ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~   作:水鳥ばんちょ

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Chapter4 -非日常編- 18日目 裁判パート 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   【学級裁判】

 

 

    【開廷】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【裁判場】

 

 

「えー、破竹の勢いにて四度目とあいなりましたが…まず始めに学級裁判の簡単な説明から始めていきましょウ!」

 

 

「学級裁判では『誰が犯人か?』を議論し、その結果は、キミタチの投票により決定されまス」

 

 

「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおキ。ですが…もし間違った人物をクロとした場合は…」

 

 

「クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけがこの施設から出る『権利』が与えられまス!」

 

 

 恒例とも、お約束とも言える、裁判前のルール説明がこの場に木霊する。

 

 話すのはモノパンだけではあった。だけどその言葉に耳を傾けられるほど、俺の内心に余裕は無かった。その位、頭の中では、考えずにはいられないことがおびただしいくらいに飛び交っていたから。未来の不確かさに、不安を持たずにはいられなかったから。

 

 だから俺は、ただ黙って、目の前の苦々しい表情の生徒達の中心に視線を落とすことしか出来なかった。

 

 

「……うう、空気が重いです」

 

 

 そんな中で、この場の重々しさに耐えかねたように、小早川はそんな本音を漏らした。

 

 …きっと誰もがそう思っているのだろう。より正確に言うのなら…”犯人を除いた”、誰もが、その重さに表情を曇らせ、息を詰まらせているのだろう。

 

 当たり前の話しだ。半月以上も寝食を共にし、毎日のように顔を突き合わせた仲間が、今日殺されたのだから。

 

 朝衣が殺されたときも、鮫島が殺された時も、沼野が殺された時と同じような…そんなイヤな当たり前の話しだ。

 

 そして何よりも…

 

 

「しょうが無いさね…。今になっても、古家が殺された実感が湧かないんだからね」

 

 

 裁判の中で様々な役目を担ってきた古家が死んでしまった…。だからこそ、今回ばかりは超高校級の彼らの口から飛び出す、ふざけた言動は少なくなる

 

 

 …そう思っていたのだが。

 

 

「…僕もだよ。叶うのなら、彼を弔うためにレクイエムを一曲、この場で奏でたい所ではあった。だけど残念ながら、僕の相棒が彼と共にこの世を去ってしまった。友無くして、音は僕と共にあらず。この願いは、流れ星の如く儚く散ってしまったのさ」

 

「……はぁ、長すぎて途中で読むのを止めたくなるようなセリフです」

 

「そもそも、聞いてる、人は、いないんじゃないか、な?」

 

「ちなみに、流れ星というのは宇宙空間にある直径1ミリから数センチ程度の塵の粒が地球の大気と激しく衝突し、高温になって気化し、気化した塵の成分が光りを放つ現象のことで――――」

 

「……狂四郎、空気読んで。一応、隼人ですらまともに読んでるのに」

 

「な……!ぐぐぐ…ワタシなりにこの場を暖めようと図ったつもりだったのだがぁ…」

 

「どんな思考になったら、そのうざったいうんちくで場が和むと思ったんですか」

 

「正直鼻につくだけだね!キミ」

 

「存在そのものが鼻につく貴様にだけは言われたくないわぁ!!」

 

 

 想像以上に、彼は彼らしく平常運転の様子であった。これを儚むべきなのか…それとも安堵するべきなのか…凡人の俺には判断が付かなかった。

 

 

「…だけどまぁ、このままずっとため息をはき続け、傷を舐め合うのは……あまりにもナンセンス。折角こうやって、久しぶりに面と向かって話し合う機会を得たわけだから、生産的に真実を追い求めることでもしようじゃないか」

 

「趣味のような感覚で軽々と言い切るでない…!」

 

「でも…そうだ、ね…時間も限られてる、の、かもしれない、わけ、だし…今は、さ…事件に向き合ってみよ?」

 

「同感さね。ここはそもそもアイツの死を悼む葬式場じゃなくて、アイツを殺した犯人の何万もの罪を数える場所なんだからね」

 

「……知らないうちに犯人がおびただしい数の罪を重ねてない?」

 

 

 そうだ。反町の言う通り…ここは犯人が犯した事件の真実を追い求める場所なんだ。

 

 古家を殺した…重い重い罪の真実を、追求する場所なんだ。

 

 だからこそ、こんな所で手をこまねいているわけにはいかない。今俺達がするべきなのは、事件の全てを暴く、それに全力を尽くすことなのだから。

 

 

「でしたら!ここは私が、この場を取り仕切って参りましょう!クヨクヨしながらでは、進む会議も進みませんからね!」

 

「…そこでどうして小早川が取り仕切る流れになるんですか」

 

「やはり!”きゃらくたー”的にそう思ったのでございます!!」

 

「答えになってないですよ…」

 

 

 だというのに、また緩い茶番が始まって仕舞う……が、躓きながらも、話しは進んでいきそうな流れは感じ取れた。

 

 

「うん。じゃあ早速、だけ、ど。まず、議論しなきゃいけない、のは…古家くん、死、について…だよ、ね?」

 

「は、はい!!古家さんの死について…ですね!!ええとええと…はい!勿論、分かっておりますとも!まずはそこからですよね!!」

 

「既に目に見えてしどろもどろではないか…まったく、先が思いやられる。だがそうだな、今回の殺人事件、ワタシ達は知らない事が余りにも多すぎる。特に古家の死体近辺について、な」

 

 

 確かに、今回の事件の大きな特徴は、崖を隔てた”ホテル側”で事件が起こっているということにある。つまりそれは、ホテル側じゃ無い…”ペンタゴン側”の生徒達は事件の概要を詳しく理解できていないと言うこと。

 

 だとしたらまずは…。

 

 

「じゃあ不鮮明な部分をちょっとずつ埋めていくしかないってこったね……古家の死体とか、殺された前後で何か奇妙な点はなかったのかい?」

 

「……いや、アイツは今までの様な大がかりな仕掛けを使って殺されたわけじゃ無いし、殺しの隠蔽に小細工が施されたわけじゃない…ただ古家は、眉間を打ち抜かれて殺されただけだ」

 

「じゃあ…古家、くん、殺害後の、犯人の、動向、は?」

 

「犯人も、殺しの後はすぐに逃げ出して、それっきりだ」

 

「…うん、その場面なら私も見た」

 

「成程、小細工無し…か。つまり彼の死体そのもの。そして近辺には不審な点は皆無。そういうことだね?キミ達」

 

 

 確認する様に視線を向けるニコラス、俺達はその疑問の返答に頷き返した。

 

 その通り…古家は即死。たった1発の銃弾が彼を貫き、死に至らしめたのだ。

 

 今も、思い出すだけで自責の念に覆い尽くされそうになってしまうような…酷く苦い光景。だけどこの光景を目の前で目撃した俺だからこそ、古家の死の瞬間を、光景を証明できるのだ。

 

 

「ふむふむ……いや、ね。確認のために聞いておきたかったことだったから…こうやって改めてキミに問いを投げてみたのだよ…酷な記憶を思い出させて悪かったね」

 

「いや、問題無い。これから何度も思い出さなきゃなら無いことだからな」

 

「…そうかい!ではジャンジャカ聞いて、ジャンジャカ掘り下げていくとしようじゃないか!勿論、気分が悪くなったら、ドクター雨竜に相談したまえよ!」

 

「貴様には人の心という物が無いのかぁ!!それに、ワタシに全て丸投げしようとするなぁ!!」

 

「アンタは本当に…どんだけ面の皮が厚いんさね」

 

「……言っても無駄」

 

 

 ニコラスの厚かましさにあきれかえる生徒達。その飄々とした…というよりも、いつもより気の大きくなったようなその態度に俺は苦笑いを返すことしかできなかった。

 

 

「では、早速切り替えて、議論を進めていこうとしよう。次は、キミ達が目撃したという不審者がホテルに現れてから、ミスター古家が殺されるまでの事…そちらを振り返ってくれるかな?」

 

「そうですね!!まずは事件の大まかなあらましからの説明ですね!!」

 

 

 と、やっとこさと議論は事件の大まかな流れへ…中でもこの事件のキーキャラクターとも言うべき、不審者の話題にシフトしていく。

 

 

「でも不審者って…どういうことさね。また、2回目の事件の現れた紙袋マンが再登場ってことかい?」

 

 

 その話題に、初耳だと…反町は疑問を呈する。彼女だけでは無く、雨竜や雲居、果てには贄波も同じ態度を示していた。

 そういえば…不審者が現れたことについてはニコラス以外には報告してなかった事を、俺は思い出す。

 

 

「いや…確かに顔を隠している点は共通しているが、今回はジャンパーを着て、フードで顔を隠した人物が今回の事件現場であるエリア4のホテルに現れたんだ」

 

「これまた珍妙なヤツが出てきたもんですね。でも、紙袋を頭に被って、鮫島の服を着てたヤツよりはマシな感じですけど」

 

「…ううむ、そのジャンパー、というとエリアの入口で貸し出されてた例の黄色いブツのことで間違い無いか?」

 

「はい!いくつも掛かっていたアレですね!!!あのエリアはお寒うござんしたので!」

 

「そうだね。アタシ達も一着ずつ借りてたよ」

 

 

 あの極寒のエリアには持ってこいの厚手で、しかも顔をキチンと防御できるように、顔を覆いつくせるほど広いフードも付いたジャンパー。

 

 やはり反町達も、同様にそのジャンパーを借りていたみたいだった。

 

 ということは、借りなかった人間は…特殊な体質というか、環境で育った風切と落合くらい…ということになる。

 

 

「そう…吹きすさぶ吹雪の中で…僕達はまるで霧の様な、黄金の衣を纏った正体不明の存在と隣り合わせていたのさ」

 

「成程、そのジャンパーを纏った正体不明の輩というのは…やはり」

 

「ああ、犯人と見て間違い無い」

 

 

 実際にソイツは、フードで顔を隠し、自分が誰なのか分からないようにしたまま、目の前で古家を殺したのだ…間違えようが無い。

 

 

「…その不審者を、新坐ヱ門が殺害される1時間前に隼人、そして殺された本人が個室で目撃してる」

 

「私も”ふろんと”にて!!」

 

 

 そして風切と小早川の両名が、あのとき食堂で聞いた不審者の目撃証言を投下していく。…しかし、その証言を聞いた雲居は、余り合点がいかないように表情をくゆらせ”うーん”と唸る。

 

 

「その話しをするなら、まず個室やらフロントやらの場所がどういう位置関係なのか教えて欲しいです。そもそもあたし達はホテルの内装について、ふんわり程度しか知らないんですから」

 

「折木からある程度の地理は聞かされてるけど…どうにも不鮮明さね」

 

 

 確かに、雲居達の言うとおり今回の事件現場はホテル側に居た5人は把握できているが…ペンタゴン組は殆ど初見。

 

 朝と夜の定期連絡の時に、”ホテルがどういう形をしているのか”、そして”どこにどの部屋があるのか”は、一応報告しているのだが…。

 

 やはりここは、事件現場であるホテルの地図を提出し、地理を明瞭にしていく他無いみたいだ。

 

 

 

 

【コトダマセレクト】

 

 

【ホテルペンタゴンの見取り図)

 

 

「これだっ…!」

 

 

 

 

 

「…俺達の居たホテルの全体は、こんな風になっている」

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「お、ミスター折木特有の、几帳面なお絵かきタイム。待ってましたよっ…てね」

 

「変に茶化すな……このホテルの地図と、連絡会の時に話した内容をすりあわせれば、整合性は取れるはずだ」

 

「う~む、確かに、鮮明にはなった。鮮明にはなったついでに、1つ質問なのだが…この貴様らの名前が刻まれている場所は…個室…という認識で良いのか?」

 

「ああ大丈夫だ。ちなみに、俺達の名前の書かれていない箇所は、全て空きの個室だ」

 

