ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~   作:水鳥ばんちょ

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プロローグ -3-

【グラウンドエリア】

 

 

 謎の放送による招集に従い、俺は再びグラウンドエリアへと足を踏み入れていた。各地点に散在していた他の生徒達も、俺と同様に放送を聞きつけ、まだ全員というわけではない様だがグラウンドに集合しているようだった。

 それぞれ、誰かと話をしていたり、ベンチで寝息を立てていたり、グラウンドで走りこみをしていたりと様々な時間の潰し方をしている。

 

 

 俺自身も、これからどうしたものかと考え込んでいると………その背中を、誰かが強くたたいた。

 

 驚いた俺はすぐさま後ろを、振り向いてみる。そこには、今までログハウスエリアに居たであろう、鮫島と、古家が立っていた。

 

 

「よっ!折木。久しぶりやな」

 

「ん~?ちょ~っと違うじゃないかねぇ?……えーっと、やあ折木君、さっきぶりだねぇ」

 

「……そんなもんやったっけか?ウチもう何十年も前の事に思えるわ」

 

「それは流石にタイムトラベルを疑うんだよねぇ…」

 

「…せやなぁ……ウチタイムトラベラーやったんかぁ…まあ、細かいことは気にせんとこ」

 

「だいぶ大事になんだけどねぇ…」

 

 

 とぼけた雰囲気の会話、という名の漫才を繰り広げる2人。相変わらずのマイペースぶりである。

 

 

「折木さん!!私たちもいますよー!!」

 

「やっほ~元気してた~?」

 

 

 そんな鮫島達に続くように小早川と長門が手を振りながらこちらへ向かってきていた。此方も懐かしいような顔ぶれである。

 

 

「…鮫島達と一緒だったのか」

 

「さっきの放送を聞いて~のんびりとグラウンドに向かってたらさ~噴水広場でばったり出くわしちゃってさ~」

 

「お互い目的地は同じでしたので……一緒に参ることになったのです!!はい!!」

 

 

 成程……それでか…。

 

 ふむ……この4人がここに来たということは……既に集合していた全員を合わせると、来ていないのは後3~4人くらい………ということか。ん?待てよ…だけど…鮫島と古家がここに来たのに…あいつはどうしたのだろうか?

 

 

「鮫島、古家。朝衣とは一緒じゃなかったのか?確かログハウスエリアに向かっていくと聞いていたんだが……」

 

 

 初対面の時、噴水広場からログハウスエリアに用事があると言っていたことを思い出す。同じエリアで探索をしていた2人のことだから…おそらく鉢合わせているはずだ。

 

 ちなみに、陽炎坂もログハウスエリアへ向かっていたのだが、アイツはグラウンドで狂ったように走り続けているので…今は除外して話している。

 

 

「あー朝衣なあ。そういえば、ウチらと軽く話し終わったらすぐに部屋に篭もってもうてたなあ」

 

「放送の直後にも声は掛けてみたんだけど、”準備しているから先に行ってて”って言ってたから一緒じゃないんだよねぇ。それがどうかしたのかねぇ?」

 

「いや、あいつが言ってた”気になること”が少し気になっててな……ダメ元でも良いから聞いてみたかったんだ」

 

「気になること……ですか。確かに、朝衣さんって私達の知らないこといっぱい知ってますからね~。好奇心が湧いちゃうのも無理ありませんね!!でも聞いたところで…私に理解できるのかと聞かれれば…」

 

「何か悲しい気持ちになってきたんだよねぇ…」

 

「でも~ジャーナリストだし~。情報第一の人種だし~~。”ひ・み・つ”とか言ってはぐらかされそうだけどね~」

 

「「「あ~ありそう(やな)(だねぇ)(ですね)」」」

 

 

 何故か全員が朝衣に対して、同じ解釈を抱いているようだった。すると古家が、何かを思いだしたように…”そういえば”と話を区切る。

 

 

「その朝衣さんから聞いた話なんだけど……ここって、屋外じゃなくて、屋内なんだってねぇ。これって本当のことなのかねぇ?」

 

「それほんまもんの話やで…ウチが保障したる」

 

「一気に信憑性が失せた気がするよ~」

 

「いや……でも、それと同じようなことを雨竜も言っていたぞ」

 

 

 鮫島はよく分からんが、どうやら朝衣もこの世界の実態に気づいていたらしい。天文学者がたどり着いていた見地に、朝衣もたどり着いていたと思うと…流石としか言い様がなかった。

 

 

「えっ!そうだったんですか!全然気づきませんでした!!!」

 

「ずっと湖とにらめっこしてたからね~…そんで~最終的に湖に写る自分とにらめっこしてたよね~」

 

「そ……それは言わないで下さい!!長門さん!!あれは、何というか、流石の私も子供っぽいと思っていますし…」

 

「…はん、アホやな」

 

「きっとあんたにだけは言われたくないと思うけどねぇ…」

 

 

 その事実に対して、俺はこの天井にに写る空は"映像である”…と言うことも付け加えておいた。

 

 

「「「へぇ~」」」

 

「まっ、自慢やなくもないけど。ウチはけっこう早い段階で気づいとったけどな~」

 

「具体的にどこらへからなのかねぇ?」

 

「折木と初めて会う直前くらいからなんとな~くおかしいな~とおもてな。朝衣と話して、確証を得たって感じやな」

 

「ホントかねぇ……」

 

「…本当ですか?」

 

「本当~?朝衣さんの話に便乗したとかじゃないの~?」

 

「マジやで。ウチ仮にもパイロットやからな?お空に関しては一家言あるんやで?あんまり雑に扱いすぎるとウチ泣くで?」

 

 

 なんてことも無いという風に鮫島は鼻を高くする。しかし誰1人信じている様子は無かった。一応と言ったら失礼だが、コイツは仮にもパイロットなのだ。いわば空のスペシャリスト…おそらく真実なのだろう。今までのおちゃらけた態度がアレなだけで、その才能は本物だ。多分。

 

 しかし、身から出たさびというのか、それでもあまり信用には足られていないようだった。目を細めながらで疑う3人を鮫島は、珍しく焦りながら説得していた。

 

 ――――だけど、問題はここからだ。

 

 ……この問題を今この場で言うべきか否か、俺は指を顎に添えながら考え込む。それに気づいた小早川が小首を傾げながら、心配そうに此方に目を向けた。

 

 

「…?折木さん。何か悩み事ですか?」

 

「…………いや、何でも無い。ボーッとしていただけだ」

 

 

 少し煮え切らない態度ではあったが…。”そうですか……?”と小首をかしげながら納得してくれた小早川。

 

 だけど、いきなりここで、みんなを不安にさせるような話をするべきなのか………。そうしばし悩んでいると…。

 

 

「おう!アンタら。ずいぶんとお集まりじゃないか、アタシらも混ぜるさね」

 

「談笑中の所みたいだけど、失礼するわね」

 

 

 そんな2人の女性の声がする方へと顔を向ける俺達。そこには朝衣と反町が立っていた。女性という共通点はあるが…何とも凸凹したような組み合わせ…と少し失礼な事を考えてしまった。

 

 

「おっ…!噂をすればなんとやらやな。こんちわっす」

 

「反町さん、それに朝衣さん!!今来られたんですね!」

 

