ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~   作:水鳥ばんちょ

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Chapter2 -非日常編- 10日目 裁判パート オシオキ編

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――いかないで

 

 

 

 

 ――いかないで

 

 

 

 

 

 ――私を

 

 

 

 

 ーー私を"置いて"…いかないで

 

 

 

 

 

 

 ――私はまだ、ココで生きているの

 

 

 

 

 

 

 ――ココに私の居場所は何処にも無いの

 

 

 

 

 

 ――だから

 

 

 

 

 

 

 ――こんな”海の底”に置いていかないで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――パパ…ママ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【学級裁判場】

 

 

 

 

 

 

 

「ななんとなんと…!!!二連続の大、大、正、解ッ!!恐るべき偽装トリックを使い、鮫島 丈ノ介クンを殺害したのは……」

 

 

 とうとう――決まってしまった。

 

 

「超高校級のダイバー、長門凛音サンでしタ~!!」

 

 

 とうとう、たどり着いてしまった…。

 

 

「………」

 

 

 ――――とても現実とは思えないその真実に

 

 

 今まで、選び…進み…そして信じ切って…疑いようのない程、突き詰めてきた真実が、今目の前にあるはずなのに……。

 

 この場を巡っていたのは…喜びや歓喜などでは無く、突き刺さるほどの沈黙だけだった。

 

 誰も言葉を発することできない無音の空間だけが、この場を巡っていた。

 

 

「長門さん……」

 

 

 だけど…張り詰めた静寂の均衡を破るように、誰かが小さく声を上げた。

 

 ――古家だった。

 

 胸に置いた拳に力を籠めた古家が、震えた瞳で長門を睨んでいた。

 

 

「長門、さん……あんたが、鮫島君を……”殺した”…!!そうなんだねぇ………!?」

 

 

 古家は、重く濁った物を吐き出すようにそう言い放った。明らかに、ぶつけるような聞き方であった。

 

 

「…………………………………」

 

 

 だけど長門は、その問いに肯定も否定も…何も返すことはなかった。ずっとずっと…投票が始まる寸前から今まで、放心したまま、何かを呟き続けるだけだった。

 

 その言葉は何なのか…真実を受け入れまいと、この事実を否定している言葉なのか…はたまた俺達への恨み節か……何一つ、分からなかった…。

 

 

「長門ぉ…!アンタ、ちったぁ反応したらどうだい!!」

 

 

 一切の反応を見せないその様子にしびれを切らし…強い怒気と、"悲哀"を纏った反町が長門に詰め寄った。その鬼気迫る勢いに、思わず足が竦んでしまうようだった。

 

 

「………………………」

 

 

 だけどそんな勢いに、長門は短くなってしまった髪の毛を揺らすだけで、心ここにあらずのままを維持していた。

 

 

「長門ぉ!!今古家が言ったことが聞こえなかったのかい!?本当にあんたが…鮫島を……あんたが……っ!」

 

 

 事実の真偽を問おうとする途中、反町は涙ぐんでいるように、声を震わせ、言葉を躓かせた。

 

 

「反町…言いたいことは分かる。だけど一端、落ち着いてくれ」

 

「正気かい!?折木!!」

 

「反町!…殺したのか否かは…投票でもう、結果は出てるんです…!……それを改めて、本人に言わせるのは、酷ってもんです。折木は、そう言ってるんです…」

 

「…………くそっ!!だったら聞かせるさね…長門!!どうして、アンタみたい、人畜無害なヤツが…なんで……鮫島を………」

 

 

 頭を彼女の胸へと打ち付けながら、反町は長門の服を掴む。まるで懇願しているようにそう問うた。それほどまでに、この事件の真実は、反町には堪えるものだったのだ。

 

 俺だって、生徒達だって…同じ気持ちだ。表情をみれば…そんなのは一目瞭然だったから。

 

 

「……反町さん…お気持ちは分かります……」

 

 

 こと垂れるように俯く反町の体を支えながら、長門と反町を引き離す小早川。離れると同時に、小早川は長門へと、突き刺すような眼差しを向けた。

 

 

「……長門さん…今の言葉聞こえていましたよね?ちゃんと聞かれてる理由も分かっていますよね?……酷い事をしているのは承知の上で、もう一度お聞きします。……どうして鮫島さんを、殺したんですか?」

 

 

 まるで自分に言い聞かせるように、静かな声で長門へと問いかけた。いつもは賑やかな雰囲気を纏う彼女でも…今回ばかりは、明らかな怒りを持っていた。

 

 

「…だっ、そうですよ…長門。言う事は勿論、あるですよね?」

 

「だんまりは止めて……このままじゃ、全然納得できない」

 

 

 それに同調して、まるで人形のようにこと垂れた長門へ、ポツポツとに言葉を投げた。だけど…彼女は視線を合わせず、決して俺達へと言葉を向けることはなかった。

 

 すると、何かに気付いたように雨竜が怪訝な顔つきで、"まさか…"と声を上げた。

 

 

「……貴様このまま逃げるつもりか…?罪を犯したまま…十字架も背負わず……このまま諦めたように死んで全てを闇に葬り去るつもりか?」

 

「おおっと!!それは、真実の求道者と呼ばれたボクとしては聞き捨てならない言葉だね!!悪い事は言わない、そろそろ現実に戻って、真実を述べることをオススメさせてもらうよ?キミ」

 

「詩を紡ぐには、必ず口が無ければいけない訳じゃ無い。筆を取るのも、音で表現するのも…それは紡ぐ者の自由さ。まあ僕としては、口で言う方が…好きかな?」

 

「いや、落合殿の好みを聞いてるわけでは……ないのでござるが……?」

 

 

 言われてしまえば、長門のその姿勢は逃げともとれた。だけどそれは看過できないと、また生徒達から、促すような言葉が投げられた。

 

 

 

 ――――すると

 

 

「……?」

 

 

 夢から覚めたばかりのように、長門はユラリと此方に目を向けた。俺達は密かに身構えた。"何が飛び出してくるのか?"…今までの彼女の言動を思い出してしまったから…恐れてしまったから。

 

 

 だけど…

 

 

「はぁ~?"何で"~?」

 

 

 飛び出してきたのは…とても嫌悪的で、とても否定的な回答であった。

 

 

「……な、なんでって…」

 

「…そりゃあ気になるからだよ。ミス長門。どうしてキミという平和的な人間が、唾棄すべき殺人に走ってしまったのか。そして何故、ミスター鮫島を狙ったのか……それが気になって仕方ないからだよ…キミ」

 

「あと、この施設からの脱出を無下にしたのかも含めてです……徹頭徹尾理解不能なあんたの意図…洗いざらい話して貰うですよ」

 

「聞く権利、位…私達、にも、あるはず、だよ、ね?」

 

 

 その通りだった。彼らが言ったことの全てに、俺達の聞きたいことの全てが詰まっていた。

 

 

「はぁ…そういう自己本位的な理由じゃ無くてさ~…私は~何で~、そんな言いたくも無い話を~話さなきゃいけないの~~って言いたいんだけど~?」

 

 

 虚ろな目をした長門は、それらに完全なる拒否の言葉を吐き捨てた。予想外の答えだった故に、俺達は動揺した。同時に、その無責任な態度に怒りも表わした。

 

 

「貴様…本当に逃げるつもりだったのかぁ…!」

 

「……この期に及んで黙秘権の行使するのはルール違反。流石の拙者でも看過できんでござるぞ。長門殿」

 

「…それに、自己本位なのはそっちです。まるで子供の我が儘みたいに適当こねて…矛盾に矛盾を重ねるのにも限度があるです…!」

 

 

 連なる質問への回答に対し、長門はもう一度大きなため息を吐いた。まるで嫌気が差したような、深い呼吸だった。そして悪びれもせず、言ってのけた。

 

 

「…イヤだよ~だ」

 

「長門さん!!!本当に…どうしてしまったのですか!」

 

「あんたいい加減にしな!!!今自分がどういう立場なのか、理解できてんのかい!?」

 

「理解しているよ~。理解してるけど~説明すんのがイヤだって言ってんの~」

 

「全然分かってるような態度に見えない!!開き直りも過ぎてる感じ!!」

 

「後さ~そういう自白の強要って言うの~?正直、人としてどうかしてるんじゃない~?皆さ~学校で『人の嫌がることはを無理強いしてはいけません』って学んでこなかったの~?」

 

「…少なくとも。人を殺して良いとは…学んでこなかった」

 

 

 周りが何を言っても、長門は支離滅裂な理由を述べ続けた。そんな彼女に、俺達は怒りを通り越し、絶句してしまった。"一体コイツは何を言っているんだ?"、そうとしか言えなかった。

 

 

「…前の裁判の時はさ~、陽炎坂君は~お涙頂戴って感じで~、自分のことペラペラと話してたけどさ~。あれってさ~よくよく考えてみれば~、結局な話、無意味な時間だったじゃな~い~?」

 

「……無意味、だとぉ?」

 

「うんそうだよ~、だって~この学級裁判って極論さ~、"誰が誰を殺したのか当てる"ってだけでしょ~?殺した方法はともかくとしてさ~~~、そんな事に至った経緯なんてさ~ぶっちゃけ必要ないじゃ~ん?」

 

 

 裁判というシステムを根底からひっくり返すような、極論だった。だけどそんな偏った持論に、俺達は何も言い返すことは出来なかった。

 

 本来動機とは、裁判官が刑の重さを計る上で必要な判断材料の一つ。そこで問われているのは情状酌量の余地があるのか、救いようのない悪質さが見られるかの有無。

 だけど、この時点で犯人が長門だと分かってしまった今、言ってしまうと、動機などもう必要無いのだ。既にオシオキという名の死刑で、刑の重さは決まってしまっているのだから。

