ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~   作:水鳥ばんちょ

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Chapter 1 -(非)日常編- 2日目

 

「ウウッ……ヒクッ……」

 

 

 ……子供が……泣いている。

 

 

「ヒクッ……ヒクッ……ウウウウ」

 

 

……しゃがみ込んで、背中を揺らして、泣いている。

 

 

「なん、で。ヒクッ……、皆、笑う、のぉ」

 

 

顔も見えない……どこの誰なのかもわからないはずなのに……見覚えがある。

 

 

「ヒクッ、怖く、なんか…ない、もん」

 

 

……思い出せない

 

 

……思い出すことができない

 

 

……思い出そうと、していない……?。

 

 

 じわじわと希釈されていく意識は、かすかな違和感を残し、この場から去って行こうとする。逃げるように、見てはいけないモノを見たかのように、何か見たく無いものから、目をそらすように……。

 

 

 ……そして、忽然と、意識は――――

 

 

 

 

 

 

 

 ――――途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

 

【ログハウスエリア:折木公平の部屋】

 

 

 朝の日差しが、窓にかかるカーテンの隙間と隙間から漏れていく。逃げ場を求めて、光の粒子が俺の部屋の一部にじりじりと当たり続ける。

 ……その一部には、俺の顔も含まれており、架け橋のような朝の木漏れ日は俺を今ある現実へ導いていった。

 

 

「んぅ……」

 

 

 日差しの思惑通りに意識の活動を再開させられた俺は、顔をしかめ、朝特有の倦怠感に甘んじるように布団の中で体を動かす。

 

 

「……?」

 

 

 そして、毎朝自分が感じている肌触りとは違う、ホテルのベッドのような、ピンッと張り詰めたしわ1つ無い感触に気づき…思い出す。

 ……そうだ、そうだった。俺は希望ヶ峰学園に入学をすることになって、学園の中で生活を送ることになって……それで…。

 

 

「……夢、じゃなかったんだな……」

 

 

 校門をくぐったときに、急な気の消失を経験し、何処かも見当もつかないこの場所で目を覚ましたのだ。寝ぼけた頭と表情で、最低限の昨日の記憶を取り戻し、ほんの少しのため息を漏らす。

 

 ……俺がここで起きていることが夢では無いのなら……多分、あの摩訶不思議なパンダのロボットも現実に存在しているんだよな……。そして……コロシアイという俺達77期生16名を巻き込んだデスゲームについても。

 

 

「……寝て起きて、落ち着いて頭をひねらせても、現実とは思えないな……」

 

 

 顔を手で覆い、笑えるようなシチュエーションではないはずなのにあきれかえるように笑みがこぼれてしまう。脳がこの現状は、あまりにも現実離れしすぎていると…受け入れられず、誤作動を起こしてしまっているのかも知れない。

 まるでテスト前まで勉強をサボり、前日になると事の重大さに気づくことが出来ずに変な自信を持ってしまうような、そんな現実逃避をしている感覚だ。

 ……だけど、実際はテスト1~2枚と比べものになるほどの重さではない。1人以上の人間の命を背負う程の、計り知れないレベルの重さなのだ。

 

 

「……昨日はあのまま寝てしまったのか」

 

 

 起き抜けから気落ちしてしまった俺は、自分の格好を顧みてみる。そこにはベッドでもみくちゃにされ、しわだらけになってしまった自分の制服があった。昨夜は着替えもせずに寝落ちてしまったらしい。

 

 

「……とりあえずシャワーでも浴びて、着替えるか……」

 

 

 シャワールームに入り、心と体の垢でも落とすような気持ちで、手早く水を浴びる。備え付けのドライヤーで髪を乾かし、歯を磨き、身なりを整える。

 

 否が応でも人に会うことになるのだから、これくらいは最低限すませておかなくてはな……。

 

 そして服を着替えようとクローゼットに手をかけ、開けてみると…そこには俺が今現在も着ている前の高校の制服がずらりと並んでいた。ご丁寧に靴のスペアまでもである。

 

 

「同じような制服を、延々と着回すのか…………?」

 

 

 俺は気味の悪いほど同一の制服群に面食らいながらも、その中の適当な1枚を抜き取り、着替える。……どれを選んでも同じだが、どれも新品同然の保存状況であったため、使う分には問題は無かった……。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 特に決めていたわけでも無い、平凡な朝のルーティンをすませた俺は、腰を落ち着かせてベッドに座る。五分ほど休憩したら、朝ご飯でも食べに行こう……そんな気持ちで、まぶたを閉じて上を見上げていると……

 

 

『キーン、コーン、カーン、コーン……』

 

 

 どこからともなくチャイムの音が鳴り響く。音が妙に篭もっているため、外から聞こえていることが分かった。

 

 

 

『ミナサマ!おはようございまス!!朝7時となりましタ。起床時間をお知らせさせていただきまス!それでは今日も、元気で健やかな1日送りましょウ!』

 

 

 チャイムの音に続けて、モノパンの声がビリビリと響く。ありきたりな朝の挨拶が始まり…そして苛立たしいほどのテンションのまま…ブツリとマイクを切った。

 

 

「な、なんだ……?今のは」

 

 

 いきなりの朝の挨拶に驚き、少しの間呆けていると。

 

 

 ドンドンドンドンッ!

 

 

 大きなノックの音が部屋全体に響き渡る。急な打撃音に跳ね上がりはしないまでも、驚いてほんのちょっぴり飛び上がる。

 

 

「……何だか、前にも似たようなことがあったような……」

 

 

 ……そう、アレは気を失って、このベッドで目を覚まし飛び起きた後のことだ……。誰とも知らないヤツがドアをガンガンとたたき、誰とも知らない声が俺の存在の有無を確認してきたのだ。

 

 

「おーい折木ー、生きとるかー」

 

 

 そして俺はそれに“有”で答えようとしたのだが……。

 

 

「まあ、生きとると確信しとるから……入るでー」

 

 

 ……そう、こんな風に無断でズカズカと俺の領域にアイツらが足を踏み入れてきたのだ。

 

 

「……住居不法侵入です。軽犯罪でしょっ引かれるですよ」

 

「堅い話は言いっこなしやって、雲居。ただちょびっと入り口に足入れてもうてるだけやから……結果的にはセーフや」

 

「そういうのは堅いことを守れる人だからこそできる言い分ですし、セーフの基準値バグってるですよ」

 

「ウチ守っとるやん?ほら、ちゃんと靴脱いで玄関から上がっとるで?」

 

「話をそらさないで欲しいです…私は入ったこと自体にモノを申しているだけですよ……」

 

 

 “あんさんごちゃごちゃうるさいでほんま”

 

 “あんたこそ常識がグチャグチャですよ”

 

 と、朝っぱらから言葉をぶつけ合う鮫島と雲居。そうだ…俺はコイツらを含めた15人と昨日初めて出会ったんだ。将来的に同級生として接しなければいけない…希望ヶ峰学園77期生…超高校級の肩書きを持つスペシャリスト達。

 

 

 俺が手を伸ばしても届くことの無い…雲の上の存在達。

 

 

 そんな奴らが………今、人の住処の玄関で漫才を始めている……。まぁ有り体に言えば…非常識である。

 

 

 確かに鍵を閉めていなかった俺にも非はあるが…せめて返事くらいは待ってて欲しかった。俺は昨日何度ついたか分からない深いため息をつく。そしていつものジト目で2人を見つめ、暗に迷惑であることを訴えてみる……が。

 

 

「ほ~ら折木のヤツ困っとるやないか……あんさん謝った方がええんとちゃう?引き際っちゅうもんはタイミングが大事なんやで?」

 

「どういう思考したらそんなイカレた答えにたどり着くですか……本当、コイツにモラルを教えるのは、釈迦にJK語を教える並に難易度高そうですね……」

 

 

 どうやら俺の意図は汲んでくれる様子は無さそうだ……。俺は心で諦めをつかせ、取りあえず仲裁の意味を込めて2人にタイムリーな質問をぶつけてみる。

 

 

「な、なあ2人とも……さっきのチャイムについて何だが……」

 

「なんや?ああ~!あれな!……あれはな、モノパン施設長様の毎朝の挨拶や。内容通り、朝の7時に流れるみたいやで~。まぁ。朝っぱらからあの声を聞くってなると、気が滅入るっちゅう話やけど」

 

「…昨夜の10時頃にも同じような挨拶があったはずですけど…気づかなかったですか?」

 

 

 雲居達の話から、どうやら先ほどのモノパンの放送と近しいものが、昨夜も行われていたらしい。正直…気づかなかった。

 

 

「……ああ多分10時前には寝てしまっていたからかもしれん。昨夜は酷く疲れていたからな」

 

「なんや、じいさんみたいやな~ウチはバリバリ夜更かししてもうてたわ」

 

「いや…昨日あんな事があったのに…図太すぎですよ……でも老体みたいってのは、同感ですね。雰囲気的に」

 

 

 なんでか、鮫島と雲居のじいさん扱いされているのは不本意ではある。が……いつもの俺でも夜9半頃には確かに床についてしまっているので、あながちじいさんと言われても仕方ないのかもしれない。

 

 

「成程…じゃあ…そんな朝っぱらの時間に、俺の部屋へ何しにきたんだ?………何か非常事態か?」

 

 

 コロシアイが起きてしまったのか…そう思った俺は身構える。

 

 

「おぉ!!果物あるやん。アレつまんでイイ奴やろ?ならちょいと頂くで~」

 

 

 俺の質問をいつものマイペースさで受け流し、モノパンからの贈り物である果物に手を出し始める鮫島…。いや、俺はまだ許可を出していないんだが……。

 

 

「……アイツに説明を求めるのは寿命の無駄もいいとこですよ。代わりにアタシが説明するです。ていうかそのために来たまであるです」

 

「……ああ、頼む」

 

 

 俺は何回諦めなければいけないのだろうか……?少なくとも、鮫島に俺の話を聞かせることだけは完全に諦めた方が良さそうだ。

 

 

「……説明するとか大げさな前置きしたですけど……別に何か事件が発生したとか大層なことでは無いですよ。朝ご飯が出来そうなので呼びに来ただけです。はい、説明終了です」

 

「……本当に大したことなかったな」

 

「肩透かししたですか?まあそれに加えてですけど、朝ご飯を食べた後にミーティングをするそうです。今後の方針についてどうとかこうとか……」

 

「ムグムグ、ちなみにメニューは食パンとサラダ、ベーコンonスクランブルエッグ、デザートにバナナだそうやで~。食パンに何かつけたいっちゅうんやったら、倉庫から勝手に持ってきいや~って、反町が言っとったでぇ」

 

 

 そう言いながら鮫島は、その朝のメニューの1つであるバナナを頬張りながら補足を入れる。

 

 

「口に物を入れながら喋るな…!…ちなみにだが、何故お前達が迎えに来てくれたんだ?鮫島の他にも適任は居たと思うが……」

 

 

 俺の質問に、“ああ……”と何となく予想はしていたという顔をする雲居。

 

 

「鮫島や水無月、落合、とかのアホ集団が料理の邪魔ばっかするですから、ご飯が出来るまで余所に行ってろって反町からのお達しが出たんですよ……。それで、どうせだからって折木への伝言を、比較的マシなテンションの鮫島に頼んだんです」

 

 

 今も果物にありついている鮫島でマシな方なのか……。どうやら、今朝の炊事場は思った以上の無法地帯だったみたいだ。

 

 

「で、雲居はその鮫島のおもりか?」

 

「ひどく幼稚な表現をするならそうなるです。……ちなみに水無月は朝衣が、落合は沼野が相手してるです……たく、大人しく調理場の隅っこで細々と本を読むことに興じていたですのに……とんだ貧乏くじですよ」

 

「それは……ご愁傷様と言ったら良いのか?」

 

「そういう薄っぺらいねぎらいの言葉は嫌いですけど……アイツの相手は骨が何本あっても足りないので、ありがたく受け取ってやるですよ……」

 

 

 “はぁ……”と雲居は今まで何回もついたであろう大きなため息を吐く。そこにリンゴをかじりながら“なんやなんや”とそのため息の元凶である鮫島が会話に混ざり込んできた。

 

 

「ムグムグ……雲居、ため息は幸せのダストシュートみたいなもんやで~。吐きそうになったら飲み込んで、リサイクルして幸せに変換せなあかんと」

 

「ストレスの発生源がアンタじゃなかったら、素直に受け取ってるですよ……」

 

「ていうか……どんだけ食べれば気が済むんだ!俺の部屋の食糧だぞ!それ!」

 

 

 指を鮫島に指し、文句を吐き出す。しかし…。

 

 

「ゴクン……それにしても折木ぃ、うんまいなぁ、これ。誰からもろたんや?」

 

 

 俺の文句に芸術的なスルーをかまし、鮫島は俺に質問を呈する。よく見てみると、すでにバケットの上に載っていた果物の5割を食されていた。いや……受け取り主の俺より果物に手をつけているのは、流石におかしくないか?

