ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~   作:水鳥ばんちょ

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Chapter4 -(非)日常編- 18日目 捜査パート

 

 

  

 

 ――――俺の所為だった

 

 

 

 

 俺が怖じ気づいていたから

 

 

 俺が何もしなかったから

 

 

 

 ”俺が、諦めてしまったから”

 

 

 

 ――――こんな事になってしまった

 

 

 

 ――――紛れもない…俺自身の責任だった

 

 

 

 

『…黒幕?』

 

 

 俺があんなことを言わなければ。

 

 

『………!』

 

 

 アイツを見た瞬間に…俺が声を上げていれば…。

 

 

 

 ――――こんなことに、なるはずなかったんだ

 

 

 ――――こんな事態に転ぶはず無かったんだ

 

 

 

 ――――こんな…絶望的な光景に…

 

 

 

 

 

 …なることなんて、なかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

【エリア4:ホテルペンタゴン『庭園』】

 

 

 夕暮れの終わった暗闇の空の下。ホテルのライトに浅く照らされたその中心。

 

 

「おい、古家……」

 

 

 ポツポツと体中に当たり散らす雪の中で。

 

 

 俺は…決して何かが写ることない、くすんだ瞳の友達を両手に抱き…揺さぶった。

 

 

 何かを言ってくれ。いつもみたいにお前の声を聞かせてくれ。

 

 

 そう思いながら。そう願いながら。

 

 

 だけど…彼は…抜け殻のように、人形の様に、ブラブラと…首が揺らすだけだった。

 

 

「返事してくれよ…おい…」

 

 

 何を言っても、音の無くなった彼から…俺のよく知る声は、返ってくることは無かった。

 

 

「おい…!!!」

 

 

 だけど、それでも…俺は声をかけ続けた。心を奥底に響かせるように、僅かな意識を覚醒させる漫画のような展開を思い描くように。

 

 

「……おい……………!!」

 

 

 ………だけど、そんな声は空しく世界に響くだけだった。

 

 

 

「………………古家ぁ……!!!」

 

 

 気付くと、頬から何か生暖かい感触が流れていた。

 

 

 ……涙だった。

 

 

 あのとき、最初の事件が終わったとき…流しきっていたと思っていた涙が…

 

 

 ぽろぽろと、溢れていた。

 

 

 心が、友達の死…今更気付いたように、ぽろぽろと。

 

 

 ぽろぽろ、ぽろぽろと……

 

 

 嘘みたいに…ぽろぽろと…

 

 

 

 

 ――――チャキッ

 

 

 

 

 

 すぐそばで、何かを引いたような、何かを備えたような…小さな音が聞こえた。

 

 

 半ば反射的に、俺は涙を伝わせる顔を上げた。

 

 

 ――――そうだった……まだ、”ソイツ”は立っていたんだ。

 

 

 ――――今、古家を殺害した…ソイツは立っていたんだ。

 

 

 宵闇の中で、コチコチと体にぶつかる吹雪の中で、ソイツは…犯人は、俺に、再び銃口を向けていた。

 

 

 目の前で、今人を殺した事なんて忘れたように…銃口を向けていた。

 

 

 その光景を目の前にして…哀しみと、恐怖がごちゃ混ぜになった心が、渦巻いていくようだった。

 

 

 今何をするべきなのか、逃げ出すべきなのか、友の死を悼むべきなのか…何もかも分からなくなってしまった。

 

 グルグルと、グルグルグルグルと…崩壊していた。

 

 

 だけど……俺は、反射的に…いや本能的に…………

 

 

 

 ――――古家の体を庇った

 

 

 

 これ以上、古家の体を傷つけたくなかった。

 

 

 これ以上、古家の死を傷つけて欲しくなかった。

 

 

 だから、俺は自分の命を…銃口へと差し出した。

 

 

 やるなら、俺をやれ……まるでアクション映画のように…俺は古家の体を庇った。

 

 

 だけど……銃口は、淀みなく…俺に向けられていた。そんな良心なんて無駄だと、ハッキリと…突きつけるように。

 

 

 

 そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「公平!!!」

 

 

 ……次の瞬間に聞こえたのは銃声では無かった。

 

 

 そんな、良く聞き慣れた、仲間の声が聞こえた。

 

 

 

 ――――風切だった。

 

 

 俺は咄嗟に、声のした方。食堂に、目を向けた。

 

 

 銃声を耳にしたためなのか…食堂から風切が食堂のドアから出てきていた。背中のライフルを引き抜き、雪が降りしきる中で、犯人へと銃を向けていた。

 

 

 犯人は、後ずさった。それは超高校級の射撃選手である風切の腕を良く知っているからこその、動揺の現れだった。

 

 もし、彼女と銃弾を交わし合おうとするなら、その勝敗は明白だったから。

 

 少しずつ、俺に向けられた銃口は離れていくのが分かった。

 

 その動揺につけ込んだ風切は……距離を保つようにジワジワと逆ににじり寄る。決して隙を見せないように、ライフルを犯人に向けたまま、膝をついた俺の側まで近づいてくる。

 

 緊張した空気が、庭園の中で走り続ける。

 

 

「公平……大丈、夫………――――――!!!」

 

 

 俺の側まで来た事で、俺が両手に抱える、古家の死体を風切は見てしまった。声になら無い驚愕が、その表情を包んだ。

 

 

「……古家?」

 

 

 返事の無い、傀儡のように横たわる古家を見て、事態を察し、顔を青くさせていた。彼女の、今までの淡泊な表情からは考えられない程の衝撃が見て取れた。

 

 

 …だけど、その動揺が大きな隙を生んでしまった。

 

 

 犯人は、俺達に背を向けて…――――――開け放たれていた、フロントの裏口に駆け込んでいった。

 

 

 つまりは…逃げ出したのだ。

 

 

「許さない……!」

 

 

 古家の死を目の当たりにした、風切は目に見えて怒りに震えていた。ここから脱出しようとする犯人に、ライフルを再び向け直し、今にも引き金に指を掛けようとしていた。

 

 

「風切…!」

 

「大丈夫…実弾じゃ無い…!」

 

 

 確かに、前にライフルに入っているのはゴム弾だと言っていたが…。

 

 そんなことは分かっていた……だけど俺にはそれ以上の”別の心配”があった。昨日、彼女の過去を聞いていたからこそ分かる…その理由が。

 

 ――――”彼女は生物を撃てない”…今までだましだましで射撃に関わってきた彼女にとって、コレはトラウマの再発とも言える状況であった。

 

 俺は、極限とも言える緊張が再び庭園に走った。

 

 

「お願い…動いて……!」

 

 

 彼女は、彼女自身に言い聞かせていた。

 

 

 仲間のタメに、友達の敵に一矢報いるために。古家の死から逃げ出そうとした、犯人を止めるために。

 

 

 俺は今、人が、自分自身の過去を乗り越えようとする瞬間を目の当たりにしていた。

 

 

 震える指と、揺れる瞳、張り詰める心。信じられない程の心拍が、体を脈動させた。

 

 

 …犯人は、裏口を抜け、ホテルの入口に差し掛かろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――そして

 

 

 

 

 

 

 

 ――――バンッと、拳銃とは比べものにならない轟音が、響いた。

 

 

 

 風切はライフルの反動に身を弾ませる。ふわりと、火薬の硝煙が舞散った。

 

 

 

 

 

 

 ――――――――キンッ

 

 

 

 

 

 

 

 とても、かん高い音が響いた。それが何の音なのか…正体は分からなかった。

 

 

 されど瞬間…犯人は振り返りこそしたように見えたが…決して足を緩めることは無く、真っ直ぐに森へと…開けられたままの扉の先に消えいくのが見えた。

 

 

 

 ――――それでも、その弾丸は何処かに着弾したことは確かだった。

 

 

 

 ――――それでも、犯人の足が止まることもまた、確かだった。

 

 

 

「……くそっ!」

 

 

 

 この事実を見た風切は…明らかな悔しさを滲ませるように、そう吐き捨てた。

 

 

 

「…逃がさない!!」

 

 

 

 そして、風切は犯人を追って、ホテルを飛び出そうとフロントへと足を急がせた。

 

 

「風切!」

 

 

 そう彼女を生死するように声を上げたが…彼女もまた足を緩めることは無かった。

 

 

 俺は死体となった古家を抱え、ただいなくなる彼女達の光景を呆然と見送ることしか出来なかった。

 

 

 まるで舞台の観客のように、まるでテレビの前の視聴者のように…。

 

 

 ……どうしようもないほど…何もできないままに。

 

 

 

 

 

 

 すると――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――パンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの悪夢のような銃声が、再び響き渡った。風切のライフルの音とは違う、心臓を握りしめられたような発砲音。

 

 

 それは……あの犯人が、また愚かにも引き金を引いたことを物語っていた。

 

 

 瞬間に走った、吐き出しそうな程の絶望感。

 

 

 銃声は誰に向けて放たれたのだろうか?

 

 追っていった風切はどうなったのだろうか?

 

 誰かが、また傷ついてしまったのだろうか?

 

 

 

 騒音のような胸騒ぎが、胸中をかきむしる。

 

 

 勘弁してくれよ、と、今にも叫び出しそうだった。

 

 

 そして、同時に…誰か来てくれと…これまでに無いほどの助けを、心の底から求めていた。

 

 

「折木さん!!」

 

 

 そんな願いが通じたのか…ワンテンポ遅れたように焦った小早川が、中庭へと現れた。

 

 

「…何なんですか!今の、世にも恐ろしい音は!!……………あ、あれ?…あの、折木…さん?その、両手に抱えているの……は………」

 

 

 …そして、風切と同じように、俺の腕に抱えられた古家を見て、彼女は両手で口元を覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピンポンパンポーン…!』

 

 

 

『死体が発見されましタ!』

 

 

 

『一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開かせていただきまス!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空しくも、彼の死を決定づける、アナウンスが鳴り響いた。

 

 

 喪失感と、現実を受け止めきれない虚無感が同時に襲ってきた。

 

 

 ああ、そうか……やっぱり…そうなんだ、と。

 

 

 完全に、今目の前にある現実を理解した気分だった。

 

 

 

「……………」

 

 

 

 俺はゆっくりと、”古家の死体”を地面に降ろした。

 

 

 傷つけないように、宝物のように…ゆっくりと。冷たい雪の上に、横たわらせた。

 

 

 

「……古家さん…!」

 

 

 その合図のきっかけとなった小早川自身も、そう声を上げ、呆然とする俺の側に掛けより、古家の前で膝を折る。

 

 瞳を潤ませ、先ほどの俺のように、声を失わせていた。

 

 

「……」

 

「折木…さん?」

 

 

 俺は、自分の手を古家の瞼へと持っていく。

 

 

 もう、これ以上彼の瞳を見続ける事は出来なかったから。

 

 もう、安らかに眠らせてあげたかったから。

 

 

 見開かれた彼の…古家の瞳を閉めた。…安らかに眠らせてあげるように。

 

 

 すると…

 

 

「か、風切さん!!」

 

 

 小早川は、何かに気付いた声で、犯人を追いかけていたはずの風切の名を呼んだ。

 

 声を向けた方向に、フロントの裏口へと…俺は視線を移動させた。

 

 そこには、風切と、…そんな彼女の肩に背負われた落合がいた。

 

 見ると、彼が違和感を持つように引きずる足の…膝の辺りがショッキングピンクで滲んでいた。

 

 

「落、合…」

 

「ゴメンよ友達。ゴメンよ相棒…僕は今自由を奪われた、自分の足で立つことすらも、人間としてできることすらもできなくなってしまった」

 

「……何が、あったんだ」

 

「大した事じゃ無いさ。ただ誰かがいて、僕がいて…そして世界がそう答えを出しただけさ」

 

「…風切」

 

 

 もう落合に受け答えを期待できないと即座に判断し、隣の彼女に声を向けた。何故落合がこんな状態になったのか…説明を求めた。

 

 

「…追ってる途中で、アイツと…外にいた落合が交錯して…それで撃たれた」

 

「ああ、そうだとも。それが僕自身が言いたかった全てさ」

 

「……そうか、あの音は…そのときの」

 

 

 あれから逃げた犯人は…外を捜索していたと思われる落合と鉢合わせ、何らかの理由で足を打たれた…ということか。

 

 …先ほどの、3発目に放たれたと思われる銃弾の行方がどうなったのか。

 

 それを知ることが出来たことに、場違いにも…俺は小さな安堵を覚えていた。

 

 

 ――――また、誰かを失わずに済んだ。

 

 ――――また古家のような犠牲者が出なくて良かった

 

 

 そんな安堵を確かに感じ取れた。

 

 

「…ある程度血止めはした…でも、ちゃんとした処置はしてない」

 

「で、では、一刻も早く医務室に参りましょう!!救急箱…救急箱をご用意しなければ!!」

 

「そうだな…」

 

 

 あたふたとしする小早川は、先に医務室へと駆け込み、ドアを開け放つ。俺達も続くように、落合を背負い、医務室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

  

【エリア4:ホテルペンタゴン『医務室』】

 

 

 医務室にて――――

 

 

 コチコチと時間が過ぎる中、風切は慣れた手つきで、落合の足に集中する。救急箱だけじゃなく、室内にある薬を総動員し、痛々しく空いた膝の穴の処置をしていた。

 

 俺と小早川は、そんな風切の処置の手伝いをしていた。

 

 前に彼女が言っていた。

 

 昔、誤射の所為で命を奪いかけた弟の緊急的に治療をしたことがあると…だからこそ、彼女はその記憶を頼りに、治療に専念しているのだ。

 

 風切のそんな壮絶な経験が…今、役立とうとしている…実に皮肉な話しだ。

 

 

「………」

 

 

 俺は医務室の…中庭へと繋がる…開け放たれたドアに目を向ける。

 

 

 その視線の先の、庭園の中心に寝かされた、古家の死体。

 

 

 死体の現場を…荒らしてはいけない。死体を動かすことは、今までの事件から学んできた御法度だったため…苦渋の決断ではあったが、彼の死体は外に寝かせることに至っていた。

 

 イヤなくらいの、事件への慣れだ。

 

 ……だけど、完全に目を離すのは良くないと、中庭へと繋がるドアは半開きにしながら…。

 

 その所為か、エリア内の冬の風が部屋の中に緩やかに流れ込んでいた。

 

 

「あ、あの…折木さん」

 

 

 すると、隣に居た彼女が、大きめのタオルを此方に差し出してきた。先ほどまで湯に浸けていたからなのか、僅かに立ち上る湯気が見て取れた。

 

 

「…お顔を、その…」

 

「顔?……ああ、そうか」

 

 

 …そうだった。俺があのとき、古家が犯人に撃たれたとき…彼の返り血が俺自身にかかっていたのだった。

 

 

「すまん…ありがとう」

 

 

 囁くような小さな声で礼を言う。そしてゴシゴシと、顔の血を拭きとった。湯に浸からせていたおかげか、その感触はとても暖かった。

 

 

「うう……落合さん、こんなお労しい姿に…」

 

「…あはっ、傷とは決して後悔する物じゃ無い。人をより強くするための、人の心をより強靱にするための証なのさ。だから安心して遅れ、こんな怪我は旅路の途中でよくやってたものだから」

 

「…うるさい。黙って治療を受けて」

 

「…………」

 

 

 風切から咎められ、本当に黙りこくる落合。また、張り詰めるような沈黙が走り出す。コチコチと、時計の針の動く音だけが、部屋中に流れる。

 

 

 そしてそれから、数分後…

 

 

「…これで大丈夫」

 

 

 処置を終えたのか、風切はそう言いながら息をついた。

 

 

「…落合、具合は?」

 

「ああ、何処へでも、どんな旅路が待っていようと、僕はいつでも飛び立てる準備は出来ている」

 

「……無事、なんだな」

 

 

 イマイチ読み取れないが、先ほどの死にかけた口調よりは、明るく。ほどよく回復していることは、明らかに思えた。

 

 

「落合さん!良かった、ご無事で」

 

 

 小早川は力の入った肩を抜き、息を吐く。俺も”そうだな”と、同じように安堵する。

 

 

 だけど…

 

 

「隼人……ごめん、私が無鉄砲すぎた」

 

 

 対するように、作業を終えた風切は、肩を落とし、俯き、そう呟いていた。

 

 

「どうして、君が謝るんだい?」

 

 

 落合は、微笑みながら当然の疑問を返した。

 