 

 つまり、動機を話す義務など、この場面には存在していないのだ。言うも言わないも、当人の自由なのだ。だから俺達は、何も言い返すことが出来なかった。

 

 

「それじゃあキミは…何の意味も無く、無差別にボク達に不和をもたらした…そういうことなのかい?」

 

「別にそうじゃないけどさ~」

 

「だったら…!」

 

「でもさ~、それを話したからって言って~おしおきされませ~ん、なんてある訳無いでしょ~?それともなに~?話すことで~モノパンが特別措置か何かをしてくれたりするの~?」

 

「既に多数決でクロの負けが決定しているので…おしおきという刑罰は決定済みでス。免れる術も、特別措置も、この状況では存在しませン!」

 

 

 何故か偉そうに、モノパンは長門の言葉を補足した。より一層、反論しにくくなってしまった。

 

 

「それに~、裁判で私のこと吊し上げた連中にさ~何で話したくも無い自分の身の上話を話さなきゃいけないの~?」

 

「………そんなの、自分勝手すぎるよ!凛音ちゃん、もうそんな無意味なこと言うのは止めて!!」

 

「貴様ぁ……結局はそれが本音であろう!!ワタシ達への腹いせに、このような嫌がらせをおこなっているのであろう!!」

 

「まあそんな気持ちもあるかも知れないけど~~、でも違うってば~。もっとドライになろうよ~って話~。犯人が決まりました~、分かりました~、オシオキしま~す、はい終わり~…って感じでさ~終われば良いじゃ~んって私は言いたいの~」

 

「そんな、簡単に割り切れません!!!」

 

「じゃあ今ココで慣れてね~」

 

 

 狂っているようだった。暴論を振りかざし、俺達の言葉を悉くはたき落とす姿に、今までとは違った怒りが湧き出てくるようだった。

 

 

「命を…自分の命を何だと思っているんだ…!!!自分自身の家族に申し訳ないと思わないのか……!」

 

 

 命を軽んじる言葉に耐えられなかった俺は、押し殺したような声で、言葉をぶつけた。

 

 長門は、すぅっと、虚ろな目を、何も見えていない様な空虚な目を、俺へと向けた。

 

 

「はぁ?…………――――居るわけないじゃん」

 

「……え?」

 

 

 一瞬何を言ってるの分からなかった。ただ決して、聞き逃してはいけない一言であることだけは、分かった。

 

 

「ど、どういう……ことだ?」

 

 

 反射的に、俺はそう聞き返してしまった。

 

 

 

「私のこと待ってくれてる家族なんて…何処にも居ないんだよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞いてはいけない事を、聞いてしまったようだった。周りの生徒達も、耳を疑うように愕然としていた。

 

 

「……居ないって…」

 

「それってどういうことだって~?皆そればっかりだよね~?ちょっと飽きてきちゃったよ~……」

 

「仕方の無い話さ…人を知ることと、疑問は同義…疑問を投じることこそが、人を知る最大の近道なんだからね?」

 

「はぁ……今の言葉は~その通り…まんまの意味だよ~、ココを出ても、何処に行っても。私を待ってる家族は、この世のどこにもそんざいしていないんだよ~」

 

 

 長門はしょうが無さ気に、無機質に、軽々しくしてはいけない断言を軽々しく口にする。その内容だけでなく、彼女のそのあっけなさに、俺達は愕然としてしまっていた。

 

 

「…皆はさ~10数年前に起こった『大津波事件』って覚えてたりする~?」

 

 

 俺達が動揺を広げる最中、長門は徐に過去の出来事らしき話をし始めた。

 

 10数年前……?大津波…?

 

 何処かで聞いたことがある単語の数々だったが、俺は"首を傾げた"。…対照的に、生徒達は苦虫をかみつぶしたように、表情を変えていくのが分かった。

 

 

「そ、それって…"あの"、事件のことだよねぇ…」

 

「…うん……覚えてる…。忘れようにも忘れられない」

 

「…当事者でこそありませんでしたが……痛ましいできごとと、記憶しております…はい」

 

「映像で見たことがあるさね……でもそれだけ見ても、本当に、悲惨としか言えない光景だったさね…」

 

 

 俺が未だに頭をひねらせている中で、生徒達は悼む様に、悲痛な声を上げていった。俺は、周りと自分とのギャップから、動揺をさらに加速させていった。

 

 

「約1万を越える被害者を出し、今なお、その深い傷跡を残し続けている……歴史的大天災。"原因は未だ不明"、隕石の衝突か、はたま海底火山の噴火か、一切の予兆を見せずに発生した謎多きあの災害のことか…」

 

 

 補足のように雨竜は、覚えの無い"その"災害に付け足しをする。大津波、そして天災、それらのキーワードから俺は思い出した。

 

 

 

『10数年程前に、旅客機の事故や、"大津波"、暴力団グループによる抗争が、ニュースで頻発していたことを…覚えているかい?』

 

 

 それは2回目の報告会の後…ニコラスから聞かせて貰った、あの話。何処かで聞いたことがあると思ったらと、まさかこんな場面で耳にするなんて…。俺は驚きながらも、納得するように頷いた。

 

 

「…でもどうして、大津波の話が出てくるの?」

 

 

 風切は当然の疑問を投げかけた。

 

 だけど俺は、何となく理解してしまった。どうして今、未曾有の災害の話が、長門の口から出てきたのか、その理由を。

 

 

「私はね~その災害の――――"被害者"だったんだ~」

 

「……!」

 

 

 出来るなら、この予想は当たって欲しくない…そう思っていた。だけど、間違ってなかった。余りにもツラい、的中であった。

 

 

「まあ~ここまで言えば分かってると思うけど~、そこで~パパもママもどっちも死んじゃったんだ~」

 

「そんな……!」

 

 

 懐かしむように…昔の古傷を触るように……長門は目を細めながらそう言いきった。その感情を殺したような口調に、聞かされている俺達の胸が痛むようだった。

 

 

「今でも思い出すんだ~、逃げ遅れた所為で、家族もろとも津波に巻き込まれて…溺れて、そして苦しみながら2人が沈んでいく光景……」

 

 

 想像を絶するほどの悲惨な思い出…。もし自分がその立場であったなら、今に発狂していただろう。

 

 だけど…待てよ?"もろとも"…?

 

 俺はその言葉に引っかかりを覚えた。

 

 

「待て、お前の口ぶりからすると………お前も、その津波に巻き込まれたのか?」

 

「……!そうですよ。あんた、何で…」

 

 

 長門はその言葉を聞き、明らかな作り笑いを浮かべた。

 

 

「そうだよ~、家族と一緒に、津波に呑まれちゃったよ~」

 

「だったら…何故貴様、生き残っておるのだ…!」

 

「忘れちゃったの~?皆~。私の才能のこと…」

 

「………超高校級、の…ダイ、バー」

 

 

 贄波の一言で、息を呑んだ。まさか、そんな…、とさらに当たって欲しくない予測が頭をよぎった。

 

 

「私ってばさ~ダイバーとして本当に恵まれた体質みたいでさ~、異様に発達した肺ととっても硬い皮膚を持ってたんだ~~、でもその"所為"でさ~……生き残っちゃった~」

 

 

 "生き残ってしまった"…その言葉はあまりにも重かった。普通あら喜ぶべき言葉であるはずなのに、何故か、大きな不幸であるかのように聞こえてしまった。

 

 

「災害に見回られたことで…ダイバーとして覚醒し、生き残ってしまった……そういった解釈で間違いないのかな?キミ」

 

「間違いないよ~~、普通だったら家族と一緒に溺れて…海の藻屑になっていたハズなのにさ~~。奇跡的にさ~才能に気付いちゃってさ~生き残っちゃったんだ~」

 

 

 なんてことだろうか…。長門は…自覚し、そして開花してしまった自分の才能に生かされたのだ。そして代償のように、彼女は家族を失ってしまった。自分"だけ"が生き残ってしまったのだ。

 

 

「神様って本当に粋だよね~~~大切な人達を奪ってまで、才能に気づかせてくれるなんてさ~」

 

「……」

 

「確かに…気の毒な話だ…な…」

 

 

 怨嗟すら感じるほどの皮肉であった。神様を信教する反町ですら、その言葉に返す言葉を失っていた。

 

 

「皆にはさ~、きっと皆の事を思ってくれている人が、沢山居るんだろうね~~でもね~私には居ないんだ~……世界中のどこを探してもね~」

 

 

 そこで俺は、思い至った。長門のその過去と、今回の動機である『強制退去』。

 

 それらから導き出されることが何なのか、思い至ってしまった。

 

 

「この施設から……出たく無かった…から」

 

「そうだよ~、皆は外に待ってくれている人が居るけど~、だけど~私には、事を待ってくれる人が居ない……そんな世の中に出ても、ツラいことしか無い。だからココから出たくない。それが~私の動機だよ~」

 

 

 それが……長門の、動機。殺人に走らせた…とてもシンプルな、動機。だけど――――。

 

 

 

 

「いや、それだけが理由じゃ無いんだろ?キミ」

 

「……――――え~?」

 

 

 ニコラスは突くように、長門の違和感に疑問を放った。

 

 

「…どういうことなのだ?ニコラス」

 

「合点がいかないのさ…キミ…それに矛盾も見られた」

 

「矛盾~?そんなの無いと思うけど~?」

 

「では何故、キミはミスター鮫島をあんな物のように、扱い、弄んだんだい?」

 

 

 俺達は鮫島の凄惨な死体を思い出し、苦く表情を歪めた。

 

 

「そんな大災害に遭ったのなら、むしろ人間は命を尊ぶものなのだよ。生き残って良かった、この残された命を懸命に生きよう…とね」

 

 