「はは!こう俯瞰してみると、随分と大勢の宿泊を想定してるような内装だね!キミ」

 

「その通リ!全10名の収容を可能とするだけでなく、娯楽室や医務室と言った充実した設備に加え、核爆弾が落ちても決して壊れないシェルター性能、さらには無限に供給される食糧とガスに電気…外が極寒である以外はほぼ完璧な施設と言って良いでしょウ!!」

 

「最後の要素で全部台無しですね」

 

 

 …施設のマーケティングについては置いておくとして。

 

 この地図を踏まえて、小早川と落合、そして古家3人が犯人を目撃した部屋にはそれぞれ共通点がある。

 

 それは…

 

 

 

 

 

 

 

【選択肢セレクト】

 

 

1.トイレがある

 

 

2.外側を見られる

 

 

3.使われていない

 

 

 

 

A.外側を見られる

 

 

 

「そうかっ……!」

 

 

 

 

 

 

 

「…小早川達が、犯人を目撃したそれぞれの場所…それらに共通して言えるのは、ホテルの”外側”を見られるという事だ」

 

「えっ!!そうなんですか!!」

 

「…いやお前は肯定する側だろ」

 

 

 見た本人が1番驚いてたら世話無いだろうに。…いやでも、彼女とはあまり捜査について話せていなかったから…当然の反応と言えば当然か。

 

 

「でも外側って…そのそれぞれの部屋には窓でも備え付けられてたんですか?」

 

「ええと…ええと……あっ!!はい!個室と、そしてフロントの出入り口のドアに窓がついておりました!!」

 

「僕ら過去にいたはずの外側の世界を、ガラス越しに見ることが出来る。誰も知らないようで、誰かが知っている。まるで風のようだね」

 

「…話しの前後関係が壊滅的さね」

 

 

 とにかく…外側に窓があるということ。そして犯人がその窓から目撃されたということを合わせて考えれば…。

 

 

「ホテルの位置情報を顧みてみると…その犯人はホテルの外周を周っていた…ということになるのかな?」

 

 

 ニコラスの結論に俺は頷いた。

 

 

「でも、どうして…そんな、回りくどい、こと、を…?」

 

 

 そして続いて湧き出てくる疑問は、何故ホテルの外を嗅ぎ回っていたのか、その理由。それについても、俺の中である程度の当たりはついていた。

 

 

「理由までは犯人にしか分からないが…俺達の動き、それも誰が”どの部屋に居るのか”を確認していた可能性はある。そうだよな?小早川」

 

「は、はい!そういう、所謂監視するような視線を感じておりました!」

 

「それは当たり前のようで、当たり前では無い。僕自身も、その当たり前をこの心で感じていたかも知れない」

 

「…で、ですが…どうしたものかと私がドアに近づくと、その方はすたこらと逃げて仕舞いました」

 

 

 真意までは分からずとも、小早川の証言と、落合の証言…?を組み合わせれば…犯人は何らかの目的を持って俺達を見ていた可能性は高い。

 

 

「だとしても、何で態々そんな目立つ行動をしてるのか腑に落ちないですね……そんな怪しんでくださいと言わんばかりの不審者を見てるのに…あんたらはそいつを追いかけなかったんですか?」

 

「うう、お恥ずかしながら…その方を私は折木さん達だと思ってしまったのです。あの”じゃんぱー”なるものは、折木さん達もお持ちになっておりましたので」

 

「僕も、そして今は亡き古家君も同じ心を持っていたさ。もしかしたら、誰かが外側の世界で何かやるべき事を為していた…そう勝手に思ってしまったのさ」

 

「ああ成程、そういう意味かい」

 

「…いや落合の言ってることの意味分かるんですか?」

 

「馬鹿!分かったふりしてるんさね!言わせるんじゃ無いよ!」

 

 

 …それを大声で言ってしまってはもはや無意味なのでは無いだろうか。と、何となく悲しげに空を見つめる落合を横目に、内心つっこんだ。

 

 

「ん?んんんん?…ちょっと待ちたまえよ。キミ達何を納得しているんだい?もしかしたら…

 

 

 ――――――本当にその彼らだったのかも知れないじゃないか!」

 

 

 ニコラスによる、その突然の指摘、俺はハッ、と驚いた。

 

 何を言っているんだ?…そう思わず口に出してしまいそうな、瞬間的な驚きだった。

 

 

 

「どどどどど、ど、どういう意味でございますか!!」

 

「そのまんまの意味さ、キミ。証言するキミも含めて、ホテル内に居た生徒がその不審者だったんだろう。つまりボクはそう言いたいのさ」

 

「ちょ、ちょっと待ちな!梓葉達が自作自演をしてるとでも思っているかい!?」

 

「え?…じさく…じえ…?」

 

「そうとも考えられる…とボクはそう言っているのさ。イヤむしろ高いとも言えるかな?だって考えてみたまえよ。今回の事件は”ホテル側”で起きているんだぜ?」

 

「……だから?」

 

「だからこそ、ホテル側に居る人間がその不審者であると考えるのがセオリーということさ。それとも何かな……ホテル側に彼ら以外の誰かが、ペンタゴン側の誰かが存在しうる…とでも?」

 

 

 ニコラスのその言葉に、俺は内心焦る。だけど、そう思われても無理は無いと、同時に理解もした。

 

 何故なら、俺達が集まったのは…不審者を見かけた”30分後”。

 

 俺達5人の中で、誰かが不審者の恰好をして、数人の目の前に現れ、そして素知らぬ顔で俺達に合流していたのではないか、そう疑われても無理の無い時間の余裕が、実際にあったのだから。

 

 そして何よりも俺達もそのジャンパーをいくつも所持している事が、その疑いに拍車を掛けている。

 

 だからこそ…ホテル側じゃない居残り組だった生徒達は”そうだな”と肯定するように頷いていた。

 

 

「…まっ、そうなるですよね。ジャンパーは誰でも借りられたですし…むしろ崖の事もあるですから…ホテル側の自作自演が濃厚ですよね」

 

「じゃあ何でホテルの外側をまわる必要がある。犯人が俺達の中に居るのなら、そんな混乱を招くようなことを何故する必要があるんだ」

 

「…そうですよ!態々姿を隠すというのは、それはすなわち!!その不審者が見られてはいけないやましい姿をしているからのはずです!」

 

「や、やましい姿かどうかは意味が分からないけど…自分がその場に居ちゃいけない人間だからこそ、姿を隠す必要があった…って言うんだったら説得力があるさね」

 

「…そう。素直の言うとおり。だから、犯人はホテル側には居ない。3人の証言は信頼できる」

 

 

 だけど俺達は、そのまま納得させまいと、俺達は応戦する。小早川が疑われている事もあってか、反町も加勢してくれているようだった。

 

 だけど…

 

 

「いやいや、その程度でそちら側に犯人がいないと決めつけるのは良くないぜ?キミ達」

 

「……うむ、そうだな。先ほどの貴様らの反論を返すのなら…見るからに怪しい恰好で敢えて目撃されることそのものが目的だったとも考えられる」

 

「目撃、される、こと、が?」

 

「ああ…目撃され、そして集まった所で自分も外には出ていないと言えば、もしかしたらホテルに不審な人物がいるかも知れないと、大きな混乱が生じる」

 

「混乱させること事態が犯人の目的ってことですね。…ちなみに、犯人の存在を認知したとき、あんたらは実際どんな様子だったんですか?」

 

「君達の想像通りさ。僕達は、荒れ狂う波のように激しく狼狽し…そして、霞の如き存在を見つけるために…施設の中でバラバラの旅路についたのさ」

 

「…は、隼人、そんなペラペラと」

 

 

 と横から、落合が驚くほど正直に、当時の出来事をくどいながらも口にした。風切は焦ったように、落合に待ったを掛けた。

 

 

「正直者が馬鹿を見ると世界は、大人達は言うが、僕はそうは思わない。何故なら正直者こそが、世界の素晴らしさを、この身で、肌で、1番に理解できるからなのさ。だから、ここは素直さが1番、そう、何事も正直であることが1番なんだよ、風切さん」

 

「……ゴメン、やっぱり意味が分からない」

 

「……僕は悲しい」

 

 

 …取りあえずこのやりとりは放っておくとして。確かに、やれ不審人物の存在を認識したとき…黒幕だ、外部からの侵入者だ、と滑稽に踊っていたのは事実だ。

 

 ここで嘘をつくことに意味は無い。

 

 それに雨竜達の言い分も分かる。確かに、その混乱そのものが目的だとしたら…俺達の中の誰かが仕組んだ可能性も…ゼロとは言い切れなくなる。

 

 

「それでも、私達は私達じゃ無いどなたかを見たんです!それは間違いありません!」

 

「ははっ!見ていられない必死さだね。それに実に盲目だ。考えてもみたまえよ?犯人は人1人、それも仲間であったはずのミスター古家を殺している。つまり許されざる一線を超えてしまっている…言わばランナーズハイのような心理に陥っている。例え裏切りになってしまおうと、味方すらも利用し尽くすのが、それが人の生き意地というやつさ」

 

 

 小早川の信じたい気持ちもよく分かるが、ニコラスの言う事も…もっともだ。犯人は、小早川が思うような綺麗な人間では決して無い。俺達をだまし、利用し、欺き、そして生き残ろうと…見えない裏切りを画策しているはず人間なのだ。

 

 もしもその犯行がバレてしまったら…犯人に命は無いのだから。犯人は今しの瀬戸際に立たされているのだから。

 

 だからこそ、俺達の誰かを盲目に信じることは…自分たちの命を危険にさらすことになる。

 

 そんなことはダメだと。ニコラスは、目の前の出来事にとらわれず、あらゆる可能性を考えろ…そして追求しろ…そう訴えかけている。

 

 

 そう思えて、仕方なかった。

 

 

「確かに、誰が犯人かは大事だ、し…それに、どっちの側の、人間の中に、居るのか、も。だけど、一々、誰なら、出来るか、を議論してたら、キリが無いんじゃない、かな?どっちの可能性も、ある…そう考えながら話しを進めていか、ない?」

 

 

 だけど……今考えなければならないのは。ソレじゃない。そう、まだ追求するべき”時”じゃないのだ。

 

 贄波もまた、訴えかけるように…そう言葉を呈した。

 

 

「うん、そうだね!ではさっさと話しを進めてしまおうじゃないか!」

 

 

 ――――と、贄波の言葉に、まるで人格が変わったように態度を翻すニコラス。俺だけじゃ無く、殆どの生徒がずっこけかけた。

 

 

「き、貴様が撒いたタネであろうが!何を勝手に完結しているのだ!!」

 

「そうですよ!今犯人を追求する場面だったんじゃないんですか!?」

 

「ミス贄波の言うことも最もだと思ったからさ!それに展開が早すぎるともね!!」

 

「意味分かりません!!じゃあ先ほどまでの私の焦りは何だったんですか!?」

 

「所謂リアクション芸の一つさ、キミ!!」

 

「くっそ、言いたいこと言って…梓葉まで手玉にとって…本気でどついてやりたい気分さね…!」

 

 

 その急転直下の態度の変貌に、ホテル側からもペンタゴン側からも反感を買っている様子のニコラス。

 

 だけど問題はフラットに見るべき。言い方はどうあれ、これが彼なりのスタンスだと、さっきの言動からでも理解できた。だったら俺も、その気持ちを踏みにじる訳にはいかない。

 

 だからこそ俺は、その流れに乗っていくしか無い。

 

 

「ああそうだ、今は誰が犯人なのかよりも…これまでの行動のまとめだ。話しを戻すぞ?…犯人は、俺達に目撃され、そしてその30分後に食堂に集まった俺達に、その存在を改めて認知された」

 

「確かめ合った僕達は、ね…それぞれがそれぞれの未来への道を歩んでいったのさ」

 

「…うん…でも見つからなかったからまた集合して、また解散して…バラバラに捜索を再開した」

 

「ふん、見つからなかったか。先ほどの可能性を鑑みてみれば、違和感しか感じんな」

 

「まったくです。もっと簡単に言えば、あんた達の中に犯人が居るなら見つけられなくて当然…という見方が濃厚です」

 

「うう…絶対に、私達以外の方がいたはずなのに…」

 

「……でも反論しきる証拠も無い…結構劣勢な感じ」

 

 

 そう、あのときの俺達は動乱の最中であった。つまり平静な状態では無かった。だからこそあの時のことをつぶさに覚えているわけじゃない。

 

 だけど言えるのは…ホテル側には、確実に俺達以外の正体不明の存在が潜んでいた。

 

 その存在を証明するために、俺は今まで証拠も集めてきたんだ。ああやって、ふざけながらも両方の可能性を追求しようとしているニコラスと共に、懸命にかき集めた証拠を。

 

 それを、過程も何も無くすっ飛ばして提出しても…理解を得られる物も得られない。

 

 今は耐え忍ぶ時。順序を踏んで、基礎を固めていく時なんだ。

 

 だからこそ次の…例の”銃撃戦”の話しを、進めていかなければならない。

 

 たとえ疑われながらでも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ノンストップ議論】    【開始】

 

 

 

 

 

 

「解散した後は…」

 

「公平は庭園で犯人と鉢合わせ…」

 

「犯人は持ってた【拳銃を発砲した】」

 

 

 

   折木くん、が、狙われた、ってこと…?