 

 2人に対して、それぞれがそれぞれの形で軽い挨拶を交わし合う。

 

 

「反町、炊事場の方はもう良いのか?」

 

「ん?ああ、十分に調べたから問題なしだよ。詳しく聞きたかったらあっちの2人に聞いてみな」

 

 

 そう反町は言いながら親指で後ろを指す。後方に居たのは…沼野とニコラス、そして贄波と雲居が見えた。…人数的に考えると、これで希望ヶ峰学園の新入生、全16名が全員揃ったらしい。

 

 しかし、こう俯瞰して見てみると…やはり壮観である。常人であれば卒倒するような、驚くべき光景が今俺の目の前に広がっている。

 

 一応、その光景の一部に俺も将来的になるはずなのだが…どうにも場違いな気分がどうしても出てきてしまう。

 

 ……だけど、同時に少し解せない点もある。

 

 俺が下調べした所によると、他にも『超高校級の極道』や『超高校級の王女』などの、話題となっている新入生も入学する予定となっているはずなのだが……未だにその姿は見られない。

 

 前評判通り、入学すると噂されていた超高校級の生徒は、『超高校級のチェスプレイヤー』の水無月と、『超高校級の陸上部』の陽炎坂と……他数人。

 

 俺が集めていたのは偽の情報だったのか、ネットの情報は操作されていたのだろうか………

 

 

 それともーーーー"本当の意味で"、俺達は集合し切れていないのか……悩ましい観点は増えるばかりであった。

 

 

「そんでや朝衣、あんさんさっき部屋でなにしとったん?」

 

「…部屋で…?ああ、あのことね…別に大した事じゃ無いわ」

 

「何かそう言われるとむしろ気になっちゃうんだよねぇ、こういうのをなんて言うのかねぇ……カリギュラ効果って言うのかねぇ」

 

「か、かり、かり……はい!そのカニコロッケ効果というのは、恐らく私も出ているみたいです!!つまりは気になります!!」

 

「難しい単語はあんまり使わない方が良いよ~?でも~私も同感だな~」

 

「なんだい、隠し事かい?アタシも興味あるさね」

 

 

 俺達に詰め寄られる朝衣は、目を見開いて驚いた様子を見せる。だけどすぐに、仕方なさげな目を細め、俺達を見やった。

 

 

「……フフフ、ヒ・ミ・ツ」

 

 

 妙齢な笑顔のまま、俺達の予想した通りの返しをしてきた。…その反応に、俺達は"はぁ…”と小さくない落胆を表わした。

 

 

「あ~やっぱり~~しょうが無しだけどね~~」

 

「まっ、この場面で聞けるとは思っとってなかったけどなー」

 

「なんだかよくわからないけど、妙にがっかりとした雰囲気さね…」

 

「フフ、でも安心して。皆で話し合う場面になったら言おうと思ってることだから。もう少し待っててね」

 

 

 どうやら、すぐにとは言わないがお聞かせ願えるらしい。そう小さなわくわく感というのを心で感じていると…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!何か落ちてくるぞ!」

 

 

 グラウンドに立ち尽くす雨竜が、突然叫び出した。

 

 俺は反射的に空を見上げた。目をこらしてみると…確かに四角い影のような物が…かなりの勢いで落ちてくるのが分かった。

 

 

「……!みんな!!グラウンドから離れるんだ!!」

 

 

 直感的に危険だと踏んだ俺は、グラウンドに居る全員に向けて声を張り上げた。その声を聞いた雨竜、陽炎坂、沼野、雲居が芝生へ向け、全速力で駆けだしていった。

 

 

「フハハハ!!すでに予想済みだぁ!!ついてこられる物ならついてきてみるが良い!!!」

 

「フルスロットルだぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「うわっ!け、煙たいでござる。目が、目がぁ…」

 

「おい陽炎坂!!もう少しおとなしく逃げるです!」

 

 

 多少ごちゃつきながらもグラウンドから離れ、全員安全地帯へ避難できた様だった。

 

 そして、さっきまで雨竜達が居た場所には、ズシン!と大きな音を立てながら、何かが落ちた。砂埃が中を舞っているためか…その何かの影しか見えない。

 

 しかしその砂は、時間と共に晴れていき、落ちてきた何かはその姿を現した。

 

 それはお立ち台であった……運動会などで選手宣誓の時に使う、あの台であった……。

 

 

「何か……台の上に居る?」

 

 風切がボソリとつぶやいた。見てみると、確かに落ちた台の上に、丸っこく、ちっこい物体が乗っているのが分かった。俺達はさらに目をこらしてみた。

 

 砂煙が完全に消えると、段々と謎の物体がハッキリと目に映り始めた。

 

 それは……いや、ソイツはーーーーたたずんでいた

 

 シルクハットに黒いマント、そしてステッキといった、奇術師のような出で立ちをした…

 

 ……小さな"クマ”が、台の上でたたずんでいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミタチ!!グッドモーーンニング!!今日は良いお天気ですネ~」

 

 

 そのクマの奇術師は仁王立ちをしながらそう言い放った。

 

 

「ええと……グッドモーニング!」

 

「はい!おはようございます!!…………あれ?」

 

 

 数人の生徒は反射的に返してしまう…。ほんの一時の静寂が流れる……。

 

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!しゃべってるんだぜえええええぇぇぇぇ!!!」

 

「ク、クマが、クマのぬいぐるみがしゃべってますうううううう!!!」

 

「しかもなんかカッコいい衣装を着ているでござる!ハイカラな出で立ちでござる!!」

 

「ほんとだ!!マジシャンみたい!!」

 

「沼野君、水無月さん、それ以前にもっとおかしいところがあると思うんだけどねぇ…………陽炎坂君とか、小早川さんの反応が普通だと思うんだけどねぇ」

 

「くぷぷぷぷぷぷぷ…ふ~む、最初の掴みとしては上々と言ったところですネ。何度もシュミレーションをした甲斐がありましたネ。やはり日頃の練習があってこそ、本番で活きるというものでス」

 

 

 そのクマはさも当然のごとく、しゃべり始め、さらに言葉を重ねている。この奇妙奇天烈な光景に生徒達は様々な反応を示していった。

 

 面白いモノを見つけたように愉快そうにする者、おとなしく傍観する者、クマを観察する者、警戒する者、果てにはこんな状況でも寝ている者まで……本当に様々であった。

 

 ちなみに俺はというと、情けない話…唖然とするばかり動けずにいた。

 

 

「いや~それにしても、人生っちゅうのは何が起こるかわからんもんやな。動くクマのぬいぐるみ……なーんて中々お目にかかれるもんやないで。さすが希望ヶ峰学園、何でもありやな」

 

「中々どころの話では無い気がするけどね!!キミ」

 

「それよりも、何でぬいぐるみが動いてるのか、誰か説明するさね!!」

 

「はい!!分かりません!!!」

 

「じゃあ手は上げないで欲しかったよ~」

 

「皆落ち着いて…アレはきっとロボットよ。多分ラジコンと同じ系統の…どこかで操作しているオペレーターがいるはずよ」

 

「ほほう…カラクリと来たかぁ……では実際に、アレがどうやって動いているのかどうか……中身を解体……イヤこの場合は解剖?をしておきたいところだなぁ……」

 