 "だけど"…一転し、朗らかな表情を鋭くする。

 

 

「ここまで周到に殺人の準備をし、そしてボク達をまとめて殺す算段まで付けていた。キミはボク達を蹴落とすという、真逆に命を軽々しく扱うような行動を取っていた…。そこが、どうしても納得できない」

 

「…それって一般論でしょ~?私は違ったんだよ~」

 

「ふふ…ならば当てて見せようじゃないか。ではまず先に…ミス小早川、ミス長門の今までの発言を覚えているかい?」

 

「……覚えておりません」

 

「…聞く相手を間違ってしまったようだ…非常に申し訳ない。では……ミスター折木」

 

「…『アイツら』………のことか?」

 

「Good!!その通りさ。キミ、段々と探偵の相棒らしくなってきたんじゃないかい?」

 

 

 …誰が相棒だ。内心ツッコんだ。

 

 

 ――だけど、確かに、ニコラスの言うとおり長門はそう言っていた。でも最初は…その言葉の先にあるのは俺達なのかと思っていた。だけど――長門に引導を渡したとき…明らかに、この場に居ない誰かへと向かっていた。

 

 

「ミス長門…恐らくその"アイツら"というのが……キミをここまで狂気に走らせた原因なんじゃないのかい?」

 

 

 口角を上げ、鋭く尖った目線で、長門を差した。…長門は、観念したような大きなため息をついた。

 

 

「……憎たらしいくらいに鋭いね~、ニコラス君って~…」

 

「お褒めにあずかり光栄だよ…ミス長門」

 

「……全然褒めてないよ~……でもさ~~、そんな他人の領域をさ~好き勝手踏み荒らしてさ~楽しい?」

 

「楽しくは無いさ。だけど、そこに私情を持ち込むほど感情屋ではない。何故起こったのかを解きほぐすのも、名探偵として当然のことだからね?キミ」

 

「時々錬金術師ってことを忘れちゃうよ~」

 

 

 そう言いながら…”はぁ~”と終始怠そうな状態を止めない長門。

 

 

「……パパとママは災害の時には居なくなっちゃったけど~~そのときは~別に家族がどこにも居ない訳じゃ無かったんだ~」

 

「もしかして、おじいさまとおばあさま…?でしょうか」

 

「そうだよ~、正確には、おばあちゃんは早くに亡くなってたから…"お爺ちゃんだけだった"よ~…」

 

 

 祖父が居た…なんてことも無い言葉のはずなのに、イヤな重みを感じた。

 

 

「引っ越した当初はさ~、心機一転して~、お爺ちゃんと二人三脚で頑張って行こ~って考えてたんだけどさ~……」

 

 

 長門は少し言いよどんだ。だけど、また押さえ込むように、淡々と語り出した。

 

 

「…生活はできたんだけどさ~、でもさ~、新しく通うことになった学校側が問題だったんだ~」

 

「…もしかして…"いじめ"………」

 

 

 予想だにしていなかった言葉に、俺達は息を呑んだ。長門は顔をしかめた。

 

 

「………そうだよ~、ちょ~っとばかしさ~、いじめられちゃってたんだよね~~」

 

 

 俺達は愕然とした…。あっけらかんとした口調で出てきたこともそうだが…不幸な目にあっただけなのに…それをむち打つような行為をする人間が存在することにも絶句してしまった。顔も知らぬ人間への強い怒りを感じた。

 

 

「何で…そんな酷いことを…!!」

 

「……被災したことによるいじめ………ですね」

 

「雲居!…知ってんのかい?」

 

「ニュースか何かで聞いたことがあるんです。被災者の親族は多額の補償金が国から施されているんです…その大金を狙って、被災者に対する悪質なたかりが横行してた、なんて」

 

「…むごい」

 

「それに加え、災害はその被災者によるモノだという…理不尽な理由をつけられ、排斥されるとも聞いたことがある……恐らく"津波の原因が不明"、というのにもいじめに拍車を掛けていたのだろう………」

 

「皆よく知っているね~、もしかして経験者~?……仲間はずれは当たり前だったけど~…いろんな事言われたんだ~、『どうしてお前が生き残ってるの?』『震災で色々保障されたんだろ、お金出せ』『お前の所為で、津波が起こったんだ』ってさ~……」

 

 

 聞けば聞くほど、その一連の出来事に…胸を締め付けられるようだった。同情なんて本人は望んじゃいないはずなのに。

 

 

「長門…アンタ、そんな仕打ちを受けても誰かに言わなかったのかい…?」

 

「勿論相談したよ~でも誰も取り合ってくれなかったんだ~。『今だけは我慢しろ』『今だけ頑張れば何とかする』…その一点張りだったよ~……目の前にで苦しんでるのに…何で何もしてくれないんだろうね~~」

 

 

 あまりにもツラい出来事であった。助けを求めても、誰1人として手を取ってくれなかった。

 

 

「なんでなんだろうね~。不幸な目に遭った人にさ~、そんな酷い仕打ち加えられるのってさ~~」

 

 

 言葉を止めず、見知らぬ誰か、自分の不幸に加担した誰かに向けて…怒りを孕んだ言葉を紡ぎ続けた。

 

 

「でもさ~その経験があったからこそ~分かったこともあったんだ~」

 

「…分か、った、こと?」

 

「…人ってばさ~ただ虐めやすい理由があるってだけで、人を迫害できるんだってね~。何の呵責も無く~、人の心を殺すことが出来るんだってね~」

 

 

 悟ったように、そう言い切った。極論だと思った。だけど、もしも自分がその立場にいたら…きっと同じ考えにたどり着いてしまっていたかも知れない…。そう思わずにはいられなかった。

 

 

「地獄の日々の中でおじいちゃんだけだったな~、私をいつも励ましてくれて~、いつも笑顔で向かえてくれる、心の拠り所はさ~」

 

 

「……でも、お前。さっき帰りを待ってくれる人が居ないって……」

 

「うんそうだよ~~。………皆ってばさ~、"これ"って覚えてる~?」

 

 

 法被に付けられたポケットから、長門は1枚の封筒を取り出した。

 

 ――――手紙だった。あのとき、陽炎坂が殺人に走る要因となった。モノパンからの動機の手紙であった。宛名の部分には"長門様へ"と書かれていた。

 

 

 長門は、その中身を、俺達へと見せつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『長門様へ 

 

 

   アナタ様のお爺さまは、老衰によってご逝去なされました

 

 

                        モノパン より』   

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その内容を見て、俺達はまた言葉を失った。

 

 

 長門の祖父の家に引き取られたと聞いたときから、不穏な予兆はあった。

 

 

 そして不穏は、今目の前に存在していた。

 

 

 長門は、"本当にひとりぼっちになってしまった"という事実が…俺達の目の前にあった。たった1枚の、手紙によって分からされてしまった。

 

 これが真実でなければどれほど良かったであろうか。だけど陽炎坂の一件で、この手紙の信憑性は証明されている。だからこそ、それが如何に空しい理想であるのかも、理解してしまった。

 

 

「最初はさ~、皆と同じで、外に出たいな~みたいな気持ちはあったよ~?だってお爺ちゃんを1人になんてできないしさ~」

 

「……最初は」

 

「でも~その唯一の家族が死んじゃったなんて現実見せられたらさ~もう何かさ~こう思うようになっちゃったんだよね~」

 

 

「――――だからココに、”一生”居れば…幸せ。そう思ったんだね?」

 

 

 ニコラスは先手を打つように、単純すぎるその答えを口にした。長門はまた呆れたように凍えるような視線をニコラスへ向けた。

 

 

「……そうだよ~。だって、外に出ても~…私を虐めてくるイヤな奴らが沢山居るんだからさ~」

 

「そんなの寡聞はですよ…あんたのいうアイツらなんて、人類のごく一部なんです……あんたが思うよりもずっと、世界は広いんですから…」

 

「でも~、そんな人達が居ないって保障は何処にもないでしょ~?」

 

「…それは」

 

「私が不幸だったから~って言いたい~?」

 

「そのような事を言いたいわけではござらぬ!!」

 

「絶対そうに決まってるよ~。不幸な人間は何処まで行っても…不幸な人間なんだからね~……」

 

 

 その言葉が、強く俺の心に突き刺さった気がした。

 

 …少し、頭が痛くなった……。何故なのかは…分からなかった。

 

 

「…完全なる…人間不信に陥っているなぁ…」

 

「巡り合わせ…それは人を形作る、大切な骨組みの一つさ……だけどそれに致命的なほころびが出てしまうと……人間は自由でいられなくなってしまう……実に…無常だね…」

 

 

 長門の余りの有様に、俺達は閉口してしまった。何を言っても、全て否定されてしまいそうだったから。

 

 

「ここってばさ~、部屋も綺麗だし~、娯楽もまぁ充実してるし~、食糧も尽きることは無いし~正直楽園だと思うんだよね~」

 

「楽園…それは人々の理想であり、夢であり、欲望でもある…確かに…ココはまさに求められても可笑しくない完成された世界。余りにも整いすぎた世界、僕も同調せざる終えないね」

 

「でもさ~そう思ってたらさ~、あんな動機提示されたらさ~、一生私は、ここに居たいんだからさ~、もうココから出られないようにするしか無いよね~?」

 

「だから…殺人を、犯し、て……強制退去、を、防ぎたか、った…」

 

「自分勝手すぎるでござる!!お主、気は確かでござるか!!」

 

 

 長門の言うその結論は…決して納得することのできないものだった。だけど、ココを出たくないという理由としては、理解できてしまった。今まで彼女が経験してきた苦い記憶…それは彼女をここまで偏った思考に陥らせるには充分過ぎたから。

 

 