 

ではその弾が古家に…

 

       無念さね…

 

 

 

「ミスター折木からの話だと…」

 

「すぐに犯人は『逃げ出した』と聞いているよ!」

 

 

 

 吹雪舞い散る世界の中で

 

     誰かは僕らに背を向けたのさ

 

 だからセリフが一々長いんですよ…

 

 

 

「…それを見た私は、犯人を【追いかけた】」

 

 

 

 折木を残してかい?

 

    いいえ!そんなことはありません!

 

 

 

「僕はその追いすがられた犯人と『交錯し』…」

 

「この身に消え難い傷を残した」

 

 

 

 どういうことですか?

 

     …撃たれたってこと

 

 あの傷はそういう意味だったのか

 

 

 

「その時の【1発目の銃声】を聞いた私は…」

 

「すぐにホテルから…」

 

「庭園に参じたのでございます!」

 

 

 

 

 

 

 

【不審者の動向)⇒【1発目の銃声】

 

 

 

「…それは違うぞ!」

 

 

 

 【BREAK!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件の流れのまとめをしている途中、聞き逃せない、小早川の”その発言”に、俺は耳を疑った。

 

 

「小早川…?何言ってるんだ?」

 

「えっ…えっえっえっ?…あの、何か間違いが…?」

 

 

 そして、俺の耳に疑われた彼女は、何かしでかしてしまったのだろうか…と分かりやすいくらいに動揺していた。

 

 

「小早川、あのとき、エリア4で銃弾が飛び交ったのは…”3回”。つまり落合が撃たれた時の銃声は3回目のものなんだ」

 

「さ…さんかい…め?」

 

 

 前にまとめたときと同じように改めて説明しているはずなのに、なお首を傾げられる。…やはり、話しの何処かで齟齬があるとしか思えないすれ違いのように思えた。

 

 

「…犯人が放った1発、私が撃った1発、そして犯人が隼人を撃った1発。計3発」

 

「ちょ、ちょっとタンマ…風切、アンタも発砲したのかい?あのライフルで?」

 

「…ゴム弾だから問題無い」

 

「問題、ないの、かな?」

 

 

 色々言いたいことがあるだろうが、実際にけが人は出なかったので、今は置いておくとして。

 

 

「あ、あれ?そ、そうでしたったっけ?………あっ…そ、そうでしたよね」

 

「…ミス小早川。もしかしたらキミは…状況をがまだ飲み込めていないんじゃないかい?それとも何かな?…聞かれたら困ることを隠していたりするのかな?」

 

 

 されでも理解できていないと確信できる彼女の動揺ぶりに、ニコラスは冷静に…何に疑念を持っているのか…それとも後ろ暗いことでもあるのか、素早く追求していった。

 

 

「まさか…貴様が犯人だというのか!!だから嘘をついて議論の流れを誤魔化そうと…」

 

「そんな高度な”てくにっく”、私にできるとお思いですか!!」

 

「いやどう考えても無理ですね」

 

「そうだね!キミ」

 

「梓葉はドの付くほど不器用だからねえ…残念な話しだけど」

 

「……こう面と向かって仰られると…相当に来る物がございます」

 

 

 

 同調するようにうなずき合う俺達を見て、小早川は相当堪えたのか…ずーんと暗い影を落としていた。まぁ、それはある意味信頼されているとも取れる。だからこそ、彼女は本当に本気で1発と勘違いしている可能性が高いとも言えるのだ。

 

 

 

「んで?結局の所どうなんだい?アンタは、今何を聞かれていて、そしてどういう状況なのか理解できていたのかい?」

 

「う…うう……お、お恥ずかしながら…捜査の時に折木さんとお話を振り返っても…どうしてもよくわからなくて。でもこんな事で時間を割いてしまうのもどうかっと思って…つい頷いてしまいました」

 

「…そういうことか」

 

 

 

 …だからあのとき反応がイマイチだったのか。だとしたら、もう少し細かい所まで話し合わなかった俺の責任でもあるな。

 

 

 

「ふむ…では質問の内容を少しイジって聞いてみよう。勿論何を答えれば良いのか明確にね…ミス小早川。どうしてミスター落合が撃たれた時の銃声を1発目だと思ったんだい?」

 

 

 ニコラスは、具体的に…小早川の勘違いの理由を聞いていく。

 

 

「き…”聞こえなかった”のでございます」

 

「…聞こえなかった?」

 

 

 聞こえなかったって…その轟音の応酬を?

 

 思いも寄らない回答に、思わずオウム返しにそう質問を返してしまった。

 

 

「何言ってるですか。ホテルの中で発砲があったんですから…聞こえないわけないじゃないですか」

 

「でも、本当に聞こえなかったんです!!パーンともスーンとも!」

 

「す…スーン、は、部門違い、じゃない、かな?」

 

 

 だけど…素直な彼女がここまで言い切っているということは。本当に銃声を耳にしていなかったのかもしれない。だとしたら…聞こえなかった理由があるはずだ。

 

 

「待てよ…?」

 

 

 俺はハッと思い出し、そう言葉を溢す。

 

 

 ――――そういえば…小早川が犯人捜索の時にいた居場所って…

 

 

 俺は、手元にある生徒達の居場所が記された”記録”を掘り起こした。

 

 

 

 

 

 

 

【コトダマセレクト】

 

 

 

【生徒達のアリバイ A)

 

 

 

「これか…っ!」

 

 

 

 

 

「…確か、お前は事件当時、”個室”を調べてたんだよな?」

 

「え?…あ、はい!個室の中に犯人が潜んでいるのでは無いかと、コソコソと」

 

「もしかして…その部屋を出てすぐに銃声が聞こえた、とかじゃないか?」

 

「そ、そうです!まさにその通りです!!どうしてそれを…」

 

「…どういう意味ですか?折木」

 

 

 質問の意図が分からないと、雲居は俺に答えを求める。

 

 それは、小早川の耳に銃声が届かなかった理由は…。個室に施された”ある特徴”の所為だったはずだ。

 

 あの個室は――――

 

 

 

 

 

【選択肢セレクト】

 

 

 

1.壁が分厚かった

 

2.防音加工がされていた

 

3.超音波は響いていた

 

 

 

A.防音加工がされていた

 

 

「分かったぞっ…!」

 

 

 

 

 

 

「あのホテルの個室は全て、防音加工が施されている…だから小早川の耳には、銃声が聞こえなかったんだ」

 

 

 どうして個室に居たら銃声が聞こえないのか…先ほどの雲居の質問の答えを、俺は示していく。ソレを聞いてなのか、成程と、合点をいかせた声がチラホラと。

 

 

「ほう、あのホテルにはそんなコーティングが施されていたのか」

 

「…うん、されてた。もしされてなかったら、隼人のギターの音がずっとホテル中に響いていることになる」

 

「あ!そうですよね!!私にも覚えがございます!!音が聞こえているときは個室じゃ無い何処かで、聞こえているときは部屋の外に落合さんは居るんだなって…勝手に話の肴にしていたのを覚えております!!」

 

「おや?何か地味に褒められた気がしたんだけど…これは風のささやき声かな?」

 

「……どういう耳してるんですか、あんたは」

 

 

 その話しについては、俺にも覚えがあった。古家と話しているとき、突然弦の音が聞こえて、それで”アイツまた外でギター弾いてるのか”…という具合に笑い合ったことがあった。

 

 

「だったら…小早川が銃声を耳にしていなかったのも頷けるですね。個室を捜索していたから、もう2発の銃声を耳にしていなかったことになるですから」

 

 

 さらに言えば、落合が犯人に撃たれた時の音が彼女が最初に耳にした銃声だったのだろう。もし一発目を耳にしていたなら、真っ先に…それこそ風切と同じタイミングで庭園に現れていたはずだからな。

 

 

「じゃあ彼女が犯人かもしれないという可能性は少し薄くなったね!犯人はホテルの庭園に居たわけだから、個室に居た彼女と位置関係が矛盾する。いやぁ、ボクも最初っからそう思ってたさ!キミィ」

 

「急に態度を変えやがって…あ、アンタってヤツは…アンタってヤツは……」ワナワナ

 

「ま、まぁまぁここはいったん落ち着いて…私は特に気にしておりませんから…」

 

 

 ニコラスの調子の良さに、小早川を庇っていた反町の堪忍袋が今にもはち切れそうになっていた。気持ちは分かるが…その程度でイラついていたら、血管がいくつ在っても足りない。俺は今までで、そう学んできた。

 

 

「…でも少しだけ、僕も腑に落ちないところがあるような気がするよ」

 

「ふぇ…?」

 

 

 すると、落合が何を思ったのかそんな疑問を返してきた。珍しいこともあるものだと、俺は彼の言う言葉を、静かに待った。

 

 

「…どういうこと?隼人」

 

「僕は覚えているのさ。2回目の再会を果たした時に発した、小早川さんの言葉を」

 

 

 

 

 

『見つかったか?』

 

『…食堂以外の全部の部屋を探したみたんだけど…ねぇ?』

 

『…ランドリーにも、中庭にも、医務室にも、娯楽室にも、フロントにも……どこにも居なかった』

 

『個室や、外は?』

 

『”空いてる部屋は全部見てみましたけど…”』

 

 

 

 

 

 

「…君は、集まる寸前まで…まるで個室を見ていたという口ぶりだった。だけどどうして…君は今個室を捜索し…そして歌っていたのか。…好奇心の心がうずいて仕方ない。どうか、この気持ちを分かっておくれ」

 

「…ほ、本当だ。良く覚えてる」

 

「あ…うう…そんなこと…言ってた様な…言ってなかったような…」

 

「梓葉…アンタ結構穴だらけな動きしてたみたいだねえ…」

 

 

 確かに、司会進行を謳うには…余りにも不安定な発言と行動に思えた。この始末で、結局犯人と疑われて無いのが奇跡としか言い様がない。

 

 

「確かにね。うん、ミスター落合にしてはもっともな疑問だ。既に隈無く調べてるところを再び探す必要は無い…どうにも違和感がある」

 

「それは梓葉が…ええと…そうさね……そうだ!!何か、個室に気になる点がまだあった。…解散後そう考えたんじゃ無いのかい?」

 

「は、はい!!それに近いような…でも…遠いいような………」

 

「……?」

 

 

 反町の擁護に…小早川は再び濁したように肯定する。あながち的外れでは無さそうなのだが…どうやら…そう単純な話しでは無さそうだ。

 

 

「ふむ。だったらだ、ミス小早川。その話し、もう少し…詳しく聞かせてもらえるかな?」

 

「え…あ、はい。…確かに落合さんが仰ったとおり、私は犯人を見つけるために解散した後、誰よりも先に個室を調べておりました。ですが…2回目の時は私は気になることがございまして…また個室を………少しだけ”違い”がございまして」

 

 

 …だけど、少し違っているような?