「大変申し訳ないのですが、ワタクシの中身は企業秘密となっておりまス。残念ながら、お教えすることが出来ないのでス。いやしかし、好奇心の対象にされるというのは存外、悪くないものですねエ!」

 

「む……丁寧な物言いで断られてしまった……俄然興味が湧いてきたぞぉ!」

 

「好奇心が暴走してるんだよねぇ…」

 

 

 見た目は完全にクマなんだが。クマとは思えない程、物腰柔らかい調子のよさそうな声を上げていく。その意味不明な光景が、俺達の混乱を加速させていく。

 

 だけど…朝衣の言うとおり、アイツがロボットだとするなら何て完成度の高さなのだろう。本当に生き物しか見えない。雨竜が好奇心をそそられてしまうのも無理は無いのかも知れない。

 

 

「でもさ~その操縦者って言うの~?それってどちら様~?」

 

「知るわけ無いですよ…でも………きっと私達の中の誰かですよ…………誰ですか!こんな大それた演出考えた奴は!さっさと正体を現すですよ!!」

 

 

 雲居は俺達の方を向き、荒々しい口調で呼びかけた。どうやら、彼女は俺達の中にあのクマを操る犯人がいると思っているらしい。

 

 

「ノンノンノンノンノン。全くもって見当違いというモノですヨ?雲居さん?」

 

「はぁ?どういうことですか?」

 

 

 英国紳士のような口調で、クマは雲居の説を否定する。その返答が気にくわなかったのか、少し切れ気味で反応する雲居。

 

 

「むなしい……むなしいよ。その荒々しさは嵐のようだ、共に歌を歌おう。いずれ心の雲は晴れ上がり、凪となるはずさ」

 

「落合。いまどうして嵐が起こっているのか理解しているですか?まともな言葉遣いをしないと蹴り入れるですよ」

 

 

 怒りを助長させるような落合の発言に雲居の眉間にさらにしわが寄せられる。落合なりのなだめ方だったのかもしれないが、明らかに人選が不適切過ぎたみたいだ。

 

 

「ミス雲居、まあまずは落ち着きたまえ。ミスター落合はこう言ってるのさ。『あのクマが現れてからココに居る全員の中で怪しい動きをしていた人間はいない。故に、ココにいる人間を疑うのはナンセンス……』とね?」

 

「どこをどう読み取ったらそんな解釈になるんだよねぇ!?」

 

「ただテキトーに回りくどいこと言ってただけじゃなかったんだね!!」

 

「気づかなかったんだぜええええええええええええ!!!!!!!!!」

 

 

 落合の言葉を大胆に代弁するニコラス。さすがの雲居も困惑の表情をし出す。俺達も含めて。

 

 

「私も、落合君の意見に同意させてもらうわ。あのクマが現れたときや、動作しているとき、勝手に皆の手元や表情を観察させてもらったいたのだけれど、特に怪しい仕草をしている人間はいなかったわ」

 

「ずっと大人しくしてる思ったらそんな細かいことをしてたのかい……末恐ろしいこったね……」

 

「観察することは大切ですからね!!尊敬します!!」

 

「悪いとは思っているわ」

 

「いや……悪いと思っている表情には見えない」

 

 

 どうやら、この喧噪の中で、朝衣は俺達の一挙一動をじっくり見て、分析していたらしい。

 

 クマがロボットだといち早く気づいたのも彼女だし…そして現れた点でまずは俺達を疑うことから始めたというのだから……彼女の極限までの冷静さの一端を、垣間見たように感じた。

 

 

「……そうですか…それならもう何も言い返せないですね」

 

「まぁまぁ。人は何時だって間違う物なのだよ…気にしなさんなよ蛍ちゃんよ」

 

「コイツに言われるとこうもはらわたが煮えくりかえるんやから…人間って不思議やな」

 

「……と、まあこれで拙者たちの要らぬ疑いが晴れたところで、そろそろ本題入った方が良いのではないでござるか?」

 

「…?本題、って?」

 

「もちろん…………貴方についてよ。小さなクマさん?」

 

 

 朝衣はさっきの仕方なさげの目つきでは無く、鋭い眼光でクマを射貫いた。クマはその質問に呼応するように“くぷぷぷぷぷ”と含み笑いをし、そして、オッホンと咳払いを挟んだ……。

 

 

「ついついキミタチの様子を観察するのに夢中になってしまい、申し遅れてしまいましたネ。ワタクシの名は“モノパン”。『希望ヶ峰学園直轄の研修施設『ジオ・ペンタゴン』施設長』を務めさせていただいておりまス」

 

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【ジオ・ペンタゴン施設長】 モノパン

 

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 ”以後お見知りおきを”と頭を下げ、言葉を終止させたモノパンというロボット。

 

 

 研修施設?ジオ・ペンタゴン?始めて聞いた単語ばかりを羅列され、俺の頭の混乱はさらにカオスを極めていった。

 

 

「あっそれとワタクシ、クマではありませんからネ?正確にはパンダですからネ?」

 

「え!パンダだったんですか!?そんなクマのような容姿ですのに?」

 

「へぇ~マントとかモノクルでよう見えへんから、気づかんかったわ」

 

「何どうでもいいことに驚いているんですか……。パンダはホッキョクグマの仲間なんですから、同じようなもんですよ」

 

「イヤイヤイヤイヤ、全然違いますからネ?ワタクシとしては差別化するという点で結構重要なことなんですからネ?」

 

「誰がお前と差別化するんですか……」

 

 

 いや確かにパンダには全然見えないが…それでも本人?はそう言い張るのだから…パンダなのだろう。だけど、そんな中身の無い問答が繰り広げられる途中、話の脱線にしびれを切らした朝衣が“そんなことよりも……”と語気を強めた。

 

 

「ジオ・ペンタゴン……だったかしら?そんな施設見たことも聞いたことも無いのだけれど……詳しく教えてもらえて?」

 

「そ、そうだ!後、なんで俺達がココにいるのかについても説明してもらうぞ!」

 

 

 俺は朝衣に便乗するように質問を重ねていった。

 

 

「まあまあ、そう焦らずニ。物事には順序というモノがありまス。順番に、きっちりと、そして大事なところはボヤかして答えさせてもらいますヨ」

 

「最後の一言は明らかに余計だ……」

 

「もう完全に言いくるめる気だよ~」

 

 

 そんな小言はなどお構いなしというように、モノパンは杖を手に置き、淡々と、この世界について説明を始めていった。

 

 

「まずこの『ジオ・ペンタゴン』についてですネ……まあさっきも言った気がしますが、ココは希望ヶ峰学園直轄の研修施設であり、そして宿泊施設でス」

 

「研修~?宿泊~?」

 

 

 確かにさっき、そんな事を宣っていた気もするな……。まさか、ここは希望ヶ峰学園の一部?こんな施設があるだなんて…初めて聞いた。

 モノパンは続けるように、ステッキを回しながら台の上を右へ左へと往復しながら話しを加えていった。

 

 

「良いですカ?キミタチはまだ入学して間もない空も飛べないひよこちゃン……そんなひな鳥を立派なニワトリにしてあげるように訓練すル。ココはそういった施設であり、そのための教官としてワタクシはここに立っているのでス」

 