 

 

「……それは昨晩、モノパンから受け取ったモノだ……俺に怪我をさせたお詫びだそうだ」

 

 

 俺の返答を聞いた途端、鮫島は、“んぐぅぅ!!”と喉を詰まらせたかのようにえづく。

 

 

「モノパンからなら先に言えや!……毒とか、後なんかいかがわしいものが入ってたらどうするねん!」

 

「先に話を聞かなかったヤツが何を言うですか。身から出た錆ですよ。……まあとりあえず、外面に変化は無いようなので問題なしだと思うですよ」

 

「うう~もしかした遅効性の可能性もあるかもしれへんし……あっ、何かそう思うとえらく腹の具合が……」

 

「ほぼ100パー気のせいですよ……とりあえず、これからは人の話には耳を貸すことですね」

 

 

 腹を押さえ青い顔をする鮫島を“イイ授業になったですね”と鼻で笑う雲居。……その授業料が俺の果物というのが何となく釈然としない。

 

 

「にしても、変なロボットですねぇ。高笑いしながら揚々と傷つけてきたくせに、今度は腰を低くしながら謝罪に現れる……まるで別人格ですね」

 

「……アイツ、酒飲んだ勢いで色々やらかして、後から頭下げるのに奔走するタイプやな。いや~ウチは絶対、あんな未来の見えないクマ型ロボットにはなりたないな」

 

 

 ケロッとした様子の鮫島が、いつも通りの砕けた調子で俺達の話しに茶々を入れてくる。どうやら先ほどの腹痛は本当に気のせいだったようだ。

 

 

「やらかしそうなヤツランキング堂々一位のアンタには言われたくないですよ……。それに誰もロボットに何かなりたくないですし、なれもしないですよ」

 

「なんや、ロボット差別か?」

 

「恐らく物理的にロボットになるのは不可能、と言うことではないか?」

 

「…何処をどうとったら差別に繋がるんですか…」

 

 

 会話の繋がらない鮫島のやりとりに辟易しながらも…会話は何となく続いていく。案外…この2人は相性は良いのかも知れない…。

 

 

「…ふぅ、雑談もこれくらいで良いですよね?伝言も伝え終わったことですし、そろそろ戻るですよ」

 

「おっ、エラいスムーズに終わったなぁ、さっすが俺やで。事運びの鬼やな」

 

「「お前(アンタ)はずっと食べてただけだろ(ですよ)!!」

 

 

 こんな風に、フルスロットルでボケを繰り出す鮫島に、俺と雲居は朝っぱらから疲れをもよおす。こんな騒がしい朝の始まりはいつぶりだろうか……。俺は疲れの裏に、家族との団らんのひとときのようなこの賑やかな朝への嬉しさと懐かしさをにじませた。

 

 

 俺達は朝ご飯と、そしてミーティングを行うため、炊事場へと足を運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【炊事場エリア:炊事場】

 

 

「お~う、帰ったで~」

 

 

 家に帰ってきたかのような緩い口調で鮫島は炊事場に居る連中へそう告げた。

 

 そしてその言葉の矛先である炊事場を見渡してみると、まあ予想通り俺達以外の13人の生徒達が自由気ままに時間を潰していた。

 

 

 昨日より、護身術の師弟という間柄となった小早川と反町は、キッチンにて料理を作っており、香ばしい朝のパンの匂いが炊事場全体に広がらせ。そして先ほどからお守りをされる側とおもりをする側の関係になってしまった聞いたと水無月と朝衣、沼野と落合はそれぞれ雑談を交わしていた。……沼野の場合、大分頭をひねらせているので、多分落合との会話が成り立っていない可能性が高い。

 

 そのほかにも、贄波と長門、古家に対して雨竜が大げさな身振り手振りで何かについて高説を述べていたり、万歩計を片手に高速で足踏みをする陽炎坂、優雅にパイプのようなモノを吹かしているニコラスが居たりする。

 

 

「ああっ!鮫島くん、蛍ちゃん、おっかえりー!そして公平くんには……おはよう、だね!」

 

 

 朝の全員の動きに注目していると、鮫島の言葉に反応して……こちらへ今日も今日とで、まぶしく笑顔を輝かせている水無月が駆けよってくる……。

 

 

「ご機嫌よう、3人とも。鮫島君と雲居さんはさっきぶりで……折木君も昨日ぶりね」

 

 

 当然水無月のお目付役を担っている朝衣も、付随してやって来る。

 

 

「ああ、2人とも。おはよう……」

 

「いよぉ、お2人さん。それにしても、腹減ったな~、この匂いを嗅ぐと……腹の鳴りも一段と大きなるもんやで」

 

 

 ……俺の果物を半分も盗み食いしたのに、まだ食うのか……。昨日の贄波ほどでは無いが、鮫島もこの中でも上位に入る位には食い意地が張っているのかもしれない。俺は口には出さずとも、内心そうツッコんだ。

 

 

「そうだよね!そうだよね!もお、お腹ペコペコ~……て、あれっ?でも何か、鮫島君の口元からフルーティなフレグランスが……スンスン」

 

「どうしたの水無月さん?そんなに鼻をヒクヒク動かして……」

 

 

 朝衣にはわからないらしいが、水無月は鼻が良いらしく、怪しむように鮫島に鼻を近づける。まあ別に隠すことでもないし……このまま、食事前に果物を物色していたことを言っても……。

 

 

「い、いやぁ実はな?実はやで……?ショップにな?…キシリトールガム果物フルコース味っちゅう代物が売っててな。ウチ興味本位で買ってみてん……そんでさっき暇つぶしに口に含んでみたら、これまたビックリ!数秒ごとに味が変わる変わる。バナナ味、リンゴ味、青リンゴ味……エトセトラエトセトラ。多分、その残り香が匂ってたんかもしれへんなぁ……うん」

 

 

 “これはここだけの話やから、内密に…やで?”とビックリするぐらいのホラ話を繰り広げる鮫島に、二重の意味で驚く俺。

 雲居も同様の気持ちらしく、こちらに目配せをし鮫島のでかいの背中の裏で、お互いにひそひそ話をする体勢になる。

 

 

「アイツ何枚面を厚くすれば気が済むんですか……!そんなに果物のことバレたくないんですか?ガキかってんですよ……!」

 

「あそこまで作り話を即興で作り込んでくると逆に惚れ惚れするな……アホなことには違いは無いが」

 

「とりあえず本当のことを言うです……何かこれ以上が長引くと面倒事になりそうですので」

 

「同感だ」

 

 

 俺達はお互いに意見を合わせあい、いざ説明しようと水無月達に向かい合うが……。

 

 

「ええ~~ずるいよぉ。鮫島くんだけそんなうらやましいお菓子手に入れてさ~。カルタにもちょうだいちょうだいちょうだーい!」

 

「ん~アレは~どうやらお一人様限定らしくてな?ウチが買ったので最後だったんや……だから、次入荷するまでお預けや水無月」

 

 

 どうやら手遅れらしく、水無月は鮫島のホラ話を信じ、服をガシガシとつかみかかっていた。……。俺と雲居は再びひそひそ話を再開させた。

 

 

「ほ~ら、やっぱり面倒なことになっているです。これは…本当のことを言った方が収集つかなさそうですね」

 

「朝衣も苦笑いしているな……多分、あの様子だともう気づいてると考えられる……」

 

「とんだ茶番ですよ……嘘を真実に塗り替えるなんて、二流の推理小説じゃああるまいし……」

 

 

 雲居の言う通り恐るべき茶番である。雲居が先ほど、鮫島と関わるのは寿命の無駄というのは、あながち間違いじゃ無いのかも知れない。

 

 

「おおーいお前ら!朝飯が出来たよーー!!全員席に着きなあ!!」

 

 

 そんな小さなゴタゴタが繰り広げられていると…反町が朝ご飯の支度を終えたのか、大声で俺達に朝食の準備ができたことを伝えてきた。

 

 俺達は促されるままに椅子に座っていき、それぞれ独自のタイミングで“いただきます”と、行儀良く告げながら朝飯に舌鼓を打っていった。

 

 

「…ふむ、旨いな」

 

 

 ……朝は全般的にご飯派の俺ではあったが、反町達が作るのであれば、案外パンも良いかもしれない……。

 

 と、たわいも無いことに考えを巡らせながら、食事の手を休ませず動かしていく。そして、ものの数十分で俺は皿の上のメニューをキレイに平らげるのであった。

 

 

 

 

 

 

 ……ちなみに、やはり鮫島は先刻の果物が効いていたのか……食事を半分残してしまい、反町に締められていた。…まさに自業自得である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

 

「食事が一段落したところで……皆、少し時間をいただけるかしら?」

 

 

 全体的に見て食事を進ませる手が無くなってきたところを見計らってか、朝衣から静かな声が上がった。

 

 

「昨日は色々あってできなかった報告会を始めようと思うのだけれど……良いかしら?」

 

 

 すでに予定していた集会を執り行うということを予め分かったいたために、ほとんどの生徒達から“良いよ~”や“そろそろ始めようか”と、食事の手を止めていく……。

 

 

 しかしそんな中で…

 

 

「……ていうか、今更言うですけど。集会って必要ですか?何かある程度、この施設や事態も、全員理解しているような気もするですけど」

 

 

 そこに雲居がこの集会を開くことに対して苦言を呈した。

 

 恐らく昨日あれだけ探索したし、それに加えて自由時間もあったのだから…共有する必要は無い…既に答えの分かっている答案のように今更解答を話しても、仕方が無い…彼女はそう言いたいのだろう…だけど…。

 

 

「――――ふっ、それは、どうかなミス雲居」

 

「…ああ?どういう意味ですか?」

 

 

 ニコラスが、そこに待ったをかけた。

 

 

「いや、ね。ボクは思うのだよ……本当に、この状況を、”全員が”、正しく、把握できているのかそう思ったてね」

 

「正しく……でござるか?」

 

「…それに、何かイヤに強調してる」

 

「ううむ…しかしニコラスよ。昨日あれだけのビッグバン的な出来事があったのだぞ?それでも理解できていないというのか?」

 

「ああそうさ、そうだとも。改めて聞こう………全員がこの施設の隅々まで把握している、そして我々は今どのような状況に巻き込まれているのか…それを完璧に理解できている……キミ達はそう断言できるかい?そう自分に言い聞かせてみて…、ああそうとも、と、頷くことはできるかい?」

 

「……むぅぅ…」

 

 