 

 

 俺はこの言葉の小早川の真意を探るため。彼女の言葉を溢さないように、耳を深く傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ノンストップ議論】    【開始】

 

 

 

「私は2回目の解散後…」

 

「『自分の個室』を捜索していたのです」

 

 

 

 自分の部屋…?

 

     何故そんな場所を…

 

 お手洗い、とか?

 

 

 

「ほう、随分と興味深い場所へ赴いたんだね」

 

「その心をお聞きしても宜しいかな?」

 

 

 

 確かに、興味深いニュアンスが聞き取れたよ

 

    ……?どういうこと?

 

 

 

「あの、本当にふと思ったことであって…」

 

「大層な理由では無いのですけど…」

 

「最初は犯人が見当たらないと騒いで…」

 

「『隅々まで探した』のに~、と皆さんは仰られていたのですが…」

 

「そういえば、自分の部屋を見てなかったな~」

 

「なんて、ふと思って…」

 

 

 

 …そういえば調べてなかった

 

    でもそんなに誰でも出入りしやすい場所なのかい?

 

 …いいや、鍵が賭けられるはず…だから

 

    誰も僕の世界に、立ち入ることはできないさ…

 

 あんたが答えるのかい…

 

 

 

「成程!確かに盲点とも言える隠れ場所だ!」

 

「では、その捜査の結果はどうだったんだい?」

 

「『侵入された痕跡』らしきものは…」

 

「キミの部屋にはあったのかい?」

 

 

 

 確かに、気になる、ね?

 

    どうだったのだ?

 

 ここは重要な部分ですね

 

 

「うう…残念ながら…」

 

「【何も見つかりません】でした…」

 

 

 

 

 

 

 

【個室の水たまり)⇒『侵入された痕跡』

 

 

 

「まさか……っ!」

 

 

 

 【BREAK!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「あの、折木…さん?」

 

 

 俺は彼女が言った、自室の捜索の件で

 

 ――――”気付いた事”があった

 

 それに気付いた瞬間、まるで冷たく感電してしまったような、ビリビリとした寒気が背筋に走った。

 

 その押し黙る俺の様子に気付いたのか、発起人である小早川がそんな言葉を掛けた。

 

 

「そうだ…”痕跡”はあったんだ。個室の…それも”使われている部屋”に」

 

「…え、でも私の部屋にはそんな跡のようなものは…」

 

 

 そのつぶやきに、小早川は何か勘違いしているのでは無いかと否定が入る。

 

 だけど、それも違う。つまり俺が言いたいのは…。

 

 

「いや違う……お前の部屋にじゃない…

 

 

 

 

 ――――”俺の部屋”に痕跡があったんだ」

 

 

 

 そう。小早川でも古家でも無い…俺の部屋に。

 

 

「折木、くん、の?」

 

「ほ、本当ですか!!どど、ど、どんな違和感だったんですか?是非ともお聞かせ下さい!!」

 

 

 一体どういうことなのか。未だ理解が及ばないように、生徒達は、しかめた表情をそのままに、いくつもの視線が俺に集められた。

 

 俺が部屋に入ったときに感じた…あの違和感。俺が部屋を出る前には無かった…あの形跡。

 

 

「――――――”水たまり”」

 

「水、たま、り…?」

 

「…?水たまりがどうしたって言うですか?」

 

「…俺が捜査時間の際に自分の部屋を調べていたときの話しだ。俺の部屋の中のドア付近に…知らないうちに水たまりが出来ていた」

 

「…知らない?随分不思議な口ぶりだね?それは、キミが外に出ていて。そして部屋に戻った時に付いた雪が落ちて、そして溶けた跡じゃないのかい?」

 

「無い。俺はその日は、外にも中庭に出ていなかった。だから、足に雪が付く機会が無かった」

 

「…一度も?じゃあどうして公平の部屋に?」

 

 

 答えは簡単だ。それは、俺が部屋を出入りしていただけでは絶対に付かない形跡なのだから。

 

 

 そう…つまり…俺の部屋には

 

 

 

 

 

【選択肢セレクト】

 

 

1.雨漏りがあった

 

2.漏水があった

 

3.誰かがいた

 

 

A.誰かが居た

 

 

「これしか…ないっ…!」

 

 

 

 

 

 

「簡単だ、俺の個室には――――――俺じゃ無い、誰かがいたんだ。それも、つい最近まで、足に雪が付いてしまうような、今まで外に居た人間が」

 

「…今まで?」

 

「それ、に、誰かって…もしかし、て…」

 

 

 

 贄波の察したような表情を見て、俺は頷いた。

 

 …少し、奇妙な間が流れる。

 

 ビビってしまいそうなほどの静けさ。誰かの、唾を飲み込む音がハッキリと聞こえた気がした。

 

 

 

「――――犯人が。…この事件の犯人が潜んでいた。その可能性が高い」

 

 

 

 その言葉を発した途端、波紋が広がった。当然の反応だ。俺の部屋に、犯人がいたかも知れないなんて…驚くなと言う方が可笑しい。

 

 

 

「は、犯人が…!?」

 

「本気で言ってるですか?」

 

「だだ、だが…何故貴様の部屋に!?」

 

 

 

 狼狽しながらも発せられる雨竜の疑問…それもまた答えるのは簡単だった。

 

 

 目的はただ一つ。

 

 

 犯人は、ある人物の命を狙っていたから…だから俺の部屋に忍び込んでいた。

 

 

 

 

 

 その、狙っていた人物は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【怪しい人物を指定しろ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⇒オレキ コウヘイ

 

 

 

 

「お前しか、いない……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――俺の命を狙っていたから。だから犯人は、俺の部屋に潜んでいたんだ」

 

 

 かも知れないなんて覚束ない物では無く、大きな確信を持って…俺はそう発した。生徒達は再び、大きな波紋を広げた。

 

 

「折木さんを!?」

 

「な、何故そう言い切れるのだ?」

 

「…偶然部屋に潜んでいただけじゃないの?」

 

 

 いや、犯人は確実に俺を狙っていた。

 

 部屋に潜んでいたからではなく、犯人のコレまでの行動から見えた、確かな根拠。あのとき、古家が殺害される直前の…犯人の”あの行動”だ。

 

 

「いや理由は他にもある。古家が撃たれる直前…俺の目の前に犯人が忽然と現れたとき…そいつは拳銃で――――俺を狙っていた」

 

「折木、くん、を?」

 

「それに加えて。古家を殺害した直後も、犯人はもう一度、俺に向けて発砲しようとした」

 

「随分と執拗なマネさね…」

 

「確かにな。であれば…貴様を狙っていたと言えなくも無いか」

 

「…うん、その状況なら私も見てた。確かに公平を狙ってた。私のライフルで牽制しなかったら…多分…公平は…」

 

 

 そう…確実に俺も撃たれていた。

 

 その場で直に対峙したからこそ分かる、生の瀬戸際の疑似体験…。そう実感させられる程の、異様な殺意を、犯人は俺に向けていたのだ。

 

 

「てことは、本当に犯人はあんたを殺すために…部屋にですか?」

 

「……」コクリ

 

「成程。その話しが事実なら…犯人がキミの部屋に潜んでいた理由も頷けるね」

 

「…事実”なら”じゃない。コレは、あのとき、あの場所で、本当にあった出来事」

 

 

 風切のその強気な姿勢に…ニコラスもまた…納得せざる終えないね、と肩で息を吐いた。

 

 

「だとしたら、犯人は折木の部屋だと確信を持って…その部屋に潜んでということになるのだよな?」

 

「そうだな…俺を狙っていた事を考えれば。間違い無く、迷いは無かったはずだ。それに…」

 

「それ、に…?」

 

「庭園で…俺と鉢合わせたことを考えれば…」

 

 

 

 あのとき、廊下で俺達が再度集合をしたとき…それぞれがどの場所に探索に行くのか…その話をしていた。

 

 それも――――俺の部屋の前の廊下で

 

 

「……盗み聞きしてたってこと?」

 

「ああ」

 

 

 

 廊下には窓も無く、ホテルの構造上、俺がどこ居るのか…それを俯瞰してみる事は不可能だった。

 

 もし盗み聞きをしていたと考えれば…あそこまですんなりと鉢合わせた理由も頷ける。

 

 

 

「う~む」

 

 

「まだ曖昧な部分はあるか?」

 

 

「そうだな。極めて素朴な疑問だ……そもそも、何故折木がその部屋の主だと、犯人は知っていたのだ?」

 

 

 

 雨竜からのその疑問に…数人の生徒がハッと、息を呑む。そういえば、と根本的な事を聞かれた気分だった。

 

 

「それは勿論!ホテル側の誰かの中に犯人がいるからではないのかい?ホテル内の生徒なら、地理を良く理解しているし、ターゲットの命を狙うために迅速に行動できるからね」

 

 

 その発言から。あくまで、ニコラスは俺達の中に犯人がいるというスタンスは崩すことはないようだった。しかし…。

 

 

「無難に考えるとそうですけど…部屋の割り振り云々となると…そうともいかないんじゃないですか?」

 

「ええ?どういうことですか?」

 

「朝と夜の定期連絡の時の事ですよ。間取りばかりはさっき初めて聞いたですけど…部屋の話しは折木から何度か聞いてたです」

 

 

 確かに、部屋の調査方向のタメ、ニコラス達に行き渡るような情報は渡した。ただ言葉だけの報告だったために、正確性に難はあった。だからこそ、先ほど提示した地図で補填したとも言えるが。

 

 

「実際、個室の話題はこっちでも何度か出てきてたねえ」

 

「そういえばそんなこともあったね!中でもミスター折木は随分と離れた場所の個室を選んだね!とか、色々笑い話にしていたのを覚えているよ!」

 

 

 どこが笑い話になるんだ、という言葉はグッと飲み込んだ。

 

 

「でも、これ、で、犯人が折木くん、の部屋を、知っていた、理由は、分かった、ね?」

 

 

 そう、贄波の言うとおり…誰にでも俺の部屋が何処なのか、見当をつかせる機会あった…と言うことになる。

 

 だけど…そこで湧き出てくる疑問もまたあった。

 

 それは――

 

 

 ――どうやって俺の部屋に侵入したのか、ということ。

 

 

 

 俺は確実に…部屋の鍵を閉めていたはずなのに。まるで通り抜けたように、犯人は俺の部屋に潜んでいたのだ。

 

 考えれば考えるほど…複雑に絡み合っていく様だった…。

 

 

 

「うう…考えることが多過ぎてややこしくなってきて、頭で湯を沸かせそうな気持ちです」シュー

 

「……本当に湯気が出てる。知恵熱?」

 

 

 そう、ややこしくなってきたのだ。どんなに探ってみても、次から次へと疑問が増殖していくような。今までも同じではあったが、今回は余りにも証拠が不確かな物が多い所為で…尚更そう思ってしまう。

 

 

 そんな中で…。

 

 

「ふむ……ややこしく…か。いやいや、それどころか、分かりやすくなってきたんじゃないかい?」

 

「えぇ…そこまで言っちまうのかい?」

 

 

 ニコラスが、そこまで深く悩んでいないような、清々しい言葉を吐いた。

 

 

「どこが分かりやすくなったって言うですか。とぼけたこと言うのも大概にするです」

 

「まぁまぁ…そうけんか腰にならずに聞きたまえよ。まずは手始めに…ホテル側の諸君に聞きたい。キミ達が最初に犯人の存在を認知したとき…最初、キミ達はそれぞれ何処を捜索していたのか…覚えているかい?」

 

「ええ…急にそんな事を言われましても」

 

 

 正直な話し…俺自身も覚えていなかった。だからこそ、下手なことは言えないと口を閉ざしてしまう。

 