 

「…私がアイツを仕留めきれなかったから、私が無理にアイツを追いかけたから、アイツを血迷わせて…それで…」

 

「…何を言っているんだい?そのヤツという罪人を、僕もまた止めようとした。それは僕自身がよく知っている。だからこそ、立ち塞がったからこそ、羽を手折られてしまった。これは、なるべくしてなった事象…いわば自分自身の業を自分で清算したにすぎないのさ」

 

「…ううん、違う。…隼人は、ただ鉢合わせただけ。だから、あんな無闇な発砲をさせてしまって…それで…あなたの大切な…」

 

 

 落合の側に目を向ける。そこには彼が友と言っていてやまない、ギターが、見事に壊れている姿が。…もう今までの様に、弾くことはできない、そう物語るような無残な姿をさらしていた。

 

 …恐らく、犯人が発砲した弾が、ギターを貫き、その先にあった落合の膝もまた貫いたのだろう。

 

 だけど…それは…

 

 

「友は僕の命を、助けてくれたのさ。彼がいなければ、きっと僕はこの程度の怪我ではきっと済まなかった…だからこそ、気に病む必要は無い。彼は、友として、僕自身のために命を全うしてくれたのさ」

 

「………」

 

 

 それでも風切は、顔を上げなかった。

 

 …強い自責の念だった。余りにも、背負い込みすぎるような、うぬぼれにも似た自虐の心が見て取れた。無理も無かった。彼女の弟の殺人未遂の過去を顧みても、そう思ってしまって然るべきだと思ったから。

 

 彼女にとって、これは自分の所為で命を失いかけたことは…まさにトラウマであったのだから。

 

 前に彼女は…自分は救われているから…そう言っていた。だけどそれは…本当の意味で救われたわけでは無かった。周りとの禍根を清算できただけで、自分自身を…心の底では許せていなかったのだ。

 

 だからこそ…彼女はこの状況に深い責任を感じているのだ。

 

 

「ふぅ……風切さん。顔を上げておくれ」

 

 

 落合は、とても優しげな声で風切の名を呼んだ。応えるように、顔を上げる。そこには、淡泊だった表情が嘘と思えるような、今にも泣き出しそうな顔があった。

 

 

「ふぇっ…!」

 

 

 そして何と、落合は彼女の頬に手を寄せた。その余りにもロマンチックな行動に、小早川は変な声を上げ、顔を赤くした。俺も、変な声を上げそうになった。

 

 風切自身も、そんなことをされたのは初めてと、大きく目を見開いた。それでも、嫌がる素振りは見られなかった。

 

 

「過去に、君がどんな経緯を経ているのか…無知な僕にはわからない。だけど分かるのは…君は今、背負いすぎている。背負わなくても良い全てまで、何もかもね」

 

「………」

 

「…でも、それは間違ってない。人の心は言葉1つで切り替わるほど、単純じゃ無い。吟遊詩人の僕が言うのも、恥ずかしい話しだけどさ…」

 

「…で、でも」

 

「…さっきも言ったはずさ。傷は人を強くする、傷を得ることで人は今まで以上に成長できる。僕は今強くなろうとしている……だから、僕は大丈夫…他の誰でも無い君のおかげでね……きっと君の過去の、それこそ僕の知らない誰かも、同じ事を言うはずさ」

 

「………隼人」

 

 

 吟遊詩人らしい、まるで寄り添うような、そして緩やかに心に入り込んでくる風のような言葉の数々を、風切は黙って、噛みしめるように聞いていた。

 

 

「だから、そんな表情は君の美しい顔には似合わない。さぁ、僕に君の笑顔を見せておくれ」

 

 

 端から見れば、口説き文句のような言葉で…落合はそう終止させた。

 

 そして、暫く…何故か二人は、じっと…見つめ合っていた。そう…じぃーっと…得体の知れない言葉では無い何かでやりとりしているように、視線を交わし合っていた。

 

 

「えっ?えっ?……あの、これって……」

 

「…………」

 

 

 ……何かいたたまれないような、いや気恥ずかしい空気になっているようだった。言うまでも無くこの状況は……うーん、コレはきっと口にするだけ野暮なことなのだろう。

 

 深くは言わないが…ただ今、目の前で、何かが生まれたことだけは確かだった。

 

 そしてソレを見て思ったのは…まさか、非現実的な出来事の筆頭としてあげられた吊り橋効果を現実として見られる日が来るとは…ということ。現実は小説よりも奇なり、まさにその言葉を俺は実感していた。

 

 

 もしかしたら…俺達は今、お邪魔なのかもしれない…そんな雰囲気が蔓延している中で…

 

 

「あれれれ、れれのレ?何かロマンスの最中でしたカ?お邪魔虫さんでしたカ?パンダなのに虫扱いでございますカ?…何を仰いますか!!虫には五分の魂が宿っているのでス!ないがしろにしてはいけないのでございまス!!徳川綱吉だって仰っておりましタ!!」

 

 

 ニョキリと、モノパンが、この悪夢のような出来事の元凶が現れた。また小馬鹿にするような、自分自身が中心かと言うぐらいにまくし立てながら。

 

 俺はこの瞬間、酷い怒りが湧いて出てくるようだった。

 

 

「…モノパン…!」

 

「おやおや?珍しく怒りを露わに為さっておりますネ?折木クン?…くぷぷぷ、いやはや、それもそうですよネ。まさかこんな展開となって仕舞うだなんテ…ワタクシ驚き、いやまさに驚天動地といった心境でございまス」

 

「…きょ、きょうて……えっ?」

 

「……何のよう?今あなたの冗談に付き合っている状況じゃ無い」

 

 

 冷たく、あしらうように風切は言い放つ。…それでも、落合と手を重ね合わせている所はちゃっかりしているな、と密かに思った。

 

 

「何をそう怖い顔をしなさるのですカ。ワタクシは今本当に驚いているのでス。まさに執念というべきか、それとも怨念と言うべきものか…まぁつまりは、そんなドロドロしてこそは居ますが、清々しい行動力に感服しているのでございまス」

 

 

 妙、かつ粘つくように遠回りな発言に俺はさらに神経をすり減らす。執念?怨念?ますます意味が分からない。一体誰に、そんな賛辞を送っているのだ?

 

 

「ですが褒めるべきは、そんな底知れない執念を呼び起こす…アナタの『超高校級の不幸』という才能。やはり、人に災いをもたらすことにならアナタと右に出る物はいませんネ…」

 

「………何だと?」

 

 

 まるで、俺がこの事件を引き起こした原因であるかのような言い草に、俺は気を立てた。ただでさえ、俺自身の所為で、古家が死んでしまったというのに。

 

 それを逆撫でするモノパンの言葉に、とさかに来ていると分かるような暗い声を響かせた。

 

 

「くぷぷ…これ以上はワタクシからではなく、アナタ様方のお友達の口からお聞き下さイ」

 

 

 意味深に言葉を残し、逃げるようにモノパンはポヨンっと、いなくなってしまった。

 

 

 ……いや、本当に何しに来たんだ?

 

 

 そう思った矢先…何故か、すぐにモノパンは再び姿を現した。

 

 

 

「い、今ワタクシを見ませんでしたカ!?」

 

 

 何故か酷く取り乱したような。いやわざとらしいくらいに焦りながら、また口を開いた。

 

 

「えっ…ええっ…先ほど、見ましたが…」

 

「馬鹿野郎!ソレが本物モノパンなのでございまス…!!何をだまされておいでになったのですカ!!!!」

 

 

 ……何がしたいんだ?コイツは。とにかく俺達で遊ぼうとしているのか、自分が楽しもうとしているのか分からない行動だ。だからこそ、腹立たしさが増していくのだが。

 

 

「……モノパン、本当に止めて」

 

「…あれ?やっぱり受けは悪かった?…のですかネ?」

 

 

 その通り、この永遠と続くような茶番に流石に手が出そうだった。だけど、モノパンが指定した規則の所為で、暴力は振るえない。何とも、煮え切らない。

 

 

「くぷぷぷ…長い長い茶番はこのくらいにして。先ほど意味深な事を残すことにかまけすぎて、すっかり抜けていた本題を今お話しようと舞い戻ってきましタ

 

 

 

 

 ――――――――ザ・モノパンファイルVer.5!」

 

 

 

 

「………!」

 

「も、モノパン、ファイル」

 

「……」ギュッ

 

「大丈夫だよ、これは決まっていることだ」

 

 

 分かっていた。 そんなことは分かっていた。きっとこの時間がやって来る。というか、今まで出てこなかったのが不思議な位だ。

 

 

「くぷぷ、残念ながら捜査のお時間でス。己の心に鞭を打ち、骨を折り、脳を振り絞り、真実へとたどり着くための準備のお時間でス」

 

 

 そう、やってくるのだ。

 

 ――――”学級裁判”が

 

 俺達の中の、古家を殺した犯人を見つける、命を賭けた騙しあいが。

 

 

「放送から時間も経ち、裁判まで刻々と差し迫っておりまス。決して、決して、手を抜くことの無いように…さもなくも、死、あるのミ…お分かりデ?」

 

 

 ファイルを手渡しながら、モノパンは確認するように、そう言葉も渡してくる。抜かりないように、ぬかってしまったら自己責任。そう強調するように。

 

 

「……分かってる」

 

 

 そうは返したが、本当は分かりたくなかった。古家が死んだ現実も、コロシアイが起きてしまった現実も…分かりたくなかった。

 

 でも、分からざる終えなかった。それが、この世界のルールなのだから。

 

 

「でしたら僥倖…では、恥ずかしくなるくらいあがいて、足を掛け合って、だまし合って下さいまセ…」

 

 

 そう侮るような言葉を残し、モノパンは消え去っていった。…一瞬また何かの拍子で出てくるのでは無いか、そう思ったが…数秒して本当に、ヤツの気配は無くなったことを理解した。

 

 

「……捜査のお時間なんですね」

 

「ああ、古家を殺した、犯人を見つけ出すためのな…」

 

 

 命がけのだましあい、命がけの疑い合い、命がけの信じ合い…その準備をしなくてはなら無い。一瞬でも怠ってはいけない、念入りな準備を。

 

 

「折木君」

 

 

 すると、ベッドに腰掛ける、落合が俺の名を呼んだ。

 

 だけどその声には、決して今までのとぼけた雰囲気は無く、まるで人間のような、まるで友達に話しかけるような…そんな声色だった。

 

 

「お願いがあるんだ」

 

「……?」

 

 

 いつもの彼からは見た事もなかったその雰囲気に、思わずたじろぎながら…それでも一語一句、聞き逃さないように耳を傾けた。

 

 

「…古家君はね…僕の友達だった。ここに来てから、今までも…ずっと何気ない会話を交わし続けてきたんだ」

 

 

 俺だって同じくらいの時間を過ごしてきたつもりだ。だけど、落合もまた同じ時間を過ごしていた…それだけは決しては揺らぐことは無い、事実だった。

 

 

「………」

 

「残念ながら、この足の所為で僕は君達のように自由に歩けない。人として、致命的になってしまった。ただ待つことしか、僕にできない。……だから――――――――お願いします……”古家君のためにも…犯人を見つけてください”」

 

 

 そう言って、彼は頭を下げた。今までの演技がかった口調なんて無い、落合の言葉を紡ぎながら。

 

 彼はきっと…怒っているのだろう。…彼は今自分に情けなさを持っているのだろう。だけど決して激情流されないように、でもそれを悲観しないように。

 

 だから、彼は俺に頭を下げた。こんな凡人の俺に。

 

 …俺は。

 

 

「…………わかった。任せてくれ」

 

 

 そう言って、頷いた。

 

 

 隣の小早川も、風切も、頷いた。全員意思は…既に1つとなっていた。

 

 

 俺は外に倒れる古家の死体に目を向けた。

 

 

『いつ、目の前の人がいなくなるかも分からない』

 

 

 ――――古家、本当に、別れなんて一瞬だったよ

 

 

 お前のおかげ、今更になってこの言葉が染みるようだ。

 

 

 だからこそ…こんなお別れを演出したヤツを…お前を殺した犯人を見つけてみせる。

 

 

 悔しさも、空しさも、全部、全部ぶつけてみせる。

 

 

 この事件の真実を明らかにすることに…

 

 お前を殺した犯人を見つけ出すことに…

 

 

 

 全部、ぶつけてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【捜査開始】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…まずは」

 

 

 …取りあえず、ファイルの確認だな。

 

 

 殆どリアルタイムかつ、目の前で進行した事件のために、死体については特に不可解な点は無さそうだが…。一応見ておく分に越したことは無い。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 モノパンファイル Ver.5

 

 被害者:【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

 

 死体発見現場はエリア4、ホテルペンタゴンの『庭園』。死亡推定時刻は午後8時32分。死因は、銃弾を脳に受けたことによる失血死。外傷は無く、即死であった模様。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……即死、だったんですね」

 

「ああ……」

 

 

 そのファイルに映し出される、彼の写真。とても綺麗で、何も傷の無い…死体。

 

 俺はまた、あのときの記憶がフラッシュバックしそうになった。だから、すぐにファイルを閉じた。

 

 

「じゃあ、次は…」

 

 

 気持ちを切り替える意味で、俺は次の行動にテキパキ移していく。そうしていないと、自責の気持ちがまた顔を出しそうだったから。

 

 

「………」

 

 

 だけど…リアルな話し。

 

 今までは事件慣れしていたニコラスや、死体慣れしていた雨竜が…率先して捜査に口を出していたために…ええっと、まずはアイツらは何をしていただろうか?とその第一歩から躓きかける。

 

 殆どの指示を彼らに丸投げしていたツケが今更になってやって来た気分だった。

 

 

「え、えと…まずは見張り…ですよね…でも人数が」

 

 

 確かに、最初は死体の周辺に見張りを立てるのがセオリだー。だけど彼女の懸念するように、人数の配分が問題になってくる。落合は負傷中…だから残るのは俺と、小早川と、風切の3人。

 

 だけど見張りを立てる以前の…それ以上の問題が眼前にあった。

 

 

「…だけど、ソレよりも前に犯人がこのエリアのどこに居るのかも」

 

 

 そう今回の場合、犯人は風切から逃げおおせているのだ。即ち、犯人はこのホテル側に潜んでいる可能性が高い。つまり、未だ俺達はその犯人からの危険に晒されている状態なのだ。

 

 

「…いやそれは必要無い」

 

「……えっ?」

 

 

 だけど、そんな考えを風切は即座に否定した。余りの即答ぶりに、小早川のような変な声を上げてしまった。

 

 

「ど、どうして…」

 

「だって――――アイツは…もうこのエリアにいないから」

 

 

 ハッキリと言い切った。余りにも唐突に。

 

 

「…詳しく聞かせてくれ」

 

 

 その事実が何を差しているのか…俺は当然の質問を風切りに投げ、彼女はうん、と頷き、その理由を一言で言い切った。

 

 

「……アイツは…空中を歩いてた、このエリアから出て行っていってる」

 

「…飛んでた、のでございますか?えっ?えっ?」

 

「ごめん、表現が悪かった。…正確には、”崖を歩いてた”」

 

 

 いや、表現を変えてもまったく分からないし…とてもじゃないが信じられない。

 

 だけど彼女の毅然とした態度から、嘘をついているようには決して見えなかった。ますます、意味が分からなくなってしまった。

 

 

「……夜だったし、少し吹雪いてたから視界は悪かったけど…でも私はこの目で見た…崖を渡っている姿を」

 

「追いかけて確かめなかったのか?」

 

「隼人をその場に置いて行けるわけ無い。…すぐに引き返した」

 

「そ、そうだよな………じゃあ落合、お前はその光景を見たのか?」

 

 

 射撃選手である彼女の視力を疑うわけでは無いが…余りにも想像できなかった。だからこそ、その場に言わせていた可能性が高い、落合にも話しを聞いてみた。

 

 

「彼女の論理を強固に出来るほど僕の目は暗闇に向いていた…でも、代わりに彼女の表情を見た。まるで夢でも見ているかのような、驚いた表情を……だから、その発言に間違いは無い…僕が保障するよ」

 

「……そうか」

 

 

 落合の保障する等の発言。どうやら、風切の証言は間違いないみたいだ。まるで現実離れした目撃談なのだが、これは頷かざるおえないようだった。

 

 

「……ありがとう、隼人。信じてくれて」

 

「なんてこともないさ…」

 

 

 そうこう言って、また手を重ね合い…見つめ合う。また、いたたまれない空気が流れ始める。

 

 

「……行くか」

 

「……はぁ…羨ましい」ボソリ

 

「……小早川?」

 

「はっ!!いいえ、何でもありません!!そうですね!!!行きましょう!!!そうしましょう!!!」

 

 

 聞いているのか分からなかったために、声を掛けてみたのだが…想像以上に驚かせてしまったようで、握りしめた手を挙げながら小早川は廊下の方へとさっさと出て行ってしまった。

 

 ……何をそんなに焦っているのか、理解できなかった。

 

 

「…風切…お前は」

 

「……隼人を診てる」

 

「えっ…でも…」

 

「…診てる」

 

「……」

 

「診てる」

 

「…そうか」

 

「はははは…」

 

 

 いやまだ何も言っていなかったのだが…何だか有無を言わせない空気に、押されてしまった。落合はまるで他人事のように朗らかな笑みを浮かべていた。

 

 本音を言えば、捜査に協力して欲しいというのはあったが…まぁここなら、古家の死体を、遠巻きではあるが見張れるし、落合の看病も出来る。

 

 …しょうが無いから、ここで待機していて貰うとしよう。無理矢理そう納得した。

 

 

「……」

 

 

 それに…何だか早く出て行けという気持ちの視線を送られているようだったので…俺もまた、そそくさと足取りのまま、小早川の後を追うようにして部屋を後にした。

 

 

 

 コトダマGET!!