「ニワトリはそもそも空飛べないんじゃないかねぇ……」

 

「じゃ、じゃあログハウスエリアにあった、あの家、は……?」

 

「キミタチにとってのパーソナルスペース。いわゆる個室でス。丁度16人全員分あるので、ハブりは勿論ありませン」

 

 

 鼻につくその言い方が少し気になるが……だけどなるほど、宿泊施設、か。だから倉庫の備蓄が潤沢だったり、宿泊する用の設備が整っていたのか…。

 

 

「キミタチを立派な希望ヶ峰学園の生徒として迎えられるように、良く言えば短期的に、悪く言えば突貫的に研修する施設。それがココ『ジオ・ペンタゴン』!!」

 

 

 “続いて所在についてですが……”と話すぞぶりを見せるモノパンだったが……。

 

 

「すごく、すごく言いたいのですが……この件につきましてはお口チャックとさせていただきまス。誠に申し訳なイ」

 

「申し訳ないなら話せよって言いたいよ」

 

「もう言ってるんだよねぇ……すんごいキレながら言っているから余計に怖いんだよねぇ」

 

 

 反町は俺達の何人かの心の声を代弁してくれたが、その雰囲気も古家が代弁してくれた。しかし、そんな質問を飛ばしても…モノパンは本当に口を閉ざしてしまったため、何も返ってこない。黙秘権を行使し始めた。

 

 

「モノパンよ……では質問を変えよう……この紛い物の空は一体何なのだ。所在が言えない理由と関係があるのか」

 

「いやぁ……もう関係アリアリですヨ!この場で映像のスイッチ切ったら即バレますネ!えエ!!」

 

「なぜそこまで強気に出てくるのか理解しかねるが……しかし、どうして隠蔽する必要がある。貴様に何のメリットがあるのだ」

 

「クプププ……いきなりマジックもせずタネ明かしを始めるマジシャンがいないように、サプライズという名のタネは常に重要な場面まで取っておくモノ……そして取っておいてからのカタルシス……それがワタクシにとってのメリット。ではダメですかネ?」

 

「…ダメよ」

 

「……そうですか……ン~~まあ、地球のどこかにあるということくらいなら、教えておいてあげましょウ」

 

「フッ……驚愕に値するほどのアバウトさだな……だが!しかぁし!それでこそ観測しがいがあるというモノ……クク、滾る滾るぞ!!フハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「分かってたですけど、コイツやっぱうるせえですね」

 

 

 常人には理解できない琴線に触れたため、えげつない高笑い始める雨竜。そして、結局大事な部分にもやをかけるモノパン。

 

 2人の問答はあまり情報の密度は無く、何も分からずじまいで終結してしまった。すると、雨竜の近くに居た水無月が元気よく手を上げ“はいはいはーい”と自分に注目を集める。

 

 

「はい水無月さン!他に何か聞きたいことでモ?」

 

「うん!あのさ、研修っていっても具体的に何するの?後さっき短期的っていってたけど、何日くらいココに居なきゃいけないの?」

 

「そうさね。アタシにも待ってる家族gあ居るんだ。パッパと済ませて、パッパと帰りたいところなんだけどね」

 

「あたしも、書きかけの論文を早く仕上げないと、研究所の人にどやされちゃうんだよねぇ……」

 

「俺も!!!大会に向けての!!練習が!!あるんだああああああ!!!速くしてくれええええええええええ!!!!!!」

 

「ああもうウルサイですねエ……では先に期限から発表しておきましょウ。はあ、もうちょっともったいぶっておきたかったの二……」

 

「どこにもったいぶる要素があるんですか…たかが期限くらいで」

 

 

 何故かウジウジと小石を蹴飛ばす動きをするモノパン。俺も雲居と同じように、その態度に違和感を持った。何をそんなに焦らす必要があるのか……何がそんなに面白いのか……俺は、次の言葉を聞いたとき…

 

 

「えーでは発表させていただきまスこの施設でのキミタチの滞在期間は――」

 

 

 

 ――――その真意を知ることになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一生でス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はっきりと、空気が変わるのがわかった。今までの穏やかな雰囲気は一瞬にして消え去り、その言葉は、この場を張り詰め、凍てつかせていった。

 俺も、周りの生徒も、モノパンが言ったことの処理が進んでいないのか、固まったまま動かないでいた。

 

 

 

「は?」

 

 

 

 一体誰が発したのか、もしかしたら俺が漏らしてしまったのか。そんな疑問を孕んだ声は、虚空へ溶けていく。

 

 

「い、一生……って。どど、どういうことですか。私馬鹿なんでよく分からないんですけど……」

 

 

 焦るように、おびえたように、わずかに震えた声で小早川はモノパンにそう語りかけた。

 

 

「一生と言ったら一生ですヨ。永久、永劫、永遠、言葉の意味くらい……分かりますよネ?」

 

「いや、わ、わかりますけど。でも、どうしてーーーー」

 

「ちょっと待つでござる!!先ほど短期的とか、突貫的にとか説明していたではないでござるか!!ア、アレはなんなんでござるか!!」

 

「そうだ!!お前の!!言っていることは!!矛盾しているんだぜええええええええ!!!!」

 

 

 小早川の言葉を遮り、沼野と陽炎坂はモノパンに慌てた様子で言葉の穴を突いていく。すると、モノパンはため息を吐き、仕方なさげな態度で、その真実を語っていく。

 

 

「ああ……アレはワタクシが適当に作った設定、そういう施設があったら良いなあという、妄想でス」

 

「ででで、で、でたらめでござったか!?信じた拙者、無念!」

 

「ま。待つのだモノパン!では、同様に言っていた希望ヶ峰学園直轄とか貴様が施設長だというのも嘘っぱちかぁ!!」

 

「くぷぷぷ……安心してくださイ。ここが希望ヶ峰所有の施設であることと、そしてワタクシがココで1番偉いと言うことは本当ですのデ」

 

 

 一体どこを安心すれば良いのだろうか……だが、この施設は希望ヶ峰学園の運営下にあるということは間違いないようだった。だけど…それでも…。

 

 

「そんなことなら私は帰らせてもらうですよ。こんなところで一生過ごせとか、マジであり得ないです……家にどんだけ積んでる本があると思ってるですか」

 

「せやせや、ウチらも暇や無いんや。忙しい中を縫って入学式参列したっちゅうのに…解散や解散。はよ帰ってお空で散歩や」

 

「あ、あたしも行くんだよねぇ」

 

 

 そそくさと雲居と鮫島、古家はモノパンに背を向け帰ろうと舗道へ足を進め始めていた。

 

 

 

 だけど――――――

 

 

 

「…………無理だ」

 

「………あん?折木、なんか言ったですか」

 

「ココから出ることは……できない」

 

「…………え?」

 

 

 そう、俺達が探索した『ログハウスエリア』にも、『ペンタ湖』にも、『野外炊事場』にも、この『グラウンド』にも、出口らしき扉は無かった。

 そして、『中央棟』にも、怪しい扉は複数あったが……てこでも動かず、ただ立ち塞がるのみで出入り口としての役割を果たしていなかった。

 

 

 

 つまり、この施設から脱出する手段は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――無い。

 

 

 

 

 

 

「なな、何言ってるですか、そんなことあるわけーーーー」

 

