ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~   作:水鳥ばんちょ

24 / 37
Chapter3 -(非)日常編- 12日目

 

  ~~~~~~

 

 

『キーン、コーン、カーン、コーン……』

 

 

『ミナサマ!おはようございまス!!朝7時となりましタ。起床時間をお知らせさせていただきまス!それでは今日も、元気で健やかな1日送りましょウ!』

 

 

  ~~~~~~

 

【エリア1:グラウンドエリア】

 

 

 いつものチャイムが朝を告げた直後のことだった。炊事場へと向かう途中、グラウンドの方から、またかけ声のような声が聞こえてきた。

 

 また小早川と反町の朝稽古か、でも少々長引いてるな、最初はそう思った。だけど、その中に小早川以外の声が混じっていることに気付いた。

 

 一体どうしたものかと、俺は急いでグラウンドへと足を運んでみた…。すると。

 

 

「だらしないねえ。もうへばっちまったのかい?」

 

「ぬあっはっはっ!!皆の衆よ、まだまだ修行が足りぬでござるなぁ!!」

 

「はぁ…いや…いつもより、キツいのは、確かかと…思います…」

 

「へぇ…へぇ……想像以上にハードなんだよねぇ」

 

「…何で…私まで…こんな疲れなきゃ…」

 

 

 グラウンドには、膝を曲げながら肩で息をする小早川。そして地面に大の字になって疲れを露わにするジャージ姿の古家と風切。それを一切の疲れを見せずに見守る反町と沼野がそこに居た。

 

 

 イヤなんか…増えてないか?……しかも3人。

 

 

「よよよ。これはこれは折木殿!奇遇でござるな!!」

 

「おう、折木!アンタも朝の特訓に参加するかい?」

 

 

 …と俺の存在に気付いた反町と沼野が、爽やかな笑顔でそんな誘いをかけてきた。しかし…その足下の光景は爽やかさとはかけ離れており、吐く寸前の陸上部といったデロデロの様相であった。

 …誘いについては素直に嬉しいのだが…それよりも、俺はどういう経緯でこんな状況に発展しているのか、それがいまひとつ理解できなかった。

 

 

「反町……今は、小早川との朝稽古の時間じゃないのか?…何で、増えてるんだ?」

 

「…はひ…はぁ…私も、そう思ってたんですけど…」

 

「あ…あたしが…頼んだんだよねぇ……ひぃひぃ」

 

「お前が…?」

 

「そうさね……こいつが、急に頼んできたんだよ。『自分を鍛えてくれ』ってね」

 

 

 そう言って、反町は寝転がる古家を足で差す。

 

 

「細かい事情は省くけど……まぁ来る者は拒まずのアタシからすりゃ、頼ってくれるのは嬉しかったしねえ。その気合いに応えるように鍛えてやったんだよ」

 

「その結果がこれか…」

 

「ひぃ……ひぃ…元ひきこもりあたしから言わせて貰うんだけどねぇ……これはどう見てもオーバーワークなんだよねぇ…」

 

「…マジ無理…マジ無理ぃ…」

 

「そ、そんなにキツかったのでござるか…何だか、異分子である拙者が基準を上げてしまったようで、一抹の申し訳なさを感じてしまうでござるな……」

 

「気にしなさんな!よくあるこったよ!!」

 

「ええ…あってほしくない…」

 

「……成程…まぁ、古家が居るのは分かったが…それに何で風切と沼野もくっついてるんだ?」

 

 

 どう考えても、どこから見ても、今の話からはまったく関係のない2人である。反町は鼻をこすりながら、何故か得意気に表情を変えながら言った。

 

 

「そりゃあアンタ、協調性皆無の風切には、団体行動のなんたるかを教えてやってるんさね。昨日からっていうかここに来てからずっと部屋で引きこもって寝てるみたいだし、運動不足解消も兼ねてこうやって首ねっこつかんでたってわけさ」

 

「疲れた…センパイ…ヘルプ……」

 

「…一応、教えてやってる体なんだよな?何かたたき込まれすぎて、此所にいない誰かに対して助けを求め始めてるように見えるんだが」

 

「大丈夫!毎日やれば、不思議と慣れるもんさね!!」

 

「え………毎日…やるの?」

 

「…こりゃあ毎朝起きるのが、億劫で仕方なくなっちまったんだよねぇ…」

 

 

 反町の言葉を聞いて、2人の表情は絶望へと早変わりさせる。一体どれほどハードな特訓だったのか、それが一体どんな内容だったのか…想像するのも恐ろしく思えてしまった。

 

 

「……だけど…風切はアタシが連れてきたから分かるけど……でも沼野。アンタなんで参加してたんだい?」

 

「拙者…?」

 

「あっ!!それ私も気になってました!」

 

「…小早川。お前もう大丈夫なのか?」

 

「はい!!折木さんがいらっしゃってくれたので、何か元気が出てきました!!!もうピンピンです!!」

 

「そうか…」

 

 

 よく分からんが…とにかく元気になってくれたのなら良かった。しかしそれよりも、沼野の事だ。

 

 

「ていうか…どんな経緯か知らないのか?」

 

「気付いたら参加してたんさね」

 

「はい!気付いたら一緒に汗を流していました!!」

 

「……少々傷つく反応でござる。あ、いやしかし………これは説明していなかったの拙者の落ち度、ここは改めて述べさせて貰う良い機会でござるな」

 

 

 すると徐に、沼野は芝生に腰を下ろす。俺達も合わせて、座り込む。そして沼野はふむ、としばし言葉を整理するように間を空け、そして考えがまとまったのか…静かに言葉を並べていく。

 

 

「少々長くなるでござるが…よかろうか?」

 

「要所要所はかいつまんでくれよ?」

 

「梓葉の頭がパンクしちまうからね」

 

「どういう意味ですか!」

 

「あいやわかり申した……」

 

「分かって仕舞われるんですか!?」

 

 

 そんな小早川の反応をスルーした沼野は”昨日の話でござる…”…と話を切り出した。

 

 

「拙者、先に宣言したとおり一日ほど考える時間を頂いたのでござる」

 

「そういえば…裁判の後半でも同じ事を言ってたな」

 

「…それ故に、昨日は新エリアのなるものの探索にも同行できなかったのでござるが………まずはその点については、今この場を借りて謝らせて貰うでござる」

 

「えええ…」

 

 

 そう言って、沼野は丁寧に頭を下げる。俺達はいやいやいや、と何を謝ることがあるのかと、止めるような仕草をするが…沼野はその体勢のまま続けていった。

 

 

「拙者、思慮を重ねる中でこれからのこと、これまでのこと、思っていた以上に沢山あった考えるべき事に…今一度向き合ったみたのでござる」

 

「生真面目な話だね」

 

「……それで向き合ってみて、どうだったんだ?」

 

「……結局。――――――何も思い浮かばなかったのでござる」

 

 

 あっけらかんとした口調で笑みを溢す沼野に、俺達はズルッとずっこけた。

 

 

「ア、アンタねぇ…」

 

「あーいや!本題はココからでござる故、呆れるのは後ほどと言うことで……コホン、拙者はそうやって考えに行き詰まっている中で…一つ、部屋の中でトラブルが発生したのでござる」

 

「トラブル…ですか?」

 

「何だか気になる前置きなんだよねぇ」

 

 

 いつのまにやら復活している古家が相づちを入れる。

 