 

 

【モノパンファイル Ver.5)

…被害者:【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

 

 死体発見現場はエリア4、ホテルペンタゴンの『庭園』。死亡推定時刻は午後9時2分。死因は、銃弾を脳に受けたことによる失血死。外傷は無く、即死であった模様。

 

 

【崖を渡る犯人)

…事件直後の風切が犯人を追いかけた際に目撃した光景。橋も何も架かっていないはずなのに、犯人は崖を走って渡っていた。

 

 

【生徒達のアリバイ A)

…折木:庭園

 風切:食堂⇒庭園⇒ホテル外

 落合:ホテル外

 小早川:?

 

 古家:?⇒庭園

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

【エリア4:ホテルペンタゴン『廊下』】

 

 

 速い足取りで医務室を後にし、俺と小早川は…廊下にて。

 

 

「……取りあえず。犯人が目撃されてから今までの動きを、確認していくか」

 

「そ、そうですね!!先ほどの風切さん達の話からしても、妙に入り組んでいると存じます!」

 

 

 

 まず俺達は、最初の出来事から落合達と合流するまでの流れを振り返っていくことにした。

 

 ただでさえ出来事を頭に入れるのが苦手な彼女のためでもあり、俺自身が考えを整理したいためでもある。その中でも一際気になる点があれば、調べていこう、という方針だ。

 

 

 ええと、まずは…

 

 

「最初は、例のジャンパー姿の犯人を…古家、落合、そしてお前が目撃したことから始まった……前者の二人はどちらも個室の窓から……お前は、ちなみにいつ、何処で目撃したんだ?」

 

「…ええと、確かに…フロントで当番で割り振られていたお掃除をしているとき…チラリと入口のドアの窓を覗いてみたら…そのお方をお見かけしました!時間は、食堂に行く20分ほど前だったかと思います!」

 

 

 20分、か。古家は確か30分前に見かけたとか、言っていたな。時間の部分に不自然な点は無し…か。

 

 

「……成程。ちなみにどうしてドアの窓を覗こうなんて思ったんだ?」

 

「何やらただならぬ”視線”を感じたからでございます!そして、私が覗いた時はその犯人は尻尾を巻いて逃げておりましたから!」

 

「…じゃあ、その窓から小早川の行動を観察していた可能性が高いかもな」

 

「はい!恐らくは!……でも今思えば、かなり不自然な行動でしたね、今更になって…寒気が…」

 

 

 だとしたら…犯人は30分以上前からこのホテルを徘徊し…そして外側の窓から、俺達の行動を観察していた…ということになるな。決め手に欠ける話しだが、1つの可能性として考えておくか。

 

 

「…犯人が目撃されてから丁度30分後…食堂からすぐに俺達は犯人の捜索にかかった」

 

「はい…でも、何処に見当たらなかった…のでまたすぐに廊下に集まった…のでしたよね。うう、あのとき切り上げていれば…」

 

 

 そう言いながら表情を暗くする小早川。…俺も、同じだ。だけど、既に起きてしまった事。既にこれまでの行動の数々は後悔と化している。後悔を取り返すことは、ほぼ不可能なのだ…。

 

 …そう割り切るしか無い。

 

 

「でも…犯人は、どこに潜んでいたんだ?」

 

 

 そう…あれだけの目撃証言、とあれだけの大捜索があったにも関わらず、犯人の尻尾すら掴めなかった……だのに。

 

 

「突然、庭園に姿を現した…」

 

「……まるで幽霊のようでございます」

 

「…そうだな、まるで亡霊だ。でも、今考えてみると、本当に何も無いところから現れたわけじゃ無い……フロントの裏口が開いていたから…多分、彼処から出てきたんだろうな…」

 

 

 逃げる際に既に開け放たれていたので…そう考えるのが普通。…でも、それまでは姿を完全にくらましていたのは間違い無い。勿論、捜索に杜撰な部分は無かった。徹底的に、それこそ草の根を分けて探していた。だとしたら、犯人は一体、何処に隠れていたのか…ますます見当がつかなくなってくる。

 

 参考になるかは分からないが、一度俯瞰して見るために、このホテルの見取り図を見直してみた方が良いか…。何か、思い当たる節が見つかるかも知れないしな。

 

 

「そして…鉢合わせた俺に犯人は、所持していた拳銃を発砲…………それを守るために出てきた古家の脳に着弾し……そして彼は絶命した。ファイルに書いてあるとおり、即死だった」

 

「………古家、さん」

 

 

 …未だに思い返しても…苦しくなる。先ほどの割り切るしか無いという考えも、まともな感性があるなら、出来るわけが無い。当事者である俺であるなら、尚更。

 

 ――――俺がもっとまともな判断が出来ていたら…あんな事態にはなら無かったのに。

 

 

 

 

 …………。

 

 

 俺はまた目をつむり、悔やんだように表情を歪ませる。

 

 

 

「……でも、あの、先ほどの話しの通りなら…犯人は、”折木さんに向けて撃った”…ということなんですよね?」

 

「…ああ………考えがたいが…俺が、ターゲットだった可能性が高い」

 

 

 古家が死んでしまったのは、半ば事故のようなものだ。

 

 それに、古家を撃ち殺した後も、さらに俺を狙おうとしていたことも踏まえると…小早川の思うとおり、俺を狙った犯行の可能性がある。

 

 もしかしたら、犯人が生徒達の観察を行っていたのは……俺を見つけるためという理由が浮かんでくる。

 

 でも、そこで問題になるのは…何故俺を狙ったのか。

 

 ここまで来れば…もはや”動機”というほか無い。

 

 だとしたら、あの…”モノパンのアナウンス”が……動機になった…ということか?

 

 

 ……だけど事件の、動機を考えられるほど、今の俺達に余裕は無い。だからこそ、すぐに、これまでの行動のまとめに俺は思考を戻した。

 

 

「……そして、その光景を目撃した風切が食堂から現れて、そして犯人は逃げ出した」

 

 

 …そうだ、風切が自前のライフルを構えて現れた。そのおかげで犯人はひるみ、そして追い返せたのだ。

 

 …もし風切が出てきてくれなかったら、きっと俺も撃ち殺され、このファイルの一員になっていたかも知れない、いや絶対にそうなっていた。

 

 …考えれば考えるほど、溢れかえるような冷や汗がでてきてしまうようだった。

 

 

「逃げ出した犯人に向けて…風切はライフルを発砲した。犯人の足止めをするために…」

 

「…………はあ」

 

「だけど、その打ち出されたゴム弾は、空しくもかん高い金属音を鳴らすだけで…犯人の足を止めることは無かった」

 

 

 しょうが無い話しではある、あの雪が吹雪いている最悪のコンディションの中で、ドア越しであの距離を、しかも反動の強いライフルを女性である風切は立ったまま撃ったのだ。

 

 これで犯人を仕留められていたら…まさに神の領域だ。

 

 

「そしてその直後に、小早川が庭園に現れた。…ちなみにお前は事件当時どこに居たんだ?」

 

「ええと、個室を捜索しておりました!」

 

 

 そのハキハキとした口調の所為で、新米警察官の様な姿が幻視してしまった…。さらに表情も、姿勢もカチコチなので、何かに緊張感を抱いているようにも見えた。

 

 少し気になったが……とりあえず、今はまとめる事に集中しよう。

 

 

「…それからすぐに風切は、犯人を追ったが…犯人は再び発砲し、落合の足に傷を負わせた」

 

「……そ、そして先ほどお二人と、私達が合流した……ということですね」

 

 

 恐らく、風切の足止めも考えて…落合を撃ったのだろう。風切の性格を考えれば、ほうっておくことなんて出来ないと踏んで。

 

 つまり、犯人が俺に向けて、風切が犯人に向けて、そして犯人が落合に向けての計3発の銃弾が、このエリアで飛び交った。まさに、このエリアは数分間戦場と化していたのだ。

 

 

 ……と、この辺りが事件の始終。ということになる。

 

 

「小早川、何か気になることはあったか?」

 

「…あの、1つだけ」

 

「何だ?」

 

「いや、今の話しとは全然関係無いことなのですけど…その、殺人がこのようにして起こって仕舞ったわけですから……これまで流していたモノパンのお昼のアナウンスは…」

 

「……そういえば」

 

 

 そうだ、小早川の言うとおり、どうなるのだろうか?普通に考えれば、この古家が殺されてしまった時点で動機の発表はこれにてお終い、ということになるはずだが。

 

 

「それについてはワタクシから説明いたしましょウ!」

 

「うぉ!」

 

 

 またもやひょっこりと現れたモノパンに、驚きを表わす。言うまでも無く、俺達が話していた内容の答えを持ってきたのだろう。

 

 

「何ですカ?何ですカ?医務室でラブロマンスをおっぱじめたと思ったら、今度はこっちですか?ココはいつからそういういがかわしいホテルとなったのですカ?」

 

「そ、そんなことはありません!!確かに!!あの”ろまんす”に羨ましさはございましたが!!ええっ、そうです!!そういういかがわしいことは一ミリたりとも!!」

 

「小早川、話しがズレているぞ……モノパン、冗談はそのくらいにして、本題に入れ」

 

「くぷぷぷ、そうですネ。いやぁ反応が良い物ですから、こうやって邪推してみたくなるのですヨ…くぷぷ可愛らしい小早川さんですね、まったク」

 

「……貴方に言われても嬉しくはありません」

 

「モノパン」

 

 

 流石にもう止めろ、と低い声でヤツの名前を口にする。

 

 

「分かっておりますよ。ええと、お察しの通り、殺人が行われてしまいましたので、折角慣れてきたFMモノパンは打ち切リ。まさかの折木クンの動機を発表したあの回が、最終回となりましタ。うう、あれほどのお茶の間に愛された放送が、こんな形で…」

 

 

 わざとらしくシクシクと泣き散らすモノパン。うんざりとしながらも、これであの緊張感とはおさらばできる事実に、安堵する気持ちもあった。

 

 

「ですが、やりたいことはやれましたし、実際に殺人は起きてしまったので意外にも心の残りは少なめだったりしまス…それに~少し~、飽きてきた~って感じもありますシ~、潮時だったのかな~っテ。だからグッバイモノパンラジオ!モノパンラジオよ永遠に!フォーエバーFMモノパン!!!!」

 

 

 くどいくらいの残響を残しながらモノパンは姿を消していく。どーでも良いことだが、モノパンラジオなのかFMモノパンなのかハッキリしろ、とは思った。

 

 静かに流れるなんとも言えない空間の中で、俺は黙って…コレまでの事を書き留めていった。

 

 

 

 コトダマGET!!

 

 

【ホテルペンタゴンの見取り図)

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【風切の銃弾)

…風切が犯人を足止めするために発砲したゴム弾。恐らく犯人に着弾したと思われるのだが、キンッ、というかん高い音だけを響かせるだけで、足止めは叶わなかった。

 

 

 

【不審者の動向)

…事件が起きる”1時間前(7時半頃)”から犯人は、個室、そしてフロントの窓から目撃されていた。外周を回って、俺達を観察していた可能性が高い。

 

 8時以降に行われた捜索にて、目撃されていたにもかかわらず見つけることは出来なかった。

 

 8時半に突然、庭園に現れた。

 

 

 

 

 コトダマUP DATE!!

 

 

【生徒達のアリバイ A)

…折木:庭園

 風切:食堂⇒庭園⇒ホテル外

 落合:ホテル外

 小早川:個室⇒庭園

 

 古家:?⇒庭園

 

 

 

 

 

 

 

「……そうだ。小早川、1つお願いがあるんだが…」

 

 

 メモを書き終えた俺は、気付いた事…というよりも確認したいことがあったために彼女にそう声を掛けた。

 

 

「は、はい!何でしょう!!不肖小早川梓葉!!折木さんのためでしたら、何でも承りますよ!!」

 

「…そこまで決意に溢れなくて良いんだが……まぁ大したことじゃない。このエリアに初めて来たときに持ち出した、あのジャンパー…それって、今も部屋にあるか?」

 

「はい!ございます!!」

 

「じゃあそのジャンパー、すまないが持ってきて貰っても良いか?」

 

「私の、ですか?よく分かりませんが…はい!!分かりました!!持ってきますね!!”じゃんぱー”ですよね!!!………あっ!!!でしたら…ついでに古家さんのも持ってきましょうか?」

 

「いや、でも古家のもきっと個室にあるだろうし、それを持ってくるとなると鍵を探すために死体をまさぐることに…」

 

「いいえ!いいえ!私、頭を使うよりは行動をした方がやっぱり性に合っておりますし…それに何よりも折木さんのお役に立ちたいので!!」

 

「……そ、そうか。じゃあ、頼む」

 

 

 余りにも健気な彼女のその言葉の圧に、俺は押されてしまう。今まで俺にここまで言ってくれた人は居なかったものだから…慣れずについ頷いてしまったのだ。

 

 まさに太陽に様な明るさと、快活さである。

 

 …だけどすぐに、切り替えた頭の中で、ジャンパーを持ち出す中で重要な注意点があったことを思い出す。

 

 

「…ああ、それと、できるだけ、そのジャンパーは外に出さないように」

 

「…え!お外に…ですか?」

 

「そうだ…頼んだぞ?」

 

「は、はい、分かりましたとも!不肖、小早川梓葉!今すぐ出動いたします!!」

 

 

 そう大袈裟な言葉を残し、その場をトタトタと音を立てながら走り去る。

 

 

 …もしも、俺と古家、そして小早川の中の誰かが不審者としたら…きっとそのジャンパーは必ず使われている。そしてもしも使われていたとしたら…ジャンパーは俺の想像通りの状態になっているはずだ。

 

 

 彼女の背中を見送る心の中で、そう独りごちる。

 

 

「じゃあ…俺も、自分のを部屋から取ってくるか」

 

 

 そう言って、俺は廊下を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【エリア4:ホテルペンタゴン『個室』】

 

 

 自分の部屋に戻ってきた俺は、自室にある椅子に掛けられたジャンパーを手に取った。

 

 

 そして、服の生地を、素材を確かめるように…そのジャンパーを触り、観察する。

 

 

 ――――――うん、やはり間違い無い。俺の思ったとおりの状態だ。

 

 

 そう1人、納得した。

 

 

 そして、小早川立ちのジャンパーを待つことにしよう、そう考え、部屋から出て行こうとドアに手をかける。

 

 

 

「…………?」

 

 

 何か、妙な違和感がよぎった。

 

 

 いや正確には、”足下”に今までこの部屋で感じた事の無い感触がした。

 

 

 俺は下を見た。そして膝をつき、自分の足を裏返し、のぞき込む。

 

 

「……濡れてる」

 

 

 何故か――――濡れていた。

 

 

 踏んだ場所を見てみると、自分足と同様に濡れており…しかも小さな水たまりのような物が出来ていた。

 

 気になった俺は、すぐにドアを開け、その周辺を見てみる…。

 

 

「……続いてる。水たまりが」

 

 

 点々と、フロントから俺の部屋までの道に小さな水たまりが続いていた。

 

 

 コレがなんなのかは分からなかった。だけど、少なくとも今日の朝から夕方頃の時点では、部屋と廊下はこんな状態ではなかった。

 

 

 ……前に、ニコラスが言っていた…些細な変化も大事な証拠になり得る。何故なら、それに根拠が無くても、それを裏付ける何かがあれば真実となるから。

 

 

 俺はその言葉を信じ、この違和感を記録した。

 

 

 

 コトダマGET!!