「どうとでも言えば良いよ~…外は深海と一緒なんだよ~、暗くと、苦しくて、不安だらけで…人は海そのものなんだよ~安心できる所なんて、家族の場所しか無いんだよ~」

 

 

 長門は強く、断言した。

 

 

「まっ、満たされてる人にはさ~そんなこと想像もつかないだろうけどね~~」

 

 

 そして…"誰か"を見て、そう吐き捨てた。いや、きっとこの中の"誰も"を見ていたのだろう。

 

 

「でも…でも、人を殺して、裁判に勝っても…この施設から出なくてはならないのではないですか?」

 

「いいや。それは違うぞ小早川。殺害をして得られるのは、この施設から出られる”権利”だ」

 

「……け、権利…」

 

「そう、義務じゃ、ない、の。…出る、か出ない、か…は本人が、選べる」

 

 

 そう、つまりコロシアイを勝ち抜いたクロは”この世界に居続けてこともできる”のだ。だからこそ、長門は、殺人を犯した。ここに永住するために、不幸しか待っていない、外の世界から身を守るために…。

 

 

「酷いよ凛音ちゃん!…どうしてそんな簡単にカルタ達を切り捨てられるの?外は一杯イヤなことはあるだろうけど…それでももう一度見つければ良かったじゃん!!!それに、大切な人にだったら、"友達"のカルタ達が……」

 

「――――はぁ?友達な訳ないじゃん…何いっちゃってんの~?」

 

「…えっ」

 

 

 長門は水無月の言葉を、何の躊躇いも無く突き放した。水無月はショックを受けたように目を見開いた。

 

 

「私が一番嫌いなのはさ~、たかが2,3日程度で~友達ヅラしてるヤツなんだよね~。私は味方だよ~って親身に接してくれた人もさ~、結局助けてもくれなくて~、最終的には虐めに加担してたしさ~~」

 

「そ、そんな…ことって…」

 

「あるですよ……自分がいじめの標的にされたくないから、自分の身を守るために……それで…」

 

「もう悟っちゃったよね~、友達ヅラしているヤツって、本当は友達ヅラしてるだけだって~。そんな奴が、私の大切な誰かの代わり~?血のつながりなんてそう簡単に再現できるわけないんだよ~。馬鹿じゃないの~?」

 

 

 水無月はきっと善意で、さっきような言葉を走らせたのだ。だけど。それは大きな間違いだった。自分たちが友達だと思っているのなら、長門だって俺達を同じように思っているなんて勘違いにも程があったんだ。

 

 そんなこと、今までの話を聞いていれば簡単にわかってしまうことなのに。だけど本人の言葉から、ああもハッキリ言われるなんて……。

 

 

「皆アイツらと一緒なんだよ~、災害に巻き込まれた、たったそれだけで迫害してきた…そして助けてもくれない、何も力になってくれない…アイツらとさ~~」

 

 

 結局、俺達が求めていた先に待っていたのは…こんな理不尽な真実だったなんて。

 

 なんて重いのだろう、なんてツラいのだろう、なんて苦しいのだろう……なんて、やるせないのであろう。

 

 凡人の俺はもう、訳が分からなくなっていた。これ以上、何と言葉を掛ければ良いのか…いやむしろ、何も言わないことが正解なのかも知れない…そうとしか、考えられなくなっていた。

 

 

「…貴様の言い分は…よく分かった…だがただ一つ…解せぬ部分がある……何故…"鮫島を狙ったのだ"?」

 

 

 雨竜は呻くような声で、そんな質問を長門へ投げた。

 

 

「そ、そうなんだよねぇ………あんた、どうして鮫島君を…!!」

 

「え~、それも答えなきゃいけないの~?」

 

「いや、ボクとしてむしろそちらの方が気になってしまうね、キミ…だってミスター鮫島の殺害は予め決まっていた…決して無差別と呼べる代物ではなかった。彼を狙った、理由、そして執念は……一体どこから来たんだい?」

 

「…………まあ、最初から鮫島君を殺そうとは…思ってなかったよ~。ぶっちゃけちゃうと、別に誰でも良かったんだよ~」

 

「誰、でも?」

 

「う~ん厳密には~殺しやすそうな人を殺そうとしてたんだよ~。例えば~雲居さんとか~、あと折木くんとかさ~」

 

 

 俺と雲居を一瞥し、長門はそんな合理的な理由を述べていく。

 

 確かに、鮫島は腕っ節が強いかどうかは分からないが…少なくとも殺しやすさでいえば、断然俺や雲居のようなひ弱そうなタイプの人間の方が殺しやすい。

 

 そうだったとしても…まさか、本当に俺が殺害対象に入っていただなんて…。そう思うと、背中に薄ら寒さのようなものが走った。

 

 

「だったら…何で…鮫島を……なおのことわからなくったちまったさね!」

 

「ターゲットを鮫島君に絞らなきゃいけない"きっかけ"があったからだよ~」

 

 

 …きっかけ?…俺は今までの出来事を…思い起こした、だけど心当たりは見つからなかった。

 

 

「覚えてる人は覚えてると思うけど~、動機発表の直後にさ~皆で親睦会みたいなのあったでしょ~?」

 

「…はい。企画したのは鮫島さんや、沼野さん、それに私も………!まさか、主催したことそのものに…!」

 

「少し違うな~~。別に企画したこと自体に恨みは無かったよ~?でもさ~そこで話してたことが問題だったんだよね~~。あの会の中でさ~鮫島くん、最後の方でなんて言ってたと思う~?」

 

「最後に……?」

 

 

『ココから出られたら、ええことわんさかで、ウチらはウハウハなんやから、考える必要無しやで~』

 

 

 最後に言っていたとするなら…あの言葉、だろうか?

 

 

「ココから出られれば~良いことが沢山~~?じゃあ元々良いことの無い私はどうなるの~って思ってさ~」

 

「あれは!!鮫島さんなりに皆を励まそうとして出た言葉…長門さんを攻撃するような言葉ではありません!」

 

「そうなんだよねぇ!!」

 

「そんなの知ったことじゃないよ~。あんな現実も知らない言葉吐き出す方が悪いんだよ~」

 

 

 暴論だった。今まで以上に、自己本位的な、暴論だった。だけど、長門はその決めつけたような姿勢を止めなかった。

 

 

「アンタ…それだけで鮫島のことを殺したって言うのかい!?」

 

「そうだよ~。何も知らずに自分だけ幸福ぶって……そういう奴って本当にウザいし、嫌いなんだよね~~~だから―――――

 

 

 

 奪ってやったんだ~~アイツの人生まるごと~」

 

 

 

 その言葉を聞き…そしてまるでモノを見るかのような瞳を見た俺達は、確信した。

 

 

 長門は…壊れた人間なんだ、と。

 

 度重なった忌まわしい記憶の中で、人として失ってはいけない大切なナニかを失ってしまった、人間なのだ、と。

 

 そしてその全てが、彼女を人間をモノのように弄ぶような、壊れた人間(モンスター)へと変貌させてしまったのだ。

 

 些細な優しさも、自分への攻撃と考えてしまうほどに。周りの声を全て否定し、拒絶し、そして淀んだものだと決めつける程の人間へと、変貌させてしまったのだ。

 

 

 何も言葉が出てこなかった。いや、でてくるわけがなかった。

 

 

「――――ふざけない、で」

 

 

 不意に、鈴の鳴るような声が、俺達の間に響いた。

 

 

「…贄波」

 

 

 贄波だった。誰もが目を伏せる悪夢のような状況の中で、彼女は真っ直ぐに立っていた。

 

 

「人殺し、は………どんな事があっても、どんな理由があっても…絶対に許されることじゃ…ない」

 

 

 貫くような鋭い意志を持って、贄波は長門へと指を差し向けた。

 

 

「どれだけ、自分が、苦しんでいたとしても、どれだけ、自分が絶望の淵に立たされていたと、して、も……犯した罪を…正当化して良い理由に、は……ならない」

 

 

 そして贄波は…長門を言葉でも、突き刺した。

 

 

「あなた、は…鮫島くんを”犠牲”にして、自分の我が儘を、通した、だけ。そんなの、あなたを虐めていた、人間と、何も、変わらない………」

 

「………………」

 

「エゴイスト以外の、何者でもない…」

 

 

 今までの躓いた口調が嘘のように贄波ははっきりと、言い放った。長門は前髪で顔を隠しながら、その言葉を聞いていた。俺達も、染みこませるように、聞いていた。

 

 

「――――――それだけ~?」

 

「…は?」

 

 

 だけど返ってきたのは…あまりにも淡泊な答えだった。

 

 

「貴様…贄波の言葉を聞いてなかったのか…!!」

 

「ちゃんと聞いてたよ~…それに~言いたいことも分かったよ~、でもさ~だからどうしたって言うの~?」

 

「どうしたのって……」

 

「最初に言ったよね~?こんなのは無意味だって~、何を言っても、何を語っても、何を言い聞かせても…罪の重さも、私の意志も、全部に、変わりは無いんだよ~」

 

 

 その言葉には一切の動揺など無かった。お前らとは、根本から考えなんて違うと、唾を吐き付けられているようだった。

 

 

「くぷぷぷぷ…その通りなのでス。泣いても笑っても、結局全てこの"おしおき”に帰結するのでス!だからこそ!今、引導が渡されるときなのでス…。長かった…あまりに長かっタ……」

 

「あ~もうそんな時間か~、はぁ~あ~、結局全部言い切っちゃったな~」

 

 

 全てを出し尽くしたと言わんばかりの、一息だった。

 

 

「でも~これでやっとパパとママ、それにお爺ちゃんの下まで逝けるよ~……」

 

「超高校級のダイバーである長門凛音サンのために。スペシャルなおしおきを用意させていただきましタ!!」

 

 

 誰もが苦悶の表情を浮かべているというのに…。誰も止めようとする声も上がらなかった。誰も、長門の顔を見ようともしなかった。手の施しようなんて、何処にも無かったから。

 

 

「あっ、でも最期にこれだけは皆に言っておかなくっちゃっね~」

 

「では、張り切っていきましょウ!おしおきターイム!!」

 

 

 モノパンがおしおきの宣言をする中で…気付いたように、長門は俺達へと目を向け直した。

 

 

「皆、"大っ嫌い"だったよ~」

 

 

 長門は俺達に向けて…完全な隔絶の言葉を言い切った。

 

 

 それは誰も傷つくことない平和で、平穏で、そしてとても孤独な道を選ぶ決意表明のようにも思えた。

 

 

 その言葉を聞いて俺はこう思った。

 

 

 ”なんて、切ない人生なのだろう"…と。

 

 

 瞬間、モノパンが掲げた木槌は、紅いボタンへと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      GAME  OVER

 

 

 

   ナガトさんがクロにきまりました。

     おしおきをかいしします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …気がつくと、長門は姿を消していた。

 

 

 突然の変遷だった。

 

 

 驚いた生徒達は周囲を見回した。だけど何処にも彼女の姿は見られなかった。

 

 

 

 "おい!あれを見ろ!!"

