……雲居は、大きなため息を吐き、言葉を紡ぎ出す。
「………………………………分かったですよ。私の負けです。反町、ニコラスの縄をほどいてやるです」
「おや?もういいのかい?個人的には容疑者の気持ちをもう少し体感しておきたかったんだけどね」
「…いやどんな気持ちさね。でも。良いのかい?」
「はぁ…ここまで犯人じゃ無いなんて言われたら…こうするしかないですよ。それにちょっとやりすぎたって感じもあったですし……正直止めてくれてどこかホッとしてるですよ。悪かったですね、ニコラス」
「はは!全然問題無いさ!それに、言う程ミス雲居も、本気でボクを疑っているわけでは無さそうだしね?」
「えっ!!そうだったんですか!」
「はぁ…?今までの態度をどう曲解したらそんな芸術的な着地を決められるですか…!もしかしなくても、国語の成績1ですよね」
「残念ながら成績は悪くは無いし!感情読解は得意中の得意と断言させて貰うよ!!……もし仮にボクを疑いきっているのなら…捜査の前に気合いを入れないし、ボクの言葉なんて一切無碍にしないだろうしね…」
「…言われてみれば…異様に積極的でござったしな」
「はぁ……そんなことこそ有るわけ無いですよ…ただ本を焼かれた腹いせに、真実の究明は徹底的にして、逃げ場を無くす寸前まで落とし込んでやろうって思っただけですよ」
「…確かに、言葉の通り容赦なかった」
「いやぁ本当に逃げ場が無かったから恐ろしいところだね!キミ!!もしかしたらと思うと寒気が止まらなくなってきたね!!」
「……その割にあんた、遊びまくってきた気がするんだよねぇ」
…まあいろいろあったが…これで…やっとニコラスが犯人であるという意見の声は少なくなり、逆の意見に全員の意見がまとまったようだ。何となく一安心した気分だ。
――――だけどやっぱり
――――何か、何かが引っかかる
――――ニコラスは犯人と扱われなくなったというのに
――――先ほども感じた不穏な予感は拭われない
――――どういうことだ?
――――充分進んできたはずなのに……進みきったはずなのに
――――それは、単なる足踏だったような
――――ズブズブと…真実を隠す、沼にハマってしまっているだけのような……
――――一体、何なんだ?
――――……この違和感は……?
【学級裁判】
【中断】
【モノパン劇場】
「ふぅ…中々に長丁場になってしまいましたね………でも皆さん…分かってます?これ、前半なんですヨ?
「いやぁこわいですねぇ…恐ろしいでねェ…後半には、一体どんな謎が隠されているのでしょうねェ…」
「まぁ…今回はどうやら作者も難易度調整をミスってかなりヤバめの事件になってしまったらしいので…多分隠れすぎて見えていませネ」
「それでも既に…答えが分かっちゃった人は……正直凄すぎて何にも言えませんネ。もう凄すぎて、…よく頑張ったで賞をお送りさせていただきたい気分でス」
「………………」
「あっ、勿論気分というだけで、分かっても特に何もありませんけどネ…」
「えっ?ヒントを寄越せって?」
「そうですねェ……ちょっとヒントを言うなら……とある証拠をもっと深く見てみれば…真実の究明は可能やも、知れませんネ?」
「くぷぷぷ、くぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ………」
『生き残りメンバー:残り13人』
【超高校級の特待生】⇒【超高校級の不幸?】折木 公平(おれき こうへい)
【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)
【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)
【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)
【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)
【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)
【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)
【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)
【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)
【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)
【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)
【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)
【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)
『死亡者:計3人』
【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)
【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)
【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)
お疲れ様です。とりま前編です。疲れた…。
【コラム】
名前の由来コーナー 鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)編
作者から一言:「丈」って文字を使いたかった
コンセプトは、ボケ続ける関西弁使い。他作品を見て回ってみると、関西弁を使うキャラはツッコミが多い印象を受けたので、ボケ専にしてみました。しらけようが寒かろうが、面白いことを追求する変わり者みたいなキャラになりましたが…。
名字は、パイロットということで、対照になるよう海関連の名前にしました。理由はありません。徒然なるままに大学の講義を受けていたときに、ピンと来た時は今でも忘れません。名前は、作者から一言でも書いたように、「丈」という字を使いたかったのです。でも一文字だけだと味気がなかったので、長くしてみました。結構お気に入りの名前です。