 そのニコラスからの問いに…俺は確かに頷くことは出来なかった。

 

 昨日この場所で反町達と話したときも、正直俺達の間に危機的な匂いは感じなかった。それはつまり、これが現実であると言うことを受け入れ切れていない…つまりそういうことと同義。ニコラスは、その緩んだ部分に注意を入れているのだ。

 

 

「そう、だから……それぞれ『ような』の理解では無く『した』にしなくてはダメなの……これからの…私達の未来のためにも…全員でここから脱出するタメにも」

 

 

 あまりにも現実味がなさ過ぎて、受け入れきれないのは分かる…だけど…少しでも良いからこの状況を重く受け止めて欲しい…そして間違っても、殺しなんて、謝った行動をしないで欲しい…そういう忠告も込めて…朝衣はこの報告会を開いた。

 

 今の朝衣の一言から、そんな意味が聞こえたような気がした。

 

 

「あの~~、個人的にですけど……これまでの今一度おさらいしていただけると私はうれしいかな~なんて。ちょっとまだ頭の整理がついてないみたいで……」

 

「……一晩で忘れた」

 

「……記憶とは基本的には刹那的なものさ、残していて良いのは自分が思う美しい記憶だけ……」

 

「うおおおおおおおおおおお!!!!この!!場所の!!名前も!!!忘れちまったんだぜええええええええ!!!!」

 

「……いや、君たちは明日に生きすぎなんだよねぇ」

 

「……これは確かに報告会は毎朝やった方が良い気がするです。いやむしろ今すぐやった方が良いですね」

 

 

 朝衣達から言われた背景も含めて…どうやら殆どの生徒が乗り気になってくれたみたいだった。それは、個人的に喜ばしいことなのだが……何かもう問題外な連中が跋扈しているようで…既に先が思いやられる気持ちになってしまった。

 

 

「……えっと~これで~満場一致したって~捉えて良いのかな~?」

 

「ええ、そうみたいね。それじゃあ、まずこの希望ヶ峰直轄の『ジオ・ペンタゴン』この施設の内容から洗っていきましょう。それぞれ昨日の探索した場所について報告してもらえるかしら?」

 

 

 朝衣はテーブルに手を置き、この会を開いた議長として司会を進行していく。とても様になっており、自分たちでやるよりも安心感が違った。

 

 

「せやったらまずはウチらからやな………そんじゃあ古家!前口上はまかせたで~」

 

「え゙っ、丸投げなのかねぇ……うう、それじゃあ及ばずながらログハウスエリアについて報告させてもらうんだよねぇ……」

 

「――――エリアにはウチら16人分のログハウスが建ち並んどった、んでドアの前には札がかけてあっとって、それぞれの部屋はあらかじめ決められとるらしい……。中にはベッドにシャワールーム、トイレ、服の替えが入っとるクローゼット……衛生面の保障はされとるみたいやったで」

 

「そして!!!それぞれの!!部屋に!!鍵は!!かけられるそうだぜええええええ!!!ちなみに!!!俺は!!!その鍵を無くしたんだぜえええええええ!!!!」

 

「ちょっとぉ!!あたしに説明頼んだんじゃないのかねぇ!!皆の前で発表するっていうちょっとした覚悟を、返して欲しいんだよねぇ!?」

 

「ん?だから頼んだやろ?前口上。いやぁさすが現役研究者、掴みはバッチリやったで!!」

 

「そこを褒められても喜びづらいんだよねぇ!!」

 

「…ありがとう3人とも……ログハウスエリアについては分かったわ…それと、陽炎坂君は後でもキチンと紛失届をモノパンに提出するようにして?良いわね?」

 

「了解なんだぜええええええええええ!!!!!!!!!」

 

 

 そんなアホな展開にも動じず、朝衣はスラスラとまとめていった。流石である。

 

 

「……じゃあ次は私。この施設の中心にある中継地点のような場所、噴水広場について……。だけど…真ん中に悪趣味な銅像から吹き出る噴水と、ベンチが2つあることくらいに特筆すべき点は無いわね」

 

「いやいや、あそこで日なたぼっこをしてみると気持ちよく寝れるという点も言うべきでござらぬか?言うなれば、大自然の憩いの場でござる」

 

「ですね。あそこで“一人でゆっくりと”本を読むとさぞ気持ちいいでしょうね……雑音が入らなければの話ですけど……」

 

「風と水、そして木々が奏でる協奏曲…あそこには、僕が想像する以上に音が溢れていたみたいだ」

 

「…流石にそこまで考察することはできなかったわ」

 

「…いや、真に受けるなよ?」

 

 

 滅多なことでは無いと思うが…あらぬ方向へ行かないようにとりあえずツッコミは入れておいた。落合のペースは、常人でも異人でも乗せられる危険がある故に。

 

 

「えっと次は、私達の番、ですね。えっと……噴水広場から見て北に進むと『ペンタ湖』……で合ってますよね?そういう名前の大きな湖がありました」

 

「当ってるよ~。で~側にはボート置き場もあったから、湖の中心に行こうと思えば行けるよ~。でも実際に行ってみたけど何も無かったよ~」

 

「うむ……それでは何故ボートがあるのか甚だ疑問だな……」

 

「きっと特に意味は無いと思うから…一度流しておきましょう。次、お願いして良いかしら?」

 

 

 小早川達の湖についての情報は、確かに中途半端というか意味不明な箇所は多々あるが…朝衣の言うとおり今は頭を悩ませる必要は無さそうだ。

 

 

「ふむぅ、そうだな………ではグラウンドについてだがぁ……まあ広いということ以外に特徴は無かった…だが、天体観測をするという点においては絶好のスポットではあるな」

 

「……後昼寝に最適」

 

「詩を紡ぐという点においても、地の利があると言えるね……風が良く声を聞かせてくれるんだ」

 

「…後半の奴らの言い分は私欲が垣間見えているですね」

 

「でも…何かイベントを開く分には…最適な場所みたいね…」

 

 

 グラウンドは確か…モノパンが演説を始めた場所だったよな……まあ広々としているだけで他に言えることは無かったが……朝衣の言うイベントを開くのであれば…確かに良いかもしれない。

 

 “で、今度はアタシ達の番だね”と、雨竜達が話を終えたと同時に、よっこらっせっと、反町達が腰を上げた。

 

 

「アタシ達が調べた炊事場についてだけど……まずはアタシが調べたあの購買だね。中はコンビニみたいな内装で、倉庫には置いてないヘンテコなアイテムがそろえられていたよ。……それと、店の端っこの方に『モノパンクリーニング』っつう名前の無人の区画があったんだけど……誰か心当たりがあるヤツがいたら情報提供宜しくさね」

 

「うーーん、字面から見て、ランドリーか何かじゃない?ほらココ洗濯する場所、湖しか無いし」

 

「…ガンジス川か何かかねぇ…いや湖だけどもねぇ…」

 

「あ~それだったら~私説明できるよ~」

 

「本当に?じゃ長門さん、お願いして良いかしら?」

 

「うん…そのモノパンクリーニングはね~~。ランドリーっていうか~、名前の通りクリーニング屋さんみたいだったよ~~。あそこにね~昨日汚しちゃった服を持ってってみたら~モノパンが出てきて応対してくれたんだ~。もの数分でピカピカにしてくれたよ~」

 

 

 ……そうか、だったら後で昨日着ていたもみくちゃになった服とか、昨日の血で汚れた朝衣のハンカチも綺麗にしてくれる…ということになるのか。この会議が終わったら…早速利用してみるか…。

 

 

「で、今度は私達は倉庫組ですね……倉庫は見ての通り3つあって、入り口から見て左から第1倉庫、第2倉庫、冷凍倉庫になっているです」

 

「ほう!名前がついてたんだね!!しかも実に安直なネーミングセンスだよ、キミ」

 

「そこに遊びを入れる必要は皆無ですよ…はぁ…話を戻すですよ」

 

「じゃあそこは拙者が…あそこの1番左に位置している第1倉庫には、シャンプーや皿などの日用品、釣り竿から野球のボール、果てはウィッグなど日用とは関係なさそうな物まで揃っていたでござる」

 

「へぇ~~じゃあさ~第2倉庫には何が置いてあったの~?」

 

「そちらにはカップラーメンやレトルトカレー、とにかく常温で保存できる食料品が揃っていたでござる。…モノパンに聞いてみたところ、倉庫の品は全て毎日補充されるそうでござる」

 

「…モ、モノパンに聞くことができたのかねぇ?」

 

「左様…聞きたいことがあるので呼んでみたところ、すぐにひょっこりと出てきてくれたでござる……」

 

「…神出鬼没」

 

「……実はワタシも、昨日、手を叩いてみても、招来するのかどうかと仮説を立て…早速試行してみたのだがぁ……」

 

「…来てくれたのか?」

 

「ああ…来てはくれた、しかし来るやいなや、“ワタクシは召使いではありませんヨー!!”と小言を受けてしまったがなぁ……」

 

「いや…それはキレてもおかしくないんだよねぇ…」

 

「何だと…!誰しも口笛を吹いたり、指ぱっちんで何かを呼んでみたいとは思わんのか!?貴様…気が触れているのではないか!?」

 

「えっ!?…思いもよらない反感を受けてしまったんだよねぇ…!」

 

「……まとめるわね?…つまるところ、この施設の中で飢える心配はなさそう、と考えて良いのかしら?」

 

 

 2人の内容の無い議論を軽くスルーし、顎に指を当てそう総括する朝衣。沼野は“そうでござるな”と是を持って肯定した。

 

 

「加えて冷凍倉庫についてですけど、生肉とか野菜とか、腐りやすい生モノが詰め込まれてたです。後、コレは忠告ですけど……中は相当低い温度が保たれてるので、間違っても冷凍倉庫に閉じ込められないようにするですよ?普通に凍死するレベルです」

 

 

 “まっ、幸い鍵はかからないようでしたから、気にしなくても良い気もするですけど……”と雲居が言葉を添えるが、いや、普通に危なくないか?と、内心つっこんでおいた。

 

 

「では最後はボク達だね!噴水広場を南に行った先の、中央棟という謎が謎を呼ぶ扉ばかりの場所についてだね」

 

 

 沈黙を察したニコラスは、タイミングを見計らったように高々な声色で話し出す。

 

 

「扉、は、合計で、5つあって。ここに、つなが、る、扉は、1って書か、れてた、よ?」

 

「もっと詳しく話すと!他にも2,3,4って刻印された扉があって、真ん中の大きな柱には赤い扉がくっついてたよ!」

 

「複数の扉に、赤い扉……。確かに不可解ね。恐らくそれらのどれかが…脱出口だと思うのだけれど…」

 

「しかし、このボクの格闘術を用いても、ビクともしなかった……つまりコレは脱出不可能であると確信せざる終えないね!!キミ!」

 

 

 ”脱出不可能”その単語を放った瞬間、俺達の目の前に、再び見たくも無い現実が立ち塞がったように感じた。今まで逃げてきた宿題と向き合わなければいけないような…とても重い事実。殆ど全員の顔に、あからさまな暗い影が落ちているのが分かった。

 

 

「ふむ……脱出不可能か……いざそう言葉にされると…やはり、来る物があるなぁ…」

 

「…事態は深刻を極めてる」

 

「どう冷静に解釈しても…結局脱出する手段がないんじゃぁ…動くに動けないですよ」

 

「う~んやっぱりココを出るためには、コロシアイをしなきゃいけないって感じだね!!」

 

「めっ、滅相も無いこと言わないで下さい!!もしかしたら私達の知らない秘密の脱出口とかあるかもしれませんよ!モノパンさんは、その、サプライズが好きそうですし…きっと何か…奥の手のような何かが…」

 