 

「僕が覚えているさ。折木君はホテルの廊下を…僕は外を、小早川さんは個室を、風切さんと古家君は医務室だったりを…様々な場所を渡り歩いていた僕が、保障するよ」

 

「……本当に良く覚えてる」

 

 

 だけど落合だけはスラスラと、俺達が捜索していた場所を答えていく。妙な所で記憶力が良いのは、落合らしいと言えばらしい。

 

 

「だとしたら答えは簡単さ!」

 

 

 そしてその落合の記憶に…ニコラスは閃いたように大声を上げた。

 

 

「勝手に納得するな!我々を置いて真実にたどり着いたような口ぶりもよせ!!」

 

「うう、早すぎます。まだ私は銃の撃ち合いの時点で”ぎぶあっぷ”だというのに」

 

「…それは流石に早すぎない?」

 

「ははっ。では、キミ達にヒントを出そうじゃないか。まさに答えとも言うべき大ヒントをね」

 

「偉そうに…さっさと結論を述べるですよ」

 

「まぁそう言わずに聞きたまえよ。それはね?キミ。先ほど言っていたミスター折木の部屋が濡れていた…これが疑問を解くための大ヒントさ」

 

「…部屋が?どうしてそれがヒント?」

 

 

 当然の質問に、当然の反応…だけど。

 

 

「部屋が濡れて、いた、から。犯人は、部屋に来る前、に、ごく最近まで外に居た、…て、こと?」

 

 

 贄波は、ヒントを元にした推論を立てた。そして正解と、そう体現するようにパチン、とニコラスは指を鳴らした。

 

 

「外周を回ってたんですから、当然だと思うですけど」

 

「いやいや、それは数十分の違いの時間差があるだろ?そのたった数十分の違うが重要さ。…そう考えるとだ、キミ…犯人はズバリ…つい数分前まで”外に居た”人間と限定される」

 

「…数分前って…じゃあ…!」

 

 

 

 

 

「……そうさ、つまり――――――」

 

 

 

 

 ニコラスはその指を…”アイツ”へと差し向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――キミこそが犯人なのさ、ミスター落合」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニコラスからの、死角とも言える場所からの告発に、全ての生徒達は落合に視線を集中させた。俺自身も例外ではなく、見開いた目を彼に向けていた。

 

 

「…な、何で隼人になるの…!」

 

 

 そして真っ先に動揺を示したのは、当人である落合では無く…風切であった。彼との関わりから考えて、納得のいく反応ではあった。

 

 その一方で…

 

 

「……おや?何か、風の流れが変わってしまったのかな?ギターをかき鳴らすことも忘れてしまったこのしがない旅人に、何をどうしたいというのか」

 

 

 打って変わって、落合はどこ吹く風と場違いにも程がある態度であった。疑っていない側からしたら、勘弁してくれよの一言であった。

 

 

「で、ですがそうです!!風切さんの言うとおり、落合さんが犯人だなんてあり得ません!」

 

「…先入観は良く無いとは思うが。俺も小早川達に賛成だ」

 

 

 コレまでの経緯、証拠から考えてみても犯人とは考えにくい。だからこそ、俺は風切の反論に帯同した。

 

 

「おや?随分と信頼を得ている様だね?だけどキミ達、あり得ないことはあり得ないのさ。……ミスター落合は先ほどの話しによると…一度外に出ていた、間違い無いかな?」

 

「ああ、真実だよ。僕は外にいるのが好きだった。だからまだ見ぬ誰かを見つけるときも、外界へと足を伸ばしていたさ」

 

「……隼人、だから話しすぎだって」

 

「ふむ、流石にココまで素直に話すとは思わなかったけど。今言った通り、彼は”外”に居たんだ。犯人自身も同じく外に居た…これが何を指し示すのか…お分かりかな?」

 

「…雪が体に付着する機会はあった。つまり、折木の部屋に水たまりを作る条件は満たしているはずということですか」

 

 

 しかし、俺達の口にする反論では考えは変えることはないと、ニコラスはいつも通り犯人と考えられる根拠を並べていく。それに、ホテル側では無い、ペンタゴン側の生徒達は成程と頷いていく。

 

 

「オフコース!さらに言えば、ホテル側に居ることそのものが最大の根拠とも言える。あらゆる要素を一緒くたにし、そして考えてみれば綺麗に犯人である要素を、ミスター落合は芸術的に踏み抜いている」

 

「…2度目の解散後に、落合は折木の部屋に侵入し、そして彼を殺害する機会を虎視眈々と伺っていた…ということか」

 

 

 だけど、落合の放浪癖が仇となったようなアキレス腱とも言うべき根拠の数々。

 

 改めて見ればみるほど…考えてみればみるほど、落合が犯人である可能性はあるのかもしれない…庇おうとする側の俺ですら錯覚してしまいそうになる。

 

 

「だけど重要な事がまだ分かっていないぞ。そもそも、どうやって俺の部屋に犯人は入ったって言うんだ…!」

 

「それこそ、そもそもの話しさ。諸君、ミスター折木の記憶力はアテになるのかい?昼間にボケて、部屋の鍵をかけ忘れた何て可能性が無くも無い」

 

「う…それは…!」

 

「……反論できない」

 

「おい!」

 

 

 そして同じく擁護派のハズの小早川達は、何故かその程度の反論で納得しかけてしまう。それも、人を老人扱いしたような…流石に失敬すぎるだろ。

 

 

「で…ですが落合さんは拳銃で撃たれております!撃つ側である犯人とあろう人が、どうして撃たれるようなことになっているのですか!」

 

「…うん、その通り。それに…拳銃何て物がどこから出てきたのかも未だに分かってない」

 

「度重なる質問、オーケイ。一つずつ丁寧に答えていこう。まず最初のミス小早川の質問だけど…簡単さ、ミスター落合は”自分で自分を撃った”のさ」

 

 

 ”自分で自分を…?”想像するだけでも異様な行動に、俺は信じられない口調で思わずそう呟いてしまう。

 

 

「自分が犯人ではないと証明するためには、自分も被害者になれば良い…さらに彼愛用のギターも破壊してしまえば、より信憑性も高くなる」

 

「……ど、どうしてそうなるのですか!」

 

「自分の大事な物を犠牲にしてでも、自分を捜査線上からはずしたかった言いたいんですよ」

 

「……う」

 

「そして、2つ目のミス風切の質問…それはキミ達がエリアに初めて入った時から、自分の懐の中に隠し持っていたから…そう考えれば簡単さ」

 

 

 …拳銃を…最初っから隠し持っていた?

 

 ニコラスのその…どうにも納得できない根拠。

 

 だけどそれを覆すような反論の材料が少ないために、押し黙ってしまう。

 

 

「でも、拳銃を隠し持ってたなら、どうして今更銃を使ったのか分からない。閉じ込められた初日にさっさと撃てばいい話…!」

 

「今日に限って…とは言うが。ある程度油断が流れているときに事件を引き起こしたかったのでは無いか?…橋が直ると言われあのとき、貴様らは恐らく浮き足立っていたはずだろう?」

 

 

 実際浮き足立ってたというか…油断があったのは事実だ。その日は、何も無いと、タカをくくっていた。

 

 そんな時に、足下をすくうような不審者の存在…焦るには充分な要素しかなかった。

 

 その反論にも、俺は何も言えなかった。

 

 

「それに、さっきのミスター折木の話しから考えても…不思議な話さ」

 

「……?どういうことだ?」

 

「犯人がキミ”だけ”を狙っていたのなら、何故ターゲットではないミスター落合を撃つ必要があるのかな?そんなその場しのぎの行動なんてしなくても…彼を突き飛ばして、さっさと逃げれば良いのに」

 

「それは…」

 

「…それは違う。私が犯人を追いかけていたから、隼人を手負いにして…それで私から振り切ろうとした」

 

 

 まくし立てるようなその疑惑の数々。それに風切はいの一番の勢いで、応戦した。

 

 そうだ、古家を殺してしまった以上…ホテル側の人間を殺してしまうことは…あまりにも愚策。犯人がもしもその場で冷静に考える暇があったのなら…ホテル側の容疑者を減らすこと事態も自分にとってリスクになる。

 

 だからこそ、犯人は落合を手負いにすることが目的の発砲だったはずだ。決して、命を狙った訳じゃ無い。

 

 

「成程、良い反論だ。…でもそれは、キミが逃げる犯人を見ていたらの話しさ」

 

「…どういう意味?」

 

「犯人がホテルを出てから、ミスター落合が接敵するまで…キミは一度も目を離さなかった、そして見失いもしなかった…そう言い切れるのか。そう聞いているのさ」

 

 

 ここでニコラスは畳みかけるように、そう追求に追求を重ねた。まるで試すように、絶対的な証言を得ようとするように。

 

 

「………」

 

 

 風切は押し黙る。本来であれば疑われている立場の落合が自己弁護をするべき場面のはずなのに…。何故か彼女が舌戦を演じている。

 

 

「ミス風切、どうなんだい?」

 

「…そんな事は無い…確かに、落合と交錯した一瞬は視界が悪かったけど…でも…見失うことは無かった。超高校級の射撃選手の肩書きに賭けて、私は犯人を見ていた」

 

 

 自分は犯人を見たんだから。そう彼女は言い切った。

 

 その絶対の自信とも取れる風切の気迫に、ニコラス自身も、何となく反論に困った様子を呈していた。

 

 

「ああ、そうだ。風切は…犯人を見失わなかった。その証拠も、ちゃんと存在する」

 

 

 その反論に、俺自身も頷き…そして証言を保障しようと口を開いた。

 

 そう…彼女は見たんだ。あり得ないような…でも実際にあったの光景を。犯人を…あの夜に。

 

 

 

 

 

 

【コトダマセレクト】

 

 

 

【崖を渡る犯人)

 

 

 

「これだ…っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――崖を渡る犯人を。私は見た」

 

 

 俺が突きつけるよりも先に、風切はその記憶を口にした。

 

 この裁判における、ワイルドカードとも呼べる証言をその場に投下したのだ。

 

 

「が、崖をだとぉ!!」

 

 

 その証言に、雨竜は真っ先に大声を上げた。

 

 

「…ああそうだ。風切は、崖を渡る犯人を見たんだ」

 

 

 今が加勢するときだと、俺もその発言に同意を示した。 

 

 

「え…ええ?ま、まさか、おとぎ話じゃあるまいし。そんな光景はあり得ないさね」

 

「ですね。霞みたいに何処かに消えたって言われた方がまだ信じられるです」

 

「…ああ、そうだね。あのとき、あのエリアでは雪がそれなりに降っていたみたいだからね」

 

 

 案の上信じられないと、ペンタゴン側の生徒達はそう疑念を持ち上げる。

 

 …俺だって最初聞いたときはそうだった。

 

 だけど、調べていく内に、ニコラスが集めてくれた証拠を見ている内に、その疑惑は確信に変わった。

 

 風切の見た光景は…本当なんだと。

 

 そしてそれを証明するように…。

 

 

「風切さんが見ているのを…落合さんが保障しております!」

 

 

 そう、渦中の人物である落合が、見てはおらずとも、彼女の驚き様から本当なんだと言い切ったのだ。

 

 

「いやいや、保障している人間が犯人なんだ。十中八九その保障…いや証言はフェイクなのさ」

 

「”ふぇ”…ふぇい、く?…それって…あの飲み物のような、氷菓子のような…」

 

「はぁ…それはシェイクさね。今の風切の証言は嘘だって言ってるんだよ」

 

「えええええええええええええ!!!!」

 

「貴様が驚くのか…」

 

 

 だけど予想通りの反論が待っていた。…つまり落合は…いや正確には風切がその証言を偽証しているということになる、と。

 

 

「どうしてそう、下手な勘ぐりができる」

 

「下手な勘ぐりでは無いさ、ミスター落合とミス風切は、随分と仲が良いみたいだからね。そういった人間関係による隠蔽の可能性も考えるべきと、ボクはそう言っているのさ」

 

「いや、そもそも落合と風切は…さっき仲良くなったばかりで、事件が起きたときはそんな様子は…」

 

 

 ”無かった”そう言い切ろうとした途端、”いや…”と否定が入った。

 

 

「…でも思い返してみれば…風切からの落合への当たりは間違い無く強かったですけど…でも悪くない雰囲気あったかもしれないです」

 

「まさに凸凹コンビといったようだね!そういえば!!随分前にグラウンドのベンチで二人して昼寝してる所見たような気がするね!いやより正確に言うならば、ミス風切が寝て、その隣でギターを弾いている光景だったかな」

 

「その絵面ならアタシも見たさね。確か、エリア2の図書館で」

 

「ぐぬぬぬ……業腹だがワタシもだ。あれはエリア3の噴水の周辺だったな…」

 

「じ、実は私も…あのホテルのランドリーで…」

 

「…エリア1、の、個室の、前とか?でも、見たような、な…」

 

 

 いや…なんで俺の知らない場所でそんなイベントが起こってた風になっているんだ!どういうことだよ!