「いや、ミス雲居。ミスター折木の言っていることは正しい。正しすぎるくらいだ……繰り返そう、今ボク達に…この施設から出る手段は……無いんだよ」

 

「そんなの…信じられないんだよねぇ!!」

 

「んなアホな話信じられるわけ無いやろ…あんさんらでウチらをドッキリかけとるんか?」

 

 

 鮫島は朝衣や贄波、雨竜、水無月に顔を向けるが、顔を背ける、伏せる、苦くするなど、誰も肯定するそぶりを見せなかった。

 

 

「……っ!おいモノパン。出口ぐらいちゃんとあるんですよね!!そうって言うですよ!!!」

 

 

 生徒の反応が芳しくなかったためか、雲居は焦りながら壇上のモノパンにくってかかった。だけど…

 

 

「もちろん…………この施設には出口はありません。くぷぷぷぷ残念でしたネ~」

 

 

 モノパンは涼しい顔で、鮫島達にとどめの一言を放った。

 

 

「う、嘘やろ……」

 

「あわわわわわわわ……」

 

「え?え?どういうことですか私、なんか色々ありすぎて状況が飲み込めていないんですけど……」

 

「安心しな。アタシも飲み込めてないんだからね………それよりもアンタら、どうして先に話さなかったんだい……?」

 

 

 動揺する小早川達を見て思ったのか、反町はほんの少しの疑問と怒りを含めた言葉で俺達に問いかけてきた。

 

 

「ふっ…要らぬ混乱を避けるために…報告会の時にでも打ち明けようと考えていたんだけど…………とんだイレギュラーの所為で…ボクらの采配はどうやら裏目に出てしまったみたいだね」

 

 

 “まっ、今更言っても言い訳にしか聞こえない、ね……”ニコラスはハンチング帽の先を目が隠れるくらいまでかぶり直し、そう言った。

 

 俺自身も、もっと早く言っておけば良かったとは後悔する……しかし、結局どこで言うべきが正解だったのか……俺にはわからない。多分、誰にも分からない。

 

 反町もそれは分かっているのか…何処へぶつけて良いのか分からない怒りを、地面にぶつけていた。

 

 

「くぷぷぷぷぷ、良い感じに険悪な雰囲気になってきましたねエ……」

 

「良い感じにって…誰のせいでござるか!」

 

「……でも待ってちょうだい。少しおかしくないかしら?この施設に出口が無いなら、どうやって私達はここに入ってこれたの?」

 

「そ、そうだよねぇ!あたし達がココに入れたなら、出る手段があるに違いないんだよねぇ!」

 

 

 ひとつまみの希望にすがりつくように、古家は朝衣の意見に同意していった。

 

 

「ええ、もちろん。この施設の出入り口はあります。しかぁし!!…………その道をただでは教えられないし、開かないのでス!!」

 

「何またもったいぶってるさね!!さっさと教えな!!!」

 

「イヤですよ~、だって開けるには……とても、とても大事な条件があるのですかラ……それもとびっきりに難しく…でも結構簡単な…条件がネ?」

 

「それだよそれ!!教えてよ!その条件をさ!!モノパン!!プリーズプリーズ!!!」

 

 

 水無月の質問にモノパンはまた不適な笑みを浮かべる。全員がモノパンに視線を注ぐ。だけど、またさっきのような、いやそれ以上の不安感を俺を支配していった。

 

 

 また、何かヤツは爆弾を落とそうとしてる…俺はそう直感した。

 

 

「この施設から出るためには、この施設から卒業する必要があります。そしてその卒業条件はこの施設の秩序を破ること……」

 

「秩序、を破、る?」

 

「回りくどいですよ、さっさと言うです!」

 

「つまり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ……誰かを、殺してくださイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、俺達はその言葉に…"ころす”という言葉に耳を疑った。

 

 

 ……koroす?コロす?頃す?…………………殺す?

 

 

「人が人を殺す……たったそれだけで、ココから出ることができるのでス」

 

 

 まるでゲームの裏技を教えるように、必勝法を教えるように、揚々とモノパンは俺達にココからの脱出方法を提示してきた。

 

 

「以上、施設への卒業条件の説明でしタ」

 

 

 ステージでのパフォーマンスを終えたマジシャンの様に丁寧なお辞儀をするモノパン。

 

 

「何なんだ……何なんだ!!人を殺せって!!そんなこと……出来るわけ無いだろ!!!」

 

 

 俺は目一杯の怒りを込め、目の前の存在に対して声の限りに叫んだ。

 

 

「簡単なことじゃ無いですカ?ちょ~っと誰かの家にお邪魔して、ナイフとか石とか持って、ひと思いにザクッ!もしくはゴツン!たったそれだけでココから出られるんですヨ?」

 

「そのような所業、人として許されるわけないでござる!拙者をあまり怒らせると、その首、飛ぶでござるよ…」

 

「そうだよ~人を殺すとか物騒すぎるよ~。あとアルバイターも物騒だよ~」

 

「もっと他の、他の脱出方法は無いんですか!」

 

 

 俺に続き、何人もの生徒が抗議の声を上げ始めた。それもそのはずだ…だって俺達は超高校級である前に…高校生…そんな血生臭いことを聞かされて黙っていられる訳がない…。

 

 

「くぷぷぷぷ…………"無いですヨ”。キミタチがコロシアイをすること以外、ここから出る手段なんて、どこにも無いんですヨ~~~!!」

 

 

 モノパンは俺達を煽るように嘲笑する。生徒達は、今にでもモノパンに飛びかかろうとするのではないかという雰囲気さえ感じさせるほどに怒りに震えていた。実際、反町は飛びかかろうしているが、小早川に止められていた。

 

 

「…………解せぬ、実に解せぬ」

 

「ど、どうした、の?雨竜、くん?」

 

「何故だ、何故なのだ。コロシアイをすること、それ自体は分かりたくも無いが、今は千歩ほど譲って分かったとしよう…………だがしかし、そこで何故、殺しと脱出が関係してくるのだぁ……」

 

「くぷぷぷぷぷ、一見相まみえられらない二つの事柄が結びつかないっテ?――――そんなの簡単ですヨ……鍵が無ければドアが開かないように、脱出するためには殺人と言う名の鍵が必要不可欠。ただ、それだけなんですヨ?くぷぷぷぷぷぷプ」

 

「……脱出を口実に、ワタシ達の頂点に君臨するか。フッ、笑えんなぁ……」

 

 

 雨竜は口角を上げるが、目を笑わせずモノパンをにらみつけていた。

 

 

「どうして…………コロシアイなんだい?」

 

「ン~?また新しい質問ですカ?ニコラスくん?でもさっきの雨竜クンの質問と同じようなニュアンスに聞こえますガ……」

 

「ボクが聞きたいのは…キミの目的だ……何故ボク達にコロシアイを強要する。強要することで…何がキミを満たすんだい?」

 

 

 ニコラスのその声は今までのようにお気楽な色を持たず、ただ真実を究明しようとするように鋭く尖った言葉で、モノパンを貫く。その言葉に対して…モノパンは少し考え込む。

 

 

「目的、ですか……まあそれぐらいであれば答えて差し上げましょウ……」

 

 