 

「反町殿のカチ込みでござる」

 

 

 俺達は一斉に反町に目を向けた。反町は慌てたように沼野に食ってかかる。

 

 

「ちょっとアンタ!!人聞きの悪い事言うもんじゃ無いさね!ただ腹を空かしてるだろうと思って、食事を届けに行ってやっただけだろ?」

 

「本人の元に届ける前に、『反町ぃ!!!』と鬼のようにノックをする行為はどう見てもヤクザのそれでござる」

 

 

 俺達は目を細めて反町に目を向ける。反町は誤魔化すように視線を逸らした。どうやらこの経緯は図星のようだ。

 

 

「…それ、私もやられた」

 

「物騒なウー〇ーイーツだな」

 

「折木君…それが流行るのはもっと未来の話なんだよねぇ…」

 

 

 …イヤな予感ほどよく当たると言うが…やはり食事をぶち込み行ってたのか。加えて…風切の証言から、他の生徒達にも同じ事をしてさらに罪を重ねていることも分かる。

 

 

「……悪かったよ。でもそれとこの特訓の参加にどんな関係があるんさね」

 

「実はそれを受け取り、そして食事を堪能してる際……ふと、これまでの朝の風景を思い出したのでござる」

 

 

 朝の風景、というと、俺達全員が一緒の食事をしていたときの事、だろうか。

 

 

「そして思ったのでござる…。ああ…あのときは楽しかったなぁ…と。つい数日前のことなのに、まるでとても昔のような出来事に思える程、充実していたな…と思えたのでござる」

 

 

 俺は同じように思い出す。他の生徒達も同じようにしているのか、少ししんみりとした空気が流れ始めた。

 

 

「だからこそ、こうも思ったのでござる。あのときの光景を取り戻したいと…そのためには…まず動かねばならぬと。動いて、そして協力し合わねばならぬと」

 

「沼野さん…!」

 

 

 まるで演説のように熱く語り出す沼野。それを見て、小早川は喜びを孕んだ声を上げた。

 

 

「協力してこそ脱出は実現する…団結せずして、明日は無い!!拙者はそう至ったのでござる。その第一歩として、小さい中柄もこのように皆で出来そうなことに参加してみたのでござる」

 

「くぅ~~…わかってんじゃないかい沼野!!今まで忍者っぽいとは思ってたけど、本当に忍者らしくなってきたんじゃないか!」

 

「…えっ?えっえ?忍者っぽい?どういうことでござるか?良いこと言ったはずなのに、何かそこはかとなく馬鹿にされているような…」

 

「本当ですね!!よっ!日本で1番忍者みたいな人!!」

 

「ん~~あれあれ?忍者”みたい”?これは如何にぃ…」

 

「こりゃあ今日の夕飯は赤飯だねぇ!沼野君がやっと忍者らしくなってきたことを祝ってねぇ!」

 

「……おめでとう」パチパチパチ

 

「はっはっは……褒められているのに…賞賛されているハズなのに……そんな気が全くしないでござる…」シクシク

 

「ドンマイだ…沼野」

 

 

 既に沼野は本物の忍者ではなく、超高校級に忍者っぽいただのアルバイターという扱いになってきているみたいだった。まぁ…今まで忍者らしいことしてきたかと言えば、どうにも首を縦にふりかねるのは事実だが。

 

 

「なら、その団結を強める努力に…俺も微力ながら協力させてくれないか?まず手始めに、俺も含めて、特訓を再開しよう……何の特訓かは分からないが」

 

「おお折木殿!!それはナイスアイディアでござる!!参加人数は多いに越したことはないでござるからな!!」

 

「折木さんも参加してくださるんですか!?なら余計に恰好の悪いところは見せられませんね!!」

 

 

 そう言うと、沼野と小早川は喜びを露わにする。それに対して、古家と風切は、逆に顔を青く染めた。

 

 

「ええ…正直もうギブアップなんだよねぇ…お腹は減ってるのに、腹の中の何かが出てきそうなんだよねぇ…」

 

「……先に炊事場に行ってる」

 

「ちょいと待ちな!!折木が参加するってんなら、ここで終わらせるのは『御陀仏』族長、反町素直の名折れってやつさね!!メニュー増し増しでヒートアップしていくよ!!安心しな!!アタシにかかれば、アンタのよぼよぼボディも、褐色筋肉ボディに早変わりさね!!」

 

「…どんな即効性……明らかにドーピングにしか思えない。そして帰りたい…」

 

「褐色は流石に無理が気がするんだけどねぇ…」

 

「…ていうか誰がよぼよぼボディだ」

 

「ああん?………――――――やるよな?」

 

「「……はい、続けさせていただきます」」

 

 

 

 反町に一瞥された古家と風切は、まるで舎弟のように頭を下げた。恐ろしい統率力である。

 

 そうして、朝食前の軽め(重め)の運動を改めて再開し、何度も吐きかけながら、時間を費やしていった。

 

 …とても辛かったし、苦しかったが…何となく、またあの体育祭の様に騒がしくも楽しい思い出を作ることが出来たような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【エリア1:炊事場エリア】

 

 

「皆様!今日は報告会に集まっていただき誠にありがとうございます!!」

 

 

 朝ご飯を食べ終えた後、恒例とも言える報告会が始まろうとしていた。今回の進行役は小早川。見なくても分かるとおり、かなり緊張しているようだった。

 

 

「というわけで!これより報告会を始めたいとっ……!!す…すみません…噛んでしまいました…」

 

 

「大丈夫かなぇ…だいぶ肩に力が入ってるみたいだけどねぇ」ヒソヒソ

 

「肩ではなく…今は口に力が入ってるようでござるが…」ヒソヒソ

 

「……進行役…変えとく?」ヒソヒソ

 

「梓葉本人がやりたいって言ったんだから、見守ることにするさね」ヒソヒソ

 

 

 開始早々とちってしまった彼女を見て、数人が…このまとめ役兼進行役というかなり不安の残る役割を任せてしまったのではないかと密かに話す。

 

 

「報告会を!!始めたいと思います!!!!はい!」

 

 

 しかし見たところ、さほど持ち崩す様子は無さそうだったので…このまま俺達は傾聴することにした。

 

 

 ちなみに、今回報告会に参加しているのは朝のトレーニングを共にしていた6人と、落合、雨竜、水無月、贄波……そして――。

 

 

「…」ズズズ

 

 

 俺達の座る場所から少し離れた空席で紅茶を啜るニコラスの11人であった。雲居のみ、不参加である。

 

 

「ふぅ…小早川よ。始めるのは良いが…この場に似つかわしくない輩が紛れ込んでいるのではないか?」

 

「んん…?それは誰の事を言っているのかな?キミぃ」

 

「貴様以外にいるわけないであろうがぁ!!!!わざとらしく聞き返すで無い!!」バンッ

 

 

 明らかに分かった上でニコラスはそう返す。しかし…それが気にくわなかったのか雨竜は強く噛みついた。

 

 

「おおっと!!これは1本取られちまったよ。流石はドクター雨竜!!ボクのキミへの見立ては、間違いではなかったみたいだね!!…いや待てよ。よく考えてみたら、そんなドクターの資質を見抜いたボク自身こそ褒められるべきなのではないか?……失礼、流石はボク!と、言い換えさせて貰うよ!」

 