 

 …ていうか何で昼寝ショットしかないんだよ!もっとこう、あるだろ!そういうイベントというか、噂みたいなのは!

 

 

「…ミスター折木。焦っているところ悪いけど…ボクは何の根拠も無く、疑ったりはしない。必ず理由があるから疑っている。それをちゃんと理解しておくれよ?」

 

「そ、そんな…」

 

 

 とってつけたようなその反論に、俺は動揺を隠せなかった。

 

 風切と落合は…お互いにお互いを庇うような証言をしている。それがジワジワと本質を得てきているような…少なくとも擁護派の俺が不利になっている状況になりつつある事は明確だった。

 

 

「それでだ…ミスター落合。すっと黙っているようだけど…どうなんだい?黙秘は、自分の立場を危うくするだけだぜ?」

 

 

 ニコラスは、風切にではなく落合に直接言葉をぶつける。落合は、大きめのテンガロンハットの鍔を掴み、目深に被るだけ。

 

 

 すると…

 

 

「愛だ恋だの…それは一抹の気まぐれのようなものさ。風と一緒さ…吹きすさぶ時もあれば、まるで何事も無かったように無風になるときもある」

 

 

 相変わらず何を言っているのか分からない言葉が連なる。あきれかえる生徒や、意味が分からなすぎて湯気を発し出す生徒。

 流石のニコラスも言葉も無いというのか…少し顔が引きつっているように見えた。予想を超える大物具合に、引いている可能性がある。

 

 

「……本気で言ってるの?」

 

 

 だけど風切は、何故か涙目になって彼に向けて訴えかけた。

 

 

「……本気なのかどうかは、君に任せるよ。……いや、今回ばかりはそうともいかないかもしれない。けど…そうだね…うーん」

 

「ええと…何か、空気が、ピリ付いて、る?」

 

 

 そんな彼女の言動に、落合は本気で困ってそうで。そのためなのか、本当に珍しいくらいの動揺が言葉に乗っていた。

 

 

「…このままでは埒があかないね。ふぅ、改めて、ミスター落合、年貢の納め時だ。キミの犯行をまとめるとしよう」

 

 

 いや、そんな事は無い。

 

 落合が犯人の可能性は、殆どゼロに近い。

 

 それは今までの証拠…いや、今までのエリアに入った時からの記憶から証明できる。

 

 決して迷うな。

 

 この疑いを晴らすピースを、確実に俺は持っているのだから。

 

 これを覆さなくては、真実にたどり着けないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ノンストップ議論】    【開始】

 

 

 

 

 

 

「ミスター落合、キミは」

 

「【自分のジャンパー】持って…」

 

「ホテルペンタゴンを徘徊し」

 

「不審者の存在を装った」

 

 

    え、いきなり最終局面ですか?

 

ううむ、早すぎる幕切れのようにおも思えるが…

 

 

「…いや、そんなわけない」

 

「そもそもそのジャンパーが…」

 

「…『落合の物』かもわかっていない」

 

 

 …ん?どういう意味ですか

 

     誰だってジャンパーは持っているはずでは?

 

 

「どういう意図の反論なのか分からないけど…」

 

「続けさせれもらうよ?」

 

「キミは不審者捜索の折、再び『ジャンパー』を着込み…」

 

「ミスター折木の部屋に潜んだ…」

 

 

 …ほう、そういう流れか

 

     何か腑に落ちないさね…

 

 

「折木さんの部屋に潜む理由が分かりません!」

 

 

 

 ちょっと、読めない、よね

 

     苦しいですね…

 

 

 

「【不意打ち】をするためさ」

 

「まさか自分の部屋に犯人が潜んでいるなんて…」

 

「誰も考えないだろうからね…」

 

「ミスター落合は…ミスター折木の不意を突いて殺すために…」

 

「部屋に潜んでいた…」

 

「そしてその際、外を出たときに【くっついていた雪】が…」

 

「ミスター折木の玄関に、したたり落ちてしまったのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『落合の物』⇒【自分のジャンパー】

 

 

 

 

 

 【BREAK!!】

 

 

 

 

「それは…違うぞっ…!」

 

 

 

 

 

  ニコラスの、否定するべき矛盾点。そのウィークポイントを見つけた俺は、つかさず言葉を向けた。

 

 

「…どういうことかな?ミスター折木」

 

 

 少し圧の感じるような、その反応。だけど怯んではいけない。落合が犯人じゃ無い、という証拠を、示さなくてはならないのだから。

 

 

「犯人はジャンパーを着て、自分自身の姿を隠していた。…だけどそれこそが、落合が犯人では無い何よりの証拠になるんだ」

 

「意味が分からないですね。ジャンパーならあのエリアに入ったら誰でも持ってるはずです」

 

「…いいや、ソレこそが間違い。このエリア4に初めて入ったとき、確かに公平達は入口のジャンパーを着て入った」

 

 

 だけど…着て居なかったヤツらも居た。

 

 それは…。

 

 

 

 

 

 

 

【選択肢セレクト】

 

 

1.古家と小早川

 

2.落合と古家

 

3.風切と小早川

 

4.俺と古家

 

5.風切と落合

 

 

 

A.風切と落合

 

 

 

「そうかっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――風切と落合だけは、ジャンパーを着て、エリアには入らなかったんだ」

 

「ジャンパーを借りなかったってのかい!?」

 

「ど、どんな神経してるんですか。あの寒さの中で…」

 

 

 その2人の行動に、殆ど生徒達が常識外れだと、目で語っているようだった。

 

 

「…私はああいう寒さに慣れてる」

 

「僕は灼熱の砂漠だろうと、極寒の雪山だろうと、世界中をこの身一つで歩き回ったしがない吟遊詩人。この程度の風は、僕にはそよ風とも言えるのさ」

 

 

 目を疑われた本人達は、何故か堂々と、自慢げにそう言い切った。

 

 

「どこからそんな自信が来るのか分からんさね…」

 

「それに、いつの、間に、か、本調子に、戻ってる…し」

 

 

 だけど同時に、そのあり得ないを事実を大言しているおかげで…落合が犯人である可能性が段々と薄らいでいるようにも感じた。一か八かの反論ではあったが、何とかまくれたようだった。

 

 

「とにかく、あのエリアに入った時、入口のジャンパーを持ってきていたのは、俺と、古家、そして小早川の3人だけだった」

 

「はい!!そうです!!3人です!!!」

 

「ミスター落合が隠し持っていた可能性はないのかい?」

 

「……それはない、ジャンパーを持ってきてないことは全員で確認してる」

 

「ああそうだ。ここに入る前に、俺達は全員で確認している。つまり、外周に居たときも、俺の前に現れたときも…犯人はジャンパーを被っていた。つまり落合が犯人である可能性は――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

【反論】

 

 

 「愛など非論理的である!!」

 

 

             【反論】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっ。う、雨竜?」

 

 

「ぐぬぬぬぬぬ……認めん、認めんぞぉ…」

 

 

「…何が言いたいんだ?」

 

 

「愛だの!恋だの!ワタシは認めんと!!そう言っているのだ!!!」

 

 

「…………そうか」

 

 

 

 

 

 

【反論ショーダウン】 【開始】

 

 

 

 

 

 

「まず納得がいかんのは」

 

「奴らが何故そのような関係になっているのかだ!!」

 

「貴様というものがありながら…」

 

「何故みすみす関係を発展させるような…」

 

「過ちを…」

 

「犯して…」

 

「しまったというのだぁ!!」

 

 

 

「いや…それと俺を責める理由がどこで結びつくんだ」

 

「アイツらは勝手に、しかも俺の知らないところで進展していたんだ」

 

 

 

「勝手にだとぉ!?」

 

「貴様は愛という物をなんら理解できていないようだな!!」

 

「舐めてすら、いると言えよう!!」

 

「d=1/p=愛」

 

「D=pL=愛!」

 

「4+x=愛!!」

 

「1.5×10^11 m=愛!!!」

 

「この程度の数式で、愛を表わすことは不可能!!」

 

「それ即ち、宇宙の真理の解明と同義!!」

 

「つまり貴様は…」

 

「その愛を、舐めきっているのだ!!」

 

 

 

「おい雨竜、お前落合より訳が分からなくなっているぞ」

 

「つまりお前は何が言いたいんだ!」

 

 

 

「ふっ、知れたことを…」

 

「ジャンパーを持っていなかったからと言って」

 

「ヤツがジャンパーを着られない理由にはならない…」

 

「持ってきた連中の【ジャンパーを盗み】…」

 

「そして利用すれば…」

 

「その程度の反論など」

 

「塵と消えていくしかできんのだ…!」

 

「ふはは、理解して頂けたかな?」

 

「愛を知らない少年君?」

 

 

 

 

 

 

 

【ジャンパーの水滴)⇒【ジャンパーを盗み】

 

 

 

 

「その言葉、切り伏せる…!」

 

 

 

 

 【BREAK!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …雨竜の発した、その確かな矛盾を俺は見逃さなかった。

 

 

「――――確かに、落合が俺達の持っていたジャンパーを盗み、使用した可能性はある」

 

「ふん…であれば――――」

 

「だけど違う。大きく矛盾している。何故なら、俺達のジャンパーには”使われた形跡”も盗まれた形跡も無かった」

 

「盗まれた…形跡も…だと?」

 

「ああ…もしも仮に、俺達のジャンパーがどれか1つでも使われていたのなら…湿っていたり、水滴が付いてるはずだ」

 

「は、はい!!ですが、皆さんのをご確認したところ、全てピンピンに乾ききっておりました!」

 

「態々全部集めて確認したんですか?」

 

「ああ、俺達の中に犯人が居るかも分からない…その確証を得るために」

 

「ええ!!あれってそういう意味だったんですか!」

 

 

 …そういえば理由を彼女には話してなかった気がするな。少し悪い事をした。…ていうかよく何も聞かずにほいほいと協力できたな。

 

 だけど小早川が協力してくれたからこそ得られた、確かな証拠。コレを覆すことは、いくら彼らでも出来やしない。

 

 

「ううむ…だとしたら落合は…」

 

「うん…犯人じゃない」

 

 

 そう。これまでの前提は、犯人が”ジャンパー”で姿を隠していたことにある。だけど、そのジャンパーを利用できないとあれば、これまでの犯行を行うことは不可能になる。

 

 

「それ、に…だけど…拳銃を隠し持ってた、なら、皆が閉じ込められた日の直後、に、美術館を確認した時にはもう…無くなっているはずじゃ、ない?」

 

 

 すると、贄波が助け船を出すように、そう発言した。その言葉を聞いてなのか、わざとらしいくらいに驚きのけぞるニコラス。

 

 

「おおっと!!そういえば、崖を渡れるかどうかを確認するタメに美術館に行っていたね!そして拳銃はまだ顕在だった…すっかり忘れていたよ!キミ」

 