 モノパンは今までの比にならないほど酷くゆがんだ笑みを俺達に向けた。その浮かべられた表情を見た俺は背筋どころか、五体全てに寒気が走ったように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……『絶望』……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………絶、望?……確かに俺は、奴の言葉をそうとらえた。

 

 

「ただ、ワタクシは絶望を求めているのでス。より具体的に言うなら、ただ絶望している姿が見てみたいんです」

 

 

 モノパンはマントを翻し、心をさらに昂ぶらせたように語り続ける。

 

 

「さあ!殺し合ってください!!殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺銃殺呪殺、殺し方は問いませン!ドンドン、ドンドンドンドンドンドンドンドン殺し合ってくださイ!!そしてワタクシに絶望する姿を見せてくださイ!!」

 

 

 これが、奴の本性なのか……?俺は先ほどの穏やかな態度から一転、狂気にあふれたモノパンの姿に、今までの怒りは消え去り、得体の知れない恐怖が体を覆っていった。

 

 

「く、狂ってるです……今まであらゆるクレーマーを見てきたですけど、ぶっちぎりで狂ってるです」

 

「アイツやばいよ~この世の終わりだよ~人生最悪の日だよ~」

 

「むむむ、なんとも面妖な……」

 

「おっと………くぷぷぷぷぷ、失礼。少し興奮しすぎてしまいましタ……お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありませン」

 

 

 先ほどの狂気はどこへやらと言ったように、酷く穏やかな紳士的な口調に戻る。その切り替わりぶりに、あの雨竜や水無月ですらも絶句していた。

 

 

「コホン。それでは気を取り直しテ……キミタチ、足下に注意してくださイ」

 

 

 するとモノパンは気を取り直した様に、束になった"何か”を持って、フリスビーのように振りかぶった。

 

 

「受け取りたまエ!!」

 

 

 すると俺達の足下に四角く、平べったいカードのような物が突き刺さった。俺達は恐る恐るとその四角くて薄い何かを拾い上げる。そしてそれがなんなのか…物騒な物では無いだろうか…そう観察を始めてみる。見てみると…その裏面らしき部分に、漢字で『電子生徒手帳』と印字されていた。

 

 

「なんだ?これ」

 

「・・・・・・で、でんし、せいとて、ちょう?」

 

「その通リ!!これは君たちにとって生命線とも言える代物!大事にしてくださいヨ~?」

 

 

 非常に軽く、持ち運びしやすい。友人が持っていたスマートフォンなるものによく似ているようだった。

 

 

「それでは皆さン!電子生徒手帳をお開きくださイ」

 

「ん?どうすれば開くんだ?」

 

 

 俺は電子生徒手帳を開こうと、小さな隙間に爪を入れ、剥がそうと試みる。

 

 

「いやいやいや、多分”電源を起動してください”て意味だと思うねぇ」

 

「………何?そんなハイテクな機能が・・・・・・」

 

「大抵の電子機器には付いてなきゃおかしい機能だと思うんだけどねぇ……」

 

 

 古家の介護のもと、電子生徒手帳の側面にある丸い突起物を押してみると『超高校級の特待生:折木 公平』と表示された。

 

 

 どうやらこれで電源が点いたことになるらしい。……何てハイテクなんだろうか…。

 

 

「…驚くことに少し手こずっていた生徒も居たみたいですガ・・・・・・全員開きましたネ?良いですネ?…それでは、規則と書かれているアイコンをタッチしてみてくださイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 モノパンの言ったとおりに、画面に表示されていた規則と書かれたマークに触れてみると、以下のような項目が列挙されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

[№1]

 生徒達はこの施設内だけで共同生活を行います。共同生活の期限はありません。

 

[№2]

 夜10時から朝7時までを”夜時間”とします。夜時間の間、出入りを禁止する区域があるので、注意しましょう。

 

[№3]

 ジオ・ペンタゴンについて調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

 

[№4]

 施設長であるモノパンへの暴力を禁じます。振るった場合、罰則が生じます。

 

[№5]

 施設内で殺人が起きた場合、全員強制参加による学級裁判が行われます。

 

[№6]

 学級裁判で正しいクロが指摘できれば、殺人を犯したクロだけがおしおきされます。

 

[№7]

 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロ以外の生徒であるシロが全員おしおきされます。

 

[№8]

 クロが勝利した場合は卒業扱いとなり、外の世界に出ることができます。

 

[№9]

 シロが勝ち続けた場合は、最後の2人になった時点でコロシアイは終了です。

 

[№10]

 モノパンが殺人に関与する事はありません。しかし、コロシアイの妨害があった場合この限りではありません。

 

[№11]

 電子生徒手帳は貴重品なので壊さないください。

 

[№12]

 「死体発見アナウンス」は3人以上の生徒が死体を発見すると流れます。

 

[№13]

 なお、学園長の都合により校則は順次増えていく場合があります。ご了承ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうことで……みなさん、以上の規則を守って楽しくレッツコロシーーーー」

 

「――――モノパン?少し良いかしら?」

 

 

 朝衣は手を上げ、モノパンへと質問を投げかけた。

 

 

「んっん~?何ですか~?朝衣さン?今良いところでしたの二」

 

「この『学級裁判』って……一体何なの?」

 

「くぷぷぷ、良いところに目を付けましたねェ……そう!今から説明しようと考えていた…まさにコロシアイの醍醐味と言っても過言ではない要素なのでス!!」

 

 

 まるで好きなことを聞かれてはしゃぐ子供のように……いや子パンダのようにテンションを再び上げるモノパン。今までのヤツの言動から…もうイヤな予感しかしてこない。

 

 

「それでは学級裁判について説明させていただきましょうウ……」

 

 

 モノパンはコホンと何度目かのわざとらしい咳払いをする。

 

 

『まずキミタチの中で殺人事件が起こってしまった場合、全メンバー強制参加による学級裁判が行われまス』

 

『学級裁判では、殺人を犯した“クロ”と、それ以外の他の生徒の“シロ”が対決しまス』

 

『この学級裁判の場では『クロは誰か?』を、キミタチに議論してもらいまス』

 

『そして、その後に行われる“投票タイム”で、多数決によって導き出された答えが正解だった場合……』

 

『殺人を犯したクロだけが“おしおき”され、残った他のメンバーで共同生活を続けることになりまス』

 

『た・だ・し!もし学級裁判で間違った人物をクロに選んでしまった場合は……罪を隠し通したクロだけが生き残り、残ったシロ全員がおしおきされてしまいまス』

 

「以上が学級裁判の説明となりまス……いや~いつ聞いても画期的かつ知性的なシステムですヨ」

 

 

 マニュアルに羅列された項目を丸々暗記したように、スラスラと説明を終えるモノパン。思った以上にわかりやすかったためか、なんとなく学級裁判を理解することは出来た……しかし。

 

 

「あ、あの~不躾ながら……説明の中に出てきた“おしおき”ってなんですか?」

 

 

 モノパンに対する恐怖心が拭えていない小早川は、かしこまりながらモノパンに尋ねていった。

 

 

「まあ端的に言うなら……『処刑』ですヨ」

 

「しょ……処刑…」

 

「ええそうですとも。だって秩序を破って自分たちの仲間を殺したんですヨ?目には目を、歯には歯を、そして命には命を……それ相応に命をかけてもらわないト……」

 