「ぐぐぐ…この超高校級の観測者たる雨竜を小馬鹿にするような口ぶりぃ……はらわたのプロミネンスが煮えくりかえるようだ…!!!」

 

「だから意味分かんないってんだよ…」バコッ

 

 

 テンポ良く煽り散らかすニコラスに、怒りを抑え切れずにいる雨竜。それを反町が頭を殴って黙らせた。

 

 

「ま、まあまあ。居てくれるだけでも、嬉しいことなので…ここは荒事を起こさずに、穏便に進めていきましょう…」

 

「お気遣い痛み入るよ!ミス小早川」

 

「……はぁ」

 

 

 進行役である小早川は明らかに面倒臭そうにため息をつく。少々不憫に思えてしまった。

 

 

「でも…どういう風の吹き回しだい?裁判の最後にあれだけの啖呵を切ったってのに……お早い切り替えだね」

 

「安心したまえよ、意志を曲げたとかそういう意図は今のところはないぜ!!これはあれだよ、ある程度新エリアの概要を頭に入れて、それから詳しく探索してみようと思って、報告会に参加しただけのことさ!…別に寂しかったからここに来たというわけじゃないよ!!キミ!」

 

 

 ”ああそれと!このミルクティーは中々に美味だぜ!サンキューミス反町”と付け加え、今までとなんら変わらない飄々ぶりを見せるニコラス。

 ”本当は…寂しかったのだろうか…?と俺達の見解は一致させたが…その口ぶりに反して、此方に近づく意志、今のところ無い様に見えたために、その真意は掴みかねた。

 

 

「ぐぬぬぬ…何を言っても調子が狂わされる気がしてならん…」

 

「今のところは無視を決め込むしかないよね!!ニコラスくんだし!」

 

「始まってないのに……疲れる…」

 

「意味も無い行動と、脈絡のない言葉、その全てには必ず共通点という物がある…それを紐解くのも、僕達の仕事だと…そう思うよ」

 

「どの口が言うのかねぇ…」

 

 

 とりあえずニコラスの茶々は無視するという形で、滞りなく話を進めていくこととなった。

 

 

「ええと…今回の議題は、ニコラスさんが先に言っていただいたように、新エリアについてです。昨日のうちに、私や折木さん、古家さん、雨竜さん、落合さん、贄波さんの6人で探索を終えているので、その報告をしていきたいと思います」

 

「おお……最初はどうなるかと思ったけど、滑り出しとしては申し分ないし、分かりやすいんだよねぇ…これは意外な側面が見れちまったんだよねぇ」

 

「…アンタ、本当に梓葉かい?」

 

「どう意味ですか!!」

 

「…ええっとさ、とりあえず…話の腰が折れる前に、その調査内容をさ、教えて欲しいなーなんて」

 

「は、はい!そうですよね!……ええと――――」

 

 

 小早川は昨日探索したエリア3の情報をまとめ、おぼろげな部分を俺達が補足しつつ、あらかた説明をしていった。

 

 お菓子の家、電気室、メリーゴーランド、射撃場、気球の発着場、お化け屋敷、ジョットコースター、ゲームセンター、観覧車。そして…モノパンタワー。一部の施設の運営が止まっていることも含めて、細かに説明を加えていった。

 

 

 だけど…。

 

 

「ふむ…脱出に繋がる有力な情報は無し…でござるか」

 

「はい…すみません」

 

「ごめん、ね?」

 

「いやいやいや、別に小早川殿達が悪いのではない故……別にそんな深刻な顔をして謝らずとも…」

 

「沼野…アンタねえ…」

 

「…今のはない」

 

「えっ!事実を述べただけでござるのに…!拙者、愕然…!!」

 

「はぁ…だが…ワタシの観測の目を持ってしても、見つけられなかったのは小早川だけでなく我々の落ち度だ……」

 

「いやぁ…細か~く、見落としの内容に調べてみたんだけどねぇ…誠に面目ない」

 

 

 何も未来に繋がるような手がかり見つけられなかった、そう分かった途端、消沈した空気が流れ出す。一昨日までは、脱出できる…その可能性を掴みかけていたこともあって、その落ち込みようは大きかったように見えた。

 

 

「で、でも何だか楽しい遊具が一杯だったんだってね!!遊ぶところが増えてラッキーじゃん!」

 

 

 そんな中、水無月が空気を変えるようにポジティブな面について話を変えていく。

 

 

「うん、そうだ、ね…娯楽が増えた、点を見れば…幸運なのか、な?」

 

「ああ、時間つぶしをするための選択肢が増えたのは確かさね」

 

「ふん…!!だが彼処にあるのはどれも下らんこと、この上ないものだったがなぁ…」

 

「…あたしの記憶が正しければ、あんたが1番エンジョイしてた気がするけどねぇ…」

 

「はい!!私もこの目で見てました!!!満面の笑みでした!!」

 

「馬鹿げた事を言うでないわぁ!!それは貴様らの見間違いに他ならん!!」

 

 

 と雨竜は激するが…実際に楽しそうだったのは事実であった。

 

 

「ぶーーーずるいよーー。早々と皆で楽しんじゃってさ~。先に見つけた戦法を公式戦で先に使われた気分。まぁ……カルタが部屋の中でだらだらとしてたのが悪いんだけどさぁ…」

 

「いやどんな気持ちだよ…」

 

「それに…射撃場があったなら……私も同行してた……ずるい」

 

「後の祭りってやつさ風切。…でも、射撃場ってところも運営は停止してるみたいだから、行っても楽しめずに、徒労に終わってたさね」

 

「…確かに」

 

 

 そう風切と雑談を交わす反町の一言に、雨竜は何かに気付いたように顔を上げた。

 

 

「そうか…そういえばあのエリアはまだ施設の半分が営業停止…つまり”未完成”であったのだったなぁ…」

 

「と、すると…」

 

「つまり…アトラクションが、再開してくれれ、ば、エリア3を、もっと深掘りできるって、ことも考えられるの、か、な?」

 

「そうとも言えるね…魔弾飛び交う演習場、怪鳥とおぼしき浮遊物を司る出立場、妖が跋扈せし恐怖の館、空中を縦横無尽に駆け巡るウロボロス、そして我が第2の故郷と言える大観覧車…謎とロマンはまだあそこに秘められているようだ」

 

「全部あんたが考えたのかねぇ…」

 

「それにどんだけ観覧車に乗りたいんだよ…」

 

「で、ですが!モノパンパークにはまだ何かしらの手がかりがある可能性が高いということになります!!まだ落ち込むには早いかと存じます!!」

 

 

 小早川達の言うとおりエリア3は現時点で完全に開放されてはいない……つまり未調査の施設がまだ存在してるということ。

 もしかしたらその中に何かしらの手がかりがあるかも知れない。そんな小さな展望は、俺達の気持ちを多少なりとも前向きにさせてくれた。

 

 

「であれば皆さん!提案なのですが!!施設の運営が再開された際にはすぐに調査を始めませんか!!!」

 

「善は急げ、思い立ったが吉日…アタシも梓葉の案に賛成さね」

 

「でもでも…再開されるのって、いつ?」

 

「…う~んいつって言われてもねぇ…モノパンのみぞ知るとしかねぇ…」

 

「だったら、――――明日辺りが怪しいんじゃないかな?キミ」

 

 

 調査する日について頭を悩ませる俺達に、ニコラスそう一石を投じた。

 