 

 

 そう言って、誰かが上を指さした。

 

 

 

 生徒達は、指先にある、スクリーンへ目を向けた。

 

 

 

 スクリーンには、光りが灯っていた。

 

 

 

 

 そして、シパシパと瞬く液晶の向こう側、裁判場では無い何処かに長門は確かに立っていた。

 

 

 

 

 立ち尽くす彼女の周りに広がるのは、青く彩られた、油絵の如きディープブルー。

 

 

 一面の青色がユラユラと、風に乗って波立っていた。

 

 

 生徒達は確信した。…あそこは…長門が立ち尽くすは――”大海原"。

 

 

 その中心。

 

 

 超高校級のダイバーたる彼女が愛すべき、世界の中心であった。

 

 

 

 

 

 

 超高校級のダイバー 長門凛音のオシオキ 

 

 

      『少女と海』

 

 

 

 

 鼻孔に広がる、懐かしい潮の匂い。耳をきざむように揺らすさざ波の音。

 

 

 長門は、ココは裁判場ではないと、早々と気付いていた。普通であれば驚くはずの状況だというのに…長門は何故か、酷く落ち着いていた。

 

 それは自分は既に処刑台に上げられている身であるから、既に自分の死は確定しているから…悟りにも似た感情を、持ってしまっていたから。

 

 

 長門は徐に空を見上げた。

 

 目の前には憎らしいぐらいに晴れ渡る大空が広がっていた。ジリジリと、突き刺すような暖かみを放つ、太陽もそこにあった。

 

 同時に、足下にも違和感を感じた。長門はすぐに下を向いた。

 

 そこには、帆もオールも付いていない、ユラユラと揺れる小さなイカダがあった。

 

 

 

 長門は、この大海原にポツンと、絶海の孤島が如きイカダの上にに取り残されてしまっていた。まるで遭難してしまったような状況だった。

 

 

 

 しばらくの間、処刑中だと言うことを忘れてしまうほど、何も起きることは無かった。長門はそれでも周囲に神経を張り巡らせることを怠らなかった。何時モノパンが自分の命を絶とうとしているのかもわからない状況なのだから、仕方の無い話だった。

 

 だけど、そんな気持ちとは裏腹に、大海原には何の変化も見られなかった。世界に自分1人しか居ないのではないか、そう思うくらいに海は平和であった。

 

 

 長門はこの状況に覚えがあった。それは自分が幼少の頃、大津波に遭い、家族を失ったあのとき。家族がこんな暗い"海の底のような世界"に自分を置いていったとき。

 

 息苦しさしかない、"人海"に取り残されたとき。

 

 

 

『何でお前だけが生き残っているんだ』

 

 

『お前のせいで皆死んだんだ』

 

 

『疫病神』

 

 

『お前が死ねば良かったんだ』

 

 

 

 またあの時の恐怖が数瞬、蘇ってきたようだった。長門は苦い思い出を振り払うように、頭を振った。

 

 

 すると、周囲から水音が聞こえた気がした。

 

 

 何かが泳いでいるような、波打つような音が。

 

 

 長門は周囲を見回しその音の正体を目撃した。そしてすぐに顔を青ざめさせた。

 

 

 "あれ"が、泳いでいたから。

 

 

 自分が手に掛けた、あの少年の名を冠するあの生き物が。

 

 

 ――"鮫"が、泳いでいた。

 

 

 それも一匹だけじゃ無い、何匹も、湧き出てくるようにうようよと、自分が乗るイカダを取り囲んでいた。

 

 とても獰猛で、血に飢えたような目つきをしていた。

 

 見るからに、腹を空かせた様子だった。

 

 長門は、とうとうモノパンが仕掛けてきたのだ、そう思い至った。

 

 長門は急いで、イカダを動かそうと思った。

 

 しかしこのイカダにオールは無かった。ついでに、帆も無かった。つまり、それは漕ぐ手段が殆ど残されていないことと同義であった。

 

 …方法は、あるにはあった。しかしそれは、あまりにも無謀な手段であった。

 

 だけど長門はその方法を、手を使ってイカダを移動させよう、そう思ってしまった。

 

 あのときのトラウマを掘り起こしてしまった彼女は少しずつ冷静さを欠いてしまっていた。こんな場所には居たくない、ここから早く離れたい、そう思う余り、少女の心にヘタな選択肢を与えてしまった。

 

 長門は海に手を浸けた。その瞬間。

 

 

 

 ―――ザシュッ、と鋭い痛みが、手に走った。長門は小さな悲鳴を漏らしながら、腕を慌てて引っ込めた。見てみると、手からドクドクと、血がおびただしく流れ出ていた。

 

 

 案の上、長門は鮫に牙を突き立てられたのだ。それを物語るように、目の前を泳ぐ鮫は、牙に血をべっとりと付着させていた。その血のせいで、その鮫も、周りの鮫も獰猛さに拍車を掛けてさせているようだった。

 

 幸いにも、海に引きずり込まれる事は無かった。だけど…神経をやられてしまったせいで、手は動く素振りすら見えなくなってしまっていた。

 

 

 これで全ての退路は断たれた。

 

 

 長門は、何十年ぶりのように、海に恐怖を抱いた。今まで海の中こそが自分の世界だと思っていたはずなのに……自分を癒やす、母なる海だと思っていたはずなのに…。

 

 

 そして同時に…こう思った。いや思ってしまった

 

 

 

 ――――死にたくない

 

 

 

 なんてたやすい心なのだろう。なんて弱い意志なのだろう。

 

 彼女は生きたいと思ってしまった。自分のエゴで人の命を奪ったくせに…。自分の命を持って、全ての帳尻を合わせようとしているはずなのに。

 

 

 もしかしたら、その感情の機微こそが、彼女の心の中で、唯一壊れてなかった部分だったかもしれない。

 

 

 だけど、そんなのは遅すぎも良いところであった。

 

 既に逃げ場を失ってしまった今。何処へ逃げれば良いのか。分からなかった。

 

 海がダメだったのなら、空へ逃げれば良いのか?だけど人間に羽は無い。そんな事は不可能だった。

 

 

 すると…上空から、――――パラパラとプロペラのような音が、かすかに聞こえた気がした。

 

 

 長門は、縋るように、もう一度空を見上げた。

 

 

 ヘリが飛んでいた。長門の真上をヘリコプターが滞空していたのだ。

 

 

 あのときと、自分が被災したとき、助けられたときの光景を思い出した。

 

 

 長門は恥も外聞もかなぐり捨てて、助けを求めた。

 

 

 ――私はココにいる!!

 

 

 流れ出す血の朦朧とする意識の中で、動かない右手を垂らしながら左手を大きく揺らしそう叫んだ。

 

 

 決死のSOS信号が通じたのか、ヘリは近くまで降りてくると、カラカラカラと縄ばしごが降ろされた。

 

 

 長門は蜘蛛の糸の如く、それを手に取った。安心感の様なモノが、腕を起点に広がるようだった。

 

 

 右手が動かない故に登ることは出来なかったが、これで上空に逃げられる。長門はそう思った。はしごに手をかけながら、ヘリは空へと上昇しようとしていた。

 

 

 だけど――。

 

 

 

「―――――――!!!!!」

 

 

 

 自分の背丈ほどもある巨大な鮫が、トビウオのように海面から飛び上がり――――牙をむきだし、襲い掛かってきた。

 

 

 

 驚いた長門は目を見開き…はしごから手を、離してしまった…。

 

 

 長門は、そのまま絶望の海へと…――叩きつけられてしまった。

 

 

 海に打ち付けられた痛みを伴いながら、彼女はもがきだした。

 

 

 血の匂いに誘われて、群がり始めた鮫を振り払うよに、無意味と分かっていながらも長門は左手で海をかいた。

 

 

 ほんの数秒、ほんの一瞬でも、生き長らえるために。

 

 

 目の前を潜行する鮫はぐんぐんと、長門の心中などお構いなしに確実ににじり寄ってきた。

 

 

 恐怖など既にピークを通り越している。ただ生きたい、生き残りたい。その一心で、長門はもがき続けた。

 

 

 ――――その一瞬、とある一匹の鮫と目が合った。

 

 

 

 それはあのとき、自分の手を噛みちぎった鮫と同じ個体だった。

 

 

 クロで覆い尽くされた、海淵のような、その瞳。

 

 

 生きているのか、生きていないのか…本当に同じ生命なのか分からない、"骸"のようなその瞳。

 

 