 

 モノパンの瞳から有無を言わせないほど圧倒的な威圧感を放たれた。俺はその気に当てられ少し後ずさってしまう。

 

 ――――本気だ、本気で規則を、秩序を破る者を亡き者にする気なんだ。俺はそう感じ取ることが出来た。

 

 

「くぷぷぷぷ、さあてと……ワタクシが説明したい部分は大体終わってしまったので、そろそろワタクシはおいとまさせていただこうかとーーーー」

 

「待てえええええぇぇぇぇぇ!!オレ様は!!まだ!!何一つ!!納得なんて!してないんだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「陽炎坂殿の言うとおりでござる!特に13番目の規則!了承できるわけ無いでござろう!!」

 

「……貴様の裁量でいくらでも規則をいじれるが如き文言。怒りを通り越して呆れたものだぁ……世界の観測者として捨て置けんぞぉ」

 

「それに、10番目の項目にある『モノパンはコロシアイに関与しません』……やったけ?それも本当かどうかも怪しいところやで」

 

「そうだ~そうだ~ぶ~ぶ~。ゲームマスターとしては不適だぞー!」

 

「つーかアンタに色々管理されることがアタシとしては癪に触るんだよ……壇上から降りてきな、拳と拳で語り合おうじゃないか」

 

「そ、反町さん一端抑えましょう!きっと神様が見てますよ!泣いちゃいますよ!」

 

「いいや、1回焼き入れとかないとアタシの気が済まない!!頬はぶたれて無くても、気に入らなかったらぶちのめす!!アタシが信教している神の教えだよ!!」

 

「神様!!せめてぶたれてからぶちかえすように考え直してください!!」

 

「この光景……うん、実に自由な風だ……興が乗ったよ、空騒ぎのワルツを一曲、奏でてみようかな……ギターが良い?バイオリンが良い?希望があれば何でも弾いて見せるよ?」

 

「無音のままでいることを希望するです……頼むから風を読む前に、空気を読むです……!」

 

「皆ひとまず落ち着いて。焦る気持ちは分かるけど、今は――――」

 

「……なんかうるさい。眠れない」

 

「風切さん!?あんた今まで眠ってたのかねぇ!」

 

「驚くほどの図太さだな……」

 

「くぷぷぷ。予測通り騒々しくなってきましたねエ……やはり人間というの生き物は理解がたやすい……たかだかルールを提示しただけで…この有様になんですかラ」

 

 

 さすがに皆の堪忍袋の緒が切れたのか、陽炎坂の怒りを皮切りに朝衣や小早川の制止も聞かず、それぞれ言いたいようにモノパンにブーイングを飛ばす。

 その様子をモノパンは薄ら笑みを浮かべ、まるで神になったかのように俺達を見下ろしていた。そして、“パチン”とその柔らかそうな丸い手から出るとは思えない音をモノパンは出し、俺達を静めた。

 

 

「だからこそ…そこに"力”というファクターを与える…それだけで人とは一気に従順な獣へと成り下がるのでス」

 

「何を言っているんだい?キミ」

 

「大した事ではありませんヨ……ただ。キミタチの置かれている立場を知らしめるために、少し余興を挟もうと思っただけですヨ」

 

「……余興?」

 

「ワタクシが順番にキミタチに指を指していきます。そして、指の止まった生徒にはサプライズプレゼントをお届けする……わかりやすいでショ?」

 

「それってただの神様の言うとおりじゃないの?」

 

「だ~れ~に~い~た~し~ま~しょ~お~か~ナ~」

 

「無視されちゃった!?」

 

 

 モノパンは一定のリズムを刻みながら、俺達を順番に指を向けていく。酷くお茶目な絵面ではあるが、俺は内心穏やかではなかった。

 最後に指を指された人はどうなってしまうのか……先ほどのモノパンの威圧感を思い出し、一滴、汗が顔から流れ落ちていった。

 

 

「モ~ノ~パ~ン~さ~ま~の~い~う~と~お~リ!!」

 

 

 

 

 止まったモノパンの指先は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――"俺”に向けられていた。

 

 

「見せしめはアナタでス!!……出てきてくださ~い、ロンギヌスの槍~」

 

 モノパンの背後が光る。俺はただならぬ殺気を感じ、後ろに下がろうとしたが……。

 

「折木くん!動いちゃだめ!!」

 

 朝衣の叫びを聞き届けた俺は、体の動きを止め、硬直させた。瞬間、モノパンから飛んできた何かが頬をかすめた。背後で何本もの木がなぎ倒される音が聞こえた。

 

 頬に生ぬるい暖かさを感じた俺は、震えた指先で頬を撫でる。指先を見やると、べっとりと血が付着しており、自分の頬からダラリと血が流れ出していることに気づいた。

 

 急な脱力感に襲われた俺は腰から地面へと崩れ落ちてしまった。

 

 

「お、折木、くん!」

 

「うおおおおおおお!!折木ぃぃぃぃぃぃ!!!大丈夫かあああああああああああああ!!!!」

 

 

 贄波、陽炎坂、そして無言のまま朝衣が駆け寄ってきてくれた。

 

 

「ありゃりゃりゃりゃりゃ……ブクブクブクブクブク」

 

「あ、ああ。も、森が……こな、こな、こなごなごな…」

 

「な、なんだい!あれは!本当に人の力なのかい!?」

 

「見えなかった……でござる。拙者の目をもってしても…?」

 

 

 慌てふためく者。戦慄する者。

 

 

「えっ?えっ?何が起こったの?うわ!!森がはじけ飛んでる!!」

 

「あかんわ~これマジであかんわ~…」

 

「冗談キツいよ~頭痛いよ~」

 

 

 未だに状況が把握できない者。こんなのは夢だと現実逃避をする者。

 

 

「……ほう、なるほど。武力による圧政ときたかぁ…お、おおおお…面白いぃ」ガクガク

 

「い、今はアイツに従っておいた方が賢明そうですね……」

 

「……中々の射撃技術」

 

「とんでもないアジタート……僕で無ければ見逃していたよ」

 

 

 冷静に俯瞰する者。的外れな感想を漏らす者。バラバラの反応にバラバラの意見。だけど、少なくとも俺達の心の中で共通して言えることがあった……

 

 

「良いですかキミタチ?この施設の長はワタクシ。そしてそのワタクシにたてつく、または逆らうという不届きな生徒には……“死”、あるのミ。おわかりですネ?」

 

 

 “コイツはイカレている”……と。

 

 

「キミタチもあんな風には、なりたくないでしょウ?」

 

 

 俺達の後ろにあるグチャグチャになぎ倒された森を指す。恐らくモノパンは施設の規則を破ることや何らかの形で自分に逆らうようなことがあれば、あの森のように……簡単に俺達の命を終わらせることが出来るのだと……そう忠告しているだろう。

 

 

「まあ、今回はほんの余興なので、かすり傷程度で済ませましたけど…………もし規則を破るようなマネをしたら今よりもデンジャラスな罰則が飛んできますからネ?……だからキミタチ、規則違反なんてくだらないことで死んでしまわないでくださいネ?ワタクシとしてはそんなの、ツマラナイの一言ですのデ」

 

 

 “つまらない”