 

「…何故分かるのだ?ニコラス」

 

「なぁに単純な話だよキミ……今までの素行は問題はあれど…ああ見えて仕事だけは迅速なモノパンのことだ…そう時間を空けて、ボク達の楽しみを先延ばしにすることは考えにくい…そう思ったのさ」

 

「うむむむ…確かに、一理ありでござる」

 

 

 確証はないが…モノパンの仕事ぶりを考えるなら、絶対にないとは言えなかった。

 

 

「でもすぐかー。う~ん…」

 

「…何か不満でもあるでござるか?水無月殿」

 

「…えっとね…もし明日調査しますってなっても。一日まるごと使って協力はできないかなぁ……って思ってさ」

 

「ありゃ、何か先約があるのかねぇ?」

 

「まぁ?デートの約束みたいなことはしてる、みたいな?…そうだよね?公平くん」

 

「えっ…折木さん、水無月さんと何かご予定が?」

 

 

 すると水無月は何故か此方に目を向け、そう言ったそしてつられるように他の皆も此方に視線を伸ばした。

 

 

「……ああ。そうだな、明日、だったよな…」

 

 

 …人が集まる場でそういうことを大々的に聞かれるのは恥ずかしかったが。ぼかすのもどうかと思ったために肯定した。

 

 

 しかし…その安易な肯定がいけなかった。

 

 

「だけどデートでは――」

 

「えええ、どういうことですか!!!折木さん!!!私と古家さんの他にも約束してるなんて聞いてないですよ!!!」

 

「…私も、聞いて、ない」

 

 

 水無月の語弊を正そうとした瞬間、数人から食ってかかられた。その反応に、俺は困惑してしまった。

 

 

「…昨日の夕方頃のことだったから言うタイミングは無かったんだ。でも…まずかったか?いや、調査にはちゃんと参加もするから、別に問題無いとは思うが…」

 

「ああいや…その…そういうわけでは!!無くて…」

 

 

 事実を肯定したはずなのだが…何故か先ほどの明るい雰囲気から一転…気まずい空気が流れ始めてしまった。

 …えっ…どういうことだ…もしかして俺の所為か?いやどう考えても俺の所為だよな…だって凄い痛い視線を感じるからな。

 

 

「折木ぃ……アンタはホント…まあいいさね。そういうのは後でで良いから、ちゃんと示し合わせとくんだよ?」

 

「…はっはっは!!折木殿も隅に置けんでござるなぁ!!…ござるなぁ…はぁ…良いなぁ…」

 

「ありゃりゃ…何だか急に人間関係にメスが入り始めてるんだよねぇ…ああ、大事にならなきゃ良いけどねぇ…」

 

 

 と、まるで傍観者のように言葉を並べていく生徒達。どうやら…俺の想像する以上に約束は波紋を呼んでいるようだった。きっとどうにかするべき場面なのだろうが…こんな時の対処法を知らない故に、頭を掻いて誤魔化すほか無かった。

 

 すると、報告会が混沌とし始めようとする中で…離れた席にいたニコラスが立ち上がった。俺達はどうしたのかと、彼に視線を集中させた。

 

 

「そうか、そうか…成程。よーく分かったよ。進行役ではないが、代わってボクがまとめるとしよう」

 

「何故貴様が…」

 

「まとめると…エリア3には様々なアトラクションがあり、それらは半分停止中。そしてそれらが再開し次第、キミ達は再び調査を始める。……だけど、それ以上の情報は無い、そう思って差し支えないかな?」

 

「そ、そうですね…多分、これ以上の報告は無いものと…存じます。はい」

 

「……ふぅ…ならここに居る意味はもうなさそうだね、キミ。では、報告会はこれで終わりということで、ボクは部屋に帰らせてもらうよ」

 

「ぬぁぜ貴様仕切る…それにまだ終わってはおらんであろうが…」

 

「そうだよ梓葉ちゃんがまだ終わりって言うまでが会議なんだよ!!だからもうちょっと落ち着きなよYOU!」

 

「ニコラス、水無月の言うとおり…折角来たんだから、もう少しゆっくりしていったらどうだい?」

 

「おおっと、待った。忘れてくれるなよ諸君?ボクがここに来たのは、あくまで新エリアの前情報を知りたかっただけ。ゆっくりキミ達とティータイムを楽しみに来たわけではないのだよ、キミ」

 

 

 ここに来てくれたからと言って、やはりなれ合うつもりはない、という意志に変わりは無いようだった。だけどそう口でハッキリ言われると、より寂しさを感じるのは、俺だけじゃないハズだ。

 

 

「……ふぅ…わかったよ…だったら仕方ないね」

 

「悪く思わないでくれよ?…これはボクの自衛手段の一つ、キミ達を完全に嫌いになったわけでは無い…それだけは念頭に置いておいておくれよ?」

 

 

 そう言うと、ニコラスはこの場から離れていこうとするのだが…――――何かを思い出したのか…俺に近づく。そして耳元に口を寄せ、小さく声をかける。

 

 

「最後にミスター折木、キミも1人の男であるなら、レディーのエスコートはキチンとしておくことをオススメするよ?ヘタなことをすれば、最悪背中を刺されることもあるからね?」ボソボソ

 

「…物騒な事を言うな」ボソボソ

 

「経験者だからこそ、そう言えるのだよ…キミ。ただまぁ…友人として応援はしているから安心してくれたまえ」ボソボソ

 

 

 今の話のどこを安心すれば良いのだ…。そんな俺のツッコミも待たずに、ポンポンと俺の肩を叩いたニコラスはそそくさと炊事場から姿を消していってしまった。一体アイツは何を言いたかったのだろうか…。

 

 

「……行っちゃった」

 

「……はぁ……やっぱりそう上手くはいきませんよね…はぁ」

 

「まぁ…良いんじゃないかねぇ?殆どは集まってくれるたんだし、あれからよく持ち直したもんだよねぇ…」

 

「傷一つ無い完成品が無い様に、この世にある全ての物には、必ずほころびがあるものさ……今のままでも僕は美しいと思うよ」

 

「一応良いことを言っているのだろうが…やはり上手く理解できんなぁ…。しかし…奴の態度…どうにも気に食わん」

 

 

 納得できないまでも、納得せざる終えない雰囲気であった。

 

 

「えと…話を戻しますね。報告会は以上になるのですが何かご質問がある方はいらっしゃいますか?」

 

「ふむ質問ではないのでござるが……やはり小早川殿達の報告だけでは上手く掴み切れんというのはあるでござるなぁ……」

 

「じゃあ掴みきるために1回現地に行ってみたら?」

 

「お!!良いねえ。アタシも言葉だけじゃ分かってなかったんだよ……沼野が行くってんなら、アタシも同行するよ」

 

「え……反町殿と2人で……いやぁ…それはちょっと…」

 

「そう遠慮しなさんな!!アタシがついてれば、賊が現れても八つ裂きにしてやるさね!!」

 

 

 いや明らかに遠慮している態度であった。ていうかここに賊なんて出ないだろう。しかし反町はそんなことも気付かず、バンバンと沼野を叩く。

 

 

「頼もしい限りだね!!だったらカルタも一緒に行っちゃおうかな!!デートの下見も兼ねて!」

 

 

 いや、その付け加えは要らない気がする。本当に…。

 

 