 

 そんな後先の見えない暗い空気を振り払おうと思ったのか…小早川が慌てたようにそう口にした。きっと何処に希望がある、自分たち全員がここから脱出する手段が、きっとあるはずだ…そんな空しい可能性を彼女は口にしていく。だけど…。

 

 

「はぁ…小早川。それは、あり得ないですよ…」

 

「…えっ」

 

 

 雲居は”あり得ない”と、小早川のそれをハッキリと否定した。

 

 

「あのパンダは…あんたが思っている以上にイカれてるんです。そんな生ぬるいサプライズなんて、用意してるわけ無いですよ…」

 

「で、でも…可能性はゼロってわけじゃ。それにやってみないと分からないことだって…」

 

「いいや、ゼロですね。そして断言するです無理です。あいつの気分が変わらない限り、この状況は絶対にひっくり返ることはなしです」

 

「…ここへ誰かが助けに来てくれる可能性は?」

 

「この施設が何処にあるのか…そもそも何なのかも分からない不思議空間に誰が助けにくるんですか。ここが宇宙だったらどうするんですか?ここが深い海底にあったらどうするんですか?南極にあったらどうするんですか?期待するだけ無駄ですよ」

 

「だったら!!ここは全員で総力戦を仕掛けて、モノパンを打倒するさね!!」

 

「何馬鹿なこと言ってるですか…見なかったんですか?あの殺傷力しかない、アホみたいな速度で打ち込こまれた槍を」

 

「今回はヤツが意図的に逸らしたから助かったが…あの森の惨状からして…食らっていれば…確実に死が訪れていたであろうなぁ…」

 

 

 俺は思い出すようにそっと、頬に手を当てた。雨竜の言う通り、今回はこのくらいで治まった物の、もしも次があるなら……それこそ頭ごなしにヤツに反旗を翻したとしたら…待っているのは…――――死、のみ。

 

 

「良いですか?ヤツは知能を持った兵器なんです。趣味の悪いゲームを開催するしか能の無い、ロボット兵器なんです…」

 

「雲居さん…い、一旦落ち着くんだよねぇ…なんかちょっと怖くなってきたんだよねぇ」

 

「せやでー、カルシウムが足りとらん証拠やでー」

 

 

 段々とボルテージの上がっていく雲居を数人が宥めるが…それでも彼女は止まらない…。のほほんとする俺達に苛立つように…雲居は言葉を並べていく。

 

 

「はぁ…私達は…牛耳られてるんです……あのパンダに…命を………」

 

「い、命……」

 

「だから……ここを出るためには……」

 

「――――雲居さん…それ以上は私が許さないわ。お願いだから、一度頭を冷やして…」

 

 

 決してここで言ってはいけない一言がこの場に投下される…その一瞬。朝衣は、本気で怒ったように、雲居のそれを止めた。それを聞いた彼女は…しかめっ面のまま”悪かったですよ”そうふてくされながら、深く椅子に座り直した。

 

 

「…でも、現状は脱出の手口は無しなんです。だから今は大人しく…」

 

「いや!!!そんなことは!!!!全然ないんだぜえええええええええええええええええええ!!!!!!!」

 

 

 雲居の食い下がるような一言に対し、今度は陽炎坂が雄叫びを上げる。

 

 

「ほう、中々勇ましい叫びを上げてくれるじゃないか…。そんな大それた事を言うんだ…勿論ちゃんとした理由があるんだろ?キミ」

 

「勿論だぜええええええええええええ!!!」

 

 

 その陽炎坂の肯定に、俺達は必然的に注目した。もしかしたら、本当に何かとんでもない事が飛び出してくるのかも知れない…そんな期待のこもった注目だった。

 

 

「諦めないこと!!それが!!!!俺達に残された!!!脱出の糸口なんだぜえええええええ!!!!!」

 

 

 いや心意気のほうかよ…と、内心ずっこけた。

 

 

「なんだ~結局根性論だよ~」

 

「期待して損した気分でござる…」

 

「陽炎坂くんらしい解答っって言えば、らしいよね!!」

 

 

 勿論、陽炎坂のその解答への反応は殆ど芳しくなかった。だけど…全員がそうというわけではなく…一部には何と触発されたように、立ち上がる者も居た。

 

 

「んん~でも案外、陽炎坂の言うとおりかもしれへんな。人類の諦めは停滞も同然…試合終了ちゅうわけやし」

 

「でも~感情論で言われても~説得力ないよ~」

 

「そこは!!!!根性で説得力を上げるんだええええええええええええええ!!!」

 

「…ふっ、根性か……全くもって非論理的だな…」

 

「なんやなんや雨竜!ならあんさんは他にええ考えあるっちゅうんか?」

 

「ああそうだな……勿論…………無いに決まっているであろうぅ!!!」

 

「何か急に切れたんだよねぇ!!」

 

「なら、今回は小早川、陽炎坂、ウチの根性組が勝利っちゅうことやな」

 

「えっ…何かいつの間にかメンバーにされてしまいました!………でも、根性という言葉、私は大好物です!!!」

 

「変なノリが伝染しているんだよねぇ…!?」

 

「もう~そういうのは良いからさ~~もっとさ~雲居さんみたいに現実を見なよ~」

 

「なんやなんや、ウチらには何も見えとらんって言いたいんか?」

 

「へぇ…知能はどうやら正常みたいですね…長門が言いたいのはつまりそういうことですよ」

 

「何やと~?もうバリッバリ見とるで~もう目かっぴかぴになるくらい現実直視しとるでぇ!!」

 

「俺だって!!!!同じなんだぜえええええええええええええええ!!!!!!!」

 

「はぁ…強く言いすぎると、弱く聞こえるものです…むしろ現実逃避しているように聞こえるですよ」

 

「現実…か。今という時間は風のように一瞬で過ぎてしまう……だからこそ…未来を見つづけることは、人間にとって必要なことだと…僕は思うんだ」

 

「いや、トドのつまりアンタは何が言いたいさね……」

 

「……ふっ。それは風のみぞ知る…というわけさ」ジャララン

 

「………」

 

 

 鮫島の同意から…また、なにやら口論が始まって仕舞ったようだ。今回は、先ほどの雲居の一方的なものでは無く……れっきとした、喧嘩に近い口論であった。見ても分かるとおり、その様子がとても激しく、見るからに火花が散っているようだった。

 

 

「……またうるさくなってきた」

 

「みん、な!一度、落ち着い、て」

 

 

 多少の議論のヒートアップが見られたことに、贄波達数人が、それに待ったを掛ける。確かに、何人はもう前が見えていない、そんな風に見えた。議長である朝衣も…流石にこの異様な暴れ具合は想定していなかったのか…諦めたようにため息をついていた。

 

 

「ん~では、もう一度施設全体を洗い直してみてはいかがでござるか?さすれば、何か糸口が見られるやも……」

 

「そ、そうですよ!!皆でくまなく探してみれば、きっと…」

 

「でもカルタと公平くんで昨日全部見て回ってみたし~、自由時間の時も色々探ってみたけど…それらしい通気口とか隠し扉とかは無かったよ?……ね、公平くん?」

 

 

 沼野と小早川の意見に反対するように水無月もまた言葉を返す。そして俺に同意を求めるように視線を送ってきた。他の言い争う連中も、何故か、俺のターンが回ってきた途端静かになっていた…。

 

 

「……ああ……確かに。全体的に行けるところは巡ってみたが……目当ての出入り口のようなものは…無かった。客観的に見て、雲居達の言っている脱出口が無いと言う事実は…間違いは無い…」

 

 

 俺の言葉に、わずかな期待を、諦めない心で何とかしようとしていた数人の生徒達の表情に影が落ち始めるのが分かった。

 

 だけど俺は、その自分の意見に“だが”と翻すような接続後を付け加えた。

 

 

「それで、はいそうですか言って完全に諦めるというのも、間違っている。陽炎坂達の言うとおり、諦めない、わずかな糸口を見つけてやる……その気持ちも、俺は重要なんだと思う。ここから脱出できる可能性がゼロだって……そう思った時点で本当にゼロになってしまうんだと思う…」

 

 

 “以上だ”俺は自分の意見を切り上げる。我ながらどっちつかずの、優柔不断な意見だと思った。凡人なりに…言い切れただろうか。妙に静かになってしまっているので…何だか気まずい。

 

 

「……皆、聞いて。現状、雲居さん達が言うように…ハッキリ言ってこの状況はとても絶望的…脱出する方法も、出口も無い…本当に何にも無い…受け止め切れていない人には申し訳ないけど…これだけは…ちゃんと理解して欲しいの」

 

 

 ”でも”そう、言いながら、朝衣は続けていく。俺達も、その真剣な眼差しに応えるように、一言一言に耳を傾けていった。

 

 

「でもね……その現状をありのままに受け止めて、それをずっと悪い方向のまま考え続けてしまったら、きっとダメになる。だから、今の現状を理解した上で…”良い方向”に、気持ちを変えていきましょう」

 

「良い、方向、?」

 

「”入口が何処にも無い”を”出口がきっとある”に、”助けなんてこない”を”きっと助けがきてくれる”に…たったそれだけ。そう思うだけで…気持ちはずっと軽くなる…」

 

「でも……」

 

「ええその通り、ジャーナリストとして不甲斐ない話、この施設が地球上のどこにあるのか…それすらも分からない。でもね、その考えがきっとダメなの。ここは、この施設は地球上の何処かにあって…私達がいないという異常に、かならず誰かが気づいてくれるはず……そう考えを変えてみるの」

 

「…希望を持ち続けろ…ということか……ふっ」

 

「ええ、今は耐える時なの…時間希望を持ち続けて、心を折らずに……決して、誰かを殺めるなんて、愚かなマネをしないように…」

 

 

 “だから、今だけは矛を収めてちょうだい…”そう言いながら集会を開いた議長である朝衣は、励ますように、わずかな希望があると言うことを伝えるように、全員に伝えた。

 

 

「希望を持ち続けて、耐えろだなんて……そんなの……ただの生殺しですよ……意味分かんないです…」

 

 

 眉間に皺を寄せた雲居はそうつぶやいた。そしてすぐに、席を立ち、炊事場から出て行ってしまった。

 

 

「ちょっ、雲居!まだ話は……」

 

「反町さん……大丈夫よ。雲居さんはとても聡い子だから、きっと分かってくれるはず…今は分かってくれなくても…いつか、きっと」

 

 

 雲居を止めようと手を伸ばす反町を、朝衣は静かに言葉で制する。

 

 

「……疲れた」

 

 

 恐らくこの場の空気に疲れたのか…立ち去る雲居に続き、風切も立ち上がり、ゆったりとした自分のペースで、足を外に運んでいった。

 

 

「うむ……朝衣よ。ここで一旦区切りをつけないか?しばし心の休憩が必要のように見えるのだが……」

 

「ええ…そうね。皆、ごめんなさい…尻切れだけど報告会はここで終了としましょう……後は各自の自由な時間を過ごしてちょうだい」

 

 

 “でも”と付け加える朝衣。

 

 

「これからもこんな風に全員で話し合う時間は必要だと思うの……だから、また会議を行いましょう、これはきっと大切な時間だから」

 

 

 “申し訳ないけど、そのときは無理強いはさせてもらうわ”そう朝衣は優しさの裏にある意志の強さを見せ、暗い表情を浮かべたまま、炊事場から姿を消していった。

 

 

 そして、朝衣の退席を皮切りに生徒達はバラバラと、炊事場から姿を消していった。俺も、何となく立ち上がり、ログハウスに戻ろうかと考えていると。

 

 

「あ、あの……」

 

 

 誰かが、俺に声をかける。声の主の方向に顔を向けると、そこにはバツの悪いような顔をしながら指をいじる小早川がいた。

 