「ぬわんでそんな大事な事を抜かしていたのだぁ!!!」

 

「しょうが無いだろ?ボクは名探偵ではあるが、完璧超人というわけでは無い。時にはこういうこともあるのさ?」

 

「ぐぬぬぬ…だが納得だ。名探偵ごっこをしている化学者ふぜいが、これ程早期に犯人を特定できるなどあり得んことなのだから…そういう意味では、納得だ」

 

「おいおい!化学者風情とはなんだい?ボクの将来の夢を馬鹿にしないでおくれよ!それにキミ達も賛同していたじゃないか!」

 

「う…そう言われると弱いですね。何だか、またやらかした気分です」

 

「ああそうだね。ここは素直に謝った方が賢明さね……悪かったよ落合」

 

 

 続いて、疑っていた連中(ニコラスを除いて)は頭を下げる。落合は、ただ笑みを浮かべ、特に気にしていない様に振る舞っていた。

 

 …そのおかげか嵐が過ぎ去ったような、少し落ち着いた雰囲気がこの場を包んでいるようだった。

 

 

「一度落ち着いた所で、再び話しを戻すとしよう。ミスター落合が犯人では無いとしたら…」

 

「…本当、に、ホテル側の人達じゃ無い、第三者が…そのときに、居た」

 

 

 贄波の言うように、ホテル側か、それともペンタゴン側のどちらに犯人が居るのかどうかは分からないが…俺達じゃ無い第三者の存在を証明する証拠もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

【コトダマセレクト】

 

 

 

【捨てられたジャンパー)

 

 

 

「これだっ…!」

 

 

 

 

 

 

「その第三者…すなわち犯人が使ったと思われるジャンパーと同じ物が、崖の底に流れる川に引っかかっていた……そうだよな?ニコラス」

 

 

 続いて…この証拠を見つけた本人であるニコラスに、確認の声を掛けた。間違い無いよな?と念を押すように。

 

 

「うん?それはボクに対して質問しているのかな?ははっ、それもそうだよね。だってそのジャンパーは、何を隠そうこのボクが見つけた証拠なのだからね!」

 

「そんなまどろっこしい前置きはどうでも良いんさね!どうなんだい!ニコラス!」

 

「そもそも、崖の底に川があるなんてことも初耳でございます!!」

 

「ははっ!続け様の疑問、驚き、の言葉、ありがとう。それに免じて2つとも同時答えさせて貰うと……ああ!彼が言ったとおり!崖の底で優雅にユラユラと川とともに流れていたさ。このボクが命からがらになりながら、綱を腰に巻き、この目で…確認したとも」

 

「だにぃ!また貴様は隠し事を…一体どっちの味方なのだ」

 

「どちらの味方でもあり、どちらの敵でもある…そう答えておくよ!キミ」

 

「…はぁ、何かもう疲れるです」

 

 

 そのめくるめくニコラスの大立回りに…ペンタゴン側の生徒達は、まだ疑われている段階でも無いというのに、酷く疲弊しているように見えた。もし彼がこちら側だったのならと…考えるるだけ末恐ろしい道化ぶりである。

 

 

「…だとした、ら、そのジャンパー、は、その犯人が、捨てた可能性が高い、よね。…古家くん、を、殺した後……崖の、底に」

 

「そして何よりも…風切さんのお話からして、ホテル側には犯人がいない可能性が高いと思われます!」

 

 

 そう、落合が犯人では無いとするなら…必然的に、先ほどの風切の、あの目撃証言が真実味を帯びてくる。

 

 犯人は崖を渡って、ペンタゴン側へと消えていった。

 

 それはつまり、ペンタゴン側の、雨竜、ニコラス、反町、雲居、贄波の5人の内の誰かが犯人かも知れないという事実が。俺達側のジャンパーが全て揃っていることも踏まえても…その事実が持ち上がることになる。

 

 

 だけど…

 

 

「…でも第三者がいたからって…さっきの風切の崖を行き来した話しも本当だって言い切るのは、ちょっと納得はしきれないですね」

 

「…梓葉には悪いけど、アタシもさね。どうにも犯人が崖を渡ったって話しが…非現実的としか思えないよ」

 

「まったくだ。貴様らが知らないだけど、誰かがもう1枚、気付かないように隠し持っていた可能性もゼロでは無い」

 

 

 だけど、完全にはペンタゴン側に犯人がいるかもしれない。その可能性を肯定する空気はまだ無かった。

 

 その反応も最もであった。

 

 それを認めることは即ち、ホテル側じゃ無い側に犯人がいる…自分たちの中の誰かが古家を殺したと言うこと。

 

 殆ど射程圏外だったはずの自分たちが、まるでおとぎ話のような目撃証言で、犯人扱い、そんなのはたまったものじゃないはずだ。

 

 

「…贄波?」

 

「私は…折木君も、小早川さん達を…信じる、よ。安心して?」

 

 

 だけど例外も居た。自分が疑われる立場になるかもしれないというのに…涙が出そうな位の信頼である。僅かながらも、味方が多いことに俺は嬉しさを、僅かながらも表情に滲ませた。

 

 

 こちらに贄波が加わったことで、5:4…ホテル側が数的に優位な状況。

 

 

 それでも…。

 

 

「ははっ…殆ど真っ二つな状況だね。キミ」

 

「……と、いうこと、は」

 

 

 

 

「んんんんん?おやおや?今、今!今!!真っ二つ…みたび真っ二つとおっしゃいましたね!?」

 

 

 

 

 

 するとモノパンが自慢のステッキを振りかざし、そう言った。

 

 待ってましたと、お約束の展開に興奮した様子であった。

 

 

「…」

 

 

 また、始まるのか…内心穏やかでは無い思いを胸に、俺はモノパンの行動を見守った。

 

 

「まともや、このジオペンタゴンが誇る変形裁判場の出番でございますネ!!」

 

 

 そして、モノパンは持っていたステッキを目の前に現れた特殊な装置へと突き刺した。

 

 

 俺達が立っていた証言台浮き上がり、螺旋状に入り乱れ…そして横並びに終着する。目の前にはニコラスを含んだ、ペンタゴン側に、犯人は居ないと主張する生徒達。

 

 真横には並ぶのは…それは違うと…俺と同じ意見を主張する生徒達が立っていた。

 

 

 歯がゆい展開ではあるが…事件をまとめる意味でも、そして犯人をより明確にする意味でも、この議論はターニングポイントになる。

 

 

 俺は小さな覚悟を持って、彼らと対峙した。

 

 

 

 

 

 

 

= 意= =対=

    = 見= =立= 

 

 

 

 【犯人はどっち側?】

 

 

ホテル側だ!    ホテル側じゃない!

 

 

『ニコラス』     『折木』

『雲居』       『小早川』                

『反町』       『落合』             

『雨竜』       『風切』

           『贄波』

 

 

 

 

 

 

【議論スクラム】   【開始】

 

 

 

ニコラス「いやぁ色々証拠を照らし合わせて見て、【何となく】そっち側かな~なんて考えてみたけど、やっぱりこっち側に付くとするよ!キミ」

 

「俺がっ!」

 

折木「【何となく】で自分の立ち位置をフラフラと変えるな!だから友達なくすんだぞ!」

 

 

雨竜「そもそも、崖の底に【ジャンパー】が流れていたからと言って、貴様らの中に犯人がいない確証にはならんであろうがぁ!」

 

「小早川!」

 

小早川「ですが私達の【じゃんぱー】は全て手元にあります!誰かが持ち出したならともかく、新しいじゃんぱーを用意するのは不可能です!」

 

 

雲居「崖を渡った人間なんて…あの吹雪の中の【見間違い】に決まってるですよ」

 

「風切!」

 

風切「【見間違い】なんかじゃ無い…。私はこの目で見た…超高校級の射撃選手のプライドに賭けて断言できる」

 

 

反町「悪いけど、あんな断崖絶壁の【崖】を渡ったなんて非現実的すぎるさね」

 

「落合!」

 

落合「…非現実的なことを嘘だと吐き捨てることなんていつでもできるさ。もしかしたら、僕達の知らない、【崖】の渡る方法が、空を飛ぶ方法がこの世にあったのかもしれない」

 

 

 

ニコラス「改めて聞こう、キミ達。この議論の決着は、事件そのものの流れを大きく変える事になる…その【覚悟】は出来ているんだろうね?」

 

「贄波!」

 

贄波「そんなの、最初っからできてる…。【覚悟】があるから、こうやって、突き進めるん、だよ?」

 

 

 

 

 

 CROUCH BIND

 

 

SET!

 

 

 

 

「これが俺達の答えだっ!!」

「これが私達の答えでございます!!」

「これが僕達の答えさ…」

「これが、私達の答え……!」

「これが私達の答えだ、よ…!」

 

 

 

【BREAK!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに、単純に考えれば犯人は俺達の中に居るんだろう。こちら側で死者が出ているし。都合良く不審者が現れたり…それに橋の無い崖を渡るなんて、余りにも荒唐無稽すぎる」

 

「…こう、とう…?」

 

「…でたらめってことです」

 

 

 だけど…俺は翻すように続けた。

 

 

「…それと同じように、コレまでの出来事と証拠を合わせて考えてみても。ペンタゴン側に…犯人がいる。その可能性も高いんだ」

 

 

 確かな意思を持って、俺はこの真実を目の前に提示していく。

 

 何を言われても良い、俺は揺るがない…そんな固い意志を持って。

 

 

 ――――俺は生徒達にそう訴えかけた

 

 

 

「うーん…だ・と・し・た・ら!やっぱりボクらの方に、犯人が居るのかもしれないね!!」

 

 

 

 その真実にいち早く反応したのは、これまで矢継ぎ早の疑いをこちらに向けていたニコラスだった。

 

 

「貴様ぁ!!一体何度乗り換えれば気が済むのだ!!」

 

「ぐぐぐ、本当に、アンタってヤツは………!」

 

「はぁ……もう一々反応するのも疲れてきたです」

 

 

 そしてその光速とも取れる切り替えの早いニコラスの言動に、生徒達は辟易とした声を次々と上げていく。

 反論する側の俺ですらこの疲れようなのだ。雨竜達からしてみれば、それ以上の疲労なのだろう。一体何がしたいのか、その真意を読み取れなければ、これ以上に面倒臭い人間はいない。

 

 

「でもですよ?仮にその犯人がこっち側だったとして…意味不明なことは全部で2つあるです」

 

 

 すると雲居が、2本の指を立てながら論点をまとめるよう言葉を紡いでいった。

 

 

「ええと…どんなことですか?」

 

「1つは、どうやって鍵のかかった折木の部屋に入ったのか。そしてもう1つは、風切が見たって言う、崖を移動したっていう犯人のトリックです」

 

「……ううむ、確かに気になる部分であるなぁ」

 

「その2点を解決できたなら、完璧に納得するですよ。こっちに側…ペンタゴン側に犯人がいるってことをです」

 

 

 完璧な納得。一番最初の疑いぶりからは想像できなかったほどの進歩。これまでの基礎固めの甲斐もあって、ようやくここまでこぎ着けられた。

 

 俺は密かな達成感を、内心感じていた。

 

 

「…じゃあまずは前者、ミスター折木の部屋に犯人が侵入した方法だね!キミ」

 

「でも…それって折木さんが閉め忘れと結論づけられたんはずではないんですか?」

 

「梓葉…まさかこのポンコツ探偵が本気で言っていると思っていたのかい?」

 

「え………え。ええ!ええ!!そんなことはありません!!ほ、本気では思ってないですよ。何を!!当たり前の事を言っているんですか!!」

 

「…これはギルティ」

 

 

 …だけど、これがゴールじゃ無い。ここからがスタートなのだ。

 

 長い長い助走からのスタートが今、目の前にあるのだ。

 

 誰が、何のために、どうやって…その真実を暴き出す本番がやって来たのだ。

 

 より高く集中しなければ、そして考えぬかなければ…。

 

 

「……」

 

 

 俺は少し、息を吐く。そして再び――――前を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

【ノンストップ議論】    【開始】

 

 

 

 

 

 

「では早速…」

 

「部屋に不法侵入した方法を…」

 

「募るとしようじゃないか!」

 

 

 

 何を偉そうに…

 

   貴様に舵を取れると癇にさわるのだ!!