「おお!!賛同してくれる奴は誰でも歓迎さね!!……でも3人だけじゃ何だが寂しいね……よし!!じゃあ風切!アンタも一緒に来な!」

 

「………え」

 

「アンタも探索サボり組だろ?勿論行くよな?」

 

「いや…私は…部屋で」

 

「行くよな?」

 

「……銃の手入れを……」

 

「イ・ク・ヨ・ナ」

 

「…………………はい、行きます。行かせていただきます」

 

 

 限りなく顔を近づけ、まるで脅しとも言える圧を風切にかける反町。いくら図太い風切でもこのプレッシャーにはどうやら叶わなかったようで、赤べこのように首を振ってしまっていた。

 

 さっきな朝稽古のことを踏まえて見てみると……反町は完全に風切のことを、問題児というか舎弟みたいな認識をされているように見えた。

 

 

「よぉーし!そうと決まれば善は急げ、急がば回れ!さっさと行ってくるよ!」

 

「む、矛盾が酷いでござるよ~、反町殿~」

 

「ゴーゴーレッツゴー!!アイキャーンフラーイ!!」

 

「………はぁ…だる…」

 

 

 ブツブツとものぐさな風切と、快活に先陣を切る反町と水無月、後を追う沼野という中々珍しい組み合わせの4人は、そのまま姿を消していってしまい、俺達は数人は炊事場に取り残されてしまった。

 

 

 それじゃあ…ぼちぼち俺達も解散とするか。そう言おうと、テーブルに向き直る。

 

 

 すると――

 

 

「折木さん!!先ほどの話なんですけど!!!!」

 

 

 テーブルをバン、と叩き、何かに燃え上がる小早川が立ち上がった。えと、報告会は終わってるんだよな?

 

 

「……ど、どの話だ?」

 

「あれですよ!!あれ!!!先ほどのしれっと出てきてた、水無月さんとの逢瀬の約束について!!!」

 

「逢瀬って……そんな思わせるような表現は止してくれ。単に、モノパンタワーの上に行くとか…しか約束はしていない…」

 

「タワーに!?あの…”あだるてぃっく”なるあのタワーの最上階にですか…!!」

 

「……いや待て!!お前は恐らく大きな勘違いをしてる!!!ただ上に行って、話をするだけだ!!!」

 

「…そしてのちに、淫行に走るのであろう?ふんっ!……エロリストめ…」

 

「馬鹿を言うな!」

 

「ありゃりゃ…こりゃぁお若いこったねぇ…青春なんだよねぇ…多感なんだよねぇ…」

 

「古家お前まで…」

 

 

 周りに助けを求めようと視線を回すも、男子組には知らんぷりをされてしまった。四面楚歌という言葉が身に染みてくるようだった。

 

 

「こりゃあ面倒毎になる前に、あたしらは一時退却とするしかないみたいだねぇ…」

 

「……くたばるが良い。この世の全てに許しを請いながらなぁ…」

 

 

 そしてそう物騒なことを言いながら、古家と雨竜は逃げるようにこの場を離れていってしまった。置いてかれた俺はとっさに、出来れば頼りたくなかった…彼の名を呼んだ。

 

 

「………落合!!」

 

 

 しかし、目を向けてみると…案の上姿はなく、テーブルの上に『風と共に去りぬ』と置き手紙が置いてあった。

 

 …ど、どういう意味だ…。

 

 

「………………」

 

「…折木さん!!」

 

 

 どう説明した物か…俺は裁判の時と同じくらいに、頭をフル回転させる…。しかし人には得意不得意というものがあり、上手く切り抜けられる手段が思いつかなかった。

 

 

「折木、くん」

 

「贄波……!」

 

 

 すると、最後の綱である贄波に声をかけられた。俺は三度、助けを求めるように目を向ける…が。

 

 

「…正座」

 

「………………」

 

 

 しかし彼女もどうやら説明が必要な人間だったらしい。俺は大人しく地べたに座り込むこととなってしまった(何だか前にも同じような事があった気がする)。

 

 

 それからは言うまでも無く…説明にはかなりの時間を要した。結果的には納得のいく様に様々な犠牲を払いながらも無事に説得することが出来た。

 

 だけど何故だか分からないが、その流れの中で、贄波とも運営を再開したジョットコースターに乗る約束を取り付けられてしまった。有無を言わせないその凄み、どうしても頷くことしかできなかった。風切が屈する理由が分かった気がした。

 

 

 それにしても、着々と予定がかさんでいる現状に…憂鬱な気持ちも同時に重ねていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【エリア1:噴水広場】

 

 

 昼食を終えてからの噴水広場にて。広場のベンチに珍しい人が居ることに気づいた。

 

 

「…よっ、雲居」

 

 

 雲居だった。ベンチ座り、風に揺られながら、本を読んでいる彼女に、俺は逡巡しながらもそう話しかけた。しかしその反応は芳しく無く…こちらを一瞥した彼女はすぐに本に目を戻した。

 

 

「……裁判ぶりですね」

 

「…ああ、そうだな」

 

 

 少々息の詰まる会話の始まりではあった。だけど同時に、俺はなんとも言えない安心感を覚えていた。昨日今朝と姿を見せず、どうした物かと心配していたため、余計にそう思えてしまった。

 

 

「珍しいな……てっきり、図書館にこもって本を読んでいると思ってたよ…」

 

「…気分の問題ですよ。それに……あんな事件が起きた後なんです。…誰だって彼処に行くのはためらうです」

 

「…確かに、そう考えると、ちょっと足繁くは通いにくいな」

 

 

 あくまで所感だが…多分後者が、躊躇う主な理由なのだろう。前回の裁判で殺害現場となりそして炎上した図書館。そんな図書館が昨日のうちにまるでゾンビのように再生していたのだ。

 そこを好んで根城にしていた彼女にしてみれば、思うところが無い方がおかしい話だ。

 

「………」

 

「なぁ…雲居?」

 

「……折木………………………悪かったです」

 

「…えっ?」

 

 

 突然、彼女からそんな謝罪の言葉が漏れた。一瞬、俺は何に対して言っているのかは分からず…短い言葉を返してしまった。それでも彼女は、続けていった。

 

 

「前の裁判のことですよ……あのときの私は、色々迂闊だったです。タダ目の前にある犯人を吊す事ばっかり考えてて…周りが見えてなかったです」

 

 

 いつのまにやら本を閉じて、視線の先にある噴水を眺める彼女はそう言葉を並べていった。

 

 

「一歩間違えれば、私が戦犯になって、長門の思い通りの事件で終わるかも知れなかったです…」

 

「…でも、あれはお前に限った話じゃ…」

 

「いいや…それでもです」

 

 

 譲らない態度を保ちながら…雲居は自己嫌悪を続けた。その暗い面持ちを見た俺は、気付いた事を口にした。

 

 

「もしかして…ここ数日姿を見せなかったのは…それに責任を感じてか?」

 

「…図書委員として、言葉には責任を持たなくちゃならないですからね」

 

 

 案の上…かなり引きずっているようだった。…できるなら、そのおもりを少しでも軽くしてやりたいと思った…でも安易に全ては終わったことだ、だから気にするな。…とは言い切れなかった。

 

 もしも言ってしまえば、確実に彼女との間にある亀裂を広げてしまうように感じたから。だから俺は、あえて彼女の言葉を待つことにした。

 