 

「その…先ほどは、ありがとうございました。私達の、その覚束ない意見を尊重していただいて……」

 

「……俺は正しいと思う事を言っただけで、俺の気持ちを入っていない。機械的な、客観的な意見だ。むしろ、朝衣の方が…」

 

「い、いいえ。それでも、です。……ええと、それだけです。し、失礼します!」

 

 

 何だったのか…小早川はそそくさと倉庫の方へ消えていく……彼女の後ろ姿が見えなくなるのを見計らったように俺は小さく独りごちた。

 

 

「違うんだ…俺は、本当は…諦めているかもしれないんだ。諦めずに…ここで永遠に過ごすことを、許容してしまっているのかもしれないんだ」

 

 

 鮫島の言葉を借りるなら…俺は、人として停滞してしまっているのだ。何故なら……俺は誰にも死んで欲しくないと思っているから……誰にも人を殺して欲しくない思っているから。

 

 生きることを冒涜している強欲な考えだと思う。自分勝手で、自分本位な考えだと思う。

 

 だけど考えずにはいられなかった。皆で、耐えて、あがいて、そして生きて。その生きた先にある本物の青い空を、クラスメイトの皆と一緒に見てみたいと、考えずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 永久という無限ループの中で、人は生きて、そして死んでいくだけということも俺自身わかっているはずなのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

 

【炊事場エリア:購買部前】

 

 

 今朝の集会を終え、解散した俺達は、それぞれ自由な時間を過ごすことになった。

 

 俺の場合、これから何をしようかと考えたとき、真っ先に思い浮かべたのは……『洗濯』だった。自分の服もそうだが、昨日朝衣から借りた血ぬれのハンカチを、早くキレイにして返却しようと思ったから。

 

 丁度、先ほどの議論で出てきたモノパンクリーニングがショップに併設してあるという情報は得ていたので、自室から服とハンカチを持って俺は炊事場に戻ってきていた。

 

 

「このショップの中だったよな……」

 

 

 そう言いながら、俺はショップの前に立ち尽くす。別に初めて利用するわけでも無いのに、妙に緊張してしまう。

 

 

「おろろろ?そこにおられるのは、折木殿ではござらんか?なんだか奇遇でござるな」

 

 

 すると、ショップの前で数秒立ち尽くしていた俺に誰かが声を掛けてきた。振り返ると、沼野がこちらに朗らかな糸目を向け、フレンドリーに片手を上げていた。その首元には、何かが包まれている唐草模様の風呂敷の端と端が結びつけられていた。

 

 

「折木殿もショップにご用でござるか?」

 

「まあ……そうだな。ショップと言っても、モノパンクリーニングに用があるんだが……」

 

「これもまた奇遇でござるな!拙者も同じでござる。いやぁ、昨日は訳あって衣服を汚してしまい、丁度良い機会ということで確かめも兼ねてここに赴いた次第なのでござる」

 

 

 沼野は照れたように頭を掻きながら、ここ来たいきさつを話し出す。聞いてみたところ、殆ど俺と同じ理由らしい。

 

 

「クリーニングか……ということはその背中の風呂敷包みがそうなのか。思った以上に多いな」

 

 

 見たところ衣服2~3枚ほどの膨らみであり、一日で費やすには随分と多めだと思った。

 

 

「ん?んん?気になるでござるか?気になるでござるか?」

 

 

 何故か風呂敷に多大な興味を持っていると判断されてしまったのか、沼野は聞いて欲しそうにこちらに目を輝かせ、ジリジリと近寄ってくる……。俺は、少し怖くなって微妙に後ずさる。

 

 

「そ、それは後でゆっくりと聞くよ……折角だ、一緒に入ろう」

 

 

 長くなりそうだと感じた俺は、そそくさとショップの自動ドアを開け、中へと入っていく。沼野も、“あ、そうでござるか?”と少し不満げな様子ではあったが、そのまま続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【炊事場エリア:購買部】

 

 

 集会の時に反町が言ったように、確かにショップの端っこの方にはモノパンクリーニングという看板が掲げられていた。その看板の下のカウンターといえるスペースはあるが…こちらも情報通り、誰も居なかった…。

 

 

「店は開いている様子でござるが……人の気配は無さそうでござるねえ?長門殿の話だと、モノパンが接客してくれると言っていたでござるが……?」

 

「多分…このベルを鳴らせばいいんじゃないか?」

 

 

 俺はカウンター上にある押しボタン式のベルを指さした。よく見てみると、そのベルには『ご用の際はこちらをお押しくださイ』とメモ書きが貼ってあった。俺と沼野はそのご用があったため、メモ書き通りにベルを“チーン”と鳴らす。

 

 

「ハァ~イ、呼ばれて飛び出てジャンジャカジャーン!!怪盗モノパン参上でス!!……まあ今は、従業員不足故、怪盗としてではなく、クリーニング屋の店員として接させてもらいますガ……」

 

 

 ベルの音を聞きつけてエプロン姿のモノパンはとち狂ったような発言と共に参上する。しかし…。

 

 

「………?」

 

 

 そのモノパンを見て、何か装いが変わったような……いや、何かが足りないような違和感を覚えた。

 

 

「むむむ?モノパン殿…1つ質問があるのでござるが……其方がいつも着用していた、あの眼鏡のようなアクセサリーはいかようになされたのでござるか?」

 

 

 沼野の問いをしてくれたおかげで、俺はその突っかかったものの正体に気づく。……そうか、初めて現れたときから目にかけていたはずの、モノクルが目元に無いのだ。

 

 

「え?ええ~と、コレはですネ~何というか、ちょっとした約束事をしてしまったからと言いますか、身ぐるみを剥がされたと言いますカ……」

 

 

 純粋な沼野の問いに、モノパンは物騒な言葉を濁しながら言いよどむ。……コイツがハッキリとした物言いをしないというのも珍しい。会って間もない俺が言うのも変ではあるが。

 

 

「……ちょ、ちょ~っとコレには触れないで頂けると、ワタクシ的に助かるかな~なんて……?」

 

「そ、そうでござるか?まあ触れないでくれと言うのならば、追求はよすでござるが……」

 

「…正直にどうでも良いがな」

 

 

 モノパンのよそよそしい態度から、触れるべき事では無いと判断した沼野。いや、何故お前もそんなタジタジした態度になる必要がある…。

 

 

「じゃあ本題の話をしよう……モノパン、一応聞いておくが、ここはクリーニング屋なんだな?」

 

「ええ!そうですヨ!服にこびりついた醤油汚れから、洗濯の時にへばりついたティッシュのカスまで…全てお引き受けしておりまス」

 

「だったらこの衣服を洗って欲しい……」

 

「右に同じの頼みござる!」

 

「ええ勿論良いですヨ!!……ではその例のブツを、カウンターに置いて下さぁイ」

 

 

 本来の仰々しいテンションに戻ったモノパンは、怪しい取引を行おうとするかのように、黒い笑みを浮かべて机をコツコツとたたく。お前はどこのブローカーだ。

 

 

「中身を確認してモ?」

 

「ああ……」

 

「う~ン?およよよヨ?衣服はともかくとして、ハンカチには血がついていらっしゃいますネ~。一体どちらでつけられたのですカ~?」

 

 

 どちらも何も…お前につけられた傷から出てきた血だ……!白々しいような物言いに、俺は目をつぶって顔をしかめる。

 

 

「ん?んんン?しかも女物のハンカチですねェ……まさか!折木クン……そういったご趣味がおありデ……!?」

 

「折木殿……!?い、いや……言葉はいらないでござる……拙者はそれでも、折木殿を大切な仲間として……」

 

「そんなわけ無いだろ!それは朝衣から借り受けただけの代物だ!」

 

 

 モノパンのわざとらしい勘違いを導火線にして、沼野は変な勘ぐりをし始める。それに俺は、訂正するようにツッコむ。

 

 

「そんなバカな……!すでに朝衣殿とそこまでの関係に……。くっ……拙者ですらまだ目線を合わせるのがやっとであるというのに……」

 

「はぁ……このノリは疲れるから止めないか?」

 

 

 何でクリーニングに服を渡すだけでこんなに疲れなければいけないのだ…。それと沼野、お前、うぶすぎるだろ……。

 

 

「うう……モノパン殿よ、この拙者の悲しみをこの洗濯物と一緒に浄化して欲しいでござる……」

 

「う~ム。実物を持ってきていただけないと無理ですねェ」

 

 

 マジレスといえるモノパンからの鋭い返答に“拙者に味方はいないのでござるか……!”とこちらに背を向け、悔しそうに背中を震わせる。もう……さすがにフォローするのは面倒くさいな。俺はそのまま無視した。

 

 

「ではでは、物品を確認させていただきますネ~。ええっと、沼野クンは衣服と下着と、靴、それと………ああーー…水蜘蛛ですカ?」

 

 

 途中までは、俺とほぼ同じラインナップであったはずなのに…最後に洗濯物とは言いにくい代物が提出されたことに多少の困惑を表すモノパン。勿論、俺も例に漏れない……。

 

 

「左様、水蜘蛛でござる」

 

「わ、わっかりましタ~!このモノパンにおまかせくださ~イ!…………さてと、まずは洗い方調べるとしましょうかネ……」

 

 

 景気よく対応するモノパンは、ボソリとため息を吐きながらつぶやいた…。

 

 

「普段でしたら、ものの数分で洗い終わるのですが……ちょ~っと洗い方が分からない物と、血抜きをしなくてはいけない物がありますので……1時間ほど時間をいただきますネ?」

 

「……ああ、かまわない」

 

「これまた右に同じでござる」

 

 

 むしろ1時間で終わらせられることに驚きが出るというものだった。

 

 

「ではでは、お二人さん。ご機嫌よ~ウ!」

 

 

 俺達の是を聞くと、衣服とその他諸々を持ってモノパンは姿を消していった。……モノパンが去った後特有の静寂をわずかに、沼野は口を開いた。

 

 

「う~む1時間でござるか……思った以上に微妙な空白が出来てしまったでござるな?では折木殿、一緒に茶を飲んで一息つくというのはどうでござるか?」

 

 

 沼野は穏やかな雰囲気で、お茶会の提案をする。

 

 

「昨日振る舞えることが叶わなかった、拙者の一族特性のお茶っ葉を提供するでござる……丁度、和菓子も倉庫に備蓄してあった故、付け合わせにも困らないでござる」

 

「ああ、そうだな。…じゃあその言葉に甘えるとするよ」

 

 

 沼野からの誘いに頷いた俺は…クリーニングが終わるまでの時間が経つまで、ショップを一時に後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【炊事場エリア:炊事場】

 

 

「うむ……うまいな……」

 

 

 茶の入った湯飲みを傾けながら、俺はそうつぶやいた。

 

 

「ふっふっふぅ……そうでござろう?そうでござろう?そんじょそこらのお茶っ葉とは格が違うでござる。何故ならコレは拙者の一族特性の……」

 

「いや、俺がうまいと言ったのは……この付け合わせの煎餅のことだ」

 

 

 俺のまさかの返答に沼野は“なっ!”といつもの糸目を見開き、驚きをあらわにした。どうやら思って見ない発言だったようで…とても慌てていた。

 

 

「そんなバカな!も、もう少し味わってみるでござる!!絶対!深みが!わかるでござるから!!」

 

「お、落ち着け……別にまずいとは言っていない。…ただ、その…市販の品とそう変わらないうまさというか………いやむしろ雑草感が強いような…」

 

「なん…だと…でござる…」

 

 

 とってつけたかのような語尾で、沼野は顔を青くする。……そこまでショックだったのか。……まあ確かにかなりの自信を自負していたから……そんな受け取り方をされたら、流石にキツかったか…。何か、妙に罪悪感が湧いてしまう……。