 もしかしたら、自分が殺した"彼"が乗り移って、自分に復讐しにやってきたのか、そんな錯覚を持ってしまった。

 

 

 

 ――――また、長門は恐怖した。

 

 

 

 そう思った刹那。

 

 

 

 

 ――――――鮫は少女を覆い尽くした。

 

 

 

 

 決して人の出して良い音では無い、鈍い音が海と空の狭間で木霊した。

 

 

 

 映像を見ていた生徒達は、余りの光景に目をそらした。

 

 

 

 目を離してからしばらくが経った

 

 

 

 見てみると…彼女がいたはずの海中に煙のような血が漂い出していた。

 

 

 

 

 煙の中には、少女であったはずの"それ"が、ぷかぷかと、寂しげに浮いていた。

 

 

 

 

 それは時間と共に漂うのを止め…

 

 

 

 

 深い深い海の底へと、沈んでいった。

 

 

 

 

 彼女の両親と同じ、海の底へ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エクストリィィィィーーーーム!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

――――て感じではないですネ。何か静か~に終わってしまった感じで、盛り上がりに欠けますガ…まあ、たまにはこういうのもありっちゃありですネ」

 

 

 

 …終わった。終わってしまった

 

 

 2度目のおしおき、そして2度目の最期。

 

 

 何もかもを否定し、拒絶した彼女は、才能と共に……消えていった。誰も居ない、海の底へと沈んでいった。

 

 

 

 ――悪夢のような、鬱屈とした空気を残して。

 

 

「……………!!」

 

「……長門、さん…」

 

「ぐぅうぅぅぅうぅううう……」

 

「……また1人…居なくなった……」

 

 

 

 それは長門が犯人である…そうわかった時よりも…ずっと、重かった。犯人はいなくなったはずなのに…最小限の被害で事件を終えられたはずなのに…。今まで何と戦ってきたのだろう、そう思わざる終えないほどの虚無感が、この場を包み込んでいた。

 

 

「友達じゃ無い…大嫌い…か。結構仲良く出来てると思ってたんだけどなー」

 

「……最期の最期まで…奴は奴のままだった……というわけか。……ままならないものだなぁ」

 

「…………」ジャラララン

 

 

 塞ぎ込んだ空気の中で、生徒達はそれぞれくぐもるような声を上げる。誰もが苦しげに表情を歪めていた。

 

 

「……もう考えるのは、止めるさね。もう…終わったことだと…そう思うしかないよ……」

 

「そんな事…言われても…」

 

「今回ばっかりは……切り替えて行くには、ちょっとばかし時間が必要ですよ……」

 

 

 仲間が仲間を躊躇いも無く殺し、そして殺した仲間がまた処刑され命を散らしていく。こんな狂った状況で、そんなメリハリを付けろだなんて…不可能に近かった。

 

 

「…ああ。そうだね。考えないように、そして忘れようとするのは、とても難しい話だよ。何もかも、いや殆どが……だけどだ、キミ達…何も悪い事ばかりじゃ無いさ。我々は、この事件を通して、学びとった教訓もあったはずさ」

 

 

 帽子のツバをイジりながら、ニコラスはそう言った。何が言いたいのだろうか、俺達はニコラスに注目した。

 

 

「学んだ、こ、と…?」

 

「…こんな状況で、一体何を学べたって言うさね…」

 

「人間のあり方についてだよね。ああ、分かっているとも。人生というのは、そう簡単にいかない…あらゆる困難や、逆境がある…だからこそ、人と人たらしめる……そう言いたいんだね?」

 

「…いいや、ミスター落合。もっと簡単な話さ。それは、――――――いつ誰がこのボクの、そしてキミ達の首元を狙っているのか……分からない…ということさ…」

 

 

 信頼の欠片も感じられない声色だった。強く、突き放されるように錯覚してしまった。生徒達も同様だったのか、その発言に向け食ってかかる。

 

 

「……それって、アタシ達の事が、信用できなくなってことかい!」

 

「言葉を濁しても仕方ないからハッキリと言わせて貰うと……ああその通り。シンプルに肯定させてもらうよ、キミ」

 

 

 ニコラスは、まるで人が変わったように、長門とは違った冷たい瞳を俺達へと向けた。

 

 

「ニコラス…!お前…」

 

「そんなの、あんまりです!!」

 

「…ボクもね、最初はモノパンの所為で…このコロシアイは起こり…そして起こされてしまう不条理を絵に描いたようなゲームだと、そう思ったよ」

 

「まぁ実際その通りですネ。何たって主催者側のワタクシがそう仕組んでいる訳ですシ」

 

「最初の事件…ミスター陽炎坂については…まぁモノパンに唆されて…そして殺人に走ってしまった。所謂殺人教唆だと…そう整理することはできた…」

 

 

 "だけど…"声色を変えながら、ニコラスは続けた。

 

 

「今回は違う……ただ目障りだったから……ハッキリとしたエゴで、ミスター鮫島はミス長門に殺されたのだよ」

 

 

 沈黙は肯定を意味していた。長門は、タダココかから出たくないというエゴで、そして鮫島に不幸を与えたいというエゴで…殺人を犯した。

 

 長門がやったことは、殺人。この世界でも、どの世界でも、許されてはいけない、大きな罪を彼女は犯した。

 

 そこにモノパンの介入は、殆どとして無かった。やったことと言えば、ただここから出すと勧告しただけ。そう考えるなあ…確かに、この事件は人間の悪意によって引き起こされたと言われても仕方が無かった。

 

 

「ミス長門の態度を見ただろ?キミ達。まるで人間の皮を被った人形だったじゃないか。そんな人間が、この中にまだ潜んでいるかも知れない」

 

「それは、長門自身が…」

 

「ミス長門だけが例外と言うのかい?ボクは思うんだよ。いやそんな事は無い、とね」

 

「…何故そこまでハッキリと言えるのだ…」

 

「キミ達の事を知らないからさ。会って間もない、過去も何も知らない人間自身のことを、ね」

 

「知らない、か、ら?信用できない、って、こと?」

 

「ああそうさ。歴史は人の数だけ存在する。ボクの様に輝かしい歴史もあれば、ミス長門のように後ろ暗い歴史もまた存在する。……今ここに居るキミ達にも…他人に軽々と話せないようなことの一つや二つ、あるんじゃないかい?」

 

 

 そう言って、ニコラスは俺達に指先を向けた。…生徒達は、押し黙って、聞いていた。

 

 

「そして歴史があるのならば、人と人との間には、価値観の相違も存在してくる。今回の事件その最たる例なのだよ。キミ」

 

 

 鮫島の生きてきた価値観、そして長門が生きてきた価値観。確かに、あの2人には大きな相違点があった。あったからこそ、看過できない相違に長門は怒った。だからこんな理不尽な事件が起こってしまった。

 

 

「そんな、何も今"この瞬間だけ"全面的に信用しろだなんて…不可能なんだよ」

 

「不可能…なのかな?その価値観を理解し合い、歩み寄ることができれば…信頼し合うことも夢じゃ無い……違うかな?」

 

「そうだね、ミスター落合。それはボクら人間にとってとても重要なことさ、理解し合う時間”さえ”あればね?」

 

 

 いやに強調したその言葉を聞いた数人が、何かを理解したように顔を上げた。

 

 

「……信頼に足るには…あまりにも時間が足りない…というわけか」

 

「合って間もない人間に自分の素性をペラペラと話す奴なんて、それこそ嘘つきか、相当なお人好し位さ。そして、それも含めて、ここは、この状況は、ボクらの軋轢を押し広げる、強いストレスも故意に与えてくる…必然的にコロシアイが起きるようにね」

 

「む、難しい言葉が多すぎて、頭が”しょーと”しそうです…」

 

「ニコラス…もっと分かりやすく言葉を選びな!!」

 

「ふむ……それは悪かったよ…キミ。とどのつまりだ、ボクは理解したのさ……モノパンに全ての責任を負わせるのは…間違いだ…とね。事件を起こすのは、人間。強いストレスを与えられたボクら自身こそがコロシアイの源なのだよ。ボクら自身が動こうと思わなければ…事件は起こらない」

 

「……動かなければ…事件は起こらない…」

 

「この状況で必要なのは、コロシアイを起こさないための未然の予防………ここで1度信用を断ち切り、必要最低限の交流をして、必要以上の接触を避ける…どうだい?不和の芽を根本から切り取ることくらいはできるんじゃないかい?」

 

「だから……俺達を信用できな…いや、しない……そう言いたいのか?」

 

「ふん……まるで囚人だな」

 

「ここは最初から牢獄だよ…キミ。まあ何人かは…信頼できそう候補はいるが……。候補どまりさ。完璧には信用できない……。それに忘れてくれるなよ?…ボクは殺されこそしなかったが…一歩間違えていれば死んでいたのかもしれない身なんだぜ…?」

 

「…確かに…そうですけど」

 

「この~、何が信用できないだー!一番うさんくさい身なりしてるくせにー!」

 

「どうとでも言うが良いさ。ボクは自分自身の考えに従うまで。…ふぅ…それじゃあ早速、ボクは単独行動を取らせて貰うよ……それに……――――――確かめたいこともあるしね」

 

 

 何か小さく呟いたニコラスは、ひらひらと手をフリ…裁判場を出るためのエレベーターへと向かっていく。

 

 

「おい!!ニコラス!!!」

 

「シィーユーエブリワン。シスター反町、ミス小早川、良い食事をありがとう。そして楽しかったよ、キミ達」

 

 

 止めても、止まらなかった。制止も聞かずに、一方的な別れのような言葉を発しながら、ニコラスはエレベーターの中へと姿を…消していった。小さな…沈黙がこの場に流れた。

 

 