 

「だから…あのあと…ニコラスにも改めて、謝ったです。疑いに掛かってごめん、て。鍵の掛かった扉の向こうに言ったです」

 

「…何か反応はあったのか?」

 

「無かったです。部屋の中に入ってるのを見たから、一応伝わってるとは思うですけど……あいつがどんな気持ちで考えてるのか…分からないです」

 

「……もう許してる。…とも言い切れないな」

 

 

 お人好しなようで、急にドライになることがあるあいつは、俺達の中で最も読みづらい感性を持ってるとも言えた…。朝の報告会みたいに、急に姿を現したと思ったら、突き放した態度を取ったり、俺にアドバイスを送ったり…。本当によく分からない奴だ。…落合以上に。

 

 

「…でも、あいつのことだから、次会ったときには『そんなことあったかい?』とか言ってくるんじゃないか?」

 

「はぁ…無いですよ。あいつ、案外恨みがましいタイプですから……きっとまだ根に持ってるですよ」

 

 

 …重症だな。相手がニコラスだからとも言えるが…何だか見ていられないくらい鬱になっているみたいだった。

 

 

「…………いや雲居…そんなことこそ無いと思うぞ?」

 

「…えっ」

 

「ニコラスは確かに変な奴だが…個人的な恨みにとらわれ続けるような、愚かな人間じゃないハズだ」

 

「…そんなの。ニコラスに聞いてみないと分からないですよ」

 

「いいや分かるさ。だって俺はアイツの友達だからな。……それに、裁判の中で自分が疑われるのは仕方の無いことだって…そう言ってただろ?」

 

「………」

 

「…だから、もう反省タイムは終わりして良いんじゃないか?」

 

「………」

 

「猛省したくなる気持ちは分かるが…それ以上は体に毒だ。そんな気持ちのままずっと引きずっていたら…こうやって生き残っても生きた心地がしない」

 

「……………」

 

「だからココで、一旦自分を許そう」

 

 

 雲居は俯いたまま、しきりに何かを見続けていた。それでも俺は、続けていった。

 

 

「大丈夫…案外、お前が思っている以上に、皆は気にしてないさ……むしろ、心配してると思うぞ?」

 

「……そう、なんですかね」

 

「ああ……言葉には出さなくても…きっと思っているはずだ」

 

 

 考えがよく分からない奴が大半ではあるが…少なくとも小早川とか、反町辺りは確実に思ってるだろう。

 

 

「分かったです…許すことにするです…」

 

「ああ…そうしよう」

 

 

 すると、雲居は目を向けずに…此方に片手を差し出した。

 

 

「……じゃあ、折木。ありきたりですけど…握手するです。和解の意味を込めて…」

 

「…そうだな。これで、仲直りだな」

 

 

 少々照れくさい雰囲気を出しつつ、俺達は手を交わし合う。何となく納得した様子の雲居に俺は安心した。

 

 

 そんな中で一つ…とあることを思い出した俺は、話の方向を転換させるように、雲居を呼びかけた。

 

 

「そういえば…お前、新しいエリアについては…何か聞いてるか?」

 

「ああ…それについてならもう聞いてるですよ。さっき贄波に聞かされたです」

 

「贄波が?」

 

「部屋を出たとき。アイツが待ち構えたように噴水広場から来たですから、そこで少し話をしたんです。アイツの一方的な会話だったですけど…その流れで…」

 

「成程な…」

 

 

 贄波のかゆいところに手が届く動きには、毎度感心してしまう。説明する手間が省けて良かった、そう思えた。

 

 

「はぁ…態々報告しなくても別に良いのに……あいつもお節介ですよ。あんたと同じくらい…」

 

「……俺は焼いたつもりはない。…諭しただけど」

 

「はっ…よく言うですよ…」

 

 

 そう鼻で笑う雲居。何となくいつもの調子が出てきてくれたような気がした。すると、何かを思い出すように、彼女は懐かしむような表情で空を眺め始めた。

 

 

「……あんたらを見てると…昔お世話になった人を思い出すですよ」

 

「昔?」

 

「私が5,6歳の頃の話です。……私、地元にある図書館に通い詰めてたです。片田舎にひっそりと立っているような、しょぼくれた図書館に」

 

「その頃から本が好きだったのか……お前らしいな」

 

「どうもです。…そんで、そのよく通ってた図書館には長年勤めている司書さんが居たんです。その人が今言ったお世話になった人です。6、70代位のおじいさんですね。”棚田さん”って、読んでたです」

 

「棚田さん…」

 

「いっつも穏やかにニコニコして…ゆったりとしてて、見てるだけで眠くなるような、ある意味変わった人だったです」

 

「…ある意味…そうだな。言ってる限りじゃあ不思議な雰囲気の人に聞こえる」

 

「その顔の通り、典型的なお人好しで…誰の言う事も聞いちゃう、所謂断れない人だったです。……子供の私から見ても、まあ生きにくそうだな、ってませた事を思ってたですよ」

 

 

 確かに、何となく想像がついた。良く言えば頼みやすそうな、悪く言えば都合が良い…という感じの人なのだろう。

 

 

「でも棚田さん博識だったです。とんでもなく」

 

「…司書レベルに収まらないくらいか?」

 

「です。聞けば、必ず返ってくるくらい、あの人自身が図書館みたいだったです。私、その人から沢山の本の話を聞いたです」

 

「それは…聞くだけでも凄いな。でも話を聞いてたって事は…もしかして、お前の図書委員としての始まりって…」

 

「はい…その人が発端です。あの人が居なかったら、超高校級としての私はココには居なかったはずです」

 

「師弟関係のようだな」

 

「まさにそれです。私はきっと棚田さんの弟子だったんです」

 

 

 ”でも――”

 

 

 と、先ほどの明るい声色から一転、しぼむように、雲居は声を暗くした。

 

 

「…私が中学校に上がるころに……棚田さんは末期がんを患って、すぐに亡くなってしまったんです」

 

「…気の毒な話だな」

 

「初めて、身内以外の葬式で泣いたですよ。今でも、その気持ちはしっかり覚えてるです」

 

「棚田さんとの思い出を…大事にしてるんだな」

 

「当たり前ですよ、何たって師匠ですからね。……でも、ここからが本題なんです…その葬式の時に聞いた話なんですけど……棚田さん、実は『元・超高校級の司書』だったらしいんです」

 

「本当か?」

 

「参列者の中に、テレビでよく見かけるような政治家とかどっかの会社のCEO何かもいたですから…間違いないです」

 

「…そんな凄い人だったのか…お前が表現するような、図書館並みの知識量があったのも頷けるな」

 

「私も同じ事を思ったです。……でも、1番驚いたのはそこじゃなかったんです」

 

「何が…不思議だったんだ?」

 

「……そんな元超高校級たる人間が、私の住んでいる片田舎の図書館に勤務してたのか…それがわからなかったんです」

 

 

 ……確かに。希望ヶ峰学園は卒業すれば成功間違いなしの伝統ある名門。棚田さん程の人であればもっと、国が経営するような大図書館に居ても良いはずだ。だけど…雲居の住む地元の…彼女曰くしょぼくれた図書館に勤務していた。

 

 

「死ぬ間際に、その同級生らしき人も棚田さんに同じ事を尋ねたらしいです。『君程の人間が、どうして国の勧誘を蹴ってまで、ここに居ることにこだわったんだ?』って」

 