 

 ま、まぁココは穏便に…

 

 

 

「個室には窓があるって言ってたね」

 

「だったら…『窓を割って入った』とかはどうだい?」

 

 

 

     ぼ、暴力的すぎるです…

 

だけどシンプルかつ、可笑しくない方法だね!

 

     音で、バレ、ない?

 

 

 

「折木から【鍵を盗んだ】のでは無いか?」

 

「そうすれば堂々と折木の部屋に出入りできる」

 

 

 

 いや、堂々とするべきことではないね!

 

   でも案外いい線いってるかもですね

 

 盗みとは頂けないさね!!

 

 

 

「…うーん。難しい」

 

「…盗人らしく『ピッキング』をした可能性もある」

 

 

 

 そんな技術持っているヤツいたか?

 

    実はボクが出来たりするよ!

 

 犯人が名乗り出たですね…

 

   おおっと口が滑ってしまったよ、キミ

 

 

「ピッキングか、どうかはわからない、けど…」

 

「何か、『道具を使った』と、か…?」

 

「それも、特殊、な」

 

 

 道具…?

 

  また、アレ…のことか?

 

 

「いえいえ皆さんお忘れですか!」

 

「そもそも『鍵が掛かっていなかった』可能性を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【7つ道具の行方)⇒『道具が使われた』

 

 

 

「それに賛成だ!」

 

 

 

 【BREAK!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、そんなあり得ないような出来事が起こった…それを可能にするには道具を使うしかない」

 

「道具ですか?」

 

「それって……まさか!!」

 

「……モノパンの…7つ道具?」

 

 

 そう、それもあの道具群が…俺のような凡人でも簡単に使用できる。あの特殊な道具がこの事件にも、使われた。

 

 その中でも…。

 

 

 

【選択肢セレクト】

 

1.バグ弾

 

2.どこでもワイヤー

 

3.秘密の愛鍵

 

 

A.秘密の愛鍵

 

 

 

 

「――――”秘密の愛鍵”…アレが使われたはずだ」

 

「鍵……?ええと……ああ~、あの鍵ですか。今まで使われた記憶が無いからすっかり忘れてたですよ」

 

「確か機能は…どんな部屋でも簡単に侵入できる…だったか?………と、いうことは…」

 

「そう、ソレを使えば俺の部屋になんて簡単に侵入できる……だよな?」

 

 

 問いかけるように俺は生徒達に表情を向けた。

 

 

「…しかし、ちゃんと機能するのか?今まで一度も使われた事が無い故に、少々信用できない部分があるのだが」

 

「そんなことはありませン!!勿論、ちゃーんとあの辺境なホテルにも、鍵は対応しておりまス。品質はこのワタクシが保障しますヨ!!」

 

「……余計信用できない」

 

 

 だけど…あのモノパンが認めていることなのだ。ほぼ確実に、鍵の掛かった部屋でも、簡単に侵入できるということなのだろう。

 

 

「だけど…もしも借りられたことが本当だとしたら…」

 

「…そうだね。犯人はペンタゴン側の中に居る可能性が高くなる」

 

 

 ”でも”ニコラスは小さくため息を吐きながら、声を暗くした。

 

 

「残念ながら、”カギ自体”は美術館にあったさ。ボクが捜査時間の際に訪れたときは展示されたままの状態で、残っていたよ」

 

「ぬわにぃ?であれば使われた形跡は無い、ということか?」

 

 

 雨竜の言うとおり、美術館に未だ残っているのであれば…使われたという証明にはならない。だけど、もしも…。

 

 

「はは、そうでもないさ。ボクらが殺人を知ってからエリア4に集まるまでにはラグがあった。既に返し終わった後と考えれば…なんら不思議は無い」

 

 

 そう、使われた後にすぐに返した…というのであれば、そんなのは些細な隠蔽に過ぎない。

 

 それに時間についても…ホテル側に居た俺達側からして見れば、どれほどラグがあったのか分からないが……あのニコラスがこうも言い切っているのだ。

 恐らく、それだけの時間の余裕があったのだろう。だとしたら、使われた可能性を完全には否定できない。

 

 

「ちなみに!調べたとき、”拳銃は未だに借りられていたまま”だったから、この中の誰かが懐に潜ませているか、何処か別の箇所に隠している可能性は無きにしもあらずだね!!」

 

「……それってすこぶる決定的ではありませんか!!!」

 

 

 ニコラスは、あっさりとその衝撃的な一言を溢す。俺だけじゃ無く、殆どの生徒達は、身を乗り出し、驚愕の声を上げた。

 

 

「あ、アンタなんでそれを先に言わないさね!!あっちで銃が使われた事を考えれば…犯人はこっち側で確定じゃないか!」

 

「そうですよ!先に言ってればこれまでのしち面倒くさい議論なんてしなくて済んだはずです!!」

 

 

 指を向けて抗議の声を露わにする生徒達。流石に看過できないと、怒りの色が強く見えた。

 

 だけど確かに、コレまでの積み重ねを無駄とは言わないが、彼のその情報があればある程度の時間の節約になったのは明白ではあった。

 

 だからこそ、生徒達の怒りも当然とも言えた。

 

 

「いやぁ!何となくそうした方が都合が良いと思ってね!!」

 

「ぐぬぬぬぬぬ……流石に限度が過ぎるぞぉ」

 

 

 そんな怒れる生徒の一人である雨竜が今にも手が出そうな程、証言台を掴むでは震えていた。恐ろしい怒気を孕んでおり、これ以上刺激してはいけないと、見るからに分かった。

 

 

「ああ、そうさね。もう限界突破だよ………!!」

 

「え?……あの…反町、さん?」

 

 

 前に乗り出していた反町が、急に証言台を飛び降りた。

 

 

「もお我慢できない!!やっぱりブツ!!!」

 

 

 仏の顔も三度まで…そういうように…反町は怒号と共にニコラスへとズカズカと近づいていく。

 

 

「あ~、席からは離れないで下さいネ~。特に今回は歩き回らない方が…」

 

「問答無用さね!!!!」

 

「…おやおや?これはボクもとんずらをこいた方が良いのかな?」

 

「当たり前だ!!本気で殴られるぞ!!」

 

 

 ドンドンと鬼の形相の反町はニコラスに焼きを入れようと、距離を縮めていく。いつも以上の気迫、距離のある俺ですら後ずさりしてしまう。

 

 …自業自得とは言え、流石にヤバいと数人の生徒も身を乗り出していた。

 

 

 しかし…

 

 

「ぶへっ――――」

 

 

 

 ズルッと。近づく寸前で、反町は思いっきりすっ転んでしまった。

 

 

 しかも顔面から。

 

 

 アニメーションのように、見事なほど綺麗に床へとダイブしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

  ~~~~~

 

 

 

 

 

「そ、反町さん」

 

「…面目ないさね」

 

 

 ニコラスへの暴行未遂が起きてから数分、まだ少しクラクラするために、自分の席に腰掛け…鼻に詰め物をしながら、反町は小早川に看病されていた。

 

 

「何事も無かった。そう物語が帰結してくれたことが何よりも素晴らしいことさ。ああ、そうだとも、世界が平和であることに僕は本当の意味で嬉しさが止まらないよ」

 

「…ラブアンドピース?」

 

 

 落合の気でも可笑しくしたような発言を横目に…。救護箱を持ってきたモノパンは反町の側でプリプリと彼女に怒りを見せていた。

 

 

「まったく、だから言ったではありませんカ。足下にお気をつけ下さいト!テカテカの氷の上で走ってはいけませんと、お父さんとお母さんに習わなかったのでございますかカ?」

 

「…面目ない。じゃなくて!!そもそも何でこんな歩きづらい装飾にしたんさね!…おちおち歩くのも難しくなっちまっているじゃないか!…あ、いたたたた」

 

「反町さんどうか落ち着いて。また痛みがぶり返してしまいます」

 

 

 氷の上で転んだ際、さらに頭も打ったためなのか、おでこに氷袋を乗せ安静にと小早川に肩を抑えられる。

 

 

「ですが、反町サンのコレは…しばらく中断した方が良いかもしれませんネ」

 

 

 すると、モノパンはこの状況を鑑みてなのか、さらっと裁判の中断を口にした。俺達自身も、仕方が無いと一度、一息置く。

 それに議論を始めて暫く経っていることだから、頃合いと言えば頃合いだしな。

 

 

「それは仕方のないことだね!キミ。これからはちゃんと周りを見て行動することをオススメするよ!!」

 

「う、うぜぇです…」

 

「ぐぐぐぐぐ……今度はワタシがぶん殴ってやろうか…!」

 

「はは、ははは…」

 

 

 相変わらず神経を逆なでするような言動の数々に、生徒達は声を震わせる。

 

 

 多分、こんなしょうも無い暴行未遂の場面は以降も続くのだろう。そう思うと、裁判終了後のニコラスの先が思いやられてしまう。

 

 …裁判後が、鬼門だな。

 

 まぁ…とにかく。中途半端な閑話となってしまったが…。

 

 それでも…ニコラスの決定的とも言える証拠と、風切の証言からして、犯人がホテル側におらず、ペンタゴン側に居るという風潮が優勢の様に思えた。

 

 

 だとした犯人は…

 

 

 古家を殺し…そして俺を…殺害しようとした犯人は…

 

 

 

 ニコラスにイライラを突き刺す生徒達、雨竜、雲居、反町、贄波へと目を向ける。

 

 

 

 犯人は――――――この5人の中に…?

 

 

 

 弛緩した空気の中で、俺は気味の悪い覆い被さるような胸騒ぎが、止まらなかった。

 

 

 一体誰が…こんな酷い事を。

 

 

 手汗がジワリと滲む。

 

 

 そんな拳を、俺は密かに握りしめた。

 

 

 強く強く、心を落ち着かせるように、握りしめた。

 

 

 怖くない、何も怖くなんか無い…

 

 

 自分に何度も、そう言い聞かせる。

 

 

 何度も…何度も…何度も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  【学級裁判】

 

 

   【中断】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【モノパン劇場】

 

 

 

「一服って、大切ですよネ」

 

 

「世間ではヤニ休憩と直結するような言い回しが主ですガ」

 

 

「息抜きとか、一休みとか、喫茶店でお茶飲み休憩とカ…」

 

 

「そういう言い回しもできますよネ」

 

 

「だからこそワタクシはこの世界の裏で一服するのでス」

 

 

「決して決してたばこなんて吸ったりしない、より健康的な一服をするのでス!」

 

 

「そこら辺に生えてる大麻よりも中毒性の高いたばこなんて吸ったりはしないのでス!」

 

 

「ええ!そうでス!誓って吸ったりなんかしませン!」

 

 

「……だのにワタクシは、つい最近、健康診断にて肺炎と診断されましタ」

 

 

「何も吸ったり、吐いたり…肺に負担を掛けたわけでもないの二…」

 

 

「世の中、正直にかつ、綺麗に生きても…そう上手くはいかない物ですネ」

 

 

「とほほほほ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生き残りメンバー:残り9人』

 

 

【超高校級の特待生】⇒【超高校級の不幸?】折木 公平(おれき こうへい)

【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)

【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)

【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)

【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)

【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)

【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)

【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)

【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)

 

 

『死亡者:計7人』

 

【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)

【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)

【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)

【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)

【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)

【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)




お世話になります。軽めの裁判パート、前編です。





〇どーでもいい豆知識


『ニコラスは過去に、霧切響子&五月雨結(ダンロン霧切)の2人と推理対決をした事がある。勝敗は引き分け』
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