 

【個室の水たまり)

…個室のドア付近出来ていた小さな水たまり。水たまりはフロントまで点々と続いていた。今朝から夕方頃まではこんな痕跡は無かった。

 

 

 

 

 開け放ったドアに寄りかかりながら、記録をしている最中…

 

 

「あっ!!折木さん!!ココにいらっしゃったんですね!!」

 

 

 小早川が、俺が頼んだ、ジャンパーが2着を手元にぶら下げ、此方にやって来るのが見えた。

 

 そして近づき終わった彼女は、はい!、と清々しくやりきったような表情でジャンパーを差し出した。

 

 

「折木さんに頼まれていた代物でございます!!勿論、外には出さずに!!持ってきました!!」

 

「ありがとう」

 

 

 簡単に御礼の言葉を述べながら、小早川から貰ったそれを、じっくり触っていく。主に外側の部分をベタベタと。2着とも、一緒に。

 

 

 ……うん、やはり……湿っていない。それに、水滴が染みこんだ跡も見当たらない。

 

 

 俺は確認したかったこと、そして想像していた事が的中したことに一人ほくそ笑む。

 

 

 …もしも俺達の中に不審者の正体が潜んでいるとしたら、そのジャンパーはきっと”濡れているはず”。外は雪が降っていたのだから…多くの雪が伝った跡があるはず。だけど、今俺の手元にある全てのジャンパーには水滴一つ付いていない、ほぼ新品に近い肌触りだ。

 

 

 …これで、犯人は外部の者であり、俺達の中に犯人がいる可能性は低くなった。だからこそ、俺は小さく笑みを作ったのだ。

 

 

 

 

 コトダマGET!!

 

【ジャンパーの水滴)

…俺、小早川、古家のジャンパー。それぞれには水滴や、濡れた感触は無く…外に持ち出された可能性は極めて低い。

 

 

 ―――――ジリリリリリ

 

 

 

 俺が答えをあわせをしている最中、外から突然、そんなベルの音が聞こえた。音の大きさからして、ここからほど近い場所であることはわかった。

 

 

「…何でしょう?この音。何だか、酷く聞き覚えのあるような」

 

 

 彼女の言うとおり、聞き慣れた音だった。それも、毎日必ず耳にするような…そんな日常的なベルの音。

 

 だからこそ、俺はすぐに合点をいかせた。

 

 

「…もしかして、電話じゃないか?」

 

「あっ!!そうですね!!!きっと反町さん達からですよ!!!」

 

 

 余りの急な流れにすっかり忘れていたが…小早川と合流した時点で、すでに死体発見アナウンスは鳴っていた。

 

 だとしたら、このエリアにいない、施設側の生徒達もこの事実に当然、気付いている。きっと、事態を把握したいがために、今彼らは電話を鳴らしているのだろう。

 

 

 …だったら、話しは”変わってくる”。

 

 

 密かな考えを携え、俺達は…急いで、食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

【エリア4:ホテルペンタゴン『食堂』】

 

 

 部屋中にかき鳴らされる電話の呼び出し音を止めるために、受話器を取った。

 

 

『梓葉ぁ!!無事かい!!!』

 

 

 そしてすぐに、電話口から鳴り響くその大声に、耳をキーンと鳴らされる。何だかデジャブを感じる出だしであった。

 

 

「……反町、残念ながら俺だ」

 

『お、折木かい!?…いや折木でも良いから教えな!!梓葉のやつは無事なのかい!?風切は!落合は!』

 

「矢継ぎ早に急かすな、落ち着け。…小早川は今隣にいる。それに、風切も、落合も無事だ」

 

『そ、そうかい…良かったさね』

 

 

 でも……彼らの無事を確認する反町だったが……肝心の、彼の名前を出さなかった。

 

 

 と、いうことは。

 

 

「……反町、古家が」

 

『………分かってるさね。この水管理室に来る前に、アイツからファイルを渡されたからね』

 

「……そうか。そうだよな」

 

 

 態々説明しなくて助かったという安心感と、死なせてしまった心苦しさが同時に襲ってくるようだった。そして、古家を死なせてしまったことを責めない彼女に、密かな優しさを感じた。

 

 

「…………なぁ、ニコラスは側に居るか?」

 

『えっ?ああ、いるよ』

 

「済まないが、変わって貰えるか?」

 

『……分かったさね』

 

 

 そういって、反町の声は遠くなり、誰かに受話器を渡すようなかすれた音が聞こえた。

 

 

『ボクだよ、ミスター。先ほどシスターが言ったように、大体の事情は察している。それに、死体の概要も既に分かっている……だから早速事件の状況を…君の視点で聞かせてくれるかな?』

 

 

 俺はああ、と頷き、これまでの事件の流れを説明した。だけど、これまで掴んだ情報を細かく全てでは無く、目撃してきた光景を大まかに。特に気になる点を強調しながら。

 

 

『…成程。確かに謎だ…本当に謎だらけ、かつ穴だらけの事件だ…特に、ミス風切の証言…名探偵としての直感が怪しいと言って仕方が無い』

 

「……ああ、だから。その真実を見つけるためには…俺達だけじゃ、ココだけでの捜査だけじゃ、限界がある。だから…」

 

『ははっ!!皆まで言わずとも理解しているさ…勿論引き受けるとも。他ならないキミの頼みなんだからね』

 

「すまん…」

 

『何言うんだい、ボクはキミの友人なんだ、当たり前のことだよ…キミ。それにこの場面で必要な言葉は、謝ることではないと思うんだけどね』

 

「……そうだったな……”ありがとう”」

 

『いいや、いいともいいとも。キミがそちらを、此方はボクが……実に効率的だ、中々のコンビネーションとも言える』

 

「……まるで相棒のような口ぶりだな」

 

 

 彼らしい、妙にかっこつけた言い草に巻き込まれてしまった。

 

 …だけど、そこまでイヤなことじゃない…だからこそ苦笑を含ませながら、そう言った。

 

 

『そう!実にそういう表現がピッタリだ!ボクがホームズで、キミがワトソンのような…』

 

「…小説の読み過ぎだ」

 

『ははっ!言い過ぎたかな?だとしてら…そうかもしれないね!』

 

 

 あっけらかんとしたように笑い飛ばすニコラスに、今までの張り詰めた気持ちが和らぐようだった。

 

 

『おっと、こういった話しはまたお茶の席にでも話そう、今は捜査に集中…そうだね?』

 

「ああ…」

 

『オーケイ。それとだ、ミスター…いや今悩みに悩み悩んでいるマイフレンド…忘れてはくれるなよ?』

 

 

 何かもったい付けたような言い草に、俺は何のことかと、耳をすませた。

 

 

『キミが信じ、そしてボクが疑う……自分一人で気負いすぎるなよ。世界で1番辛気くさい顔をしていたら、またミス贄波に叱られてしまうよ?』

 

「……ああ、分かってる」

 

 

 何が言いたいのか、ソレを理解した俺は口元で微笑みを作り、分かっていると、頷いた。

 

 そう、前に言われた、俺には俺の、ニコラスにはニコラスの…出来ることを分担していこうという言葉を思い出していた。

 

 

『なら良かった!なんせキミが役割を全うしてくれなくては、超高校級の名探偵である、このニコラスバーンシュタインの、きらびやか、かつ盛大な物語が成り立たなくなるんだ。何よりも誇りと信念をたずさえ、数々の難事件を――――』

 

 

 ――――長くなりそうだっただからこそ、俺はすぐに電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

……………

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

【エリア4:水管理室】

 

 

 

 ふむ…まさにボクの代名詞とも言うべき決め台詞をと思ったいたのだけれど…どうやら切られてしまったみたいだ。

 

 ははっ!実に恥ずかしがり屋なマイフレンドだ!まるで見られたら姿を隠してしまうカタツムリの様だよ!キミ!

 

 と、まぁ心内での冗談はこの位にしておいて…。

 

 

「ボクもボチボチと捜査を始めるとするかな」

 

 

 始めるとしよう、ボクの、ボクによる、ボクのための捜査をね。

 

 いやぁ自分ですら驚くほど、やる気に満ちていると、確かに感じるよ。

 

 それはもう、今までお預けを食らっていたわけだから…と説明がつく。

 

 最初は死体の見張り役。お次は有力な容疑者。そして最後には被疑者の監視。

 

 まともな捜査なんてできやしなかったんだ。

 

 腕が鳴るよ、キミ。

 

 

「捜査…するのかい?」

 

 

 そう言って、ボクはシスター反町に目を向けた。同じく、岩石のように険しく顔をしかめるドクター雨竜の姿もその隣にあったのだけれどね。

 

 

「しかし、向こう側で起きたのなら、向こう側にクロがいるのが定石ではないのか?」

 

「ああそうだね!まさに妥当な解答だ!妥当すぎるくらいに」

 

 

 何せ、向こう側で起きてしまった事件だ、彼らがそう思うの無理は無い。だけど、不可能という言葉ほどボクをかき立てる物は無い。それに、定石という名なの常識程、捜査に邪魔な代物は存在しない。

 

 

「……また好奇心とやらがうずくのか?」

 

「そうだね、名探偵のサガとも言える」

 

「サガぁ?また非論理的な…」

 

「それだけじゃないさ…彼が信じているから、ボクが疑う…そういう約束をしたからね。…/つまりはそういうことさ」

 

「ん…意味が分からん」

 

「はぁ……どっちにしてもワタシ達を疑ってかかる、ということかい?」

 

「勿論さ!だから覚悟して置いてくれよ!キミ達!」

 

「…こりゃ、こっちが何言っても聞かなそうさね」

 

 

 やれやれといった様に、彼らは首を振っている。

 

 人を真実を追い求める動物、もしくは怪物か何かだと思っているのかな?

 

 まぁ、間違ってはいないね!むしろ広めて欲しいくらいさ!真実を追い求める獣、ニコラスバーンシュタイン!!うん、実に格好が良い。

 

 

「…ところで、ドクター。早速聞きたいのだけれど…」

 

「アリバイか?」

 

「流石に聡いね!まずは初歩中の初歩、事件直前のキミ達の動きを確認さ」

 

「直前の?…ええっと事件が起きたのは…確か9時頃の話しだったかい?その時間だったら……そうだねえ」

 

 

 そう言って、彼らは記憶を辿るように考えている。まぁきっと上手い言い訳でも考えているんだろうけど…取りあえず聞いておこうじゃないか。可能性を捨てきってしまうような大ポカは、名探偵としての御法度だからね。

 

 

「ワタシは図書館内に、1人でいた。”いつもの”勉強だ。…だが、その行動を証明するヤツは居ない」

 

「アタシはエリア3のお菓子の家にいたさね」

 

「ほほう?ドクターはともかくとして、シスターにしては中々似つかわしくない場所にいるね。キミがそれほどお菓子好きだったとは意外だよ」

 

「茶化すんじゃないよ。…………ただ、祈りを捧げてたんさね。アイツらが無事に天国にいくようにってひざまずいてね……でもそのアリバイを証明するヤツは、こっちも居ないよ」

 

「成程…」

 

 

 凶暴性に隠れて仕舞っている敬虔な彼女らしい行動だ。まぁだけど…2人とも嘘をついている可能性もあるわけだから、間に受けるつもりは無いけどね。

 

 

「そういう貴様はどうなのだ?」

 

「炊事場エリアにて紅茶を嗜んでいたとも!!お休み前のティーブレイクはボクの大事な一日の一部だからね!!!勿論証人はいないさ!!」

 

「…何で不利な事なのに自信満々なんさね」

 

「こういうヤツだ…諦めろ」

 

 

 おやおや?何故か呆れられてしまった。ボクは嘘つきは嫌いだから、素直にかつ、堂々と話したつもりだったんだけど。

 

 やはり、世の中はそれで信じられるほどそう単純では無いということか!!うん、勿論知っていたけどね!!

 

 

「OK。では次だ、キミ達…何か身の回りで変わった事はなかったかい?そうだね、同じく9時頃のことでも、その数時間前でも構わない」

 

「変わったことかぁ……ううむ、いや、覚えはないな」

 

「………あ!そういえば」

 

 

 おっと、ドクターでは無く、シスターには何やら心当たりがあるようだね。ここは注意して聞いておいたほうが良さそうだ。

 

 

「エリア3の中央に、妙に手の込んだ噴水ってのがあっただろ?」

 

「そういえば合ったね!確か前の事件で気球が突き刺さって、さらには炎上したことは記憶に新しいよ!」

 

「……あれから噴出する水が、”止まってたんさね”」

 

「ほう、止まってた。…実に興味深い話しだね」

 

「それは…噴水から出てくるべき水が、そのときだけは噴出していなかったと…ということかぁ?」

 

「そうさね。でもただ止まってるだけじゃ無くて、段々水が無くなってたんだよ」

 

「無くなってた…か。ちなみに、それはいつのことで…どれ位の時間止まったのかは…覚えているかい?」

 

「時間は…ええっと…7時半から1時間くらいだった気がするさね。エリアから入ったときも、出てきたときもずっと止まってたからね…。でも水が止まる姿を最後まで見てたわけじゃないから。1時間以上は続いてたかもしれないよ」

 

 

 ほほう、これは面白い。実に面白い現象だ。

 

 では早速このことをメモしておこう。

 

 …普段は事件の概要や証拠は頭の中にインプットして勝手に推理するのがボクのスタイルなのだけれど…今回はどうにも外せない”ワケ”があるからね。

 

 そう、ワケが。約束とも言い換えられる。”彼ら”をここで死なせていけない大事な、大事な…約束がね。

 

 だからこそ、ミスター折木に習って、頭の中に情報を紙に起こしている、ということさ。

 

 それに、ミスター折木に情報を渡しやすくなるからね!ビバ!紙媒体さ!

 

 いやー、しかし、端から見て思っていたけど…実に面倒だね!よくこんな細々した作業を彼はよく淡々とこなせるものだ!

 

 これが終わったら紙媒体のやりとりはこれっきりにして欲しいものだ!アンチ!紙媒体!!

 

 

 

 コトダマGET!!

 

 

【生徒達のアリバイ B)

…ニコラス:エリア1(炊事場エリア)⇒エリア4

 雨竜:図書館(エリア2)⇒エリア4

 反町:エリア3(お菓子の家)⇒エリア4

 

 

【反町の証言)

…7時半ごろから8時半までの1時間、エリア3の噴水から出てくる水が、段々と少なくなっていたという。エリア3を出入りした時か様子がおかしかったため、もっと長い間その現象は続いてたかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

【エリア4:桟橋(跡)】

 

 

「やはり、キーポイントはここ、だね」

 

 

 そう独り言を呟きやってきたのは、犯人が渡ったという証言が得られたこの大地割れ。

 

 まずは近場から、それも確実に事件と関係していると確信できる場所を捜査する。そのつもりでボクはここにやってきたのさ。

 

 

「ふむ…」

 

 

 さて、どうしたものか。崖をただボーッと見てるだけでは、埒があかない。

 

 ボクはこの崖の調査方法について、しばし考える。

 

 

「良し」

 

 

 ボクはとある方法を思いついたので…1度エリア1にある倉庫に戻り…。

 

 

 そしてすぐにこの地に舞い戻った。その手にぶら下がるのは、倉庫から持ち出した、とてつもなく頑丈な紐……ええっと、ザイルというのかな?それと、ライトがおでこについたヘルメット。

 

 

 これを、どう使うのかって?

 

 まぁ見ておきたまえよ。まずはこの持ってきたザイルを……橋が架かっていた時に使われていた、絶対に抜けないと信じられる木の杭に、こうこうこのように固定する。

 

 そして、もう片方をボクの体にも巻き付け、そして固定して…。

 

 

 うん、”命綱”の完成だ!!