「単独行動だなんて…いっっつも通りが気がしないでもないけど…」

 

「はぁ…だけどココまでハッキリと言うのは、珍しいですけどね…」

 

 

 "でも”、と雲居はつなぎ、続けた。

 

 

「でも…こんな酷い事件が起こった後です。当然の態度ですよ…正直、癪ですけど…今回ばかりはアイツの言うとおりです」

 

「ど……どういうことさね、雲居」

 

「今まで上辺だけ交流してきた私達ですど………そろそろこのコロシアイの状況に対応しなければならない時が来たのかもしれないです……。まああいつの言う案については、正直結果論です、どうなるかは神のみぞ知るですけどね……」

 

「うん……しばらく距離は置いた方が良い…かも……私も命は惜しい……あと眠い」

 

「最善策を打ち出す脳は、カルタの回路にはなぁ……それにちょっと傷心気味だし……うーーーーん」

 

「はぁ……拙者はそういう難しいことは……後で考えることにするでござるよ……何か疲れてしまったでござる……」

 

「…………」

 

 

 そう言いながら、ニコラスの後を追うようにして、無言の古家を含む生徒達は続々とエレベーターの中へと入っていった。彼らの後ろ姿からは、今までとは違う、明らかな隔たりが見えた。

 長門が生み出した亀裂は…俺達の間にまで波及し、確実に蝕んでいた。凡人の俺には……どうすることもできなかった。どうしようも無かった。

 

 

「ありゃりゃりゃりゃ、ワタクシが居なくなる前に居なくなってしまうなんて…こんなこともあるんですネ。でも…くぷぷぷぷ…良い感じに、疑心暗鬼が熟成してきましたネ、やっぱり布石を打ってきた甲斐があるってモンですヨ」

 

「………モノパン!」

 

「おおっとぉ!!!そんな怖い顔しても、ぜ、ぜ、全然嬉しく無いんだからネ!」

 

「ふざけるな…!お前、最初から…長門の境遇を知ってただろ!だから、あんな動機を…!」

 

 

 何も出来ないからこそ、俺は、誰かに、この事件の黒幕に言葉を浴びせることしか出来なかった。絶対的な悪を、怒りのはけ口にすることしか出来なかった。

 

 

「へぇ?ふむ……ご家族がご存命では無い事は分かっていましたけど…まさかあんな青春時代を過ごしていたのは、寝耳に水ってやつですね?はイ」

 

「ふっ……白々しいことこの上ないな…もう少しまともな嘘はつけんのか?」

 

「くぷぷぷぷぷ…まあ知っていようがいまいが、今回ワタクシ行ったことは手紙を渡して、ココから出て行けと、そう言っただけ……後はノータッチ。エッチもスケッチもやってない……つまり、キミタチは、ニコラスクンの言うとおり…身内のゴタゴタで命を失いかけた…ただそれだけなのでス」

 

「……くそっ!!ふざけるな、卑怯者!!!」

 

「折木さん…!」

 

 

 何も言い返せなかった。言葉にすることができなかった。だからなのか、制止する小早川を振りほどいて、怒りに任せて、コイツを殴りたくて仕方なかった。

 

 

 ――すると、誰かが俺の肩に手を置いた。

 

 

「荒れているね…だけど安心しなよ、僕は僕らしく、君は君らしく、この世界で調を奏でれば良いんだ…だから、君は……そのままの君で居てくれればそれで良いのさ…」

 

「…気持ち、は分かる、よ?……ツラいかもしれない、けど……その手を振り上げて、も……誰も、喜ばない、よ…」

 

「折木…滅多なことするもんじゃないさね。アタシはもう……誰も欠けて欲しくないんさね」

 

 

 でもそんな事をしても、何も進展するわけ無い、むしろ、俺"達"自身が損をするだけだと。落合達は、頭を冷やせと俺を諭していく。俺は、俯き、握った拳をほどいた。

 

 

「くぷぷぷ、くぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ……」

 

 

 モノパンはそれを見て、ひたすらに笑みを浮かべ続けていた。俺は視界に入れないように目をそらした。また怒りが湧きそうだったから。

 

 

「折木、くん……行こ?」

 

 

 俺は贄波に手を引かれ、残った生徒達と共にエレベーターに乗り込んだ。途中、背中をさすられたり、肩を叩かれたり……その優しさに涙があふれそうだった。俺は何をすることもできない、凡人だというのに…。

 

 だけど……この日の全てで…俺達の周りを深い溝が出来たことだけは分かった。容易埋めることは叶わない深い深い溝が。

 

 

 

 ――――俺はどうすれば良いんだ…

 

 

 ――――こんな俺に何が出来るんだ……

 

 

 

 俺はどうしようもない程のやるせなさを抱え…裁判場を後にした。

 

 

 

[newpage]

 

【エリア2:図書館】

 

 

 裁判所から逃げるように出てきた俺は、図書館へとやってきていた。

 

 大した事情では無かった。だけど、決して怠ってはいけない事情だった。

 

 

「…鮫島」

 

 

 それは、今呟いた友人の弔いのためだった。

 

 友人である、鮫島がこの世に生を受けていた事を、心に刻み込んで置くために。友人として手を合わせておくべきだと思ったのだ。

 

 だから、俺はココに来ていた。

 

 

「…?」

 

 

 だけど、図書館の中央…鮫島の死体があった"はず"の場所に、たった一人の先客が居た。

 

 ーー古家だった。並べられた背もたれの無い円柱の椅子に座りながら、中央の一点を眺めていたのだ。思い起こすように、ボーッとしながら。

 

 

「ああ………折木君。…さっきぶりなんだよねぇ」

 

 

 俺の存在に気付いた古家は、ぎこちない笑みを此方に向けた。

 

 

「お前も、来てたのか………」

 

「色々振り回されたけど、あたしはあの子の友達だったからねぇ……門出くらい見送ってやるのが、筋だと思ってねぇ…こうやって来てみたんだよねぇ」

 

「………俺も同じだよ。俺も……あいつの友達の一人だったからな」

 

「ははっ、色々冷たい扱いは多かったけど、こんなにも思われてたんだねぇ。鮫島君も案外、幸せもんだったんだねぇ…はぁ、良かった良かった」

 

 

 取り繕うような、乾いた笑みだった。

 

 一番友人として接していた時間が長かった人間が何を言っているのだと思った。だけどそれを指摘するほど、俺は野暮では無かった。

 

 

「……全部、元通りだな」

 

 

 少し間を空けることがイヤだった俺は、周りの、"整然と並べられた本棚"を見回しながらそう言った。古家は同調するように頷いた。

 

 

「そうだねぇ……気味が悪いくらい綺麗さっぱり片付いちまってるんだよねぇ…」

 

 

 その言葉は、本だけに言えることでは無かった。俺達の視線の先にあったはずの、鮫島の"死体"も、何事も無かったかのように消え去っていた。朝衣の時と同じだった。

 

 今まで謳歌していた平和な日常を送れるようにと、モノパンが全てやってのけたのだろう。

 

 

「裁判が終わった直後位なら、残ってると思ってたんだけどねぇ……本当に…恨めしいくらい仕事が早いんだよねぇ」

 

 

 だけどその仕事ぶりは、ある意味残酷とも捉えられた。全て綺麗に片付けることで、元の日常に切り替えさせようとする、そんなモノパンの決してわかり合えない性質を目の当たりにしているようだった。

 

 

「なぁ古家。一つ…聞いても良いか?」

 

「…ん?何かねぇ?」

 

 

 裁判の時から、どうしても腑に落ちないことがあった。それを思い出した俺は、自然とそう口走っていた。

 

 

「動機の手紙が今回の事件と関連してるんじゃ無いか…ってなったとき、お前、少し取り乱してただろ?あれは…結局、何だったんだ?」

 

「…ああ…うん。あのときのことだねぇ……」

 

 

 その質問に対し、苦く表情を歪める古家。聞いてはいけない内容だっただろうか?…一瞬、そう思ってしまった。

 

 

「…言いづらかったか?」

 

「………いんや。ただあんまり流布して良いことじゃ無かったから、ちょっと考えちゃっただけなんだよねぇ……でも、折木君にだった、きっと大丈夫だねぇ」

 

 

 そう言うと、古家は1枚の"手紙"を取り出した。それは、長門が俺達に見せつけた"動機の手紙"だった。だけどその宛名には、何故か、古家では無く、鮫島の名が記されていた。

 

 

「……!それって」

 

「うん…鮫島君のなんだよねぇ……」

 

 

 どうしてその手紙が古家の手元に?…驚く俺に、古家はその手紙を差し出した。どうやら中身を読んでくれと言外に言っているようだった。

 

 

 俺は受け取り、手紙を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

『鮫島様へ

 

 

 

 アナタの妹君である、鮫島 小雪(さめじま こゆき)様の様態が急変なされました

 

             お急ぎ下さい。

 

 

 

                              モノパンより』

 

 

 

 

 

 

「古家…これ……」

 

 

 中身を見た俺は、その詳細を求めるように、古家へと目を向けた。

 

 

「…………あの子の妹さんは…生まれながらに、重い病気を患ってるんだよねぇ……」

 

「病気…?」

 

「それも、いつ急変してポックリ逝っちまうかも分からない位、厄介な病気で…生まれてこの方病院のベッドから離れられないって言うんだよねぇ……」

 

 

 長門同じか、それ以上の衝撃だった。聞いていい話なのか、一瞬そう思ってしまった。手紙を持つ手が震えるようだった。

 

 

「でも何でお前が、そんなこと…」

 

「手紙を渡された次の日に、鮫島君に呼び出されてねぇ。この手紙を読まされて、そんで、今の話を聞かされたんだよねぇ」

 

 

 古家は、今は亡き友人に思いを馳せるように、目を細めながらそう語った。いたたまれない気持ちになった。

 

 

「あたしはそのとき、ちょっと身構えちゃったんだよねぇ。この手紙を読まされて、そんでもしかしたら、あたしに、死んでくれって言って、殺しにかかってくると思ったんだよねぇ……」

 

 

 だけど、そう思うのも無理は無かった。大切な家族が危機に瀕しているというのに、どうして平静で居られるだろうか。

 こんなモノを見せつけられて…どれだけここから出たがってただろうか、どれだけ妹に会いたいと思っていただろうか…そんな鮫島の気持ちを想像するに難くなかった。

 

 

「でもねぇ…あの子は、鮫島君は、"この手紙をあたしに預けてる"って、言ってきたんだよねぇ。そんで――――」

 

 

 

 ――――ウチな。誰も殺したないねん。生き汚く、友達見捨てて、血濡れたまんまの姿で妹の前に出てきとうないねんな

 

 

 ――――それに朝衣とも約束したやろ?