「もっともな質問だな……それで、棚田さんは何て答えたんだ?」

 

「『自分らしい生き方をしようと思ったら…気付くと此所にいた』…って言ったらしいです」

 

「…?どういうことだ?」

 

「単純な話ですよ……棚田さんは、ただ自分の大好きだった地元の図書館を守るために…あそこに居続けたんです。約束されていた地位や名誉をかなぐり捨ててまで」

 

「…凄い覚悟だな」

 

「……私、その話を聞いたとき、また教えられた気がしたんです。意志を曲げずに、お前も自分の生きたい道を選びなさいって、同級生を通じて、言われた気がしたんです。…遺言って奴ですね」

 

「…自分の生きたい道?」

 

「所謂、夢って奴ですよ。だから私は、その葬式の日に決意したんです。棚田さんという人がいた証をこの世に残すために、彼が持っていた全ての知識を世界中に轟かせるために、私は図書委員として人生を全うする…そう考えたんです」

 

 

 今までのひねた雲居からは考えられないほど、その瞳は真っ直ぐだった。師と仰ぐ人から教えられた、覚悟が秘められた瞳だった。

 

 

「…だから、この道に進んだのか?」

 

「それ以外に理由なんて無いですよ」

 

「…成程な」

 

「今まで目一杯努力して、そして念願叶って希望ヶ峰学園に入学できて。これで、あの人と同じラインに立てた…そう思ったんです。

 

 

 ”でも…”と、暗い声色で続けていった。

 

 

「こんな…夢のことを考える余裕もない意味不明なことに巻き込まれて……ホント、人生そう上手くはいかないもんですね……」

 

「雲居…」

 

「でも……私、諦めないです。何が何でも生き抜いて、この目標を貫いてみせてやるです。絶対に…」

 

「ああ…そうだな。そのために、頑張ろう」

 

「折木……そのときは、頼むですよ」

 

「………何をだ?」

 

「…秘密です」

 

 

 …よく分からなかったが…何だか良い雰囲気で終われたようだ。

 

 …最初はギスギスした雰囲気の滑り出しだったが…それでも途中の仲直りを通して、彼女のルーツを知ることが出来た気がした。

 

 俺と雲居はまた明日と、そう言い残し、別れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

【エリア1:炊事場エリア】

 

 

 

「反町…ちょっと相談しても良いか?」

 

 

 今日の夕食を終えた後のことだった。テーブルの後始末をする反町に俺は控えめな口調で話しかけた。

 

 …どうしても相談したいことがあったからだ。

 

 反町は、難しく顔をしかめながら話しかける俺を見るやいなや、何故かニヤニヤと表情を崩した。

 

 

「おう、どうしたんだい?色男」

 

「……………」

 

 

 笑顔の理由はすぐに分かった。どうやら朝の出来事が尾を引いてるようだった。

 

 しかしその反応は些か不本意であったゆえに、俺は逆に顔をしかめた。

 

 

「ははは…悪かったよ。でも…相談内容は、どーせそれについてだろ?」

 

「………ああ」

 

 

 どうやら、俺が相談したい内容はは言うまでも無かったみたいだった。あまりおおっぴらにしたくなかった故に、察しが良くてとても助かる。

 反町は、促すように俺を指で示した席に座らせると、彼女もその対面に腰を下ろした。

 

 

「で?チヤホヤされるようになったことの何に困ってるんだい?別に不自由なことでもないだろ?」

 

「…チヤホヤ…なのかは分からないが。それをしてもらってること事態に問題は無い。むしろ嬉しいさ…だけど…」

 

「…何か思惑が有るんじゃ無いかって?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだ。だけど、急にどうして…と思ってな」

 

 

 そう昨日、辺りから薄々感じてはいたが…今日になってはっきりと認識した。俺は今、協力とも違う積極性…にしては強引な部分もあるが……そういった類いのベクトルを向けられていると。

 

 今までこういった変化は見られなかったために、そしてこういう部類の交流は、受けたことが少ないことも重なって…俺はそう…戸惑ってしまっているのだ。

 

 

「煮え切らないねえ…つまりどう思ってるんだい?」

 

「………何となく、ハッキリ言うと……気を遣われているように感じたんだ」

 

「その通りだよ。皆、アンタを元気づけようとしてるんだよ」

 

「そうだようなあ…………え?」

 

 

 あっさりと俺の所感を肯定する反町に、逆に聞き返してしまった。反町は何を言っているんだお前は、と、いぶかしむような表情を此方に向けていた

 

 

「元気づけるって……俺、そんなにやつれてたか?」

 

「アンタねぇ…気付いてないフリしてるのか分からないけど……昨日辺りから、相当老け込んでるよ」

 

「ふけ――…老人扱いは止してくれ」

 

「冗談じゃなくて……真面目に言ってるんだよ。はぁ…アンタ、鏡って文化にも乗り遅れちまってるのかい?改めて自分の顔見てみな…目元に酷っい隈が出来てるよ」

 

「えっ…」

 

 

 俺は嘘だろ、と思い、慌てて自分の目元を触ってみた。その行動に、反町はため息を吐く。明らかに呆れているようだった。

 

 

「触ってもわかるわけないだろうに………。念のため聞いておくけど…アンタ、一昨日の裁判が終わってから、よく寝れてないだろ?」

 

「…いやそんなことは……」

 

「じゃあ眠りが浅くなったとかは?」

 

「まぁ…それは多くなった気がするが…」

 

「それだよ。知らないうちにストレスを溜め込んでる証拠さね。加えて、アンタ昨日の朝から、ボーッとすることも増えてる」

 

「……」

 

 

 俺自身でも気付かなかったような客観的な意見を反町はまるで母親のように淡々と並べていった。

 

 ”…まっ、この状況で溜め込むなって方が難しい話だろうけどね…”としょうが無いことだと、付け加えてくれているが…何となく、小言を言われているようで肩をすぼめてしまう。

 

 

「それにアンタのその状態。アタシ以外にも、小早川やらも気付いてるんよ」

 

「えっ……そんなに分かりやすかったか」

 

「ああ、もうバレバレさね」

 

 

 中々の言われようだった。自分が分かりやすいとは前々から言われていたが…まさかそんなことまで筒抜けだったとは。

 

 

「そんなアンタの様を見て、小早川達は元気づけようって、そう考えたんだろうね。まぁ実際に、アタシの目の前で宣言してたしね。『裁判で役に立てなかった私にはこれ位しかできませんから!!』って言いながら、燃えてたさね」

 

「…そうか。そうだったのか…」

 

 

 真っ直ぐで素直なその気遣いに、照れくささと、言い様もない嬉しさが感じられた。

 

 

「……この状況をどうにかしようと、小早川も小早川なりに頑張ろうとしてるってことさ。…変わろうとしてる点で言うなら、古家も同じさ。鮫島がいなくなって、そんで今のままじゃダメだって思って……ああやって慣れないトレーニングまで始めちまった」

 

「古家も…だから急に」

 

「まぁ…ちょっと空回り気味だけどねえ…」

 

 

 苦く笑いながらも、嬉しそうに表情を緩める反町。その姿は、同級生と言うよりも、もはや雛の巣立つ寸前の姿を喜ぶ親鳥のようだった。

 

 