 

 

「……ふぅ」

 

 

 ここまで来れば、何となく理解が付くだろう。

 

 ボクは一息挟み、そして…。

 

 

「よっ…はっ……」

 

 

 ご想像の通り、紐を手に持ちながら、地道に崖を伝って降りていく。つまりはあれだよ、消防隊の彼らが高所から降りるように、ポツポツと、安全第一に下っていったのさ。

 

 まぁ、ボクはこんなの初めてやるんだけどね!いや、中々うまいもんじゃ無いか!生まれ変わったら救急隊員にでも立候補しようかな!キミ!

 

 …と、たった一人で寂しく冗談を言っているわけにもいかないね。もしもボクが邪魔だと思った誰かが上にいたら、ザイルを切られて、すぐに真っ逆さま。もう一つの変死体の完成だ。

 

 まぁ、そんな最悪は無いだろうけど…可能性は無くも無い。早めにパッパと終わらせてしまおう。

 

 

「どれどれ」

 

 

 そろそろ頃合いかと考えたボクは、崖の壁に手を添え、その岩肌の感触を確かめてみた。

 

 

「うん…やはりね。思った通りだ」

 

 

 間違い無く――――濡れている。

 

 しかも、この冷たさと、しめりけから、ごく最近の痕跡であると考えられた。

 

 これで、何となく崖を歩いたというトリックの謎に想像は付いた。だからこのまますぐに戻っても良かったのだけれど…明らかに証拠不十分だったからね…もう少し下ってみようと手にザイルを滑らせたのさ。

 

 

「……そろそろ下限、かな」

 

 

 チョロチョロと、何かが流れる音が聞こえ始めた、段々と大きくなってきたために、ボクはそう呟いた。そして、丁度良い具合かな、と…ボクは頭に被ったヘルメットのライトを付けた。

 

 

「川…みたいだね」

 

 

 ザイルにぶら下がりながら、首を動かし、光りの先で静かに流れる川を、その向きに沿って眺めていく。

 

 

 …方角的には、エリア4の入口から見て、右から左にかけて流れてるようだ。でも言葉で説明するのは少し回りくどくなりそうだから、後で図に書いて分かりやすくまとめるとしよう。

 

 

 よし、ではに…もう少し近づいてみるとしよう。

 

 

 ボクは、間違って落ちないように、スレスレになるまでザイルを降ろす……。

 

 

 すると――――その川の表面に何かが見えた。

 

 

「……ん?これは……氷?」

 

 

 …そう、流氷を人の大きさにしたような氷の塊が川にて浮いていたのだよ。実に怪しい…こんな崖の底に氷の塊が浮いているなんて。

 

 

「ふむ……」

 

 

 ボクが想像する、崖を歩いたトリックの証拠。都合良く見つかるものかと不安ではあったけど……思ったよりも、簡単に見つかってしまった。

 

 …まぁ犯人もここまで来て証拠隠滅は出来ないだろうから、仕方の無い話しだけど。

 

 でもこれで、ミス風切の言う、崖を歩いた…という事実の信憑性を上げるのに一役かえる、というものさ。

 

 

 ボクの想像通りなら…クロは……いや、これ以上はネタばらしになってしまうので、一度思考はよしておこう。こういった真実の探り合いは、常に公平でなくてはいけないからね。

 

 

 ……だけど、これが事実であるなら、追加で調査しなければなら無いところが増える、というものさ。うん!何だか楽しくなってきた、やはり捜査とは楽しいものだね。

 

 

 

「ふむ……もう少し何かないだろうかね?」

 

 

 そろそろ上に上がってみては如何か、って思うだろう?ああ、自分の今居る場所の危険性を考えれば、正しくその通りさ。

 

 だけどね、妥協や楽観、そして杜撰という言葉は、ボクの辞書には存在しない。

 

 それに、無いだろうから探さないと、無いだろうけど探す…とでは、断然後者の方が真実へと近づく速度や精度は高かくなるものだ…と誰かが言っていた気がするよ。

 

 だからこそ、この空間をつぶさに見ていくのさ。

 

 

「おや?おやおやおや?」

 

 

 川の流れる先、小さな岩が突き出ている所に…。

 

 

「ジャンパー…か」

 

 

 

 ”黄色いジャンパー”が引っかかっていた。

 

 はは…どうやら、また1つ、いや一足先に真実へと近づいてしまったみたいだね。いやいや、ボクの真実へとたどり着く才能には、自分自身ですら感服してしまうよ。

 

 

 

「……ふぅ中々のスリルだったよ、キミ」

 

 

 

 そう自分自身に酔っている間に、ボクはザイルをよじ登り、再びエリア4の桟橋(跡)までたどり着く。中々に体力を使ってしまったけど…まだまだ余力は万全と見た。このボクが言うんだ、間違い無い。

 

 いやはや、運だけで無く、体力すらも規格外。まさに名探偵にふさわしい才覚と言える。

 

 

 だけど…

 

 

 ここまでボクが行ってきた行動の数々は、端から見れば、狂っていると言われるだろう。

 

 何故そこまでして真実を求めるのか。自分の命を危険に晒して楽しいのか。

 

 なーんて……まぁ実際に何度か言われた気がするよ。

 

 

 でもね…

 

 

「…真実を見つけ出すためなら、例え地獄だろうとボクは何処へだって突き進むのさ、名探偵の肩書きにかけてね」

 

 

 そう、これは戦いだ。真実を解くためのゲームじゃ無い。絶対に負けられない、命を賭けた戦いなんだ。

 

 

 なら、死ぬほど頑張って、死ぬほど準備をするのが、当たり前なのさ。

 

 

 例え狂人と、揶揄されようともね。

 

 

 コトダマGET!!

 

 

【湿った岩壁)

…崖を少し下った所の岩壁から、妙に湿った感触が感じられた。その冷たさと、しめりけから、ごく最近の痕跡である可能性が高い。

 

 

 

【崖の底の川)

…崖の底には川が流れていた。丁度エリアから入った方角から見て、右から左方向に。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

【氷の欠片)

…川の表面に流氷を人の大きさにしたような氷の塊が浮かんでいた。

 

 

 

【捨てられたジャンパー)

…川から突き出た岩に引っかかっていたジャンパー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【エリア2:美術館】

 

 

「おや?ミス贄波、キミもここにきていたのかい」

 

 

 ボクはエリア4の美術館へとやってきた。

 

 理由は簡単、これらの特殊な道具が使われたかどうかを確認するためさ。今まで毎回利用されてきたのだから、今回も使用されたと考えるのが定石さ。

 

 

「う、ん……何だか、ここを調べなきゃって…思って」

 

 

 そしてなんとだ、その美術館に先ほどエリア4にて姿を見なかったミス贄波がいたのだよ。中々の偶然と、”不自然さ”、キミ。

 

 

「成程…ね」

 

「何か、変、かな?」

 

 

 名探偵として未熟極まりない話しなのだけれど、どうやら彼女が疑念を持ってしまう位に、今ボクは表情に出てしまっていたみたいなのだよ。

 

 …いや、そもそもの話しこんな短いやりとりでそう読み取る彼女の観察力こそが素晴らしいのかもしれない。うん、そうだね。それじゃあさっきのボクが未熟だった、という話しは無かったことにしよう!

 

 

「いや、ね。キミのことだから、真っ先に例の管理室に来て、真っ先に受話器をとって…そして真っ先にミスター折木に連絡しに来ると思ったからね……どうして向こう側事件が発生したというのに来ないのか、不思議に思った次第なのさ」

 

「……うん。最初はそう思った、よ?すぐに、行かなきゃって……。けど…今、折木くん、に、必要なの、は、私じゃ無く、て、ニコラス君の声なんじゃ無いかって、思った、の」

 

「ははっ、それは面白い、かつ嬉しい話しだ。それにキミらしくも無いネガティブな発言だ。…詳しく聞いてみても良いかい?」

 

「…そんな複雑な、事、じゃ、ない、よ。…ただ、きっと折木君は、真っ先、に、ニコラス君を、信頼して、信用、して、それで、こっち側の、捜査をお願いするって、思ったの」

 

「ほほう」

 

 

 ほぼ100%の的中率だ。末恐ろしさすら覚える数字だよ。もしも彼女が幸運として呼ばれていなかったとしたら、きっと超高校級の予知能力者としてスカウトされていたかも知れないね!

 

 

「でも、それって、折木君、が、今、頑張って、捜査をしてることの証拠、でしょ?俺は、こっちで捜査するから、そっちは、任せた、って。でも一人だけじゃ、きっと、折木くんも、不安だと、思うから…だから、私も、捜査の力になろうと、思って」

 

「だから、キミもこのように黙々と捜査を開始している…ということかい?」

 

 

 そう言ってミス贄波は頷いた。

 

 まさに、魂レベルの連携だ。先ほどのボクの自慢げな言動が恥ずかしくなるレベルだよ。カマをかけたつもりだったのに…とんでもない宝石が掘り起こしてしまった気分さ、まったく。

 

 ただ変な話し……ボクらしくないことだけど、例えボクがいなくても、ボクがこの世に存在しなかったとしても……この事件も、いや今までの事件も…きっと彼らは、彼らの力で解決してしまうのだろう。実に、寂しくもあり、頼もしい話しさ。

 

 だけどまぁ実際はボクというスペシャルワンがいるわけだから、そんなイフの話しはもはや仮定の話に過ぎないのだけれどね!

 

 

「……野暮なことを聞くようだけど…ミスター折木が、向こうで挫けて仕舞っている可能性は考えなかったのかい?」

 

 

 ボクが彼をそう不安視するのには、勿論理由がある。

 

 何故なら彼は、友人であるミスター古家を亡くしている。先ほどの電話でも、いつものように背負い込みすぎて、いつものように周りから促されないと自分1人で全てをやってしまおうとしてる…目に見えるように疲弊した声色だった。

 

 今は周りが何とかカバーしているが…彼はいつ壊れても可笑しくない…今まで様々なネジの外れてしまった人間を見てきたボクだからこそ言える見解だ。

 

 

「ニコラス君、あの人は…そう簡単に折れる人じゃ無い、よ…?」

 

「……?」

 

「いや、違うか、な。壊れてしまった、いや折れてしまった、時こそ、が…折木くんの本領、なんだ、よ?どんなに絶望的な心の底からでも、頑張って、這い上がれる人、なの」

 

 

 だのに…何故彼女は…そんな前提すら考えていないという風に…こんな事をいえるんだ?

 

 

「何故…そう言い切れるんだい?」

 

「何となく、だよ。それとも、知ってるから、かな?頭じゃなくて、心、で」

 

 

 意味深げに微笑む彼女。まさに余裕を感じざる終えない笑みだったよ。

 

 決して根拠らしい事を言っているわけでは無いのに、殆ど確信しているような声色でもあったさ。

 

 いやはや、途轍もない解像度だ。もはや一心同体、昔一緒の体を共有していたのでがないかレベルの理解度だ。…彼への理解関しては、ミス小早川には悪いけどミス贄波の右に出る物はいないかも知れないね。

 

 一体どうしてそこまでの理解度を得ているのだろうかね?先ほどの体を共有していたと言う話はもはや非現実的として……案外、過去の忘れ去ってしまった記憶の中で、ミスター折木とミス贄波は…かなりねんごろな関係だったとか……。

 

 いやそしたら、ミス小早川は?はたまたミス水無月は…?

 

 

「……ふむ」

 

 

 …だけどこれ以上語るのは野暮にも程があるかな。紳士としてあるまじき邪推だ。こういった思考は、後に取っておくとしよう…。彼を友人らしくイジるネタとしてね。

 

 

「ははっ!これは1本取られたよ、キミ。成程、キミはもしかしたら名探偵の素質があるかもね!ボクほどじゃないけど!!」

 

「…ニコラスくん、そう言って貰える、なら…ちょっと自信がつく、かな?」

 

「ああ、そう言って貰えると助かる…。そこでだ!そんなキミに質問がしたい。ここまでの話しからして。キミがこちらで既に捜査を始めているのは分かった。ということは、もしかしてキミも、こちら側に犯人がいるかもしれない…何て思っているかい?」

 

「…考えたくない、し、あり得ない、とも思いたい、けど……でも、可能性を狭めるのは、良くないって、思うから、居ると考えてる、よ?」

 

「それについては心から同意するよ!!では早速それ裏付けるような証拠を見つけていこうじゃないか!!」

 

「……じゃあ、まずは、目の前の、美術品を、見て、みよっか?」

 

 

 そう言って、彼女と共にボクは、陳列された特殊な道具の数々を見てみる。

 

 そして、成程、とボクは一言。

 

 

「――――拳銃だけが借りられているね…実に物騒な話しだ」

 

「えと…”ロシアンワルサー”だっ、け」

 

「その通り!6発中1発が空砲の無駄にロシアンルーレットを強要してくる極めて扱いづらい欠陥品さ!」

 

 

 そもそもの話し、何故6発中6発じゃないんだい?殺しにエンタメを求めているようで、極めて不快な一品だ。

 

 だけど、一品であるそのワルサーが借りられている。ということは…ミスター古家の死因を含めて考えると…ここにあったワルサーが凶器。そう見て間違いなさそうだね。

 

 

「…でも、他の、物は、借りられてない、みたい、だね?」

 

「……」

 

 

 まぁボクらがエリア4に向かったのは、事件が起きてから暫く時間が経った後だったからね…充分犯人が逃げる時間もあったし、ここに道具を返す時間もあった。不甲斐ない話しではあるけどね。だからこそ、此方も、目の前の真実だけを鵜呑みにするのよしておこう。

 

 もしかしたら…この並べられている6品。…失礼、ええとどこでもワイヤーは故障中、それとミス水無月がしようした『毒』は一度きりのものだったので…

 

 『モノパワーハンド』『モノパンゴーグル』『秘密の愛鍵』『バグ弾』

 

 この4品の中にも使われた道具はあるかも知れない。そう言った可能性も視野に入れておこう。

 

 だけど、もしも犯人が”ココに1度道具を返しにきている”ということが事実なら……問題になるのは、犯人が継続して”拳銃を借りている”という事。

 

 マイフレンドの証言から、既に2発撃たれている…つまり残弾は3発。

 

 ……この事実は、忘れてしまうことはきっと命取りになる。勿論きっちりとインプットしたとも。今後のためにもね。

 

 

「ふむ、美術品について分かった。では今度はアリバイ確認だ。ミス贄波。キミは事件当時、どこで何をしていたのかな?」

 

 

 道具が陳列された棚から向きをミス贄波に移す。まぁ先ほどの彼女の意思表示からして、何となく犯人の線は薄いだろうが…念には念を入れておかないとね。

 

 

「えっ、アリバイ?……ええ、っと…私、は…その時間は、このエリア、の…プールで、泳いでた、よ?」

 

「ほう、珍しい話だね!というか久しぶりにこの施設を図書館以外を利用している人を見たとも言える」

 

「気分転換、したく、て…さ…でも、証言してくれる人は、いない、かな」

 

 

 と、彼女は言うが…髪から香るほのかな塩素の匂いとそのパサパサの質感から見て…ついさっきまでプールに入っていたことは間違いなさそうだ。

 

 これまでの発言を踏まえると…やはり彼女の証言は大体信じて良さそうだね!というか、彼女が犯人だったらそろそろミスター折木の心が心配だ。

 

 まぁそんなことは置いておくとして…では、次の…といっても、最後の質問を彼女にぶつけてみよう。

 

 

「…ではミス贄波、続けざまで申し訳ないのだけれど。ミス雲居がどこにいるのか…ご存じかな?彼女の話も事件好転のために聞いておきたいのだけれど」

 

「えっ?…ええと、どこだろう。プールに、行く前、は…エリア1の方にいた、気がする…けど」

 

「ふむ…オーケイ!エリア1だね!!情報提供、感謝するよ!キミ」

 

 

 僅かな証言ではあったけど、少なくともエリア1にいることは間違いなさそうだ!何故ならば、かくいうボクも、炊事場で紅茶を飲んでいるとき、ミス雲居らしき人影を見ていたのを思い出したからね!

 

 じゃあ聞くなよって話しだけど、そこはご愛敬。

 

 では、早速行ってみるとしよう。

 

 ボクはミス贄波と別れ、エリア1へと向かっていった。

 

 

 コトダマGET!!

 

【故障したどこでもワイヤー)

…3日前に橋が無くなったと同時にに、一緒に故障し、使えなくなった。事件が発生した現在の時点でも使えない様子。

 

【7つ道具の行方)

…故障したどこでもワイヤーと既に使い切られた毒薬を除いて、借りられていたのは『ロシアンワルサー』のみ。しかし、生徒達がエリア4に集まるまで少しラグがあったため…他の道具も使われている可能性がある。

 

 

 

 

 コトダマUP DATE!!