 

 そんな俺達の命をボードゲームの駒程度にしか考えていないような発言に、俺は頬から血が流れていることなど忘れ、背筋に得体の知れないものが走ったようだった。

 

 

「つまらない……だと?」

 

「えエ……ワタクシはキミタチ才能豊かな少年少女達が切磋琢磨し、殺しあい、そして絶望に落ちていく様を見るのが楽しみであるはずなのに……自分の手で殺してしまったら、折角こ~んな立派な舞台を用意した意味無いじゃないですカ?」

 

 

 ただ希望ヶ峰学園新入生である俺達の絶望する姿が見たい……そんな子供じみた理由で、俺達にコロシアイを強要する……。

 俺はあんなに小さくちっぽけな見た目のパンダから、どうしようもない程に巨大で、真っ黒で、平々凡々な俺じゃあ太刀打ちできない程の絶望を感じ取った。

 

 

「くぷぷぷぷ、良いですカ?キミタチ……殺し合わなければ永久にココ『ジオ・ペンタゴン』から出ることが出来ないんでス……」

 

 

 俺達にコロシアイをさせようと、モノパンは殺人を教唆する。

 

 

「キミタチには居るはずでス。外に残してきた家族、友人、仲間、そして恋人…………大切さの度合いなど、今キミタチの隣にいる人間と比べてしまえばたかが知れていまス」

 

 

 俺は思い出す。希望ヶ峰学園へ向かう俺を見送った、父さんと母さん、そして姉さんの顔を。

 

 

「他人の幸せには必ず犠牲というものを踏み台にしなくてはならない。そしてキミタチは今、踏み台になるかならないかの岐路に立たされているのでス」

 

 

 俺が家族を思ったように、皆も何か大切な人や物を思い出しているのかもしれない。それがモノパンの思うつぼであったとしても、そのあふれ出した記憶の回想は止まらない。

 

 

「他人の幸せを願い、犠牲となることを良しとしますカ?それとも、今キミタチの隣にいる“敵”を蹴落としてでも幸せを勝ち取りますか?」

 

 

 モノパンの問いを俺達全員は沈黙で答える。

 

 

「全てキミタチの自由……自由に殺し、自由にだまし、自由に死に、自由に……絶望してくださイ。ワタクシはただ裁定の木槌を振り下ろすのみですのデ……」

 

 

 何も言い返せない、アイツはタダ俺達が絶望している姿を望んでいるだけ。俺達の家族愛や友情などこれっぽちも考えていない空っぽな演説を謳っているだけ。だのに…何も言い返せない。

 

 

「くぷぷぷぷぷ、良い感じにどんよりとした空気になってきましたので、もう一押し…………と言いたいところなのですガ、そろそろワタクシの舌も疲れてきましタ……最後に一言残して、本当においとまさせていただきましょうかネ?」

 

 

 モノパンは大きく咳払いをし、続ける。

 

 

「言い忘れていたことがありましたので、それも込みで一言……皆さん、希望ヶ峰学園へ入学おめでとうございまス。加えて、希望ヶ峰学園直轄研修施設改めコロシアイ研修施設『ジオ・ペンタゴン』へようこソ!!ドッキドキでワックワクの絶望的な研修生活をどうぞお楽しみくださぁイ!!!」

 

 かつてこれ程までにうれしくない最後の一言があっただろうか……俺は頼むから早く行ってくれと催促するようにモノパンをにらみつけた。

 

 

「それでは頑張ってコロシアってくださいネ~。キミタチの絶望に幸在らんことを……アディオ~ス!」

 

 

 俺達の間に最悪の余韻を残しつつ、モノパンは姿を消していった。

 

 

「…………」

 

 

 モノパンが消えた後も、誰も何も言い出さず、痛い沈黙がこの場に流れていた。すると、その沈黙を破るように、誰かのすすり泣く声が響きだす。

 

 

「う、うううう……どうしてこんなことに……私はただ楽しく学校生活を送りたかっただけでしたのに……こんなことになるなんて聞いてないです……お家に、師匠のお家に帰りたいです……」

 

 

 小早川だ。小早川が1人、手で顔を押さえながら泣いていたのだ。そんな小早川に反町が駆け寄り、側に寄りそう。

 

 

「そんなの……私だって同じです……一生ここから出られないとか、人を殺せば出られるとか、意味の分からないことに押しつぶされそうですよ……」

 

「ホントにもう無茶苦茶だよねぇ……」

 

「……やな感じ」

 

「くうううううううううう………くそおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 口々に、疲れや悪態、悔しさを言葉にして吐き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――ねーねーみんな泣いたり、叫んだりしてるけどさー。みんなはさ、結局の所、どうなの?」

 

 

 

 

 

 

 

「どう、なの、って?」

 

「さっきモノパンが言ってたじゃん、ここで一生を過ごすかー、とか誰かを殺して外に出るかー、とか」

 

 

 無邪気な顔で水無月は俺達に今最も向き合いたくない2つの選択肢を、再び提示してきた。一体のどうしたのか…今だけは、その無垢な瞳から目をそらしたくなった。

 

 

「みんな、どうなの?」

 

「ど、どうなのって。そりゃあ……なあ?」

 

「ええ!あたしに振るのかねぇ……ええと、殺しは世間一般で言うダメなことであるからしてーーーー」

 

「それは知ってるよ。カルタが言いたいのは、みんなは、殺せば出れるとか言うことを“本気にしてるのか”ってこと」

 

 

 水無月のその言葉を皮切りに、俺達の間に再び沈黙が走った。

 

 俺は、俺達はそのまま互いに互いを見合う。全員の視線と視線は交差し合い、網のように入り組んでいく。

 

 視線と視線の間を流れるのは、疑念か疑惑か、それとも懐疑か。どれにしても今の時点で、信頼という二文字は俺達の間には存在していない。それだけは分かった。

 

 

 モノパンが何度も口にしていた“誰かを殺すことでしか外に出ることはできない”という言葉によって、俺達の心の奥底に

 

 

 ――――“誰かが裏切るのではないか”

 

 

 ――――“誰かが自分を殺そうとしているのではないか”

 

 

 

 ……そんな恐ろしい疑心暗鬼の感情を植え付けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――こうして俺の学園生活は“最悪な”という三文字を添え、始まってしまった。

 

 

 平凡な俺が、平凡とはほど遠い希望あふれる世界へとやってこれて、俺は自分がやっと幸福な人間になれたのだと、最高に幸福な生活を満喫できるのだと考えていた。

 

 

 だけど……それは結局、全部勘違いだった……

 

 

 不幸な俺はどこへ行っても、不幸なまま……

 

 

 そんな俺みたいな最高に不幸な男には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――“最高に絶望的な学園生活”がお似合いなんだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生き残りメンバー:残り16人』

 

 

 

【超高校級の特待生】折木 公平(おれき こうへい)

【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)

【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)

【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)

【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)

【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)

【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)

【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)

【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)

【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)

【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)

【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)

【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)

【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)

【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)

 




どうもこんにちは、水鳥ばんちょです。
モノクマを出そうかと考えていたけど、原作の味を出すのは無理と考えたので、主催者もオリジナルにしました。まあ、勿論元ネタはあります(某猫型ロボットアニメを見ながら)。
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