「そういうアンタも、同じだろ?例えば、この不均衡な状況をどうにかしなきゃ、とか……」

 

「…分かるのか?」

 

「昨日の小早川への態度とか、さっきの雲居への働きかけとかを見かけたら、イヤでもそう思っちまうさね」

 

 

 …小早川のはともかくとして、まさか、雲居との場面も目撃されているとは……何とも恥ずかしい話である。

 

 

「……折木ぃ……アンタはアンタが思う以上に、大した人間さ。いろんな修羅場を潜ってきたアタシらでさえ背けたくなるような事から…絶対に目をそらさないようにしてきた。そして、そんなアイツらのために怒りもした」

 

「急にどうした………でも、そんな大した事はしていない」

 

「…本当に……アンタは果てしなくお人好しな奴だよ。アタシらよりも、ずっとね。でも、そういう姿はどうしても危うく写るもんさ。そしてそんなアンタが無理してる姿は、ここ数日で何度も見てきてんだ…」

 

 

 危うく写る、そんな醜態をさらしてしまったことで、きっと小早川達の行動に原動力を与えてしまったのだろう。

 …凡人の俺がこれほど心配を掛けてしまったことに何だか申し訳ない。

 

 

「はぁ………また心底どーでもいい事で頭を悩ませてるんだろうけど……一時くらい、そんな使命感とか責任感と全部忘れてみたらどうだい?この約束事が良い機会さね」

 

「だけど…」

 

「アイツらは恥ずかしさも捨てて、覚悟してアンタを外に連れ出そうとしてくれてんだ。その気持ちにしっかりと答えてやるのが甲斐性ってやつさ……。まあ、もしもそれがどうしてもダメってなら……デート云々とかは考えずに、ゆっくり友達と羽を伸ばすって気持ちで過ごしてみるさね」

 

 

 友達…か。確かに、それなら多少は気持ちは楽になったような気がした。

 

 

「確かに、慣れてない働きかけに戸惑っちまってるんだろうけどね……そう思うのは、後でいつでもできるさ……今は大人しく、その幸せを噛みしめとくんだね」

 

 

 ”他人の事の前にまずは自分の事…”そう付け加える反町に、頭をガシガシと撫でられる。何となく母親に撫でられている気分になった。何となく、教会での彼女が強く慕われる理由が分かったような気がした。

 

 

「…それに…――――――――――なんてことも……あるからね…」

 

 

 よく聞こえなかったが…ボソリ何かを呟やく反町。そして…何故だか寂しげに様子になる彼女。

 

 聞いても良いのだろうか…?だけど、そうして良いのかわからなかったために。俺は沈黙することしか出来なかった。

 

 ――――すると反町は尽かさず”でもっ!!”と打って変わって大きな声を上げた。思わず、驚きを露わにしてしまった。

 

 

「でも…それはそれ!これはこれ!!乙女心は乙女心さね!!良いかい?楽しむのは良いけど、梓葉も、贄波も、水無月も、あと古家も泣かせたら承知しないからね!!個人差こそあれ、アンタのことを憎からず思ってるのは事実、向き合ってやるのが通すべき筋ってもんさ…良いね?」

 

 

 そう腕をまくりながら、反町は圧をかけてくる。

 

 

 一応背中を押されているのだろうが、むしろヘタなことをしたらタダじゃおかない、という脅迫染みたものを感じた。

 

 

 そして同時にこうも思った…―――いや、キツくね?…と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『モノパン劇場』

 

 

「ミナサマは、『愛』について考えたことはありますカ?…ありますよネ?」

 

 

「では愛について語る前に、まず辞書的な表現から話を切り込んでいきましょウ

 

「辞書的な表現をするなら、愛とはつまり、慈しみあう気持ちのこト。生ある物をかわいがり大事にする気持ちのこト。特定の人を愛おしいと思うこト。このように表現されていまス」

 

 

「そして愛とは、向ける相手によってその形を変えていきます」

 

 

「親子愛、兄弟愛、友愛、恋愛…細かく分類するなら、それこそおびただしい数となるでしょウ」

 

 

「しかし定義のみで話を進めてみても、形ばかりで、決して理解したとは言えませン」

 

 

「だからこそ、ココで一つ、例を挙げていきましょう」

 

 

「…最近とある映画を見ましタ。よく金曜ロー〇ショーなんかでやってる、天才物理学者が、殺人犯であり、そして友人である天才数学者の作り上げたトリックを見破るという物語のやつでス」

 

 

「しかし、物語だけ聞くと、愛なんて言葉は、一欠片も見当たりませン。ですがそれは違うのでス。実は数学者が殺人を犯したのは、ワタクシが何度も言っている『愛』が原因なのでス。それこそ、特定の人を愛おしいと思う、『恋愛』」

 

 

「物理学者は、愛という物の存在に否定的でした。しかし、数学者は逆に愛の存在を知ってしまったが故に、今までは考えられないようなことを次々としでかしていったのでス」

 

 

「まさに『愛』のなせる技ですネ」

 

 

「そして、真実を見いだした時、物理学者は友人が罪を犯したことを嘆き、泣きましタ」

 

 

「ワタクシはその涙を見たとき、これも『愛』だと思いました。言葉で表現するなら友愛。それをハッキリと感じ取りましタ。物理学者はその涙で、皮肉なことに自分自身は今まで否定してきた愛を証明してしまったのでス」

 

 

「学者はその後も、友人の罪を嘆き続けていました。どうして友人は罪に走ってしまったのか…その理由が分からずにずるずると考え続けていましタ。…その気持ちこそが理由だとも知らずニ」

 

 

「……ん?つまりワタクシが何を言いたいのかっテ?」

 

 

「そうですネ…ワタクシが言いたいことをまとめるなら…何事にも動じない鉄の心を持っていても…どんな超常的な存在であろうと…愛は必ずその人の人生そのものを狂わせてしまうということでス」

 

 

「愛とはつまり、人を変えてしまう麻薬のような代物なのでス」

 

 

「それこそが、ワタクシなりの定義、『愛』の定義なのでス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生き残りメンバー:残り12人』

 

 

【超高校級の特待生】⇒【超高校級の不幸?】折木 公平(おれき こうへい)

【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)

【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)

【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)

【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)

【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)

【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)

【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)

【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)

【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)

【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)

 

 

『死亡者:計4人』

 

【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)

【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)

【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)

【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)

 




基本、事件発生するまでは脳死です。



【コラム】

〇みんなの得意料理

男子
・折木 公平
⇒手打ちそば


・陽炎坂 天翔
⇒プロテイン入りハンバーグ


・鮫島 丈ノ介
⇒卵がゆ


・沼野 浮草
⇒白菜の漬け物


・古家 新坐ヱ門
⇒ペペロンチーノ


・雨竜 狂四郎
⇒インスタント系


・落合 隼人
⇒きまぐれ(すぎる)サラダ


・ニコラス・バーンシュタイン
⇒スティッキートッフィープティング


女子
・水無月 カルタ
⇒特濃豚骨ラーメン


・小早川 梓葉
⇒おにぎり


・雲居 蛍
⇒オムライス


・反町 素直
⇒パン(自分でこねて焼く)


・風切 柊子
⇒ビフテキ(でも作りたくない)


・長門 凛音
⇒魚の塩焼き


・朝衣 式
⇒コーヒーゼリー


・贄波 司
⇒謎スープ(材料は現地調達)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。