 

【生徒達のアリバイ B)

…ニコラス:エリア1(炊事場エリア)⇒エリア4

 雨竜:エリア2(図書館)⇒エリア4

 反町:エリア3(お菓子の家)⇒エリア4

 贄波:エリア2(プール)⇒エリア2(美術館)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【エリア1:ペンタ湖】

 

 

 そんなこんなでペンタ湖へやった来たボクなのだけれど…。

 

 

「ん?…ああ、ニコラスですか」

 

 

 そう、ボクが来たことに気付いたミス雲居は、素っ気なく言い捨てた、そっぽも向いたのだよ。うん、どうやら今日の彼女は少々不機嫌と見た。

 

 

「ミス雲居。随分と面白い場所にいるね…何か面白い物でも発見したのかな?」

 

 

 そんな捻くれた声を上げる彼女に、ボクは英国紳士らしく声をそう声をかけてみたのさ。

 

 …だけどいつもの軽口に近い形の滑り出しでは無くて、所謂本心に近い言葉でね。いや、本当に、まさかエリア1の中でも特に辺境のココいるだなんてね…本当に今日はどうなっているんだろうね?

 

 つまり何が言いたいかというと…ボク以外の他の生徒達は何故今日に限ってこれほどバラバラに行動しているのだろう?ということさ。お菓子の家だったり、プールだったり、湖だったり。珍しいことこの上ない日だ。

 

 おかげで、思った以上に彼女の捜索に時間がかかってしまった。同じく、捜査の時間もだ。…だからこそ、さっさと用事を済ませてしまいたい気持ちさ。

 

 

「……そうですね。面白いものと言えば、面白いものかもしれないですね」

 

 

 おっと、若干の当てつけのつもりで話してみたのだけれど、彼女にしては珍しく素直な反応だ。それも思わぬ掘り出し物かも知れないおまけつきでね。

 

 

「ほう、ではその面白い物の話しを掘り下げてみよう……どういった何時何処で、何を発見したんだい?」

 

「たまにはと思ってまともに対応したら、すぐこーですよ。……どーせ私のアリバイを聞きにきたんでしょうから…その発見と一緒に報告するですよ」

 

「お気遣い感謝するよ!キミ。ボクも無駄な会話のキャッチボールは嫌うタイプだからね!」

 

「一体どんなツラでそんな事を言ってるですか…そういうの今までの言動を顧みてからするもんですよ」

 

 

 カエリミル…?ああなるほど!確か、日本語で過ぎ去った過去を反復してみる…ということだったよね。勿論知っているとも!!このジャパンという国に住む前に、日本語はよーく勉強したからね。郷に入っては郷に従えという言葉も踏まえて、そうしたわけだよ!

 

 ええと…ではボクの今までの言動を顧みてみよう…。

 

 

 

 …うん

 

 

 

 …うん

 

 

 

 ……うん

 

 

  うん!………ヨシ!問題無いね!キミ。

 

 

「はぁ…本当に分かってるんですかね」

 

「勿論さ!もう一度言おう!勿論さ!!」

 

「………ますます怪しく思えてくるですよ」

 

「……そんな事よりもだ。キミ、さっさと本題に入らないかい?何だか余りにも中身の無い会話過ぎて、そろそろボクも飽きてきたよ」

 

 

 と、ボクがそう言うと、何やら恨みがましい顔で睨まれてしまった。何かおかしな事でも言ってしまったかな?まったく身に覚えが無いのだけれど

 

 

「はぁ…もういいです……。ええっと…アリバイ、ですよね?私はあの事件の数時間前から、この湖にいたです」

 

「ほう、またまた珍しい。つまり、事件からずっとここにいた、と見ても良いのかな?ちなみに、理由は聞いても?」

 

「別に良いですよ。本を読んでたんです。いつもは部屋で読んでるんですけど。でもたまには、良い景色でも見て、読書でもしようって、ココにいたんです。知ってるですか?この湖、晴れた日の夜だと月が反射して結構映えるんですよ」

 

「成程、それは知らなかったよ。…では、この湖もその読書スポットの一つ…ということかい?」

 

「です。……だからここでずっと本を読んでたです。小さなランプを持ってきて」

 

「想像してみたが、中々風情のある光景だ」

 

 

 実際、ボクも今度やってみようかと思ってしまったよ。

 

 

「でも、その本を読んでる最中に、湖から変な音がしたんです」

 

「変な音?…もしかしてそれがキミがさっき言っていた面白い物…というやつかい?」

 

「そうです。…原因はわかんないですけど…とにかく何事かと前を見たらと、湖の水が”少なくなっていたんです”、ちょっとずつ…着実に…それで最終的には、底が見えるくらいには水が減っちまってたんです」

 

 

 確か、同じように水が減っていたとか、止まっていたとか…そんな話しをしている生徒がいた気も……ああそうだったよ!シスター反町のエリア3の噴水の話しだった!今思い出したよ。

 

 

「ちなみに、時間単位でどの位の間水は減り続けていたんだい?」

 

「1時間くらいだったと思うです。気付くのに遅れた自覚はあるですから…もうちょっと長かったかもしれないですけど」

 

 

 ふむ…しかも時間も合致している。もしかしたら、シスターの話と何か関係があるのかも知れないね。

 

 

「では、そうだね…この場所に居たこと、それとその干上がった事を証明する人間は…?」

 

「いるわけないですよ…ケッ」

 

 

 女性としてはふさわしくないように、そう吐き捨てるミス雲居。

 

 はぁ…つまりは事件当時、全員はバラバラの場所に居て…しかも共通して保証人も不在という始末。証言としては余りにも稚拙と言える。

 

 

 ……だけど、記録しておくに越したことは無いさ、キミ。いつ何時、どれが犯人のアキレス腱になるのか、分からないのだからね。

 

 

 そして、これまでの水に関する証拠、証言を踏まえて、まとめてみると……

 

 

 どうやら、もう一度エリア4の…特に、水管理室に…彼処システムについて…もう一度掘り下げてみなくてはならないかもしれないね。

 

 

 コトダマGET!!

 

【消えかけた湖)

…7時半から8時半までの1時間、湖の水が減り続けていた。気付くのも遅かったため、もっと前から減っていた可能性がある。

 

 

 

 コトダマUP DATE!!

 

【生徒達のアリバイ B)

…ニコラス:エリア1(炊事場エリア)⇒エリア4

 雨竜:エリア2(図書館)⇒エリア4

 反町:エリア3(お菓子の家)⇒エリア4

 贄波:エリア2(プール)⇒エリア2(美術館)

 雲居:エリア1(ペンタ湖)

 

  

 *しかしお互いに証明できる人物はいない。

 

 

 

 

「ニコラス……」

 

「……ん?」

 

 

 つい考え事に没頭してしまっている最中のことさ。ミス雲居が想像以上に深刻な声色でボクの名前を呼んだのさ。

 

 だからこそ、驚いてしまった所為で、ちょいと反応が遅れてしまったのだよ。

 

 見てみると、彼女は何処か悲しげに、それも世をはかなむような表情をしていたのさ。さらに、驚いてしまったよ。

 

 

「この世って…理不尽ですよね」

 

「……どうしたんだい?藪から棒に」

 

 

 ボクが何か、情に訴えかけるようなことでもいっただろうかな?…いや、これまでの問答を振り返ってもそんな場面は無かった。殆ど、アリバイと現象という、極めて報告書に書く程度の内容だ。

 

 …だとしたら、考えられる原因は一つしか無い。

 

 

 そう、ミスター古家の件以外に考えられない。

 

 

「…古家は、誰が見ても分かるような良いやつだったです……臆病者のくせに、変なところで大人で…友達思いで…でもやっぱり臆病で」

 

「…ああ、そうだね。彼らしく、隠れてはいたが、彼なりに、この劣悪な環境を通して成長していた。人を観る目があるボクが言うんだ」

 

 

 彼女の言うとおり、間違い無くね。お世辞にも、彼とはミスター折木のように懇意にしていたわけではないボクでも、そう言い切れる。

 

 

「でも、そんなアイツが、こんなにもあっさり死んじまったんです」

 

 

 重い…実に重い…そんな一言だと思ったよ。彼が死んでしまったことが…ボクらにどれほどの衝撃を与えたのか、よりハッキリと思い知らされる一言だ。

 

 情けない話し。いつもはお茶らけているボクでも…この死を知らされた時は、いや事実を目の前にしたときは…身が裂けてしまうほどの哀しみが走ったよ。

 

 

「前の長門が引き起こした事件のことです。私の所為で、事件の展開をグチャグチャにしたことを、あんたや折木の時みたいに…古家に謝ったんです。頭を下げて…ごめんなさいって……その時、あいつ…何て言ったと思うですか?」

 

「……さぁね。想像が付かないよ」

 

 

 嘘だ。優しい彼が言う事なんて、手に取るように分かったさ。何故ならボクは、名探偵なんだからね。だけど、ボクが横からしゃしゃり出ていく場面は、ココには無い。そう思っただけさ。

 

 

「”生きてるだけで結果オーライなんだよねぇ。それ以上に、雲居さんが生きてて…本当に良かったんだよねぇ”…なんて。お人好しにも、あいつは私のことを案じたんです」

 

「………」

 

「そんなキャラに合わないこと言う前に…自分の心配をしろってんです……だから…こんな………」

 

「………」

 

「……今ほど、この世はくそ食らえって思ったことは無いですよ」

 

 

 当然だ。実に当然の声さ。

 

 当然だからこそ、分かるさ。そう思わせるほどに…彼は魅力的な人だったのだからね。

 

 愛だの恋だの…そんな俗な言葉ではくくれない。彼女にとって、いやボクらにとって彼はそういう存在だった。

 

 だけど、そんな臆病で、でも優しくて、誰よりも前向きに生きようとした彼が…死んだ。いや殺されてしまった、ボクらの中の、誰かの手によって。

 

 もう二度と、彼の動く姿も声も、見ることも聞くことも出来なくなってしまったんだ。

 

 だからこそ、彼女は今、人目も憚らず悔しさを露わにしているのだ。

 

 

「私達は、仲間だったかも知れないってのに。…犯人の気が知れないですよ」

 

 

 第三の事件、その発端の1つとなった…ボクらのあったかもしれない過去の関係。きっと彼女はそれを言っているのだろう。

 

 そう、未だ話し尽くせていない。結論すら出ていないあの話。結論が下せていないからこそ

 

 

 …この殺人はある意味で残酷であり、ある意味で裏切りだ。

 

 

 級友を殺してしまうことになるかもしれない……そうと分かっていながら。犯人は殺人に及び、そしてその手を血に染めた。

 

 

 まさに、悲劇的さ。ああ、極限なまでにね。

 

 

 

 

 …だけど思うのは。

 

 

 

 …その程度の抑止力で、犯人は自分を止められなかったという事。

 

 

 思い出せない思い出を振り切れるほどの、一夜、二夜で魔が差したからとは言い切れない程の、すさまじい”憎悪”と、”殺意”と”覚悟”があったのだろうという事。

 

 

 ……まぁ、理由なんて、既に見当はついているんだけどね。名探偵だからこそ、あえて答えを決めきらない。だけどあらゆる可能性を想定する。

 

 

 ……つまりはそういうことさ。

 

 

 だからこそ…。

 

 

「安心したまえ…ボクは名探偵だ。そんな罪深き人間が如何に愚かだったのか…ソレを伝えるのも、ボクの役目だ」

 

「……」

 

 

 あえて言い切らないからこそ、ボクはボクがするべき役目を全うするだけさ。

 

 

「ボクが…いやボク達が全てを全うする…だからキミは黙って、野次を飛ばしてくれるだけで良いさ」

 

「………」

 

 

 彼女には彼女の、ボクにはボクの、そして彼には彼の…役目があるのだからね。

 

 

 どうだろうか?ボクなりに、彼女のことを元気づけてみたのだけれど。どうにも、女性を口説く事に長けてはいても…肩に手を置くことは慣れてない物だからね。

 

 

「そうですね…そうすることにするですよ……」

 

 

 そう言って、彼女は引きつったような笑みを返してくれたのさ。

 

 どうやら、掛けた言葉に間違いはなかったみたいだ。思わず変に固唾を呑んでしまったよ、キミ。

 

 

「……変な話しして悪かったですね」

 

「いいや、実に有意義な会話だったとも。ああ、ボクが保障するさ、キミ」

 

 

 そんな取り繕うような言葉を聞いた彼女は、”そうですか”、と苦笑し言い捨てる。するとすぐに立ち上がり、スタスタと、ペンタ湖を後にしようと何処かへと。

 

 

「……ミス雲居?」

 

「部屋に戻るんです。こんなみっともない顔じゃ、人前に出れないですから」

 

 

 見てみると、確かに彼女の目元は赤く膨れてしまっていた。恐らくボクがココに来るい以前から…何があったことを明確に示していたさ。

 

 だからこそ…それを見たボクは、自分自身に失望してしまったよ。

 

 

「……悪かったね。女性にこんな野暮なことを聞いてしまうだなんて、ボクは紳士失格だ」

 

「あたしは淑女なんて高貴な身分じゃ無いんで…そういう気遣いは結構ですよ」

 

 

 …いいや。キミは実に高貴だよ。

 

 キミは自分を捻くれていると誤解しているのだろう。だけど、キミは誰よりも素直で、そして純粋な子だよ。

 

 言っただろ?ボクは人を見る目は確かだって。

 

 …そんな些細なことこそが…ボクが尊敬するに充分な理由さ。キミ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

【エリア4:水管理室】

 

 

 先ほど心の中で宣言したとおり、ボクは捜査の出発点であるエリア4の水管理室へと戻ってきていたのさ。

 

 理由は先ほども述べたと水管理室の調査のため。

 

 だけど見たところ…ドクター達の姿は無く…ここではない何処かへ行ってしまったみたいだ。…であれば、ボクも好きなようにソロプレイに走るとしよう。

 

 ええっとまずは…このシステムについて…は……と。

 

 

「予想通り…崖の下の水はココで管理しているみたいだね。それも崖の両端に設けられた水門を開け閉めすることによって……まぁこんな名前がついてるのだから、当たり前なのだけれど」

 

 

 だけど重要なのはどのような操作が可能なのかだ。こんな大それた設備があるんだ、お飾りの施設とは考えにくい。

 

 ええと、何々?

 

 ボクは適当に、ピコピコとパネルを操作し、システムの概要について記憶していく。

 

 

「ふむ、てっきり水量だけを雑に管理するのかと思ったけれど……」

 

 

 どうやら、崖の底の水量を調整するだけではなく…指定すれば一定時間の間の水量も調整できるみたいだ…つまり一度設定してしまえば…態々ココに戻ってこなくても…ということか。

 

 うん…実に興味深い。

 

 ええと、それに加えて…水だけじゃなく…外気温も操作…いや、これは計測しているだけか。流石に設備を集中させるのはどうかと踏んだのかな?では改めて、事件当時の気温、は…っと…

 

 

 …”マイナス12℃"!!

 

 

 酷い寒さだ!ボクだったら2秒とすら外にいられないね!きっと水に浸かろう物なら一瞬で冷凍保存さ!

 

 とするなら、ボクの想定するトリックもようやく形になってきた、というわけか。それで…次に重要になってくるのは…このエリアに隣接している場所…だね。

 

 これについては……全体の地図を、改めて見直すとしよう。

 

 …確か、このエリア4の両隣は…エリア3とエリア1。うん、どちらも水関連の問題…いや現象がが目撃されているエリア。

 

 

 これらの要素と…今までの要素を重ね合わせて考える…と。

 

 

 

 ふむ、やはり――――――そういうこと、になるのかな?

 

 

 

 

 ボクの推理が正しければ……犯人は――――――

 

 

 

 

 

 

 コトダマGET!!