 

 

「と、言っても…俺は緑茶に関して、舌は肥えていないからな……違いが分からなかったのかもしれん…多分」

 

 

 沼野の気持ちを察した俺は、つかさずフォローのような自虐を挟む。

 

 

「そ、そうでござるよね!いやぁ、もっと味の分かる人に飲んでもらうべきであったでござるな!あは、あはははは……」

 

 

 …何となく傷ついた印象を受けるが、まあ沼野の気持ちが持ち直したのであれば問題は無いだろう。

 

 

「それはそれとして……まあ折角の機会でござるし、お互いの身の上話でもして時間でも潰すでござるか…」

 

「そう、だな………俺の話は、お前らと比べても大した事は無いんだがな」

 

「ははは、ノープロブレムでござるよ。折木殿の才能については、既に朝衣殿や水無月殿から聞き及んでいるでござる…。話の種に困っても拙者がカバーする故…なんなら一方的に質問をぶつけてももらっても構わないござる」

 

 

 朝衣と水無月のヤツ…俺の知らないうちに、そんな根回しをしてくれてたのか…。正直こんな気遣いをしてくれるのは…助かるが……同時に特待生という身分で全員を誤魔化しているようで、何となく罪悪感を感じてしまう。

 

 

「じゃあ、その言葉に甘えてみるか…沼野は…何で忍者に…?」

 

 

 全生徒の中で、1、2を争うレベルで謎の深い肩書きのため、実はかなり気になっていた。

 

 

「まぁそうでござるよな……。拙者も、何故この肩書きでこの学校に来れたのか、不思議でたまらないでござるし…。…だって元はアルバイターでござるよ?」

 

「確かに…お前と初めて会ったときも同じ事を言っていたな…」

 

 

 確か、時代村というテーマパークのパフォーマーをやってたとか…だったよな?」

 

 

「そうでござる…主にステージに立って、まさに忍者というように…バク転したり、殺陣をしたり…時には姿を消したり…そんな事をシフトの合間ずっとやっていたのでござるのに」

 

「…途中まで忍者らしい単語ばっかりだったのに…急にシフトって言葉が出てくるのは…中々にリアルだな」

 

「それはもう…時給制でござるし…お給金が出てる故、そこはもう全力でござる」

 

「…また酷く現実的な話が出てきたな…」

 

 

 沼野の話を聞けたのは良いが…何となく、夢が壊されたような…微妙な気持ちになってしまう。

 

 

「まぁ、先程の折木殿の質問に答えるとするなら…拙者が忍者になったのは、お給金が良いからでござるな」

 

「元も子もない話だな…」

 

 

 でも最終的に金の話にたどり着くあたり…案外思考とかあり方は忍者らしいのかもしれない。元々忍者は、外国で言う傭兵みたいな、仕事師の印象が強いしな…。

 

 

「まあそうやって日がな一日忍者としてパフォーマンスをしてた所で、スカウトマンの方が尋ねてきて…そして気づけばこんな状況…まさか希望ヶ峰学園に来ることになるとは……気持ち的には、折木殿が特待生としてここに来たのと、一緒の感覚でござるな」

 

「過程については似ても似つかないが……成程…そう言われるとと何となく親近感が湧いてくる感じはあるな」

 

「…そう言って貰えるならありがたいでござる。忍者という身分故、何となく周りと溝があるようで…こうやって他の者達をお茶に誘っても、微妙な応対をされるのでござる」

 

「何だか…気の毒な話だな…」

 

「誘いを受けてもらえやすいようにと、様々な創意工夫をしてみているのでござるが…何とも結果に繋がらぬのでござる…」

 

「ちなみに…どんな感じの工夫だ?」

 

「少しキャラとかを変えて…明るい感じで攻めてみたのでござる」

 

 

 むむ……微妙に雲行きが怪しくなってきたな。

 

 

「じゃあ今、そのキャラになって、俺の前で実演できるか?」

 

「あ、できるでござる?………Hey!!ユー達、暇かな?マナカナ?拙者は今マジで暇なんすけど……今夜拙者とお茶しなーい?………て感じでござるな」

 

「いや…それは流石の俺でも引くぞ…」

 

「なんででござるか!!!ナンパ歴20年の同僚のマネをしたというのに……!」

 

「ナンパを20年しているという時点で気づけ…!明らかに実ってないだろう!」

 

「……はっ…確かに……!!」

 

「……とりあえずもう一度、工夫の仕方から…考え直していこう」

 

「というとやはり……あのイケメンのニコラス殿な感じで…いくのは…」

 

「………アイツは…いや、やめておいた方が…」

 

 

 

 それからは、やれどんな風にナンパする、やれどんな風に会話を繋げる、そんなくだらないことへの話合いは熾烈を極め…クリーニング屋の服の洗浄が終わるまで、ずっと続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

 

【炊事場エリア:倉庫前】

 

 モノパンに洗浄してもらった衣服を部屋のクローゼットに戻した俺は、炊事場へと再び舞い戻り、エリア内に立ち並ぶ倉庫群へと足を運んでいた。

 

 ここに来た理由は、倉庫内については又聞き程度でしか知り得ていないため、具体的に中に何があるのかをこの目で確かめたかったからだ。

 

 

「さて、どの倉庫から探索してみようか…」

 

 

 だからこそ俺は目の前に立ち並ぶ、倉庫群の前で頭を悩ませていた。

 

 何分選択肢が与えられているため、ランダムに見ていっても良いし、左からとか、右からとか、順序を決めても良い。そんなたわいも無い悩み。

 

 

「よし…決めた…」

 

 深い意味は無いのだが、俺は左端の第1倉庫から攻めてみようと思い立った。…雲居達の話だと生活雑貨などが陳列してあるはずの場所……。

 

 

 俺は第1倉庫の扉を開けようと、ドアノブに手をかけた。保存状態を良くするためなのか、ある程度の厚みがあり微妙に重い。扉はギギギと音を立てながらゆっくりと開く。

 

 

 ……すると扉を開けた先には、――2メートル近い細身の巨体が真正面から俺を見下ろしていた。

 

 

「うわっ!」

 

 

 驚いた俺は、妖怪でも見てしまったかのようにのけぞってしまった。

 

 

「わ~!びっくりした~…」

 

 

 驚いた俺と同時に、ソイツも……超高校級のダイバーである長門も間延びしたセリフを吐きながら驚いていた…。どうやら、グッドと言えるか分からないタイミングで俺達は倉庫の入り口で鉢合わせてしまったようだ。

 

 

「も~びっくりさせないでよ~折木く~ん」

 

「す、すまん。まさか、こうもキレイに人の出入りが重なるとは思わなかった」

 

「う~ん、まあでも仕方ないよね~こんな図体のがいきなりニュ~ッと現れたら~誰だってビックリするよね~」

 

 

 その今までの俺の反応に、長門は無理も無い、と何となく悟ったように深紅の瞳を細め、ケラケラと苦笑いをする。妙に気まずい気持ち。

 

 

「いや、こちらが不注意だったんだ…お前の身体的特徴は関係無い。……だからそれほど気を落とさなくても良いと思うぞ?」

 

「大丈夫だよ~気は落としてないから~」

 

「それでもだ…すまん」

 

「う~ん、じゃあ~一応ありがと~って言っておくね~。折木くんは優しいね~」

 

 

 俺の謝罪が届いたのか、長門は自虐的から肯定的なニヘラ顔になった。少し、ホッとした気持ちになる。

 

 

「…長門も倉庫に用事があったのか?」

 

「うんそうだよ~。折角、湖があるから~久しぶりに釣りでもしてみようかな~って思って~。竿と釣り糸探してたんだ~」

 

「……ん?釣り?湖には確か魚も何も居なかったはずだが……」

 

 

 小早川が調べたところだと、魚も何も、虫一匹もあの湖には見当たらなかったと…。そのハズだったと思うのだが…。

 

 

「別に魚を釣るって事だけが釣りじゃ無いよ~。釣れる分には良いと思うけど~何も釣れないでただボ~ッとしてるだけってのも釣りの醍醐味なんだよ~」

 

「な、なるほど…」

 

 

 確かに、何も釣ることが目的というのでは無く…ただ垂らした糸を呆然と眺めるという釣りか…。そういう楽しみ方というのあるのだな。

 

 

「何か1人で思い耽りたいときとかに~たま~~にやるんだ~。結構面白いよ~?」

 

「ふむ、確かに。じゃあ俺もいつか試してみよう…俺好みの時間の潰し方かもしれんからな……」

 

 

 俺もたまにだが、本を読むのでは無く、何も考えずただ活字を追いかけるだけということをしたことがある。それと似たようなものだろうか?それなら、そういうインドアでは無く、アウトドアなことをするのも悪くないかも知れない。

 

 

「話が分かるね~折木く~ん。それじゃあ早速一緒にぼんやりしに行ってみる~?」

 

「ふむ…確かに興味はあるが……今回は遠慮させてもらう。今は倉庫内を見て回ってみたいんだ」

 

 

 長門の厚意は嬉しいが、流石に今回だけは俺には予定はある。趣味に理解は示しつつも、やんわりと誘いを断った。

 

 

「ふ~ん。そっか~」

 

 

 長門は少し考えるように手を組み、頭を揺らす。すると、何かひらめいたようにポンッと手をたたいた。

 

 

「よ~し。それじゃあ私も付き合うよ~。ここにはよく来てるから、ある程度の見取りは頭に入っているんだ~。それに~ナビがあった方が探索しやすいでしょ~?」

 

「ん?そうか?お前が良いならかまわないが…」

 

 

 まあただボーッとしに行くだけと言っていたのだから、ぶっちゃけ暇を持て余していたのだろう……。それでも、有識者が居てくれるのは有り難い話だ。

 

 

「後~なんだか折木くんとはあんまりしゃべった記憶無いからさ~折角だからお話しながら探索しよ~」

 

 

 ……言われてみれば、長門とこうやって面と向かって交流するのはもしかしなくても初めてかもしれん。ていうか、ココで二人っきりになるってこと自体が少ないのだから…それが普通か。

 

 

「うむ……それは良い考えかもしれんな、話しながらでも探索は出来るし……それじゃあしばらくの間宜しく頼む」

 

「うん、よろしくね~」

 

 

 そう短い挨拶を交わし、第1倉庫へと俺達は身を運んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【炊事場エリア:第1倉庫】

 

 

「沼野達から物品の豊富さは聞いていたが…この密度は圧巻だな…ほとんどの棚に物がぎゅうぎゅう詰めじゃないか……」

 

 

 俺は倉庫に入るや否や、倉庫内の棚に置かれた多種多様な物の充実具合に目を見開く。

 

 

「だね~。もし地震とか来たら~全部崩れてきそうだよね~」

 

「…想像はしたくないが……確かにあり得るな」

 

 

 棚自体は地面に固定されているため、倒れてくる心配は無さそうだが…中の品物がなだれ込んで来る可能性は充分にある。取りあえず注意しておこう。

 

 

「物自体に恵まれているのは良いが……さすがに多すぎるな。どこに何があるのか目視で把握するには一苦労だ…」

 

「ざっくりと~棚の周りを一周してみたんだけど~、なんかカテゴリ分けもされてないみたいなんだよね~」

 

 

 ふむ……よく見てみると、確かにバラバラだ。普通、歯ブラシや歯磨き粉のような似た用途の品物は、近くかその周辺を置いておくのが普通なのだが…この第1倉庫場合、歯ブラシの近くには文房具が置いてあったり、歯磨き粉の近くには裁縫セットが置いてあるなど、いささか……いや、かなり適当な配置に見える。

 

 