 

 

 ――――…皆で無事にココから出たろう、って

 

 

 ――――ウチ約束だけは果たす男やからな?

 

 

 

 

「あの馬鹿は…あたしたちを殺したくないから……あたしたち一緒に出たかったから……その一心で、この手紙をあたしに渡してきたんだよねぇ…この手紙を見てしまうと、出たくなってしまうから…あたしを殺してでも…ココを出たいと思ってしまうから」

 

 

 だから……この手紙を、友達である自分に託したのだ。古家から聞かされたそれは、鮫島の強い覚悟だと思った。絶対にココを生徒全員で脱出しようという固い決意表明のように、思えた。

 

 

「そりゃあ、バカ丸出しだし、恥知らずだし、シスコンだし、飛行機の操縦以外からっきしな唐変木だったけど……でも……根っからのお人好しだったんだよねぇ」

 

 

 それが鮫島だった。例えどんな困難があっても、俺達を見捨てない。勿論家族も見捨てない。そんなお人好しな人間…それが鮫島という男の全てだったのだ。

 

 

 俺は、こう思った。

 

 

"何て、切ない人間なんだろう"、と。

 

 

 

「………鮫島君と長門さんは、きっと一緒だったんだよねぇ」

 

 

 古家はこぼすように、そう言った。俺は黙って、頷いた。

 

 

「…2人とも、きっと同じ孤独をもっていたんだよねぇ。どんなに周りに人が居ても、居なくても……人間1人では抱えきれないような、葛藤とか、辛さとか…あの子達は、ずっと心の奥深くに押し込んでいたんだよねぇ」

 

 

 ”ああ…”俺は黙って、焼き付けるように、耳を傾けていた。

 

 

「もしも、長門さんに、鮫島君のように、いざというとき、心の声をさらけ出せるような人が側に居たなら、その人に頼れる勇気があったなら……」

 

 

 

 ――――殺人になんて走らず、皆でココから出られたのかねぇ

 

 

 

 それはあまりにも純粋な、そしてあまりにも空しい、もしもであった。

 

 だけどそのもしもは、最悪の形で帰結してしまった。だから、俺はその言葉に肯定も否定も出来なかった。黙って、その言葉を噛みしめることしか出来なかった。

 

 

「……」

 

 

 その言葉を最後に…小さく、しかしとても長いような沈黙が流れた。

 

 

「ところで…折木君。知っているかねぇ?」

 

「…何をだ?」

 

「鮫島君が何であんなに、しょーもないギャグとか、うさんくさい関西弁を使い続けるのか、ねぇ」

 

 

 すると不意に、古家からそう聞かれた。俺は唐突ながらも、その質問についてしばし思考した。

 

 

「…………いや、分からんな」

 

 

 だけど、答えは出てこなかった。鮫島風に考えれば、単純に自分が面白いから…?…だろうか?でも、イマイチピンっとこなかった。

 

 そんな風に頭を抱える俺を見て、古家はニヤニヤと笑っていた。少しムッとした。

 

 

「ハハハ…悩むほど複雑な事情じゃ無いんだよねぇ…鮫島君は深く考えるのは得意じゃ無いからねぇ」

 

 

 少々失礼な言葉を付け加えながら古家はそう言うと…神妙に表情を変え、静かに広場の中心を見つめ直した。

 

 

「――――"小雪が笑ろうてくれるから…小雪をもっと笑わせたいから……どや?かっこええやろ?"……だってねぇ…」

 

 

 …あいつらしな、と思った。何処まで行っても、妹の事を考えるアイツらしい理由だと…思った。

 

 

「…………――鮫島君、後は任せるんだよねぇ」

 

 

 古家はそう言って、目をつむり、静かに手を合わせた。

 

 

「だから、安心して成仏して良いんだよねぇ…」

 

 

 宥めるように、祈るように、そうつぶやいた。

 

 

 俺も手を合わせ、目を閉じた。

 

 

 

「じゃあな……鮫島」

 

 

 

 ――――どうか、安らかに。

 

 

 

 ――そしてどうか、この祈りが届きますように

 

 

 

 俺達は、ただひたすらに手を合わせ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

 

 

 

 

 ――――とある一室。

 

 

 暗闇が殆どを占めるその空間。壁には、大量のモニターが張り巡らされていた。

 

 

 爛々と瞬く電光は、部屋中をささやかに照らし出し…モニターの前に鎮座する"誰か"へと光りをちりばめ、影を作り出していた。

 

 

 …幅の広い椅子に座る人影は何者なのか。男性なのか、女性なのか、青年なのか、老人なのか…部屋が暗い所為もあり、判別するには至れなかった。

 

 

 

「―――れろ…」

 

 

 

 不意に、人影は呟いた。

 

 

 

「…壊れろ…もっと…もっと…………!!」

 

 

 

 『ジオ・ペンタゴン』の内部を映し出したモニターを見ながら…。怨嗟とも、恍惚ともとれる声を人影はつぶやいた。

 

 

 

 何に向けてなのか、誰に向けてなのか……そのこぼれるような言葉は、誰にも気づかれること無く……儚く、溶け去るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……見てみると、人影の膝元には、とても厚い”ファイル”が置かれていた。

 

 

 

 

 

 

 幾重にも重なり合うその姿は、とても歴史深いものであることが見て取れた。

 

 

 

 

 

 表紙には…文字が付けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――『Ark of Time』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『時の方舟』…そう刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  第二章 沈黙の青春

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生き残りメンバー:残り12人』

 

 

【超高校級の特待生】⇒【超高校級の不幸?】折木 公平(おれき こうへい)

【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)

【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)

【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)

【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)

【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)

【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)

【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)

【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)

【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)

【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)

 

 

『死亡者:計4人』

 

【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)

【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)

【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)

【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)

 

 

 




ちょっとキツい描写があったかも知れませんが、これにて2章終了。
3章をコツコツと書いていきます。










↓コラム



○名前由来のコーナー 

長門 凛音(ながと りんね)編

作者から一言:NARUTOの長門とは関係ありません

 コンセプトは地雷型のんびり枠。間延びするような口調なダイバー、という大雑把な設定は決まっていました。ですが、容姿が全然決まってませんでした。小柄になったり、長身になったり…色々変遷した結果、最終的に超長身キャラという形に落ち着きました。最後の最後まで普通の体型にしないという気持ちだけは、何故か一貫していました。
 当初自分で書いてみて、実に不気味なキャラだ、という印象を受けていました。しかし…友人に聞いてみると、それとは真逆の印象だったと言われたので…書いている側と呼んでいる側とで明確な齟齬が見られたキャラクターでした。
 名前の由来は、戦艦の『長門』と六道輪廻の『輪廻』を可愛らしくして『凛音』になりました。何気に一番最後に決まった名前なので、結構思い入れがあったりします。


○(忘れてた)サブキャラ紹介

小走 迷(こばしり まよい)
cv.広橋涼
⇒紹介するのを忘れていた1章のキーパーソン。走ることを愛してやまない典型的なスポーツ少女。しかしその愛が報われることは無かった。ジャージとスパイクは学校でも外さないし、廊下は基本走ってる。恐らくその廊下は穴ぼこだらけ。名前の由来は、『迷走』。


鮫島 小雪(さめじま こゆき)
cv.川澄綾子
⇒鮫島の妹。兄の鮫島と違い、奥ゆかしさを全面に押し出したような少女。幼少の頃から煩っている病気の所為で、人生の殆どをベッドで過ごしている。世の不条理に嘆きながらも、それをさらけ出してはいけないという葛藤を持っている。故に、本人は気づいていないようだが、いつもぎこちない笑みを浮かべている。だけど兄の放つギャグと関西弁だけはツボらしく、その瞬間だけは心の底から笑っている。
 ちなみに、将来はCA(キャビンアテンダント)で、兄と同じ旅客機に乗ることが夢だった。


○オシオキ名

『少女と海』
⇒元ネタはヘミングウェイ作、『老人と海』。


○2章タイトル
『沈黙の青春』
⇒元ネタは、レイチェルカーソン作、『沈黙の春』から。安直に『青』を加えたらそれっぽくなった。今回のクロである、彼女の生い立ちを表わしています。でも、沈黙するのは彼女の人生だけで無く…生き残った彼らを待つ未来の青春……だったりして。




○プレゼント
鮫島 丈ノ介
⇒焼け焦げたパイロットグローブ
 パイロットを目指す際に家族から送られた茶色のグローブ。所々に穴が空いていたらしいが、それを塞ぐように、雪の結晶のパッチワークが施されている。でも、もう全部真っ黒け。


長門 凛音
⇒おじいの法被
 血で染め上げられたかなり大きいサイズの法被。所々アラが見られるので…恐らく手縫い。服の隅っこに、小さく『りんね』と書かれている。
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