 

 

【水管理室のシステム)

…崖の両端に設けられた水門を開け閉めすることによって、底にある水量を調整する。さらに指定すれば、一定の時間の間だけ好きな量に調整できる。

 

 

 

【エリア4の気温)

…事件当時の気温は-12℃。水も体も速攻で凍ってしまいそうなほどの寒さであった。

 

 

 

【ジオ・ペンタゴンの全体図)

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

 

 

 

 

 納得、そしてある程度の確信を得たと同時に…無情な鐘の音が、この空間に響き渡った。

 

 

「さて、時間か」

 

 

 だけど十分さ、今までの事件に比べれば、実に簡単な事件だったからね。

 

 

 というか、まぁボクの超高校級の名推理があれば…どんな事件も造作も無いレベルになってしまうのだけれど…

 

 

 

 ――――――でも

 

 

 

 それ以上に考えておくべきことは…ある。

 

 

 それは、これから先のこと…。事件を解決した先のこと…

 

 

 この事件が終わりを迎えたとき、ボクはきっと、ボクが知る”真実を話すこと”にならざる終えないだろう。

 

 

 事件の発端となった…根幹とも言うべき真実を。

 

 

 推理をするなんて生やさしいものじゃない。

 

 

 …大いなる”覚悟を持って”

 

 

 そして同時に、ボクと”彼”の間にもまた、大きな溝が生まれてしまうのだろう。

 

 

 …だからこそ、今を、噛みしめて、宝物のように大切にしておかなければね。

 

 

 

 

 

 

 ――――いや、実に寂しい話しだよ…まったく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

……………

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

【エリア4:ホテルペンタゴン『庭園』】

 

 

 

 

『キーン、コーン…カーン、コーン』

 

 

『この世に死と生が存在する限り、人はだましあい、疑い合い、信じ合い、手を取り合い、傷を舐め合い、なれ合い……そして命を削り合う……これは輪廻のように、際限なく、永遠に…終わることは無い』

 

 

『実に、実に気怠くなる長さでございまス。ええ!ええ!!そうですとも…例え面倒臭いと世界の中心で叫ぼうとも、泣き言を傷にすり込んでいても……結局、ミナサマのお力ではこのコロシアイの輪廻を止めることは出来ないのでしタ』

 

 

『チャンチャン(終わりの音)』

 

 

『と、1つ小咄が終わったところで…お次は学級裁判…この円環の理に区切りを付けるための学級裁判のお時間でス』

 

 

『つまりはアレです…至急、赤い扉の前にお集まりくださーイ、ということでス』

 

 

『PS.ホテル側のミナサマは中庭にお集まりくださーイ』

 

 

 火を付ければ良く燃えそうなほど油の乗った舌を動かし終わったモノパンは、ブツンと、ゴムを断ち切ったような音と共に、アナウンスを終えた。

 

 

「……始まるのか。学級裁判が」

 

 

 アナウンス直後の悲哀に満ちたその言葉。

 

 とうとう、いや、既に分かっていたからこそ覚悟は付いていた。

 

 だけど、その覚悟を持っていても…俺は今まで以上の心配に駆られていた。

 

 理由は簡単だ…余りにも情報が少なすぎるのだ。これまでに比べて準備不足が顕著に表れている。……ニコラスのことだから、きっと上手く証拠は集まっているのだろうが。

 

 成果を見てみないと、やはりこの不安を拭うことはできなかった。

 

 

「…ですが。どうして私達だけ、この中庭に?」

 

 

 そんな不安と隣り合うように、どうしてモノパンはココに俺達を呼び出した疑問もあった。

 

 

「確かに不思議だな…だけど態々場所を指定したんだ、何か理由があるんだろう」

 

 

 そ、そうですよね…と彼女は無理矢理納得するように頷いた。

 

 …少なくとも察することが出来たのは、まだ橋が架けられていないエリア4を横断するための善後策を講じようとしているのだろうということ。

 

 

「…隼人、痛くない?」

 

「決してその可能性を捨てきることは出来ない…だけど、男として我慢できないものでもない…大丈夫さ、他ならない君が運んでくれているんだから」

 

 

 そしてその呼び出しからワンテンポ遅れて、医務室に居た2人がやってくる。落合の足は未だ癒えておらず、風切に肩を貸される形で。

 

 それにしても……まだあのやりとりを続けていたのか。ていうかさっきよりも距離感が、あ、いや物理的では無く、心理的距離が近くなっているような…。そんな印象であった。

 

 

「うう…やはり私も…」

 

「……」

 

 

 その光景を見てなのか…隣に居た小早川も変にウズウズしているように見える。

 

 しかも此方を何やら睨むように…滅多なことでは無いだろうが、早く事態が進展しないと俺の身が危ないかもしれん。

 

 俺は…生まれて初めて、モノパンが早く来ないかと思ってしまった。

 

 

「パンパカパーン。ミナサマに朗報でございまース!!ええ!!まさに大朗報…歴史的、いや地球史的な…」

 

「そういうのはもう良い」

 

 

 そしてそんな空しい願いが通じたのか…

 

 モノパンは現れた。また地面から生えるように…ニョキリと。また要らない前置きをつらつらと述べながら。

 

 

「……朗報?」

 

「ええ!そうですとも。翼を手折られ、そして悲しみに暮れる迷えるエンジェル達であるキミタチのために代わりの翼を…ああいや、足をプレゼント」

 

「天使様には足も無いのですか…」

 

「歪だ…僕の知っている、いや人々が信じる天使や神というのは、すべからく人の形をしているから、尚更ね」

 

 

 小早川だけでなく、落合にまで小突かれる始末。落ちるとこまで落ちたものだなと、1人思った。

 

 

「んな細かい所小突くんじゃありませン!!!髪がおハゲになりますでございますヨ!!」

 

「…お前が言い出したことだろうに」

 

「ぐぐぐぐ…またもや揚げ足を……もはや、もはやこれまでか………んじゃああああああーーーー!!!!!いでよ緊急脱出ロード!!!!」

 

 

 突然モノパンが奇声のような叫び声を上げた途端、庭園の中央がガコンと音を鳴らして凹み、御簾のようにカラカラとその口を開けた。

 

 口を開けた先には、階段が。それも先の見えない暗闇の道が続いていた。階段の両脇には簡易的な電灯が連なっていた。

 

 

「……こ、これは?」

 

「くぷぷぷ、ワタクシ専用の秘密の入口にてございまス。普段は表の道しか利用できないのですが…今回は特別に、ええ、橋ができあがっていないので此方をご利用し、中央棟へとおいで下さいまセ」

 

 

 やはり…コイツは隠していた。緊急という名目で、意図的に隠された秘密の通路が。モノパンはこの通路を通じて、あらゆる場所に出入りしていたんだ。

 

 

「でしたら最初っからこの手段を使えば良かったではありませんか!!」

 

「……うん、もっともな指摘…どう説明するつもり?」

 

「うううう…ワタクシも此方をお見せするのはまさに断腸の思いでの決断でございましタ。このような裏ルート…所謂スタッフ用の通路を使ってしまえば、まさに、今ミナサマが仰ったように糾弾されるのは必至。このような言われ様は、まさにゲームマスターとして恥ずべきことでございまス」

 

「ええ…そこまで反省されると…なにやら罪悪感が…」

 

「梓葉、流されないで……」

 

 

 しっ、風切は小早川を制止した。その通りであった。

 

 何を言っても、何を誤魔化しても、結局俺達にやましいことを隠していた事実に変わりは無い。自己本位この上ない言い訳である。

 

 

「じゃあ、俺達の個室だけじゃ無い…どのエリアにもお前は自由に動ける…間違い無いな?」

 

「ええ、間違いありません。ですが、誓ってキミタチが懸念するように…事件に協力などはいたしませんシ、事件を起こしませン。これは最初の事件で、ワタクシは言いましタ…この世界ではルールが絶対ということに準拠しておりまス。『モノパンが殺人に関与する事はありません。しかし、コロシアイの妨害があった場合この限りではありません』、これが覆されること…即ちワタクシが自分自身で直接罪を犯すことは…まさにこのコロシアイの終焉と言って良いでしょウ」

 

「……」

 

 

 コロシアイの…終焉か…。

 

 変な所でしっかりとしているコイツがそこまで言うんだ。

 

 今回の事件に限っては…本当にモノパンは関与していないのだろう。

 

 だけどこれまでの事件を引き起こした原因、動機はなにもかもコイツの仕業だ。今までの所業が許されるとか許されないとか、それ以前の問題。もはや憎むべき怨敵と化しているのだ。

 

 

「分かった…だったら行こう。落合、肩貸すぞ」

 

 

 これ以上は平行線、自分の平常心のためにもココは話しを切り上げるべき、そう判断した。

 

 

「…私がやるから大丈夫」

 

「ですが…」

 

「……大丈夫」

 

「………そうか」

 

 

 何かムキになられた気がするが…。手伝いは要らないことは間違い無かった。

 

 

「折木さん!では私が肩をお貸ししましょうか!」

 

「……どういう意味だ?」

 

「ううう、ですよねぇ…」

 

 

 どうにも凸凹した雰囲気の俺達は、そのまま階段を下っていく。小早川を先頭に、落合と風切…そして俺という順番で。

 

 俺は下っていく途中、誰にも気付かれないように、ふと…振り返った。

 

 

「………古家」

 

 

 こんな辺境の、寒い寒い空の下に置いていく。死体となった彼から離れていく。

 

 …せめて、最期に声だけでも聞きたかった。お別れの言葉を……。

 

 きっと…裁判が終われば…彼の死体も何処かへと消えてしまうのだろう。もう二度と、その姿を見ることは無くなってしまうのだろう。

 

 俺は唇を噛みしめる。血が出るのでは無いか、それぐらいに悔しさを噛みしめる。

 

 

「公平?」

 

 

 前を歩く風切に呼ばれる。俺は気付いたように、前を向く。

 

 

 どうしたの?と、曇った様な表情が向けられる。

 

 

 ………少し、心配を掛けてしまっただろうか。

 

 

 俺は一つ、息を吐く。そして、前を向く。生徒達も、安心したように同じく前を向く。

 

 

 たった一人、大きな存在を欠いた俺達は、下っていく。

 

 

 何もかもに、苦しさや悔しさを残しながら、下っていく。

 

 

 確かな覚悟を持って、下っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

【中央棟エリア】

 

 

「ん?…やあ、久しぶりの対面だ、マイフレンド」

 

 

 階段を下っていった、その到達点にあったまばゆい光。

 

 その先に、既に集合を果たしていたニコラス達が待っていた。久方ぶりだった。いまや懐かしく思えるような生徒達と、やっと顔を突き合わせることができた喜びに、俺は思わず頬を緩ませた。

 

 

「折木、君!!」

 

「…久しぶりだな、贄波」

 

 

 同時に、そんな生徒達の中をかき分け、真っ直ぐに此方へとやって来たのは贄波だった。電話をした時は、例の施設に居なかったために、密かに心配していたのだが、どうやら元気そうであった。

 

 

「……良かった、本当、に」ギュッ

 

 

 すると、彼女は俺の両手を彼女の両手が包み上げる。久しぶりに感じた彼女特有の暖かなぬくもり…。俺はその時、今まで以上の安心感が心に表れていた。

 

 

「すまんな…心配かけた」

 

「ううん…そんな、全然、だよ」

 

 

 いや、想像以上に不安にさせて仕舞ったみたいだ。その不安げな表情をみればそう察しが付いた。だから…俺は大丈夫、そう言うように堅いながらも笑顔を作った。

 

 

「ん、贄波も大胆なもんですね。これで一歩リードです」

 

「いやはや、やはり心配は心配で。しっかりとしてたみたいだね。いろんな意味で安心したし、いろんな意味で不安が増した気分だよ」

 

 

 ヘラヘラとした顔で雲居やニコラスから冷やかされる。俺は硬い笑顔の裏で、勘弁してくれと、と心から思った。

 

 

「……うう、私は手すらも握ったことが無いのに…羨ましいです」

 

 

 そして、予想通り、贄波越しに、此方を振り返る小早川が悲痛な表情をしているのが見えた。

 

 頼むから、そんな涙ぐむような目で此方を見ないでくれ…。そんな顔をされると、本当に罪を犯した気分になるし、首をくくりたくなる。そう思いながら、俺は頬を引きつらせた。

 

 

「梓葉!!無事に会えて良かったさね!!」

 

「…はっ!そ、反町さん!」

 

 

 すると、反町が声を大きく上げながら小早川の側へと寄っていく。友人同士、両手を繋ぎ、感動の再会を果たし、お互いに、無事が叶ったことを短く言葉で交わし合う。

 

 …少し、彼女の気が逸れて良かったと思ったのは内緒だ。

 

 

「落合…貴様、その足」

 

「気にすることは無いさ、この染みるような痛みは、最初は突風のような激しさと、そして冷たさだった。だけど、此方の風切さんのおかげで、今ではそよ風のような穏やかささ」

 

「……柊子で良い」

 

「逆に穏やかになると危険に思えるが……念のため、見せてみろ。処置が甘ければ…壊死して、最悪足を切らねばならなく可能性がある」

 

「…そ、そう……だったら降ろすよ?」

 

「…医者が患者を不安に思わせるなさね」

 

 

 風切は、雨竜の指示通り、ゆっくりとした動作で壁に落合をもたれかけさせる。その過程で伸ばされた彼の足を、雨竜はじっくりとプロフェッショナルのような手さばきで診察し出す。

 

 

「ミスター折木、少し良いかい?」

 

「…ニコラス」

 

 

 落合の診断をしている最中、俺はそう言って近づいてくるニコラスの方に意識を移した。どうしたんだと、怪訝な視線を送っていると…。

 

 ニコラスは唐突に、1枚のメモ帳を此方に差し出してきた。

 

 

「……?」

 

「約束通りの捜査の成果さ、受け取ってくれたまえ」

 

「……そ、そうか、そうだったよな…頼んでたんだよな」

 

「ははっ!何をそんなに動揺しているんだい?キミが頼んできたことじゃないか」

 

「いや、お前が紙媒体で渡してくるなんて…って意外に思ってな。てっきり頭の中の情報を口頭で説明されると」

 

「おいおいおい!!そんな人間コンピューターみたいな記憶力をボクが…………持ってるに決まっているじゃ無いか!!おっと、持っていないと思わせて、持っているだなんて…まさに驚き!!どうだい?ミスター1本捕られただろ?」

 

「………」

 

「一人で何をやっているんだ、と言う顔だね。うん、実に最もだ」

 

 

 本当に何をやっているんだろうか?いやここは、冗談の通じない俺の頭が固いと言うべきなのだろうか?

 

 

「まぁあれだよ、キミ。こうやってメモで渡して置いた方が、キミにとって都合が良いそう思っただけさ。なぁに、既にボクの頭には、先ほども言ったようにインプットされているから、心配は無用だよ。キミ」

 

「そうか…世話を掛けたな」

 

「んんんん?んんんんんんんんんん?」

 

「………そうだったな…すまん。…ここはありがとう、だよな」

 

「うん!それが正しい答えだ!また1つコミュニケーションのなんたるかを学んだみたいだね!」

 

 

 そんなこざかしいような言葉の数々に、俺は彼らしいな、と小さく笑う。釣られて、ニコラスも少し目を細め、笑っているようだった。

 

 

「…ふむ、どうやらまだ赤い扉は解錠されていないみたいだね。では…この無駄な時間を使ってキミに1つ確認しておきたいことがあるのだけれど」

 

「……?何だ」

 

 

 改まった口調で語りかけるニコラスの様子に俺は思わず姿勢を整える。

 

 

「1つ…例の不審者をミス風切がライフルで撃ったとき…妙にかん高い音が響いた…と言っていたね」

 

「…ああ、ソレがどうした?」

 

 

 彼が聞いてきたのは…風切と犯人の間に起こった例の流れ。風切が、ライフルを撃ったけど、結局その足を止められなかったこと。

 

 …俺自身も気になって、その周辺や、外を調べてみたが…結局正体も、その痕跡らしき証拠も見つからなかった。

 

 

「…だとしたら、これから先の…生徒達の行動をつぶさに見ておいた方が良いね。…特に、”学級裁判が始まる直前の動き”を注視することをオススメするよ?」

 

「…動きを?」

 

「ああ、それも”今までの彼らの動きと”照らし合わせながらね?」

 

 

 えっ…今までの?