「なんか種類だけ揃えて~適当に押し込んだ~って感じがするね~」

 

「もし目的の物を探すとなったら、手こずりそうだな……」

 

「おかげでさ~この釣り竿と釣り糸を探すのも一苦労だったよ~」

 

 

 片手に持つ釣り竿を見ながら本当に疲れたように、大きくゆったりとしたため息を吐きだす長門。……俺よりも身長が高い故、上からそのため息による小さな下降気流が舞い降りてくる。

 

 

「うむ…しかしこのややこしさはどうにかしておかないとな…他の生徒達も同じように悩んでしまうやもしれん……メモとか何かを貼って目印でもつけておくとか…どうだ?」

 

「ああ~良いかも~。それに加えてさ~そのメモにさ~棚に置いてある物の名前を書いておくと便利かもね~、後使用頻度の高い物とかは~赤線引いたりして目立つようにしておくと超便利かもね~」

 

 

 長門のアイディアに、俺は“成程”と納得する。ここでより生活しやすくするなら、そういう一工夫も必要かもしれんな……。

 

 

「よし…なら思い立ったら吉日というヤツだ。早速やってみよう」

 

「え、え~今からやるの~?しかも2人だけで~?」

 

「ここにいる連中で、こんな細かいことをやろうとするヤツはたかが知れているだろうからな…すまんが、協力してくれ」

 

 

 俺が少し申し訳なさそうな顔で頼むと、“んん~まあいいけどさ~”と渋々といった様に長門は承諾する。俺1人でも良かったのだが、それでは日が暮れて倉庫内を全て見て回ることが出来ないからな…運が悪かったとでも思ってくれ。

 

 したたかな気持ちを携えた俺とその被害に遭った長門は、地道なマーキング作業を開始する。のんびりとした長門が、意外にもテキパキと動いてくれたおかげで、ものの数十分で作業を終わらせることが出来た。

 

 

 一仕事を終えた俺達は、小休止を挟んだ後、再び倉庫の探索を再開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【炊事場エリア:第2倉庫】

 

 

 第1倉庫を経た俺達は、その隣の第2倉庫に来ていた。中には常温で保存可能な、レトルト系やインスタント系の食品だけでなく、昨日頂いたティーパックや、さっき食べた煎餅なども棚に敷き詰められていた。

 

 

「成程…食品だけでは無く、嗜好品なども置いてあるんだな」

 

「ここも第1倉庫と同じで~種類だけは豊富だからね~~。小腹が空いた時とかは~ここに来てみたら良さげかもね~」

 

 

 第1倉庫と比較すると、若干物が少ない様に見えるが…食料品のみがここに集約されていると考えてみると、相当な数である。

 

 

「…しかもよく見てみたら、日本語で書かれていない食品もあるな……」

 

「多分全世界レベルで揃えられているんじゃないかな~?ほら、故郷の味を思い出したいときとか食べられるようにさ~」

 

 

 故郷も何も、ここにいるのは9割方日本人だと思うのだが…。まあ外国出身のニコラス以外にも、アメリカに住んだ経験のある鮫島とか、世界を練り歩いていそうな落合辺りには需要があるかもしれないな……。

 

 

「しかも見てみて~~、あの有名なシュールストレミングとか、世界一辛い唐辛子で作られたデスソースもあるよ~」

 

 

 それらは俺も聞いたことのあるモノだが……あんまり軽い気持ちで食べられるものでもなかったはずだ……。俺は引きつったような笑みを浮かべながら、別の棚に目を向けてみる…と。

 

 

「……む?これは俺も見たことがあるぞ。確か…日本では販売されていない極めて珍しい調味料の……」

 

「ああ~!!マカンゴソースだ~ノヴォセリック王国と~その周辺の国でしか売られていないレア物だよ~!」

 

 

 何故か目を輝かせながらそのマカンゴソースを手に取る長門。今日1番と思える彼女のテンションに俺は少しの驚きを表す。

 

 

「マカン、ゴ?ソースというのか?それは…」

 

「製造方法不明、原材料不明、制作者も不明の、眉唾の何物でもないのに…まるでドラッグにかかったかのような中毒性があるっていう一品だよ~……まさかこんなところでお目にかかれるなんて、ラッキーだよ~」

 

 

 それはもうドラッグそのものではないのか……?と言おうとしたのだが、彼女の喜びように水を差すというのも気が引けたため、俺は口をつぐむ。

 

 

「後で反町さんにさ~コレを使った料理を作ってもらおうよ~。あ~~どんな味がするんだろ~」

 

 

 いきなり外国限定発売のソースを渡され、何か作って~と言われる反町を想像し、俺は何となく気の毒に思えてしまった。

 

 

「そうだな…だが中毒性があるというのは少々危険な気もするが……」

 

「大丈夫だよ~。このソースを供給しないと幻覚症状が現れたり、ちょっと乱心したりするだけだから、安全だよ~~」

 

「いや、それもう麻薬か何かだろ!……いかん!これは危険すぎる!!没収だ!」

 

 

 16人の生徒全員の安全を第一に考え、俺は長門からソースをひったくる。

 

 

「ええ~そんな~。せめて~一舐めさせてよ~ほんのちょっとで良いからさ~~後生だよ~」

 

「ダメだダメだ!若い内からそんな意味のわからんものの味を覚えてはいかん!」

 

「そんな昭和風にもったいぶらないでよ~~折木くんも1度舐めてみれば分かるって~だから良いじゃ~ん」

 

「お前のその正気を見ていると余計良いとは言えん!後、分からん人間にはなんべん言っても分からんのだ!諦めろ!」

 

 

 俺はしきりにソースを手にしようとだだをこねる長門を抑え、ソースが彼女の手に渡らないように躱し続ける。

 

 

「む~、分からず屋はな男の人は嫌われるんだぞ~」

 

「人のためであるなら、嫌われてもかまわん……!」

 

 

 ただのソースの奪い合いの事に俺達は真剣なムードを纏う。まるで長年のライバルとの一騎打ちのように、その気迫は拮抗した。おそらく俺と長門のどちらかが諦めるまで、この応酬は何度も繰り返されることになるだろう。

 

 

 

 ……そして、そんな親子のようなたわいもないやりとりに終止符が打たれたのは、それから数十分後のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【炊事場エリア:第3倉庫】

 

 

 先ほどのソース争奪戦の軍配は俺に上がり、マカンゴソースの蓋をガムテープで目張りし俺の部屋で預かる次第となった。さすがに麻薬のような効能を持つソースを共用の倉庫内に野放しにしておくわけにはいかん、という考えでの結論だ。

 

 

「もぉ~折木くんは頑固者だな~。ちょっと位もダメなんて~横暴だよ~」

 

「……横暴も何もあるか。アレは危険すぎる」

 

「ちぇ~、けちんぼ~」

 

 

 そうブーブーと文句を垂れ流す長門を背にしながら、俺達は3つの立ち並ぶ倉庫群の内1番右に位置している、冷凍倉庫に俺達は訪れていた。

 

 

「あ~そうだ~~、折木く~ん、ここに入る前に~気をつけなきゃいけないことがあるから~先に言っておくね~」

 

「ん?気をつける点?……といっても、ここは簡便に言えば…他の倉庫よりも中の温度が低いだけなのだろう?どこにも注意点は無いと思うのだが……」

 

「ん~~そうでもないよ~。沼野君達が言うには~どうやら倉庫の奥に行くにつれて~温度が低くなっていっているらしいんだよね~~。それで~最奥まで行くと~数分で低温やけどしちゃうくらい温度が低くなってるんだって~」

 

 

 そういえば集会の時に雲居もそのようなニュアンスの事を言っていた気がするな……確かに、気をつけなければいけない重要な注意点だ。

 

 

「そ、そんなに低くなるのか…何故そのような構造を作ったのかイマイチ意図が理解しかねんな……」

 

「沼野君達も~同じようなことをモノパンに質問してみたら~~。この倉庫は~1つの部屋の中で冷蔵と冷凍を同時に出来る画期的な設備らしくて~手前側に凍ったモノを置けば解凍されるし~凍って無いものを奥の方に置けば瞬時に凍結させることができるんだって~~」

 

「ふむ…では入口側が冷蔵庫で奥側が冷凍庫の役割を担っている、ということか……」

 

 

 それで奥の方は過剰なまでに温度が低いということか…。

 

 

「あっ!後~食材以外でも~アイスとか~凍った果物とか~それと人の凍死体を作りたいときとかに便利なんだって~」

 

 

 成程…3つ目については聞かなかったことにして、そういう使い方もある訳か。工夫次第でもう少し応用が利きそうだな。

 

 

「よ~し、注意事項も確認し合った訳だし、早速中に入ってみよっか~」

 

 

 長門のその言葉を合図に、俺は冷凍倉庫の扉に手をかけ、中に入ろうとドアを開けてみると…。

 

 

『ビー!ビー!警告、警告!!これよりアブソリュートファンクションを開始しまス。すぐに倉庫から離れて下さイ。繰り返します…』

 

 

 俺が入り口に足をかけた直後に、倉庫内にモノパンの電子音声が響く。…アブソルートファンクション?一体何が始まるんだ?

 

 

「え~っと、これはね~え~っと……何だっけ~?」

 

 

 このアナウンスの正体について長門は答えようと頭をひねるが、答えが出てこなかったらしく、俺に引きつった笑みを向ける。…いや、俺にもわからんよ。

 

 

 すると刹那、俺達を吹き飛ばさんとする程の吹雪が体全体に襲いかかる。

 

 

 かなりの強風であったために、入り口で立ち往生する俺達は、その勢いに負け、本当に吹き飛ばされてしまう。

 

 

「「うわあああああああ……!」」

 

 

 俺と長門は仲良くうつ伏せのまま地面に体全体を打ち付ける。丁度頭の方から入ってしまったため、俺達は意識が刈り取れる寸前まで朦朧としてしまう。

 

 

「あ~、お、思い出したよ~。アブソルートファンクションって言うの、は~。倉庫全体の温度を保つため、に~定期的に行われる~自動冷却装置のこと、だよ~」

 

 

 長門はもう限界かのように目を霞ませながら、俺に説明を加える。

 

 

「い、言うのが。遅、い………ガクッ」

 

 

「ごめんね~~~ガク~」

 

 

 …この冷凍倉庫は、存在そのものが凶器だ。2度と近づかないようにしよう……。そんな決意の様な事を抱いた俺は、途絶えかけの意識を保つことができず、そのままたわいもなく顔を地面に埋めてしまった。

 

 

 

 結局俺達は、偶然通りかかった贄波に起こしてもらうまで意識を失ってしまい。起きた頃には、すでに日が暮れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *  *  *

 

【舗道(噴水広場~ログハウスエリア)】

 

 冷凍倉庫での一件の後、俺と長門は偶然通りかかった贄波と食事を済ませ、そのまま解散となった。長門と贄波はもう少し話をしていたいということなので、今現在俺は1人で夜道を歩いている状況だ。

 

 何だか長門に…少々悪い事をしてしまったかな…。

 

 ログハウスエリアへと続く遊歩道を歩いている中、そんな申し訳ない気持ちのままに空を見上げてみる。目の前には天井にちりばめられた満点の星空があり、淀んだ俺の瞳もキラキラに彩ってくれた。

 

 耳に神経を集中させてみれば、木と木がこすれ合う葉音が俺の周りで奏でられ、静謐な空間を演出している…。とても落ち着く雰囲気だった。

 

 

 今までの悩みなんて…すっぱりと消えていった仕舞うような…。

 

 

「ぅぉぉぉぉぉぉぉ……」

 

 

 …少し雑音が混ざっている様な気がするが、それでも俺の心持ちは変わらない。

 

 