 

 妙に難易度の高いアドバイスに…俺は小さく面食らってしまう。

 

 

「…折木君…難しそうだった、ら、私も、協力する、よ?私、記憶力は、結構良い方、だから」

 

 

 すると、その話しを聞いていたのか、贄波が助け船の如くそう割って入る。

 

 

「おお!これは実に頼もしい助っ人だ。ミスター、ココは遠慮せず彼女に助けを請いたまえよ。1人より2人!2人より3人さ!キミ」

 

「…だったら言い出しっぺのお前も手伝えよ」

 

「ははっ!!それは出来ない相談だ!!ボクは調査の時点で気力の半分以上を使い切ってしまったのだからね!!」

 

 

 …よくそんな乏しい体力で今までを生き抜いてきたな、と。多分だがはぐらかされているだろう…という言葉が同時に頭によぎった。

 

 飄々としながらも、想像以上に頑固な彼に、俺は仕方ない、と小さく息を吐いた。

 

 

「折木…くん、がんば、ろ?」

 

「……ああ、そうだな。1人じゃなく。2人で、な?それに…」

 

 

 俺は広げた右の手のひらを彼女に見せ、逆の手で手で中心に指を差す。

 

 

『……怖くなったり、不安になったら、右手を胸に当てて、みて?』

 

 

 贄波に言われた事を思い出す。右手にかかれたおまじないも一緒に。

 

 

「お前に貰った勇気もあるから。きっと、もっと頑張れるさ」

 

 

 そう言うと彼女は、安心したように微笑んだ。俺も、同じように頬を緩ませた。誤魔化しでも、繕った物でも無い自然な笑顔で。

 

 

「ふむ…適切に処置できているな。このまま経過観察で問題無いだろう」

 

「…当然」フンスッ

 

 

 すると、今まで作業をしていた雨竜が一息つきながら立ち上がる。どうやら、雨竜による簡易診断が終わったようだ。

 

 

「どうさね、落合、立てるかい?肩なら貸すよ」

 

 

 そしてすぐに、座り込む落合の近くへとやってきた反町が、手を差し伸べる。

 

 

「ああ、そうだったね。僕は今、片翼へと成り下がった憐れな流離い人…誰かが側に居なければ立ち上がることすらできない不出来な鳥だった…それじゃあ有り難く――――」

 

「……いえ、ココは自分が貸します」

 

 

 だけどそれを突っぱねるように、風切は落合と反町の間に立ちふさがった。

 

 

「えっ、でも体格的にアタシの方が無理の無い気が…」

 

「いいえ…いくらの姉さんでもこれは譲れません」

 

「えぇ……」

 

「ははっ…良いね、とても頼もしい姿だ…だけど無理をしなくても」

 

「……無理してない」

 

「……ぬわんだこれは?…妙に虫唾が走ってきたぞ?」

 

 

 その落合と風切の妙なやりとりから…数人ほど何が彼らの間に起こっているのか察したようだった。

 

 しばらく…この光景は見守ることに務めよう。空気の読める何人かはそう思っているようで、何も口は挟まなかった。…まぁ雨竜の場合は、積極的に妬んでいきそうだが。そこはご愛敬と言うことにしておこう。

 

 

 …そうして、落合の怪我も大丈夫と、一段落したような空気が蔓延っていると――――

 

 

 

 ――――ガコン

 

 

 

「――――!!」

 

 

 その結果を待っていたかのように…赤い扉は…エレベーターはその口を大きく開かれた。そのたった一音で、たった一瞬で空気は、凍えるように張り詰めた。

 

 

「………行くか」

 

 

 徐に投げたその言葉を皮切りに、生徒達は黙々とエレベーターの中へと吸い込まれていく。

 

 

 誰も何も語らず、ただヒタヒタの平常心を維持することだけを考えているように…。

 

 

 そして、全員が乗り終えたと同時に、その鉄の箱は1度だけ揺れ…

 

 

 

 ………そして、すぐに下降を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴウンゴウンと、耳鳴りのような音が辺りを満たす。

 

 じわりじわりと体の全てを重苦しい空気が包み込み、おもりのような重圧が、体を下へと押していく。

 

 

 ――――お互いに言葉は無かった。

 

 

 瞳を閉じていたり、ブツブツと何かを言っている人がいたりするだけで、それぞれの時間を、自分自身の中で完結させていた。

 

 

「…ミスター折木」

 

 

 すると…そんな詰まるようなプレッシャーの中で…近くにいたニコラスが、ヒソリと再び声を掛けてきた。

 

 一瞬、周りから何かを言われるのでは無いか?そんな行きすぎた心配はあったが、幸いにもエレベーターの下降音のおかげで、この密談が誰かに聞こえることは無く。誰も見向きもしなかった

 

 

「…何だ?」ヒソリ

 

「すまないね、1つ言い残したことがあったことをね、思い出したんだ。でも返事はしなくて良い…ただ黙って聞いておくれ」

 

 

 肩に顔を乗せるような体勢で、耳の横でそう囁いた。俺は彼の言うとおり、黙って、真っ直ぐに、何も変わらない、壁が落ちていくだけの景色を見つめ、耳をすませた。

 

 

「……このミスター古家の殺人事件…恐らくキミにとって、とても”大きな意味”を持つ事になるだろう」

 

 

 大きな、意味?…思わずオウム返しをしそうになったが、意識で言葉を抑えた。そのまま、彼は言葉を続けていった。

 

 

「それこそ、キミの”才能”に関する…重大な根幹がこの事件に内在している」

 

 

 その意図の読めない言葉に俺は顔を歪ませた。…だけど意図は読めずとも…聞き逃してはいけない、俺は直感的にそう思った。

 

 

「そしてその真実が明かされた時…ボクはきっと、キミに謝らなくてはいけなくなるだろう」

 

 

 何故?謝らなければなら無いのか。全くと言って良い程の、脈絡の無い、それも一方的なこの会話の数々。

 

 

「……それって、どういう」

 

 

 ――――思わず。声を出してしまった。小さな彼のお願いを無視し、彼の真意を聞こうと返事をしてしまった。

 

 

 

 だけど…

 

 

 …その瞬間。

 

 

 エレベーターはガコンと重低音を立て――――止まった。

 

 

 同時にチーンと、到着のベルが流れ、目の前の扉は開かれた。

 

 

 光りが…もう見たくないと何度も思ってきた…絶望の光が…俺達の瞳の全てを照ら出す。

 

 

 そして、再確認した…

 

 

 

 ――――俺達はまた…やってきてしまったのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

【裁判場】

 

 

 思わずしかめてしまうような、光の温度差。

 

 

 その光の先に待っていた、光景にあったのは、今となっては見慣れてしまった。いや、見慣れてはいけなかったはずの…学級裁判場。

 

 

「くぷぷぷ、ようこそいらっしゃいましタ。モノパンの学級裁判場Ver4、すなわちミナサマ4回目のお目見えとなりまス」

 

 

 その奥、いつもの玉座で、モノパンは立ち上がり、丁寧なお辞儀を披露する。

 

 そんなおどけた口調のヤツの言うとおり、裁判場の壁面のデザインは、再び様相を変えていた。

 

 壁や、ゴツゴツとした起伏に富む水晶に覆い尽くされており、床は鏡のように青く、そして透き通ったようににキラキラと輝いていた。さらに、上を見てみると、人なんてたやすく貫くようなつららがぶら下がっていたり、取り付けられたテレビ画面は僅かに凍っているような細かさまで施されていた。

 

 今回の裁判場は、エリアのテーマとも言えた”冬”を徹底的に押し出され、今にも凍えてしまいそうな程の寒々しいデザインに仕上がっているようだった。

 

 

「ココにやって来たという事は、ミナサマ…おわかりですネ?では、遅延行為も、エッチな行為も後にして…さっさと自分の席にお着き下さイ」

 

 

 その無駄の多い指示言の通りに、生徒達は、黙って席へと着いていく。俺もまた、同じように、無言のまま着いていく。

 

 

「くぷぷぷ、やはり死を決する寸前の、このちが冷たくなるような緊張感。心地よい、実に心地よいでございますネ」

 

 

 横から溢されるモノパンの戯れ言を流しつつ、すぐに、俺は前を…学級裁判場を真っ直ぐと見据えた。

 

 

 その視界に入るのは、俺と同じように、毅然とした態度で前を見続ける者。豪胆にも薄ら笑みを絶やさない者。不安げに瞳を揺らす者。じっと瞳を閉じる者。

 

 

 様々な様子の生徒が居た。

 

 

 そんな生徒達の中で…俺は、たった一人、ニコラス・バーンシュタインという生徒に瞳を向けた。

 

 

『この事件…きっとキミにとって大きな意味を持つ事件になるだろう』

 

 

 俺は先ほどのやりとりを思い出す。

 

 

 …彼が言っていた。意図的にぼかされたような、真実を聞く暇も無かった、さっきのあの言葉。

 

 

 エレベーターを出たときからずっと、そして今もやまびこのように頭の中で、何度も何度も言葉が繰り返されていた。…そしてその度に疑念は増幅していくのも感じていた。

 

 

『それこそ、キミの”才能”に関する…重大な根幹がこの事件に内在している』

 

 

 この事件の根幹には、一体何が潜んでいるのだろうか?

 

 

 『超高校級の特待生である折木クン…実は――――――”超高校級の特待生”では無く、”超高校級の不幸”として希望ヶ峰学園に入学しタ』

 

 

 それは、モノパンのアナウンスにあった、俺の真の才能と、”超高校級の不幸”と関係があるのだろうか?

 

 

 

 

 疑問は尽きなかった。おびただしい程に、俺の頭は疑念で覆い尽くされていた。

 

 

 

 だけど…

 

 

 

 その疑問を解決するためには…

 

 

 俺自身の真実と…向き合うためには…

 

 

 

 ――――俺は視線を…裁判場の中央へと移した

 

 

 …今俺が立っているのは、命を賭けた学級裁判場だ。

 

 

 …命を賭けた、戦いをしなければならない場所なんだ。

 

 

 …命をかけて、事件の真実にたどり着かなければならないのだ。

 

 

 だから、今は…

 

 

 ――――目の前の真実と向き合うなければならない

 

 

 ――――目の前の命を賭けた真実と、向き合わなければならないんだ

 

 

 

 

 

 

 ――――『超高校級のオカルトマニア』”古家 新坐ヱ門”…このコロシアイの中で親しかった友を失い、その死を乗り越え、その死すらも成長へと繋げた、強く、優しい心の持ち主だった彼。

 

 

 

 …一緒に馬鹿話をしたり、一緒にゲームだってしたり、一緒に苦難を乗り越えてきた。

 

 …紛れもない…俺の仲間であり、親友だった。

 

 少し、臆病な所もあったけど…それえお覆す位の大きな、大きな勇敢さを胸に秘めていた。

 

 

 

 だけど…

 

 

 

 その勇気が…仲間を守ろうとする、まるでヒーローのような勇気が――――――彼を死に至らしめた。

 

 

 ……イヤ違う。…他でもない俺の所為で。…俺を狙った誰かの手によって…

 

 

 ――――――殺されたのだ

 

 

 この中に。仲間であったはず俺達の中の誰かによって。

 

 

 

 許せない…

 

 

 許すことなんて、絶対に出来ない

 

 

 犯人を…!

 

 

 古家を殺した犯人を…!!

 

 

 この学級裁判で…見つけてみせる……!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・コトダマ一覧

 

 

【モノパンファイル Ver.5)

…被害者:【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

 

 死体発見現場はエリア4、ホテルペンタゴンの『庭園』。死亡推定時刻は午後8時32分。死因は、銃弾を脳に受けたことによる失血死。外傷は無く、即死であった模様。

 

 

 

 

【崖を渡る犯人)

…事件直後の風切が犯人を追いかけた際に目撃した光景。橋も何も架かっていないはずなのに、犯人は崖を走って渡っていた。

 

 

 

 

【生徒達のアリバイ A)

…折木:庭園

 風切:食堂⇒庭園⇒ホテル外

 落合:ホテル外

 小早川:個室⇒庭園

 

 古家:?⇒庭園

 

 

 

 

【ホテルペンタゴンの見取り図)

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

【風切の銃弾)

…風切が犯人を足止めするために発砲したゴム弾。恐らく犯人に着弾したと思われるのだが、キンッ、というかん高い音だけを響かせるだけで、足止めは叶わなかった。

 

 

 

 

【不審者の動向)

…事件が起きる”1時間前(7時半頃)”から犯人は、個室、そしてフロントの窓から目撃されていた。外周を回って、俺達を観察していた可能性が高い。

 

 8時以降に行われた捜索にて、目撃されていたにもかかわらず見つけることは出来なかった。

 

 8時半に突然、庭園に現れた。

 

 犯人が俺を拳銃で狙った際に1発、風切が犯人を足止めするために1発、犯人が風切を足止めする際にもう1発と計3発の銃弾による応酬があった。

 

 

 

 

【個室の水たまり)

…個室のドア付近出来ていた小さな水たまり。水たまりはフロントまで点々と続いていた。今朝から夕方頃まではこんな痕跡は無かった。

 

 

 

 

 

【ジャンパーの水滴)

…俺、小早川、古家のジャンパー。それぞれには水滴や、濡れた感触は無く…外に持ち出された可能性は極めて低い。

 

 

 

 

 

【生徒達のアリバイ B)

…ニコラス:エリア1(炊事場エリア)⇒エリア4

 雨竜:エリア2(図書館)⇒エリア4

 反町:エリア3(お菓子の家)⇒エリア4

 贄波:エリア2(プール)⇒エリア2(美術館)

 雲居:エリア1(ペンタ湖)

 

 

 

 

【反町の証言)

…7時半ごろから8時半までの1時間、エリア3の噴水から出てくる水が、段々と少なくなっていたという。エリア3を出入りした時か様子がおかしかったため、もっと長い間その現象は続いてたかも知れない。

 

 

 

 

 

【湿った岩壁)

…崖を少し下った所の岩壁から、妙に湿った感触が感じられた。その冷たさと、しめりけから、ごく最近の痕跡である可能性が高い。

 

 

 

 

 

【崖の底の川)

…崖の底には川が流れていた。丁度エリアから入った方角から見て、右から左方向に。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

【氷の欠片)

…川の表面に流氷を人の大きさにしたような氷の塊が浮かんでいた。

 

 

 

 

【捨てられたジャンパー)

…川から突き出た岩に引っかかっていたジャンパー。

 

 

 

 

【故障したモノパンワイヤー)

…3日前に橋が無くなったと同時にに、一緒に故障し、使えなくなった。事件が発生した現在の時点でも使えない様子。

 

 

 

 

【7つ道具の行方)

…故障したモノパンワイヤーと既に使い切られた毒薬を除いて、借りられていたのは『モノパンワルサー』のみ。しかし、生徒達がエリア4に集まるまで少しラグがあったため…他の道具も使われている可能性がある。

 

 

 

 

【消えかけた湖)

…7時半から8時半までの1時間、湖の水が減り続けていた。気付くのも遅かったため、もっと前から減っていた可能性がある。

 

 

 

【水管理室のシステム)

…崖の両端に設けられた水門を開け閉めすることによって、底にある水量を調整する。さらに指定すれば、一定の時間の間だけ好きな量に調整できる。

 

 

 

 

【エリア4の気温)

…事件当時の気温は-12℃。水も体も速攻で凍ってしまいそうなほどの寒さであった。

 

 

【ジオ・ペンタゴンの全体図)

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生き残りメンバー:残り9人』

 

 

【超高校級の特待生】⇒【超高校級の不幸?】折木 公平(おれき こうへい)

【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)

【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)

【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)

【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)

【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)

【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)

【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)

【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)

 

 

『死亡者:計7人』

 

【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)

【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)

【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)

【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)

【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)

【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)

 

 




お疲れ様です。
水鳥ばんちょです。捜査編になります。
いつもご感想ありがとうございます、とても良い励みになります。




【コラム】
〇名前の由来コーナー 古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)編


作者から一言:ツッコミ役をとにかく頑張ってくれた良い人


 コンセプトは、優しい臆病者。とにかく元引きこもりだったのですが、コミュニケーション能力が思った以上にあり、最終的にはメンバーの緩和剤のような立場になっていました。
 名前の由来について。名字は割とすんなり決まって、『古畑』だったプロトタイプから…落語家みたいな口調だったので『林家(はやしや)』みたいな感じにしようと、最終的に『古家(ふるや)』となりました。
 名前の方は意外に難航して、最初は『呂都里下須(ろどりげす)』だったり、とにかく珍妙な名前にしようと迷走していました。でも古くさい名前にしようというコンセプトは揺るがなかったので、そのモチーフ求めるために、”忍たま乱太郎”の登場人物名とにらめっこして、最終的に『新坐ヱ門(しんざえもん)』と落ち着きました。
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