「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!」

 

 

 

 …まだ問題ないレベルだ。落ち着く落ち着く。

 

 

 

「折木ぃぃぃぃぃぃ……!!!!」

 

 

 

 ……明らかに俺の名前を呼ぶ声が背中に響く。

 

 

 

「折木いいいいいいいいいいいいいい…!!!!」

 

 

 

 はぁ…今日は本当に疲れているからあまりアイツの相手はしたくないのだが。そう思いながらため息をつくと、いつものしかめっ面で俺は振り向いてみた。

 

 

 

「折木いいいいいい!!!!」

 

 

 案の定、『超高校級の陸上部』陽炎坂天翔がこちらへとフルスロットルで走ってきていた。そして、俺の目の前でキキィィィィ!と火花を散らせながらブレーキをかける。

 何だか自己紹介でも同じ事があったが、前よりもほんの気持ち程度火花の散り具合が激しくなった気がする。

 

 

「……どうしたんだ…陽炎坂」

 

「折木!!!明日!!!朝飯の後!!!!時間をよこすんだぜえええええええええ!!!!!」

 

 

 烈火の如くたたみかけてくる陽炎坂の声は夜の空に轟く。オブラートに包んで言うが、うるさい。…包めてないか…。

 

 

「まず用件を聞こう……」

 

 

 急に時間を割くように要求してくる陽炎坂の真意を探るため、具体的に何をするのかを聞いてみた。すると陽炎坂は振りかぶるように、大声を張り上げる。

 

 

「何をやるか……それは!!勿論!!運!!動!!会!!!だぜええええええええええええええ!!!!!!」

 

 

 快音波のような声量であったため、聞き取りにくかったが、しかし『運動会』という単語が確実に聞こえた。

 

 

「う、運動会…?」

 

「そう!!!!今日の報告会を聞いて!!!今の!!俺達には!!!友情を!!!深める!!!機会が!!!必要だああああ!!!!そう思ったんだ!!!だから!!!!明日は!!!!一日中!!!汗を流して遊びまくるんだぜええええええええええええ!!!!」

 

 

 それを聞いて陽炎坂のやりたいことの真意を何となく理解する。…そうか、俺達が交流できる機会を作るためにイベントを催そうという魂胆か。ならば俺も参加しない手は無い…運動は苦手だが。

 

 

「成程…それなら別に一日中俺の時間を使い果たしてもかまわないが……」

 

「よっしゃああああああああああ!!!!!これで!!!やっと!!!!1人!!!参加者ゲットだぜええええええええええ!!!!!」

 

 

 …ん?“やっと”?…その不穏な一言に、俺はイヤな予感が胸中を掠めた。

 

 

「す、すまない。陽炎坂……今現在そのイベントの参加者は何人だ?」

 

「俺様と!!!お前の!!!2人だけだぜええええええええええええ!!!!!!」

 

 

 ……大丈夫なのだろうか?もしかして、明日一日中コイツと走り続けるとかいうオチにになるのではないか?それはそれで、なんというか…寂しいというか、不安というか。

 

 

「その、興味本位で聞くのだが…俺以外に勧誘した人数は何人だ?」

 

「さっき!!!思いついた!!!ばっかりだからなあああああああ!!!!お前が1人目だぜええええええ!!!!」

 

 

 …今さっき思いついた事だったのか……。何となく2人だけの運動会ということになる不安は多少解消されたが…行き当たりばったりの陽炎坂の計画に心配の情が湧いて出てくる。

 

 

「なあ…それなら俺も手伝おうか?今の時間帯だったら、大半の人は炊事場で食事をしていると思うし、そこに乗り込んでイベントのことを話せば…」

 

「そうか!!!良い情報だぜええええ!!!今から!!!!行ってくるぜええええええええええええええええええ!!!!!!!」

 

 

 俺が助力を提案しようとしたが、陽炎坂はその話を聞いていないかのよう(実際聞いていない可能性が高い)に振り向きそのまま炊事場へと走り抜けていってしまった……。

 

 

「本当に…忙しないというか、落ち着きがなさ過ぎるというか」

 

 

 陽炎坂よりもか細い俺の声は、空気に溶け込み、無へと帰って行く。せめて話くらいは聞いて欲しかったが…居なくなってしまったのなら仕方ない……。

 

 

 俺は自分の進路をログハウスエリアへと軌道修正し、一時的に止まっていた歩みを再び進め始めた。嵐の前の静けさならぬ、嵐の後の静けさといえる静謐さも、陽炎坂が去ったのと同時に戻ってきたようだった。

 

 

 そして俺は、今日一日の終わりを迎えるため自分の寝床であるログハウスへと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

【ログハウスエリア:折木公平の部屋】

 

『キーン、コーン、カーン、コーン……』

 

 

『えー、ミナサマ!施設内放送でス!…午前10時となりましタ。ただいまより“夜時間”とさせて頂きまス。まもなく、倉庫、購買部への出入りが禁止となりますので……速やかにお立ち退き下さイ。それではミナサマ、良い夢を……お休みなさいまセ』

 

 

 ブツリとモノパンのアナウンスは途切れる。

 

 

「…これが鮫島達の言っていた例のアナウンスか」

 

 

 自分の根城であるログハウスに帰宅した俺は、まだ眠くなかったため机に備え付けられていた本を暇つぶしがてらに閲覧していた。ちなみにタイトルは『モノパン3世 ~モノパン VS 人造ヒューマン~』である。

 

 …タイトルについては絶望的に変ではあったが…内容的には中々に読み応えがあった。特に、モノパン自身が人工物であり、今まで全ての感情が実はプログラムだったのか、それとも本心だったのか…その葛藤には手に汗握ってしまった。

 おかげで時間を忘れて読み切ってしまい、気づいたらさっきの夜時間のチャイム…なんとも有意義な時間であった。

 

 気になった俺は…誰が書いたのかをついでに見てみると、作者の欄には“モノクローム・パンダ3世”と書かれていた。……どうやら、コレはアイツの自伝らしい。いや、それとも自分をモデルにした創作物なのか?

 

 俺はこのたった1行に、些細な疑問が湧いて出てきてしまった。

 

 

「だが…それにしては読みやすかった。アイツ、意外にも文才があるんだな」

 

 

 モノパンへの見識をミジンコ程度に改めた俺は、本を棚に戻していく。そして本を読み終えた疲れによるモノなのか、ウトウトと眠気に襲われ始めていた。

 

 

「まあ、丁度アナウンスもあったわけだし…そろそろ寝るか」

 

 

 明日は今日と同じく集会をするかどうかは分からないが、朝食の方はまた継続して皆と一緒に食べることになるのだろう。それに多分作るのは反町だ…時間にも厳しいだろうから…早めに寝て準備を整えておこう。

 

 

「ふぁ~あ。ふぅ…昨日よりかは疲れは無さそうだな…」

 

 

 昨日は精神的な疲れもあり、思う以上に眠気が強かった。だけど今日は、生徒達の何人かと他愛も無い話をしたり、探索したりと幾分か楽な一日だった。…明日も、明後日も、こんな風に続いてくれれば良いんだが……。

 

 

 俺はナイーブな気持ちになりそうな頭を振り、かき消すようにそのままベッドへと身を投げた。これ以上は、考えてはいけないような気がしたから。そして、そんなネガティブな心に蓋をするように目をつぶる。

 

 

 

 

 数分後、部屋の中では小さな寝息のみが響き始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【モノパン劇場】

 

 

『う、うう……ワタクシの大事なモノクルが…買ったばかりだったのに……』

 

 

『くうう、まさかアイツラがこんなにも暢気に一日を棒に振るとは思いませんでしたヨ!折角殺人を仕向けようと煽りまくったというのニ…』

 

 

『まあしかし、さすがに今日何も起こらないと言うことも無いでしょう…たった一日あれば、人間の関係なんてガラリと変わるものでス』

 

 

『その人と交流してみて、あっコイツ相性悪いな…、そう思うだけで殺人の火種となったりもする・・・それが人間というものでス!!】

 

 

『もう絶対明日には誰かがチミドロフィーバーして、ダンスッちまってるはずですヨ!!」

 

 

『え?今度は何を賭けるのか…ですって?……ええと、それは……………』

 

 

『それは、また今度ということで…ではまた来週~~~~!!………………早く!早く幕閉じて!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生き残りメンバー:残り16人』

 

 

 

【超高校級の特待生】折木 公平(おれき こうへい)

【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)

【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)

【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)

【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)

【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)

【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)

【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)

【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)

【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)

【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)

【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)

【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)

【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)

【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)

【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)

 

 

 




どうもこんにちは、水鳥ばんちょです。今回は交流タイムメインの話しでした。ゲームで言うと、沼野君と長門さんを選んだときの交流になります。陽炎坂君のは、強制イベントです。


↓以下コラム


○普段(休みの日)の皆の就寝・起床時間

※今回の場合、ベッドに慣れていなかった、コロシアイの件を引きずっていた等の理由で皆さんは早起きでした。


『男子』

・折木 公平(おれき こうへい):起床⇒午前5時30分 
 就寝⇒午後10時30分

モノパンから一言…おじいちゃんみたいな生活スタイルですネ。健康的でグッドだと思いまス。


・陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう):起床⇒午前4時
就寝⇒午前1時

モノパンから一言…練習は控えめにお願いしまス。


・鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ):起床⇒午前6時
就寝⇒午後11時

モノパンから一言…人は見かけによりませんネ。


・沼野 浮草(ぬまの うきくさ):起床⇒午前2時31分 
  就寝⇒午前1時59分

モノパンから一言…えらく具体的ですネ…何かその時間に恨みでもあるんですカ?


・古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん):起床⇒午前9時 
                    就寝⇒午前2時

モノパンから一言…夜更かし気味ですネ…もう1時間早めに寝て、早めに起きると良いでしょウ。


・雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう):起床⇒午前12時 
                    就寝⇒午前5時

モノパンから一言…いくら朝が嫌いでも限度があると思いス。


・落合 隼人(おちあい はやと):起床⇒24時間の内どこかで寝る
                就寝⇒24時間の内どこかで寝る


モノパンから一言…ちゃんと普通に寝て下さイ。


・ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein):起床⇒午前5時
                          就寝⇒午後0時

モノパンから一言…睡眠時間はできるだけ取りましょウ。肌荒れの原因にもなりますのデ。


『女子』

・水無月 カルタ(みなづき かるた):起床⇒午前7時 
    就寝⇒午後0時

モノパンから一言…案外普通なんですネ。


・小早川 梓葉(こばやかわ あずは):起床⇒午前4時 
    就寝⇒午後11時

モノパンから一言…頑張りすぎないように、早めに寝ましょウ。


・雲居 蛍(くもい ほたる):起床⇒午前⇒午前11時 
   就寝⇒午前3時


モノパンから一言…あまり健康的とは言えませン。もしかして寝不足気味ですカ?


・反町 素直(そりまち すなお):起床⇒午前3時 
 就寝⇒午後0時


モノパンから一言…体には気をつけてくださイ。倒れてしまっては元も子もありませんのデ。


・風切 柊子(かざきり しゅうこ):起床⇒午後7時 
  就寝⇒午前10時

モノパンから一言…寝過ぎでス。


・長門 凛音(ながと りんね):起床⇒午前10時 
就寝⇒午後11時

モノパンから一言…起きる時間をもう少しスムーズにしましょウ。


・朝衣 式(あさい しき):起床⇒午前6時 
就寝⇒午後11時


モノパンから一言…模範的な睡眠時間だと思いス。毎日続けるとなおグッドでス。


・贄波 司(にえなみ つかさ):起床⇒午前3時 
就寝⇒午前3時


モノパンから一言…それ、もう寝てないですよネ?
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